特許第5960616号(P5960616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960616
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】可変容量形オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/00 20060101AFI20160719BHJP
   F04C 14/18 20060101ALI20160719BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F04C14/00 C
   F04C14/18
   F04C2/10 341Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-8601(P2013-8601)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139420(P2014-139420A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柘植 徳之
(72)【発明者】
【氏名】高木 登
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕基
(72)【発明者】
【氏名】小野 壽
【審査官】 後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145095(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013625(WO,A1)
【文献】 特開2009−180359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/08−2/352,11/00−15/06,
18/30−18/352,18/48−18/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の1回転あたりの吐出量を変更可能な容量可変機構を備えた可変容量形のオイルポンプであって、
前記容量可変機構は、ポンプハウジングの内部に設けられた油圧室と、該油圧室の油圧によって変位する容量調整部材とを備え、その油圧室へ制御弁から供給される制御油圧を受けて動作するように構成されており、
前記油圧室に臨んで開口し、前記ポンプハウジングの壁部を貫通してオイルの一部を外部に逃がすように、オイル逃がし穴が設けられていることを特徴とする可変容量形オイルポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記ポンプハウジングの内部には、ポンプ吐出圧の導入される高圧空間が前記油圧室に隣接して設けられ、
前記高圧空間と油圧室との間のシール部が、前記容量可変機構の動作に伴い前記ポンプハウジングの壁部の内面に沿って移動するように構成されている、可変容量形オイルポンプ。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記入力軸により回転される外歯車のドライブロータと、これに噛み合って回転される内歯車のドリブンロータとを備え、
前記容量可変機構は、
前記容量調整部材として、前記ドリブンロータを外周から回転自在に保持する環状の保持部材を備え、
前記油圧室に供給される制御油圧を受けて前記保持部材が変位し、前記ポンプハウジングに形成された吸入ポートおよび吐出ポートに対する相対的な位置が変化することによって、吐出量を変更するように構成されている、可変容量形オイルポンプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
エンジンに装備され、
前記オイル逃がし穴には、前記エンジンの所定の被潤滑部にオイルを導くように導油路が連通されている、可変容量形オイルポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
前記導油路の途中に絞り部が設けられている、可変容量形オイルポンプ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
エンジンに装備され、
前記オイル逃がし穴が、前記油圧室に臨む開口端から遠ざかるに連れて徐々に断面積の小さくなる、先窄まりの形状とされている、可変容量形オイルポンプ。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の可変容量形オイルポンプにおいて、
エンジンに装備され、
前記オイル逃がし穴が、前記油圧室に臨む開口端から遠ざかるに連れて徐々に断面積の大きくなる、末広がりの形状とされている、可変容量形オイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変容量形のオイルポンプに関し、特に容量可変機構に供給する制御油圧を電子制御式の制御弁によって調圧するようにしたものに係る。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、エンジンのオイルポンプとして、互いに噛み合うインナロータ(ドライブロータ)およびアウタロータ(ドリブンロータ)の回転により、吸入ポートから吸い込んだオイルを吐出ポートに吐出する内接ギヤ式のものが知られている。
【0003】
このものでは、ハウジング内においてアウタロータを外周から回転自在に保持する調整リングを備えており、ハウジング内の加圧空間に導入される油圧を受けて調整リングが変位すると、インナロータおよびアウタロータの吸入ポートや吐出ポートに対する相対的な位置が変化するようになっている。これにより、入力軸の1回転あたりの吐出量(いわゆる押しのけ容積であって、以下、ポンプ容量ともいう)を変更することができる。
【0004】
また、同文献の段落0043〜0047(他の実施形態)や図面の図3、4などに開示されているように、ハウジング内には加圧空間に隣接して制御空間(油圧室)が設けられており、ここには電子制御式の制御弁から制御油圧を調圧供給して、前記のような調整リングの変位を補助する力を発生させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−132356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来例の他の実施形態のように、制御空間の油圧を電子制御式の制御弁によって調圧し、調整リングを変位させる力の大きさを調整していても、オイルポンプからの吐出圧が目標値からずれてしまうことがあり、そのポンプ容量の制御による吐出圧などの制御性を改善する余地が残されている。
【0007】
すなわち、例えば吐出圧の過度の増大を抑えるために、エンジン回転数の上昇に連れて制御弁への電流を増大させ、供給する制御油圧を増大させることによって、調整リングの変位を大きくするときに、そうして電流を増大させてゆく途中でポンプ吐出圧が急減してしまい、目標圧に制御できないことがあった。
【0008】
本発明者は、そのような吐出圧の急変の原因を究明すべく鋭意、実験および研究を重ねた結果、制御油圧の供給されるハウジング内の制御空間に対して例えば加圧空間やポンプ作動室などから滲み入ってくるオイルの影響で油圧が急変してしまい、調整リングに急な変位を起こさせていることに気がついた。
【0009】
かかる新規な知見に基づいて本発明は、例えばエンジンなどに装備される可変容量形のオイルポンプにおいて、制御弁から供給する制御油圧によって容量可変機構を動作させる際の制御性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために本発明では、オイルポンプのハウジング内の制御空間(油圧室)から油圧を逃がすための小穴を設けて、滲み入ってくるオイルを適度にリークさせることにより、油圧の急変を抑制するようにした。
【0011】
具体的に本発明は、入力軸の1回転あたりの吐出量を変更可能な容量可変機構を備えた可変容量形のオイルポンプを対象とする。そして、前記容量可変機構が、ポンプハウジングの内部に設けられた油圧室と、該油圧室の油圧によって変位する容量調整部材とを備え、その油圧室へ制御弁から供給される制御油圧を受けて動作するように構成されている場合に、当該容量可変機構の油圧室に臨んで開口し、ポンプハウジングの壁部を貫通してオイルの一部を外部に逃がすように、オイル逃がし穴を設けたことを特徴とする。
【0012】
前記のような構成のオイルポンプでは、入力軸の回転数が高くなるに連れて、吐出流量の増大とともに吐出圧も増大傾向を示すようになるが、これに対してポンプハウジング内の油圧室の油圧を制御弁によって調圧し、容量可変機構を動作させることによって、入力軸の1回転あたりの吐出量(ポンプ容量)を減少させれば、吐出圧の上昇を抑制することができる。
【0013】
ここで、前記のように吐出圧が上昇傾向を示す状況では、例えば吐出ポートやポンプ作動室などから油圧室に滲み入ってくるオイルの影響で、制御弁からの制御油圧を増大させる際に油圧室の油圧が急増する虞があるが、前記の構成によれば油圧室に臨んで開口するオイル逃がし穴からオイルの一部を逃がすことで、油圧の急変を抑制することができる。
【0014】
よって、油圧室の油圧の急変による調整リングの急な動作を抑制でき、吐出量ひいては吐出圧の制御性を高めることができる。オイルポンプがエンジンに装備されている場合は、エンジンのメインギャラリの油圧の制御性が向上し、好適な潤滑性能の維持に寄与することになる。
【0015】
一例として前記ポンプハウジングの内部に、ポンプ吐出圧の導入される高圧空間が前記油圧室に隣接して設けられ、前記高圧空間と油圧室との間のシール部が、前記容量可変機構の動作に伴い前記ポンプハウジングの壁部の内面に沿って移動するように構成されていてもよい。
【0016】
この場合には、前記高圧空間と油圧室との間のシール部がハウジングの壁面に沿って移動する構造であるから、このシール部を介して隣接する高圧空間から油圧室にオイルが浸入し易い。よって、前記したように油圧室からオイルの一部をリークさせることによって不具合を抑制する発明の効果が、特に有効なものとなる。
【0017】
前記オイルポンプとしては、ギヤポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプなど種々の構造が考えられるが、例えば内接ギヤポンプであって、前記入力軸により回転される外歯車のドライブロータと、これに噛み合って回転される内歯車のドリブンロータとを備えていてもよい。
【0018】
この場合、前記容量可変機構は、前記容量調整部材として、前記ドリブンロータを外周から回転自在に保持する環状の保持部材を備え、前記油圧室に供給される制御油圧を受けて前記保持部材が変位し、前記ポンプハウジングに形成された吸入ポートおよび吐出ポートに対する相対的な位置が変化することによって、吐出量を変更するように構成すればよい。
【0019】
このようにオイルポンプとしてギヤポンプを用いた場合、ドライブロータとドリブンロータとの間の作動室から容量可変機構の油圧室に滲み入ってくるオイルが多くなり易いので、前記したように油圧室に滲み入ってくるオイルの一部を逃がすことで、不具合を抑制する発明の効果が特に有効なものとなる。
【0020】
また、前記オイルポンプがエンジンに装備されている場合に、前記オイル逃がし穴には、前記エンジンの所定の被潤滑部にオイルを導くように導油路を連通してもよい。こうすれば、オイルポンプの油圧室からリークさせたオイルを、エンジンの潤滑に有効利用することができる。
【0021】
その場合に、前記導油路の途中に絞り部を設ければ、前記オイル逃がし穴からリークするオイルの流量を調整することができるので、製造過程でのオイル逃がし穴の大きさにばらつきがあっても、その影響を軽減してオイルの逃がし量を好適なものとすることができる。よって、容量可変機構の制御性を高める上で有利になる。
【0022】
或いは、前記オイル逃がし穴からオイルポンプの近傍に位置する被潤滑部にオイルを供給することも可能であり、例えばオイルポンプを駆動するチェーンにオイルを供給するのであれば、オイル逃がし穴を、前記油圧室に臨む開口端から遠ざかるに連れて徐々に断面積が小さくなるような先窄まりの形状とすればよい。こうすれば、チェーンなどに向けて集中的にオイルを噴き付けることができる。
【0023】
一方、オイルポンプの近傍の複数の被潤滑部にオイルを供給するのであれば、前記オイル逃がし穴は、前記油圧室に臨む開口端から遠ざかるに連れて徐々に断面積が大きくなるような末広がりの形状とすればよい。こうすればオイル逃がし穴から広範囲にオイルを飛散させて、複数の被潤滑部に供給することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る可変容量形オイルポンプによると、容量可変機構を動作させるための油圧室に臨んで開口し、ポンプハウジングの壁部を貫通するオイル逃がし穴を設けて、該油圧室に滲み入ってくるオイルの一部を適度にリークさせるようにしたので、その油圧室の油圧の急変による容量可変機構の急な動作を抑制でき、オイルポンプの吐出量ひいては吐出圧の制御性を高めることができる。また、このオイルポンプをエンジンに装備した場合は、エンジンのメインギャラリの油圧の制御性が向上し、好適な潤滑性能の維持に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係るエンジンのオイル供給系統の一例を示す全体構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るオイルポンプの構造を示す断面図であって、ポンプ容量が最大の状態を示す。
図3】同オイルポンプの容量が最小の状態を示す図2相当図である。
図4】OCVへの駆動電流とポンプ吐出圧との関係を調べた実験結果のグラフ図である。
図5】リークさせたオイルをエンジンの被潤滑部へ導く導油管を模式的に示す説明図である。
図6】第2の実施形態に係る図3相当図である。
図7】第3の実施形態に係る図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、自動車用の4気筒ガソリンエンジン1のオイル供給系統2に本発明を適用した場合について説明するが、これに限ることはない。本実施形態の記載はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定するものではない。
【0027】
(エンジンおよびオイル供給系統の概略)
まず、図1に仮想線で示すようにエンジン1は、シリンダブロック10の上部にシリンダヘッド11が組み付けられてなる。シリンダブロック10には4つのシリンダ(図示せず)が設けられ、それぞれに収容されているピストン12(図には1つのみ示す)は、コネクティングロッド12aを介してクランクシャフト13に連結されている。このクランクシャフト13は、図の例では5つのクランクジャーナル13aにおいてシリンダブロック10の下部(クランクケース)に回転自在に支持されている。
【0028】
一方、シリンダヘッド11には、各シリンダ毎の吸気バルブ12bおよび排気バルブ12cを駆動する動弁系のカムシャフト14,15が配設されている。一例として動弁系は、吸気側および排気側の2本のカムシャフト14,15を備えたDOHCタイプのもので、これらのカムシャフト14,15は、それぞれ図の例では5つのカムジャーナル14a,15aにおいてシリンダヘッド11に回転自在に支持されている。
【0029】
そして、それら2本のカムシャフト14,15がクランクシャフト13の回転に同期して回転され、吸気バルブ12bおよび排気バルブ12cを開閉させる。すなわち、クランクシャフト13の前端部(図1の左側の端部)にはクランクスプロケット(図示せず)が取り付けられる一方、2本のカムシャフト14,15の端部にはそれぞれカムスプロケット14b,15bが取り付けられ、それらに亘ってタイミングチェーン3が巻き掛けられている。これによりカムシャフト14,15は、クランクシャフト13の回転に同期して回転される。
【0030】
また、前記クランクスプロケットの後側に隣接してオイルポンプ5を駆動するためのスプロケット(図示せず)も取り付けられている。すなわち、オイルポンプ5は、クランクシャフト13の前端部の下方に位置し、その入力軸5aにはポンプスプロケット5bが取り付けられていて、このポンプスプロケット5bと前記クランクシャフト13のスプロケットとの間にチェーン4が巻き掛けられている。
【0031】
そうしてクランクシャフト13からの力によって入力軸5aが回転されると、オイルポンプ5から吐出されるエンジンオイル(以下、単にオイルともいう)がオイル供給系統2を介して、前記のピストン12やクランクジャーナル13a、カムジャーナル14a、15aなどの被潤滑部に供給される。オイル供給系統2は、オイルポンプ5の動作によってオイルパン16から吸い上げたオイルを、オイルフィルタ6によって濾過した後にメインギャラリ20へと供給する。
【0032】
すなわちオイルポンプ5は、オイルパン16内に貯留されているオイルを、図示しないオイルストレーナを介して吸い上げ、吐出ポート50e(図2を参照)から吐出して連通路6aによってオイルフィルタ6に送給する。オイルフィルタ6は、ハウジング内に収容されたフィルタエレメントによってオイル内の異物や不純物などを濾過するものであり、ここで濾過されたオイルがメインギャラリ20に送給される。
【0033】
メインギャラリ20は、例えばシリンダブロック10の内部にシリンダ列方向に延びるように形成されて、オイルポンプ5から送られてくるオイルを複数の分岐オイル通路21〜23によって被潤滑部などに分配する。図の例ではメインギャラリ20の長手方向に等間隔で分岐しそれぞれ下方に延びる分岐オイル通路21によって、クランクジャーナル13aにオイルが供給される。また、メインギャラリ20の両端からそれぞれ上方に延びる分岐オイル通路22,23によって、シリンダヘッド11のカムジャーナル14a,15aなどにオイルが供給される。
【0034】
(オイルポンプの構造:第1の実施形態)
以下にオイルポンプ5の構造について図2を参照して詳細に説明する。図2には第1の実施形態を示し、この例ではオイルポンプ5は、入力軸5aにより回転される外歯車のドライブロータ51と、これに噛み合って回転される内歯車のドリブンロータ52と、そのドリブンロータ52を外周から回転自在に保持する調整リング53(保持部材)と、をハウジング50(ポンプハウジング)内に収容してなる。調整リング53は、後述するようにドライブロータ51およびドリブンロータ52を変位させることにより、ポンプ容量を変更する容量調整部材でもある。
【0035】
ハウジング50は全体としては厚肉の板状であり、図2に示すようにエンジン後方から見た平面視では左右に長い楕円形状とされ、図の右上部から右側に向かって突出部50aが、また、図の左下部からは下方に向かって突出部50bが、それぞれ形成されている。また、ハウジング50の全体に後方、即ちエンジン1の内方(図の手前側)に向かって開放された凹部50cが形成されている。
【0036】
この凹部50cは前記ドライブロータ51、ドリブンロータ52、調整リング53等を収容するものであり(以下、収容凹部50cという)、ハウジング50に後方から重ね合わされるカバー(図示せず)によって閉止される。また、収容凹部50cの中央よりもやや右側位置には円形断面の貫通孔(図には示さず)が形成され、ここに挿通された入力軸5aがハウジング50の前方に突出している。
【0037】
そうしてハウジング50の前方に突出する入力軸5aの前端部に、チェーン4の巻き掛けられるポンプスプロケット5bが取り付けられている一方、入力軸5aの後端部は、ドライブロータ51の中央部を貫通し、例えばスプラインによって嵌合されている。このドライブロータ51には、外周にトロコイド曲線またはトロコイド曲線に近似した曲線(例えばインボリュート、サイクロイドなど)を有する外歯51aが複数(図の例では11個)、形成されている。
【0038】
一方、ドリブンロータ52は円環状に形成され、その内周には前記ドライブロータ51の外歯51aと噛み合うよう、これより歯数が1歯大きい(図の例では12個の)内歯52aが形成されている。ドリブンロータ52の中心は、ドライブロータ51の中心に対して所定量、偏心しており、その偏心している側(図2の左上側)でドライブロータ51の外歯51aとドリブンロータ52の内歯52aとが噛み合っている。
【0039】
また、ドリブンロータ52は、調整リング53の円環状の本体部53aによって摺動自在に嵌合支持されている。この例では調整リング53には、その本体部53aの外周から周方向に所定の角度範囲(図の例では約50°)に亘って径方向外方に張り出す2つの張出部53b,53cと、径方向外方に大きく延びるアーム部53dと、小さな突起部53eとが一体に形成されている。調整リング53について詳しくは後述する。
【0040】
そのようにして調整リング53に保持されたドライブロータ51およびドリブンロータ52によって、本実施形態では11葉12節のトロコイドポンプが構成されており、2つのロータ51,52の間の環状の空間には、互いに噛合する歯と歯の間に円周方向に並んだ複数の作動室Rが形成される。これらの各作動室Rは2つのロータ51,52の回転に連れてドライブロータ51の外周に沿うように移動しながら、その容積が増減する。
【0041】
すなわち、2つのロータ51,52の歯が互いに噛み合う位置から、図に矢印で示すロータ回転方向に約180度に亘る範囲(図2では左下側の範囲)では、2つのロータ51,52の回転に連れて徐々に作動室Rの容積が増大してゆき、オイルを吸入する吸入範囲となる。一方、残りの約180度に亘る範囲(図2では右上側の範囲)では、ロータ51,52の回転に連れて徐々に作動室Rの容積が減少してゆき、オイルを加圧しながら吐出する吐出範囲となる。
【0042】
そして、それらの吸入範囲および吐出範囲にそれぞれ対応するように、ハウジング50およびカバーに吸入ポートおよび吐出ポートが形成されている。図2にはハウジング50の吸入ポート50dおよび吐出ポート50eのみを示すが、この吸入ポート50dは、ハウジング50の収容凹部50cの底面において前記の吸入領域に対応するように開口し、同じく吐出領域に対応するように吐出ポート50eが開口している。
【0043】
吸入ポート50dは、図ではハウジング50の左下側に位置して、図示しないカバーの吸入ポートと連通しており、これを介してオイルストレーナの吸入管路に連通している。一方、吐出ポート50eはハウジング50の右上側に位置して、図示しないカバーの吐出ポートと連通するとともに、ハウジング50の突出部50aに対応するように図の右側に向かって延びていて、オイルフィルタ6に向かう連通路6aに至る。
【0044】
かかる構成によりオイルポンプ5は、ポンプスプロケット5bに伝達されるクランクシャフト13からの力を受けて入力軸5aが回転すると、ドライブロータ51およびドリブンロータ52が互いに噛み合いながら回転し、それらの間に形成される作動室Rに吸入ポート50dからオイルが吸入され、加圧されて吐出ポート50eから吐出される。
【0045】
こうして吐出されるオイルの流量は、オイルポンプ5の回転数(入力軸5aの回転数)、即ちエンジン回転数が高くなるほど多くなるので、エンジン1の高回転域においてクランクジャーナル13aなどの被潤滑部に供給されるオイルの量が多くなっても、メインギャラリ20の油圧は所定以上の大きさに維持して、被潤滑部に適正にオイルを分配することができる。
【0046】
−容量可変機構−
本実施形態のオイルポンプ5は、ドライブロータ51の1回転につき吐出するオイルの量、即ちポンプ容量を変更可能な容量可変機構を備えている。本実施形態では、主に吐出ポート50eから導かれた油圧(吐出圧)によって前記の調整リング53を変位させて、ドライブロータ51およびドリブンロータ52の吸入ポート50dおよび吐出ポート50eに対する相対的な位置を変更することにより、1回転あたりに吸入および吐出するオイルの流量を変更する。
【0047】
詳しくは図2に表れているように、調整リング53の本体部53aから径方向外方に延びるアーム部53dには、圧縮コイルスプリング54からの押圧力が作用しており、これによって調整リング53が図の時計回りに回動しながら、少し上方に変位するように付勢されている。また、このような変位の際に調整リング53は、ガイドピン55,56によって案内される。
【0048】
すなわち、調整リング53の張出部53b,53cはそれぞれ湾曲する楕円の枠状に形成されていて、ハウジング50の収容凹部50cの底面に突設されたガイドピン55,56を収容している。これらガイドピン55,56はそれぞれ枠状の張出部53b,53cの内周に接触して、その長手方向に摺動するようになっており、これにより調整リング53の変位の軌跡が規定される。
【0049】
こうしてガイドピン55,56によって案内されて変位する調整リング53が、収容凹部50c内を図の右上側の高圧空間THと、左側から下側にかけての低圧空間TLとに仕切っており、高圧空間THの油圧を受けて動作される。すなわち、高圧空間THは、ハウジング50の収容凹部50c内において、調整リング53の張出部53cの外周とハウジング50の壁部とによって囲まれ、かつ、第1および第2のシール材57,58によってオイルの流れが制限される領域に形成される。
【0050】
そして、この高圧空間THには吐出ポート50eの開口の一部が臨み、オイルポンプ5の吐出圧が高圧空間THに導かれて調整リング53外周面に作用するようになる。これに対して、吸入ポート50dの連通する低圧空間TLには概ね大気圧が作用しているので、調整リング53は、高圧空間THからの油圧によって図の反時計回りに回動するように付勢されることになる。
【0051】
一方で調整リング53は、前記したようにアーム部53dに作用するコイルスプリング54の弾発力を受けて時計回りに付勢されており、主にそれらの付勢力によって変位するようになる。例えばアイドリングのようにエンジン回転数が低いときに調整リング53は、コイルスプリング54の弾発力によって図2の最大容量位置に変位する。このとき、ドライブロータ51およびドリブンロータ52の1回転当たりに、吸入ポート50dから吸い込んで吐出ポート50eから吐出するオイルの量、即ちポンプ容量が最大になる。
【0052】
この状態からエンジン回転数が上昇すると、オイルの吐出量の増大によって吐出圧も増大傾向となるので、高圧空間THの油圧を受けて調整リング53は、コイルスプリング54の弾発力に抗して反時計回りに変位する。これによりポンプ容量は減少し、回転数が高くても吐出量ひいては吐出圧の増大が抑制される。そして、図3に示すように調整リング53が最小容量位置に位置づけられると、1回転当たりの吐出量は最小になる。
【0053】
さらに、本実施形態では、図2、3にそれぞれ示すように、ハウジング50内には高圧空間THに隣接するように制御空間TC(油圧室)を設けて、ここに電子制御式の制御弁60(Oil Control Vale:以下、OCVという)から制御油圧を供給し、前記のような調整リング53の変位を補助する力を発生させる。OCV60により制御油圧を高精度に調圧し、調整リング53の変位を補助する力の大きさを調整することで、前記のようなポンプ容量の制御性が高くなる。
【0054】
具体的には、前記調整リング53の2つの張出部53b,53cのほぼ中間においてその外周には第2のシール材58が配設され、収容凹部50cを取り囲むハウジング50の壁部の内面と摺接するようになっている。この第2のシール材58は、高圧空間THと制御空間TCとの間のシール部であって、前記のような調整リング53の変位に伴いハウジング50の壁部の内面に沿って移動することになる。
【0055】
同様に調整リング53のアーム部53dの先端には第3のシール材59が配設されて、対向するハウジング50の壁部の内面と摺接するようになっている。なお、これら第2および第3のシール材58,59、および、前記した第1のシール材57は、いずれも調整リング53の厚み(図2、3の紙面に直行する方向の寸法)と同程度の寸法を有し、耐摩耗性に優れた金属材や樹脂材にて形成されている。
【0056】
こうして制御空間TCは、ハウジング50の収容凹部50c内において、調整リング53の外周(詳しくは張出部53bの外周)とアーム部53dと、それらに対向するハウジング50の壁部とによって囲まれ、かつ前記第2および第3のシール材58,59によってオイルの流れが制限される領域に形成される。そして、この制御空間TCにおいて収容凹部50cの底面に開口する制御油路61によって、OCV60から制御油圧が供給される。
【0057】
すなわち、制御油路61はその一端部が前記のように制御空間TCに臨む丸穴61aとして開口する一方、他端部がOCV60の制御ポート60aに連通している。OCV60は、図示しないコントローラからの信号を受けてスプールの位置が変更され、供給ポート60bからのオイルを制御ポート60aから制御油路61へ送り出す状態と、制御油路61から排出されてきたオイルを制御ポート60aに受け入れて、ドレンポート60cから排出する状態とに切り換えられる。
【0058】
また、一例としてリニアソレノイドバルブであるOCV60は、コントローラからの信号に応じてスプールの位置が連続的に変化し、前記のように制御ポート60aから制御油路61へ送り出すオイルの圧力をリニアに増大または減少させることができる。よって、例えば前記のようにエンジン回転数の上昇に伴い調整リング53が図2の反時計回りに変位する際に、制御空間TCに供給する制御油圧を増大させて、調整リング53の変位を補助することができる。
【0059】
一方、OCV60の制御によって制御空間TCに供給する制御油圧を低下させれば、調整リング53の反時計回りの変位を抑えることができる。これによりポンプ容量の制御性が向上する。なお、図2、3に示すように本実施形態では、オイルポンプ5の吐出ポート50eからオイルフィルタ6への連通路6aの途中に分岐路6bを接続して、OCV60にオイルを供給するようにしているが、これに限らず、例えばオイルフィルタ6によって濾過されたオイルをOCV60に供給するようにしてもよい。
【0060】
−オイル逃がし穴−
本実施形態のような可変容量形のオイルポンプでは、上述の如く電子制御式のOCV60を用いて調整リング53の変位量を制御するようにしていても、ポンプ容量が変動してしまいその吐出圧を狙い通りに制御できないことがあった。この点について図4を参照し、以下に説明する。
【0061】
図4は、OCV60の駆動電流とオイルポンプ5の吐出圧との相関を調べた結果の一例を示し、ポンプ回転数はほぼ一定である。図に表れているように、OCV60の駆動電流が所定値aAに達するまでは、ポンプ吐出圧は400kPaくらいに保たれている。つまり、制御空間TCに供給される制御油圧は実質、増大しておらず、ポンプ容量は変化していない。
【0062】
この状態からさらに駆動電流を増大させると、OCV60から制御空間TCへの制御油圧が増大し、前記のように調整リング53の変位を補助する力が増大するが、このとき、図に実線Pとして一例を示すように、駆動電流が少しだけ(図の例ではa〜bA)増大する間にポンプ吐出圧は急激に低下する、という現象が起きる。そして、その後は駆動電流がcAくらいまで増大する間に、吐出圧は緩やかに低下して150kPaくらいで安定する。
【0063】
このようにOCV60の駆動電流の変化に対してポンプ吐出圧はリニアに変化せず、或るところで急激に変化することになる。しかも、そのような急激な変化の起きる電流値が一定ではなく、かつ吐出圧の変化量もばらつくことから、吐出圧を精度よく制御することができないのである。つまり、OCV60を電子制御しているにもかかわらず、これによるオイルポンプ5の容量制御の精度はあまり高くないのが実情であった。
【0064】
本発明者は、そのような吐出圧の急変の原因を究明すべく鋭意、実験および研究を重ねた結果、制御油圧の供給される制御空間TCには隣接する高圧空間THや作動室Rなどからオイルが滲み入っており、この影響で制御空間TCの油圧が急変していることに気がついた。そして、本発明者は、ハウジング50内の制御空間TCからオイルを適度にリークさせるような小穴(以下、オイル逃がし穴62という)を設けて、油圧の急変を抑制するようにした。
【0065】
具体的に本実施形態のオイル逃がし穴62は、図2、3にそれぞれ示すように制御空間TCに臨んで開口し、各図の上方に向かって延びてハウジング50の壁部を貫通し、その外面に至る。一例としてオイル逃がし穴62はドリルなどによって穿孔したもので、その直径は例えば1〜3mmくらいである。なお、オイル逃がし穴62の寸法は、ポンプ吐出圧が所定の範囲にあるときに、制御空間TCに滲み入ってくるのと概ね同じ分量のオイルがリークするように、例えば実験・シミュレーションによって適合されている。
【0066】
また、本実施形態では図5に模式的に示すように、オイル逃がし穴62に導油管63,64が接続されている。よって、前記のように制御空間TCからリークしたオイルが導油管63,64内の油路(導油路)を流通し、エンジン1のいずれかの被潤滑部(図の例では、ポンプスプロケット5bに巻き掛けられたチェーン4と、クランクシャフト13の後端部のオイルシール13b)に供給される。
【0067】
なお、導油管63,64はいずれか一方だけでもよいし、別の被潤滑部にもオイルを供給するように3本以上、設けてもよい。また、導油管63,64の途中に絞り部を設けてオイルの流量を調整するようにすれば、オイル逃がし穴62の大きさにばらつきがあってもその影響を軽減し、制御空間TCからのオイルのリーク量を前記のように好適なものとすることができる。
【0068】
以上、説明したように本実施形態に係る可変容量形のオイルポンプ5では、調整リング53に制御油圧を加えて、その変位を補助する力を発生させる制御空間TCにオイル逃がし穴62を開口させて、オイルを適度にリークさせるようにしている。これにより、例えば高圧空間THから制御空間TCに滲み入ってくるオイルの影響を軽減し、制御空間TCの油圧の急変による調整リング53の急な動作を抑制して、オイルポンプ5の吐出量ひいては吐出圧の制御性を高めることができる。
【0069】
すなわち、前記の図4に実線Aとして示すように、OCV60の駆動電流がcAに達するまでポンプ吐出圧は400kPaくらいに保たれており、ここからさらに駆動電流を増大させると、これに対し概ね一定の割合で吐出圧がリニアに低下してゆく。同図に実線Pとして示すような吐出圧の急激な変化は起こらなり。よって、OCV60の駆動電流を制御することにより、オイルポンプ5の吐出圧を精度よく制御することができる。これによりエンジン1のメインギャラリ20における油圧の制御性が向上し、その油圧の安定的な維持によってエンジン1の好適な潤滑性能を維持することができる。
【0070】
また、本実施形態ではオイルポンプ5として内接式のギヤポンプを用いており、そのハウジング50内には制御空間TCに隣接して高圧空間THが設けられるとともに、それらの間の第2シール材58は、調整リング53の変位に伴いハウジング50の壁部の内面に沿って移動するようになっている。このような構造では制御空間TCへオイルが滲み入ってき易いので、前記のようにオイルの一部をリークさせることによって油圧の変動を抑制する効果が特に有効なものである。
【0071】
さらに、本実施形態では、図5を参照して上述したように、オイル逃がし穴62によって制御空間TCからリークしたオイルを、導油管63,64によってチェーン4などの被潤滑部に供給し、有効に利用することができる。
【0072】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態に係るオイルポンプ5の構造ついて説明する。このオイルポンプ5は前記第1の実施形態とはオイル逃がし穴62の形状が異なるだけで、それ以外は全て同じ構造なので、ここではオイル逃がし穴62について説明する。なお、第1の実施形態と同じ部材については同じ符号を付し、その説明は省略する。オイル逃がし穴62についても形状が異なるのみなので、同じ符号を付している。
【0073】
図6は、本実施形態におけるオイルポンプ5の構造を示す断面図であって、図2と同様に最大容量の状態を示している。この例ではオイル逃がし穴62は、図6には示さないがチェーン4に向かって延びるように形成されており、制御空間TCに臨む開口端から遠ざかるに連れて徐々に断面積の小さくなる、先窄まりの形状とされている。なお、オイル逃がし穴62には導油管63,64は接続されていない。
【0074】
そして、前記のような先窄まりの形状としたことで、オイル逃がし穴62からチェーン4に向かって、図6に破線で模式的に示すように集中的にオイルを噴き付けることができる。導油管63,64を用いないことは重量及びコストの低減に有利になる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態に係るオイルポンプ5の構造ついて説明する。このオイルポンプ5も前記第1、第2の実施形態とはオイル逃がし穴62の形状が異なるだけなので、このオイル逃がし穴62について説明し、その他の説明は省略する。
【0076】
図7は、本実施形態におけるオイルポンプ5の構造を示す断面図であって、図2、6と同様に最大容量の状態を示している。この例ではオイル逃がし穴62は、制御空間TCに臨む開口端から遠ざかるに連れて徐々に断面積の大きくなる、末広がりの形状とされている。なお、オイル逃がし穴62には導油管63,64は接続されていない。
【0077】
そして、図7に破線で模式的に示すように、前記のような末広がりの形状のオイル逃がし穴62からはオイルが比較的広範囲に飛散して、オイルポンプ5の近傍に位置する複数の被潤滑部(例えばチェーン4だけでなく、ポンプスプロケット5bなど)に供給されるようになる。導油管63,64を用いないことは重量及びコストの低減に有利になる。
【0078】
(他の実施形態)
以上、説明した各実施形態は、自動車用の直列4気筒ガソリンエンジン1のオイルポンプ5として本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、自動車以外のエンジンのオイルポンプにも適用可能である。勿論、気筒数やエンジンの形式(V型や水平対向型等)にも限定されず、ディーゼルエンジンのオイルポンプにも適用可能であるし、トランスミッションのオイルポンプにも本発明は適用可能である。
【0079】
また、前記の各実施形態では、オイルポンプ5のハウジング50の内部においてポンプ吐出圧の導入される高圧空間THに隣接して制御空間TCが設けられ、それらの間の第2シール材58が、調整リング53の変位に伴いハウジング50の壁部の内面に沿って移動するようになっているが、このような構造にも限定されない。
【0080】
さらに、オイルポンプ5の容量可変機構についても前記各実施形態のように調整リング53、コイルスプリング54などを備えるものに限定されず、それ以外の種々の構成が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、エンジンや変速機に装備される可変容量形オイルポンプの吐出量や吐出圧の制御性を高めることができ、エンジンなどの好適な潤滑性能の維持に寄与するものであるから、例えば自動車のエンジンなどに適用して効果が高い。
【符号の説明】
【0082】
1 エンジン
4 チェーン(被潤滑部)
5 オイルポンプ
5a 入力軸
50 ハウジング(ポンプハウジング)
50c 収容凹部
51 ドライブロータ
52 ドリブンロータ
53 調整リング(保持部材、容量調整部材:容量可変機構)
54 コイルスプリング(容量可変機構)
58 第2のシール材(シール部)
TC 制御空間(油圧室:容量可変機構)
TH 高圧空間
13 クランクシャフト
13a クランクジャーナル(被潤滑部)
13b オイルシール(被潤滑部)
60 OCV(制御弁)
62 オイル逃がし穴
63,64 導油管(導油路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7