特許第5960703号(P5960703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960703
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】用量設定機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   A61M5/315 550A
   A61M5/315 550P
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-533173(P2013-533173)
(86)(22)【出願日】2011年10月11日
(65)【公表番号】特表2013-539699(P2013-539699A)
(43)【公表日】2013年10月28日
(86)【国際出願番号】EP2011067680
(87)【国際公開番号】WO2012049143
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】11168193.8
(32)【優先日】2011年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/392,756
(32)【優先日】2010年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・バトラー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・プランプトリ
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−531151(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/132778(WO,A1)
【文献】 特表2006−519074(JP,A)
【文献】 特表2005−512690(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0200787(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/039930(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスのための用量設定機構であって:
薬物送達デバイスハウジング(120);
少なくとも部分的にハウジング(120)中に位置しそして用量設定工程中に回転可能である用量ダイヤル部材(122;202);
用量ダイヤル部材(122;202)内に位置する駆動スリーブ(124;206);
駆動スリーブ(124;206)内に位置するスピンドル(126);
用量ダイヤル部材(122;202)と駆動スリーブ(124;206)の間に位置するクラッチ(128;212);及び
最小許容用量より小さい用量が選択されたとき、ハウジング(120)に対して回転して固定されるクラッチリング(130;200)を含んでなり、
ここで、用量ダイヤル部材(122;202)が回転して最小用量より小さい用量を選択したとき、クラッチリング(130;200)は駆動スリーブ(124;206)が回転するのを防止し、スピンドル(126)を駆動スリーブ(124;206)から係合解除させ、それにより選択用量が投与されるのを防止する、上記用量設定機構。
【請求項2】
用量ダイヤル部材(122;202)が回転して最小用量より小さい用量を選択したとき、クラッチリング(130;200)はクラッチ(128;212)が回転するのを防止する、請求項1に記載の機構。
【請求項3】
用量ダイヤル部材(122;202)が回転して最小用量より大きい用量を選択したとき、最小用量より大きい用量が選択されそして投薬され得るように、クラッチリング(130;200)は駆動スリーブ(124;206)及びクラッチ(128;212)をその後の用量設定中に一緒に回転するのを可能にする、請求項1に記載の機構。
【請求項4】
スピンドル(126)が少なくとも1つの可撓性部材(134a、b)を含む請求項1に記載の機構であって、少なくとも1つの可撓性部材は駆動スリーブ(124;206)のねじ山(138)と係合するように構成される、上記機構。
【請求項5】
最小用量より大きい用量が選択された後、少なくとも1つの可撓性部材(134a、b)は駆動スリーブ(124;206)の内側ねじ山(138)と係合する、請求項4に記載の機構。
【請求項6】
駆動スリーブ(124;206)の駆動内側ねじ山(138)が駆動スリーブ(124;206)ピッチを含む請求項5に記載の機構であって、駆動スリーブピッチは最小用量に達するために用量ダイヤル部材(122;202)によってダイヤルされる必要がある軸方向距離に等しい、上記機構。
【請求項7】
クラッチリング(130;200)はハウジング(120)にスプライン係合される、請求項1に記載の機構。
【請求項8】
用量ダイヤル部材(122;202)が回転して最小用量より小さい用量を選択したときだけ、クラッチリング(130;200)はハウジング(120)にスプライン係合される、請求項7に記載の機構。
【請求項9】
用量ダイヤル部材(122;202)が回転して最小用量より大きい用量を選択したとき、クラッチリング(130;200)はもはやハウジング(120)にスプライン係合されない、請求項7に記載の機構。
【請求項10】
クラッチリング(130;200)の第1の部分と用量ダイヤル部材(122;202)の第1の部分の間で画成されるインターフェース(140、144)はクリッカーを画成する、請求項1に記載の機構。
【請求項11】
クラッチ(128;212)及びクラッチリング(130;200)は一体クラッチ機構を含む、請求項1に記載の機構。
【請求項12】
クラッチリング(200)は駆動スリーブ(206)に回転してロックされる、請求項1に記載の機構。
【請求項13】
駆動スリーブ(124;206)は数字スリーブ(122;202)に軸方向にロックされる、請求項1に記載の機構。
【請求項14】
少なくとも、最小用量より小さい用量が選択されたとき、クラッチリング(130;200)の突出部はハウジング(120)のキーイング機能(123)に対して回転して固定される、請求項1に記載の機構。
【請求項15】
ハウジング(120)が複数のキーイング機能(123)を含み、そして/又はクラッチリング(130;200)が複数の突出部(131)を含む、請求項14に記載の機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、最小及び/又は最大の可能な用量設定を制御する薬物送達デバイス用の用量設定機構を設定し送達する方法を対象にする。特に、本特許出願は一般に、治療法が、患者が特定の薬剤の少なくともある最小用量の投与を受けてそしてある最大用量を超えないことを治療法が要求する場合の、ペン型薬物送達デバイスなどの薬物送達デバイスを対象にする。そのようなデバイスは多回投与カートリッジからの医薬品の自己投与を備え、そして最小及び/又は最大用量を設定するための用量制限機構を含む。本出願は、使い捨て及び再使用可能型薬物送達デバイスの両方において適用性を見出し得る。しかしながら、本発明の態様は同様に他のシナリオにおいて同等に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
自己投与注射可能薬剤は多くの場合可変用量注射デバイスを用いて送達される。そのようなデバイスは、特許文献1から公知である。注射に先立って、使用者は、それらがそれらの処方用量に従って必要とする用量、及び/又はそれらの現在の又は予想されるその後の身体状況を選択する。代表例は、患者の用量がそれらの処方用量並びにそれらの予想食物摂取及び活動レベルによって決まる場合の、糖尿病患者に対するインスリン送達デバイスであり得る。通常そのようなデバイスは、デバイスが送達することができる1単位から最大単位までのいずれもの用量、通常はペン型又はシリンジ注射デバイスなどの手動デバイスに対して60単位又は80単位を使用者が選択することを可能にする。
【0003】
特許文献1の薬物送達デバイスは、用量設定機構を受けるためのハウジング、カートリッジ、取り付け用量ダイヤルグリップを備えた用量ダイヤルスリーブ、クリッカー、駆動スリーブ、駆動スリーブをカップリング及びデカップリングするためのクラッチ、回転ピストンロッド及び設定用量を注射するのに押圧されるボタンを含む。特許文献1に開示されるペン型注射デバイスの全説明は参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0004】
用量をダイヤルするために、使用者はダイヤルグリップを回転させる。係合されたクリッカー及びクラッチ手段に関して、ドライブスリーブ、クリッカー及びクラッチ手段及び用量ダイヤルスリーブは、ハウジングに対して及びピストンロッドに対して用量ダイヤルグリップと一緒に回転する。ダイヤルされている用量の聴覚及び触覚フィードバックはクリッカー及びクラッチ手段によってもたらされる。トルクはクリッカー及びクラッチ手段間で鋸歯を通して伝達される。
【0005】
用量ダイヤルスリーブ上のラセン溝及び駆動スリーブ中のラセン溝は同じリードを有する。これは、用量ダイヤルスリーブがハウジングから伸びること、及び駆動スリーブが同じ度合でピストンロッドに上ることを可能にする。走行の限界(limit of travel)において、用量ダイヤルスリーブ上の半径方向の止め具は更なる動きを防止するためにハウジング上に備えられた止め具を係合する。ピストンロッドの回転は、ピストンロッド上の分解点検及び駆動ねじの反対方向に起因して防止される。
【0006】
使用者が所望の薬用量を超えて不注意にダイヤルした場合、ペン型注射器は、薬用量がカートリッジから医薬品の投薬なしに下方にダイヤルされることを可能にする。用量ダイヤルグリップは逆回転する。これはシステムを逆に作動するようにさせる。クラッチ手段を通して伝達されるトルクは、ダイヤルした用量減少に対応するクリックを作り出すために、鋸歯を互いに乗り越えるようにさせる。好ましくは、鋸歯は、各鋸歯の周辺の範囲が単位用量に対応するように配列される。
【0007】
所望用量がダイヤルされるとき、使用者は次にボタンを押し下げることによりこの用量を投薬し得る。これは、クラッチ手段のドッグツースを係合解除させる用量ダイヤルスリーブに対して軸方向にクラッチ手段を変位させる。しかしながら、クラッチ手段は駆動スリーブに対してキー付きのままである(remains keyed)。用量ダイヤルスリーブ及び関連の用量ダイヤルグリップはこれで自由に回転することができる。軸運動は、投薬中鋸歯は点検されることができないことを確実にするためにクリッカーの可撓性部分を変形する。これは駆動スリーブがハウジングに対して回転することを防止するが、それはそれに対して軸方向に尚自由に動くことができる。この変形はその後、圧力がボタンから取り除かれるとき、クラッチと用量ダイヤルスリーブ間の連結を修復するように駆動スリーブに沿ってクリッカー及びクラッチを戻させるために用いられる。駆動スリーブの縦方向の軸運動は、ねじ込みピストンロッドをハウジングインサート中のねじ込み開口部を通して回転させ、それによりカートリッジ中にピストンを進むようにさせる。
【0008】
言い換えれば、駆動スリーブは注射中、縦方向、即ち軸方向だけに動く。駆動スリーブ及びピストンロッドは、ピストンロッドの外面及び駆動スリーブの内面上で対応するねじ山を介して係合することから、駆動スリーブの縦運動はピストンロッドを回転するようにさせる。対応するねじ山を介してピストンロッドと係合するねじ込み開口部を備えたハウジングインサートはハウジング内に固定され、即ち回転を防止される。このように、回転ピストンロッドはハウジングインサートにおいてねじ込み開口部を通してねじ込まれ、即ちピストンロッドは、ねじ込み開口部及びピストンロッドの対応するねじ山によって画成されるラセン経路に沿って回転及び縦方向運動の組み合わせを行う。
【0009】
一度ダイヤル用量が投薬されると、用量ダイヤルスリーブは、用量ダイヤルグリップから伸びる複数の部材をハウジング中に形成される対応する複数の止め具と接触させることによって更なる回転が防止され、このようにゼロ用量位置を決定する。
【0010】
そのようなペン型薬物送達デバイスは、正式な医学訓練なしに個人による通常の注射を実施するために設計及び開発されている。自己処置はそのような患者がその疾患の効果的な管理を実施するのを可能にするような糖尿病を有する患者の中では、これは益々一般的になっている。医療従事者ではなく、患者はそのような薬物送達デバイスを使用している可能性があることから、1つの必要条件はデバイスが堅固な構造を有することである。薬物送達デバイスはまた、薬物送達デバイス操作及びデバイス動作の理解の両方により使いやすくする必要がある。これは特にインスリン溶液を反復自己注射する必要のある糖尿病患者に当てはまり、そして注射予定のインスリン量は患者によって異なりそして注射剤によっても異なってよい。少なくともその限りでは、ある糖尿病患者は、患者がインスリン溶液の同じ又は恐らく異なる事前セット量の連続測定薬用量を、正確にそして最小の器用さの問題で注射することを可能にする薬物送達デバイスを必要とし得る。ある糖尿病患者の場合、使用者は視力を障害している可能性があり、及び/又は器用さの限られた身体虚弱であり得ることから、これは更なる設計課題を提起する。
【0011】
インスリンに加えて、他の薬剤はそれらが治療的に有効になる前に送達すべき最小用量を必要とする。患者が治療的に有効な最小用量未満の用量を送達することが可能な可変用量デバイスは、使用者が用量計算の誤りによるか又は間違った用量を誤って選択することにより無効量を送達し得る可能性をもたらす。同様に、幾つかの薬剤は最大用量が超えるべきではないことを必要とする。これは、薬剤の副作用のリスク若しくは重度増加又は過剰若しくは望ましくない作用など、安全対策のためであり得る。現在の可変用量送達デバイスは、通常送達機構が提供することができる最大用量によって制限される最大用量を有し、しかしながら、これは薬剤の最大勧奨又は所定用量に必ずしも関連していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2004/078239A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は少なくとも2つのアプリケーションを有する。第1は、画成用量窓内の可変用量となる必要がある単一活性薬剤の送達であり、即ちその用量はある最小用量より多い必要があり、そしてある最大用量を超えてはいけない。第2の用途は活性薬剤の組み合わせ製剤の送達に関するもので、ここでは少なくとも1つの薬剤は好ましくは可変用量として送達され、そして少なくとも1つの他の薬剤は好ましくは固定用量として送達され、そしてここではこの固定用量は例えば±10%の公称固定用量だけ画成用量窓内で安全に変動し得る。
【0014】
本発明に基づく最小及び/又は最大用量制限送達デバイスは、それが治療的に有効になる前に送達しようとする最小用量を必要とする薬剤に使用し得て、しかしここでは用量調整の程度が必要となり得る。患者の体重又はそれらの病状の重度に応じて用量を調節することを含み、この用量調整は多くの理由で必要となり得る。最小及び/又は最大用量制限送達デバイス(min/maxデバイス)はまた、患者による投薬ミスの可能性を減少させるために、完全可変(即ち0〜max用量)デバイスの代わりに使用し得る。可変用量ペンよりもむしろmin/maxデバイスを用いることは、患者が規定用量窓を外れて、即ち高すぎるか又は低すぎる用量を誤って送達し得るリスクを減少させる。
【0015】
Min/maxデバイス利用の1つの例は、患者がmin/max送達デバイスを小児が自己投与することができるように小児に与えることができて、そして患者がmin/maxデバイスの最小及び最大レベルは、いずれの過量摂取又は過少摂取の可能な重大性を限定することを知り得る場合である。そのようなデバイスが適用し得る場合の別の例は、長時間作用型インスリンを服用する患者に対してである。通常可変用量ペンは、患者がその目標血中グルコースレベルに達するようにそれらの用量を「調節している(titrating)」ときに必要とされる。しかしながら、一度目標血中グルコースレベルが実現されると、長時間作用型インスリンの用量は通常比較的長時間にわたって多かれ少なかれ変わらないままである。この期間中、患者のインスリン用量が1日毎の基準で一定であるか又はほんのわずかの単位だけ変化する場合、患者の長時間作用型インスリンニーズは最小及び/又は最大用量制限送達デバイスによって効果的に満たされ得る。
【0016】
表1(下記に提供される)は、単一の1〜80単位可変用量デバイスの代わりに使用し得る、送達デバイスの実例ファミリー、「Pen1」〜「Pen4」を示す。Pen1〜4の各々はほぼ同じ基本機構で設計及び製作されるが、各ペンは異なる最小及び/又は最大用量を設定するために使用される更なる又は別の部材を含む。患者はそれらの安定な長時間作用型インスリン用量に応じて特定のPenを処方され得る。例えば、表1によれば、1日当り30単位の長時間作用型インスリンを処方された患者は、それぞれ18単位の最小用量及び42単位の最大用量を有する、Pen2を処方され得る。どのような数の機械的部材でも、軸方向及び/又は回転止め具、戻り止め、クラッチ、圧縮フィンガ、又は類似の部材を含んで、これらの所定のmin/max用量を確実にするようなペン設計に使用することができる。
【0017】
糖尿病患者のインスリン用量は経時的に徐々に変わり得る。それ故、用量が増加するにつれてPen間の円滑な移行を可能にするために、Pen間に少量の用量範囲の重複があってよい。例えば、表1によれば、1日当り40単位の長時間作用型インスリンを処方された患者は、患者がその用量を経時的に減少させることを期待する場合はPen2が、又は患者がその用量を経時的に増加させることを期待する場合はPen3が投与され得る。「ファミリー」中のペンの数及び表1中に示される選択用量範囲は一例に過ぎない。本発明のmin/maxデバイスを用いることにより、用量選択のときのミスはペンの動作窓内に限定される。用量を上方にダイヤルすること又は用量をペンの用量範囲未満に送達することは可能となり得ず、そしてこれは患者にその誤りを警告し得る。
【0018】
特に用量誤り又は薬物/デバイスの取り違えをもたらし得る類似デバイスとの混同のリスクがある場合、min/maxデバイスはまた他の医薬品の送達に適用し得る。1つのそのような例は速効作用型インスリン及び長時間作用型インスリンであり得る。これらのインスリンはいずれも「単位」で計られ、しかしながら、同じ単位数の各インスリンタイプは非常に異なる効果を有する可能性があり、そして患者には1日を通じて異なる回数で服用しようとする各薬物の異なる用量が処方され得る。長時間作用型及び速効作用型インスリンの取り違えは低血糖症を引き起こし得て、そして潜在的に致死的になる。両タイプのインスリンは注射ペンデバイスによって送達され得る。ペンは異なるデザイン、色、形状から成りそして異なるラベルを持っていても、患者はそれらのインスリンペンを取り違えることが分かっている場合、「自動操縦」効果が起こり得るというようなルーチンベースで患者はそれらの注射を行う。
【0019】
今回提案のmin/maxデバイスはこの取り違え発生を防止するのに資する。例えば、速効作用型及び長時間作用型インスリンの両方が各々表1によるmin/maxデバイスのファミリーを備えると仮定する。患者には1日当り50単位の長時間作用型インスリン(長時間作用型Pen3を必要とし得る)、及び食事と一緒に15単位の速効作用型インスリン(Pen1を必要とし得る)が処方される。最も危険な取り違えは、患者が長時間作用型インスリンよりもむしろ速効作用型インスリンの50単位を誤って送達する場合に起こり得る。患者がmin/maxデバイスでこれを行うのを試みた場合、次いで患者は速効作用型インスリン(Pen1)を手に取り得て、それらが22単位を超えてダイヤルし得ないことを見出し得る。このことは、これが正しいインスリンペンではなくそれ故間違ったインスリンタイプであるという事実を患者に警告し、そしてそれ故間違ったインスリンが送達されるのを防止し得る。
【0020】
このmin/max概念は使い捨てデバイス及び再使用可能デバイスの両方に同様に提供され得る。
【0021】
ある医薬品はまた、送達デバイス又は針の正しい動作を確認するために使用者が「プライミング」用量を実施することを必要とする。これは通常2単位の「エアショット」を送達し、次いで医薬品が針から出るのが見えるのをチェックすることによって達成される。表1に示されるmin/max概念はこれを許容し得ない。プライミング機能性が必要な場合、例えば1〜2単位の範囲の第2の許容「用量窓」も各ペン機構内に導入され得る。これを適用可能にする方法の例は表2に示される。表1及び2はいずれも偶数単位だけを示すが、これは明確さのためだけに行われ、デバイスは奇数及び偶数単位又は可能な1/2単位を送達するのに構成され得る。
【0022】
記述のように、本開示デバイスはまた、活性薬剤の組み合わせ製剤の送達が必要な治療法にも有用であり得て、ここでは少なくとも1つの薬剤は好ましくは可変用量で送達され、そして少なくとも1つの他の薬剤は好ましくは固定用量で送達される。患者が医薬品の組み合わせを必要とする場合、そのときはそれらの医薬品が、一個の針を通した1つの注射において単一注射デバイスによる送達のために単一製剤(即ち両方の薬物が事前に定義された割合で混ぜ合わされそして1つの一次パックで供給される)として提供することができる場合に利点がある。しかしながら、薬物の1つが使用者選択可能可変用量の送達を必要とし、並びに第2の薬物が治療的に有効になる最小用量以上の用量を必要としそして所定の最大用量を超えてはいけない場合に、そのとき薬物送達デバイスは、それがこの範囲外の用量を送達することを防止されるように構成されることは有益である。
【0023】
例えば、患者には、長時間作用型インスリン(通常可変用量デバイスで送達される)及びGLP−1(通常固定用量として送達される)の併用療法が処方され得る。GLP−1はプログルカゴン遺伝子の転写産物から由来するグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)であり、そしてそれが消化管ホルモンとして腸管L細胞により分泌される体内に見出される。GLP−1は、それ(及びそのアナログ)を糖尿病の有力な処置法として広範囲な検討の対象とする幾つかの生理学的性質を有する。患者が2つの注射を行う必要があることを回避するために、2つの医薬品は単一製剤にプレミックスされる。両薬剤は固定比率でプレミックスされるので、GLP−1用量も変動することなしに長時間作用型インスリン用量をも変動させることが可能ではない。しかしながら、GLP−1用量が所定の許容誤差内、例えば公称固定用量前後の±10%で変動することは容認可能である。それ故、それらの間に長時間作用型インスリンの可変用量、及び所定の「固定」用量の±10%内に入るGLP−1用量の送達を可能にし得るプレミックスデバイスのファミリーを提供することは、min/max制限デバイスのファミリーを用いて可能である。
【0024】
表3は例えば、20mg±10%に「固定」されるGLP−1用量と併せた22〜76単位からいずれの長時間作用型インスリンの送達を可能にする6min/maxペン型注射デバイスのファミリーを示す。ファミリー内の各Penは異なる最小及び最大用量閾値を有してよく、そして2つの医薬品の適切な混合比で充填した薬剤の一次パック又はカートリッジを供給し得る。ペンデバイスのファミリーは、薬剤の適切な混合比カートリッジでプレフィルドした使い捨て機械デバイスとして供給され得る。あるいは、デバイスのファミリーは再使用可能機械デバイスとして供給し得る。後者の場合には、デバイスは好ましくは特定の混合比カートリッジ専用であり、即ち正しい混合比カートリッジだけが各ペンファミリー部材に装填することができる。
【0025】
第3の別の方法は、最小及び最大用量機能性でプログラミングすることができる、単一電子デバイスを介するペンデバイスの「ファミリー」を提供することである。好ましくは、min/max電子デバイスは、必要な最小及び最大閾値がその特定のカートリッジ及び混合比に対してであり得る、デバイスに装填時に自動的に伝え得るコード化カートリッジを装填し得る。
【0026】
ペン型デバイスなどの可変用量薬物送達デバイスで最小設定可能用量を実現する1つの特定の手段は、所定の最小用量が到達されるまでデバイスの投薬を防止する機構を含むことである。最大用量機構もまた最小用量機構で使用することができる。
【0027】
本発明の目的は、注射デバイスの使用者が、特定の薬剤の事前選択最小有効量未満の用量を設定及び投与する際のリスクを減少又は排除するデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的は請求項1において定義される用量設定機構によって解決される。
【0029】
本発明の1つの可能な例示的実施態様によれば、薬物送達デバイスのための用量設定機構は、最小許容用量より小さい用量が選択されるときに、しかし最小許容用量より大きい用量が選択されるときではなく、ハウジングに対して回転して固定されるクラッチリングによる最小用量制限機能を含んで提供される。特に、用量設定機構は、薬物送達デバイスハウジング及びハウジング中に位置しそして用量設定工程中に回転可能な用量ダイヤル部材を含む。用量設定機構はまた、用量ダイヤル部材内に位置する駆動スリーブ及び駆動スリーブ内に位置するスピンドルを含む。クラッチは用量ダイヤル部材と駆動スリーブ間に位置することができる。上述のように、最小許容用量より小さい用量が選択されるとき、クラッチリングはハウジングに対して回転して固定される。用量ダイヤル部材が最小用量より小さい用量を選択するように回転するとき、クラッチリングは、駆動スリーブが回転するのを防止し一方でスピンドルは駆動スリーブから係合解除し、それにより選択用量が投与されるのを防止する。
【0030】
本発明に組み入れることができるペン型デバイスの公知例、例えばWO2004/078239に記載のデバイスでは、駆動スリーブは用量設定中に数字スリーブとともに回転し、一方で駆動スリーブは用量投与中に回転することができずに軸方向に押される。用量設定中及び用量投与中に、駆動スリーブは、スピンドルの外面上で及び駆動スリーブの内面上でそれぞれ係合ねじを介してスピンドルに繋がれる。言い換えれば、本発明の主要原理の1つは、設定用量が事前に定義された閾値未満であるかぎり、用量設定中に駆動スリーブの回転を(クラッチリングを用いて)防止することである。用量設定のこの部分中駆動スリーブの回転の防止は、ハウジングのねじ山上のラセン経路に従動する用量ダイヤルスリーブとともに近位方向における駆動スリーブの後退をもたらす。スピンドルは駆動スリーブとともに後退することができないことから、駆動スリーブ及びスピンドルが軸方向において互いに対して摺動することが可能であるように、スピンドルと駆動スリーブ間のねじ込み係合は係合解除する。それ故に、使用者が閾値未満の設定用量を投与することを試みる場合、駆動スリーブは薬剤を投薬することなしに軸方向においてスピンドルに対して摺動する(オーバーライドする)。
【0031】
用量ダイヤル部材(例えば数字スリーブ)が最小用量より小さい用量を選択するように回転するとき、クラッチリングはクラッチが回転するのを防止することが好ましい。クラッチは駆動スリーブに回転して繋がると、これは駆動スリーブが上記のように回転することを防止する。
【0032】
他方で、用量ダイヤル部材が最小用量より大きい用量を選択するように更に回転するとき、クラッチリングは、最小用量より大きい用量が選択されそして投薬することができるように、駆動スリーブ及びクラッチがそれに続く用量設定中に一緒に回転することを可能にする。
【0033】
事前に定義された用量を超えて用量を設定する前に、スピンドル及び駆動スリーブが用量設定中に係合解除することを可能にするのに異なるやり方がある。本発明の好ましい実施態様によれば、スピンドルは、駆動スリーブのねじ山を係合するために構成される少なくとも1つの可撓性部材を含んでよい。言い換えれば、可撓性部材、例えば可撓性フィンガは、スピンドル及び駆動スリーブの係合及び係合解除を可能にする。最小用量より大きい用量が選択された後、少なくとも1つの可撓性部材は駆動スリーブの雌ねじを係合する。
【0034】
好ましくは、駆動スリーブの雌ねじは駆動スリーブピッチを含み、ここで最小用量に到達するために、駆動スリーブピッチは用量ダイヤル部材によってダイヤルする必要がある軸方向距離と同じである。最小用量が設定された後、これはスピンドルと駆動スリーブ間でねじ山が再係合することを可能にする。
【0035】
クラッチリングはハウジングにスプライン係合され得る。より詳細には、用量ダイヤル部材が最小用量より小さい用量を選択するように回転するときだけ、クラッチリングはハウジングにスプライン係合される場合にそれは好ましい。更に、用量ダイヤル部材が最小用量より大きい用量を選択するように更に回転するときだけ、クラッチリングはもはやハウジングにスプライン係合されない。
【0036】
クラッチリングの上記機能は、クラッチリングの第1の部分と用量ダイヤル部材の第1の部分間で画成されるインターフェースを備えることにより実現され、そのインターフェースはクリッカーを画成し得る。このクリッカーは聴覚クリッカーを含んでよい。更にクラッチ及びクラッチリングは一体クラッチ機構を含んでよい。
【0037】
上記のように、クラッチリングは、第1の状態においてクラッチに対して回転し得て、そして第2の状態においてクラッチに解除可能に繋がれ得る別々の部材であってよい。別の方法として、クラッチリングはクラッチの一体部分として形成され得て、又はクラッチリングは恒久的にクラッチに繋がれ得る。本発明の更なる実施態様によれば、クラッチリングは例えばそれぞれのスプリンを介して駆動スリーブに回転してロックされ得る。
【0038】
駆動スリーブからのスピンドルのデカップリングを可能にするために、駆動スリーブは数字スリーブに軸方向にロックされる場合にそれは好ましい。駆動スリーブは用量ダイヤリング中に用量ダイヤルスリーブ(数字スリーブ)とともに軸方向に動き得る。
【0039】
最小用量よりも小さい用量が選択されるときにせよ、クラッチリングの突出部はハウジングのキーイング機能に対して回転して固定され得る。好ましくは、ハウジングは複数のキーイング機能を含み、及び/又はここでクラッチリングは複数の突出部を含む。ハウジングに対するクラッチリングの角度位置に無関係に、これはクラッチリング及びハウジングの再係合を容易にする。
【0040】
上記のように、用量設定機構は再設定可能用量設定機構を含んでよい。用量設定機構を薬剤含有カートリッジを含むカートリッジホルダに繋げることが好ましい。再設定可能機構では、用量設定機構はカートリッジホルダに取り外し可能に繋がれ得る。
【0041】
例示的min/maxデバイスでは、最小用量未満の(例えば用量ダイヤル部材にプリントすることができる)用量計数は、ダイヤル用量が通常の最小用量よりも小さいことを識別するために、赤色などの異なる色で色付けされ得る。
【0042】
本提案薬物送達デバイスの種々態様のこれら並びに他の利点は、添付図面を適切に参照して下記の詳細な説明を読むことにより当業者に明らかになるものである。
【0043】
例示的な実施態様は以下において図面を参照して本明細書に記載される:
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1A】ペン型薬物送達デバイスの実例設計を図示する。
図1B図1Aのペン型薬物送達デバイスの用量設定機構の断面図を図示する。
図2A図1Bに示される用量設定機構の所定の部材の透視図を図示する。
図2B】用量がダイヤルされる前の初期位置における用量設定機構の所定の部材の透視図を図示する。
図2C】最小用量より小さい用量がダイヤルされる直前のある位置における用量設定機構の所定の部材の透視図を図示する。
図2D】最小用量より大きい用量がダイヤルされた直後のある位置における用量設定機構の所定の部材の透視図を図示する。
図3図1Bに示される用量設定機構の所定の部材の透視図を図示する。
図4】実例用量設定機構の所定の部材の透視図を図示する。
図5図4に示される実例用量設定機構の所定の部材の透視図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1Aを参照して、例示的なペン型設計配置に基づく薬物送達デバイス100が示される。薬物送達デバイス100は、第1のカートリッジ保持部材102を有するハウジング、及び用量設定機構104を含む。薬物送達デバイスは、再設定可能薬物送達デバイス(即ち、再使用可能デバイス)又は代わりに再設定不可能薬物送達デバイス(即ち、再使用不可能デバイス)であってよい。カートリッジ保持部材102の第1の端部及び用量設定機構104の第2の端部は、連結機能によって一緒に固定される。再設定不可能デバイスでは、これらの連結機能は恒久的及び非可逆的であり得る。再設定可能デバイスでは、これらの連結機能は解除可能であり得る。
【0046】
この図示された配置では、カートリッジ保持部材102は用量設定機構104の第2の端部内に固定される。取り外し可能キャップ(示されず)は、カートリッジ保持部材又はカートリッジハウジングの第2の端部又は遠位端の向こう側に解除可能に保持される。用量設定機構104は用量ダイヤルグリップ112及び窓又はレンズ114を含む。用量スケール配置は窓又はレンズ114を通して見える。薬物送達デバイス100内に含まれる薬剤の用量を設定するために、使用者は、ダイヤル用量が用量スケール配置を介して窓又はレンズ114中に見えるようになるように用量ダイヤルグリップ112を回転する。
【0047】
図1Aは、医療送達デバイス100のダイヤル端118から取り外されるカバーキャップを備えた医療送達デバイス100を図示する。この取り外しはカートリッジハウジング106を露出する。好ましくは、それから多くの用量の医薬品が投薬され得るカートリッジ(示されず)はカートリッジハウジング106中に備えられる。好ましくは、カートリッジは、例えば1日に一度又はそれ以上の回数、比較的頻繁に投与することができる薬剤のタイプを含む。1つのそのような薬剤は長時間作用型か又は短時間作用型インスリンか又はインスリンアナログで;しかしながら、いずれの薬剤も又は薬剤の組み合わせも可能である。カートリッジは、カートリッジの第2の端部又は近位端の近くに保持される栓又はストッパを含む。薬物送達デバイスはまた、駆動スリーブ及びスピンドルを含む(図1Aには図示されず、しかし図1Bにおいてそれぞれ要素124及び126として図示される)。
【0048】
カートリッジハウジング106は遠位端及び近位端を有する。好ましくは、カートリッジハウジング106の遠位端は、取り外し可能ニードルアセンブリを取り付けるためにハブ(hub)8を含む。しかしながら、他のニードルアセンブリ連結機構もまた使用し得る。薬物送達デバイス100が再設定可能デバイスを含む場合、カートリッジハウジング106の近位端は用量設定機構104に取り外し可能に連結される。1つの好ましい実施態様では、カートリッジハウジングの近位端はバヨネット連結を介して用量設定機構104に取り外し可能に連結される。しかしながら、当業者には当然のことながら、ねじ山、部分ねじ山、ランプ(ramp)及び戻り止め、スナップロック、スナップフィット、及びルアーロックなどの他のタイプの取り外し可能連結方法も使用し得る。
【0049】
既述のように、図1Aに図示される薬物送達デバイスの用量設定機構104は、再使用可能薬物送達デバイスとして利用され得る(即ち、再設定できる薬物送達デバイス)。薬物送達デバイス100が再使用可能薬物送達デバイスを含む場合、カートリッジはカートリッジハウジング106から取り外し可能である。カートリッジは、使用者にカートリッジハウジング106から用量設定機構104を単に連結解除させることにより、デバイス100を破壊することなしにデバイス100から取り外し得る。
【0050】
使用中、一度キャップが取り外されると、使用者はカートリッジハウジング106の遠位端に備えられるハブ108に好適なニードルアセンブリを取り付けることができる。そのようなニードルアセンブリは、例えばハウジング106の遠位端上にねじ込まれ得て、又は代わりにこの遠位端上にスナップされ得る。使用後、交換可能キャップがカートリッジハウジング106を再カバーするために使用され得る。好ましくは、交換可能キャップの外側寸法は、デバイスが使用されていないで、交換可能キャップがカートリッジハウジング106をカバーする位置にあるときに、全一体(unitary whole)の印象をもたらすように、用量設定機構104の外側寸法に類似又は同一である。
【0051】
我々の開示に基づく第1の例示的用量設定機構は、図1B図3を参照して記載される。図1Bは薬物送達デバイス100の断面図を図示し、そして特に第1の用量設定機構104の詳細断面図を示す。用量設定機構104は薬物送達デバイスハウジング120及びハウジング120中に位置する用量ダイヤル部材122を含む。用量ダイヤル部材122は投薬工程中に回転可能である。実施例では、用量ダイヤル部材122は数字スリーブを有する。用量設定機構104はまた、用量ダイヤル部材122中に位置する駆動スリーブ124、及び駆動スリーブ124内に位置するスピンドル(即ち、親ねじ)126を含む。用量設定機構104はまた、用量ダイヤル部材122と駆動スリーブ124間に位置するクラッチ128を含む。更に、用量設定機構104はクラッチリング130を含む。図1B〜3に描述される第1の実施態様によれば、クラッチリング130は、用量ダイヤルスリーブ122に対して及びクラッチ128に対して一般的に回転自由で、しかし下記に詳細に説明するようにこれらの部材に繋がれ得る別々の部材である。更に、クラッチリング130は、少なくとも一定距離で用量ダイヤル部材122に対して及びクラッチ128に対して軸方向に自由に変位し得る。
【0052】
一般に、用量設定機構104は、使用者が薬剤用量を投与することができる前に、使用者が所定の最小用量よりも大きい用量をダイヤルすることを確実にするように動作する。これを確実にするために、最小用量より小さい用量が選択されるとき、クラッチリング130はハウジング120に回転して固定される。そのように、用量ダイヤル部材122が最小用量より小さい用量が選択するように回転するとき、クラッチリング130は駆動スリーブ124が回転すること及びスピンドルが駆動スリーブから係合解除するのを防止し、それにより選択用量が投与されることを防止する。
【0053】
クラッチリング130は、数字スリーブ122、クラッチ128、及び金属ばね132のような付勢エレメントと係合している。最小用量より小さい用量が選択されるとき、クラッチリング130は薬物送達デバイスハウジング120にクラッチリングを固定する1つ又はそれ以上の突出部を含んでよい。即ち、使用者が少なくとも最小用量をダイヤルするまで、クラッチリング130はデバイスハウジング120に固定された状態である。1つの例では、クラッチリング130はハウジング120にスプライン係合される。例えば、図2Bは、用量がダイヤルされる前に、元の又は初期位置における用量設定機構104の所定部材の透視図を図示する。この元の位置は、用量設定機構104が用量をまだダイヤルする必要がある場合の位置である。図2B及び図2Cから見ることができるように、クラッチリング130は、クラッチリング130の外面133に沿った突出部131を含む。ただ1つだけの突出部が図示されるが、当業者には当然のことながら複数のこのような突出部も備えられてよい。
【0054】
また、ハウジング120の内面121は、複数の溝又はキーイング機能123などのキーイング機能を含む。この初期位置で図示されるように、クラッチリング突出部131はキーイング機能123の1つに留まり、そしてキーイング機能123の最遠位端に留まる。
【0055】
別の配置では、クラッチリング130は他のやり方でハウジング120に固定され得る。例えば、クラッチリング130は、ハウジング120に取り付けられる固定部材(例えば、インサート)にスプライン係合され得る。
【0056】
クラッチ128は駆動スリーブ124に回転ロックされ、そしてクラッチ128は駆動スリーブ124に対して軸方向移動を制限することができる。更に、駆動スリーブ124は数字スリーブ122に軸方向にロックされ、しかし直接回転ロックされない。ある用量ダイヤル状況下に、クラッチリング130は、クラッチ128−−そしてそれ故また駆動スリーブ124−−を数字スリーブ122に回転ロックし得る。金属ばね123は常時ハウジング120に固定され、そしてそれ故回転することができない。
【0057】
スピンドル126は可撓性アーム134a−b(図1B参照)などの少なくとも1つの可撓性アームを含む。駆動スリーブ124が所定の移動時間中駆動スリーブ124の回転なしに近位方向136に移動することができるように、スピンドル126上のこれらの可撓性アーム134a、bは設計され得る。使用者が当初用量を設定して駆動スリーブ124が近位方向に移動するとき、この移動は、アーム134a、bを駆動スリーブの駆動雌ねじ138からそれらを係合解除して内側に偏向させる。例えば、1つの実施態様では、可撓性アーム134a、bのねじ込み部分及び内部駆動スリーブの駆動雌ねじ138の形状は、ねじ山の1つの面上の傾斜面を含む。このような配置では、駆動スリーブが用量ダイヤル中(即ち回転なしに)近位方向に動き出す場合、傾斜ねじ面はスピンドルアーム134a、bを内側に偏向させる。その結果、用量がゼロ用量から最小用量値までダイヤルされて駆動スリーブ124が軸方向に動くと、スピンドル126は静止している。
【0058】
駆動スリーブの駆動雌ねじ138ピッチ(即ち、1つのねじ溝から隣接のねじ溝まで)は、最小用量に達するようにダイヤルされた軸方向距離に同じであってよい。従って、一度最小用量がダイヤルされると、可撓性アーム134a、bは駆動スリーブの駆動雌ねじ138と再係合し得る。必要に応じて大用量をダイヤルすることができ、そして駆動スリーブ124はこれで自由に回転することができることから、可撓性アーム134a、bは駆動スリーブの雌ねじ138に係合した状態にとどまる。最小用量より大きい又は同じ用量が設定された後、使用者は用量を送達し得る。用量送達中、可撓性アームは駆動スリーブの駆動雌ねじ138と係合される必要がある。それ故、駆動スリーブ124は軸方向に動き、それによりスピンドル126を回転させ、そしてそれ故カートリッジ栓に投薬力を伝える。
【0059】
種々の例によれば、ダイヤルする必要がある最小用量はデバイス毎に変動し得る。上記のように、クラッチリング130の回転を防止するハウジング120の内面121に沿ったキー機能の長さは、駆動スリーブの駆動ねじ138のピッチと同等としてよい。従って、これらの値を変えることは、ダイヤルする必要がある最小用量を変え得る。
【0060】
用量設定機構104の操作は、掲載図を参照して下記により詳細に記載されている。図2〜3では、クラッチリング130のセクションは内部の詳細を示すために図から除かれている。第1に、操作は、使用者がゼロ用量より大きいが、デバイスの最小用量より小さい用量をダイヤルするときに参照して記載される。数字スリーブ122はダイヤルグリップ112に堅固に固定され、その結果ダイヤルグリップ112を回転することで数字スリーブ122も回転する。既述のように、最小用量より小さい用量が選択されるときクラッチリング130はハウジング120に固定され、それ故この最小用量値未満ではクラッチリング130は回転することができない。
【0061】
数字スリーブ122は数字スリーブ122の遠位端に歯140を含んでよい(図2A参照)。更に、クラッチリング130は、(i)クラッチリングの近位端146に歯144、(ii)クラッチリングの遠位端150に歯148、及び(ii)クラッチリングの内側部分154に内歯152を含んでよい。使用者が最小用量より小さい用量をダイヤルするとき、数字スリーブ122の遠位歯140はクラッチリングの上歯144をオーバーホールする。これは順次数字スリーブ122が回転するにつれて、クラッチリング130を金属ばね132に抗して軸方向に振動させる。この時点で、数字スリーブ122及びクラッチリング130インターフェース(即ち歯140及び144)は使用者に聴覚及び触覚「クリッカー」フィードバックを作り出し得て、使用者に用量が選択されているという確証をもたらす。
【0062】
数字スリーブ122の外ねじ156は、用量が設定されると数字スリーブ122を回転させそして近位方向において軸方向に移動するようにさせる。これが起こっていると、クラッチリング130上の突出部131及びハウジング120上のキー機能123はクラッチリング130の回転を防止する。クラッチ128及びそれ故に駆動スリーブ124が回転しないことを確実にするのに資するために、クラッチリングの内歯152はクラッチリングの上歯144より大きいサイズから成ってよく、一方でクラッチリング130は触覚「クリッキング」フィードバックを作り出す数字スリーブ歯140を振動しオーバーライドする。言い換えれば、クラッチリング130が歯144をオーバーホールする歯140の(小型)サイズによって画成される距離だけ振動するとしても、歯152及びクラッチ上の対応する歯は係合されるのに十分大きい。用量が設定され、そして駆動スリーブ124、クラッチ128、及びクラッチリング130が数字スリーブ122により近位方向136において軸方向に移動すると、スピンドル126の可撓性アーム134a、bは、それらの駆動ねじ138から係合解除しながら駆動スリーブ124が移動するにつれて内側に偏向する。これは駆動スリーブ124を回転なしに近位方向において軸方向に移動することを可能にし、同時にスピンドル126は静止していることを確実にし、それにより用量精度を確実にする。
【0063】
最小用量未満をダイヤルするときに使用者が用量を送達するのを試みる場合、使用者がデバイスの用量ボタン113を押し下げると、駆動スリーブ124は遠位方向160において軸方向に移動し得る。しかしながら、スピンドル駆動アーム134a、b及びそれ故駆動ねじ138は駆動スリーブ124と係合され得ない。従って、スピンドル126は回転し得ず、その結果用量は送達し得ない。機構は図2Bに図示されるように元の位置に戻り得て、その時点で突出部131はキーイング機能123の最遠位位置に戻り、そしてその時点でスピンドル駆動アーム134a、bは駆動スリーブねじ138と再係合し得る。
【0064】
最小使用者用量がダイヤルされた後、スピンドル可撓性アーム134a、bは駆動スリーブの内側ねじ山138と係合し得る。加えて、この時点で、クラッチリング130の突出部は、それをハウジング120に回転ロックしていたキー機能を排出し得る。例えば図2Dは、最小用量より大きい用量がダイヤルされた直後の用量設定機構104の所定部材の透視図を図示する。図示のように、突出部131はキーイング機能123を排出させている。従って、大きい用量がダイヤルされると、二重クラッチリング130は、これで自由に数字スリーブ122で回転することができるので、それによりまたクラッチ128及びそれ故駆動スリーブ124及びクラッチ128も回転させる。このダイヤル操作中、クラッチリング130は回転し、そしてクラッチリング下位歯148が金属ばね132の歯162をオーバーホールするので、金属ばね132の振動をもたらす。従って、操作のこの段階で、金属ばね132及びクラッチリング130インターフェースは聴覚「クリッカー」フィードバックを作り出し得る。
【0065】
使用者が最小用量より大きい用量をダイヤルした後、使用者は用量を投与し得る。図3は、用量投与段階中のクラッチ128、クラッチリング130、数字スリーブ122、及び駆動スリーブ124を描述する。用量ボタン113の押し下げはクラッチ128に作動する。次いで、駆動スリーブ124に対するその制限軸方向移動を利用するクラッチ128は、図3に示されるようにクラッチリング130を数字スリーブ122から係合解除させる。金属ばね132はクラッチリング130によって圧縮され、そしてこれはクラッチ128の回転を防止するように作動し、そしてそれ故また駆動スリーブ124の回転を防止するように作動する。用量が送達されると、数字スリーブ122は後ろに回転しそして軸方向に移動するが、一方で駆動スリーブ124及びクラッチ128は回転なしに軸方向に移動し、それによりスピンドル126を回転させそれで用量送達の分配を前進させる。
【0066】
クラッチリング130が用量投薬中に最小用量に対応する軸方向位置に戻るとき、クラッチリング130の突出部131は図2Cに図示されるようにハウジング120中のキーイング機能123と再係合する。この再係合は、次の用量の設定中にクラッチリング130の回転を防止するのに資する。例示的配置では、用量投薬中、クラッチリング130は回転せずにむしろただ遠位方向において軸方向に動くことので、クラッチリング130は毎回同じ角度方向に戻り得ない。従って、例の用量設定機構では、いずれかの可能な回転位置における他の部分で、突出部を係合することができるクラッチリング130か又はハウジング120上の複数の溝があってよい。
【0067】
図2B〜Dに図示されるように、このハウジング120の内側面は複数のこのような溝又はキーイング機能を含む。
【0068】
この記載された配置では、クラッチリング130及びクラッチ128は軸方向に回転して両方一緒に動く。しかしながら、クラッチリングの歯機能144及び148は組み合わせてクラッチ/クラッチリングへ組み込まれ得る。例えば、クラッチは最小用量が選択される前にハウジングに固定されるように(即ち、クラッチ(そしてそれ故に駆動スリーブ)は最小用量がダイヤルされた後でだけ回転することができる)、クラッチリングはクラッチに一体化されてよい。
【0069】
本発明に基づく例としての用量設定機構では、最小用量未満の用量計数は、ダイヤルされた用量が通常の最小用量用量より小さいことを識別するために、赤色などの異なる色で着色し得る。あるいは、用量計数は最小用量がダイヤルされるまで見ることができない可能性がある。
【0070】
別の例示的配置は図4〜5を参照して記載される。この例の用量設定機構は図1Bに示される用量設定機構104にある点で類似しており、それ故大きな詳細レベルでは記載されない。この別の配置は修正二重クラッチリング及び駆動スリーブを含む。図4〜5は、修正例の配置の数字スリーブ、クラッチ、クラッチリング及び駆動スリーブを図示する。
【0071】
この別の配置では、数字スリーブ部材202及び金属ばね204と係合しているクラッチリング200が備えられる。クラッチリング200は回転することができずに駆動スリーブ206に対して軸方向に移動することができるように、クラッチリング200は駆動スリーブ206に固定される。クラッチリング200は種々のやり方で駆動スリーブ206に固定され得る。例えば、駆動スリーブ206は少なくとも1つの突出部208を含んでよく、そしてクラッチリング200は少なくとも1つの対応する突出部210を含んでよい。図4では、例示的な突出部の内部の詳細を示すために、セクションはクラッチリング200から取り外される。ほんの1つの例として、突出部208及び210はクラッチリング200が駆動スリーブ206に対して回転することを防止するように相互作用し得る。
【0072】
1つの配置では、クラッチリングは、ハウジングの内面に備わるスプラインを係合する複数の突出部を備える。ほんの1つの例として、クラッチリング200は、最小用量が選択されるまで、リング200をデバイスハウジングに固定する突出部(示されず)のような機能を備え得る。更に、駆動スリーブ206は用量ダイヤル部材202に軸方向にロックされ、しかしそれは用量ダイヤル部材202に直接回転ロックされない。金属ばね204は常時デバイスハウジングに固定され、そしてそれ故に回転することができない。
【0073】
使用者が用量をダイヤルすると、クラッチリング200はハウジングに固定され、そしてそれ故回転することができない。数字スリーブ202歯が二重クラッチリング200の上歯をオーバーライドすると、数字スリーブ202は回転しクラッチリング200を金属ばね204に抗して軸方向に振動するようにさせる。駆動スリーブ206は回転することなしに近位方向において軸方向に移動する。第1の配置を参照して上記のように、スピンドルの可撓性アーム(示されず)は第1の配置のように動作する。動作のこの段階では、「クリッカー」フィードバックはクラッチリング200インターフェースまで数字スリーブ202によってもたらされ得る。第1の配置におけるように、使用者は、スピンドルから係合解除されている駆動スリーブに因り、最小用量より小さい用量を投与することが防止される。
【0074】
最小使用者用量がダイヤルされた後、スピンドル可撓性アームは駆動スリーブの駆動ねじと再係合する。クラッチリング200の突出部はまた、既述のようにハウジングにそれを回転ロックしていたキーイング機能を排出する。従って、大用量がダイヤルされると、クラッチリング200はこれで数字スリーブ202と一緒に自由に回転することができる。駆動スリーブ206はクラッチリング200に固定されるので、駆動スリーブ206はこれで数字スリーブ202と一緒に自由に回転することができる。動作のこの段階では、「クリッカー」フィードバックは二重クラッチリング200インターフェースまで金属ばね204によってもたらされ得る。
【0075】
最小用量より大きい用量が設定された後、使用者は用量を送達し得る。用量を送達するために、使用者は用量ボタンを押し下げ得る。用量ボタンの押し下げは、クラッチリング200を数字スリーブ202から係合解除するクラッチ212に作動する。金属ばね204はクラッチリング200によって圧縮され、そしてクラッチリング200の回転及びその結果駆動スリーブ206の回転を防止するように作動する。用量が送達されると、用量ダイヤル部材202が回転しそして軸方向に移動し、一方で駆動スリーブ206は回転なしに軸方向に移動し、それ故スピンドルが回転させ次いで用量の送達を前進するようにさせる。
【0076】
第1の配置のように、クラッチリング200及びクラッチ212は軸方向及び回転の両方で一緒に動く。例では、二重クラッチリングの上部及び下部歯機能は組み合わせクラッチ/クラッチリングへ組み込まれ得る。
【0077】
好ましい実施態様では、多回用量、使用者選択可能デバイス内に含まれるインスリンなどの基本薬物化合物は、単回用量の二次薬剤及び単回投薬インターフェースを含む単回使用、使用者交換可能モジュールで使用することが可能である。一次デバイスに連結したとき、二次化合物は一次化合物の投薬時にアクティブにされ/送達される。本出願は、具体的にインスリンを記載するが、2つの可能な薬物組み合わせとして、インスリンアナログ又はインスリン誘導体、及びGLP−1又はGLP−1アナログ、鎮痛薬、ホルモン、βアゴニスト又はコルチコステロイドなどの他の薬物若しくは薬物組み合わせ、又はいずれの上記薬物の組み合わせも、本発明で使用し得る。
【0078】
本発明の目的のために、用語「インスリン」は、ヒトインスリン又はインスリンアナログ又は誘導体を含む、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体又はその混合物を意味するものとする。インスリンアナログの例は、限定されるものではなく、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換され、そしてここで、B29位において、Lysは、Proで置換されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。インスリン誘導体の例は、限定されるものではなく、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイル−ヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0079】
本明細書で使用される用語「GLP−1」は、限定されるものではなく、エキセナチド(エキセンジン−4(1−39)、配列H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2)のペプチド、エキセンジン−3、リラグルチド、又はAVE0010(H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−NH2)を含む、GLP−1、GLP−1アナログ、又はその混合物を意味するものとする。
【0080】
βアゴニストの例は、限定されるものではなく、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、メシル酸ビトルテロール、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、インダカテロールである。
【0081】
ホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、例えば脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストである。
【0082】
本明細書で使用される用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的活性化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで1つの実施態様では、薬学的活性化合物は1500Daまでの分子量を有し、及び/又はペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体、ホルモン若しくはオリゴヌクレオチド、又は上記の薬学的活性化合物の混合物であり、
ここで更なる実施態様では、薬学的活性化合物は、糖尿病又は糖尿病性網膜症などの糖尿病との合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓障害、急性冠動脈症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症及び又は関節リウマチの処置及び/又は予防に有用であり、
ここで更なる実施態様では、薬学的活性化合物は、糖尿病又は糖尿病性網膜症などの糖尿病との合併症の処置及び/又は予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで更なる実施態様では、薬学的活性化合物は、少なくとも1つのヒトインスリン又はヒトインスリンアナログ若しくは誘導体、グリカゴン用ペプチド(GLP−1)又はそのアナログ若しくは誘導体、又はエキセンジン−3若しくはエキセンジン−4又はエキセンジン−3若しくはエキセンジン−4のアナログ若しくは誘導体を含む。
【0083】
インスリンアナログは、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここでB28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換され、そして、ここでB29位において、Lysは、Proで置換されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0084】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0085】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドを意味する。
【0086】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下の化合物リスト:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
ここで、基−Lys6−NH2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と連結してもよく;
【0087】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
又は前述のいずれかのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0088】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどのRote Liste、2008年版、50章に表示されている脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストである。
【0089】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン若しくはその誘導体、又は硫酸化された、例えば、上記多糖類のポリ硫酸化形体、及び/又は、薬学的に許容可能なその塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0090】
薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基性塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基性塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na+、又は、K+、又は、Ca2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)を有する塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されるC1〜C6アルキル基、場合により置換されるC2〜C6アルケニル基、場合により置換されるC6〜C10アリール基、又は場合により置換されるC6〜C10ヘテロアリール基である。薬学的に許容される塩の更なる例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Mark Publishing社,Easton, Pa., U.S.A., 1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical
Technologyに記載されている。薬学的に許容可能な溶媒和物としては、例えば、水和物がある。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
本薬物送達デバイスの例示的な実施態様が記載されている。しかしながら、当業者には当然のことながら、その変更及び修正は、特許請求の範囲によって規定される薬物送達デバイスのための本提示用量設定機構の真の範囲及び精神から逸脱することなくこれらの実施態様に対して行われ得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5