【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 変異アセトヒドロキシ酸シンターゼ遺伝子のクローニング
(1)バリンアナログ耐性株の取得
コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum)R株を、300μg/mlのN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンに、30℃で1時間曝し、次いで、A培地 [(NH
2)
2CO 2 g、(NH
4)
2SO
4 7 g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 gを蒸留水1 Lに溶解]中で、約10
9cells/mlになるまで培養した。菌体を回収し、最少培地(BT培地)で洗浄した後、4%グルコース、バリンアナログである4%DL-α-アミノブチレートを含むBT平板培地に塗布して、30℃で5日間培養した。
【0052】
バリンアナログを含む平板培地上で生育した変異株を、A液体培地 10mlの入った試験管に植菌し、33℃にて16時間、好気的に振盪培養を行った。得られた培養菌体を遠心分離(4℃、14,500 rpm, 2分)により回収し、BT培地 [Omumasaba, C.A. et al., Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase isoforms with opposite, ATP-dependent regulation. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:91-103 (2004)] 2mlで洗菌後、BT培地1mlで懸濁した。次に、BT培地10mlに終濃度OD
610=0.1となるように懸濁液から植菌し、33℃にて48時間、好気的に振盪培養を行い、L-バリンの生産性の高い株をスクリーニングした。
バリンの定量は、サンプリングした培養液を遠心分離(4℃、14,500 rpm, 1分)し、得られた上清液をアミノ酸分析システム(島津製作所製、Prominence)で分析することにより行った。分析条件を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
(2)変異アセトヒドロキシ酸シンターゼ遺伝子のクローニング及び塩基配列の決定
上記のようにして取得したバリン高生産株の染色体DNA抽出は、A培地 [(NH
2)
2CO 2 g、(NH
4)
2SO
4 7 g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 gを蒸留水1 Lに溶解] に、炭素源として、最終濃度4%になるように50% (w/v)グルコース溶液を添加し、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで33℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0055】
得られた染色体DNAを用いてアセトヒドロキシ酸シンターゼ遺伝子の配列解析を行った結果、156番目のアミノ酸グリシンがグルタミン酸にアミノ基置換していることを明らかにした。
【0056】
実施例2 バリン生産遺伝子のクローニングと発現
(1) 微生物からの染色体DNAの抽出
コリネバクテリウム グルタミカム (Corynebacterium glutamicum) R (FERM P-18976)からの染色体DNA抽出は、A培地 [(NH
2)
2CO 2 g、(NH
4)
2SO
4 7 g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 gを蒸留水1 Lに溶解] に、炭素源として、最終濃度4%になるように50% (w/v)グルコース溶液を添加し、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで33℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0057】
リジニバチルス スファエリカス(Lysinibacillus sphaericus)NBRC 3525からの染色体DNA抽出は、NBRC Medium No.802培地[polypeptone 10 g, yeast extract 2 g, MgSO
4・7H
2O 1 gを蒸留水1 Lに溶解]に、白金耳を用いて植菌後、対数増殖期まで30℃で振盪培養し、菌体を集菌後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて、取扱説明書に従い、集めた菌体から染色体DNAを回収した。
【0058】
(2) クローニングベクターの構築
クローニングベクターpCRB21の構築
コリネバクテリウム カゼイ JCM12072由来のプラスミドpCASE1のDNA複製起点(以降、pCASE1-oriと記す)配列、及びクローニングベクターpHSG398(タカラバイオ株式会社製)をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCASE1-ori配列、クローニングベクターpHSG398をそれぞれクローン化するべく、配列番号1(pCASE1-ori配列)、配列番号2(クローニングベクター pHSG398)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0059】
pCASE1-ori配列増幅用プライマー
(a-1); 5’- GGCAG
AGATCT AGAACGTCCGTAG -3’ (配列番号3)
(b-1); 5’- CGGAA
AGATCT GACTTGGTTACGATG -3’(配列番号4)
尚、プライマー(a-1)及び(b-1)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
クローニングベクターpHSG398増幅用プライマー
(a-2); 5’- CAGTGG
AGATCT GTCGAACGGAAG -3’ (配列番号5)
(b-2); 5’- CCGTT
AGATCT AGTTCCACTGAGC -3’ (配列番号6)
尚、プライマー(a-2)及び(b-2)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
【0060】
鋳型DNAは、Japan. Collection of Microorganisms (JCM)より入手したコリネバクテリウム カゼイ JCM12072から抽出したトータルDNA及びクローニングベクターpHSG398(タカラバイオ株式会社製)を用いた。
【0061】
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*) pCASE1-ori配列を増幅する場合はプライマー(a-1)と(b-1)の組み合わせ、クローニングベクターpHSG398を増幅する場合はプライマー(a-2)と(b-2)の組み合わせで行った。
【0062】
【0063】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、pCASE1-ori配列の場合約1.5-kb、クローニングベクターpHSG398の場合約2.2-kbのDNA断片が検出できた。
【0064】
上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム カゼイ株由来のプラスミドpCASE1-ori配列含む約1.5-kb DNA断片10μl及びクローニングベクターpHSG398を含む約2.2-kb DNA断片10μlを各々制限酵素BglIIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションA液とした。
得られたライゲーションA液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素BglIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpHSG398約2.2-kbのDNA断片に加え、pCASE-ori配列の約1.5-kb DNA断片が認められた。
pCASE1-ori配列を含むクローニングベクターをpCRB21と命名した。
【0065】
クローニングベクターpCRB22の構築
コリネバクテリウム カゼイ JCM12072由来のプラスミドpCASE1のDNA複製起点(以降、pCASE1-oriと記す)配列、及びクローニングベクターpHSG298(タカラバイオ株式会社製)をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCASE1-ori配列、クローニングベクターpHSG298をそれぞれクローン化するべく、配列番号7(pCASE1-ori配列)、配列番号8(クローニングベクター pHSG298)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0066】
pCASE1-ori配列増幅用プライマー
(a-3); 5’- GGCAG
AGATCT AGAACGTCCGTAG -3’ (配列番号9)
(b-3); 5’- CGGAA
AGATCT GACTTGGTTACGATG -3’(配列番号10)
尚、プライマー(a-3)及び(b-3)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
クローニングベクターpHSG298増幅用プライマー
(a-4); 5’- GCTGG
AGATCT AGGTTTCCCGAC -3’ (配列番号11)
(b-4); 5’- GGGAA
AGATCT CGTGCCAGCTGC -3’ (配列番号12)
尚、プライマー(a-4)及び(b-4)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
【0067】
鋳型DNAは、Japan. Collection of Microorganisms (JCM)より入手したコリネバクテリウム カゼイ JCM12072から抽出したトータルDNA及びクローニングベクターpHSG298(タカラバイオ株式会社製)を用いた。
【0068】
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*) pCASE1-ori配列を増幅する場合はプライマー(a-3)と(b-3)の組み合わせ、クローニングベクターpHSG298を増幅する場合はプライマー(a-4)と(b-4)の組み合わせで行った。
【0069】
【0070】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、pCASE1-ori配列の場合約1.4-kb、クローニングベクターpHSG298の場合、約2.7-kbのDNA断片が検出できた。
【0071】
上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム カゼイ株由来のプラスミドpCASE1-ori配列含む約1.4-kb DNA断片10μl及びクローニングベクターpHSG298を含む約2.7-kb DNA断片10μlを各々制限酵素BglIIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製)1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションB液とした。
得られたライゲーションB液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素BglIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpHSG298約2.7-kbのDNA断片に加え、pCASE-ori配列の約1.4-kb DNA断片が認められた。
pCASE1-ori配列を含むクローニングベクターをpCRB22と命名した。
【0072】
クローニングベクターpCRB12の構築
コリネバクテリウム グルタミカム内で複製可能なプラスミドpCG1 [(特開昭57−134500)] 由来のDNA複製起点(以降、pCG1-oriと記す)配列、及びクローニングベクターpHSG298(タカラバイオ株式会社製)をそれぞれ含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、pCG1-ori配列、クローニングベクターpHSG298をそれぞれクローン化するべく、配列番号13(pCG1-ori配列)、配列番号14(クローニングベクターpHSG298)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0073】
pCG1-ori配列増幅用プライマー
(a-5); 5’- GCGAA
AGATCT AGCATGGTCGTC -3’ (配列番号15)
(b-5); 5’- GTGAGC
AGATCT GGAACCGTTATC -3’ (配列番号16)
なお、プライマー(a-5)及び(b-5)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
クローニングベクターpHSG298増幅用プライマー
(a-6); 5’- GCTGG
AGATCT AGGTTTCCCGAC -3’ (配列番号17)
(b-6); 5’- GGGAA
AGATCT CGTGCCAGCTGC -3’ (配列番号18)
尚、プライマー(a-6)及び(b-6)には、BglII制限酵素部位が付加されている。
【0074】
鋳型DNAは、pCG1 [(特開昭57−134500)] 及びクローニングベクターpHSG298(タカラバイオ株式会社製)を用いた。
【0075】
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*) pCG1-ori配列を増幅する場合はプライマー(a-5)と(b-5)の組み合わせ、クローニングベクターpHSG298を増幅する場合はプライマー(a-6) と (b-6) の組み合わせで行った。
【0076】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、pCG1-ori配列の場合約1.9-kb、クローニングベクターpHSG298の場合、約2.7-kbのDNA断片が検出できた。
【0077】
上記のPCRにより増幅したプラスミドpCG1由来pCG1-ori遺伝子含む約1.9-kb DNA断片10μl及びクローニングベクターpHSG298を含む約2.7-kb DNA断片10μlを各々制限酵素BglIIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションC液とした。
得られたライゲーションC液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素BglIIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpHSG298約2.7-kbのDNA断片に加え、pCG1-ori配列の約1.9-kb DNA断片が認められた。
pCG1-ori配列を含むクローニングベクターをpCRB12と命名した。
【0078】
クローニングベクターpCRB207の構築
コリネバクテリウム グルタミカムR由来のグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)をコードするgapA遺伝子のプロモーター配列(以降、PgapAと記す)を含むDNA断片、及びクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)由来rrnBT1T2双方向ターミネーター配列(以降、ターミネーター配列と記す)を含むDNA断片を以下の方法により増幅した。
PCRに際して、PgapA配列及びターミネーター配列をそれぞれクローン化するべく、配列番号19(PgapA配列)、配列番号20(ターミネーター配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0079】
PgapA配列増幅用プライマー
(a-7); 5’- CTCT
GTCGAC CCGAAGATCTGAAGATTCCTG -3’
(配列番号21)
(b-7); 5’- CTCT
GTCGAC GGATCC CCATGG TGTGTCTCCTCTAAAGATTGTAGG -3’
(配列番号22)
尚、プライマー(a-7)には、SalI制限酵素部位が、プライマー(b-7)には、SalI、BamHI及びNcoI制限酵素部位が付加されている。
ターミネーター配列増幅用プライマー
(a-8); 5’- CTCT
GCATGC CCATGG CTGTTTTGGCGGATGAGAGA -3’
(配列番号23)
(b-8); 5’- CTCT
GCATGC TCATGA AAGAGTTTGTAGAAACGCAAAAAGG -3
(配列番号24)
尚、プライマー(a-8)には、SphI及びNcoI制限酵素部位が、プライマー(b-8)には、SphI及びBspHI制限酵素部位が付加されている。
【0080】
鋳型DNAは、コリネバクテリウム グルタミカム R (FERM P-18976)から抽出した染色体DNA及びpKK223-3プラスミド(ファルマシア社製)を用いた。
【0081】
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*) PgapA配列を増幅する場合はプライマー(a-7)と(b-7)の組み合わせ、ターミネーター配列を増幅する場合はプライマー(a-8) と (b-8) の組み合わせで行った。
【0082】
【0083】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、PgapA配列の場合約0.6-kb、ターミネーター配列の場合、約0.4-kbのDNA断片が検出できた。
【0084】
上記のPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム R由来PgapA配列を含む約0.6-kb DNA断片10μlとクローニングベクターpCRB22約4.1-kbを各々制限酵素SalIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションD液とした。
得られたライゲーションD液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素SalIでそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB22約4.1-kbのDNA断片に加え、PgapA配列)の約0.6-kb DNA断片が認められた。
PgapA配列を含むクローニングベクターをpCRB206と命名した。
【0085】
上記PCRにより増幅したpKK223-3プラスミド由来ターミネーター配列を含む約0.4-kb DNA断片10μlを制限酵素NcoI及びBspHIで、上述のクローニングベクターpCRB206 2μlを制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションE液とした。
得られたライゲーションE液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB206約4.7-kbのDNA断片に加え、ターミネーター配列の約0.4-kb DNA断片が認められた。
rrnBT1T2ターミネーター配列を含むクローニングベクターをpCRB207と命名した。
【0086】
(3) バリン生産遺伝子のクローニング
コリネバクテリウム グルタミカム由来のバリン生産遺伝子のクローニング
コリネバクテリウム グルタミカム由来のアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするilvBN遺伝子、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼをコードするilvC遺伝子、ジビドロキシ酸デヒドラターゼをコードするilvD遺伝子及びトランスアミナーゼ遺伝子をコードするilvE遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、ilvBN遺伝子、ilvC遺伝子、ilvD遺伝子及びilvE遺伝子をそれぞれクローン化するべく、配列番号25(コリネバクテリウム グルタミカムilvBN遺伝子)、配列番号26(コリネバクテリウム グルタミカムilvC遺伝子)、配列番号27(コリネバクテリウム グルタミカムilvD遺伝子)及び配列番号28(コリネバクテリウム グルタミカムilvE遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0087】
ilvBN遺伝子増幅用プライマー
(a-9); 5’- CTCT
TCATGA ATGTGGCAGCTTCTCAAC -3’
(配列番号29)
(b-9); 5’- CTCT
TCATGA TTAGATCTTGGCCGGAGC -3’
(配列番号30)
尚、プライマー(a-9)及び(b-9)には、BspHI制限酵素部位が付加されている。
【0088】
ilvC遺伝子増幅用プライマー
(a-10); 5’- CTCT
CCATGG CTATTGAACTGCTTTATGATG -3’
(配列番号31)
(b-10); 5’- CTCT
CCATGG AGATCTTTAAGCGGTTTCTGCGCGA -3’
(配列番号32)
尚、プライマー(a-10)及び(b-10)には、NcoI制限酵素部位が付加されている。
ilvD遺伝子増幅用プライマー
(a-11); 5’- GA
CCCGGG GAGCAGATTTGAAAAGCGCATCATG -3’
(配列番号33)
(b-11); 5’- GA
CCCGGG GGTACC GTATTTGCAACGGGGAGCTCCACCA -3’
(配列番号34)
尚、プライマー(a-11)にはSmaI制限酵素部位が、(b-11)にはSmaI及びKpnI制限酵素部位が付加されている。
ilvE遺伝子増幅用プライマー
(a-12); 5’- GA
CCCGGG CATCCCATAAAATGGGGCTGACTAG -3’
(配列番号35)
(b-12); 5’- GA
CCCGGG GAGCTC CCCTGACTCCACCCCCTACGTCTCA -3’
(配列番号36)
尚、プライマー(a-12)にはSmaI制限酵素部位が、(b-12)にはSmaI及びSacI制限酵素部位が付加されている。
【0089】
コリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産変異株由来のバリン生産遺伝子のクローニング
コリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来の変異アセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするilvBN遺伝子含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、変異ilvBN遺伝子をそれぞれクローン化するべく、配列番号37(コリネバクテリウム グルタミカム 変異ilvBN遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0090】
変異ilvBN遺伝子増幅用プライマー
(a-13); 5’- CTCT
TCATGA ATGTGGCAGCTTCTCAAC -3’
(配列番号38)
(b-13); 5’- CTCT
TCATGA TTAGATCTTGGCCGGAGC -3’
(配列番号39)
尚、プライマー(a-13)及び(b-13)には、BspHI制限酵素部位が付加されている。
【0091】
リジニバチルス スファエリカス由来のバリン生産遺伝子のクローニング
リジニバチルス スファエリカス由来のロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子をコードするleudh遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、leudh遺伝子をクローン化するべく、配列番号40(リジニバチルス スファエリカスleudh遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製「394 DNA/RNAシンセサイザー(synthesizer)」を用いて合成し、使用した。
【0092】
leudh遺伝子増幅用プライマー
(a-14); 5’- ACG
CCCGGG AGGAGGTACGGATGGAAATCTTCAAGTATAT -3’
(配列番号41)
(b-14); 5’- TCGG
CCCGGG GAGCTC TTAACGGCCGTTCAAAATATTTTT -3’
(配列番号42)
尚、プライマー(a-14)にはSmaI制限酵素部位が、(b-14)にはSmaI及びSacI制限酵素部位が付加されている。
【0093】
鋳型DNAは、コリネバクテリウム グルタミカムは、コリネバクテリウム グルタミカムR及びコリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株から抽出した染色体DNAを用いた。リジニバチルス スファエリカスは、NITE Biological Resource Center(NBRC)より入手したリジニバチルス スファエリカスNBRC 3525から抽出した染色体DNAを用いた。
【0094】
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*) コリネバクテリウム グルタミカムilvBN遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-9) と (b-9) の組み合わせ、コリネバクテリウム グルタミカムilvC遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-10) と (b-10) 、コリネバクテリウム グルタミカム ilvD遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-11) と (b-11) の組み合わせ、コリネバクテリウム グルタミカムilvE遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-12) と (b-12) の組み合わせ、コリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株 変異ilvBN遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-13) と (b-13) の組み合わせ、リジニバチルス スファエリカスleudh遺伝子を増幅する場合はプライマー(a-14) と (b-14) の組み合わせで行った。
【0095】
【0096】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、コリネバクテリウム グルタミカムilvBN遺伝子の場合約2.4-kb、コリネバクテリウム グルタミカムilvC遺伝子の場合約1.0-kb、コリネバクテリウム グルタミカムilvD遺伝子の場合約2.0-kb、コリネバクテリウム グルタミカムilvE遺伝子の場合約1.3-kb、コリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株 変異ilvBN遺伝子の場合約2.4-kbリジニバチルス スファエリカスleudh遺伝子の場合約1.1-kbのDNA断片が検出できた。
【0097】
(4) バリン生産遺伝子発現プラスミドの構築
バリン生産遺伝子のpCRB207へのクローニング
上記項(3)に示したPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvBN遺伝子を含む約2.4-kb DNA断片10μlを制限酵素BspHIで、コリネバクテリウム グルタミカムilvC遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片10μlを制限酵素NcoIで、PgapAプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB207 2μlを制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、3種類のDNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションF液とした。
また、上記項(3)に示したPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来 変異ilvBN遺伝子を含む約2.4-kb DNA断片10μlを制限酵素BspHIで、コリネバクテリウム グルタミカム由来ilvC遺伝子を含む約1.0-kb DNA断片10μlを制限酵素NcoIで、PgapAプロモーターを含有するクローニングベクターpCRB207 2μlを制限酵素NcoIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、3種類のDNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションG液とした。
【0098】
得られたライゲーションF液及びG液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素でそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB207約5.1-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvBN遺伝子及びilvC遺伝子(ライゲーションF液)の場合、約3.4-kbの挿入断片が、コリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来 変異ilvBN遺伝子及びコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvC遺伝子(ライゲーションG液)の場合、約3.4-kbの挿入断片が、認められた。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvBNC遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-ilvBNC/CG、コリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来 変異ilvBNC遺伝子を含むプラスミドをpCRB207-ilvBN
GEC/CGと命名した。
【0099】
バリン生産遺伝子のpCRB21へのクローニング
上述のプラスミドpCRB207-ilvBNC/CG及びpCRB207-ilvBN
GEC/CGを制限酵素BamHIで切断し、アガロース電気泳動後、アガロースゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(株式会社キアゲン社製)によって回収したgapAプロモーターとコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvBNC遺伝子及びターミネーター配列を連結した約4.4-kbのDNA断片とBamHIで切断したクローニングベクターpCRB21約3.7-kbを70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させたDNA断片を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ(タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションH液及びI液とした。
得られたライゲーションH液及びI液を用い、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素BamHIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpCRB21約3.7-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvBNC遺伝子(ライゲーションH液)の場合、長さ約4.4-kbの挿入断片が、コリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来 変異ilvBN遺伝子及びコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvC遺伝子(ライゲーションI液)の場合、約3.4-kbの挿入断片が、認められた。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvBNC遺伝子を含むプラスミドをpCRB-BNC、コリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来ilvBNC遺伝子を含むプラスミドをpCRB-BN
GECと命名した(
図1)。
【0100】
バリン生産遺伝子のpKK223-3へのクローニング
上記項(3)に示したPCRにより増幅したコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子を含む約2.0-kb DNA断片、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvE遺伝子を含む約1.3-kb DNA断片、リジニバチルス スファエリカス株由来leudh遺伝子を含む約1.1-kb DNA断片10μl及びtacプロモーターを含有するクローニングベクターpKK223-3(ファルマシア社製)2μlを各々制限酵素SmaIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションN液、O液及びP液とした。
【0101】
得られた3種のライゲーションN液、O液及びP液それぞれを、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
各々培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素でそれぞれ切断し、挿入断片を確認した。この結果、プラスミドpKK223-3約4.6-kbのDNA断片に加え、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子(ライゲーションN液)の場合、長さ約2.0-kbの挿入断片が、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvE遺伝子(ライゲーションO液)の場合、長さ約1.3-kbの挿入断片が、リジニバチルス スファエリカス株由来leudh遺伝子(ライゲーションP液)の場合、長さ約1.1-kbの挿入断片が認められた。
【0102】
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-ilvD/CG、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvE遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-ilvE/CG、リジニバチルス スファエリカス株由来leudh遺伝子を含むプラスミドをpKK223-3-leudh/LSとそれぞれ命名した。
【0103】
バリン生産遺伝子のpCRB12へのクローニング
上述のプラスミドpKK223-3- ilvD/CGから、tacプロモーター及びコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R由来ilvD遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、tacプロモーター及びコリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子(配列番号43;Ptac-ilvD配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0104】
Ptac-ilvD配列増幅用プライマー
(a-17); 5’- ATAT
CCTGCAGGCTAGC GCTGTGCAGGTCGTAAATCACT -3’
(配列番号44)
(b-17); 5’- ATAT
GCTAGC T
CCTGCAGG TATTTGCAACGGGGAGCTC -3’
(配列番号45)
尚、プライマー(a-17)にはSse8387I及びNheI制限酵素部位が、(b-17)にはNheI及びSse8387I制限酵素部位が付加されている。
鋳型DNAは、上述のプラスミドpKK223-3-ilvD/CGを用いた。
【0105】
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*) Ptac-ilvD/CG配列を増幅する場合はプライマー(a-17)と(b-17)の組み合わせで行った。
【0106】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、Ptac-ilvD配列約2.2-kbのDNA断片が検出できた。
【0107】
上記のPCRにより増幅したtacプロモーター配列及びコリネバクテリウム グルタミカム由来ilvD配列を含む約2.2-kb DNA断片10μlとクローニングベクターpCRB12 2μlを各々制限酵素Sse8387Iで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションQ液とした。
得られたライゲーションQ液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素Sse8387Iで切断し、挿入断片を確認した。この結果、クローニングベクターpCRB12約3.7-kbのDNA断片に加え、Ptac-ilvD配列(ライゲーションQ液)の場合、約2.2-kbのDNA断片が認められた。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD遺伝子を含むプラスミドをpCRB12-ilvD/CGと命名した。
【0108】
上述のプラスミドpKK223-3- ilvE/CG及びpKK223-3-leudh/LSから、tacプロモーター及びコリネバクテリウム グルタミカム由来ilvE遺伝子及びリジニバチルス スファエリカス株由来leudh遺伝子を含むDNA断片を以下のPCR法により増幅した。
PCRに際して、tacプロモーター融合コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvE遺伝子(配列番号46;Ptac-ilvE配列)及びtacプロモーター融合リジニバチルス スファエリカス株由来leudh遺伝子(配列番号47;Ptac-leudh配列)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
Ptac-ilvE配列増幅用プライマー
(a-18); 5’- ATAT
GCTAGC T
CCTGCAGG CTGTGCAGGTCGTAAATCAC -3’
(配列番号48)
(b-18); 5’- ATAT
CCTGCAGGCTAGC ATCCCTGACTCCACCCCCTAC -3’
(配列番号49)
尚、プライマー(a-18)にはNheI及びSse8387I制限酵素部位が、(b-18)にはSse8387I及びNheI制限酵素部位が付加されている。
Ptac-leudh配列増幅用プライマー
(a-19); 5’- ATAT
GCTAGC T
CCTGCAGG CTGTGCAGGTCGTAAATCAC -3’
(配列番号50)
(b-19); 5’- ATGC
CCTGCAGGCTAGC GTTAACGGCCGTTCAAAATAT -3’
(配列番号51)
尚、プライマー(a-19)にはNheI及びSse8387I制限酵素部位が、(b-19)にはSse8387I及びNheI制限酵素部位が付加されている。
鋳型DNAは、上述のプラスミドpKK223-3-ilvE/CG及pKK223-3-leudh/LSを用いた。
【0109】
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*) Ptac-ilvE/CG配列を増幅する場合はプライマー(a-18)と(b-18)の組み合わせ、Ptac-leudh/LS配列を増幅する場合はプライマー(a-19)と(b-19)の組み合わせで行った。
【0110】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、Ptac-ilvE/CG配列約1.5-kbのDNA断片及びPtac-leudh/LS配列約1.3-kbのDNA断片が検出できた。
【0111】
上記のPCRにより増幅したtacプロモーター配列融合コリネバクテリウム グルタミカム由来ilvE配列を含む約1.5-kb DNA断片及びtacプロモーター配列融合リジニバチルス スファエリカス株由来leudh配列を含む約1.3-kb DNA断片10μlとtacプロモーター配列融合コリネバクテリウム グルタミカム由来ilvD配列を含むpCRB12-ilvD/CG 2μlを各々制限酵素NheIで切断し、70℃で10分処理させることにより制限酵素を失活させた後、両者を混合し、これにT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (タカラバイオ株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションR液及びS液とした。
得られたライゲーションR液及びS液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、カナマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素NheIで切断し、挿入断片を確認した。この結果、tacプロモーター配列融合コリネバクテリウム グルタミカム由来ilvD配列を含むpCRB12-ilvD/CG約5.9-kbのDNA断片に加え、Ptac-ilvE配列(ライゲーションR液)の場合、約1.5-kbのDNA断片、Ptac-leudh配列(ライゲーションS液)の場合、約1.3-kbのDNA断片が認められた。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD及びilvE遺伝子を含むプラスミドをpCRB-DEと命名した。コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvD及びリジニバチルス スファエリカス株由来leudh遺伝子を含むプラスミドをpCRB-DLDと命名した(
図2)。
【0112】
(5)バリン生産遺伝子へのPCRを用いた部位特異的変異導入
コリネバクテリウム グルタミカム株由来のアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼをコードするilvC遺伝子に、バリン生産性を向上させる変異を導入するため、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvBNC遺伝子配列及びコリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来ilvBNC遺伝子配列を含むDNA断片を以下の方法により増幅した。
PCRに際して、コリネバクテリウム グルタミカム株由来ilvBNC遺伝子配列を含むプラスミドpCRB-BNC及びコリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来ilvBNC遺伝子配列を含むプラスミドpCRB-BN
GECをクローン化するべく、配列番号52(ilvC遺伝子)を基に、それぞれ下記の一対のプライマーを合成し、使用した。
【0113】
ilvC(S34G)変異導入用プライマー
(a-15); 5’- CGCACAC
GGCCAGAACC -3’ (配列番号53)
(b-15); 5’- GGTTCTGG
CCGTGTGCG -3’ (配列番号54)
尚、下線部分は変異導入塩基である。
ilvC(L48E, R49F)変異導入用プライマー
(a-16); 5’- CATTGGT
GAG
TTCGAGGGC -3’ (配列番号55)
(b-16); 5’- GCCCTCG
AAC
TCACCAATG -3’ (配列番号56)
尚、下線部分は変異導入塩基である。
【0114】
(5)-1 ilvC(S34G)変異導入
鋳型DNAは、コリネバクテリウム グルタミカム株由来 ilvBNC遺伝子配列を含有するプラスミドpCRB-BNC及びコリネバクテリウム グルタミカム バリン高生産株由来 変異ilvBNC遺伝子配列を含有するプラスミドpCRB-BN
GECを用いた。
【0115】
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*)pCRB-BNC配列及びpCRB-BN
GEC配列を増幅するプライマーは(a-15)と(b-15)の組み合わせで行った。
【0116】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、pCRB-BNC配列を含む約8.1-kbのDNA断片及びpCRB-BN
GEC配列を含む約8.1-kbのDNA断片が検出できた。
【0117】
上記のPCRにより増幅したpCRB-BNCを含む約8.1-kb DNA断片10μ及びpCRB-BN
GECを含む約8.1-kb DNA断片にT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (宝酒造株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションJ液及びK液とした。
得られたライゲーションJ液及びK液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドの塩基配列をシーケンス解析で確認することにより変異導入サイトの挿入を確認した。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来のアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼをコードするilvC遺伝子の34番目のアミノ酸セリンをグリシンに変更したilvC配列を含むプラスミドをクタ−をpCRB-BNC
SM及びpCRB-BN
GEC
SMと命名した。
【0118】
(5)-2 ilvC(L48E, R49F)変異導入
鋳型DNAは、上記1. ilvC(S34G)変異導入で構築したpCRB-BNC
SM及び pCRB-BN
GEC
SMを用いた。
実際のPCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて下記の条件で行った。
*)pCRB-BNC
SM配列及びpCRB-BN
GEC
SMを増幅するプライマーは(a-16)と(b-16)の組み合わせで行った。
【0119】
上記で生成した反応液10μlを0.8%アガロースゲルにより電気泳動を行い、pCRB-BNC
SM配列を含む約8.1-kbのDNA断片及びpCRB-BN
GEC
SM配列を含む約8.1-kbのDNA断片が検出できた。
【0120】
上記のPCRにより増幅したpCRB-BNC
SMを含む約8.1-kb DNA断片10μ及びpCRB-BN
GEC
SMを含む約8.1-kb DNA断片にT4 DNAリガーゼ10×緩衝液 1μl 、T4 DNAリガーゼ (宝酒造株式会社製) 1 unitの各成分を添加し、滅菌蒸留水で10μl にして、15℃で3時間反応させ、結合させた。これをライゲーションL液及びM液とした。
得られたライゲーションL液及びM液を、塩化カルシウム法〔Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970)〕によりエシェリヒア コリHST02を形質転換し、クロラムフェニコール50μg/mlを含むLB寒天培地〔1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、および1.5% 寒天〕に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドの塩基配列をシーケンス解析で確認することにより変異導入サイトの挿入を確認した。
コリネバクテリウム グルタミカム株由来のアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼをコードするilvC遺伝子の34番目のアミノ酸セリンをグリシンに、48番目のアミノ酸ロイシンをグルタミン酸に、49番目のアミノ酸アルギニンをフェニルアラニンに変更したilvC配列を含むプラスミドをpCRB-BNC
TM及びpCRB-BN
GEC
TMと命名した(
図1)。
【0121】
(6) バリン生産遺伝子導入株の構築
上述のプラスミドpCRB-BNC及びpCRB-DEを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)]株を形質転換し、カナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入プラスミドを確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB-BNC及びpCRB-DEの導入が認められた。
得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)VAL1と命名した。
【0122】
上述のプラスミドpCRB-BNC
TM及びpCRB-DEを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)]株を形質転換し、カナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入プラスミドを確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB-BNC
TM及びpCRB-DEの導入が認められた。
得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)VAL2と命名した。
【0123】
上述のプラスミドpCRB-BNC
TM及びpCRB-DLDを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)]株を形質転換し、カナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入プラスミドを確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB-BNC
TM及びpCRB-DLDの導入が認められた。
得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)VAL3と命名した。
【0124】
上述のプラスミドpCRB-BN
GEC
TM及びpCRB-DLDを用いて、電気パルス法 [Agric. Biol. Chem.、Vol. 54、443-447(1990) 及びRes. Microbiol.、Vol. 144、181-185(1993)] により、コリネバクテリウム グルタミカムR ldhA mutant [J. Mol. Microbiol. Biotechnol.、Vol. 8、243-254(2004)]株を形質転換し、カナマイシン 50μg/ml及びクロラムフェニコール 5μg/mlを含むA寒天培地に塗布した。
この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを抽出、該プラスミドを制限酵素で切断し、挿入プラスミドを確認した。この結果、上記で作製のプラスミドpCRB-BN
GEC
TM及びpCRB-DLDの導入が認められた。
得られた株をコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)VAL4と命名した。
【0125】
本株の遺伝子組換えの概要を、表2にまとめて示す。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)VAL4は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託した(受託日:2011年8月11日、受託番号:NITE BP-1122)。
【表2】
*) 表内の表示の略語は以下の通り
<遺伝子起源略語>
CG; コリネバクテリウム グルタミカム由来
LS; リジニバチルス スファエリカス由来
ΔldhA;乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子破壊
ilvBNC;野生型アセトヒドロキシ酸シンターゼ遺伝子、及び野生型アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ遺伝子
ilvBNC
TM;野生型アセトヒドロキシ酸シンターゼ遺伝子、及び変異アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ遺伝子(S34G, L48E, R49F)
ilvBN
GEC
TM;変異アセトヒドロキシ酸シンターゼ遺伝子(G156E)、及び変異アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ遺伝子(S34G, L48E, R49F)
ilvD;野生型ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ遺伝子
ilvE;野生型トランスアミナーゼ遺伝子
leudh;野生型ロイシンデヒドロゲナーゼ遺伝子
【0126】
実施例3 コリネバクテリウム グルタミカム バリン生産遺伝子導入株のバリン生成実験
バリン生産遺伝子であるアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするコリネバクテリウム グルタミカムのilvBN遺伝子もしくはバリン高生産性の変異型ilvBN
GE遺伝子、アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼをコードするコリネバクテリウム グルタミカムのilvC遺伝子もしくはバリン高生産性の変異型ilvC
TM遺伝子、ジビドロキシ酸デヒドラターゼをコードするコリネバクテリウム グルタミカムのilvD遺伝子、トランスアミナーゼをコードするコリネバクテリウム グルタミカムのilvE遺伝子もしくはロイシンデヒドロゲナーゼをコードするリジニバチルス スファエリカスのleudh遺伝子を様々な組合せで遺伝子組換えした場合の効果を調べる為に、コリネバクテリウム グルタミカム R ldhA mutant(L-乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子破壊)株に実施例2で示したように各遺伝子を導入し、バリンの生産比較を行った。
【0127】
実施例2(表2)に示した各種バリン生産株を、カナマイシン50μg/ml及びクロラムフェニコール5μg/mlを含むA寒天培地[(NH
2)
2CO 2g、(NH
4)
2SO
4 7g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 g、寒天 15 gを蒸留水1Lに懸濁] に塗布し、28℃、20時間暗所に静置した。
【0128】
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカム バリン生産遺伝子導入株を、各抗生物質を含むA液体培地[(NH
2)
2CO 2g、(NH
4)
2SO
4 7g、KH
2PO
4 0.5 g、K
2HPO
4 0.5 g、MgSO
4.7H
2O 0.5 g、0.06% (w/v) Fe
2 SO
4.7H
2O + 0.042% (w/v) MnSO
4.2H
2O 1 ml、0.02% (w/v) biotin solution 1 ml、0.01% (w/v) thiamin solution 2 ml、yeast extract 2 g、vitamin assay casamino acid 7 g、glucose 40 gを蒸留水1Lに溶解] 10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
【0129】
<好気培養>
上記条件で生育したコリネバクテリウム グルタミカム バリン生成株を、カナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール 5μg/ml及びゼオシン25μg/ml を含有したA液体培地500mlの入った容量2Lの三角フラスコに植菌し、28℃にて15時間、好気的に振盪培養を行った。
【0130】
<還元条件でのバリン製造>
このようにして培養増殖されたそれぞれの菌体は、遠心分離 (4℃、5,000×g, 15分)により菌体を回収した。得られた菌体を、40g cell dry weight l
-1となるようにBT(-尿素)液体培地〔0.7% 硫酸アンモニウム、0.05% リン酸二水素カリウム、0.05% リン酸水素二カリウム、0.05% 硫酸マグネシウム・7水和物、0.0006% 硫酸鉄・7水和物、0.00042% 硫酸マンガン水和物、0.00002% ビオチン、0.00002% チアミン塩酸塩〕に懸濁した。このそれぞれの菌体懸濁液60mlを容量100mlメディウム瓶に入れ、還元条件下(酸化還元電位;-450 mV)、グルコースを8%となるように添加し、33℃に保った水浴中で攪拌しながら反応させた。この時、反応液のpHが7.0を下回らないように2.5Nのアンモニア水を用いてpHコントローラー (エイブル株式会社製、型式:DT-1023)でコントロールしながら反応した。
24時間後にサンプリングした反応液を遠心分離 (4℃、15,000×g、10分) し、得られた上清液を用いてバリンの定量を行った。
【0131】
結果を以下の表3に示す。
バリン生産関連遺伝子発現プラスミドを導入していないコリネバクテリウム グルタミカム ΔldhA株は5.37 mMのバリンを、VAL1株は53.9 mMのバリンを生成していた。すなわちilvBNCDE遺伝子の高発現によりバリン生成量が約10倍増大した。
VAL1株と比較して、VAL2株は239mMのバリンを生成していた。すなわち野生型ilvC遺伝子から変異型ilvC
TM遺伝子に変換し、高発現することにより、バリン生成量がさらに約4.4倍増大した。
VAL2株と比較して、VAL3株は1170mMのバリンを生成していた。すなわち、ilvE遺伝子からleudh遺伝子に変換し、高発現することにより、バリン生成量がさらに約4.9倍増大した
VAL3株と比較して、VAL4株は1470mMのバリン生成していた。すなわち、野生型ilvBN遺伝子から変異型ilvBN
GE遺伝子に変換し、高発現することにより、バリン生成量がさらに1.3倍増大した。
【0132】
【表3】
*) 表内の表示の略語は、表2と同じ