(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
センサ部の外部を流れる外部ガス流によって、上記センサ部の内部に上記外部ガス流の少なくとも一部である被測定ガスの流れを通過させて、上記被測定ガス中に含まれる微粒子を検知する微粒子センサであって、
上記被測定ガス中の微粒子の少なくとも一部にイオンを付着させ、帯電した帯電微粒子とする帯電化手段と、
上記帯電化手段の下流において、上記イオンのうち上記微粒子に付着していない浮遊イオンを上記被測定ガスから除去する浮遊イオン除去手段と、
上記被測定ガスの流れにより、上記センサ部の外部に運び去られた上記帯電微粒子に相当する電流を測定したセンサ信号を得る電流測定手段と、
上記帯電化手段、上記浮遊イオン除去手段及び上記電流測定手段を用いて、上記被測定ガスの流れの体積流量を測定する流量測定手段と、
上記センサ信号から得られる上記微粒子の量を、上記体積流量に応じて補正する補正手段と、を備え、
前記流量測定手段は、
前記浮遊イオン除去手段において、前記被測定ガスが流れる空間に掛ける電界強度を規定するトラップ電圧を調整し、前記センサ信号に基づき、上記浮遊イオン除去手段から前記浮遊イオンが漏れ始める上記トラップ電圧の限界電圧を検知する限界電圧検知手段と、
上記限界電圧に基づいて、前記体積流量を決定する第2流量決定手段と、を含む
微粒子センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、微粒子センサによって検知される微粒子の量は、被測定ガス中の帯電微粒子によって運ばれた電荷量に相当する電流を測定することにより、この電流の大きさに基づいて決定される。しかしながら、この電流の値と微粒子の量の関係は、被測定ガスの流れが所定の体積流量である場合に定まるものである。しかるに、外部ポンプを用いず、センサ部の外部を流れる外部ガス流によって、センサ部内に被測定ガスを通過させて、微粒子を検知する微粒子センサにおいては、被測定ガスの流れの体積流量が一定に定まらず、検知される微粒子の量に誤差を生じる。
【0006】
本発明は、かかる知見に鑑みてなされたものであって、センサ部の外部を流れる外部ガス流を利用して、微粒子を検知する微粒子センサに関し、安価で、かつ、適切に微粒子の量を検知できる微粒子センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、センサ部の外部を流れる外部ガス流によって、上記センサ部の内部に上記外部ガス流の少なくとも一部である被測定ガスの流れを通過させて、上記被測定ガス中に含まれる微粒子を検知する微粒子センサであって、上記被測定ガス中の微粒子の少なくとも一部にイオンを付着させ、帯電した帯電微粒子とする帯電化手段と、上記帯電化手段の下流において、上記イオンのうち上記微粒子に付着していない浮遊イオンを上記被測定ガスから除去する浮遊イオン除去手段と、上記被測定ガスの流れにより、上記センサ部の外部に運び去られた上記帯電微粒子に相当する電流を測定したセンサ信号を得る電流測定手段と、上記帯電化手段、上記浮遊イオン除去手段及び上記電流測定手段を用いて、上記被測定ガスの流れの体積流量を測定する流量測定手段と、上記センサ信号から得られる上記微粒子の量を、上記体積流量に応じて補正する補正手段と、を備
え、前記流量測定手段は、前記浮遊イオン除去手段において、前記被測定ガスが流れる空間に掛ける電界強度を規定するトラップ電圧を調整し、前記センサ信号に基づき、上記浮遊イオン除去手段から前記浮遊イオンが漏れ始める上記トラップ電圧の限界電圧を検知する限界電圧検知手段と、上記限界電圧に基づいて、前記体積流量を決定する第2流量決定手段と、を含むる微粒子センサである。
【0008】
この微粒子センサでは、このセンサ部の外部を流れる外部ガス流によって、センサ部の内部に外部ガス流の一部である被測定ガスの流れを通過させて、被測定ガス中に含まれる微粒子を検知する。そして、この微粒子センサでは、微粒子検知のために、帯電化手段と、浮遊イオン除去手段と、電流測定手段とを備えるほか、これら帯電化手段、浮遊イオン除去手段及び電流測定手段を用いて、被測定ガスの流れの体積流量を測定する流量測定手段を備える。さらに、センサ信号から得られる微粒子の量を、体積流量に応じて補正する補正手段を備える。
【0009】
したがって、この微粒子センサでは、外部ポンプを用いなくとも、外部ガス流を利用して微粒子を検知でき、また、この微粒子の検知に際し、微粒子検知のための構成要素を用いて、被測定ガスの流れの体積流量を測定することができる。さらに、補正手段により、この体積流量に応じて微粒子の量を補正することができる。これにより、安価で、かつ、適切に微粒子の量を検知できる微粒子センサが得られる。
しかも、この微粒子センサでは、トラップ電圧の限界電圧を検知し、この限界電圧に基づいて、被測定ガスの流れの体積流量を決定する。
なお、トラップ電圧の限界電圧と被測定ガスの体積流量の間には、体積流量が大きいと限界電圧は高くなり、逆に、体積流量が小さいと限界電圧が低くなる相関関係がある。
このため、トラップ電圧の限界電圧を検知することで、被測定ガスの流れの体積流量を決定することができ、これにより、体積流量に応じて微粒子の量を適切に補正することができる。
【0010】
なお
、帯電化手段としては、例えば、気中コロナ放電によりイオンを生成し、生成したイオンを微粒子に付着させて、微粒子を帯電させるコロナ帯電器が挙げられる。
また、浮遊イオン除去手段としては、浮遊イオンがセンサ部の外に漏れ出さないように、電界設定電圧(トラップ電圧)を設定して被測定ガスに電界を印加し、浮遊イオンを被測定ガスから除去するイオントラップ(補助電極)が挙げられる。
また、電流測定手段としては、帯電微粒子によって運び去られた電荷量に相当する電流を測定する電流測定回路が挙げられる。
【0011】
あるいは、前記流量測定手段
が、前記帯電化手段及び前記浮遊イオン除去手段における、前記センサ信号に影響する少なくとも1つのパラメータを変調する変調手段と、上記変調に対する上記センサ信号の応答を用いて、前記被測定ガスが前記センサ部の内部に滞留している滞留時間を測定する滞留時間測定手段と、上記滞留時間に基づいて、前記体積流量を決定する第1流量決定手段と、を含む微粒子センサとする
のも好ましい。
【0012】
この微粒子センサでは、パラメータの変調によってセンサ信号がこれに応答して変化するので、この変調されたパラメータとセンサ信号との間に生じる位相差などの時間的な遅れを観測することにより、被測定ガスの流れの滞留時間を得て、さらに、被測定ガスの流れの体積流量を決定することができる。これにより、被測定ガスの流れの体積流量を適切に得て、さらに、この体積流量に応じて測定した微粒子の量を適切に補正することができる。
【0013】
なお、変調手段で変調する好ましいパラメータとしては、具体的には、帯電化手段であるコロナ帯電器のコロナ電圧や、浮遊イオン除去手段であるイオントラップのトラップ電圧が挙げられる。
【0014】
さらに
、前記変調手段は、前記帯電化手段を、前記微粒子を帯電させるオンモードと、上記微粒子を帯電させないオフモードとの間で切り換える帯電切換手段を含む微粒子センサとする
のも好ましい。
【0015】
この微粒子センサでは、帯電化手段を、オンモードとオフモードとの間で切り換える。具体的には、コロナ帯電器のコロナ電圧をオンオフさせる変調を行い、イオンの生成を矩形波状に変化させる。
帯電化手段を用いてイオン生成を変調することで、これに応答して変調されたセンサ信号に基づき、滞留時間を容易に測定できる。
【0016】
また
、前記変調手段は、前記浮遊イオン除去手段において、前記被測定ガスが流れる空間に掛ける電界強度を規定するトラップ電圧を時間的に変化させる電圧変調手段を含む微粒子センサとする
のも好ましい。
【0017】
この微粒子センサでは、電圧変調手段で、浮遊イオン除去手段のトラップ電圧を変調することで、これに応答して変調されたセンサ信号に基づき、滞留時間を容易に測定できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(
参考形態1)
図1は、
参考形態1に係る微粒子センサ1の概略構成を示す。金属製の排気ガス管EPには、
図1中、左から右に、微粒子Sを含んだ排気ガスである外部ガス流EFが流れている。微粒子センサ1のうちセンサ部10は、排気ガス管EP内に設置されている。センサ部10は、網目状電極Nによって、限定された空間VTを規定している。これにより、センサ部10は、外部ガス流EFによって、空間VTで規定されるセンサ部10(網目状電極N)の内部に外部ガス流EFの一部である被測定ガスEGの流れを通過させて、この被測定ガスEG中に含まれる微粒子Sを検知する。また、この被測定ガスEGの流れは、センサ部10の内部を、
図1中、左から右に通り抜けて、微粒子Sの検知に用いられた後、センサ部10の外部に排出される。
【0022】
なお、網目状電極Nは、後述するように、トラップ電源TNと共にイオントラップT1を構成しており、微粒子センサ1は、このイオントラップT1のほか、帯電器C1、電流測定器D1、及び、これらを制御する制御回路であって、マイクロプロセッサ101を中心に構成された制御部100を備えている。
このうち、帯電器C1は、高圧電源HV、電極HVE及びコロナ先端Pを含み、高圧電源HVによって、電極HVEとコロナ先端Pとの間にコロナ電圧Vをパルス状に印加して、気中コロナ放電を発生させるコロナ帯電器である。そして、この気中コロナ放電によって生成されたイオンCPは、網目状電極N内(センサ部10内)で被測定ガスEG中の微粒子Sに付着する。これにより、微粒子SはイオンCPが付着して帯電した帯電微粒子SCとなる。なお、帯電器C1の高圧電源HV、電極HVE及びコロナ先端Pと排気ガス管EPの間は、絶縁体ISによって絶縁されている。
【0023】
また、イオントラップT1は、トラップ電源TN及び補助電極をなす網目状電極Nを含み、網目状電極Nにより限定された空間VTを規定する一方、帯電器C1で生成したイオンCPが、網目状電極Nが規定する空間VTから漏れ出さないように、トラップ電源TNによって、網目状電極Nにトラップ電圧TVを設定して被測定ガスEGが流れる空間VTに電界を印加し、微粒子Sに付着していない浮遊イオンCPFを被測定ガスEGから除去する。なお、トラップ電圧TVは、電界強度を規定する電圧である。そして、このトラップ電圧TVを印加した網目状電極Nは、空間VTから浮遊イオンCPFが漏れ出すのを制限する一方、帯電微粒子SCの移動には有意な作用を及ぼさない。
【0024】
また、電流測定器D1は、被測定ガスEGの流れにより、センサ部10の外部へと帯電微粒子SCによって運び去られた電荷量に相当する電流Iを測定し、この電流Iに対応するセンサ信号SGを得る電流測定回路である。電流Iの大きさは、微粒子Sの量(単位:個/cm
3,g/cm
3)と相関関係があり、電流Iに対応するセンサ信号SGから微粒子Sの量が得られる。
【0025】
そして、マイクロプロセッサ101を備える制御部100は、帯電器C1のコロナ電圧V及びイオントラップT1のトラップ電圧TVを制御すると共に、電流測定器D1で得たセンサ信号SGを入力して、微粒子Sの量を算出する。
【0026】
ところで、外部ガス流EFの流速は、一定とは限らないため、被測定ガスEGの体積流量QVも一定ではない。しかしながら、上述した電流Iの大きさと微粒子Sの量の相関関係は、被測定ガスEGの流れが所定の体積流量QVである場合に当てはまるものである。このため、微粒子Sの量を適切に検知するためには、被測定ガスEGの体積流量QVを求め、この体積流量QVに応じて、得られた微粒子Sの量を補正する必要がある。
【0027】
そこで、この微粒子センサ1では、制御部100によって、帯電器C1のコロナ電圧Vを、微粒子Sを帯電させるオンモードと、微粒子Sを帯電させないオフモードとの間で切り換える。具体的には、コロナ電圧Vを矩形パルス状に周期的に発生させて、コロナ電圧Vを変調する。これにより、
図1に示すように、電流測定器D1で測定される電流I(電流Iに対応するセンサ信号SG)も、オンモードに応答する電流Iが流れる期間と、オフモードに応答する電流Iが流れない期間(I=0)とを繰り返す周期的な波形となる。ここで、帯電器C1で発生させたコロナ電圧Vと電流測定器D1で測定される電流I(センサ信号SG)の間の位相差を示す、コロナ電圧Vに対するセンサ信号SGの遅れ時間(以下、遅れ時間td1)から、被測定ガスEGが、センサ部10(網目状電極N)の内部に滞留している時間(以下、滞留時間RT)を測定することができる。そして、この滞留時間RTから、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを決定することができる。
さらに、電流Iの大きさ(センサ信号SG)に基づいて得られる微粒子Sの量を、この体積流量QVに応じて補正することで、適切な補正された微粒子Sの量を検知することができる。
【0028】
図2は、本
参考形態1に係る微粒子センサ1のうち、制御部100のマイクロプロセッ
サ101による微粒子検知の動作を示すフローチャートである。マイクロプロセッサ10
1がこのフローチャートに示す微粒子検知の動作を開始する際には、センサ部10の内部
である網目状電極Nで規定される空間VTに、外部ガス流EFの一部である被測定ガスE
Gの流れが通過している。
【0029】
まず、ステップS1では、帯電器C1の高圧電源HVを制御することにより、コロナ電圧Vを矩形パルス状に周期的に発生させて、コロナ電圧Vの変調を開始する。これにより、コロナ電圧Vを、被測定ガスEG中の微粒子Sを帯電させるオンモードと、被測定ガスEG中の微粒子Sを帯電させないオフモードとの間で切り換える。
次いで、ステップS2では、イオントラップT1のトラップ電源TNを制御し、網目状電極Nのトラップ電圧TV一定による駆動を開始する。これにより、被測定ガスEGが流れる空間VTにトラップ電圧TVで規定される電界強度の電界が印加される。
【0030】
次いで、ステップS3では、電流測定器D1で、被測定ガスEGの流れにより、センサ部10(網目状電極N)の外部へと帯電微粒子SCによって運び去られた電荷量に相当する電流Iを測定し、電流Iに対応するセンサ信号SGを得る。
そして、ステップS4では、変調したコロナ電圧Vに対するセンサ信号SGの遅れ時間td1を得て、この遅れ時間td1から、被測定ガスEGが、センサ部10(網目状電極N)の内部に滞留している滞留時間RTを測定する。
【0031】
次いで、ステップS5では、この滞留時間RTから、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを算出し、決定する。
そして、微粒子測定の開始指示があるまでは、ステップS6でNoとなって、ステップS3からステップS5までを繰り返して、体積流量QVの測定を継続する。
【0032】
その後、微粒子測定の開始指示が出されると、ステップS6でYesと判断され、ステップS7に進む。ステップ7では、帯電器C1のコロナ電圧Vの変調を停止し、コロナ電圧Vを一定とする。
次いで、ステップS8では、コロナ電圧V及びトラップ電圧TVを一定とした状態で、電流測定器D1で測定した電流Iに対応するセンサ信号SGから、補正前の微粒子Sの量を得る。
そして、続くステップS9で、ステップS8で得た微粒子Sの量を、ステップS5で得た体積流量QVに応じて補正し、補正された微粒子Sの量を得て、微粒子検知を終了する。
【0033】
本
参考形態1において、帯電器C1が
、帯電化手段に相当し、この帯電器C1のコロナ電圧Vをオンモードとオフモードとの間で切り換える、ステップS1を実行している制御部100のマイクロプロセッサ101が、変調手段のうちの帯電切換手段に相当する。また、イオントラップT1が浮遊イオン除去手段に相当し、電流測定器D1が電流測定手段に相当する。
また、ステップS1〜ステップS5を実行している制御部100のマイクロプロセッサ101が流量測定手段に相当し、このうち、ステップS4を実行している制御部100のマイクロプロセッサ101が滞留時間測定手段に、ステップS5を実行している制御部100のマイクロプロセッサ101が第1流量決定手段にそれぞれ相当する。
また、ステップS9を実行している制御部100のマイクロプロセッサ101が補正手段に相当する。
【0034】
以上で説明したように、本
参考形態1の微粒子センサ1では、排気ガス管EP内で、センサ部10の外部を流れる外部ガス流EFによって、空間VTで規定されるセンサ部10(網目状電極N)の内部に外部ガス流EFの一部である被測定ガスEGの流れを通過させて、被測定ガスEG中に含まれる微粒子Sを検知する。そして、この微粒子センサ1では、微粒子検知のために、帯電器C1(帯電化手段)と、イオントラップT1(浮遊イオン除去手段)と、電流測定器D1(電流測定手段)とを備えるほか、これら微粒子検知のための帯電器C1(帯電化手段)、イオントラップT1(浮遊イオン除去手段)及び電流測定器D1(電流測定手段)を用いて、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを測定する流量測定手段(ステップS1〜S5)を備えている。さらに、電流Iを測定したセンサ信号SGから得られる微粒子Sの量を、体積流量QVに応じて補正する補正手段(ステップS9)を備えている。
【0035】
したがって、この微粒子センサ1では、外部ポンプを用いなくとも、外部ガス流EFを利用して微粒子Sを検知でき、また、微粒子Sの検知のための帯電器C1(帯電化手段)、イオントラップT1(浮遊イオン除去手段)及び電流測定器D1(電流測定手段)を用いて、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを測定することができる(ステップS1〜S5)。さらに、補正手段(ステップS9)により、体積流量QVに応じて微粒子Sの量を補正することができる。これにより、安価で、かつ、適切に微粒子Sの量を検知できる微粒子センサ1が得られる。
【0036】
さらに、本
参考形態1の微粒子センサ1では、コロナ電圧Vの変調に応答して電流Iに対応するセンサ信号SGが変化するので、変調したコロナ電圧Vと電流測定器D1で測定される電流I(センサ信号SG)との間の位相差である遅れ時間td1から、被測定ガスEGの流れの滞留時間RTを適切に得て、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを決定することができる。これにより、体積流量QVを適切に得て、さらに、この体積流量QVに応じて測定した微粒子Sの量を適切に補正することができる。
【0037】
さらに、本
参考形態1の微粒子センサ1では、帯電器C1(帯電化手段)のコロナ電圧Vを、微粒子Sを帯電させるオンモードと、微粒子Sを帯電させないオフモードとの間で切り換えて、コロナ電圧Vを変調している(ステップS1:帯電切換手段)。
帯電器C1(帯電化手段)を用いてこのような変調を行うことで、これに応答して変調されたセンサ信号SGに基づき、滞留時間RTを容易に測定できる。
【0038】
(
参考形態2)
図3は、
参考形態2に係る微粒子センサ2の概略構成を示す。この微粒子センサ2は、センサ部20が排気ガス管EP内に設置されると共に、限定された空間VTを規定する網目状電極N及びトラップ電源TNにより構成されるイオントラップT2のほか、帯電器C2、電流測定器D2、及び、これらを制御する制御部200(マイクロプロセッサ201)を備えており、
参考形態1とほぼ同様の構成を有する。
但し、
参考形態1が、帯電器C1の高圧電源HVを制御することにより、コロナ電圧Vを変調していたのに対し、本
参考形態2の微粒子センサ2では、イオントラップT2のトラップ電源TNを制御し、網目状電極Nのトラップ電圧TVを所定パターンで、変調している点で異なる。
具体的には、本
参考形態2では、コロナ電圧Vは一定である一方、トラップ電圧TVをパルス状に周期的に発生させて、トラップ電圧TVを変調している。
【0039】
このように、コロナ電圧Vに代えて、トラップ電圧TVを変調させた場合にも、浮遊イオンCPFが空間VTから漏れる場合と漏れない場合が周期的に生じることになり、電流測定器D2で測定される電流Iが周期的に変化する(
図3参照)。これにより、
参考形態1と同様に、イオントラップT2で発生させた網目状電極Nのトラップ電圧TVと電流測定器D2で測定される電流I(センサ信号SG)の間の位相差を示す、トラップ電圧TVに対するセンサ信号SGの遅れ時間(以下、遅れ時間td2)から、被測定ガスEGの流れの滞留時間RTを測定することができる。そして、この滞留時間RTから、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを決定することができる。
さらに、電流Iの大きさ(センサ信号SG)に基づいて得た微粒子Sの量を、この体積流量QVに応じて補正することで、適切な補正された微粒子Sの量を検知することができる。
【0040】
図4は、本
参考形態2に係る微粒子センサ2のうち、制御部200のマイクロプロセッサ201による微粒子検知の動作を示すフローチャートである。マイクロプロセッサ201がこのフローチャートに示す微粒子検知の動作を開始する際には、空間VTに、外部ガス流EFの一部である被測定ガスEGの流れが通過している。
【0041】
まず、ステップS11では、帯電器C2の高圧電源HVを制御し、コロナ電圧Vを一定として、帯電器C2の駆動を開始する。これにより、被測定ガスEG中の微粒子Sが帯電される。
次いで、ステップS12では、イオントラップT2のトラップ電源TNを制御することにより、網目状電極Nのトラップ電圧TVを矩形パルス状に駆動して、トラップ電圧TVの変調を開始する。これにより、被測定ガスEGが流れる空間VTに印加される電界の電界強度が時間的に変化する。
【0042】
次いで、ステップS13では、電流測定器D2で、被測定ガスEGの流れにより、センサ部20(網目状電極N)の外部へと帯電微粒子SCによって運び去られた電荷量に相当する電流Iを測定し、電流Iに対応するセンサ信号SGを得る。
そして、ステップS14では、変調したトラップ電圧TVに対するセンサ信号SGの遅れ時間td2を得て、この遅れ時間td2から、被測定ガスEGが、センサ部20(網目状電極N)の内部に滞留している滞留時間RTを測定する。
【0043】
次いで、ステップS15では、この滞留時間RTから、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを算出し、決定する。
そして、微粒子測定の開始指示があるまでは、ステップS16でNoとなって、ステップS13からステップS15までを繰り返して、体積流量QVの測定を継続する。
【0044】
その後、微粒子測定の開始指示が出されると、ステップS16でYesと判断され、ステップS17に進む。ステップS17では、イオントラップT2のトラップ電圧TVの変調を停止し、トラップ電圧TVを一定とする。
次いで、ステップS18では、コロナ電圧V及びトラップ電圧TVを一定とした状態で、電流測定器D2で測定した電流Iに対応するセンサ信号SGから、補正前の微粒子Sの量を得る。
そして、続くステップS19で、ステップS18で得た微粒子Sの量を、ステップS15で得た体積流量QVに応じて補正し、補正された微粒子Sの量を得て、微粒子検知を終了する。
【0045】
本
参考形態2において、帯電器C2が
、帯電化手段に相当する。また、イオントラップT2が浮遊イオン除去手段に相当し、このイオントラップT2の網目状電極Nのトラップ電圧TVを時間的に変化させて変調する、ステップS12を実行している制御部200のマイクロプロセッサ201が、変調手段のうちの電圧変調手段に相当する。
また、ステップS11〜ステップS15を実行している制御部200のマイクロプロセッサ201が流量測定手段に相当し、このうち、ステップS14を実行している制御部200のマイクロプロセッサ201が滞留時間測定手段に、ステップS15を実行している制御部200のマイクロプロセッサ201が第1流量決定手段にそれぞれ相当する。
また、ステップS19を実行している制御部200のマイクロプロセッサ201が補正手段に相当する。
【0046】
このように、本
参考形態2の微粒子センサ2では、
参考形態1と同様に、微粒子検知のために、帯電器C2(帯電化手段)と、イオントラップT2(浮遊イオン除去手段)と、電流測定器D2(電流測定手段)とを備えるほか、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを測定する流量測定手段(ステップS11〜S15)、電流Iを測定したセンサ信号SGから得られる微粒子Sの量を、体積流量QVに応じて補正する補正手段(ステップS19)を備えている。
【0047】
したがって、この微粒子センサ2では、
参考形態1と同様に、外部ポンプを用いなくとも、外部ガス流EFを利用して微粒子Sを検知でき、また、微粒子Sの検知のための帯電器C2(帯電化手段)、イオントラップT2(浮遊イオン除去手段)及び電流測定器D2(電流測定手段)を用いて、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを測定することができる(ステップS11〜S15)。さらに、補正手段(ステップS19)により、体積流量QVに応じて微粒子Sの量を補正することができる。これにより、
参考形態1と同様に、安価で、かつ、適切に微粒子Sの量を検知できる微粒子センサ2が得られる。
【0048】
また、本
参考形態2の微粒子センサ2では、トラップ電圧TVの変調に応答して電流Iに対応するセンサ信号SGが変化するので、変調したトラップ電圧TVと電流測定器D2で測定される電流I(センサ信号SG)との間の位相差である遅れ時間td2から、被測定ガスEGの流れの滞留時間RTを適切に得て、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを決定することができる。これにより、体積流量QVを適切に得て、さらに、この体積流量QVに応じて測定した微粒子Sの量を適切に補正することができる。
【0049】
さらに、本
参考形態2の微粒子センサ2では、イオントラップT2(浮遊イオン除去手段)の網目状電極Nのトラップ電圧TVを時間的に変化させて変調している(電圧変調手段)。
イオントラップT2(浮遊イオン除去手段)を用いてこのような変調を行うことで、これに応答して変調されたセンサ信号SGに基づき、滞留時間RTを容易に測定できる。
【0050】
(
実施形態)
図5は、本発明
の実施形態に係る微粒子センサ3の概略構成を示す。この微粒子センサ3は、センサ部30が排気ガス管EP内に設置されると共に、限定された空間VTを規定する網目状電極N及びトラップ電源TNにより構成されるイオントラップT3のほか、帯電器C3、電流測定器D3、及び、これらを制御する制御部300(マイクロプロセッサ301)を備えており、
参考形態1,2とほぼ同様の構成を有する。
前述したように、
参考形態1では、帯電器C1のコロナ電圧Vを、
参考形態2では、イオントラップT2の網目状電極Nのトラップ電圧TVを、それぞれ変調させた。
これに対し、本
実施形態の微粒子センサ3では、イオントラップT3の網目状電極Nのトラップ電圧TVを調整して、帯電器C3で生成したイオンCPのうち微粒子Sに付着していない浮遊イオンCPFが、網目状電極Nが規定する空間VTから漏れ始めるトラップ電圧TVの限界電圧LVを、電流測定器D3で測定される電流I(センサ信号SG)から検知する。
【0051】
トラップ電圧TVの限界電圧LVと被測定ガスEGの体積流量QVの間には、体積流量QVが大きいと限界電圧LVは高くなり、逆に、体積流量QVが小さいと限界電圧LVが低くなる相関関係がある。
【0052】
例えば、被測定ガスEGの流れが所定の体積流量QV(QV=QV1)である場合に、
図6中、実線で示すトラップ電圧TVと排出される浮遊イオンCPFの量との関係が得られたとする。この
図6から判るように、トラップ電圧TVが所定の値(
図6では、TV=LV1)以上では、排出される浮遊イオンCPFの量は、ほぼ0となる一方、トラップ電圧TVがこの所定の値(TV=LV1)より低い値では、トラップ電圧TVの低下と共に、排出される浮遊イオンCPFの量が増加する。上述の所定の値(TV=LV1)は、浮遊イオンCPFが漏れ始めるトラップ電圧TVの限界電圧LVである(LV=LV1)。
【0053】
これに対し、被測定ガスEGの流れの体積流量QVが低下すると(QV=QV2<QV1)、トラップ電圧TVと排出される浮遊イオンCPFの量との関係は、
図6中、破線で示す特性に変化する。すなわち、体積流量QVの低下に伴って、トラップ電圧TVの限界電圧LVも低下する(LV=LV2)。
なお、トラップ電圧TVが限界電圧LV以下になって、浮遊イオンCPFが排出されると、排出された浮遊イオンCPFの量は、電流測定器D3で測定される電流Iに加算される。
また、被測定ガスEGの流れの体積流量QVの大きさにより、単位時間当たりに運び去られた帯電微粒子SCによる電流Iも変化し、体積流量QVが大きいほど、電流Iも大きくなる。
【0054】
このため、
図6に示すトラップ電圧TVと排出される浮遊イオンCPFの量との関係を、トラップ電圧TVと電流測定器D3で測定される電流I(センサ信号SG)との関係で示すと、
図7のグラフが得られる。
この
図7の実線と破線で示すグラフのように、体積流量QVの大きさにより(QV1>QV2)、トラップ電圧TVの限界電圧LVが異なる(LV1>LV2)ことに加えて、限界電圧LV以上の領域における電流Iの大きさも異なる。しかし、いずれの場合にも、トラップ電圧TVが限界電圧LV以下では、トラップ電圧TVの低下と共に電流Iが増加する。
したがって、トラップ電圧TVの限界電圧LVは、電流測定器D3で測定される電流I(センサ信号SG)から検知することが可能である。
【0055】
そして、
図7のグラフから判るように、トラップ電圧TVの限界電圧LVと体積流量QVの間には、密接な相関関係があるので、限界電圧LVを検知することにより、この限界電圧LVに基づいて、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを適切に判定することができる。
さらに、電流Iの大きさ(センサ信号SG)に基づいて得た微粒子Sの量を、この体積流量QVに応じて補正することで、適切な補正された微粒子Sの量を検知することができる。
【0056】
図8は、本
実施形態に係る微粒子センサ3のうち、制御部300のマイクロプロセッサ301による微粒子検知の動作を示すフローチャートである。マイクロプロセッサ301がこのフローチャートに示す微粒子検知の動作を開始する際には、空間VTに、外部ガス流EFの一部である被測定ガスEGの流れが通過している。
【0057】
まず、ステップS21では、帯電器C3の高圧電源HVを制御し、コロナ電圧Vを一定として、帯電器C3の駆動を開始する。これにより、被測定ガスEG中の微粒子Sが帯電される。
次いで、ステップS22では、イオントラップT3のトラップ電源TNを制御し、網目状電極Nのトラップ電圧TVを所定の値として駆動を開始する。これにより、被測定ガスEGが流れる空間VTにトラップ電圧TVで規定される電界強度の電界が印加される。
【0058】
次いで、ステップS23では、トラップ電圧TVの限界電圧LVを検知するために、トラップ電圧TVを、現状の値から下げる方向に変化させる(一定値分下げる)。
そして、ステップS24では、電流測定器D3で電流Iを測定し、電流Iに対応するセンサ信号SGを得ることにより、このセンサ信号SGから、ステップS23で変化させたトラップ電圧TVに応答して、浮遊イオンCPFが網目状電極Nが規定する空間VTから漏れ出すトラップ電圧TVの限界電圧LVを検知する。
次いで、ステップS25では、トラップ電圧TVの限界電圧LVが検知できたか否かを判定する。限界電圧LVが検知できなかった場合は(No)、ステップS23に戻り、再度ステップS23,S24を繰り返して、限界電圧LVの検知を継続する。前述したように、トラップ電圧TVの限界電圧LVでは、浮遊イオンCPFが漏れだして、電流Iの値が急激に増加するので、この電流Iの急激な増加に対応するセンサ信号SGの変化点が検知できるまで、トラップ電圧TVを現状の値から下げる方向に変化させる(一定値分下げる)のと、限界電圧LVの検知とを繰り返し行う。そして、限界電圧LVが検知できた場合は(Yes)、ステップS26に進む。
【0059】
ステップS26では、検知された限界電圧LVに基づいて、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを決定する。そして、微粒子測定の開始指示があるまでは、ステップS27でNoとなってステップS22に戻り、トラップ電圧TVを所定の値に再度設定した後、ステップS23からステップS26までを繰り返して、体積流量QVの測定を継続する。
【0060】
その後、微粒子測定の開始指示が出されると、ステップS27でYesと判断され、ステップS28に進む。ステップS28では、イオントラップT3のトラップ電圧TVを所定の値に戻す。
次いで、ステップS29では、コロナ電圧V及びトラップ電圧TVを所定の値とした状態で、電流測定器D3で測定した電流Iに対応するセンサ信号SGから、補正前の微粒子Sの量を得る。
そして、続くステップS30で、ステップS29で得た微粒子Sの量を、ステップS26で得た体積流量QVに応じて補正し、補正された微粒子Sの量を得て、微粒子検知を終了する。
【0061】
本
実施形態において、帯電器C3が、本発明の帯電化手段に相当する。また、イオントラップT3が浮遊イオン除去手段に相当する。
また、ステップS21〜ステップS26を実行している制御部300のマイクロプロセッサ301が流量測定手段に相当し、このうち、ステップS22〜S25を実行している制御部300のマイクロプロセッサ301が限界電圧検知手段に、ステップS26を実行している制御部300のマイクロプロセッサ301が第2流量決定手段にそれぞれ相当する。
また、ステップS30を実行している制御部300のマイクロプロセッサ301が補正手段に相当する。
【0062】
このように、本
実施形態の微粒子センサ3では、
参考形態1,2と同様に、微粒子検知のために、帯電器C3(帯電化手段)と、イオントラップT3(浮遊イオン除去手段)と、電流測定器D3(電流測定手段)とを備えるほか、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを測定する流量測定手段(ステップS21〜S26)、電流Iを測定したセンサ信号SGから得られる微粒子Sの量を、体積流量QVに応じて補正する補正手段(ステップS30)を備えている。
【0063】
したがって、この微粒子センサ3では、
参考形態1,2と同様に、外部ポンプを用いなくとも、外部ガス流EFを利用して微粒子Sを検知でき、また、微粒子Sの検知のための帯電器C3(帯電化手段)、イオントラップT3(浮遊イオン除去手段)及び電流測定器D3(電流測定手段)を用いて、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを測定することができる(ステップS21〜S26)。さらに、補正手段(ステップS30)により、体積流量QVに応じて微粒子Sの量を補正することができる。これにより、
参考形態1,2と同様に、安価で、かつ、適切に微粒子Sの量を検知できる微粒子センサ3が得られる。
【0064】
さらに、本
実施形態の微粒子センサ3では、トラップ電圧TVの限界電圧LVを検知し、この限界電圧LVに基づいて、被測定ガスEGの流れの体積流量QVを決定している。
これにより、体積流量QVを適切に得て、さらに、この体積流量QVに応じて微粒子Sの量を適切に補正することができる。
【0065】
以上において、本発明を
実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
そのほか、参考形態1では、変調手段として、帯電器C1(帯電化手段)のコロナ電圧Vを変調する帯電切換手段を備え、一方、
参考形態2では、変調手段として、イオントラップT2(浮遊イオン除去手段)の網目状電極Nのトラップ電圧TVを変調する電圧変調手段を備えていた。
しかし、変調手段としては、帯電器のコロナ電圧Vを変調する帯電切換手段、及び、イオントラップの網目状電極Nのトラップ電圧TVを変調する電圧変調手段を共に備える構成としても良い。