特許第5960581号(P5960581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5960581-光受信装置 図000002
  • 特許5960581-光受信装置 図000003
  • 特許5960581-光受信装置 図000004
  • 特許5960581-光受信装置 図000005
  • 特許5960581-光受信装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960581
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】光受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/01 20060101AFI20160719BHJP
   H04L 27/38 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H04L27/00 K
   H04L27/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-251468(P2012-251468)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-99804(P2014-99804A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】崔 賢瑛
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/083575(WO,A1)
【文献】 特開平11−355371(JP,A)
【文献】 特開平11−355372(JP,A)
【文献】 特開平11−098432(JP,A)
【文献】 特表2011−529647(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0182590(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0087679(US,A1)
【文献】 Hyeon Yeong Choi, Takehiro Tsuritani, Itsuro Morita,BER-adaptive flexible-format transmitter for elastic optical networks,OPTICS EXPRESS,2012年 8月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/01
H04L 27/38
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調された光信号を受信する光受信装置であって、
前記光変調された光信号を受信し、前記光信号の位相及び振幅に対応する複素平面上の信号位置を示す電気信号を出力する変換手段と、
前記電気信号が示す前記複素平面上の信号位置を0、π/2、π又は3π/2だけ回転させて、前記複素平面の4つの象限の内の1つの象限である基準象限内の信号位置に移動させる第1の回転手段と、
前記基準象限における基準位置に基づき、前記第1の回転手段による回転後の前記信号位置の等化処理を行う等化手段と、
前記等化手段による等化後の信号位置を、前記第1の回転手段が与えた回転量だけ前記第1の回転手段とは逆方向に回転させる第2の回転手段と、
前記第2の回転手段による回転後の信号位置に基づき前記電気信号を復号する復号手段と、
を備えていることを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
前記光信号は、複素平面の4つの象限の内の1つの象限の信号位置に対応する光信号を生成し、前記生成した信号を直交光変調することで生成したものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記等化手段は、線形アルゴリズムを使用して信号位置の等化を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムで使用する光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の変調方式に対応する光変調装置について提案がなされている。例えば、非特許文献1は、BPSK、QPSK、16QAMといった変調方式の切り替えができる光変調装置を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H.Y.Choi,et.al,"BER−adaptive flexible−foramat transmitter for elastic optical networks",OPTICS EXPRESS,Vol.20,pp.18652−18658
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、非特許文献1では、デュアル・ドライブ光変調器(DD光変調器)と、IQ光変調器(直交光変調器)をシリアルに接続し、16QAMの場合、DD光変調器でIQ平面上(複素平面)の第1象限の4つの信号のいずれかを生成し、この4つの信号をさらにIQ変調することで第1象限から第4象限に渡る合計16個の信号を生成している。ここで、例えば、非特許文献1に示す構成において、DD光変調器に印加する電圧の誤差や、DD光変調器の特性のばらつきにより、DD光変調器が出力する第1象限の信号点の位置には誤差が生じ得る。DD光変調器が出力する第1象限の信号点の位置に誤差が生じると、たとえ、光IQ変調器の動作が理想的であっても、第2象限から第4象限の信号点の位置には、第1象限の信号点の位置の誤差による誤差が生じる。この信号点の誤差は、各象限で対称に生じるため、受信側においては、従来の等化方法でこの誤差を補償することはできない。
【0005】
本発明は、1つの象限の信号点をまず生成し、その後、当該1つの象限の信号点をIQ光変調(直交光変調)することで生成した光信号を補償できる光受信装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、光変調された光信号を受信する光受信装置であって、前記光変調された光信号を受信し、前記光信号の位相及び振幅に対応する複素平面上の信号位置を示す電気信号を出力する変換手段と、前記電気信号が示す前記複素平面上の信号位置を0、π/2、π又は3π/2だけ回転させて、前記複素平面の4つの象限の内の1つの象限である基準象限内の信号位置に移動させる第1の回転手段と、前記基準象限における基準位置に基づき、前記第1の回転手段による回転後の前記信号位置の等化処理を行う等化手段と、前記等化手段による等化後の信号位置を、前記第1の回転手段が与えた回転量だけ前記第1の回転手段とは逆方向に回転させる第2の回転手段と、前記第2の回転手段による回転後の信号位置に基づき前記電気信号を復号する復号手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
1つの象限の信号点をまず生成し、当該1つの象限の信号点をIQ光変調することで生成した光信号を補償できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による光受信装置の概略的な構成図。
図2】一実施形態による光受信装置が受信する光信号の説明図。
図3】信号点の誤差の説明図。
図4】一実施形態による光受信装置での処理の説明図。
図5】一実施形態による光受信装置での処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0010】
図1は、本実施形態による光受信装置200の概略的な構成図である。図1(A)に示す様に、光受信装置200は、光送信装置100が生成して送信した光信号を受信して復調する。ここで、光送信装置100が送信する光信号について図2を用いて説明する。図2(A)に示す様に、光送信装置100は、例えば、デュアル・ドライブIQ光変調器(デュアル・ドライブ直交光変調器)と、IQ光変調器をシリアルに接続して構成される。デュアル・ドライブIQ光変調器に入力される連続光は、4ビットデータにより、IQ平面(複素平面)上の16個の信号点のいずれかに変調される。図2(B)にデュアル・ドライブIQ光変調器が出力する16個の信号点を示す。IQ光変調器には、デュアル・ドライブIQ光変調器から、図2(B)に示す16個の信号点のいずれかが入力され、2ビットデータによりIQ変調される。したがって、IQ光変調器の出力は、図2(C)に示す計64個の信号点のいずれかの信号となる。つまり、図2(A)に示す構成により64QAM方式が可能となる。
【0011】
ここで、図3(A)に示す様にデュアル・ドライブIQ光変調器が出力する信号点に誤差が生じたものとする。図3(A)に示す信号配置は、図2(B)と比較して、第2列目の信号点と、第3列目の信号点の間隔が広くなっている。これは、逆に、第1列目の信号点と第2列目の信号点の間隔が狭くなっており、第3列目の信号点と第4列目の信号点の間隔が狭くなっていることにも相当する。各信号点の間隔が等しいときに雑音に対する耐力が最も強くなるため、これは雑音に対する耐力が劣化していることになる。後段のIQ光変調器は、デュアル・ドライブIQ光変調器からの信号をIQ変調するのみであり、よって、図3(A)に示す信号が入力された場合、IQ光変調器の出力は、図3(B)に示す様になる。図3(B)の信号は、図3(A)の各信号点の位置を、それぞれ、π/2、π、+3π/2だけ時計回り方向に回転させたものであるため、各象限において信号点の配置に誤差が生じる。
【0012】
例えば、従来の等化処理では、受信した信号をそのときの等化情報で等化し、等化後の信号のIQ平面上の位置と、最も近い理想的な信号位置との差を誤差として、この誤差を減少させるように等化情報を更新する。なお、等化情報の更新には、例えば、定包絡線基準アルゴリズム(CMA:Constant−Modulus Algorithm)や、半径指向アルゴリズム(RDA:Radius−Directed Algorithm)や、判定指向型最小平均二乗法(DD−LMS:Decision−Directed Least−Mean−Square)といった種々の線形アルゴリズムが提案されている。しかしながら、図3(B)に示す様に、1つの象限の信号を生成し、その信号をIQ変調して生成した光信号では、その誤差はIQ平面の原点を中心に対称となるため、従来からの方法では信号点のずれを補償することはできない。以下、本実施形態による光受信装置200について説明する。
【0013】
図1(B)に示す様に、本実施形態による光受信装置200は、光/電気(O/E)変換部1と、回転部2と、等化部3と、回転部4と、復号部5と、を備えている。光/電気(O/E)変換部1は、受信した光信号を電気信号に変換し、同相成分(I)の振幅情報を示す信号と、直交成分(Q)の振幅情報を示す信号を出力する。つまり、O/E変換部1は、IQ平面上の信号位置を示す信号を出力する。回転部2は、O/E変換部1から受信する信号のIQ平面上の位置を第1象限に回転させて等化部3に出力する。具体的には、第1象限の信号については、そのまま等化部3に出力し、第2象限の信号についてはπ/2だけ時計回り方向に回転させて等化部3に出力し、第3象限の信号についてはπだけ回転させて等化部3に出力し、第4象限の信号については3π/2だけ時計回り方向に回転させて等化部3に出力する。
【0014】
図4は、IQ平面であり、信号点50〜53は、第1象限における理想的な信号位置、つまり、基準とする信号位置である。なお、説明を簡単にするため、64QAMではなく、16QAMを用いて説明する。信号点61は、回転部2がO/E変換部1から受信する信号位置である。また、信号点62は、信号点61の次に回転部2がO/E変換部1から受信する信号位置である。さらに、信号点63は、信号点62の次に回転部2がO/E変換部1から受信する信号位置である。また、信号点64は、信号点63の次に回転部2がO/E変換部1から受信する信号位置である。
【0015】
既に述べた様に、回転部2は、第1象限にある信号点61についてはそのまま等化部32に出力する。一方、回転部2は、第2象限にある信号点62については、π/2だけ時計回り方向に回転させて等化部3に出力する。図5には、信号点62をπ/2だけ時計回り方向に回転させた信号点72を示している。さらに、回転部2は、第3象限にある信号点63については、πだけ回転させて等化部3に出力する。図5には、信号点63をπだけ回転させた信号点73を示している。さらに、回転部2は、第4象限にある信号点64については、3π/2だけ時計回り方向に回転させて等化部3に出力する。図5には、信号点64を3π/2だけ時計回り方向に回転させた信号点74を示している。なお、当然ではあるが、3π/2だけ時計回り方向に回転させることは、π/2だけ反時計周りに回転させることと同じである。
【0016】
等化部3は、第1象限において従来の等化処理を実行する。具体的には、等化情報に基づき図5の信号点61を補正し、補正後の位置と、第1象限の基準位置50〜53のいずれか最も近い信号位置との差を誤差とし、この誤差に基づき等化情報を更新する。その後、更新した等化情報に基づき、信号点61の次に受信した信号点62に対応する図5の信号点72を補正し、補正後の位置と、第1象限の基準位置50〜53のいずれか最も近い信号位置との差を誤差とし、この誤差に基づき等化情報を更新する。その後、信号点73及び74についても、そのときの等化情報に基づき補正し、補正後の位置と、第1象限の基準位置50〜53のいずれか最も近い信号位置との差を誤差とし、この誤差に基づき等化情報を更新する。更新後の等化情報は、次に受信する信号点を第1象限に回転させた信号点の補正に使用する。なお、等化情報の更新には、例えば、DD−LMSといった、公知のアルゴリズムを使用することができる。等化部3は、等化後のIQ平面上の信号位置を示す情報を回転部4に出力する。
【0017】
回転部4は、等化部3での等化後のIQ平面上の信号位置を、回転部2において回転させたのと同じ量だけ逆方向に回転させる。なお、各信号について、回転部2における回転量については、回転部2から回転部4に通知される。例えば、図5の信号点61を補正した信号は、信号点61の回転部2における回転量が0であるため、そのままとする。一方、図5の信号点72を補正した信号は、元の信号点62の回転部2における回転量が、時計回り方向においてπ/2であるため、π/2だけ反時計回り方向に回転させる。当然ではあるが、これは、3π/2だけ時計回り方向に回転させることと同じである。同様に、図5の信号点73及び74の等化後の信号位置についても、それぞれ、反時計回り方向にπ及び3π/2だけ回転させる。回転部4は、回転後の各信号のIQ平面上の位置を示す信号を復号部5へと出力し、復号部5は、回転後の各信号のIQ平面上の位置に基づき各信号のデータを決定する。具体的には、変調で使用する信号の基準位置の内、回転後のIQ平面上の位置に最も近い位置に対応するデータ値に復号する。
【0018】
この様に、本実施形態では、受信信号を第1象限の位置に回転させた後に、第1象限の基準信号に基づき等化処理を行う。この構成により、誤差が点対称ではなくなり、従来からのアルゴリズムを使用して信号の等化を行うことが可能になる。なお、上記実施形態においては、各信号を第1象限の位置に回転させたが、回転させる先の象限は、第1象限から第4象限のいずれであっても良い。
図1
図2
図3
図4
図5