特許第5960714号(P5960714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AGCエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000003
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000004
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000005
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000006
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000007
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000008
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000009
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000010
  • 特許5960714-透析槽用締め具 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960714
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】透析槽用締め具
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/46 20060101AFI20160719BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B01D61/46
   B01D63/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-540856(P2013-540856)
(86)(22)【出願日】2012年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2012077794
(87)【国際公開番号】WO2013062108
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-237134(P2011-237134)
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005407
【氏名又は名称】AGCエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105201
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 正利
(72)【発明者】
【氏名】松村 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】大川 秀一
(72)【発明者】
【氏名】結城 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】大島 和巳
(72)【発明者】
【氏名】信田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大澤 太護
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 和男
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−063105(JP,A)
【文献】 特開昭57−063104(JP,A)
【文献】 実開昭61−143605(JP,U)
【文献】 特開昭60−064605(JP,A)
【文献】 実開平01−122806(JP,U)
【文献】 実開昭57−066602(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱塩室及び/又は濃縮室を形成する室枠及び交換膜と、
該室枠及び交換膜を内側に挟む電極枠とを備える透析槽に用いられる透析槽用締め具であって、
該透析槽用締め具が、
前記脱塩室、濃縮室に対して被処理液を流す入口及び出口を有する保持部材と、
該保持部材を所定の締め付け圧力で締め付ける締結部と
記電極枠に対して所定の板状部材である鉄板を介して当接され、前記締結部の締め付けにより該当接部分を介して前記電極枠並びに室枠及び交換膜を締め付ける格子状構造体とを有し、
該格子のピッチ幅が10mm以上50mm以下であることを特徴とする透析槽用締め具。
【請求項2】
前記保持部材及び前記格子状構造体が複数個に分割されたことを特徴とする請求項1に記載の透析槽用締め具。
【請求項3】
前記締結部の締め付け圧力が0.5MPa以上であるときの前記室枠のたわみが1.5mm以下となるように、締め具の構造を設計であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透析槽用締め具。
【請求項4】
前記格子状構造体がグレーチングを加工成形して得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透析槽用締め具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の透析槽用締め具を前記電極枠の両外側に備えた透析槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析槽用締め具に係わり、特に製作が容易で、かつ性能、品質が良く安定し、価格も安く、軽量でハンドリングに優れた透析槽用締め具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電流を駆動電源として脱塩、及び濃縮を行う電気透析槽が知られている。
この電気透析槽は、例えば、特許文献1に示されるように、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを室枠を介して交互に多数配列し、その両端に電極を配することにより各イオン交換膜間に脱塩室、及び濃縮室が形成されるようになっている。そして、このように積層された室枠及びそれらの積層された室枠の両端に、陽極及び陰極からなる電極を配し、最外部の両端には締め具が配設されるようになっている。特許文献1の図1(本出願において図9として示す)においては、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜をスペーサー及び室枠を介して電極間に交互に多数配列し、脱塩室、濃縮室、及び極室が形成されている透析機能ユニット40を、その両端に締め付け枠41を配設し、締め付けボルト42、ナット43及びばね44により締め付け固定している(特許文献1参照)。
【0003】
上記締め付け枠(本明細書において、この「締め付け枠」を「締め具」という。)は、締め付け時の室枠等のたわみ変形を抑制するため、締め付け圧力に見合った板厚が必要で、電極面を覆う大きさの、例えば30mm〜50mm厚みの鉄板を備える。そして、鉄板周囲がボルト及びナットにて締め付け、実体部の面積圧力が0.5〜1.4MPaとなるように締め付けられる。
【0004】
また、上記締め付け枠は、更に強度を増すためにこの鉄板面に垂直にリブ補強が施され、強度当たりの重量軽減処置がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本特開2001−276580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の電気透析槽用締め具の重量は、非常に重く、電気透析槽の組み立て解体時の締め具の取り扱いは、クレーン操作にて実施しなければならない重量となっているのが実情である。
また、従来の透析槽用締め具の製作面に於いても、厚みのある部材の加工、補強リブの溶接を行う必要から製造が難しく高価なものになっている。
【0007】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、製作が容易で、かつ品質が良く安定し、価格も安く、軽量でハンドリングに優れた透析槽用締め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の透析槽用締め具は、脱塩室及び/又は濃縮室を形成する室枠及びイオン交換膜(以下、本明細書において、「イオン交換膜」を単に「交換膜」とも称する。)と、該室枠及び交換膜を内側に挟む電極枠とを備える電気透析槽(以下、本明細書において、「電気透析槽」を「透析槽」とも称する。)に用いられる透析槽用締め具であって、
該透析槽用締め具が、
前記脱塩室、濃縮室に対して被処理液を流す入口及び出口を有する保持部材と、
該保持部材を所定の締め付け圧力で締め付ける締結部と
記電極枠に対して所定の板状部材である鉄板を介して当接され、前記締結部の締め付けにより該当接部分を介して前記電極枠並びに室枠及び交換膜を締め付ける格子状構造体とを有し、
該格子のピッチ幅が10mm以上50mm以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の締め具における格子状構造体は、格子構造であることにより強度が強いため軽量にできる。この格子状構造体には、雨水溝の蓋、足場、建築用資材として幅広く使用され汎用性がある、いわゆる市販のグレーチングを使用することができる。このため、製作が容易で、かつ品質が良く安定し、価格も安く構成できる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様は、前記保持部材及び前記格子状構造体が複数個に分割されたことを、すなわち上記締め具が複数個に分割、好ましくは、2分割されたことを特徴とする。
【0011】
電気透析槽用締め具を複数個に分割させたことにより、一層の軽量化が図れる。従って、クレーンを使うことなくハンドリング可能な締め具とすることができる。
【0012】
更に、本発明の好ましい態様は、前記締結部の締め付け圧力が0.5MPa以上であるときの前記室枠のたわみが1.5mm以下となるように、締め具の構造を設計することを特徴とする。
【0013】
これにより、従来のリブ補強された鉄板を使用したときの透析槽用締め具に比べて格段に軽い上に剛性も十分に確保した透析槽用締め具を得ることができる。
更に、本発明の好ましい態様は、前記格子状構造体がグレーチングを加工成形して得られることを特徴とする。
更に、本発明の透析槽は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の透析槽用締め具を前記電極枠の両外側に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、透析槽用締め具を電極枠と室枠及びイオン交換膜を締め付ける格子状構造体を有し、格子のピッチ幅が10mm以上50mm以下となるように構成したので、強度が強く、軽量にできる。格子状構造体には市販のグレーチングを使用することができるため、製作が容易で、かつ品質が良く安定し、価格も安く構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電気透析槽用締め具の全体構成を示す正面図
図2】右側締め具部材の正面図
図3】右側締め具部材の右側面図
図4】右側締め具部材の底面図
図5図2中のB−B矢視断面図
図6図2中のA−A矢視断面図
図7】格子状構造体の簡略斜視構成図
図8】本発明の電気透析槽用締め具が適用される電気透析槽の構成の概略を模式的に示した説明図
図9】特許文献1に例示された電気透析槽の説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の電気透析槽用締め具が用いられた電気透析槽としては、図8に示すように、例えば、縦方向に、陽イオン交換膜50と陰イオン交換膜51とを濃縮用室枠52または脱塩用室枠53を介して、陽極側となる電極枠54と、陰極側となる電極枠55間に交互に多数配列し、電極枠54、55の両外側に枠状の締め具56、56を配設し、締め具56、56を締付けボルトにより締め付け固定してなるタイプの電気透析槽が代表的な例として挙げられる。なお、図8において、前記電極枠54、55とは、電極を固定し電極室を構成、電極液を導入できる様にした構造体である。
次に、本発明の実施形態である電気透析槽用締め具の全体構成を示す正面図を図1に示す。
図1に例示された電気透析槽用締め具は、図8に示された透析槽において、電極枠の両側から挟むように配置される。すなわち、図1に示された締め具は、通常、当該締め具の右側が、当該透析槽の下側に配され、また、当該締め具の左側が、当該透析槽の上側に配されて、使用される。この電気透析槽用締め具10は、右側締め具部材10A及び左側締め具部材10Bの対称的な2部材で構成されており、いずれも同様な構造(すなわち、右側締め具部材10Aを反転したものが左側締め具部材10B)のものが好ましく、使用される。
【0017】
電気透析槽用締め具10は、右側締め具部材10A及び左側締め具部材10Bの対称的な2部材で構成されている。図2に右側締め具部材10Aの正面図を、図3にこの右側締め具部材10Aの右側面図、図4にこの右側締め具部材10Aの底面図を示す。また、図5には図2中のB−B矢視断面図を、図6には図2中のA−A矢視断面図を示す。上記した右側締め具部材10Aは、上述したように、上記透析槽(図8参照)の下側に配され、左側締め具部材10Bは、上記透析槽の上側に配されて、使用される。なお、上記した右側締め具部材10Aを上記透析槽の右に配し、左側締め具部材10Bは、上記透析槽の左側に配して使用することもできる。
【0018】
右側締め具部材10A及び左側締め具部材10Bにはそれぞれ格子状構造体1A及び格子状構造体1Bが配設されている。
図7に、格子状構造体1Aの簡略斜視構成図を示す。但し、格子状構造体1Bについても同じ構造である。
【0019】
図1図7に示すように、図1図2中、紙面奥に向かって所定幅の板状であるメインバー3A、3Bが等寸法の横方向ピッチにて複数本配設されている。一方、このメインバー3A、3Bの図1中の、紙面奥に向かって端側において複数本の棒状または所定幅の板状のクロスバー5A、5Bがこのメインバー3A、3Bに対して直交するように等寸法の縦方向ピッチにて溶接されている。本発明の締め具において、複数本のメインメンバー3A、3Bと、複数本のクロスバー5A、5Bとを、直交するように配することにより格子状構造体が構成される。なお、格子形状が、菱型となるように、複数本のメインメンバー3A、3Bと、複数本のクロスバー5A、5Bとを、交差するように配して、格子状構造体が得られるようにしてもよい。
【0020】
メインバー3A、3Bの一端(図1においては上端)には、それぞれ上側エンドプレート7A、7Bが固着されており、またメインバー3A、3Bの他端(図1においては下端)には、それぞれ下側エンドプレート9A、9Bが固着されている。
【0021】
上側エンドプレート7A、7Bの外側(すなわち、図1において右方向と左方向の外側)には、Lアングル状の保持部材11A、11Bが、一方、下側エンドプレート9A、9Bの外側(すなわち、図1において右方向と左方向の外側)には、Lアングル状の保持部材13A、13Bがそれぞれ溶接されており、Lアングル状の保持部材11A、11B及びLアングル状の保持部材13A、13Bのそれぞれにはボルト穴15が複数箇所に設けられている。
本発明において、保持部材を所定の締め付け圧力で締め付ける締結部とは、前記保持部材11A、11B、13A、及び13Bの、透析槽を形成する室枠及び交換膜を内側に挟む電極枠に対向する面のことをいう。図3においては、紙面に垂直な右側の面、図4においては、紙面に垂直な下側の面が、締結部である。これらの締結部において、複数のボルト穴15を介して、複数のボルトにより透析槽全体が本発明の透析槽用締め具により締め付けられる。
本発明において、透析槽用締め具が、脱塩室、及び濃縮室に対して被処理液を流す入口及び出口を有する保持部材と、該保持部材を所定の締め付け圧力で締め付ける締結部と、電極枠に対して当接されてもよく、前記電極枠に対して所定の板状部材を介して当接されてもよい。
また、電気透析槽用締め具10の電極枠と面する部分に別途締め付け圧力を均一に分散させるための一定の剛性を有する板状部材を配設するようにしてもよい。
【0022】
本発明において、透析槽用締め具が、脱塩室、及び濃縮室に対して被処理液を流す入口及び出口を有する保持部材と、該保持部材を所定の締め付け圧力で締め付ける締結部と、前記電極枠に対して所定の板状部材を介して当接される態様を、図3図5及び図6に例示する。鉄板21が前記板状部材である。
すなわち、図6に示されるように、クロスバー5A、5Bの底面には鉄板21が取り付けられている。この鉄板21の右端部(図1における平面視で右端側)には出口側保持部材23が配設されており、この出口側保持部材23には脱塩液用出口31とこの脱塩液用出口31よりも一回り口径の小さい濃縮液用出口33が形成されている。一方、この鉄板21の左端部(図1における平面視で左端側)には入口側保持部材25が配設されており、この入口側保持部材25には脱塩液用入口35とこの脱塩液用入口35よりも一回り口径の小さい濃縮液用入口37が形成されている。
【0023】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
格子状構造体1A及び格子状構造体1Bには、雨水溝の蓋、足場、建築用資材として幅広く使用され汎用性があり安価な市販のいわゆるグレーチングを使用するのが好ましい。このグレーチングは格子構造であることにより強度が強い特徴を有している。
【0024】
材質としては、スチール製、ステンレス鋼製、ゴム製、FRP製といったものがあるが、強度から考えると、スチール製、もしくはステンレス鋼製が望ましい。
電気透析槽用締め具としての重要な要求性能である強度は、メインバー3A、3Bの高さと横方向ピッチにより発現される。
【0025】
締め付け力とグレーチングのたわみとの関係は、メインバー3A、3Bの高さと横方向ピッチにより異なるが、締め付け圧力1.0MPaでのたわみについて、30mm鉄板(比較例)と、高さ及び横方向ピッチの異なるメインバー3A、3Bのスチール製グレーチングを使用した格子状構造体(本発明の実施例)とを比較した結果を表1に示す。なお、用いたグレーチングの格子の縦横のピッチ(35×40mm)であった。また、メインバーの厚みは6mm、クロスバーの厚みは6mmであった。
【0026】
なお、600mm幅、1400mm長さの電気透析槽用締め具であって、実際に締め付け圧力のかかるLアングル状の保持部材11A、11B、Lアングル状の保持部材13A、13B及び出口側保持部材23、入口側保持部材25部分の面積を実体部の面積0.24m2として計算をしている。
【0027】
【表1】
【0028】
表1によれば、最大たわみが従来の鉄板を用いた場合と同等以下になるようにグレーチングを選定した場合、重量は、3分の1以下と軽量化できることが分かる。
【0029】
最大許容応力としては、180N/mm2を基準とし、応力がこの値以下となるメインバー3A、3Bを選定する必要がある。また、たわみについては、たわみが1.5mmを超えてくると、応力も180N/mm2を超えることから、許容応力からも許容たわみとしては、1.5mm以下に抑えるべきである。メインバー3A、3Bの高さは、40〜100mmが好ましく、50〜75mmがより好ましく、50〜60mmが最も好ましい。
【0030】
このように、グレーチングを電気透析槽用締め具10として使用することにより、30mm〜50mm厚みの鉄板を使用しリブ補強された従来の電気透析槽用締め具に比べて格段に軽い上に、締め付け圧力0.5MPa以上にて締め付けたときのたわみが1.5mm以下であるという特徴を有した電気透析槽用締め具10が得られる。締め付け圧力0.5MPa以上にて締め付けたときのたわみは、1.5mm以下であるのが好ましい。
さらに、電気透析槽における本発明の電気透析槽用締め具10の合計重量は、140kg以下であるのが、電気透析槽を締め付ける際に、クレーンを用いなくてもハンドリングができるので好ましい。
【0031】
本発明において、「格子のピッチ幅」とは、格子の横方向ピッチ幅、及び縦方向ピッチ幅の両者を意味する。
なお、格子状構造体の格子の横方向ピッチ、縦方向ピッチ共にピッチ幅が10mm以上50mm以下であれば電気透析槽用締め具10の強度は十分である。なお、横方向に隣り合う格子の中央部間の距離を、横方向ピッチ幅といい、縦方向に隣り合う格子の中央部間の距離を縦方向ピッチ幅という。また、横方向ピッチ、縦方向ピッチ共にピッチ幅が10mm〜50mmであるのが好ましい。また、格子を形成する板の厚みは4〜10mmが好ましい。
【0032】
また、更に軽量化を図る方法として、図1に示す通り電気透析槽用締め具10を2分割とすることにより、好ましくは電気透析槽用締め具10を上下に2分割とすることにより、クレーンを使うことなくハンドリング可能な締め具となる。この形状によれば、製作が容易で、かつ量産品であるグレーチングを用いるので品質が良く安定し、価格も安く、軽量でハンドリングに優れた電気透析槽用締め具10が得られる。但し、電気透析槽用締め具10は2分割に限るものではなく、3分割以上とされてもよい。
【0033】
なお、2分割以上とした場合、分割部間の隙間の締め付け状態が悪化するとの懸念はあったが、電気透析槽用締め具10に隣接する電極枠(数十mm厚みの樹脂製)により圧力が分散均一化されるため問題はないことを確認している。
【0034】
但し、電気透析槽用締め具10の電極枠と面する部分に別途圧力分散のための一定の剛性を有する板材を配設するようにしてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
以下に、本発明の実施例について説明する。
格子状構造体として使用したグレーチングは、ダイクレ社製の55mm高さのメインバー3A、3Bをベースとした、品番-R5MO55−Sであり、両エンドプレート7A、7B、9A、9Bには、90mm幅のLアングル状の保持部材11A、11B、13A、13Bを溶接し、電気透析槽用締め具10の電極枠側(図1においてメインバー3A、3Bの底面側)には、7mm厚みの鉄板21を溶接し、面出しを実施した。
使用したグレーチングはスチール製であり、横方向のメインバーのピッチ幅は35mm、縦方向クロスバーのピッチ幅は40mmであった。また、使用したグレーチングのメインバーの厚みは6mmであった。
【0037】
この電気透析槽用締め具10は、右側締め具部材10A及び左側締め具部材10Bの2分割として製作を行い、右側締め具部材10A及び左側締め具部材10Bのそれぞれの寸法は、700mm長さ、687mm幅で、350mmピッチにて締め付け用のボルト穴15を配設した。この電気透析槽用締め具10を用い、上記ボルト穴に対し、M25ボルトにて、締め付けトルク70N・m(締め付け圧力1.0MPa)にて締め付けたときのたわみ(←)は、0.4mmと良好であった。
【0038】
また、この電気透析槽用締め具10のハンドリング時の重量は、1枚当たり55Kgと軽量であり、二人でハンドリングが可能となった。なお、このときの電気透析槽用締め具10の全重量は電気透析槽用締め具10が、積層された室枠及びイオン交換膜の左側に右側締め具部材10A及び左側締め具部材10Bの一組(合計2枚)、右側に同様に一組(合計2枚)の合計4枚必要となるので220Kg(=55Kg×4枚)である。
【0039】
[比較例1]
実施例1と同様の室枠及び交換膜に対し、電気透析槽用締め具を板厚み30mmの鉄板を用いて製作した。寸法は、1400mm長さ、687mm幅で、350mmピッチにて締め付け用のボルト穴15を配備した形状とした。
【0040】
この電気透析槽用締め具を用い、M25ボルトにて、締め付けトルク70N・m(締め付け圧力1.0MPa)にて締め付けたときのたわみは、1.3mmと実施例1よりは悪く、また、この電気透析槽用締め具のハンドリング時の重量は、220Kg(全重量は440Kg(=220Kg×2枚))と重くクレーンを使わなければハンドリングできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の透析槽用締め具は、製作が容易で、安価かつ軽量な締め具として利用できる。
なお、2011年10月28日に出願された日本特許出願2011−237134号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0042】
1A、1B 格子状構造体
3A、3B メインバー
5A、5Bクロスバー
7A、7B 上側エンドプレート
9A、9B 下側エンドプレート
10 電気透析槽用締め具
10A 右側締め具部材
10B 左側締め具部材
11A、11B、13A、13B 保持部材
15 ボルト穴
21 鉄板
23 出口側保持部材
25 入口側保持部材
31 脱塩液用出口
33 濃縮液用出口
35 脱塩液用入口
37 濃縮液用入口
40 透析機能ユニット
41 締め付け枠(締め具)
42 締め付けボルト
43 ナット
44 ばね
50 陽イオン交換膜
51 陰イオン交換膜
52 濃縮用室枠
53 脱塩用室枠
54、55 電極枠
56 締め具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9