特許第5960597号(P5960597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メモリアル スローン−ケタリング キャンサー センターの特許一覧 ▶ ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システムの特許一覧

<>
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000002
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000003
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000004
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000005
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000006
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000007
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000008
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000009
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000010
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000011
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000012
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000013
  • 特許5960597-癌治療のための併用免疫療法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960597
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】癌治療のための併用免疫療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20160719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   A61K39/395 N
   A61P35/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】28
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-532337(P2012-532337)
(86)(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-506690(P2013-506690A)
(43)【公表日】2013年2月28日
(86)【国際出願番号】US2010051008
(87)【国際公開番号】WO2011041613
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年9月30日
(31)【優先権主張番号】61/247,438
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン−ケタリング キャンサー センター
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ アリソン
(72)【発明者】
【氏名】パドマニー シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ エー.ケザダ
(72)【発明者】
【氏名】フ チフイ
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−277242(JP,A)
【文献】 特表2002−531416(JP,A)
【文献】 特表2008−543774(JP,A)
【文献】 特開2006−265155(JP,A)
【文献】 Cellular Immunology,2003年,Vol.225, No.1,p.53-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00 − 39/44
A61K 45/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を治療するための医薬であって、
(a)T細胞抑制受容体に対する遮断剤であって、抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体及び抗PD−L1抗体からなる群から選択される、遮断剤、及び
(b)誘導性共刺激分子(ICOS)に対するアゴニストであって、抗ICOS抗体及びICOSリガンドからなる群から選択される、アゴニスト
の組み合せを含んで成り、前記医薬は、前記T細胞抑制受容体に対する遮断剤と前記ICOSに対するアゴニストとが同時又は連続的に患者に投与されるように用いられることを特徴とする、医薬。
【請求項2】
前記T細胞抑制受容体に対する遮断剤が抗CTLA−4抗体及び抗PD−1抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記ICOSに対するアゴニストが抗ICOS抗体である、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
前記ICOSに対するアゴニストがICOSリガンドである、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項5】
前記ICOSリガンドが可溶性である、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
前記ICOSリガンドが細胞の表面に発現される、請求項4に記載の医薬。
【請求項7】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
前記腫瘍細胞が放射線照射される、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
前記腫瘍細胞が前記患者から外科的に取り出されたものである、請求項7に記載の医薬。
【請求項10】
前記T細胞抑制受容体に対する遮断剤又は前記ICOSに対するアゴニストが、ウイルスベクターによりコードされる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項11】
前記ICOSリガンドがウイルスベクターによりコードされる、請求項4〜9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項12】
患者における癌の治療に用いるための医薬組成物であって、
(a)抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体及び抗PD−L1抗体からなる群から選択されるT細胞抑制受容体に対する遮断剤、及び
(b)抗ICOS抗体及びICOSリガンドからなる群から選択される誘導性共刺激分子(ICOS)に対するアゴニスト
を含んで成る、医薬組成物。
【請求項13】
前記T細胞抑制受容体に対する遮断剤が抗CTLA−4抗体及び抗PD−1抗体からなる群から選択される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ICOSに対するアゴニストが抗ICOS抗体である、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記ICOSに対するアゴニストがICOSリガンドである、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ICOSリガンドが可溶性である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ICOSリガンドが細胞の表面に発現される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記腫瘍細胞が放射線照射される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記腫瘍細胞が前記患者から外科的に取り出されたものである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記T細胞抑制受容体に対する遮断剤又は前記ICOSに対するアゴニストが、ウイルスベクターによりコードされる、請求項12〜20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記ICOSリガンドがウイルスベクターによりコードされる、請求項15〜20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
癌の治療に用いるための医薬組成物であって、
(a)T細胞抑制受容体に対する遮断剤であって、抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体及び抗PD−L1抗体からなる群から選択される、遮断剤、及び
(b)誘導性共刺激分子(ICOS)に対するアゴニストであって、抗ICOS抗体及びICOSリガンドからなる群から選択される、アゴニスト
をコードするウイルスベクターを含んで成る、医薬組成物。
【請求項24】
前記ウイルスベクターは、患者に導入するために、癌細胞のトランスフェクション又は形質導入による使用のためのものである、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
(a)T細胞抑制受容体に対する遮断剤であって、抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体及び抗PD−L1抗体からなる群から選択される、遮断剤、及び
(b)誘導性共刺激分子(ICOS)に対するアゴニストであって、抗ICOS抗体及びICOSリガンドからなる群から選択される、アゴニスト
をコードする構築体を含むヒト細胞を含んで成る医薬組成物であって、前記医薬組成物は癌の治療に用いるためのものであることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項26】
癌を有する対象を治療するための併用薬であって、
(a)T細胞抑制受容体に対する遮断剤を含む第1医薬であって、前記遮断剤が、抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体及び抗PD−L1抗体からなる群から選択される、第1医薬、及び
(b)誘導性共刺激分子(ICOS)に対するアゴニストを含む第2医薬であって、前記アゴニストが、抗ICOS抗体及びICOSリガンドからなる群から選択される、第2医薬
を含んで成る、併用薬。
【請求項27】
前記T細胞抑制受容体に対する遮断剤及び前記ICOSに対するアゴニストが、ウイルスベクターによりコードされる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項28】
前記T細胞抑制受容体に対する遮断剤及び前記ICOSに対するアゴニストが、ウイルスベクターによりコードされる、請求項12〜20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ICOS刺激と併せて、T細胞抑制受容体遮断を用いた癌治療の方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最適なT細胞活性化には、T細胞受容体及び共刺激分子を通した同時性のシグナルを必要とする。プロトタイプの共刺激分子であるCD28は、そのリガンドであるB7−1及びB7−2と相互に作用して、初期のT細胞プライミングで重要な役割を果たす。Sharpeら,Nat. Rev. Immunol. 2:203−209 (2002)。CD28により媒介されるT細胞増殖は、直近に活性化されたT細胞の増殖を弱める、別のB7−1、2対抗受容体、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)によって妨害される。Krummelら,J. Exp. Med. 183:2533−2540 (1996);Leachら,Science 271:1734−1736 (1996)。CD28及びCTLA−4発現の時間的調節は、活性化と抑制シグナルとの間のバランスを維持し、自己免疫の発達を防ぐ一方で、有効な免疫応答の発達を確かなものにする。CTLA−4により媒介される抑制シグナルの遮断は、T細胞応答を高め、腫瘍拒絶を誘起することが、多くの動物モデルで示されてきており、ヒトCTLA−4に対するモノクローナル抗体は、例えば転移性疾患を持つ患者の一部での永続的で完全な反応など、進行中のヒトの臨床試験において適度な成功をみてきた。例えば、Kormanら,Adv. Immunol. 90:297−339 (2006)を参照のこと。
【0003】
更なるCD28及びB7ファミリーのメンバーであるPD−1(プログラム死−1)、PD−L1(プログラム死リガンド−1又はB7−H1)、及びPD−L2(B7−DC)の同定及び特徴付けは、ヒトにおけるT細胞活性化及び末梢寛容のプロセスに更なる複雑さを加えた。B7−1、2/CTLA−−4相互作用と同様に、PD‐L1及びPD−L2とのPD−1の相互作用は、中枢性及び末梢性免疫応答を下方制御する。Fifeら,Immunol. Rev. 224:166−82 (2008)。従って、CTLA−4のように、PD−1の抗体に基づく遮断もまた、ヒトの癌治療の臨床試験において研究されつつある。例えば、Bergerら,Clin. Cancer Res.14:3044−3051 (2008)を参照のこと。それでもなお、CTLA−4と同様に、改善された治療法がいまなお必要とされている。
【0004】
誘導可能な共刺激分子(ICOS)は、構造上CD28及びCTLA−4に関連した、T細胞に特有の表面分子である。Hutloffら,Nature 397:263−266 (1999);Dongら,Nature 409:97−101 (2001)。初期には、免疫応答におけるICOSの役割は、Th2サイトカインの産生に強くかかわり、ICOSを発現するT細胞は免疫反応応答を抑制する役割をしている可能性が示唆されていた。ICOS欠損マウスは、Th2サイトカインインターロイキン10の産生の減少を示し、調節性T細胞によるIL−10産生は、エフェクターT細胞応答の細胞外部からの抑制と関連付けられてきた。Yoshinagaら,Nature 402:827−832 (1999);Kohyamaら,米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl Acad. Sci. USA) 101 :4192−97 (2004)。しかしながら、これに反して、より最近のデータでは、ICOSを発現するT細胞は、自己免疫反応にもかかわっている可能性が示唆され、膀胱癌患者でのCTLA−4遮断は、CD4+T細胞上のICOS発現を増加し、次にその細胞が細胞IFNガンマを産生し、腫瘍抗原を認識することが示された。Yuら,Nature 450:299−303 (2007);Liakouら,米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 105:14987−992 (2008)。更に、ICOSは、エフェクターメモリー及び調節性T細胞双方の生存の増加にも関連することが分かり、その機能的な関連が、調節性T細胞に限定されないことが示されてきている。Burmeisterら,J. Immunol 180:774−782 (2008)。従って、T細胞活性化プロセスにおけるICOSシグナル伝達の生理的役割は、いまなお解明の途中にある。この継続する不確定さが故に、癌治療においてICOSシグナル伝達を調節することの潜在的な効果は、現在のところ知られていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、細胞抑制受容体遮断とともにICOS作動薬を同時に投与することで、遮断の抗腫瘍効果を更に高めることができることを示すことによって、癌の進行又は癌の治療におけるICOSシグナル伝達の役割を明らかにする。従って、癌の治療にT細胞抑制受容体(例えばCTLA−4及び/又はPD−1)の遮断と作動薬により誘発されたICOSシグナル伝達とを組み合わせる組成物及び方法が提供される。機能活性化ICOS抗体及びICOS−リガンド−発現ワクチンが、対象の組成物及び方法の使用に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、抗CD3抗体が存在する場合又は存在しない場合における、ネズミCD4+T細胞への抗ICOS抗体(7E.17G又はC398.4)のアゴニスト効果を示す。
図2図2は、3週間後の未治療の動物又は抗CTLA−4抗体で治療された動物における、腫瘍容積(mm3;y軸)とパーセント(%)CD4+Foxp3-細胞によるICOS発現(x軸)との逆の相関を示す。
図3図3は、B16腫瘍をもつ、未治療のICOS+/ICOSL+動物、GVAX及び抗CTLA−4抗体(9H10)で治療されたICOS+/ICOSL+-動物、未治療のICOS-/ICOSL+動物、GVAX及び抗CTLA−4抗体(9H10)で治療されたICOS-/ICOSL+動物、未治療のICOS+/ICOSL-動物、及びGVAX及び抗CTLA−4抗体(9H10)で治療されたICOS+/lCOSL-動物の生存率を示す。
図4図4は、GVAX及び抗CTLA−4抗体(αCTLA4)で治療された動物、又はGVAX、抗CTLA−4抗体(αCTLA4)及び抗ICOS抗体(αICO)で治療された動物における、腫瘍抗原投与後0〜50日(x軸)での腫瘍サイズ(mm3;y軸)を示す。
図5図5は、未治療、GVAX及び抗CTLA−4抗体で治療された、又はGVAX、抗CTLA−4抗体及び抗ICOS抗体で治療されたB16 BL6腫瘍をもつ動物における生存率を示す。
図6図6は、未治療、GVAX及び抗ICOS(7E.17G9)抗体で治療された、GVAX及び抗PD−L1抗体(10F.9G2)で治療された、又はGVAX及び抗PD−L1抗体及び抗ICOS抗体で治療されたB16/BL6腫瘍をもつ動物における生存率を示す。
図7図7は、GVAX及びThy1.1(B16−Thy1.1)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞又は膜に結合したICOSL(B16−mICOSL)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞で治療された動物の、各々の動物の個々の腫瘍増殖曲線(左列)、各治療群における平均腫瘍容積(右上隅)、及び各治療群の生存曲線(右下隅)を示す。個々の腫瘍増殖曲線中の数字は、実験終了時での、腫瘍のないマウスに対するパーセンテージを指す。生存曲線に関して、マウスは、腫瘍容積が300mm3に到達したとき、死亡とみなされた。
図8図8は、GVAX及び抗CTLA−4抗体(9H10)のみで治療された動物又は膜に結合したICOSL(mICOSL)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞と組み合わせて治療された動物の、各々の動物の個々の腫瘍増殖曲線(左列)、各治療群における平均腫瘍容積(右上角)、及び各治療群の生存曲線(右下角)を示す。個々の腫瘍増殖曲線中の数字は、実験終了時での、腫瘍のないマウスに対するパーセンテージを指す。生存曲線に関して、マウスは、腫瘍容積が300mm3に到達したとき、死亡とみなされた。
図9図9は、Thy1.1(B16−Thy1.1)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞で、抗CTLA−4抗体(9H10)の存在又は非存在下において、未治療又は治療されたマウス、若しくは膜に結合するICOSL(B16−mICOSL)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞で、抗CTLA−4抗体(9H10)の存在又は非存在下において、未治療又は治療されたマウスにおける、1回目のB16/BL6の実験からの個々の腫瘍増殖曲線示す。数字は、実験終了時の腫瘍のないマウスのパーセンテージを表す。
図10図10は、Thy1.1(B16−Thy1.1)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞で、抗CTLA−4抗体(9H10)の存在又は非存在下において、未治療又は治療されたマウス、若しくは膜に結合するICOSL(B16−mICOSL)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞で、抗CTLA−4抗体(9H10)の存在又は非存在下において、未治療又は治療されたマウスにおける、2回目のB16/BL6の実験からの個々の腫瘍増殖曲線示す。数字は、実験終了時の腫瘍のないマウスのパーセンテージを表す。
図11図11は、Thy1.1(B16−Thy1.1)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞で、抗CTLA−4抗体(9H10)の存在又は非存在下において、未治療又は治療されたマウス、若しくは膜に結合するICOSL(B16−mICOSL)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞で、抗CTLA−4抗体(9H10)の存在又は非存在下において、未治療又は治療されたマウスにおける、B16/BL6の各治療群の生存曲線を示す。
図12A図12Aは、膜に結合するICOSL(B16−mICOSL)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞及び/又は抗CTLA−4抗体(9H10)で未治療又は治療されたマウスにおける、B16/BL6の平均腫瘍増殖曲線を示す。
図12B図12Bは、膜に結合するICOSL(B16−mICOSL)を発現するように形質導入されたB16/BL6細胞及び/又は抗CTLA−4抗体(9H10)で未治療又は治療されたマウスにおける、B16/BL6の各治療群の生存曲線を示す。生存曲線に関して、マウスは、腫瘍容積が300mm3に到達したとき、死亡とみなされた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において記載されるのは、例えばICOSリガンド又はアゴニスト抗体を介するようなICOSにより媒介される、シグナル伝達の刺激は、T細胞抑制受容体に対する遮断剤、例えばCTLA−4及びPD−1などの抗癌効果を高めるとういう発見である。したがって、本明細書において提供されるのは、T細胞抑制受容体に対する遮断剤及びICOS刺激剤を含む組成物、及び癌を患う患者を治療するためにそのような組成物を使用する方法である。
【0008】
T細胞抑制受容体に対する遮断剤/ICOSに対する刺激剤
【0009】
誘導可能なT細胞共刺激分子(ICOS)は、「AILIM」、「CD278」、及び「MGC39850」としても知られている。ICOSの全cDNA配列は、GENBANK登録番号NM_012092.3を有し、ヒトICOSのアミノ酸配列は、GENBANK登録番号NP_036224を有する。ICOSは、CD28及びCTLA−4細胞表面受容体ファミリーに属する。それは、ホモ二量体を形成し、細胞間シグナル伝達、免疫応答、及び細胞増殖の調節において重要な役割を果たしている。しかしながら、抗癌反応を媒介することにおけるICOSシグナル伝達の役割は、現在のところ分かっていない。
【0010】
ICOSリガンド(ICOSL)は、「B7H2」、「GL50」、「B7−H2」、「B7RP1」、「CD275」、「ICOSLG」、「LICOS」、「B7RP−1」、「ICOS−L」、及び「KIAA0653.」とも称される。ICOSの全cDNA配列は、GENBANK登録番号NM_015259.4を有し、ヒトICOSのアミノ酸配列は、GENBANK登録番号NP_056074を有する。
【0011】
ICOSに対する刺激剤は、一般にICOSの細胞外ドメインに結合する分子(例えば、ICOSL)である。通常、遮断剤の結合親和力は、少なくとも約100μΜであろう。刺激剤は、CD28及び免疫グロブリンスーパーファミリーのその他のメンバーなどのICOSに関連した分子と実質的に非反応性であろう。本明細書において示されるように、好適な刺激剤は、ICOSのシグナル伝達を活性化し、それに対応するT細胞活性化(例えば、増殖)の増加をもたらす。例えば、図1を参照のこと。
【0012】
候補ICOS刺激剤は、この基準を満たすそれらの能力についてスクリーニングされる。結合の親和性及び特異性を決定するアッセイは、例えば競合及び非競合分析など、当該技術分野において公知である。対象となるアッセイとしては、ELISA、RIA、フローサイトメトリーなどが挙げられる。結合アッセイは、精製又は半精製されたICOSを使用し、あるいは、ICOSを発現するT細胞、例えば、ICOSの発現構築体でトランスフェクションされた細胞;CD3とCD28との架橋を通して刺激されたT細胞;放射線照射された同種異系細胞の添加などを使用しうる。結合アッセイの例として、精製されたICOSは不溶性支持体、例えばマイクロタイタープレート、磁気ビーズなどに結合されうる。候補刺激剤、及び可溶性で、標識ICOSリガンドは、細胞に添加され、その後、結合しなかった構成要素は洗い流される。天然のリガンドとICOS結合を競合する刺激剤の能力は、結合した標識リガンドの定量化により決定されうる。
【0013】
T細胞活性化を検出する機能的なアッセイは、薬剤がICOSの刺激薬であることの確認に使用されうる。例えば、本明細書及び図1において例示されるように、T細胞の集団は抗CD3の存在及び非存在下で候補刺激剤で刺激されうる。ICOSを刺激する薬剤は、例えばCD4+T細胞の増殖及び/又は細胞周期の進行、IL−2の放出、CD25及びCD69の上方調節などにより測定されるように、T細胞活性化の増加を引き起こすであろう。細胞の表面上の発現、リポソームへのパッケージング、粒子又はウェル(well)への付着などは、分子の有効な結合価を増加するであろうことは当業者に理解されるであろう。
【0014】
本明細書において使われるT細胞抑制受容体は、リガンドにより活性化又は結合されたとき、T細胞の活性化を下方制御する、T細胞の表面上に発現されるあらゆる受容体を含む。言いかえれば、T細胞抑制受容体を遮断することは、T細胞活性化及び/又はエフェクターT細胞応答を高める。T細胞抑制受容体及びそれらのリガンドは、当該技術分野において周知である。非限定的及び例示的なT細胞抑制受容体としては、CTLA−4及びPD−1が挙げられる。当業者は、CTLA−4のリガンドはCD80及びCD86を含むことを理解するであろう。更に、当業者は、PD−1のリガンドはPD−L1及びPD−L2を含むことを理解するであろう。
【0015】
ヒトCTLA−4の完全なcDNA配列は、GENBANK登録番号L15006を有する。アミノ酸1〜37の領域はリーダーペプチド;38〜161は細胞外V様領域;162〜187は膜貫通領域;及び188〜223は細胞質ドメインである。ヌクレオチド配列の変種が、報告されおり、例えば、49位のGからAへの転移、272位のCからTへの転移、及び439位のAからGへの転移などがある。マウスCTLA−4の完全なDNA配列は、EMBL登録番号X05719を有する(Brunetら,(1987) Nature 328:267−270)。アミノ酸1〜35の領域は、リーダーペプチドである。
【0016】
ヒトPD−1の全cDNA配列はGENBANK登録番号NM_005018を有し、ヒトPD−1のアミノ酸配列はGENBANK登録番号NP_005009.1を有する。アミノ酸1〜20の領域はシグナルペプチドであり、成熟したペプチドはアミノ酸21〜288と分かっている。
【0017】
T細胞抑制受容体に対する遮断剤は、一般に、特異的にT細胞抑制受容体の細胞外ドメイン又はT細胞抑制受容体リガンドの細胞外ドメインに結合する分子であり、例えば、T細胞抑制受容体の、CD80、CD86、PD−L1、PD−L2などのそれらのリガンドとの結合を遮断することによりT細胞抑制受容体の活性化を妨げる。通常、遮断剤の結合親和力は、少なくとも約100μΜであろう。遮断剤は、CD28及び免疫グロブリンスーパーファミリーのその他のメンバーなどのT細胞抑制受容体に関連した分子と実質的に非反応性であろう。更に、遮断剤はT細胞抑制受容体シグナル伝達を活性化しない。好都合なことに、これは一価又は二価結合分子の使用によって達成される。異なる分子間の交差反応性及び競合についての以下の説明は、同一種の起源をもつ分子を指すこと意図していること、例えば、ヒトのT細胞抑制受容体がヒトT細胞抑制受容体リガンドに結合することなどは当業者に理解されるであろう。
【0018】
候補遮断剤は、この基準を満たすそれらの能力についてスクリーニングされる。結合の親和性及び特異性を決定するアッセイは、例えば競合及び非競合分析など、当該技術分野において公知である。目的のアッセイとしては、ELISA、RIA、フローサイトメトリーなどが挙げられる。結合アッセイは、精製又は半精製されたT細胞抑制受容体タンパク質を使用し、あるいは、T細胞抑制受容体を発現するT細胞、例えば、T細胞抑制受容体の発現構築体でトランスフェクションされた細胞;CD3とCD28との架橋を通して刺激されたT細胞;放射線照射された同種異系細胞の添加などを使用しうる。結合アッセイの例として、精製されたT細胞抑制受容体タンパク質は不溶性支持体、例えばマイクロタイタープレート、磁気ビーズなどに結合されうる。候補抑制薬、及び可溶性で、標識T細胞抑制受容体リガンドは、細胞に添加され、その後、結合しなかった構成要素は洗い流される。リガンドとT細胞抑制受容体結合を競合する抑制薬の能力は、結合した標識リガンドの定量化により決定されうる。
【0019】
一般に、可溶性の一価又は二価の結合分子は、T細胞抑制受容体シグナル伝達を活性化しないであろう。T細胞活性化を検出する機能的なアッセイは、確認に使用されうる。例えば、T細胞の集団は、候補遮断剤の存在下又は非存在下にて、放射線照射されたT細胞抑制受容体リガンドを発現する同種異系細胞で刺激されうる。T細胞抑制受容体シグナル伝達を遮断する薬剤は、例えばT細胞の増殖及び/又は細胞周期の進行、IL−2の放出、CD25及びCD69の上方調節などにより測定されるように、T細胞活性化の増加を引き起こすであろう。細胞の表面上の発現、リポソームへのパッケージング、粒子又はウェル(well)への付着などは、分子の有効な結合価を増加するであろうことは当業者に理解されるであろう。
【0020】
T細胞抑制受容体に対する遮断剤又はICOSに対する刺激剤は、各々独立してペプチド、有機小分子、ペプチド模倣薬、可溶性リガンド、抗体などでありうる。抗体は、好ましい遮断剤又は刺激剤である。抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル;完全又は例えばF(ab’)2、Fab、Fvなどの不完全;異種、同種異系、同系、又は例えばヒト化、キメラ化などその改変された形態でありうる。
【0021】
多くの場合、T細胞抑制受容体に対する遮断剤又はICOSに対する刺激剤は、例えば抗体又はその断片などオリゴペプチドであるか、比較的大きな特異性及び親和性を提供するその他の分子が用いられうる。コンビナトリアルライブラリーは、必要な結合特性を有するオリゴペプチド以外の化合物を提供する。一般に、親和力は、少なくとも約10-6M、より通常は、約10-8M、即ち、特異的モノクローナル抗体に通常みられる結合親和力であろう。
【0022】
多くのスクリーニングアッセイが、T細胞抑制受容体に対する遮断剤又はICOSに対する刺激剤に利用可能である。そのようなアッセイの構成要素は、典型的に、T細胞抑制受容体(及び随意に、例えばT細胞抑制受容体リガンドなどT細胞抑制受容体活性化剤)又はICOSを、それぞれ含むであろう。また、アッセイ混合物は、候補薬物を含むであろう。一般に、複数のアッセイ混合物は、異なる薬剤濃度で平行して行われ、さまざまな濃度に対する異なる反応を得る。典型的には、これら濃度の1つは、負の対照としての役目をし、即ちゼロ濃度又は検出のレベル未満となる。
【0023】
好都合なことに、これらのアッセイにおいて、1つ以上の分子はラベルを連結され、そのラベルは直接的又は間接的に検出可能なシグナルを提供することができる。さまざまなラベルとしては、放射性同位元素、蛍光剤、化学発光剤、酵素、特定の結合分子、磁性粒子などの粒子などが挙げられる。特定の結合分子としては、ビオチンとストレプトアビジン、ジゴキシンと抗ジゴキシンなどのペアが挙げられる。特定の結合メンバーに対して、公知の手順に従って、相補的なメンバーが、検出を提供する分子で通常ラベルされるであろう。
【0024】
目的のスクリーニングアッセイの1つは、その同種のリガンドによるT細胞抑制受容体の活性化を妨げるか、ICOSシグナル伝達を活性化するかのいずれかの薬剤を対象とする。活性化の定量は、当該技術分野において公知の多くの方法によって達成されうる。例えば、T細胞活性化は、細胞増殖、サイトカインの放出などを定量することによって決定されうる。
【0025】
目的のその他の分析は、T細胞抑制受容体の、その対抗受容体又はリガンドへの結合を遮断する薬剤を対象とする。アッセイ混合物は、特異的結合を提供するために十分な配列類似性を共有する天然の対抗受容体又はオリゴペプチドの少なくとも一部分、及び候補薬物を含むであろう。オリゴペプチドは、アッセイ条件及び必要要件に適している任意の長さで、通常少なくとも約8個のアミノ酸の長さ、最長でタンパク質又はその融合(体)の全長でありうる。T細胞抑制受容体は、不溶性基材に結合されうる。基材は、例えばマイクロタイタープレート、マイクロビーズ、ディップスティック、樹脂粒子など、広い種類の物質及び形状で作られうる。基材は、バックグラウンドを最小にし、信号対雑音比を最大にするように選択されうる。結合は、当該技術分野において公知の多様な方法で定量されうる。結合が平衡に達することができるのに十分なインキュベーション期間の後、不溶性支持体は洗浄され、残ったラベルは定量化される。結合を妨げる薬剤は、検出されるラベルを減少するであろう。
【0026】
候補遮断剤又は候補刺激剤は、多くの化学構造(classes)を包含するが、典型的に、それらは有機分子、好ましくは分子量50ダルトン超、約2,500ダルトン未満を有する有機小化合物である。候補遮断剤又は候補刺激剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的に、少なくともアミン、カルボニル、スルフヒドリル又はカルボキシル、好ましくは少なくとも2種の官能基を含む。候補遮断剤又は候補刺激剤は、多くの場合、環式の炭素若しくは複素環式構造及び/又は芳香族、若しくは1つ以上の上記官能基で置換された多環芳香族構造を含む。また、候補遮断剤又は候補刺激剤は、例えばペプチド、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体又はその組み合わせなど生体分子中にも見いだされる。
【0027】
候補遮断剤又は候補刺激剤は、例えば合成又は天然化合物のなど広い種類の源から得られる。例えば、多数の手段は、例えばランダム化されたオリゴヌクレオチドの発現など、広く多様な有機化合物及び生体分子のランダム及び直接合成に利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物、及び動物抽出物の形で、天然化合物ライブラリーは、利用可能で、容易に作製される。くわえて、天然又は合成的に作製されたライブラリー及び化合物は、従来の化学的、物理的、及び生化学的手段を通して容易に改変される。公知の薬物は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの直接又はランダム化学修飾に供され構造類似体を作製しうる。
【0028】
多様なその他の試薬は、スクリーニングアッセイ中に含まれうる。これらは、最適なタンパク質とDNA間の結合を促進するために、及び/又は非特異的又はバックグラウンド相互作用を低減するために使用されうる塩、アルブミンなどの中性のタンパク質、界面活性剤のような試薬を含む。また、アッセイの効率を違ったやり方で向上する試薬、蛋白質分解酵素阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌薬なども使用されうる。
【0029】
遮断剤又は刺激剤としての使用に好適な抗体は、それぞれ、T細胞抑制受容体又はICOSタンパク質のすべて又は一部を含んでいるペプチドを使って、宿主動物を免疫感作することにより得られうる。適切な宿主動物としては、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ハムスター、ウサギなどが挙げられる。タンパク質免疫原の起源は、マウス、ヒト、ラット、サルなどでありうる。宿主動物は、一般に、免疫原と異なる種であろう。例えば、ハムスターを免疫感作するために使用されるマウスT細胞抑制受容体、マウスを免疫感作するために使用されるヒトのT細胞抑制受容体など。ヒト及びマウスT細胞抑制受容体は、細胞外ドメインにおいて高度に保存された領域(streches)を含有する(Harperら,(1991) J. Immunol. 147:1037−1044)。そのような高度に保存された領域に由来するペプチドは、交差特異的抗体を作るための免疫原として使用されうる。
【0030】
免疫原は、完全なタンパク質又は断片及びそれらの誘導体を含みうる。好ましい免疫原は、ヒトのT細胞抑制受容体の細胞外ドメインのすべて又は一部(例えばヒトCTLA−4のアミノ酸残基38−161)若しくはICOSタンパク質のすべて又は一部を含み、これらの残基は、天然(native)のT細胞抑制受容体に見られるグリコシル化などの翻訳後修飾を含有する。細胞外ドメインを含んでいる免疫原は、例えば従来の組換え方法を使用したクローン化した遺伝子の発現、T細胞からの単離、ソートされた高レベルの免疫原を発現する細胞集団など、当該技術分野において公知の多様な方法で作製される。
【0031】
組み換え又は改変されたタンパク質の発現が免疫原の作製に望まれる場合、T細胞抑制受容体又はICOSタンパク質の所望の部分をコードするベクターが使用されるであろう。一般に、発現ベクターは、T細胞抑制受容体又はICOSタンパク質の細胞外ドメインが、トランスフェクションされた細胞の表面上にあるか、あるいは、細胞外ドメインが細胞から分泌されるように設計されるであろう。細胞外ドメインが分泌される場合、細胞外ドメインのコード配列はシグナルペプチドを含む分泌を可能にする配列と、フレーム内(in frame)に融合されるであろう。シグナルペプチドは、外来(exogenous)又は天然(native)でありうる。免疫感作のための目的の融合タンパク質は、T細胞抑制受容体の細胞外ドメインを免疫グロブリン定常領域に連結する。ヒトCg1ドメインのヒンジ領域(ヒンジ−CH2−CH3)に連結された、ネズミT細胞抑制受容体又はICOSタンパク質の細胞外ドメインを含む融合タンパク質は、ハムスターを免疫感作に使用されうる。
【0032】
T細胞抑制受容体又はICOSタンパク質免疫原が細胞の表面上に発現される場合、細胞外ドメインのコード配列は、細胞外ドメインを膜にしっかり固定する(anchors)ペプチドをコードする配列とシグナル配列と、フレーム内(in frame)に融合されるであろう。そのようなアンカー配列としては、天然の(native)T細胞抑制受容体又はICOSタンパク質の膜貫通領域、若しくはその他の細胞表面タンパク質、例えばCD4、CD8、sIgなどの膜貫通領域が挙げられる。ヒトT細胞抑制受容体遺伝子又はヒトICOS遺伝子でトランスフェクションされたマウス細胞は、それぞれ、マウスを免疫感作し、ヒトT細胞抑制受容体タンパク質又はICOSタンパク質に特異的な抗体の作製に使用されうる。
【0033】
モノクローナル抗体は、従来技術によって作製される。一般に、免疫感作された宿主動物の脾臓及び/又はリンパ節は、形質細胞の源を提供する。形質細胞は、骨髄腫細胞との融合により不死化され、ハイブリドーマ細胞を産生する。個々のハイブリドーマの培養上清は、標準的な技術を使用して、スクリーニングされ、所望の特異性をもつ抗体を産生するものを識別する。ヒトタンパク質に対するモノクローナル抗体の産生に適切な動物としては、マウス、ラット、ハムスターなどが挙げられる。マウスのタンパク質に対して抗体を作るには、動物は、一般にハムスター、モルモット、ウサギなどであろう。抗体は、ハイブリドーマ細胞上澄み又は腹水から、例えば不溶性支持体、プロテインAセファロースに結合されたT細胞抑制受容体を使用した親和性クロマトグラフィーなどの従来技術によって精製されうる。
【0034】
抗体は、通常の多重構造体(multimeric structure)の代わりに、単鎖として製造されうる。短鎖抗体は、Jostら,(1994) J.B.C. 269:26267−73、及びその他に記載されている。重鎖の可変領域及び軽鎖可変領域をコードするDNA配列は、例えばグリシン及び/又はセリンなど中性の小アミノ酸の少なくとも約4つのアミノ酸をコードするスペーサーに結合される。この融合によってコードされるタンパク質は、特異性を保持する機能的な可変領域と元の抗体の親和力を一つに集めることを可能にする。
【0035】
生体内使用、特にヒトへの注入に使用するために、遮断剤又は刺激剤の抗原性を少なくすることが望ましい。レシピエントの遮断剤に対する免疫反応は、場合により、治療が効果的である期間を減少するだろう。抗体をヒト化する方法は、当該技術分野において公知である。ヒト化抗体は、トランスジェニックヒト免疫グロブリン定常領域遺伝子を有する動物の生産物でありうる(例えば国際公開第90/10077号及び国際公開第90/04036号を参照のこと)。あるいは、目的の抗体は、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン、及び/又はフレームワークドメインを対応するヒト配列と置換する組み換えDNA技術によって、改変されうる(国際公開第92/02190号を参照のこと)。
【0036】
キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのIgのcDNAの使用は、当該技術分野において公知である(Liuら,(1987) 米国科学アカデミー紀要(P.N.A.S.) 84:3439及び(1987) J. Immunol. 139:3521)。mRNAは、抗体を産生するハイブリドーマ又はその他の細胞から取り出され、cDNAの作製に使用される。目的のcDNAは、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応により増幅されうる(米国特許第4,683,195号及び同第4,683,202号)。あるいは、目的の配列を取り出すために、ライブラリーが作製され、スクリーニングされる。その後、抗体の可変領域をコードするDNA配列は、ヒト定常領域配列に融合される。ヒト定常領域遺伝子の配列は、Kabatら,(1991)免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest),NIH刊行物(N.I.H. publication)第91−3242に見出され得る。ヒトC領域遺伝子は、容易に公知のクローンから入手可能である。アイソタイプの選択は、補体固定又は抗体依存性、細胞毒性の活性などの所望のエフェクター機能に従われるであろう。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG3、及びIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、カッパ又はラムダのいずれかが使用されうる。その後、キメラ、ヒト化抗体は、従来の方法によって発現される。
【0037】
Fv、F(ab’).sub.2、及びFabなどの抗体断片は、完全なタンパク質の切断、例えばプロテアーゼ又は化学切断などによって調製されうる。あるいは、短縮遺伝子は設計される。例えば、F(ab’).sub.2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメイン及びヒンジ領域、続いて翻訳終止コドンをコードするDNA配列を含み、短縮分子を生じるであろう。
【0038】
H及びL J領域の共通配列は、プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドを設計するために使用され、ヒトのC領域セグメントにV領域セグメントを次に連結するために有用な制限酵素切断部位をJ領域に導入しうる。C領域cDNAは、部位特異的突然変異誘発により改変され、ヒト配列において類似した位置に制限酵素認識部位を置くことができる。
【0039】
発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。便利なベクターは、任意のVH又はVL配列が容易に挿入及び発現可能なように改変された適切な制限酵素切断部位とともに、機能的に完全なヒトCH又はCL免疫グロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターでは、スプライシングは、J領域に挿入されたスプライシングドナーサイトとヒトC領域の前のスプライシングアクセプターサイトとの間で通常起こり、またヒトCHエクソン内で起こるスプライシング領域でも起こる。ポリアデニル化及び転写終了は、コード領域の下流の、天然の(native)染色体の位置で起こる。結果として生じるキメラ抗体は、任意の強力なプロモーター、例えば、SV−40初期プロモーター(Okayamaら,(1983) Mol. Cell. Bio. 3:280)などのレトロウイルスのLTR、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gormanら,(1982) 米国科学アカデミー紀要(P.N.A.S.)79:6777)、及びモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedlら,(1985) Cell 41:885);天然の(native)Igプロモーターなどに連結されうる。
【0040】
1つの実施形態では、T細胞抑制受容体に対する遮断剤は、CTLA−4の細胞外ドメインに結合された抗CTLA−4抗体であり、抗CTLA−4シグナル伝達を抑制する。ヒトでの使用に好適な抗CTLA−4抗体としては、例えば、イピリムマブ(MDX−010)及びチシリムマブ(CP 675,206)が挙げられる。別の実施形態では、T細胞抑制受容体に対する遮断剤は、PD−1のPD−L1への結合を遮断する抗PD−1抗体であり、PD−1シグナル伝達を抑制する。ヒトでの使用に好適な抗体としては、例えば、MDX−1106/ONO−4538及びCT−011が挙げられる。別の実施形態では、T細胞抑制受容体に対する遮断剤は、PD−1のPD−ILへの結合を遮断する抗B7−H1(PD−IL)抗体であり、PD−1シグナル伝達を抑制する。別の実施形態では、T細胞抑制剤に対する遮断剤は、抗CTLA−4抗体及び/又は抗PD−1抗体及び/又は抗B7−H1抗体の組み合わせである。
【0041】
別の実施形態では、刺激剤に対するICOSは、ICOSの細胞外ドメインに結合する抗ICOS抗体であり、ICOSシグナル伝達を活性化し、T細胞活性化の増加、例えば、増殖につながる。別の実施形態では、刺激剤に対するICOSは、組換えICOSLであり、それは、可溶性であるか、遺伝子組み換えされた細胞の表面に発現されうる。
【0042】
遮断剤又は刺激剤をコードするウイルスベクター及びそれを発現する細胞
【0043】
1つの実施形態では、1つ以上のT細胞抑制受容体に対する遮断剤及び/又はICOSに対する刺激剤は、ウイルスベクターにより発現され、及び細胞を形質転換する。例えば、本明細書において記載されている、ウイルスベクター及び形質転換されるヒト細胞は、抗T細胞抑制受容体抗体を発現し、T細胞抑制受容体及び/又はICOSにより媒介されたシグナル伝達を活性化するICOSに対する刺激剤(例えばICOSリガンド)によるシグナル伝達を遮断しうる。好ましい実施形態では、候補遮断剤及び/又は候補刺激剤を発現するウイルスベクター又はヒト細胞は、腫瘍、特に腫瘍浸潤リンパ球の近位に薬剤を発現することができる。
【0044】
使用することができるヒト細胞としては、腫瘍細胞、抗原提示細胞(例えば樹状細胞)、B細胞、及びT細胞が挙げられる。本明細書にて開示される細胞は、腫瘍の近位にある細胞付近に、遮断剤及び/又は刺激剤の限局性発現を提供する。細胞は、生体内で改変されることができ、あるいは、生体外で改変された細胞は、注入など多様な方法で患者に投与されることができる。
【0045】
1つの実施形態では、細胞は、腫瘍細胞である。生体外形質転換のために、そのような腫瘍細胞は放射線照射され、当該技術分野において公知の通り、投与後の遮断剤及び/又は刺激剤の一過性の発現を維持する一方で、細胞の複製能を消すことができる。生体内形質転換のために、非組み込み(non−integrative)発現ベクターが好ましい。
【0046】
特定の好ましい実施例では、腫瘍細胞は自己由来又は内生である。前者の例では、腫瘍細胞は、患者から採取され、遮断剤及び/又は刺激剤をコードする構築体でトランスフェクション又は形質導入され、例えば放射線照射後に患者に再導入される。後者の例では、腫瘍細胞は、本明細書において記載されている適切な構築体を局所投与することにより、生体内で形質転換される。
【0047】
代替的な実施例では、改変された腫瘍細胞は、同種異系である。同種異系腫瘍細胞は、したがって、細胞系に維持されることができる。この例では、腫瘍細胞は、細胞系から選択され、放射線照射され、患者に導入されることができる。
【0048】
別の代替的な実施例では、改変されたヒト細胞は、樹状細胞又は単核細胞などの抗原提示細胞である。別の代替的な実施例では、改変されたヒト細胞は、T細胞である。
【0049】
遮断剤及び/又は刺激剤を産生できる改変されたヒト細胞は、細胞を遮断剤及び/又は刺激剤をコードする発現ベクターでトランスフェクション又は形質導入することによって作られることができる。遮断剤、刺激剤、又は遮断剤及び/又は刺激剤の組み合わせの発現のための発現ベクターは、当該技術分野で周知の方法によって作られることができる。
【0050】
さまざまな実施形態において、遮断剤及び/又は刺激剤は、1つ以上の核酸構築体の形態で患者に投与されることができる。
【0051】
1つの実施形態では、構築体はレトロウイルスベクターを含む。レトロウイルスベクターは、遮断剤及び/又は刺激剤をコードするDNAを細胞ゲノムに恒久的に組み込むことができる。したがって、自己由来又は同種異系細胞の生体外操作について言えば、遮断剤及び/又は刺激剤を恒常的に産生する安定な細胞系は調製されることができる。好ましい実施形態では、細胞は、患者への投与の前に放射線照射される。放射線照射された細胞は、限られた期間、遮断剤及び/又は刺激剤を産生する。
【0052】
1つの実施形態では、発現構築体は、SFVベクターを含み、それは、哺乳類細胞で高レベルの一過性の発現を示す。SFVベクターは、例えば、Lundstrom,Expert Opin. Biol. Ther. 3:771−777 (2003)に記載されており、参照により、本明細書にその全体が組み込まれる。したがって、内在性細胞の患者の生体内操作について言えば、高レベルの遮断剤及び/又は刺激剤の一過性の発現が達成されることができる。これは、生体内のT細胞の恒常的な発現及び永続的な活性化を防ぐことである。
【0053】
組換えタンパク質を生体内発現できる系は、当該技術分野において公知である。限定ではなく例としては、系は、Fangら,Nature Biotech. 23(5) 2005及び米国特許出願公開第2005/0003506号に開示されている、2Aにより媒介される(2A mediated)抗体発現系を使用でき、その開示は、参照により本明細書にその全体が明示的に組み込まれる。当該技術分野において公知のその他の系は検討され、本明細書において記載されている遮断剤及び/又は刺激剤を生体内で産生することに適応されることもできる。
【0054】
本明細書において開示される、遮断剤及び/又は刺激剤を発現する細胞の投与は、抗原提示細胞を刺激するサイトカイン、例えば顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)1、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン12(IL−12)などの投与、又はそのようなサイトカインを発現することができる細胞ワクチンの投与と組み合わせることができる。好ましい実施形態では、遮断剤及び/又は刺激剤を発現する細胞は、更に改変され、そのようなサイトカインを発現する。T細胞増殖及び分泌を高めることが知られている、更なるタンパク質及び/又はサイトカイン、例えばIL−1、IL−2、B7、抗CD3及び抗CD28などは、同時又は連続的に、遮断剤とともに用いられ、免疫応答を増補することができる。現在の治療は、分子のいずれかと組み合わされ、実施されることができ、これは、米国特許第6,051,227号に記載されており、参照により、本明細書にその全体が組み込まれる。
【0055】
ベクター及び形質転換の方法
【0056】
遮断剤及び/又は刺激剤をコードする発現ベクターは、ウイルス性又は非ウイルス性でありうる。ウイルスベクターは、生体内での使用が好ましい。本発明の発現ベクターは、哺乳類細胞中で機能する発現制御領域又はその相補体に作動可能に連結された、T細胞抑制受容体に対する遮断剤をコードする核酸又は刺激剤に対するICOSをコードする核酸若しくはそれらの相補体を含む。発現制御領域は、遮断剤及び/又は刺激剤が、発現ベクターで形質転換されたヒト細胞で産生されるように、作動可能に連結された遮断剤及び/又は刺激剤をコードする核酸の発現を進めることができる。
【0057】
発現制御領域は、プロモーター及びエンハンサーなどの、制御ポリヌクレオチド、(本明細書において、要素と称されることもある)であり、それらは、作動可能に連結された核酸の発現に影響する。
【0058】
本発明の発現ベクターの発現制御領域は、作動可能に連結されたコード核酸をヒト細胞で発現すことができる。1つの実施形態では、細胞は、腫瘍細胞である。1つの実施形態では、細胞は、非腫瘍細胞である。
【0059】
1つの実施形態では、発現制御領域は、作動可能に連結された核酸に、調節可能な発現をもたらす。シグナル(刺激と称されることもある)は、そのような発現制御領域に作動可能に連結された核酸の発現を増加又は減少することができる。シグナルに対応して発現を増加する、そのような発現制御領域は、多くの場合、誘導可能と称される。シグナルに対応して発現を減少する、そのような発現制御領域は、多くの場合、抑制可能と称される。典型的には、そのような要素により付与される増加又は減少の量は、存在するシグナルの量に比例し;シグナルの量が多いほど、発現の増加又は減少が大きい。
【0060】
本発明において特に使用に好ましいのは、合図(cue)に対応して高いレベルの発現を一時的にもたらすことができる誘導可能なプロモーターである。腫瘍細胞の近傍にあるときは、そのような発現制御配列を含んでいる遮断剤及び/又は刺激剤のための発現ベクターで形質転換された細胞は、適切な合図(cue)に形質転換された細胞をさらすことによって高レベルのICOSリガンドを一時的に産生するように誘導される。
【0061】
好ましい誘導可能な発現制御領域としては、小分子化学化合物などの、合図(cue)で刺激される誘導可能なプロモーターを含んでいるようなものが挙げられる。特定の例は、例えば、米国特許第5,989,910号、同第5,935,934号、同第6,015,709号、及び同第6,004,941号に見いだされ、各々、参照により、本明細書にその全体が組み込まれる。
【0062】
発現制御領域としては、天然の(native)プロモーター及びエンハンサー要素などの全長プロモーター配列、及びすべて又は一部の全長又は非変異体の機能を保持するサブシーケンス又はポリヌクレオチド変異体が挙げられる。本明細書で使用される場合、「機能的に」という用語及びその文法上の変形は、核酸配列、サブシーケンス又は断片に関して使用される場合には、配列が、天然の(native)核酸配列(例えば、非変異体又は改変されてない配列)の1つ以上の機能を有することを意味する。
【0063】
本明細書で使用される場合、「作動可能な連結」とは、それらの意図されたように機能できるようにその旨を記載された構成要素の物理的な並置を意味する。核酸に作動可能な連結にある発現制御要素の例では、その関係は、制御要素が核酸の発現を調節するようなものである。典型的には、転写を調節する発現制御領域は、転写される核酸の5’末端部(即ち「上流」)近くに並置される。発現制御領域は、転写される配列の3’末端部(即ち「下流」))、又は転写物(例えば、イントロン)内に位置することもできる。発現制御要素は、転写された配列から離れた距離で(例えば、核酸から100〜500、500〜1000、2000〜5000又はそれ以上のヌクレオチド)、位置することができる。発現制御要素の具体例は、転写された配列の5’に位置するプロモーターである。発現制御要素の別の例は、エンハンサーであり、それは、転写された配列の5’又は3’、若しくは転写された配列内に位置する。
【0064】
ヒト細胞で機能する系は、当該技術分野で周知であり、ウイルス系が含まれる。一般に、ヒト細胞で機能的なプロモーターは、哺乳類RNAポリメラーゼ結合すること、及びICOSリガンドをコードする配列のmRNAへの下流(3’)転写を開始させることができる任意のDNA配列である。プロモーターは、通常コード配列の5’末端部の近くに位置する転写反応領域、典型的に転写開始部位の25〜30塩基対上流に位置するTATAボックスを有するであろう。TATAボックスは、RNAポリメラーゼIIを正しい部位でRNA合成を開始するように誘導すると考えられている。また、プロモーターは、典型的に、上流のプロモーター要素(エンハンサー要素)も含有するであろう。それは、典型的に、TATAボックスの上流、100〜200塩基対内に位置する。上流のプロモーター要素は、転写が開始される速度を決定し、いずれの方向にも作用することができる。プロモーターとして特に有用なのは、哺乳類のウイルス遺伝子からのプロモーターであり、なぜなら、ウイルス遺伝子は、多くの場合、高度に発現され、幅広い宿主の範囲を有するからである。例としては、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、及びCMVプロモーターが挙げられる。
【0065】
典型的には、哺乳類細胞により認識される転写終了配列及びポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンの調節領域3’に位置する制御領域であり、したがって、プロモーター要素とともに、コード配列の側に位置する。成熟したmRNAの3’末端は、部位特異的翻訳後切断及びポリアデニル化により形成される。転写ターミネーター及びポリアデニル化シグナルの例としては、SV40から由来するものが挙げられる。また、イントロンも発現構造体中に含まれうる。
【0066】
生細胞への核酸の導入に利用可能なさまざまな技術がある。インビトロで哺乳類細胞に核酸を導入することに適した技術としては、リポソームの使用、電気穿孔法、マイクロインジェクション、細胞融合、ポリマーに基づく系、DEAE−デキストラン、ウイルス形質導入、リン酸カルシウム沈殿法などが挙げられる。生体内遺伝子導入には、多くの技術及び試薬、例えばリポソーム;キトサン及びゼラチンなどの天然ポリマーに基づく送達などが使用されうる;また、ウイルスベクターも生体内形質導入に好ましい(例えば、Dzauら,Trends in Biotechnology 11,205−210 [1993])。場合によっては、腫瘍細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体又はリガンドなどのターゲット薬剤を提供することが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスに関連した細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定の細胞タイプに向性のキャプシドタンパク質又はそれらの断片、循環(cycling)においてインターナリゼーションするタンパク質に対する抗体、細胞内局在をターゲット化し、細胞内半減期を高めるタンパク質などが、ターゲッティング及び/又は取り込みの促進のために使用されうる。受容体により媒介されるエンドサイトーシスの技術は、例えば、Wuら,J. Biol. Chem. 262,4429−4432 (1987);及びWagnerら,米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 87,3410−3414(1990)によって記載されている。遺伝子治療プロトコールの総説に関して、Andersonら,Science 256,808−813 (1992)を参照のこと。
【0067】
適切な場合、遺伝子送達剤、例えば組み込み配列(integration sequences)などもまた用いられることができる。多数の組み込み配列は、当該技術分野において公知である。(例えば、Nunes−Dubyら,Nucleic Acids Res. 26:391−406,1998;Sadwoski,J. Bacteriol.,165:341−357,1986;Bestor,Cell,122(3):322−325,2005;Plasterkら,TIG 15:326−332,1999;Kootstraら,Ann. Rev. Pharm. Toxicol.,43:413−439,2003を参照のこと)。これらは、リコンビナーゼ及びトランスポザーゼを含む。例としては、Cre(SternbergとHamilton,J. Mol. Biol.,150:467−486,1981)、lambda(Nash,Nature,247,543−545,1974)、FIp(Broachら,Cell,29:227−234,1982)、R(Matsuzakiら,J. Bacteriology,172:610−618,1990)、cpC31(例えば、Grothら,J. Mol. Biol. 335:667−678,2004を参照)、スリーピングビューティー(sleeping beauty)、マリナー(mariner)ファイミリーのトランスポザーゼ(Plasterkら,supra)、及びレトロウイルス又はレンチウイルスのLTR配列及びAAVのITR配列などのウイルス組み込みを提供する構成要素を有するAAV、レトロウイルス、及びレンチウイルスなどのウイルスを組み込むための構成要素(Kootstraら,Ann. Rev. Pharm. Toxicol.,43:413−439,2003)が挙げられる。
【0068】
ウイルスベクター
【0069】
1つの態様では、発明は、遮断剤及び/又は刺激剤発現のための発現ベクターを提供し、それは、ウイルスベクターである。遺伝子治療に有用な多くのウイルスベクターが知られている(例えば、Lundstrom,Trends Biotechnol.,21 : 117,122,2003.を参照のこと)。
【0070】
好ましいウイルスベクターとしては、アンチウイルス(LV)、レトロウイルス(RV)、アデノウイルス(AV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、及びアルファウイルスからなる群から選択されるようなものが挙げられるが、その他のウイルスベクターも使用されうる。生体内使用には、宿主ゲノムに組み込まれないウイルスベクター、例えばアルファウイルス及びアデノウイルスが好ましく、アルファウイルスが特に好ましい。アルファウイルスの好ましいタイプとしては、シンドビスウイルス、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス、及びセムリキ森林ウイルス(SFV)が挙げられ、SFVが特に好ましい。例えば、Lundstrom,Expert Opin. Biol. Then 3:771−777,2003;Afanasievaら,Gene Then,10:1850−59,2003を参照のこと。インビトロ使用には、宿主ゲノムに組み込まれるウイルスベクター、例えばレトロウイルス、AAV、及びアンチウイルスが好ましい。
【0071】
好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、形質変換されたヒト細胞中で一過性の高レベル発現を提供する。
【0072】
1つの実施形態では、ウイルスベクターは、形質変換されたヒト細胞のゲノムへの遮断剤及び/又は刺激剤をコードする核酸の組み込みを提供しない。
【0073】
別の実施形態では、ウイルスベクターは、形質変換されたヒト細胞のゲノムへの遮断剤及び/又は刺激剤をコードする核酸の組み込みを提供する。
【0074】
1つの実施形態では、本発明は、生体内でヒト細胞を形質導入する方法を提供し、その方法は、生体内で固形腫瘍を本発明のウイルスベクターに接触させることを含む。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、生体外でヒト細胞を形質導入する方法を提供し、その方法は、生体外でヒト細胞を本発明のウイルスベクターに接触させることを含む。1つの実施形態では、ヒト細胞は、腫瘍細胞である。1つの実施形態では、ヒト細胞は、同種異系細胞である。1つの実施形態では、腫瘍細胞は、患者由来である。1つの実施形態では、ヒト細胞は、例えば、抗原提示細胞(APC)又はT細胞などの非腫瘍細胞である。
【0076】
当該技術分野で周知のように、ウイルス粒子コートは、改変され、特異性を変え、細胞/組織ターゲティングを改善しうる。また、ウイルスベクターは、その他の媒体、例えばリポソームで送達されうる。また、リポソームは、細胞/組織ターゲティングを改善するために、それらの表面に付着されたターゲティング部分を有しうる。
【0077】
本願は、遮断剤及び/又は刺激剤を発現するヒト細胞を対象とする。好ましい実施形態では、ヒト細胞は、ICOSの細胞外ドメインに特異的に結合し、ICOSにより媒介されたICOS負のシグナル伝達を活性化する、ICOSに対する刺激剤(例えば、分泌又は細胞表面タンパク質として発現されうるICOSL)を発現する。特定の好ましい実施例では、ヒト細胞は、例えば癌患者で、腫瘍細胞の近位にICOSリガンドを発現する。したがって、ヒト細胞は、腫瘍細胞又は腫瘍細胞塊を狙ってリガンドの限局性発現ができる。ICOSリガンドは、前記腫瘍細胞の近位の細胞でICOSシグナル伝達を活性化し、及び/又は腫瘍関連自己抗原に対する免疫寛容を破断し、並びに前記腫瘍細胞に対する自己反応性T細胞応答を刺激する。好ましい実施形態では、ICOSリガンドの限局性発現は、望まれない有害な免疫反応を低減又は阻害する。
【0078】
作用の機構が理解されることは、本発明の実施に必須ではない。本明細書において記載されている細胞及び方法は、腫瘍細胞又は腫瘍細胞塊の近位にヒト細胞を提供する。ICOSに対する刺激剤、及び随意に、T細胞阻害物質タンパク質又は付加的なサイトカインに対する遮断剤を腫瘍細胞の近位に発現することは、抗腫瘍免疫反応を高める。
【0079】
治療の方法
【0080】
本明細書において記載されるのは、T細胞抑制受容体に対する遮断剤及びICOSに対する刺激剤の薬理学的に有効な量を含む医薬組成物を患者へ投与すること含む癌を患う患者を治療する方法である。本明細書において記載されている方法は、癌治療、例えば白血病及び固形腫瘍(例えば黒色腫、癌、肉腫、リンパ腫など)を対象とする。より通常の固形癌としては、膀胱癌、骨癌(骨肉腫)、結腸直腸癌、脳ガン、乳癌、子宮頸癌、食道癌、ホジキンリンパ腫、腎臓癌、肝癌、肺癌、中皮腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、皮膚癌(黒色腫、及び、非黒色腫)、軟組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、及び子宮内膜癌などが挙げられる。
【0081】
投与される医薬組成物は、多くの場合、1つ以上の緩衝液(例えば、中性の緩衝化された生理食塩水又はリン酸緩衝食塩水)、糖質(例えば、グルコース、マンノース、スクロース、又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、又はグリシンなどのアミノ酸、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、二亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなど)、静菌剤、EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤、製剤をレシピエントの血液と等張、低張、又はわずかに高張にする溶質、懸濁剤、増粘剤、防腐剤、香料、甘味料及び、着色化合物を必要に応じて更に含むであろう。
【0082】
当業者に公知のいかなる好適な担体が組成物中に用いられうるが、担体のタイプは、典型的に投与様式に依存して変化するであろう。治療用組成物は、例えば、経口、経鼻、粘膜、直腸、膣内、局所、静脈内、腹膜内、皮内、皮下、及び筋肉内投与など、任意の投与の適切な方法に処方されうる。
【0083】
非経口投与に関して、組成物は、殺菌された、発熱物質を含まない水、油、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、又はエタノールなどの殺菌された液体であることができる医薬担体を含む生理学的に許容可能な希釈剤中の、1つ以上のT細胞抑制受容体の遮断剤、ICOSの刺激剤、1つ以上のT細胞抑制受容体に対する遮断剤及び/又はICOSの刺激薬を発現する発現ベクター、1つ以上のT細胞抑制受容体に対する遮断剤及び/又はICOSの刺激薬又はそれらの組み合わせを発現する発現ベクターで形質転換された細胞の溶液又は懸濁液の注射可能な投与量として投与されることができる。くわえて、組成物中に存在することができる湿潤剤又は乳化剤、界面活性剤、pH緩衝化物質などの補助物質。医薬組成物のその他の構成要素は、石油、動物、野菜又は合成品に由来するもので、例えば、ピーナッツオイルの非水性溶液、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、オレイン酸エチル、及びイソプロピルミリステートなどである。
【0084】
本明細書において記載されている遮断剤及び/又は刺激剤(例えば、そのような遮断剤及び/又は刺激剤を発現する発現ベクター及び/又は形質導入された細胞)は、密封された点滴バッグ、アンプル、又はバイアルなどの単位投与量又は複数回投与量の容器中に存在しうる。そのような容器は、典型的に、使用まで製剤の無菌性及び安定性を保つように密閉される。一般に、製剤は、上を示したように、油性又は水性媒体中に懸濁液、溶液又はエマルションとして保存されうる。あるいは、医薬組成物は、使用直前に殺菌された液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥させた状態で保存されうる。
【0085】
宿主に投与される量は、何に投与されるか、予防又は治療、宿主の状態、投与の方法、投与の回数、投与間隔などの投与の目的に応じて変化するであろう。これらは当業者によって経験的に決定されることができ、治療の反応の範囲に調整されうる。適切な投与量を決定するにあたって考慮すべき要因としては、患者のサイズ及び体重、患者の年齢及び性別、症状の重篤度、病気のステージ、薬剤の送達の方法、薬剤の半減期、及び薬剤の有効性などが挙げられるが、これらに限定されない。考慮すべき病気のステージとしては、病気が急性か慢性か、再発期か寛解期か、及び病気の進行度などが挙げられる。
【0086】
投与量及び治療上有効な量の投与の時間を決めることは、十分当業者の知識の範囲である。例えば、最初の有効量は、細胞培養又はその他のインビトロアッセイから推定されることができる。投与量は、動物モデルにおいて、細胞培養アッセイにより求められたIC50の濃度など、循環濃度又は組織濃度を作りだすように処方されることができる。
【0087】
くわえて、毒性及び治療有効性は、一般に、細胞培養アッセイ及び/又は実験動物を使用することによって、典型的にはLD50(試験集団の50%に対する致死量)及びED50(試験集団の50%において治療効果がある)を決定することによって決定される。ガイダンスは、標準的な参考書に見いだされ、例えば、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版 (Hardman,J. G.ら編集.) マグロウヒル(McGraw−Hill),ニューヨーク(New York),ニューヨーク州(N.Y.) (2001)がある。
【0088】
この発明の目的に関して、投与の方法は治療されている状態及び医薬組成物に依存して選択される。遮断剤及び/又は刺激剤の投与は、多様な方法で行うことができ、例えば、限定はされないが、皮下、静脈内、腹膜内、筋肉内、及び、全身投与が好ましいが場合により特定の器官又は腫瘍への直接注入などが挙げられる。医薬組成物の投与は、単一の経路を通してか、又は同時にいくつかの経路によりうる。
【0089】
組成物は、とりわけ、治療適応及び処方医師の判断により、1日1回、1日2回〜数回、又は更に1日複数回投与されうる。
【0090】
治療効果を得るために必要な遮断剤及び/又は刺激剤の量は、特定の目的のための従来の手順に従って経験的に決定されうる。一般に、治療目的で細胞に投与するには、細胞は、薬理学的に有効な投与量にて与えられる。「薬理学的に有効な量」又は「薬理的に有効な投与量」とは、特に障害又は疾患の状態を治療するために、例えば障害又は疾患の1つ以上の症状又は兆候を低減又は取り除くことなど、所望の生理学的効果を生み出すのに十分なだけの量、又は所望の結果を達成できる量を指す。例として、癌患者への細胞の投与は、基礎となる状態が根滅又は改善される場合だけでなく、患者が疾患に伴う症状の重篤度又は持続の減少を訴える場合も治療的な有用性を提供し、例えば、幡腫性腫瘍細胞(DTC)などの腫瘍の負担の減少、腫瘍細胞循環の減少、進行のない生存の増加などである。また、治療的な有用性は、改善が認識されるかどうかにかかわらず、原疾患又は障害の進行を停止又は減速することも含む。また、上に定義されたように、薬理学的に有効量は、後述のように、細胞と組み合わせて使われる治療用化合物にも適応されるであろう。
【0091】
好ましくは、効果は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、30%、50%、70%、若しくは更に90%又はそれ以上の定量可能な変化をもたらすであろう。また、治療的な有用性は、改善が認識されるかどうかにかかわらず、原疾患又は障害の進行を停止又は減速することも含む。T細胞抑制受容体の遮断剤及びICOSの刺激薬の組み合わせが、その他の治療プロトコールとともに使用される場合、有効量は、成分の組み合わせに対して案分され、効果は個別成分単独に制限されない。
【0092】
癌を治療するであろう薬理的に有効な量は、典型的に、少なくとも約10%の;通常少なくとも約20%;好ましくは少なくとも約30%;又はより好ましくは少なくとも約50%まで症状を変えるであろう。そのようなことは、例えば、影響される細胞の数における統計的有意差及び定量可能な変化をもたらすであろう。これは、遠位の臓器における微小転移の数の減少、再発性転移性疾患減少の減少などでありうる。
【0093】
本明細書において記載されている遮断剤及び刺激剤は、その他の抗腫瘍治療、例えば、外科的切除、放射線療法、化学療法、免疫療法、並びに支持療法(例えば鎮痛剤、利尿薬、抗利尿薬、抗ウイルス薬、抗生物質、栄養剤、貧血治療、血液凝固治療、骨治療、並びに精神病理学的及び心理学的な治療)などと組み合わせられうる。そのような他の抗腫瘍治療、例えば、1つ以上のT細胞抑制受容体に対する1つ以上の遮断剤の治療などは、ICOSの刺激薬の投与に連続して(例えば、前又は後)、若しくは同時に提供されうる。
【実施例】
【0094】
実施例1:ICOSに対する刺激剤は、抗CTLA−4抗体及び抗PD−L1抗体の抗癌効果を高める
【0095】
実施例1.1:ICOS抗体に対する刺激剤のCD4+T細胞増殖への効果
【0096】
製造業者の指示に従って、DynalネズミCD4+T細胞ネガティブ選択(negative selection)キットを使って、CD4+T細胞をC57BL/6マウスの脾臓から調製した。抗CD3mAb(0.5μg/mL)、及び2μg/mLの抗CD28、5μg/mLの抗ICOSmAbの(クローンC398.4A及び7E.17G9)で予めコーティングした96ウェルプレート又はコーティングしなかった96ウェルプレート中で、50,000個のCD4+T細胞を刺激した。細胞を、37℃、5%のC02で72時間培養し、培養終了の8時間前に1μciの3H−チミジンを各ウェル(well)に添加した。プレートから細胞を採取し、3H−チミジン取込みを分析した。
【0097】
図1にて示すように、抗CD3抗体の存在下で、抗ICOS抗体は、CD4+T細胞の増殖を高めた。
【0098】
実施例1.2:抗CTLA−4により誘発されたICOS発現と腫瘍増殖との間の間接的な相関関係
【0099】
マウスを、2X104個のB16F10腫瘍細胞で抗原投与した。マウスを未治療としたか、又は治療を施した。治療した動物には、腫瘍抗原投与の3日後に、200μgの抗CTLA−4抗体を、並びに腫瘍抗原投与の6、9、12、15、18、及び21日後に100μgの抗CTLA−4抗体を与えた。腫瘍増殖及び血液中のCD4+FOXP3-エフェクターT細胞上のICOSのレベルを3日ごとに観察した。
【0100】
図2にて示すように、治療した動物から分離したCD4+FOXP3-細胞は、増加したレベルのICOSを発現した。くわえて、ICOSの増加した発現は間接的に全身腫瘍組織量と相関した(図2)。
【0101】
実施例1.3:ICOS-orICOSL-マウスは、抗CTLA−4抗体により媒介される減少した抗癌反応を示す
【0102】
B16/BL6腫瘍をもつ、野生型C57BL/6、ICOS欠損C57BL/6、及びICOS−リガンド(ICOSL)欠損57BL/6マウスを、未治療のままか、若しくは1x106個の放射線照射を受けたGM−CSF−産生B16(GVAX)(移植後腫瘍後3日目)を皮下注射で、及び3、5、及び7日目に、それぞれ、投与量0.2、0.1、及び0.1mgの抗CTLA−4(9H10)を腹腔内投与で治療するかのいずれかとした。腫瘍増殖を観察し、80日目に生存率を算出した。
【0103】
腫瘍をもち、未治療の野生型、ICOS欠損、又はICOSL欠損マウスは、腫瘍移植後25日目〜41日目の間に死亡した(それぞれ白丸、白三角形及び白四角形)。逆に、野生型マウスをGVAX及び抗CTLA−4併用療法で治療した場合、90%の生存が観察された(黒丸)。注目すべきことに、ICOS欠損(黒三角形)及びICOSL欠損マウス(黒正方形)は、GVAX及び抗CTLA−4抗体で治療した後著しく低い防御を示し、GVAX/抗CTLA−4併用療法の間のこのリガンド/受容体対相互作用の鍵となる役割をはっきり示している。
【0104】
実施例1.4:GVAX、抗CTLA−4抗体、及び抗ICOS抗体を使用した強化された抗癌効果
【0105】
5X104個のB16/BL6腫瘍細胞で抗原投与したマウスを、(1)未治療、(2)1X106個の放射線照射したGM−CSF−産生B16のみで治療(GVAX;皮下注射、移植後3、6、及び9日目)、(2)1X106個の放射線照射を受けたGVAX(皮下注射、移植後3、6、及び9日目)、200μgの抗CTLA−4抗体(腫瘍移植後3日目)、及び100μgの抗CTLA−4抗体(腫瘍移植後6、9、13、及び17日目)で治療、又は(3)1X106個の放射線照射を受けたGVAX(注入後3、6、及び9日目)、200μgの抗CTLA−4抗体(腫瘍移植後3日目)、100μgの抗CTLA−4抗体(腫瘍移植後6、9、13、及び17日目)及び200μgの抗ICOS抗体(腫瘍移植後6、9、13、及び17日目)で治療した。腫瘍増殖を観察し、80日目に生存を算出した。
【0106】
図4に示すように、GVAX、抗CTLA−4抗体、及び抗ICOS抗体の組み合わせで動物を治療することによって、GVAX及び抗CTLA−4抗体のみで動物を治療することと比較して、遅延した腫瘍成長をもたらした。この結果は、抗CTLA−4及び抗ICOS抗体とともにGVAXで治療したマウスは、GVAX及び抗CTLA−4のみで治療したマウスと比較してより高い生存率を示す結果と一致する(図5)。
【0107】
実施例1.5:抗ICOS及び抗PD−L1抗体を使用した強化された抗癌効果
【0108】
日齢3日のB16/BL6をもつマウスを、未治療か、又は1x106個の放射線照射したGM−CSF−産生B16(GVAX)を皮下注射で(腫瘍移植後3日目)及び抗ICOS抗体(7E.17G9)、抗PD−L1抗体(10F.9G2)又はその組み合わせを、3、5及び7日目にそれぞれ0.2、0.1、及び0.1mg、腹腔内投与で治療かのいずれかとした。腫瘍増殖を観察し、80日目に生存率を算出した。
【0109】
GVAX及び抗ICOS抗体、又はGVAX及び抗PD−L1抗体の組み合わせで治療したマウスは、低い生存率を示した(図6)。対照的に、抗PD−L1抗体、抗ICOS抗体、及びGVAXを使用した併用療法は、50%生存をもたらし、抗PD−L1抗体(10F.9G2)及びGVAXと抗ICOS抗体(7E.17G9)との組み合わせで得られた強い相乗効果をはっきり示している。
【0110】
実施例2:抗腫瘍ワクチンとしてのICOSリガンド発現腫瘍細胞の使用
【0111】
実施例2.1
【0112】
実施例2.1.1:抗体
【0113】
抗CTLA4(クローン9H10)は、Bio X Cellから購入した。
【0114】
実施例2.1.2:細胞系
【0115】
腫瘍原性が高く、免疫原性に乏しい黒色腫細胞系B16/BL6を腫瘍抗原投与に使用した。腫瘍をもつマウスの治療に、B16/BL6−発現GM−CSF、ここではGVAXと呼ぶ、を使用した。コネチカット大学(University of Connecticut)のDr. Leo lefrancoisから贈与されたベクターMSCV−IRES−Thy1.1を使って、B16/BL6細胞にレトロウイルス形質導入をして、B16−Thy1.1を作製した。カリフォルニア大学(University of California)、バークレー(Berkeley)校)のDr. William Shaから贈与されたマウスICOSLの全長を発現するベクターMSCV−ICOSLを使って、B16/BL6細胞をレトロウイルス形質導入をして、B16−mICOSLを作製した。また、MSCV−ICOSLベクターを使って、GVAX細胞を形質導入して、GVAX−mICOSLを作製した。
【0116】
実施例2.1.3:腫瘍抗原投与及び治療実験
【0117】
ゼロ日目に、マウス右脇腹に、50,000個のB16/BL6黒色腫細胞を皮内投与し、3、6、9、及び12日目に、7.5×105個の放射線照射した(150Gy)B16/BL6−Thy1.1(n=10)、又はB16−mICOSL(n=10)と混合した、7.5×105個の放射線照射した(150Gy)GVAXを左脇腹に、腹腔内投与の100μgの抗CTLA4(3日目は200μg)と組み合わせて、治療を施した。腫瘍増殖及び拒絶を、時間の経過とともに観察した。
【0118】
ゼロ日目に、マウス右脇腹に、20,000個のB16/BL6黒色腫細胞を皮内投与し、未治療か、若しくは3、6、9、及び12日目に、1×106個の放射線照射した(150Gy)GVAX(n=10)、又はGVAX−mICOSL(n=10)を左脇腹に、腹腔内投与の100μgの抗CTLA4(3日目は200μg)と組み合わせて、治療を施した。腫瘍増殖及び拒絶を、時間の経過とともに観察した。
【0119】
ゼロ日目に、マウス右脇腹に、20,000個のB16/BL6黒色腫細胞を皮内投与し、未治療か、若しくは3、6、9、及び12日目に、1×106個の放射線照射した(150Gy)B16/ BL6−Thy1.1(n=10)、又はB16−mICOSL(n=10)を左脇腹に、腹腔内投与の100μgの抗CTLA4(3日目は200μg)と共に又は無しに、治療を施した。腫瘍増殖及び拒絶を、時間の経過とともに観察した。
【0120】
ゼロ日目に、マウス右脇腹に、20,000個のB16/F10黒色腫細胞を皮内投与し、未治療か、若しくは3、6、9、及び12日目に、1×106個の放射線照射した(150Gy)B16−mICOSL(n=5)を左脇腹に、腹腔内投与の100μgの抗CTLA4(3日目は200μg)と共に又は無しに、治療を施した。腫瘍増殖及び拒絶を、時間の経過とともに観察した。
【0121】
実施例2.2:結果
【0122】
ICOSLを発現するB16細胞ワクチンは、GVAXがあってもなくても、従来のGVAX及びCTLA−4遮断の併用療法を超える腫瘍防御率をもたらすことはなかった(図7及び8)。
【0123】
GM−CSFのない状況で、ICOSを発現するB16細胞ワクチンは、CTLA−4遮断と相乗効果を有して腫瘍の増殖を遅らせ、及び/又は腫瘍拒絶において総合的に有用性がある(図9〜12)。
【0124】
本明細書において言及されているすべての特許及び特許刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
上記の説明を読めば、当業者であれば他の種々の修正及び改良を思い付くことができるだろう。すべてのそのような変更及び改善は、簡潔性及び読みやすさのためにここでは削除されてきたが、以下の特許請求の範囲内に含まれることは理解されるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B