特許第5960744号(P5960744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960744
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】エンジンの燃焼室容積の調整方法
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/24 20060101AFI20160719BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F02F1/24 B
   F02F1/24 D
   B23Q17/20 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-62490(P2014-62490)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-183640(P2015-183640A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2014年3月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】西川 静雄
(72)【発明者】
【氏名】中尾 大樹
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−256730(JP,A)
【文献】 特開平06−330810(JP,A)
【文献】 特開平6−102914(JP,A)
【文献】 特開2001−124533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/24
B23P 13/00
B23Q 17/20、17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室容積の調整方法であって、
鋳造によって形成されたシリンダヘッドを準備するステップを備え、
前記シリンダヘッドは、エンジンの燃焼室の一部を構成する、一列に配列された複数の凹部およびシリンダブロックとの合わせ面を有し、
前記合わせ面は、目標となる燃焼室容積を有するように設計された前記シリンダヘッドの3次元形状データに対して削り代を有するように形成され、
前記調整方法は、さらに、
変位計を用いて前記凹部の表面の複数箇所および前記合わせ面の複数箇所を測定するステップと、
前記凹部の複数の測定値に対して前記3次元形状データに基づく前記凹部の表面の設計形状をフィッティングした状態で、前記合わせ面の各測定値と前記3次元形状データに基づく前記合わせ面の設計形状との深さ方向および幅方向の差分を算出するステップと、
算出した深さ方向の差分に基づいて切削量を決定し、前記凹部の配列方向における前記算出した差分の値の変化傾向に基づいて前記合わせ面の切削方向をさらに決定し、決定した切削量および切削方向で前記合わせ面を切削し、算出した幅方向の差分に基づいて前記シリンダヘッドの良否判定を行うステップと
を備える、エンジンの燃焼室容積の調整方法。
【請求項2】
前記シリンダヘッドは、前記凹部を複数有し、
前記測定するステップでは、前記凹部ごとに表面の複数個所を前記変位計によって測定し、
前記調整方法は、さらに、
複数の前記凹部のうち任意の第1の凹部の複数の測定値に対して前記3次元形状データに基づく前記第1の凹部の表面の設計形状をフィッティングした状態で、前記第1の凹部と異なる第2の凹部の複数の測定値と前記3次元形状データに基づく前記第2の凹部の表面の設計形状との差分を算出するステップと、
算出した前記第2の凹部の差分に基づいて前記シリンダヘッドの良否を判定するステップとを備える、請求項1に記載のエンジンの燃焼室容積の調整方法。
【請求項3】
エンジンの燃焼室容積の調整方法であって、
鋳造によって形成されたシリンダヘッドを準備するステップを備え、
前記シリンダヘッドは、エンジンの燃焼室の一部を構成する、一列に配列された複数の凹部およびシリンダブロックとの合わせ面を有し、
前記合わせ面は、目標となる燃焼室容積を有するように設計された前記シリンダヘッドの3次元形状データに対して削り代を有するように形成され、
前記調整方法は、さらに、
変位計を用いて前記凹部の表面の複数箇所および前記合わせ面の複数箇所を測定するステップと、
前記合わせ面の複数の測定値に対して前記3次元形状データに基づく前記合わせ面の設計形状をフィッティングした状態で、前記凹部の各測定値と前記3次元形状データに基づく前記凹部の表面の設計形状との深さ方向差分を算出するステップと、
算出した深さ方向の差分に基づいて切削量を決定し、前記凹部の配列方向における前記算出した差分の値の変化傾向に基づいて前記合わせ面の切削方向をさらに決定し、決定した切削量および切削方向で前記合わせ面を切削し、算出した幅方向の差分に基づいて前記シリンダヘッドの良否判定を行うステップとを備える、エンジンの燃焼室容積の調整方法。
【請求項4】
前記シリンダヘッドは、前記凹部を複数有し、
前記測定するステップでは、前記凹部ごとに表面の複数個所を前記変位計によって測定し、
前記差分を求めるステップでは、前記凹部ごとに各測定値と前記3次元形状データに基づく設計形状との差分を求め、
前記調整方法は、さらに、
前記凹部ごとに求めた差分の値を比較することによって、前記シリンダヘッドの良否を判定するステップを備える、請求項3に記載のエンジンの燃焼室容積の調整方法。
【請求項5】
前記凹部の各測定値と前記3次元形状データに基づく前記凹部の表面の設計形状との差分の平均値を算出するステップをさらに備え、
前記切削するステップでは、算出した前記差分の平均値に基づいて切削量を決定し、決定した切削量で前記合わせ面を切削する、請求項3に記載のエンジンの燃焼室容積の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの燃焼室容積の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンにおいて燃焼室の容積は、燃料の燃焼特性およびエンジンの性能に大きく影響を及ぼす。このため、燃焼室の容積を規定の範囲内に収める加工が必要となる。具体的には、燃焼室の一部を構成するシリンダヘッドの凹部の容積を測定し、測定結果に応じてシリンダブロックとの合わせ面または凹部が切削加工される。これにより、燃焼室容積を調整することができる。
【0003】
シリンダヘッドの凹部の容積を求める従来方法として、鋳造されたシリンダヘッドのバルブ穴を粘土などで塞いだ後、シリンダヘッドの凹部に灯油を注ぎ、その灯油の体積から凹部の容積が求める方法がしばしば用いられる。しかし、この方法は、人為的作業が介在するために効率的でない。
【0004】
特開2011−256730号公報(特許文献1)は、鋳造でシリンダヘッドを形成する際にシリンダヘッドの凹部の頂部に平坦な基準面を設けておき、合わせ面と基準面との距離を計測することで切削量を決定する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−256730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特開2011−256730号公報(特許文献1)に記載の方法では、基準面の一点と合わせ面との距離を測定するのみであるので精度に難がある。
【0007】
この発明は、上記の問題点を考慮してなされたものであって、その目的は、従来技術の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にかかる方法は、 エンジンの燃焼室容積の調整方法であって、
鋳造によって形成されたシリンダヘッドを準備するステップを備え、
前記シリンダヘッドは、エンジンの燃焼室の一部を構成する、一列に配列された複数の凹部およびシリンダブロックとの合わせ面を有し、
前記合わせ面は、目標となる燃焼室容積を有するように設計された前記シリンダヘッドの3次元形状データに対して削り代を有するように形成され、
前記調整方法は、さらに、
変位計を用いて前記凹部の表面の複数箇所および前記合わせ面の複数箇所を測定するステップと、
前記凹部の複数の測定値に対して前記3次元形状データに基づく前記凹部の表面の設計形状をフィッティングした状態で、前記合わせ面の各測定値と前記3次元形状データに基づく前記合わせ面の設計形状との深さ方向および幅方向の差分を算出するステップと、
算出した深さ方向の差分に基づいて切削量を決定し、前記凹部の配列方向における前記算出した差分の値の変化傾向に基づいて前記合わせ面の切削方向をさらに決定し、決定した切削量および切削方向で前記合わせ面を切削し、算出した幅方向の差分に基づいて前記シリンダヘッドの良否判定を行うステップと
を備える。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明にかかる方法は、エンジンの燃焼室容積の調整方法であって、
鋳造によって形成されたシリンダヘッドを準備するステップを備え、
前記シリンダヘッドは、エンジンの燃焼室の一部を構成する、一列に配列された複数の凹部およびシリンダブロックとの合わせ面を有し、
前記合わせ面は、目標となる燃焼室容積を有するように設計された前記シリンダヘッドの3次元形状データに対して削り代を有するように形成され、
前記調整方法は、さらに、
変位計を用いて前記凹部の表面の複数箇所および前記合わせ面の複数箇所を測定するステップと、
前記合わせ面の複数の測定値に対して前記3次元形状データに基づく前記合わせ面の設計形状をフィッティングした状態で、前記凹部の各測定値と前記3次元形状データに基づく前記凹部の表面の設計形状との深さ方向差分を算出するステップと、
算出した深さ方向の差分に基づいて切削量を決定し、前記凹部の配列方向における前記算出した差分の値の変化傾向に基づいて前記合わせ面の切削方向をさらに決定し、決定した切削量および切削方向で前記合わせ面を切削し、算出した幅方向の差分に基づいて前記シリンダヘッドの良否判定を行うステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、精度良く燃焼室容積を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る変位計を備えた工作機械の一例を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る工作機械のうち表面形状測定に関する部分の機能的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るレーザ変位計の構成を模式的に示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る工作機械を用いた加工対象であるシリンダヘッドの外観を示す平面図である。
図5図4の切断線V−Vに沿った断面図である。
図6図4の切断線VI−VIに沿った一部の断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るシリンダヘッドの合わせ面の切削量および切削方向を決定する方法を説明するための断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係るエンジンの燃焼室容積の調整手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2実施形態に係るシリンダヘッドの合わせ面の切削量および切削方向を決定する方法を説明するための断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るエンジンの燃焼室容積の調整手順を示すフローチャートである。
図11】ラインレーザ変位計の測定原理を説明するための図である。
図12】ラインレーザ変位計よるシリンダヘッド表面の測定箇所について説明するための図である。
図13】各凹部の容積の算出方法について説明するための図である。
図14】本発明の第3実施形態に係るエンジンの燃焼室容積の調整手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(第1実施形態)
[レーザ変位計を備えた工作機械の構成例]
図1は、本発明の第1実施形態で用いられる変位計を備えた工作機械の一例を模式的に示す斜視図である。以下では、工作機械が立形マシンニングセンタである場合について説明するが、工作機械は、横形マシニングセンタなど、他の種類のものであっても構わない。さらに、変位計としてレーザを用いた非接触型の変位計の例が示されているが、変位計は接触型のものでも構わない。
【0014】
図1を参照して、工作機械1は、加工装置10と、NC(Numerical Control)装置24と、ATC(自動工具交換装置:Automatic Tool Changer)28と、コンピュータ150とを含む。
【0015】
加工装置10は、ベッド12と、ベッド12上に設置されたコラム14と、主軸22を有する主軸頭20と、テーブル18を有するサドル16とを含む。
【0016】
コラム14は、ベッド12上に設置され、上下方向(Z軸方向)移動可能なバックサポート40を有する。バックサポート40には、B軸回転機構36とA軸回転機構38とが取り付けられている。
【0017】
主軸頭20は、コラム14の前面にバックサポート40、B軸回転機構36、およびA軸回転機構38を介して支持されることにより、上下方向(Z軸方向)に移動可能であるとともにA軸およびB軸の回転駆動が可能である。主軸22の先端には、工具(図示せず)または測定ヘッド42が着脱可能に装着される。主軸22は、その中心軸線(Z軸方向)のまわりに回転可能に、主軸頭20に支持されている。
【0018】
測定ヘッド42は、レーザ変位計100と、このレーザ変位計の制御回路および駆動用バッテリと、無線通信を行うための通信装置とを内蔵する。
【0019】
サドル16は、ベッド12上に配置されて前後の水平方向(Y軸方向)に移動可能である。サドル16上にはテーブル18が配置されている。テーブル18は、左右の水平方向(X軸方向)に移動可能である。テーブル18上には工作物2(具体的にはシリンダヘッド)が載置される。
【0020】
加工装置10は、測定ヘッド42と工作物2とを相対的にX軸、Y軸、Z軸の直交3軸方向に直線移動させるとともにA軸およびB軸の回転軸を有する5軸マシニングセンタである。なお、直交3軸および回転軸の配置を図1の構成と異ならせても構わない。例えば、直交3軸の駆動機構を主軸頭20側に設け、A軸およびC軸の回転機構をテーブル側に設ける構成であってもよい。
【0021】
NC装置24は、上記の直交3軸および回転2軸の制御を含めて加工装置10全体の動作を制御する。ATC(自動工具交換装置)28は、主軸22に対して工具と測定ヘッド42をそれぞれ自動的に交換する。ATC28は、NC装置24によって制御される。
【0022】
図2は、図1の工作機械のうち表面形状測定に関する部分の機能的構成を示すブロック図である。図2には、加工装置10に備えられているZ軸送り機構34、Y軸送り機構32、X軸送り機構30、A軸回転機構38、およびB軸回転機構36が示されている。
【0023】
図1図2を参照して、Z軸送り機構34は、コラム14に支持されている主軸頭20を駆動してZ軸方向に移動させる。Y軸送り機構32は、ベッド12上に配置されているサドル16を駆動してY軸方向に移動させる。X軸送り機構30は、サドル16上に載置されて工作物2を支持するテーブル18を駆動してX軸方向に移動させる。NC装置24は、Z軸送り機構34、Y軸送り機構32、X軸送り機構30、A軸回転機構38、およびB軸回転機構36をそれぞれ制御する。
【0024】
コンピュータ150は、プロセッサ152、メモリ154、および測定ヘッド42との間で無線通信を行うための通信装置170等を含む。プロセッサ152は、メモリ154に格納されたプログラムを実行することによって、図4で説明した測定制御部156およびデータ処理部158として機能する。
【0025】
測定制御部156は、NC装置24と連携することによって、測定ヘッド42と工作物2との相対的位置関係を連続的に変化させ、これによってレーザビーム116が工作物2の表面に沿って走査する。測定制御部156は、レーザビーム116の走査中に、レーザビーム116の走査方向の複数の測定点における高さ方向(Z軸方向)の変位データを工作物2の表面形状データとして測定ヘッド42から取得する。具体的な手順は以下のとおりである。
【0026】
まず、測定制御部156からの制御に基づいて、NC装置24は、X軸送り機構30およびY軸送り機構32のいずれか一方、もしくはX軸送り機構30、Y軸送り機構32、およびZ軸送り機構34のうちの少なくとも2軸を駆動する。これにより、NC装置24は、測定ヘッド42と工作物2との相対的位置関係を連続的に変化させる。
【0027】
NC装置24に内蔵されたPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ:Programmable Logic Controller)26は、上記の送り機構の駆動に同期して、所定周期でトリガ信号を通信装置170に出力する。通信装置170はトリガ信号を受信すると測定指令fを測定ヘッド42に送信し、測定ヘッド42は測定指令fに従って測定ヘッド42から工作物2までの距離D(すなわち、工作物2の表面の変位)を測定する。測定された距離DのデータFは、測定ヘッド42から通信装置170を介して測定制御部156に送信される。
【0028】
PLC26は、さらに、上記の測定ヘッド42による距離測定のタイミングに合わせて、X軸送り機構30、Y軸送り機構32、およびZ軸送り機構34の位置情報を取得することによって、測定ヘッド42の位置のデータを検出する。PLC26は、検出した測定ヘッド42の位置のデータを測定制御部156に送信する。
【0029】
測定制御部156は、PLC26から取得した測定ヘッド42の位置データと、測定ヘッド42から取得した距離DのデータFとに基づいて、レーザビーム116の走査方向に沿った各測定点における高さ方向(Z軸方向)の変位データを導く。そして、その変位データを測定データ166として、メモリ154に格納する。メモリ154にはさらに工作物2の設計データである3次元形状データ168も格納されている。
【0030】
プロセッサ152は、さらに、上記の測定データ166のデータ処理を行うためのデータ処理部158として機能する。
【0031】
[レーザ変位計の構成例]
図3は、レーザ変位計の構成を模式的に示す図である。図3を参照して、レーザ変位計100は、発光部110と、光学系としての集光レンズ118と、受光部としてのリニアイメージセンサ(Linear Image Sensor)120とを含む。発光部110は、レーザダイオード112と、レンズ114とを含む。
【0032】
レーザダイオード112から発せられたレーザビーム116はレンズ114によって略平行光に整形され、測定対象物である工作物2へ照射される。測定対象物上でのレーザビーム116のスポットサイズw(スポット径とも称する)は、例えば、直径50μmである。
【0033】
測定対象物2上のレーザビーム116の照射位置(レーザスポット132)で拡散反射された光は、リニアイメージセンサ120上に、集光レンズ118によって集光される。リニアイメージセンサ120の集光位置に基づいて三角測量により工作物2までの距離が計算される。
【0034】
リニアイメージセンサ120はシャインプルーフ条件(Scheimpflug Condition)に基付いた角度で配置される。すなわち、リニアイメージセンサ120の検出面と集光レンズ118の主面とは1直線で交わる。この配置により、レーザビーム116を含む面が被写体面となるので、測定対象物2とレーザ変位計100の距離が変化しても、レーザスポット132はリニアイメージセンサ120上にボケることなく結像される。
【0035】
[シリンダヘッドの構造の一例]
図4は、図1の工作機械を用いた加工対象であるシリンダヘッドの外観を示す平面図である。図5は、図4の切断線V−Vに沿った断面図である。図6は、図4の切断線VI−VIに沿った一部の断面図である。図4図6には4気筒のエンジンを構成するシリンダヘッドの構造の一例が示されている。シリンダヘッドは鋳造によって形成された後、図1に示すようなマシンニングセンタを用いて部分的に切削される。
【0036】
図4図6を参照して、シリンダヘッド200は、シリンダごとに燃焼室の一部を形成する4つの凹部204A〜204D(総称する場合、凹部204と記載する)と、シリンダブロックとの合わせ面202とを有する。
【0037】
各凹部204は、同一の構成を有し、対応するシリンダボアの内壁面とピストン頂部表面とともに燃焼室を構成する。各凹部204には、吸気ポート用の開口206A,206
Bと、排気ポート用の開口208A,208Bと、点火プラグ用の開口210とが形成されている。吸気ポート用の開口206A,206Bには吸気弁がそれぞれ取り付けられ、排気ポート用の開口208A,208Bには排気弁がそれぞれ取り付けられる。この明細書では、吸気弁、排気弁、および点火プラグを特定部材とも称する。
【0038】
合わせ面202は、削り代を有するように形成されており、合わせ面202を切削することによって各凹部204の容積を目標となる設計値に等しくすることができる。
【0039】
[燃焼室容積の調整方法]
図4を参照して、合わせ面202の切削方向および切削量を決定するために、シリンダヘッド200の燃焼室側の表面形状がレーザ変位計によって測定される。ただし、図3の構成のレーザ変位計100を用いて各凹部204および合わせ面202の表面形状を詳細に測定するのは時間がかかりすぎるので、本実施形態では凹部204の表面の複数個所と各凹部204の合わせ面202の複数個所とが代表的に測定される。例えば、図4に破線で示されている箇所が測定箇所212になる。具体的に、各ポート用開口と隣接するポート用開口との間の凹部204の表面と、各凹部204の周辺の合わせ面202の一部とがレーザ変位計100によって測定される。得られた測定データ166は、コンピュータ150のメモリ154に格納される。
【0040】
図2のデータ処理部158は、測定データ166と、目標となる燃焼室容積を有するように設計されたシリンダヘッドの3次元形状データ168とを比較することによって、合わせ面202の切削量および切削方向を決定する。以下、図面を参照して具体的に説明する。
【0041】
図7は、本実施形態1において、シリンダヘッドの合わせ面の切削量および切削方向を決定する方法を説明するための断面図である。図7(A)〜(C)では、各測定値220による表面形状を破線で示し、3次元形状データ168に基づく設計形状222を実線で示す。
【0042】
図7(A)を参照して、まず、データ処理部158は、凹部204A〜204Dの各測定値220に対して凹部204A〜204Dの表面の設計形状222を、最小二乗法または最尤法などを用いてフィッティングする。次に、データ処理部158は、このようにフィッティングした状態で、合わせ面の各測定値220と合わせ面の設計形状222との差分DFを算出する。図7(A)の場合、差分DFは一様であるので、鋳造後の合わせ面224と平行な平面226に沿った方向が切削方向CDになる。切削量は算出した差分DFの値に等しく、合わせ面の各箇所で一様になる。
【0043】
図7(B)を参照して、図7(A)と同様のフィッティングを行ったところ、求めた差分DFは、凹部204の配列方向に沿って徐々に増加している。この場合、図7(B)に示すように、鋳造後の合わせ面224に対して角度θだけ傾斜した平面226に沿った方向が切削方向CDになる。切削量は、算出した差分DFに基づいて決定され、合わせ面上の位置に応じて異なる値になる。
【0044】
図7(B)の場合において、鋳造後の合わせ面224に対して切削方向CDを傾斜させない場合には、切削加工後の凹部204A〜204Dの容積が互いに異なることになる。具体的に、切削加工後の凹部204A〜204Dの容積をそれぞれVa,Vb,Vc,Vdとすると、Va<Vb<Vc<Vdの関係になってしまう。上記のように切削方向CDを鋳造後の合わせ面224に対して傾斜させることによって、切削加工後の凹部204A〜204Dの容積を略等しく、すなわち、Va=Vb=Vc=Vdにすることができる。
【0045】
図7(C)を参照して、図7(A)と同様のフィッティングを行ったところ、フィッティング誤差が基準値を超えた場合は、データ処理部158は、シリンダヘッドを不良品と判定する。凹部204Aの各測定値220に対して凹部204Aの表面の設計形状222をフィッティングした状態で、凹部204Dの各測定値220と凹部204Dの表面の設計形状222との差分ERが許容範囲を超えるか否かによって、良否判定を行うことができる。
【0046】
[燃焼室容積の調整手順]
図8は、本実施形態において、エンジンの燃焼室容積の調整手順を示すフローチャートである。以下、図2図4、および図8を参照して、これまでの説明を総括する。
【0047】
まず、鋳造によって形成されたシリンダヘッド200が、工作機械1のテーブル18上に載置される(S100)。測定制御部156は、シリンダヘッド200の凹部204ごとに表面の複数個所をレーザ変位計によって測定するとともに、シリンダヘッド200の合わせ面202上の複数個所をレーザ変位計によって測定する(S105)。測定データ166はメモリ154に格納される。
【0048】
次に、データ処理部158は、各凹部204の複数の測定値に対して、3次元形状データ168に基づく各凹部204の表面の設計形状をフィッティングする(S110)。この際、データ処理部158は、フィッティング誤差が許容範囲内か否かを判定し(S115)、フィッティング誤差が許容範囲を超える場合には(S115でNO)、シリンダヘッド200を不良品と判定する(S120)。
【0049】
フィッティング誤差が許容範囲内の場合には(S115でYES)、データ処理部158は、上記のフィッティングを行った状態で、合わせ面202の各測定値と3次元形状データ168に基づく合わせ面202の設計形状との差分を算出する(S125)。データ処理部158は、凹部204A〜204Dの配列方向における算出した差分の値の変化傾向に基づいて合わせ面202の切削方向を決定するとともに、算出した差分の値に基づいて合わせ面202上の各位置での切削量を決定する(S130)。
【0050】
最終的に、コンピュータ150は、決定した切削方向および切削量に基づいて、シリンダヘッド200の加工プログラムを作成する。作成された加工プログラムに従って、NC装置24は、シリンダヘッド200の合わせ面202を切削加工する(S135)。
【0051】
以上のとおり、本実施形態によれば、凹部の容積を算出するために、凹部の全領域とその周囲の合わせ面の表面形状をレーザ変位計で測定する必要がないので、測定時間を短縮することができる。さらに、各凹部の測定値に対して設計形状をフィッティングすることによって、合わせ面の切削量および切削方向が決定されるので、精度良く燃焼室容積を調整することができる。
【0052】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、測定データ166と3次元形状データ168とを比較することによって、シリンダヘッド200の合わせ面202の切削方法および切削量が決定される。この点で、第1実施形態の場合と同じであるが、データ比較の方法が第1実施形態の場合と異なる。以下、図面を参照して具体的に説明する。
【0053】
図9は、本実施形態において、シリンダヘッドの合わせ面の切削量および切削方向を決定する方法を説明するための断面図である。図9(A)〜(C)では、各測定値220による表面形状を破線で示し、3次元形状データ168に基づく設計形状222を実線で示す。
【0054】
図9(A)を参照して、まず、図2のデータ処理部158は、合わせ面202の各測定値220に対して合わせ面202の設計形状222を、最小二乗法または最尤法などを用いてフィッティングする。次に、データ処理部158は、このようにフィッティングした状態で、凹部204の各測定値220と凹部204の設計形状222との差分DFを算出する。図9(A)の場合、差分DFは凹部204ごとに一様であるので、鋳造後の合わせ面202と平行な方向が切削方向になる。切削量は算出した差分DFの値を平均することによって求められる。
【0055】
図9(B)を参照して、図9(A)と同様のフィッティングを行ったところ、求めた差分DF1〜DF4は、凹部204の配列方向に沿って徐々に増加している。この場合、差分DF1〜DF4の変化傾向に応じて切削方向が決定される。したがって、鋳造後の合わせ面202に対して傾斜した方向が切削方向になる。切削量は、算出した差分DFに基づいて決定され、合わせ面上の位置に応じて異なる値になる。
【0056】
図9(B)の場合において、鋳造後の合わせ面202に対して切削方向を傾斜させない場合には、切削加工後の凹部204A〜204Dの容積が互いに異なってしまう。上記のように切削方向を鋳造後の合わせ面202に対して傾斜させることによって、切削加工後の凹部204A〜204Dの容積をほぼ等しくすることができる。
【0057】
図9(C)を参照して、図9(A)と同様のフィッティングを行ったところ、凹部204ごとに算出した差分の値のばらつきが大きい場合には、データ処理部158は、シリンダヘッドを不良品と判定する。例えば、図9(C)の場合には、凹部204Bの差分DF1と凹部204Dの差分DF2とでは符号が逆転している。
【0058】
図10は、本実施形態において、エンジンの燃焼室容積の調整手順を示すフローチャートである。
【0059】
図2図4、および図10を参照して、まず、鋳造によって形成されたシリンダヘッド200が、工作機械1のテーブル18上に載置される(S200)。測定制御部156は、シリンダヘッド200の凹部204ごとに表面の複数個所をレーザ変位計によって測定するとともに、シリンダヘッド200の合わせ面202上の複数個所をレーザ変位計によって測定する(S205)。測定データ166はメモリ154に格納される。
【0060】
次に、データ処理部158は、合わせ面202の複数の測定値に対して、3次元形状データ168に基づいた合わせ面202の設計形状をフィッティングする(S210)。データ処理部158は、このフィッティングを行った状態で、凹部204ごとに、各測定値と3次元形状データ168に基づく設計形状との差分を算出する(S215)。ここで、データ処理部158は、凹部204ごとに算出された差分の値のばらつきが許容範囲を超える場合には(S220でNO)、シリンダヘッド200を不良品と判定する(S225)。
【0061】
凹部204ごとの差分の値のばらつきが許容範囲内の場合には(S220でYES)、データ処理部158は、凹部204A〜204Dの配列方向における算出した差分の値の変化傾向に基づいて合わせ面202の切削方向を決定する。そして、算出した差分の値(もしくは、凹部ごとの差分の値の平均値)に基づいて合わせ面202上の各位置での切削量を決定する(S230)。
【0062】
最終的に、コンピュータ150は、決定した切削方向および切削量に基づいて、シリンダヘッド200の加工プログラムを作成する。作成された加工プログラムに従って、NC装置24は、シリンダヘッド200の合わせ面202を切削加工する(S235)。
【0063】
以上のとおり、本実施形態の方法によれば、凹部の容積を算出するために、凹部の全領域とその周囲の合わせ面の表面形状をレーザ変位計で測定する必要がないので、測定時間を短縮することができる。さらに、合わせ面の各測定値に対して設計形状をフィッティングした状態で、凹部における各測定値と設計形状との差分を算出し、算出した差分の値に基づいて合わせ面の切削量および切削方向が決定されるので、精度良く燃焼室容積を調整することができる。
【0064】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態では、ライン状のレーザ光を照射するラインレーザ変位計が用いられる点で第1、第2実施形態と異なる。図3のレーザ変位計の構成図において、ラインレーザ変位計の場合には、発光部110のレンズ114が例えばシリンドリカルレンズに変更される。これによって、発光部からライン状のレーザ光が照射される。さらに、受光部120として、リニアイメージセンサに代えて2次元イメージセンサが用いられる。
【0065】
図11は、ラインレーザ変位計の測定原理を説明するための図である。図11(A)に示すように、発光部110Aから帯状(ライン状)のレーザ光116Aが測定対象物2に照射される。受光部120に設けられる2次元イメージセンサ122上では、測定対象物2からの散乱光が、受光レンズ118によってスポット状ではなくライン状に集光される。これによって、三角測量が幅方向(Y軸方向)に拡張されることになるので、Y軸方向に延びるレーザ照射位置の各々でのZ軸方向の変位を同時に検出可能になる。
【0066】
図12は、ラインレーザ変位計よるシリンダヘッド表面の測定箇所について説明するための図である。ライン状のレーザ光を走査することによって、図4の各凹部204の全領域の表面形状と各凹部204の周囲の合わせ面202の表面形状とを比較的短時間で測定可能である。具体的に図12では、凹部204Cおよびその周囲の測定点が示されている。各格子点がラインレーザ変位計による測定点に相当する。測定点の数は、2次元イメージセンサのピクセル数に依存する。
【0067】
ここで、3次元形状データ(設計データ)と測定データとを比較することによって、測定データから、吸気ポート用の開口206A,206B、排気ポート用の開口208A,208B、および点火プラグ用の開口210に相当する領域のデータが除去される(図12において、ドットが付された格子点MPでは測定データが除去されていないが、ドットが付されていない格子点MPでは測定データが除去されている)。この理由は、これらの開口部分では、レーザ光の反射方向がばらつくので測定データの信頼性が乏しいからである。これらの開口部分では、測定データに代えて、吸気弁、排気弁、および点火プラグの表面の位置情報が用いられる。最終的に上記のように修正された測定データを用いて各凹部204の容積が算出される。
【0068】
図13は、各凹部の容積の算出方法について説明するための図である。図12および図13を参照して、凹部204の容積は、凹部204によって囲まれる領域を図13に示すような多数の切頭三角柱に分割し、各切頭三角柱の体積を加算することによって計算することができる。切頭三角柱の底面232は、図12の格子によって仕切られる各正方形領域の半分に相当し、シリンダヘッド200の合わせ面202の延長上に位置する。切頭三角柱の高さh1,h2,h3は、底面232を構成する各頂点から凹部204の表面までの距離に相当する。
【0069】
図14は、エンジンの燃焼室容積の調整手順を示すフローチャートである。
【0070】
図2図4、および図14を参照して、まず、鋳造によって形成されたシリンダヘッド200が、工作機械1のテーブル18上に載置される(S300)。測定制御部156は、ラインレーザ変位計を用いて、シリンダヘッド200の各凹部204の表面形状および合わせ面202の表面形状を測定する(S305)。測定データ166はメモリ154に格納される。
【0071】
次に、データ処理部158は、測定データ166と3次元形状データ168とを比較することによって、測定データから、各開口(吸気ポート用、排気ポート用、点火プラグ用)に相当する領域のデータを除去する(S310)。これらの領域には、吸気弁、排気弁、および点火プラグを対応する開口に取り付けたと仮定したときの、燃焼室に面する側の表面の位置情報が追加される(S315)。
【0072】
次に、データ処理部158は、修正後の測定データ166に基づいて各凹部204の容積を算出する(S320)。データ処理部158は、算出した各凹部204の容積と3次元形状データ168に基づく各凹部204の容積とを比較することによって、合わせ面の切削方向および切削量を決定する(S325)。
【0073】
例えば、凹部204A〜204Dの配列方向に沿って、算出された凹部204の容積が変化している場合には、データ処理部158は、この容積の変化傾向に基づいて、切削後の各凹部204の容積が等しくなるように各凹部の切削方向を決定する。
【0074】
最終的に、コンピュータ150は、決定した切削方向および切削量に基づいて、シリンダヘッド200の加工プログラムを作成する。作成された加工プログラムに従って、NC装置24は、シリンダヘッド200の合わせ面202を切削加工する(S335)。
【0075】
以上のとおり、本実施形態によれば、ラインレーザ変位計を用いて凹部および合わせ面の表面形状を測定するので、測定時間を短縮することができる。さらに、測定データに基づいて各凹部204の容積を算出し、算出した各凹部204の容積に基づいて合わせ面の切削量および切削方向が決定されるので、精度良く燃焼室容積を調整することができる。
【0076】
(他の実施形態)
上記実施形態は全ての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0077】
例えば、エンジンの燃焼室容積の調整方法であって、鋳造によって形成されたシリンダヘッドを準備するステップを備える。ここで、シリンダヘッドは、エンジンの燃焼室の一部を構成する凹部およびシリンダブロックとの合わせ面を有する。合わせ面は、目標となる燃焼室容積を有するように設計されたシリンダヘッドの3次元形状データに対して削り代を有するように形成される。調整方法は、さらに、変位計を用いて凹部の表面の複数箇所および合わせ面の複数箇所を測定するステップと、凹部の複数の測定値に対して3次元形状データに基づく凹部の表面の設計形状をフィッティングした状態で、合わせ面の各測定値と3次元形状データに基づく合わせ面の設計形状との差分を算出するステップと、算出した差分に基づいて切削量を決定し、決定した切削量で合わせ面を切削するステップとを備える。
【0078】
ここで、シリンダヘッドは、一列に配列された複数の凹部を有する。この場合、測定するステップでは、凹部ごとに表面の複数個所を変位計によって測定する。切削するステップでは、凹部の配列方向における算出した差分の値の変化傾向に基づいて合わせ面の切削方向をさらに決定し、決定した切削量および切削方向で合わせ面を切削する。
【0079】
また、シリンダヘッドは、凹部を複数有する。この場合、測定するステップでは、凹部ごとに表面の複数個所を変位計によって測定する。調整方法は、さらに、複数の凹部のうち任意の第1の凹部の複数の測定値に対して3次元形状データに基づく第1の凹部の表面の設計形状をフィッティングした状態で、第1の凹部と異なる第2の凹部の複数の測定値と3次元形状データに基づく第2の凹部の表面の設計形状との差分を算出するステップと、算出した第2の凹部の差分に基づいてシリンダヘッドの良否を判定するステップとを備える。
【0080】
上記の方法によれば、凹部の容積を算出するために、凹部の全領域とその周囲の合わせ面の表面形状をレーザ変位計で測定する必要がないので、測定時間を短縮することができる。さらに、各凹部の測定値に対して設計形状をフィッティングすることによって、合わせ面の切削量および切削方向が決定されるので、精度良く燃焼室容積を調整することができる。
【0081】
また、エンジンの燃焼室容積の調整方法であって、鋳造によって形成されたシリンダヘッドを準備するステップを備える。シリンダヘッドは、エンジンの燃焼室の一部を構成する凹部およびシリンダブロックとの合わせ面を有する。合わせ面は、目標となる燃焼室容積を有するように設計されたシリンダヘッドの3次元形状データに対して削り代を有するように形成される。調整方法は、さらに、変位計を用いて凹部の表面の複数箇所および合わせ面の複数箇所を測定するステップと、合わせ面の複数の測定値に対して3次元形状データに基づく合わせ面の設計形状をフィッティングした状態で、凹部の各測定値と3次元形状データに基づく凹部の表面の設計形状との差分を算出するステップと、算出した差分に基づいて切削量を決定し、決定した切削量で合わせ面を切削するステップとを備える。
【0082】
好ましい一実施形態において、シリンダヘッドは、一列に配列された複数の凹部を有する。この場合、測定するステップでは、凹部ごとに表面の複数個所を変位計によって測定する。差分を求めるステップでは、凹部ごとに各測定値と3次元形状データに基づく設計形状との差分を求める。切削するステップでは、凹部の配列方向における算出した差分の値の変化傾向に基づいて合わせ面の切削方向をさらに決定し、決定した切削量および切削方向で合わせ面を切削する。
【0083】
好ましい他の実施形態において、シリンダヘッドは、凹部を複数有する。この場合、測定するステップでは、凹部ごとに表面の複数個所を変位計によって測定する。差分を求めるステップでは、凹部ごとに各測定値と3次元形状データに基づく設計形状との差分を求める。調整方法は、さらに、凹部ごとに求めた差分の値を比較することによって、シリンダヘッドの良否を判定するステップを備える。
【0084】
好ましいさらに他の実施形態において、調整方法は、凹部の各測定値と3次元形状データに基づく凹部の表面の設計形状との差分の平均値を算出するステップをさらに備える。この場合、切削するステップでは、算出した差分の平均値に基づいて切削量を決定し、決定した切削量で合わせ面を切削する。
【0085】
上記の他の局面によるエンジンの燃焼室容積の調整方法によれば、凹部の容積を算出するために、凹部の全領域とその周囲の合わせ面の表面形状をレーザ変位計で測定する必要がないので、測定時間を短縮することができる。さらに、合わせ面の各測定値に対して設計形状をフィッティングした状態で、凹部における各測定値と設計形状との差分を算出し、算出した差分の値に基づいて合わせ面の切削量および切削方向が決定されるので、精度良く燃焼室容積を調整することができる。
【0086】
さらに他の局面において、エンジンの燃焼室容積の調整方法であって、鋳造によって形成されたシリンダヘッドを準備するステップを備える。シリンダヘッドは、エンジンの燃焼室の一部を構成する凹部およびシリンダブロックとの合わせ面を含む。凹部は、複数の特定部材がそれぞれ取付けられる複数の開口を有する。合わせ面は、目標となる燃焼室容積を有するように設計されたシリンダヘッドの3次元形状データに対して削り代を有するように形成される。調整方法は、さらに、ライン状のレーザ光を照射するラインレーザ変位計を用いて、レーザ光の照射位置を連続的に変更することによって、凹部の表面形状と凹部の周囲の合わせ面の形状とを測定するステップと、ラインレーザ変位計による測定データと3次元形状データとを比較することによって、測定データから複数の開口に相当する領域のデータを除去するステップと、複数の開口に相当する領域が除去された測定データに基づいて、凹部の容積を算出するステップと、算出した凹部の容積と3次元形状データに基づく凹部の容積とを比較することによって、合わせ面の切削量を決定するステップと、決定した切削量で合わせ面を切削するステップとを備える。
【0087】
調整方法は、測定データから複数の開口に相当する領域のデータを除去した後、複数の開口に複数の特定部材がそれぞれ取り付けられたと仮定したときの、燃焼室に面する複数の特定部材の表面の位置情報を測定データに追加するステップをさらに備えてもよい。この場合、容積を算出するステップでは、複数の特定部材の表面の位置情報が追加された測定データに基づいて、凹部の容積を算出する。
【0088】
さらに、シリンダヘッドは、一列に配列された複数の凹部を有してもよい。この場合、測定するステップでは、凹部ごとに表面形状と周囲の合わせ面の形状とをラインレーザ変位計によって測定する。容積を算出するステップでは、凹部ごとに容積を算出する。調整方法は、さらに、凹部の配列方向における算出した容積の値の変化傾向に基づいて、切削後の各凹部の容積が等しくなるように合わせ面の切削方向を決定するステップを備える。切削するステップでは、決定した切削量および切削方向で合わせ面を切削する。
【0089】
この調整方法によれば、ラインレーザ変位計を用いて凹部および合わせ面の表面形状を測定するので、測定時間を短縮することができる。さらに、測定データに基づいて各凹部204の容積を算出し、算出した各凹部204の容積に基づいて合わせ面の切削量および切削方向が決定されるので、精度良く燃焼室容積を調整することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 工作機械、2 工作物(測定対象物)、10 加工装置、18 テーブル、20 主軸頭、22 主軸、24 NC装置、30 X軸送り機構、32 Y軸送り機構、34 Z軸送り機構、36 B軸回転機構、38 A軸回転機構、40 バックサポート、42 測定ヘッド、100 レーザ変位計、110,110A 発光部、112 レーザダイオード、114 レンズ、116 レーザビーム、116A レーザ光、118 集光レンズ(受光レンズ)、120 リニアイメージセンサ、120 受光部、122 2次元イメージセンサ、150 コンピュータ、152 プロセッサ、154 メモリ、156 測定制御部、158 データ処理部、166 測定データ、168 3次元形状データ、170 通信装置、200 シリンダヘッド、202 合わせ面、204,204A〜204D 凹部、206A,206B 吸気ポート用開口、208A,208B 排気ポート用開口、210 点火プラグ用開口、CD 切削方向、DF,DF1〜DF4,ER 差分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14