【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1:モノクローナル抗体(SSVmAb)の製造
抗原物質の製造
抗原物質としては、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドおよびKLHの結合体を使用した。
【0054】
抗原物質の調製においては、まず、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、Fmocペプチド固相合成法(製造装置;ABI430型アプライバイオシステムズ社製)により合成した。さらに、上記ペプチドおよびKLH(SIGMA社製)の結合体は、上記ペプチド 5mg、KLH 約20mgおよびグルタルアルデヒド 30μg(片山化学工業株式会社)をリン酸緩衝液(pH 8.0)中、室温で約6時間撹拌して合成した。
【0055】
ハイブリドーマの製造
免疫
PBS中に抗原物質を溶解させた溶液 0.8mL(抗原物質濃度:0.5mg/mL)とフロイトコンプリートアジュバンド(和光純薬株式会社製)0.8mLとを混合し、懸濁液(抗原濃度:0.25mg/mL)を得た。次に、この懸濁液0.2mLをBALB/cマウスに腹腔内投与した。さらに、この懸濁液を2週間毎に同量にてマウスに投与した。そして、投与開始から16週間後、PBS中抗原を溶解させた溶液 0.2mL(抗原濃度:600〜1000mg/mL)をマウス腹腔内へ最終投与した。なお、投与の際には、眼底静脈より採血を行ってELISAにより抗体価を測定した。最終投与の4日後、全採血を行い、得られた血液を遠心分離(2000rpm、20分)し、抗血清を得て以下の実験のコントロール抗血清として用いた。また、全採血後、ラットより脾臓を摘出し、得られた脾細胞を以下の細胞融合に用いた。
【0056】
細胞融合
上記の脾細胞およびミエローマ細胞(P3X63-Ag.8.653)を脾細胞:ミエローマ細胞=10:1〜10にて混合して遠心分離(1500rpm,5分)した。遠心分離した後、アスピレーターを用いて上清を除去し、得られた細胞ペレットに37℃のポリエチレングリコール4000(50%PBS溶液)1mLを1分間かけて添加して混合液とした。この混合液を37℃にて1分間静置した後、37℃のIMDM培地(計9mL)を30秒毎に1 mLずつ加えた後、遠心分離(1500rpm、5分)した。遠心分離後、上清を吸引除去し、37℃の15%FCS(JRH BIOSCIENCES製)含有IMDM(GIBCO製)培地を適量添加した。得られた懸濁液を96ウェル培養プレートに100mLずつ分注を行い、37℃/5%CO
2インキュベーターにて1日培養した。さらにHAT培地(HAT粉末(HAT MEDIA SUPPLEMENT(×50)、SIGMA製)を無血清IMDM培地10mLに溶かし、10%FCS含有IMDM培地にて50倍希釈したものである。)を100mL添加し、37℃/5%CO
2インキュベーターにて培養した。HAT培地の交換は2〜3日毎に行い、10日後にはHT培地(HT粉末(HT MEDIA SUPPLEMENT、SIGMA製)を無血清IMDM培地10mLに溶かし、10%FCS含有IMDM培地にて50倍希釈したものである。)に切り替え、3日間、37℃/5%CO
2インキュベーターにて培養を行った。以後2〜3日ごとに培地(HT培地)の交換を行った。細胞増殖を顕微鏡により確認した後、培養上清(約100 mL)を回収した。この培養上清を用いて、抗体価測定によるハイブリドーマのスクリーニングを行った。
【0057】
ハイブリドーマ細胞のスクリーニング
抗体価測定
上記抗原物質(5mg)を含む緩衝液(Baicarbonate buffer:100 mM NaHCO
3-NaOH、pH9.2〜9.5、ペプチド濃度:1μg/mL) を1ウェル当り50μLずつ96ウェル平底プレートへ添加し、室温にて2時間静置してコーティングした。プレートを洗浄バッファー(PBST)にて3回洗浄し、ブロッキングバッファー(3%スキムミルク1%BSA、PBS)を200〜250μL/ウェルにて加え、4℃にて一昼夜反応させた後、3回洗浄した。そして、ハイブリドーマの培養上清を100μL/ウェルにて加え、37℃にて4時間または4℃にて一昼夜反応させた。プレートを3回洗浄した後、希釈バッファー(10 mM Tris-HCl ( pH 8.0 )、0.9 % ( W/V ) NaCl、0.05 % ( W/V ) Tween20)にて10000倍希釈したビオチン標識抗マウスIgG(Biotion-labeled anti-mouse IgG 、SIGMA)を50μL/ウェルにて加え、室温にて2時間反応させた。その後6回洗浄した後、希釈バッファーにて1000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識ストレプタリジン(Streptaridin)を50μL/ウェルにて加え、室温にて1〜2時間反応させた。その後6回洗浄を行い、蛍光基質バッファー(Attophos substrate buffer、ロシュダイアグノスティックス社製)を50μL/ウェル加えてプレートを遮光し発色させた。蛍光強度はCytoFluorII(パーセプティブ社製)にて測定した。
【0058】
ハイブリドーマの選別
上記抗体価測定にて陽性の結果を示したウェル(1×10
5細胞/mL)に15%FCS10%HCF(Hybridoma cloning factor、オリジン社製)含有IMDM培地を加えて、約200細胞/ウェル となるように96ウェル培養プレートに分注し、37℃5%CO
2インキュベーターにて培養を行った。そして、上記と同様に抗体価測定を行い、抗体産生量の多いハイブリドーマを選択した。
【0059】
さらに限界希釈を行い、選択したハイブリドーマが0.5〜1細胞/ウェルになるように15%FCS10%HCF含有IMDM培地で希釈し、37℃/5%CO
2インキュベーターにて約3〜4日間培養した後、上記と同様に抗体価測定を行い、抗体産生量の多いハイブリドーマを選択した。さらに限界希釈を繰り返し、上記抗原物質に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得た。このうち、抗体価が最も高いハイブリドーマを選択してMouse-Mouse hybridoma SSV-C93-3と命名した。
【0060】
モノクローナル抗体の取得
ハイブリドーマMouse-Mouse hybridoma SSV-C93-3は、15%FCS含有RPMI培地を用いて培養した(1×10
6細胞/mL)。次に、ハイブリドーマ培養液を回収し、死細胞片を除くためにフィルターでろ過した。次に、終濃度40%となるように、培養上清に硫酸アンモニウムを加え、40℃で1時間撹拌した。次に、遠心分離(3000g、30分、4℃)を行い、上清を捨て沈殿を回収した。この沈殿を上記培養上清の1/10量のPBSで溶解し、PBSを外液として一晩透析した。
次に、上記沈殿を20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)で2倍希釈し、1Mトリス-HCl緩衝液とともに、HiTrapNHS活性化カラムに添加した。さらに、0.1Mグリシン−HCl溶液(pH2.7)で抗体の溶出し、フラクションチューブに回収した。
【0061】
試験例1:SSVmAbのアイソタイプの同定
実施例1のモノクローナル抗体(SSVmAb)のアイソタイプを同定するため、Mouos Monoclonal Antibody Isotyping Reagents(シグマ)を用いたアイソタイプ同定試験を行った。
結果は、
図1に示される通りであり、IgG1が最も高い値を示した。
【0062】
また、マウスIgG1(eBioscience社)および実施例1のモノクローナル抗体(SSVmAb)を2−メルカプトエタノールで還元し、SDS-PAGEで処理したところ、いずれも同様の位置 (50 KD、25KD)に重鎖および軽鎖に相当するバンドが確認された。一方、マウスIgG1の代わりにマウスIgM(eBioscience社)を用いて同様の実験を行ったところ、同様のバンドは確認されなかった。
図1およびSDS-PAGEの結果から、実施例1のモノクローナル抗体(SSVmAb)のアイソタイプはIgG1であることが確認された。
【0063】
試験例2: SSVmAbのコアヒストンに対する親和性の確認
WO2006/025580号公報には、免疫抑制に用いることができ、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチドと結合する抗H1モノクローナル抗体として、ハイブリドーマ16G9(受託番号FERM BP−10413)の産生するモノクローナル抗体(16G9mAb)が報告されている。
そこで、WO2006/025580号公報に記載の抗体(16G9mAb)を参考例1とし、実施例1のモノクローナル抗体(SSVmAb)との抗原に対する親和性の比較を行った。
抗原としては、参考例1(16G9mAb)の抗原であるヒストンH1、およびヒストンH1類似抗原であるコアヒストンH2A、H2B、H3およびH4を選択した。
【0064】
ヒストンH1またはコアヒストンと、SSVmAbとの親和性をELISAで決定した。
96wellマイクロプレートをヒストンH1、H2A、H2B、H3またはH4でコートした。それぞれのヒストンは、100mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)に溶解させたものを用いた。そのプレートをPBS-tween20(0.05%)で洗浄し、3%スキムミルクと1%BSAで1時間ブロッキングした。SSVmAb 5μg/mLを各wellに添加し、1時間インキュベーションした。結合したSSVmAbをペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートanti mouse IgG1 Ab(シグマ)を用いて検出し、1時間インキュベーションした。結合したSSVmAbをABTS[2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-sulfonic acid) ]基質溶液を用いた検出し、Multiskan Ascent(Thermo Fisher Scientific Inc., Waltham, MA)を用いて405nmの吸光度を測定した。
【0065】
結果は、
図2および3に示される通りであった。
図2に示される通り、実施例1(SSVmAb)では、ヒストンH1に対する親和性よりも、ヒストンH2A、H2B、H3またはH4に対する親和性が高かった。
一方、
図3に示される通り、参考例1(16G9)では、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4に対する親和性よりも、ヒストンH1に対する親和性の方が高かった。
【0066】
試験例3:MLR試験
無処理の
DAラット由来の脾臓リンパ球(応答細胞)およびマイトマイシンC(協和発酵工業株式会社製)処理を行った
LEWラット由来の脾臓リンパ球(刺激細胞)を用いた。応答細胞は10%FCS−RPMI培地にて5×10
5 細胞/mLに調整し、刺激細胞は10%FCS−RPMI培地にて8×10
6 細胞/mLに調整した。この応答細胞懸濁液および刺激細胞懸濁液をそれぞれ100μLを96穴丸底プレート(Nunc Brand Products社製)に播種した後、混合培養開始時に参考例1のモノクローナル抗体16G9mAb(0.1、2、4または6μg/mL/ウェル)または実施例1のモノクローナル抗体SSVmAb(4μg/mL/ウェル)を添加し、37℃,5%CO
2/95% airの条件下にて3.5日以上培養した。また、陽性対照として、免疫抑制剤タクロリムス(FK506:藤沢薬品社製、1nM/ウェル)を添加した。さらに、培養終了15時間前にブロモデオキシウリジン(BrdU)10μLを添加した。そして、BrdUラベリング&ディテクションキットIII(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて、細胞内DNAに取り込まれたBrdU量を指標として、免疫抑制物質により処理された細胞の増殖能を測定し、免疫抑制レベルの指標とした。
【0067】
結果は、
図4に示される通りであった。
実施例1(SSVmAb)では、BrdU量取り込みを示す吸光度は、参考例1(16G9mAb)およびタクロリムス(FK506)のそれより低かった。特に、実施例1(SSV mAb)の吸光度0.552±0.114(平均±S.E.)と、同添加量(4μg/mL/ウェル)の参考例1(16G9mAb)の吸光度1.351±0.389(平均±S.E.)とを比較すると、実施例1の平均値は、参考例1のそれの約41%程度であった。
【0068】
試験例4:モノクローナル抗体(SSVmAb)T細胞に対する反応性の確認
以下の手法により、C57BL/6マウス(5週齢、メス、日本チャールズリバー社製)より脾臓を摘出し、全脾細胞を調製した。
まず、5 mlのRPMI1640培地(Sigma-Aldrich社製R-8758)を入れた5 ml培養ディッシュ(BD Bioscience社製FALCON 351007)中で脾臓を解剖用ハサミとピンセットにて良くほぐして脾細胞を懸濁後、15 ml遠心チューブ(BD Bioscience社製FALCON 352096)に移した。続いて5 mlディッシュ上をphosphate-buffered saline(PBS, Invitrogen社製20012-027)にて数回洗浄し、これらも先の細胞懸濁液に加えて静置後、上清を別の15 ml遠心チューブに回収した。さらに残渣の不溶性脾臓組織にも再びRPMI1640培地5 mlを加えて静置後上清のみを回収し、これと上記の細胞懸濁液を合わせて1,500 rpm, 5 minの遠心分離を行った。回収した細胞にlysis buffer(150 mM NH
4Cl/15 mM NaHCO
3/0.1 mM EDTA-Na
2, pH 7.3)2 mlを加えてタッピングにより溶血後、PBS 10 mlを加えて1,500 rpm, 5 minにて3回遠心洗浄した細胞を全脾細胞とした。
【0069】
次に、以下に記載の手法に準じて、本脾細胞から全T細胞をPan T Cell Isolation Kit, mouse(Miltenyi Biotec社製130-090-861)を用い、磁気ソーティング(MACS)により精製した。
まず、脾細胞をMACS buffer (0.5% bovine serum albumin (BSA, ナカライテスク社製08777-36)/PBS)にて 5 x 10
7 cells/200μlの割合で懸濁し、50μl Biotin-antibody cocktail / 5 x 10
7 cellsを添加して4 ℃, 10 minインキュベートした。これを150 μl MACS buffer / 5 x 10
7 cellsに懸濁後、100μl anti-biotin micro beads /5 x 10
7 cellsを添加して4 ℃, 15 minインキュベートした。これにMACS buffer(10 ml)を添加して1500 rpm, 5 min遠心洗浄後、回収細胞をMACS buffer 500μlに懸濁した。MACSカラム (MSカラム、Miltenyi Biotec社製130-042-201) をマグネット(MiniMACS separation Unit、Miltenyi Biotec社製130-090-312)にセットして500μl MACS bufferにてカラムを平衡化後、上述の細胞懸濁液を供した。素通り画分500μlおよびその後のMACS bufferによるカラム洗浄画分(1.5 ml)を回収して精製未刺激T細胞とした(純度約97%)。
【0070】
上記の未刺激と16G9 mAbまたはSSV mAbとの反応性をフローサイトメトリー(FACS)により解析した。
まず、各T細胞サンプル(1 x 10
6 cells)を89μlのFACS buffer (0.5% FBS/PBS/0.02% NaN
3)に懸濁後、1μgのanti-mouse CD16/32-blocks Fc binding(eBioscience社製14-0161-85)を加えて4℃, 20 minインキュベートした。これに1次抗体として16G9 mAbまたはSSV mAb (100μg/ml)10μlを加えて4℃, 60 minインキュベートした。FACS bufferにて細胞を2回遠心洗浄後、2次抗体(Biotin-conjugated rat anti-mouse IgM mAb(eBioscience社製13-5780-85)またはBiotin-conjugated rat anti-mouse IgG1 mAb(BD Biosciences社製553441)、各1μg/ml)を100μl加えて4℃, 30 minインキュベートした。再びFACS bufferにて細胞を2回遠心洗浄後、Streptavidin-PE-Cy7(BD Biosciences社製556463、 1μg/ml)を100μl加え、これにFITC-conjugated rat anti-mouse CD3 mAb(BD Biosciences社製553062)を終濃度1 μg/mlになるように添加して4℃, 30 minインキュベートした。FACS bufferにて2回遠心洗浄および40 μmセルストレーナー(BD Bioscience社製FALCON 352340)にてろ過処理後、各サンプルをFACSCaliburフローサイトメーターおよびCellQuestソフトウェア(BD Bioscience社製)に供して16G9 mAbまたはSSV mAb陽性/CD3陽性T細胞数を解析した。
【0071】
結果は、
図5に示される通りであった。
参考例1(16G9 mAb)および実施例1(SSV mAb)を比較すると、CD3陽性T細胞に対する反応性に有意差は認められず、これら抗体は同等の反応性を示した(student t-test、p<0.05)。
【0072】
試験例5:SSV mAbによるダウンレギュレーションのターゲットの特定
実施例1(SSV mAb)によりダウンレギュレーションされる候補タンパク質をプロテオーム解析にて7種同定した。
そして、7種の候補タンパク質うち、ATP合成酵素が実施例1(SSV mAb)のターゲット抗原であることを以下の手法により確認した。
まず、サーモフィッシャー社のAccell siRNAキットを用いて、ミトコンドリアATP合成酵素のノックダウンされたBalb/cマウス由来のT細胞を取得した。
次に、試験例2の手法に準じて、得られたT細胞を用いて、実施例1(SSV mAb) を試験物質としてMLR試験を行った。
ここで、対照試薬としてはIsotype IgG1(eBioscience社)を用いた。また、コントロール試験として、ATP合成酵素をノックダウンしていないマウス由来のT細胞を用いた同様の試験を行った。
【0073】
結果は、
図6AおよびBに示される通りであった。
図6Aに記載の通り、ATP合成酵素をノックダウンしない場合には、実施例1(SSV mAb)は、Isotype IgG1と比較して有意に細胞増殖を阻害していた。
一方、
図6Bに記載の通り、ATP合成酵素をノックダウンした場合には、細胞増殖の阻害に関し、実施例1(SSV mAb)とIsotype IgG1との間には有意差は認められなかった。
図6AおよびBでは、ATP合成酵素のノックダウンによりSSV mAbの免疫抑制活性が低下しており、SSV mAb が、免疫抑制の際に、ATP合成酵素活性をダウンレギュレーションしていることが示唆される。
【0074】
試験例6:SSV mAbの軽鎖および重鎖の可変領域配列の同定
ハイブリドーマcDNAの合成
FastPure RNA Kit(TaKaRa社製)を使って、試験例1で取得したハイブリドーマ(Mouse-Mouse hybridoma SSV-C93-3)1.6×10
7cellsからtotal RNAを調製した。Poly (A)
+ Isolation Kit from Total RNA(NIPPON GENE製)を使って、240 μgのtotal RNAからmRNAを調製した。Etachinmate(NIPPON GENE社製)を使ってエタノール沈殿を行い、mRNAを沈殿した。75% エタノールで洗浄した後、mRNAを乾燥した。これにRNase free waterを10 μL加え、mRNAを溶解した。得られたmRNA溶液は-80℃で保存した。 SMARTer RACE cDNA Amplification Kit(Clontech社製)を使って、1 μgのSSVハイブリドーマmRNAから5’-RACE用のcDNAを合成した。得られたcDNA溶液は-20℃で保存した。
【0075】
SSV mAb 軽鎖および重鎖における相補性決定領域(CDR)の同定
マウスIgG1 重鎖定常領域の塩基配列をもとに、プライマー 5’- CAC CAT GGA GTT AGT TTG GGC AGC AG -3’ (配列番号12)を作製した。マウス軽鎖κ定常領域の塩基配列をもとにプライマー 5’- CAC GAC TGA GGC ACC TCC AGA TG -3’(配列番号13)を作製した。それぞれのプライマーとUniversal Primer A Mix(SMARTer RACE cDNA Amplification Kit付属プライマー)を用いて、cDNAをテンプレートとした5'-RACEを行った。RACE反応はAdvantage2 PCR Kit(Clontech社製)を用いた。反応液をアガロース電気泳動し、約600 bpの重鎖5’-RACE産物および約550 bpの軽鎖5’-RACE産物を、E.Z.N.A. Gel Extraction Kit(OMEGA bio-tek社製)を用いてゲルから精製した。これをpGEM-T Easy Vector(Promega社製)に連結し、Competent high E.coli DH5α(TOYOBO社製)を形質転換した。得られた形質転換体から、E.Z.N.A. Plasmid Miniprep KitI(OMEGA bio-tek社製)を用いてプラスミドを調製した。調製したプラスミドをテンプレートとして、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いてサイクル反応を行った。
【0076】
次に、DNAシークエンサー(Applied Biosystems製)を用いて、軽鎖および重鎖可変領域の塩基配列を解析した。
その結果、軽鎖可変領域の塩基配列は、配列番号5の第67番〜第384番で表されるものであった。
また、重鎖可変領域の塩基配列は、配列番号10の第58番〜第423番で表されるものであった。
なお、翻訳開始コドンとKabatらの方法により決定したFR(定常領域)1の位置に基づき、配列番号5の第1番〜第66番は軽鎖シグナルペプチドの塩基配列であり、および配列番号10の第1番〜第57番は重鎖のシグナルペプチドの塩基配列であると推定した。
【0077】
次に、得られた塩基配列から軽鎖および重鎖の可変領域のアミノ酸配列を推定し、Kabatらの方法に従ってCDR領域を同定した。
【0078】
その結果、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6の第23番〜第128番で表されるものであった。ここで、配列番号6の第1番〜第22番は軽鎖シグナルペプチドのアミノ酸配列である。
また、軽鎖可変領域可変領域のアミノ酸配列のうち、CDR1はRASSSVSYMH(配列番号2)で表わされ、CDR2はATSNLAS(配列番号3)で表わされ、CDR3はQQWSSNPWT(配列番号4)で表わされることを確認した。
【0079】
また、重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号11の第20番〜第141番で表されるものであった。ここで、配列番号11の第1番〜第19番は重鎖シグナルペプチドのアミノ酸配列である。
また、重鎖可変領域のアミノ酸配列のうち、CDR1はGYNMN(配列番号7)で表わされ、CDR2はNINPYYGSTSYNQKFKG(配列番号8)で表わされ、CDR3はSPYYSNYWRYFDY(配列番号9)で表わされることを確認した。