(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平行移動量算出部は、前記第1切り出し画像に対して互いに直行する3軸を設定し、当該3軸のうち少なくとも1つの軸方向における前記第1切り出し画像に対する前記第2切り出し画像の平行方向の位置ずれ量を算出することで、前記平行移動量を算出する
請求項1に記載の画像処理装置。
前記平行移動量算出部は、前記3軸のうち1軸を前記切り出し画像に垂直な方向の軸とし、当該垂直な方向の軸方向における前記第1切り出し画像に対する前記第2切り出し画像の平行移動量を、前記第1切り出し画像に対する前記第2切り出し画像の拡大率または縮小率を示す値として算出する
請求項2に記載の画像処理装置。
前記平行移動量算出部は、前記第1切り出し画像と前記第2切り出し画像とのパターンマッチング、オブジェクトマッチングまたは特徴点マッチングを行うことにより、前記平行移動量を算出する
請求項2に記載の画像処理装置。
前記回転移動量算出部は、前記光学系の光軸周りの回転角度、または前記光学系の光軸に対して互いに垂直な2軸のうち少なくとも1つの軸周りの回転角度を算出することにより、前記第2の画像の前記第1の画像に対する回転移動量を算出する
請求項1に記載の画像処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および上記特許文献2に記載の方法では、以下に説明するように高精度な手ブレ補正を行うことが困難であるという問題がある。
【0006】
すなわち、上記特許文献1に記載の方法では、動画像に含まれるオブジェクトなどの被写体が動画像内の位置によって変形してしまうことについては考慮されていない。そのため、カメラの動きの方向や動きの大きさによってはカメラベクトル(フレーム画像間での位置ずれ量を示す移動量)を正しく求めることができず、ブレ補正そのものができなくなる場合がある。これは、魚眼映像等の超広角撮影を行った場合に特に顕著に起こる問題である。
【0007】
上記特許文献2に記載の方法では、魚眼映像のブレ量(位置ずれの程度)を求める際に一旦透視投影像に変換を行って、透視投影像間での位置ずれ量を示す移動量を、魚眼映像間の移動量として算出する。しかし、上記特許文献1と同様に、魚眼映像内で被写体の位置が変わることによって変形してしまうことについて考慮されていない。つまり、魚眼映像中での被写体の位置によっては、透視投影像を作成した時の形状変化(変形)が大きくなること、その形状変化(変形)に依存して透視投影画像内での中心部と周辺部とで移動量のスケールが異なることについて考慮されていない。そのため、算出される移動量の精度は、魚眼映像内の被写体の位置によって著しく低下する。
【0008】
ここで、図を用いて魚眼映像の切り出し画像において被写体の位置により変形が生じることを説明する。
図1A〜
図2Bは、魚眼映像における被写体位置によって切り出し画像における被写体に変形が生じることを説明するための図である。
図1Aおよび
図2Aは、魚眼映像を示している。
図1Aと
図2Aでは、被写体である人物の位置が異なっている。
【0009】
図1Bおよび
図1Bはそれぞれ、
図1Aおよび
図2Aの中心付近(おおよそ点線部分に相当)を透視投影変換によって切り出して生成された切り出し画像を示す。
図1Aに示す魚眼映像では、被写体である人物がほぼ中心部に位置するため、その透視投影画像である
図1Bに示す切り出し画像には、変形(形状変化)が若干残留しているものその変形(形状変化)は大きくない。一方、
図2Aに示す魚眼映像では、被写体である人物が中心部から離れて位置するため、その透視投影画像である
図2Bに示す切り出し画像には、被写体の幅が大きくなっており大きな変形(形状変化)が残留しているのがわかる。このように、例えば、
図1Aと
図2Aの魚眼映像について、画像処理によるマッチングを行うとしても、魚眼映像内の被写体の位置によっては、ブレ量を精度よく検出するのは困難であることが分かる。
【0010】
また、上記特許文献1および上記特許文献2に記載の方法では、上述したような変形に対する考慮がないことに加えて、採用する算出方式による誤差を包含してしまう問題もある。
【0011】
具体的には、上記特許文献1では、画像処理によって検出可能な画像上の特徴的な点である特徴点を利用したマッチングを行い、マッチングに成功した複数の特徴点から得られた複数のカメラベクトルの誤差を最小化する処理を行うため、各々の特徴点に対する補正量には誤差が含まれる。その理由は、1)一般的に用いられる特徴点抽出アルゴリズム(Lucas−Kanade法、SIFT法など)では特徴点算出精度が映像によって低下することがあり被写体の特徴点位置そのものに誤差が含まれる場合があること、2)マッチングに成功した特徴点のペア群の中から、最良のペアを一つだけ選択することが困難であること、3)そのため算出後のカメラベクトルの誤差の最小化を行う必要があること、などである。また、上記特許文献2では、特徴点を利用したテンプレートマッチングを用いる例が記載されているが、上述したように透視投影像を作成する際にはもともとの魚眼像における位置によって非線形な変形が生じるため、ブレ量が小さく、かつ、変形の影響が比較的表れにくい透視投影像の展開中心付近を対象としてテンプレートマッチングを行う場合以外は、そのマッチング自体が失敗する場合がある。
【0012】
ここで、特徴点ベースのマッチング手法について説明する。
【0013】
図3A〜
図3Dは、特徴点ベースのマッチング手法を説明するための図である。特徴点ベースのマッチングは、時間的に連続して撮影された2枚の画像間で共通に存在する被写体上のいくつかの特徴的な点を用いる。以下、2枚の画像のうち、時間的に先に撮影された画像を画像t−1、時間的に後に撮影された画像を画像tと表記する。
【0014】
図3Aは、画像t−1と、画像t−1より時間的に後に撮影された画像tとを表す図である。
図3Bは、
図3Aに示す画像t−1、画像tから抽出された特徴点を表す図である。
図3Cは、
図3Bに示す画像t−1、画像tから抽出された特徴点の性質の種類を示す図である。
図3Dは、
図3Bに示す画像t−1、画像tから抽出された特徴点のマッチングを示す図である。ここで、特徴点とは、上述したように、画像処理によって検出可能な画像上の特徴的な点である。
【0015】
図3Aに示す画像t−1、画像t上のコントラストの高い画素が、
図3Bに示す特徴点として選択される。
図3Bに示すように、コントラストが極めて高いようなコーナーに存在する特徴点は画像間(画像t−1および画像t)で共通して抽出されやすいが、コントラストがそれほど高くないような特徴点は画像間(画像t−1および画像t)で共通して抽出されにくい。
【0016】
図3Bに示す特徴点には、画像間(画像t−1および画像t)で共通に写っている領域から得られた特徴点(
図3C中に○で示す特徴点)と、画像間(画像t−1および画像t)で共通に写っている領域から得られているが画像間(画像t−1および画像t)で位置が変わっている特徴点(
図3C中に△で示す特徴点)とがある。また、
図3Bに示す特徴点には、画像間(画像t−1および画像t)で共通に写っていない領域から得られた特徴点(
図3C中に×で示す特徴点)も存在する。
図1Bに示す特徴点のうちマッチング可能な特徴点は、画像間(画像t−1および画像t)で共通に写っている領域から得られた特徴点である(
図3C中に○で示す特徴点)。
【0017】
しかし、画像間(画像t−1および画像t)で共通して写っている領域から得られた特徴点の位置や比は、マッチング前には未知であるため、どの特徴点が画像間(画像t−1および画像t)で共通に写っている領域から得られた特徴点であるかも未知である。そのため、RANSAC(RANdom SAmple Consensus)などの手法を使い、画像t−1で抽出された特徴点と画像tで抽出された特徴点とからそれぞれ特徴点の組合せを選び出し、事前に設定した評価関数でそれぞれの特徴点の組合せの評価値を求める(
図3D)。この評価値は、画像間(画像t−1および画像t)で共通に写っている領域から得られている特徴点の組合せ(以下、inlierと表記する)であった場合に高くなりやすいように設計される。
【0018】
具体的には、画像t−1で抽出された特徴点と画像tで抽出された特徴点とから選んだ2組の特徴点の組合せから回転行列を生成する。そして、生成した回転行列が正しいかどうかを検算するために、選んだ特徴点の組合せ以外の画像t−1の特徴点を生成した回転行列で回転させ、回転させた後の画像t−1の特徴点が画像tの特徴点と一致するかを確認する。回転させた後の画像t−1の特徴点が画像tの特徴点と一致していれば、生成した回転行列が正しい画像間のブレ量(位置ずれの程度)を表している可能性が高い事が分かるため、この一致度合を評価値とした評価関数を設定する。この評価関数を用いて規定回数探索を行った段階で探索を打ち切り、その時点で最大の評価値を得たinlierを用いて回転行列を推定する。一般的にはこのような処理により特徴点ベースのマッチングが行われる。
【0019】
なお、このinlierは
図3C中で○に示す特徴点のような画像間で共通に存在する特徴点であり、主に撮影された画像内における遠景領域から得られる特徴点である。
【0020】
このように、特徴点ベースのマッチングは、画像間(画像t−1および画像t)で生じたブレ(位置ずれ)を、画像t−1と画像tで共通に写っている領域から得られる画像t−1の特徴点の分布と画像tの特徴点の分布とができるだけ一致するように反復的に探索を行う手法でり、画像t−1と画像tの共通に写っている領域から得られる特徴点(inlier)の分布が最も一致する時の移動量を画像間(画像t−1および画像t)のブレ量と推定する手法である。
【0021】
さらに、上記特許文献2には、ブレ補正のため画像処理ではなくセンサを用いた動き検出による処理方法が例示されているが、センサを用いた方法でも、高精度な手ブレ補正を行うことが困難であるという問題がある。以下これを説明する。
【0022】
上記特許文献2で例示されているジャイロなどのセンサを用いた動き検出では、センサの性能(感度、ダイナミックレンジ、計測軸など)と検出したい動きとの対応が取れていない場合はセンサが正しい値を算出できない。そのため、センサの性能と検出したい動きとの対応が取れていない場合にはブレ補正の精度低下が発生する。特にユーザーがカメラなどの撮影装置を移動しながら使用する場合には、撮影装置には歩行等に起因する衝撃が加わり、センサの出力が乱される。このようにセンサの出力が乱された場合、ブレ量として検出した値すなわちセンサ出力値が正しくないので、検出した値を用いて高精度なブレ補正はできない。
【0023】
本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、時間的に連続して撮影された複数の画像間のブレ量を高精度に算出する画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記目的を達成するために、本発明の画像処理装置の一態様は、時間的に連続して撮影された複数の画像間の位置ずれを補正するための画像処理装置であって、第1の画像の時間的に後に撮影された第2の画像の前記第1の画像に対する、互いに垂直な3軸の軸周り方向の回転位置ずれ量を示す回転移動量を算出する回転移動量算出部と、前記第1の画像および前記第2の画像から、第1切り出し画像および第2切り出し画像を生成する切り出し画像生成部と、前記第2切り出し画像の前記第1切り出し画像に対する平行方向の位置ずれ量を示す平行移動量を算出する平行移動量算出部と、算出された前記回転移動量および前記平行移動量に基づいて、前記第2の画像の前記第1の画像に対する位置ずれ量を示す移動量を決定する移動量決定部とを備え、前記切りだし切り出し画像生成部は、前記第1の画像の所定の第1範囲を切り出して、切り出した前記所定の第1範囲に撮影に用いた光学系の特性に基づいた歪み補正を行うことにより第1切り出し画像を生成し、かつ、算出された前記回転移動量を用いて前記第2の画像の前記3軸周り方向の回転位置ずれ量を補正した第1補正画像の前記所定の第1範囲に対応する第2範囲を切り出して、切り出した当該対応する第2範囲に前記歪み補正を行うことにより第2切り出し画像を生成する。
【0025】
本構成により、画像間の移動量算出を2段階に分けて算出することで、演算コストの上昇を抑制しつつも、時間的に連続して撮影された複数の画像間のブレ量を高精度に算出する画像処理装置を実現することができる。なお、本発明は、装置として実現するだけでなく、このような装置が備える処理手段を備える集積回路として実現したり、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを示す情報、データまたは信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データおよび信号は、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の通信媒体を介して配信してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、時間的に連続して撮影された複数の画像間のブレ量を高精度に算出する画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び撮影装置を実現することができる。それにより、魚眼像のような超広角画像かつその画像間の移動量が画像の変形が無視できないほど大きなものであっても、正確なブレ量の算出と補正を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図4は、本発明の実施の形態1における画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0030】
図4に示す画像処理装置1は、時間的に連続して撮影された複数の画像間の位置ずれを補正するための画像処理装置であって、処理対象の画像データを取得する画像取得部11と取得した画像データを処理する画像処理部12とを備える。
【0031】
画像処理部12は、回転移動量算出部22と、回転移動量判定部23と、平行移動量算出部24と、平行移動量判定部25と、移動量決定部26と、メモリ28とを備える。
【0032】
回転移動量算出部22は、画像取得部11から処理対象の画像データを取得し、処理対象となる2つの画像間(例えば第1の画像と第2の画像)に存在する回転移動量を算出する。具体的には、回転移動量算出部22は、撮影された第1の画像に対する第1の画像の時間的に後に撮影された第2の画像の前記第1の画像に対する、互いに垂直な3軸の軸周り方向の回転位置ずれ量を示す回転移動量を算出する。ここで、互いに垂直な3軸の軸周り方向の回転位置ずれ量とは、撮影に用いた光学系の光軸周りの回転角度、または撮影に用いた光学系の光軸に対して互いに垂直な2軸のうち少なくとも1つの軸周りの回転角度である。なお、回転移動量算出部22についての詳細説明は後述するためここでの説明は省略する。
【0033】
回転移動量判定部23は、平行移動量算出部24の前段に設けられ、回転移動量の算出が成功したか否かを判定する。具体的には、回転移動量判定部23は、回転移動量算出部22が回転移動量の算出に成功したか失敗したかを判断し、成功したと判断した場合には回転移動量算出部22の算出結果を平行移動量算出部24へ出力する。さらに具体的には、回転移動量判定部23は、回転移動量の算出が成功したと判定する場合には、その回転移動量を平行移動量算出部24に出力する。回転移動量判定部23は、回転移動量の算出が失敗したと判定する場合には、その回転移動量を、3軸周り方向の位置ずれがないことを示すゼロ値として平行移動量算出部24および移動量決定部26に出力し、移動量決定部26に、第1の画像と第2の画像との間の位置ずれ量を示す移動量を当該ゼロ値に決定させる。
【0034】
ここで、算出の失敗とは、回転移動量算出部22において移動量を求めることができなかった場合以外に、移動量は算出されたものの、その移動量とそれまでに算出済みの移動量との差が所定の値より大きい場合であったり、移動量算出の過程で求めた中間パラメータの値が適切でなかったり、といった場合を指す。なお、この判断の基準及び方法は、許容する誤差等によって適切に設定すればよく、上記に限定するものではない。回転移動量の算出に失敗した場合、平行移動量算出部24〜移動量決定部26までの処理は実施しないとしてもよい。その場合、移動量の算出を行った2つの画像間の移動量の設定は例えば以下のような方法を用いて設定するとしてもよい。
【0035】
1.回転移動量を0とする。
2.以前算出に成功した回転移動量を利用する。
3.以前算出にして移行した回転移動量と、次に算出に成功する回転移動量とから、例えば内挿処理などを行って推定する。
【0036】
平行移動量算出部24は、回転移動量算出部22により算出された回転移動量を用いて平行移動量を算出するための画像データを生成したのち、平行移動量算出処理を行って平行移動量を算出する。具体的には、平行移動量算出部24は、第1の画像の所定の第1範囲を切り出して、撮影に用いた光学系の特性に基づいた歪み補正をその切り出した所定の第1範囲に行うことにより第1切り出し画像を生成し、かつ、算出された回転移動量を用いて第2の画像の前記3軸周り方向の位置ずれを補正した第1補正画像の前記所定の第1範囲に対応する第2範囲を切り出して、前記歪み補正を切り出した当該対応する第2範囲に行って第2切り出し画像を生成する切り出し画像生成部を有し、第2切り出し画像の第1切り出し画像に対する平行方向の位置ずれ量を示す平行移動量を算出する。ここで、平行移動量算出部24は、回転移動量に含まれる誤差、すなわち処理対象の2つの画像間の位置の残差を小さくするために平行移動量を算出している。なお、平行移動量算出部24についての詳細説明は後述するためここでの説明は省略する。
【0037】
平行移動量判定部25は、平行移動量算出部24の後段に設けられ、平行移動量の算出が成功したか失敗したかを判断する。具体的には、平行移動量判定部25は、平行移動量の算出が成功したと判定する場合には、その平行移動量を移動量決定部26に出力する。一方、平行移動量判定部25は、平行移動量の算出が失敗したと判定する場合には、平行移動量を、平行方向の位置ずれがないことを示すゼロ値として移動量決定部26に出力する。
【0038】
ここで、算出の失敗とは、平行移動量算出部24において平行移動量を求めることができなかった場合以外に、平行移動量は算出されたものの、その平行移動量とそれまでに算出済みの平行移動量との差が所定の値より大きい場合であったり、平行移動量算出の過程で求めた中間パラメータの値が適切でなかったり、といった場合を指す。
【0039】
移動量決定部26は、算出された回転移動量および平行移動量に基づいて、第2の画像の第1の画像に対する位置ずれ量を示す移動量を決定する。具体的には、移動量決定部26は、算出された回転移動量と算出された平行移動量とを合成した合成移動量を、移動量として決定する。より具体的には、移動量決定部26は、回転移動量判定部23より出力された回転移動量と平行移動量判定部25により出力された平行移動量とを合成して2つの画像のブレ量(位置ずれ量)に相当する補正パラメータを最終的に決定する。
【0040】
なお、移動量決定部26は、平行移動量判定部25により、平行移動量算出部24が平行移動量の算出に失敗したと判定された場合、平行移動量は0であるとして回転移動量算出部22で算出した回転移動量を第1の画像と第2の画像との間の位置ずれ量を示す移動量(最終的な補正パラメータ)とする。また、移動量決定部26は、回転移動量判定部23により、回転移動量算出部22が回転移動量の算出に失敗したと判定された場合、第1の画像と第2の画像との間の位置ずれ量を示す移動量(最終的な補正パラメータ)を当該ゼロ値に決定する。
【0041】
以上のように、画像処理装置1は構成される。
【0042】
続いて、回転移動量算出部22の詳細構成等について説明する。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態1における回転移動量算出部22の詳細構成例を示すブロック図である。
【0044】
回転移動量算出部22は、
図5に示すように、特徴点抽出部221と、歪み除去部222と、特徴点マッチング部223と、誤差最小化部224と、メモリ28aとを備える。
【0045】
ここでは、2つの画像間に存在するブレ量(位置ずれ量)を示す移動量を、剛体モデルを定義して、その剛体に設定された3軸周りの回転によって表現する場合について説明する。また、移動量の算出に使用した画像データや算出結果、各種パラメータの少なくとも一回分は、図中のメモリ28aあるいは図示しないメモリ28などに記録されており、必要に応じて再利用することができるものとする。
【0046】
特徴点抽出部221は、第1の画像と第2の画像とからそれぞれ特徴点を抽出する。具体的には、特徴点抽出部221は、入力された画像データを解析して特徴点の抽出とその座標および特徴量を算出する。特徴点を抽出する方法については、
図3Aおよび
図3Bで説明したので、ここでは説明を省略するが、特徴点の算出を行う領域を画像全体とせず、局所領域とするような制限を設けてもよい。また、特徴点抽出部221は、抽出された特徴点は、
図6に示すような特徴点ごとの特徴量を格納するリストに記録する。このリストは、図示しないメモリ28に格納されている。ここで、
図6は、本発明の実施の形態1における特徴点を格納するリストの一例を示す図である。
【0047】
図6において、座標は、画像の左上を原点とした直交座標系を、特徴量はHarris値を、球面座標は後述の歪み補正後の座標を示している。また、周辺特徴は、対象の画素と周辺画素平均とのコントラスト、濃度(輝度)、色差等の比または差分値、対象画素の濃度勾配ベクトルの方向やベクトル強度を示している。なお、特徴点ごとの特徴量としては
図6に示すものに限定するものではなく、特徴点マッチングに有用なパラメータであればよい。また、演算コストと精度との兼ね合いから、算出したすべての特徴点を利用するのではなく、特徴量についてソートを行い、例えば上位100点の特徴点のみを使用するというようにしてもよい。
【0048】
歪み除去部222は、特徴点抽出部221により抽出された第1の画像の特徴点と第2の画像の特徴点とにおける撮影に用いた光学系の光学歪みに起因する光学歪みを除去する。具体的には、歪み除去部222は、特徴点抽出部221により抽出された第1の画像の特徴点と第2の画像の特徴点とにおける撮影に用いた光学系の光学歪みに起因する位置ずれを補正することにより、当該第1の画像の特徴点と当該第2の画像の特徴点との光学歪みを除去する。より具体的には、歪み除去部222は、抽出した特徴点の座標を、剛体モデルに従って補正する。つまり、歪み除去部222は、特徴点抽出部221により抽出された画像上(2次元)の特徴点を剛体モデルに従って3次元空間に展開(球面にマッピング)することで、画像に存在する形状の歪みを除去する。以下、この歪み補正処理について説明する。
【0049】
図7は、画像平面と入射光および球面マッピングによる歪み補正処理を説明するための図である。
【0050】
図7に示すように、レンズ64を通って画像データ平面63(例えばイメージセンサ)に到達する光線62は、仮想球面61上の点Qから発せられたとみなすことができる。例えば使用しているレンズ64が立体射影方式である場合、画像データ平面63上の点T(u、v)と点Qとの間には、焦点距離をf、OQとレンズ64の光軸であるZ軸とのなす角をθとすると、(式1)を満たす関係にある。そして、(式1)を変形すると、θは、(式2)のように表すことができる。
【0051】
√(u^2+v^2)=2f・tan(θ/2) (式1)
θ=2・arctan((√(u^2+v^2))/2f) (式2)
【0052】
ここで、T(u、v)がuv平面においてu軸となす角をφとすると、φは、(式3)のように表せる。仮想球面61上の点Qの座標は、仮想球面61の半径をRとすると、(式2)および(式3)から(式4)のように求めることができる。
【0053】
φ=arctan(v/u) (式3)
Q(x、y、z)=(R・sinθcosφ、R・sinθsinφ、R・cosθ) (式4)
【0054】
なお、仮想球面61の半径Rは簡単のため1とする単位球面として扱ってよい。
【0055】
被写体を撮影して得られる画像データは、元々3次元空間を切り取って2次元に投射したものである。そのため、上記の(式4)等に従って特徴点の座標を3次元空間に展開(球面にマッピング)することができる。また、特徴点の座標を3次元空間に展開することにより、3次元空間を切り取って2次元に投射したことで生じていた画像データ平面63に存在する形状の歪みを除去することが可能となる。
【0056】
なお、実際には、歪み除去部222は、
図6に示すようなリストに、補正後の3次元空間座標を追記したうえでメモリ28aに格納することにより、抽出した特徴点の座標を、剛体モデルに従って補正する。
【0057】
メモリ28aは、少なくともひとつ前の回転移動量算出に使用した特徴点データが記録されており、これが第1の画像の情報として読みだされる。なお、メモリ28aは、回転移動量算出部22に設けられていなくてもよく、メモリ28の一部領域であってもよい。
【0058】
特徴点マッチング部223は、歪み除去部222により光学歪みを除去された第1の画像の特徴点と第2の画像の特徴点とでマッチングを行う。具体的には、特徴点マッチング部223は、第1の画像の特徴点と第2の画像の特徴点とが入力され、これらの特徴点間のマッチング処理を行って2つの画像間の回転移動量(例えば回転角度などの3軸周り方向の位置ずれ量)を算出する。
【0059】
ここで、剛体モデルを用いた回転による位置合わせ(マッチング)の例を示す。
図8A〜
図8Cは、剛体モデルにおいて回転による位置合わせ(マッチング)を説明するための図である。
【0060】
図8Aは、剛体の一例である球体に対し、互いに直行する3軸を設定して、それらの軸回りの回転量をそれぞれθx、θy、θzとした例を示している。ここで、互いに直行する3軸回りの回転量は、3軸周り方向の位置ずれ量の典型例である。また、
図8B、
図8Cは、同じ形状、大きさの被写体(図では星型)を球面上の異なる位置に配置した例を示している。このような剛体モデルを用いた場合、
図8Bと
図8Cとは各軸回りの回転を多くとも一回ずつ行えば、被写体位置を一致させることができる。
【0061】
このように、特徴点マッチング部223は、各軸回りの回転により被写体位置を一致させるマッチング処理を行って、3軸周り方向の位置ずれ量(回転移動量)を算出する。
【0062】
なお、このマッチング処理は2つの画像の移動量を特徴点として利用する方法であればよく、
図8に示す例に限らない。例えばRANSACマッチング法などを使用するとしてもよい。
【0063】
誤差最小化部224は、特徴点マッチング部223により行われたマッチングが成功した第1の画像の特徴点とその特徴点に対応した第2の画像の特徴点との組を用いて、第2の画像の3軸周り方向の位置ずれを補正した際の誤差が最小になるように、回転移動量を算出する。
【0064】
一般的には、
図3Dで示すように、2つの画像それぞれに属する2つの特徴点の組の間でマッチングに成功するペア(inlier)が複数存在する。これらのinlierを用いてそれぞれのinlierを用いた時の誤差の総和が最小になるような一種の平均化処理を行う。誤差最小化部224はこれを実施する処理部である。誤差最小化部224が行う処理方法としては、レーベンバーグ・マルカート法や勾配法、平均化などを用いることができる。
【0065】
誤差最小化部224は、上記処理を行うことで3軸周り方向の位置ずれ量を示す回転移動量を算出できる。具体的には、誤差最小化部224は、回転移動量を示す回転行列R_rotを算出し、この回転行列R_rotから3軸回りの回転移動量(θx、θy、θz)を求めることができる。
【0066】
なお、誤差最小化部224は、
図5に示すように、特徴点マッチング部223の後段に設けられる場合に限らない。上記の処理方法を行うのであれば、特徴点マッチング部223の内部に設けられているとしてもよい。
【0067】
以上のように、回転移動量算出部22は構成される。
【0068】
続いて、平行移動量算出部24の詳細構成等について説明する。
【0069】
図9は、本発明の実施の形態1における平行移動量算出部24の詳細構成例を示すブロック図である。
【0070】
平行移動量算出部24は、
図9に示すように、第1補正画像生成部241と、切り出し画像生成部243と、パターンマッチング部244と、メモリ28bとを備える。以下では、回転移動量の算出が成功したとして説明する。
【0071】
第1補正画像生成部241は、算出された回転移動量を用いて、第2の画像の3軸周り方向の位置ずれを補正した第1補正画像を生成する。また、第1補正画像生成部241は、座標変換テーブル生成部242を有しており、座標変換テーブル生成部242に座標変換テーブルを生成させるとともに、座標変換テーブル生成部242に生成させた前記座標変換テーブルを用いて前記第1補正画像を生成する。
【0072】
座標変換テーブル生成部242は、算出された回転移動量に基づいて、第1補正画像の各画素と第2の画像の各画素との対応を示す座標変換テーブルを生成する。具体的には、座標変換テーブル生成部242は、回転移動量を用いて第2の画像を球面上で回転させたあと第1補正画像生成部241が補正画像を生成するときに、第2の画像の各画素と補正画像の各画素の対応を記述した座標変換テーブルを生成する。
【0073】
より具体的には、座標変換テーブル生成部242は、3次元空間(球面)に展開した第2の画像に対して、上述した回転行列R_rotを作用させるすなわち3次元空間で回転させることにより第1補正画像の3次元空間展開データを求める。座標変換テーブル生成部242は、算出した第1補正画像の3次元空間展開データと第2の画像の3次元空間展開データとにおいて、対応する光線の入射方向、それぞれの画像平面における画素位置の対応に変換してその位置関係を記述した座標変換テーブルを生成する。そして、第1補正画像生成部241では、座標変換テーブル生成部242により生成された座標変換テーブルを使用して、第2の画像の第1の画像に対する回転移動量を補正した第1補正画像を生成し、これをメモリ28bに記録する。
【0074】
切り出し画像生成部243は、第1の画像の所定の第1範囲を切り出し、撮影に用いた光学系の特性に基づいた歪み補正を切り出した所定の第1範囲に行って第1切り出し画像を生成し、かつ、第1補正画像の所定の第1範囲に対応する第2範囲を切り出して、撮影に用いた光学系の特性に基づいた歪み補正を切り出した当該対応する第2範囲に行って第2切り出し画像を生成する。具体的には、切り出し画像生成部243は、切り出した第1の画像の所定の第1範囲と、切り出した第1補正画像の対応する第2範囲との透視投影画像を生成することにより、第1の画像の所定の第1範囲および第1補正画像の対応する第2範囲に撮影に用いた光学系の特性に基づいた歪み補正を行った第1切り出し画像および第2切り出し画像を生成する。
【0075】
つまり、切り出し画像生成部243は、第1の画像および第1補正画像から予め設定された所定サイズの透視投影像を切り出すことで、撮影に用いた光学系の特性に基づいた歪み補正を行った第1切り出し画像および第2切り出し画像を生成する。
【0076】
なお、切り出された透視投影像はメモリ28bに記録しておき、再利用できるようにしてもよい。
【0077】
また、第2切り出し画像の生成は、座標変換テーブルを回転移動量の補正と使用している光学系特性の両方を含んだものとし、第1補正画像の生成を経ずに第2の画像から求めるとしてもよい。この場合、座標変換テーブル生成部242は、切り出し画像生成部243に含まれることとなる。また、座標変換テーブルに従って生成する画像は、回転移動量と光学歪みとの両方が補正された透視投影像となるため、第1補正画像生成部241は不要となる。
【0078】
ところで、この段階すなわち切り出し画像生成部243により第1切り出し画像および第2切り出し画像が生成された段階は、回転移動量によって位置合わせが行われた段階となっており、回転移動量の精度が十分であれば、お互い(第1切り出し画像および第2切り出し画像)がよく似た画像となっている。その場合には、剛体モデルに設定した回転移動量によって、画像平面の平行移動量を近似することで、切り出し画像(=平面)の光軸周りの回転と平行移動とが補正できることを示している。しかしながら、上述したように回転移動量の算出には最終段で誤差最小化部224が存在し、画像全体についての全体最適を行った結果を得るため、表示および視聴に用いる切り出し画像の移動量補正が最適化できているとは必ずしも言えない。そのため、前記切り出し画像間すなわち切り出し画像生成部243により生成された第1切り出し画像および第2切り出し画像間に存在する誤差を最小化するためのパターンマッチング処理をパターンマッチング部244で行う。
【0079】
パターンマッチング部244は、第1の画像と第1補正画像のそれぞれから切り出された2つの透視投影像(第1切り出し画像と第2切り出し画像と)に対してパターンマッチングを行って、2つの切り出し画像間に存在する平行移動量を算出する。具体的には、平行移動量算出部24は、第1切り出し画像に対して互いに直行する3軸を設定し、当該3軸のうち少なくとも1つの軸方向における第1切り出し画像に対する第2切り出し画像の平行方向の位置ずれ量を算出することで、平行移動量を算出する。
【0080】
なお、平行移動量の算出は、パターンマッチングに限られない。例えば、オブジェクトマッチングまたは特徴点マッチングを行うとしてもよい。また、例えば、POC(Phase Only Correlation)法、オプティカルフロー法、一方の切り出し画像の一部をさらに切り出し、これをテンプレートとするテンプレートマッチング法などを行うとしてもよい。
【0081】
以上のように、平行移動量算出部24は構成される。
【0082】
そして、以上のように構成された平行移動量算出部24は、第2切り出し画像の前記第1切り出し画像に対する平行方向の位置ずれ量を示す平行移動量を算出する。具体的には、平行移動量算出部24は、平行移動量を示すdelta=(Δu、Δv)を算出する。
【0083】
なお、上記では、説明を簡単にするために画像平面上の互いに直行する2軸についてのみ説明を行ったが、画像平面に垂直なz方向についてのマッチングを行うとしてもよい。z方向のマッチングを行う場合は、画像平面上のオブジェクトの大きさ、すなわちズーム倍率を変えることと等価になる。つまり、平行移動量算出部24は、第1切り出し画像に対して互いに直行する3軸のうち1軸を切り出し画像に垂直な方向の軸とし、当該垂直な方向の軸方向における第1切り出し画像に対する第2切り出し画像の平行移動量を、第1切り出し画像に対する第2切り出し画像の拡大率または縮小率を示す値として算出することになる。
【0084】
なお、メモリ28aは、平行移動量算出部24に設けられていなくてもよく、メモリ28の一部領域であってもよい。
【0085】
また、移動量決定部26は、例えば回転移動量算出部22により算出された回転行列R_rotと、平行移動量算出部24により算出されたdeltaとを合成して、2つの画像間(第1の画像および第2の画像)のブレ量(位置ずれ量)に相当する補正パラメータ(合成移動量)を最終的に決定する。
【0086】
以下、回転移動量算出部22と平行移動量算出部24とともに算出に成功した場合に移動量決定部26により決定される移動量(最終的な補正パラメータ)の意味ついて説明する。
図10は、本発明の実施の形態1における補正パラメータを用いて画像間の位置ずれを補正した画像について説明するための図である。
【0087】
図10に示す切り出し画像71は、回転移動量を示すR_rotによって、第2の画像の第1の画像に対する3軸周り方向の位置ずれが補正された第1補正画像の切り出し画像を示している。
図10に示す切り出し画像72は、回転移動量を示す回転行列R_rotと平行移動量を示すdeltaとを合成した補正パラメータ(合成移動量)によって、第2の画像の第1の画像に対する3軸周り方向の位置ずれが補正された切り出し画像を示している。
【0088】
つまり、切り出し画像72は、切り出し画像71にさらにdeltaによる補正を行って得る切り出し画像である。deltaによる補正とは、切り出し画像71の点Q(u、v)を(Δu、Δv)だけ平行移動した点P(u+Δu、v+Δv)に移動させることを意味する。このdeltaによる補正を切り出し画像71の全画素に適用することにより、平行移動後の切り出し画像72すなわち補正パラメータを用いて画像間のブレ量(位置ずれ)を補正した画像を得ることができる。
【0089】
このように、回転移動量を示すR_rotと平行移動量を示すdeltaとを別々に第2の画像に適用することで、第2の画像の第1の画像に対する位置ずれ(画像間のブレ量)を補正することができる。このように最終的な補正パラメータである移動量を回転移動量と平行移動量との合成処理により算出できるということは、切り出し画像71を作成する際の原点位置(=展開中心)をdeltaだけ移動させたうえで、すでに作成済みの座標変換テーブルを再利用できることを意味する。
【0090】
また、回転を含んだ場合の座標変換は一般には線形でない。そのため、パラメータに変更が生じた場合にはテーブルの再計算を必要とするが、本実施の形態に係る画像処理装置1では、回転と平行移動とを組み合わせることにより画像間のブレ量を補正することができるのでテーブルの再計算は不要とすることができる。なお、deltaを(式1)等を用いて3軸周りの回転移動量に変換して、座標変換テーブルを再計算することによって、上述の回転移動量に平行移動量を合成するとしてもかまわない。ただし、この場合はテーブルを再計算する再演算コストが必要となる。
【0091】
次に、以上のように構成された画像処理装置1の動きについて説明する。
【0092】
図11は、本発明の実施の形態1における画像処理装置の動きを説明するためのフローチャートである。
【0093】
まず、画像処理装置1は、画像取得部11で処理対象の画像データを取得する。
【0094】
次に、回転移動量算出部22は、画像取得部11から処理対象の画像データを取得し、処理対象となる2つの画像間(例えば第1の画像と第2の画像)に存在する回転移動量を算出する(S10)。具体的には、特徴点抽出部221は、第1の画像と第2の画像とからそれぞれ特徴点を抽出する(S101)。次いで、歪み除去部222は、特徴点抽出部221により抽出された第1の画像の特徴点と第2の画像の特徴点とにおける撮影に用いた光学系の光学歪みに起因する光学歪みを除去する(S102)。次いで、特徴点マッチング部223は、歪み除去部222により光学歪みを除去された第1の画像の特徴点と第2の画像の特徴点とのマッチングを行うことで、第1の画像および第2の画像間の回転移動量を算出する(S103)。
【0095】
次に、回転移動量判定部23は、回転移動量の算出が成功したか否かを判定する(S20)。具体的には、回転移動量判定部23は、回転移動量算出部22が回転移動量の算出に成功したか失敗したかを判断し(S201)、回転移動量の算出が成功したと判定する場合には(S201のYes)、その回転移動量を平行移動量算出部24に出力する。一方、回転移動量判定部23は、回転移動量の算出が失敗したと判定する場合には(S201のNo)、その回転移動量を、3軸周り方向の位置ずれがないことを示すゼロ値として(S202)平行移動量算出部24および移動量決定部26に出力する。
【0096】
次に、平行移動量算出部24は、回転移動量算出部22により算出された回転移動量を用いて平行移動量を算出するための画像データを生成したのち、平行移動量算出処理を行って平行移動量を算出する(S30)。具体的には、座標変換テーブル生成部242は、算出された回転移動量に基づいて、第1補正画像の各画素と第2の画像の各画素との対応を示す座標変換テーブルを生成する(S301)。第1補正画像生成部241は、座標変換テーブル生成部242により生成された座標変換テーブルを使用して、第2の画像の第1の画像に対する回転移動量を補正した第1補正画像を生成する(S302)。次いで、切り出し画像生成部243は、切り出した第1の画像の所定の第1範囲と、切り出した第1補正画像の対応する第2範囲との透視投影画像を生成することにより、第1切り出し画像および第2切り出し画像を生成する(S303)。次いで、パターンマッチング部244は、第1の画像と第1補正画像のそれぞれから切り出された2つの透視投影像(第1切り出し画像と第2切り出し画像と)に対してパターンマッチングを行って、2つの切り出し画像間に存在する平行移動量を算出する(S304)。
【0097】
次に、平行移動量判定部25は、平行移動量の算出が成功したか失敗したかを判断する(S40)。具体的には、平行移動量判定部25は、平行移動量の算出が成功したか失敗したかを判断し(S401)、平行移動量の算出が成功したと判定する場合には(S401のYes)、その平行移動量を移動量決定部26に出力する。一方、平行移動量判定部25は、平行移動量の算出が失敗したと判定する場合には(S401のNo)、平行移動量を、平行方向の位置ずれがないことを示すゼロ値として(S402)、移動量決定部26に出力する。
【0098】
次に、移動量決定部26は、算出された回転移動量および平行移動量に基づいて、第2の画像の第1の画像に対する位置ずれ量を示す移動量を決定する(S50)。
【0099】
以上のようにして、画像処理装置1は、時間的に連続して撮影された複数の画像間の位置ずれを補正するための補正パラメータである移動量を決定する。
【0100】
そして、画像処理装置1により決定させた移動量を用いて、時間的に連続して撮影された複数の画像間の位置ずれを補正した補正画像を生成する。
【0101】
以上、本実施の形態によれば、時間的に連続して撮影された複数の画像間のブレ量を高精度に算出する画像処理装置及び画像処理方法を実現することできる。例えば、従来方式では困難であった魚眼映像などの超広角映像であっても高精度にブレ量の算出を行うことができるので、決定したブレ量を用いて画像を補正することによって、視聴時の映像品質を向上させることが可能となる。つまり魚眼像のような超広角画像かつその画像間の移動量が画像の変形が無視できないほど大きなものであっても、正確なブレ量の算出と補正を行うことができるという効果を奏する。
【0102】
なお、本実施の形態の画像処理装置では、魚眼映像等の超広角映像に対して顕著な効果を奏するので、好ましい適用例であるがそれに限らない。画角70度程度以下の通常画角映像に対しても適用が可能である。その際は少なくとも前記第1と第2の画像との間に50%よりも広い面積の共通部分が必要であるため、通常画角での撮影には超広角撮影時よりも手ブレが抑制された状態で適用するという条件上で効果を奏することになる。また、本願を用いたブレ検出方式は、魚眼を含む超広角、通常画角ともに光学パラメータ(射影方式、焦点距離、イメージセンサのサイズ、画素数など)が必要である。
【0103】
また、画像処理装置1は、移動量決定部26により決定させた補正パラメータ(合成移動量)を用いて、時間的に連続して撮影された複数の画像間の位置ずれすなわち第2の画像の位置ずれを補正した補正画像を生成する補正画像生成部を備えるとしてもよい。また、その場合に、補正画像生成部により生成された補正画像はメモリ28に格納するとしてもよい。
【0104】
なお、上記では、画像処理装置1は、画像取得部11と画像処理部12とを備え、画像処理部12は、回転移動量算出部22と、回転移動量判定部23と、平行移動量算出部24と、平行移動量判定部25と、移動量決定部26と、メモリ28とを備えるとしたがそれに限られない。
図12に示すように、画像処理装置1の最小構成として、画像処理部12aは、回転移動量算出部22と、切り出し画像生成部243を有する平行移動量算出部24と、移動量決定部26とを有する画像処理部12aを備えていればよい。ここで、
図12は、本発明の実施の形態1における画像処理装置の最小構成を示す図である。
図4と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0105】
画像処理装置1は、この画像処理部12aを少なくとも備えることにより、時間的に連続して撮影された複数の画像間のブレ量を高精度に算出することができる。魚眼像のような超広角画像かつその画像間の移動量が画像の変形が無視できないほど大きなものであっても、正確なブレ量の算出と補正を行うことができるという効果を奏する。
【0106】
(実施の形態2)
実施の形態1では、回転移動量を回転移動量算出部22で画像処理を行うことにより算出していたが、それに限らない。実施の形態2では、回転移動量を回転移動量算出部で画像処理ではなくセンサを用いて算出する場合について説明する。
【0107】
図13は、本発明の実施の形態2における画像処理装置の回転移動量算出部の詳細構成例を示すブロック図である。
図5と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0108】
図13に示す回転移動量算出部32は、センサ情報取得部321と、フィルタ部322と、センサ情報演算部323と、メモリ28cとを備える。
【0109】
センサ情報取得部321は、図示しない撮影装置に装着されたセンサからの情報(センサ情報)を取得する。なお、センサは、物理的には、撮影装置に装着されているが、論理的にセンサ情報取得部321に構成されているとしてもよい。
【0110】
撮影装置に装着されたセンサは、少なくとも映像と同期し、映像のフレームレート以上のサンプル間隔でカメラの動きを計測する。回転移動量算出部32が回転移動量を算出することから、ここで用いるセンサは、角速度センサ、角加速度センサなどの回転成分を計測できるセンサが望ましい。ただし、加速度センサや方位センサなどを用いても近似的に回転角度を求めることが可能であるため、これらの種類のセンサを使用してもよい。
【0111】
フィルタ部322は、センサ情報の計測軸ごとにフィルタ処理を行う。ここで、フィルタ部322は、センサの種類や取得レートによってその処理内容が異なる。角速度センサ、角加速度センサを使用した場合はスパイクノイズなどを除去したうえでHPF(High Pass Filter)を作用させることが一般的である。逆に加速度センサの場合はLPF(Low Pass Filter)を用いることが一般的である。フィルタの特性はそれぞれ使用するセンサの特性(周波数感度、ダイナミックレンジなど)と検出したい動きの特性に応じて設定すればよい。センサ情報のサンプルレートが画像のフレームレートよりも高い場合は、複数のセンサ情報を用いてある画像を取得した時点の移動量を推定してもよい。
【0112】
メモリ28cは、フィルタ部322の結果と少なくとも一つ以上の過去のフィルタ処理後のセンサ情報とを保持する。なお、メモリ28cは、回転移動量算出部32に設けられていなくてもよく、メモリ28の一部領域であってもよい。
【0113】
センサ情報演算部323は、フィルタ部322の出力とメモリ28cに格納されているセンサ情報とから回転移動量を算出する。つまり、センサ情報演算部323は、センサ情報から回転移動量を抽出する処理を行う。もっとも単純な処理は最新のセンサ情報と時間的に1サンプル(画像と同期している)だけ前のセンサ情報との差分を、センサの計測軸ごとに求めることである。このようにして回転移動量を算出する。
【0114】
以上のように、回転移動量算出部32は構成される。
【0115】
なお、画像処理装置1が
図5に示す回転移動量算出部22の代わりに
図13に示す回転移動量算出部32で構成されている本実施の形態の場合でも、回転移動量判定部23は、実施の形態1と同様に、算出された回転移動量が、時間的にひとつ前に算出された値と比較して、所定の範囲内の差分であるかどうかなどによって回転移動量の算出が成功したか否かを判定すればよい。
【0116】
次に、以上のように構成された実施の形態2の画像処理装置の動きについて説明する。
【0117】
図14は、本発明の実施の形態2における画像処理装置の動きを説明するためのフローチャートである。なお、
図11と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0118】
すなわち、回転移動量算出部22は、画像取得部11から処理対象の画像データを取得し、処理対象となる2つの画像間(例えば第1の画像と第2の画像)に存在する回転移動量を算出する(S15)。具体的には、センサ情報取得部321は、画像取得部11から処理対象の画像データを取得するとともに、センサにより処理対象の画像に対するセンサ情報を取得する(S151)。次いで、センサ情報の計測軸ごとにフィルタ処理を行う(S152)。次いで、センサ情報演算部323は、フィルタ部322の出力とメモリ28cに格納されているセンサ情報とから回転移動量を算出する(S153)。
【0119】
次に、回転移動量判定部23は、算出された回転移動量が、時間的にひとつ前に算出された値と比較して、所定の範囲内の差分であるかどうかなどによって回転移動量の算出が成功したか否かを判定する(S20)。以降の処理は、実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0120】
以上のようにして、画像処理装置は、時間的に連続して撮影された複数の画像間の位置ずれを補正するための補正パラメータである移動量を決定する。そして、画像処理装置1により決定させた移動量を用いて、時間的に連続して撮影された複数の画像間の位置ずれを補正した補正画像を生成する。
【0121】
なお、本実施の形態の画像処理装置のように、回転移動量の算出に、センサを用いる場合は、実施の形態1で示した画像処理による回転移動量の算出と比べると画像全体の大局的な回転移動量ではなく、撮影装置そのものの動きを計測した結果から回転移動量を求めることになる。しかしながら、センサには、衝撃に弱い、慣性ノイズや他軸感度が重畳する、センサ特性と検出したい動きの乖離が大きいときは精度が低下する、などの物理的な制約があり、回転移動量のみで高精度な補正を行うには限界がある。そのため、実施の形態1と同様の方法すなわち平行移動量算出部24を用いて平行移動量を求め、算出された回転移動量と平行移動量とを合成することによって高精度な補正を行うことができるという効果を奏する。
【0122】
以上、本実施の形態によれば、時間的に連続して撮影された複数の画像間のブレ量を高精度に算出する画像処理装置、画像処理方法、プログラム及び撮影装置を実現することできる。例えば、従来方式では困難であった魚眼映像などの超広角映像であっても高精度にブレ量の算出を行うことができるので、決定したブレ量を用いて画像を補正することによって、視聴時の映像品質を向上させることが可能となる。つまり魚眼像のような超広角画像かつその画像間の移動量が画像の変形が無視できないほど大きなものであっても、正確なブレ量の算出と補正を行うことができるという効果を奏する。
【0123】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1または実施の形態2における画像処理装置を実装する装置として撮影装置を例に挙げて説明する。
【0124】
図15は、本発明の実施の形態3における、本願の画像処理装置を撮影装置に組み込んだ場合の構成を示すブロック図である。
図16は、本発明の実施の形態3における、再生装置の構成を示すブロック図である。
【0125】
図15に示す撮影装置8は、本願の画像処理装置1と、集光のためのレンズ部81と、イメージセンサ82と、補正画像生成部83と、エンコーダ部84と、外部メディア装置85と、センサ部86と、モニタ部87と、ネットワークインターフェース装置88とを備える。
【0126】
レンズ部81は、映像を構成する画像データを収集する。イメージセンサ82は、映像を構成する画像データを収集するためのものであり、レンズ部81によって集められた光から画像を生成して出力する。イメージセンサ82は、例えばCCDやCMOSなどで構成される。
【0127】
センサ部86は、センサを備え、画像処理装置1にセンサ情報を出力する。センサ部86は、画像処理装置1が回転移動量算出部32を構成し、センサ情報を利用する場合に設置され、画像処理装置1が回転移動算出部22を構成し、画像処理によって回転移動量を算出する場合には設置されないとしてもよい。
【0128】
画像処理装置1は、実施の形態1または実施の形態2で説明した方法によって画像処理部12により決定された補正パラメータ(移動量)とともに、取得した画像データを補正画像生成部83に出力する。
【0129】
補正画像生成部83は、補正パラメータ(移動量)に基づき、補正画像(表示・記録用の切り出し画像)を生成する。ここで、補正画像生成部83は、画像処理装置1の外部にあるとしているが、上述したように、画像処理装置1が備えるとしてもよい。
【0130】
モニタ部87は、補正画像生成部83が生成した補正映像(補正画像)をリアルタイムに確認する。なお、モニタ部87は、補正画像生成部83が生成した補正映像(補正画像)をリアルタイムに確認しないとする場合には、設置しなくてもよい。また、モニタ部87の代わりに、撮影装置8に図示しない映像出力用の端子などを設置して外部モニタに表示するとしてもよい。
【0131】
エンコーダ部84は、符号化された動画データを生成する。具体的には、エンコーダ部84は、補正画像生成部83が生成した補正映像を、H.264などの動画像圧縮処理(符号化)を行って、外部メディア装置85やネットワークインターフェース装置88に出力する。ここで、エンコーダ部84は、音声情報が存在する場合には映像との同期をとりながら合わせて符号化する。なお、エンコーダ部84の前段に、エンコーダ部84の処理する対象として、イメージセンサ82が生成した画像と補正画像生成部83が生成した画像の少なくとも一方を選択する選択手段を備えるとしてもよい。
【0132】
外部メディア装置85は、例えばSDカードやハードディスク、DVDなどのメディアにエンコーダ部84により圧縮された補正映像(補正後切り出し映像)を記録する。
【0133】
また、ネットワークインターフェース装置88は、エンコーダ部84によりされた補正映像を、ネットワークを通じて配信するとしてもよい。
【0134】
なお、エンコーダ部84は、補正映像(補正後切り出し映像)をエンコードするのみでなく、画像処理装置1が決定した補正パラメータ(移動量)とイメージセンサ82が取得した映像データと同期をとった上でパッキングしたデータソースをエンコードするとしてもよい。この場合は圧縮された映像データをメディアあるいはネットワーク配信によって、
図16に示す再生装置に移動させる。
【0135】
図16に示す再生装置9は、少なくとも圧縮された映像データを読み取るための外部メディア装置85または圧縮された映像データを受信するためのネットワークインターフェース装置88と、バッファ91と、デコーダ部92と、補正画像生成部83とを備え、圧縮された映像データのデコードと補正パラメータ抽出とを同時に実行し、ブレ補正を行った映像データを生成して出力する機能を持つ。
【0136】
なお、再生装置9は、撮影装置8に構成されているとしてもよい。また、再生装置9は、画像処理装置1の前段に構成されているとしてもよいし、画像取得部11に再生装置9が構成されるとしてもよい。
【0137】
さらに、画像処理装置1の画像取得部11に再生装置9が構成され、画像処理装置1の前段に撮影装置8が構成されているとしてもよい。その場合、画像取得部11は、符号化された動画データ(符号化画像)を取得し、復号された複数の画像を画像処理部に出力する。
【0138】
なお、ネットワークインターフェース装置88はいわゆるインターネットに限定せず、USBやIEEE1394などを用いてもよい。
【0139】
以上、本発明によれば、ブレ量を高精度に算出する画像処理装置を実現することができる。
【0140】
以上、本発明の画像処理装置、それを備えた撮影装置、画像処理方法、画像処理プログラムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。