(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960557
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】人工芝生
(51)【国際特許分類】
E01C 13/08 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
E01C13/08
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-193874(P2012-193874)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-47596(P2014-47596A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱本 剛
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭58−22625(JP,Y2)
【文献】
実公平03−033461(JP,Y2)
【文献】
特開平09−235702(JP,A)
【文献】
特開2007−198094(JP,A)
【文献】
特開平07−164570(JP,A)
【文献】
特開2010−163760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00〜 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の合成樹脂製の芝糸が束ねられた糸束が基布へカットパイル状に植設されて芝葉が構成される人工芝生であって、
前記芝葉が、第一の芝葉と、該第一の芝葉より捲縮されて上端が低くなされた第二の芝葉とを備え、
前記第一の芝葉が、緑色に着色された芝葉と、枯葉色に着色された芝葉とを備えると共に、
前記第二の芝葉が緑色に着色されており、
前記枯葉色に着色された第一の芝葉が倒伏するときに、前記緑色に着色されて捲縮される前記第二の芝葉の上へ倒れ込む状態となりやすく設けられていることを特徴とする人工芝生。
【請求項2】
前記第一の芝葉を形成する芝糸と、前記第二の芝葉を構成する芝糸とが束ねられて前記糸束が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工芝生。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より天然芝の風合いに近い外観に設ける人工芝生に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芝枯れなどがなくメンテナンスの手間を軽減させるために、基布に合成樹脂製の芝糸を植設させた人工芝生が従来より利用されており、その風合いをより天然芝生に似せるための種々の発明が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、色調を異にする2以上の偏平繊維が相互に倒伏していることを特徴とする人工芝生が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−20505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、緑色の扁平繊維と枯葉色の扁平繊維とを組み合わせて、自然な感じの人工芝生とする構成が示されているが、これらの扁平繊維が相互に倒伏しているので、人工芝生の外観が見苦しく感じられるという問題点があった。
【0006】
本発明は、より天然芝の風合いに近く、美しい外観の人工芝生を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る人工芝生は、複数の合成樹脂製の芝糸が束ねられた糸束が基布へカットパイル状に植設されて芝葉が構成される人工芝生であって、
前記芝葉が、第一の芝葉と、該第一の芝葉より捲縮されて上端が低くなされた第二の芝葉とを備え、
前記第一の芝葉が、緑色に着色された芝葉と、枯葉色に着色された芝葉とを備え
ると共に、
前記第二の芝葉が緑色に着色されており、
前記枯葉色に着色された第一の芝葉が倒伏するときに、前記緑色に着色されて捲縮される前記第二の芝葉の上へ倒れ込む状態となりやすく設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る人工芝生によれば、糸束に束ねた複数の合成樹脂製の芝糸を基布へカットパイル状に植設させて芝葉を構成させ、前記芝葉に、第一の芝葉と、この第一の芝葉より捲縮させて上端を低くした第二の芝葉とを備えさせるので、前記第一の芝葉が第二の芝葉に支えられて倒伏しにくくなされ、第一の芝葉が上方へ伸びるさまが上方から視認しやすくなされる。
また、前記第一の芝葉が、緑色に着色された芝葉と、枯葉色に着色された芝葉とを備えるので、前記枯葉色に着色された芝葉が前記緑色に着色された芝葉と共に上方から視認しやすくなされ、人工芝生の風合いがより天然芝に近いものとなされる。
また、第一の芝葉が第二の芝葉に支えられることで、第一の芝葉が上方へ伸びるように視認され、前記緑色に着色された芝葉と枯葉色に着色された芝葉とにそれぞれ勢いを感じさせて美しく視認されるようになされる。
【0009】
また、前記第一の芝葉を形成する芝糸と、前記第二の芝葉を構成する芝糸とを束ねて前記糸束を形成させれば、前記第一の芝葉が第二の芝葉に支えられやすくなされ、前記第一の芝葉に設けられた緑色に着色された芝葉と枯葉色に着色された芝葉とが、上方からより視認しやすくなるので好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る人工芝生によれば、より天然芝生の風合いに近い、美しい外観に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る人工芝生の実施の一形態を示す断面図である。
【
図2】
図1の人工芝生の第一の芝葉が倒伏した状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
1は人工芝生である。
本実施形態の人工芝生は、ポリプロピレン製の平織りの織布を用いた基布2に、複数の芝糸を束ねた糸束をカットパイル状に植設して芝葉3を形成し、基布2の裏面からウレタン樹脂等のバッキング材5を塗布して前記芝葉3を固定している。
【0013】
前記芝葉3は、第一の芝葉3A、3B、及び第二の芝葉3Cを含んで形成させている。
本実施形態の第一の芝葉3A、3Bは、モノフィラメントの芝糸で形成させており、植設させた基布2から直線的に伸びるストレートパイル状に設けている。
【0014】
本実施形態の第二の芝葉3Cは、複数の折れ曲がり部分を備えるように捲縮している。前記第二の芝葉3Cは、熱により捲縮する熱捲縮性を備えるモノフィラメントの芝糸で形成させており、具体的にはナイロン66製の芝糸で形成させている。この芝糸を基布2へカットパイル状に植設させた後、加熱し捲縮加工して、前記第二の芝葉3Cを形成させている。
【0015】
本実施形態の人工芝生1は、前記第二の芝葉3Cを形成する芝糸と、前記第一の芝葉3A、3Bをそれぞれ形成する芝糸とを束ねて前記糸束を設けており、基布2へカットパイル状に植設された前記第二の芝葉3Cと、第一の芝葉3A、3Bとが同じ根本からそれぞれ上方へ伸びるように設けている。
また、本実施形態の第一の芝葉3A、3Bは、前記捲縮加工では捲縮しない材質の芝糸で形成させており、前記捲縮加工の後もストレートパイル状に伸びるように設けている。具体的には、本実施形態の第一の芝葉3A、3Bは、ポリエチレン製の芝糸で形成させている。
そして、前記糸束を基布2へカットパイル状に植設させることで、前記捲縮加工前は、前記第一の芝葉3A、3Bと、第二の芝葉3Cとが、それぞれ同じ高さに設けられ、前記捲縮加工によって前記第二の芝葉3Cが複数の折れ曲がり部分を有するように捲縮させて、前記第二の芝葉3Cを第一の芝葉3A、3Bより低い高さに設けている。
【0016】
本実施形態の第一の芝葉3Aを形成する芝糸は緑色に着色された1400デシテックスのモノフィラメントであり、第一の芝葉3Bを形成する芝糸は前記第一の芝葉3Aを形成する芝糸より若干細い枯葉色に着色された1000デシテックスのモノフィラメントであり、第二の芝葉3Cを形成する芝糸は、前記第一の芝葉3Aとは異なる色調の緑色に着色された500デシテックスのモノフィラメントである。
基布2へ植設させる前の前記糸束は、前記第一の芝葉3Aを形成する芝糸4本と、前記第一の芝葉3Bを形成する芝糸1本と、前記第二の芝葉3Cを形成する芝糸7本とが一束に束ねられて設けられている。前記糸束が基布2へカットパイル状に植設されると、切断された前記糸束の中央付近が前記基布2の裏側で固定され、切断された前記糸束の両端が前記基布2の上方へそれぞれ伸びるように設けられるため、本実施形態の人工芝生1は、前記芝葉3の一つの根本から、緑色の芝葉を形成する8本の第一の芝葉3Aと、枯葉色の芝葉を形成する2本の第二の芝葉3Bと、緑色の芝葉を形成する14本の第二の芝葉3Cとがそれぞれ上方へ伸びるように設けられている。
尚、
図1、及び後述する
図2では、図面の簡略化のために、第一の芝葉3A、3Bと、第二の芝葉3Cの本数を本実施形態の本数より少なく描いている。
【0017】
前記第一の芝葉3Aと、第二の芝葉3Cとは、それぞれ異なる緑色に着色させているが、ここでいう緑色とは、具体的には、マンセル表色系において、色層が1GY〜7.5BGの範囲内にある色調である。
また、前記第一の芝葉3Bは枯葉色に着色させているが、ここでいう枯葉色とは緑色の植物の葉等が枯れて変色してあらわれる黄色、ベージュ色、茶色などであり、具体的には、マンセル表色系において、色層が1YR〜10Yの範囲内にある色調である。
【0018】
前記第一の芝葉3A、3Bは、捲縮させた第二の芝葉3Cよりも先端の高さを高く設けるので、この第二の芝葉3Cにより第一の芝葉3A、3Bが支えられて倒伏しにくくなされる。また、前記第二の芝葉3Cを捲縮させているので、第二の芝葉3Cの一部が基布2の上面に接触するなどしてその形状や配置の安定性が良好となり、前記第一の芝葉3A、3Bがより安定的に支持されるようになされる。
【0019】
また、第一の芝葉3Aと第一の芝葉3Bとが前記第二の芝葉3Cに支持されることで、前記人工芝生1を上方から目視したときに、第一の芝葉3Aと第一の芝葉3Bとがそれぞれ良好に視認されるようになされる。また、前記第二の芝葉3Cに支持されることで、前記第一の芝葉3A、3Bが上方へ伸びた状態が維持されやすくなされ、人工芝生1を目視した観者に前記第一の芝葉3A、3Bに勢いがあるように印象づけて、より美しく感じさせる効果が期待できる。
【0020】
また、枯葉色に着色した前記第一の芝葉3Bを形成する芝糸に、緑色に着色した前記第一の芝葉3Aを形成する芝糸よりも細い糸を用いることで、枯れて細くなった芝葉として認識しやすくなされる。
【0021】
図2は
図1の人工芝生の第一の芝葉3A、3Bが倒伏した状況を示す断面図である。
枯葉色に着色した第一の芝葉3Bを、緑色に着色した第一の芝葉3Aと共に植設させて、前記第二の芝葉3Cに支持されるように設けることで、第一の芝葉Bが倒伏した場合でも、他の前記第二の芝葉3Cの下に埋没するような状態が生じにくくなされる。倒伏した第一の芝葉3A、3Bは、基布2に植設された根本から倒れるのではなく、
図2のように芝葉の途中で曲がって捲縮させた第二の芝葉3Cの上へ倒れ込むような状態となりやすく、倒伏した状態でも上方から良好に視認できるようになされる。
このため、芝葉3における第一の芝葉Bの割合を小さく設けても観者に良好に視認させることができ、芝葉3における枯葉色の第一の芝葉Bの割合を必要以上に大きく設けて、人工芝生1の美観を損なうような問題が生じにくくなされる。
【0022】
本実施形態の前記第二の芝葉3Cは、ナイロン66製の芝糸で形成させているが、これに限るものではなく、捲縮加工が可能な材質の芝糸を適宜選択して用いることができる。例えば、加熱による捲縮性を備える材質として、ナイロン6などナイロン66以外のポリアミドや他の合成樹脂を利用しても良く、加熱以外の方法によって捲縮する捲縮性を有する合成樹脂を利用してもよい。
【0023】
本実施形態の第一の芝葉3A、3Bは、ポリエチレン製の芝糸で形成させているが、これに限るものではなく、前記第二の芝葉3Cを捲縮させるための捲縮加工で捲縮しない、又は捲縮の度合いが前記第二の芝葉Cよりも小さな材質の芝糸を適宜選択して用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 人工芝生
2 基布
3 芝葉
3A 第一の芝葉
3B 第一の芝葉
3C 第二の芝葉
5 バッキング材