特許第5960746号(P5960746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 玉晶光電股▲ふん▼有限公司の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960746
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】光学撮像レンズセット
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20160719BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-77051(P2014-77051)
(22)【出願日】2014年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-206739(P2014-206739A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】201310127575.5
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】504337659
【氏名又は名称】玉晶光電股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】陳思翰
(72)【発明者】
【氏名】謝宏健
(72)【発明者】
【氏名】林家正
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0021678(US,A1)
【文献】 台湾特許出願公開第201310059(TW,A)
【文献】 台湾特許出願公開第201248187(TW,A)
【文献】 国際公開第2011/027690(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/021271(WO,A1)
【文献】 台湾特許出願公開第201310061(TW,A)
【文献】 米国特許第08179615(US,B1)
【文献】 国際公開第2011/004467(WO,A1)
【文献】 特開2013−257527(JP,A)
【文献】 特開2011−257447(JP,A)
【文献】 特開2011−257448(JP,A)
【文献】 特開2009−294527(JP,A)
【文献】 特開2013−054099(JP,A)
【文献】 特開2010−256608(JP,A)
【文献】 特開2012−208326(JP,A)
【文献】 特開2012−189894(JP,A)
【文献】 特開2012−008164(JP,A)
【文献】 特開2012−037763(JP,A)
【文献】 特開2010−262269(JP,A)
【文献】 特開2007−298572(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0087019(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0212660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口絞りと、
正の屈折力を有する第1のレンズ素子と、
像側に向いた周縁部近傍に凹部をなす第2の像側の面を有する第2のレンズ素子と、
正の屈折力を有するとともに、像側に向いた第3の像側の面であって全体として凸面状をなす第3の像側の面と、物体側に向いた周縁部近傍に凹部をなす第3の物体側の面とを有する第3のレンズ素子と、
物体側に向いた第4の物体側の面であって全体として凹面状をなす第4の物体側の面を有する第4のレンズ素子と、
像側に向いた光軸近傍に凹部をなす第5の像側の面を有するプラスチック製の第5のレンズ素子と、
を光軸に沿って物体側から像側へ前記開口絞りおよび前記第1乃至第5のレンズ素子の順に備え、
屈折力を有せしめるレンズ素子が前記第1乃至第5のレンズ素子のみからなり、
前記第1のレンズ素子、前記第2のレンズ素子、前記第3のレンズ素子、前記第4のレンズ素子、前記第5のレンズ素子の光軸に沿った全厚を示すTalと、前記第1のレンズ素子乃至前記第5のレンズ素子の各レンズ素子間の光軸に沿った4つの全空隙を示すGaaと、前記第1のレンズ素子の光軸に沿った厚さを示すT1と、前記第2のレンズ素子の光軸に沿った厚さを示すT2と、前記第3のレンズ素子の光軸に沿った厚さを示すT3と、前記第4のレンズ素子の光軸に沿った厚さを示すT4と、前記第5のレンズ素子の光軸に沿った厚さを示すT5とは、関係
(Tal+Gaa)/(T3+T5)≦4.00、かつ、
5.416≦(Tal+Gaa)/(T2+T4、かつ、
al/T3≦5.80、かつ、
2.60≦(T1+T5)/T4
を満たし、
前記第1のレンズ素子と前記第2のレンズ素子との間の光軸に沿った空隙を示すG12と、前記第2のレンズ素子と前記第3のレンズ素子との間の光軸に沿った空隙を示すG23と、前記第3のレンズ素子と前記第4のレンズ素子との間の光軸に沿った空隙を示すG34と、前記第4のレンズ素子と前記第5のレンズ素子との間の光軸に沿った空隙を示すG45とは、関係
3.30≦(G23+G34)/(G12+G45
を満たすことを特徴とする光学撮像レンズセット。
【請求項2】
記T1と、前記T2と、前記T3と、前記T5とは、関係
5.60≦(T1+T3+T5)/T2
を満たすことを特徴とする請求項に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項3】
前記Ta1と、前記Gaaと、前記T2と、前記G45とは、関係
8.70≦(Tal+Gaa)/(T2+G45
を満たすことを特徴とする請求項に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項4】
前記T2と、前記T3と、前記G12と、前記G45とは、関係
1.30≦T2/(G12+G45)、および、2.00≦T3/T2
を満たすことを特徴とする請求項に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項5】
記T1と、前記T2と、前記T3とは、関係
4.30≦(T1+T3)/T2
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学撮像レンズセット。
【請求項6】
前記第1のレンズ素子は、像側に向いた光軸近傍に凹部をなす第1の像側の面をさらに有し、
前記T1と、前記T3と、前記T4と、前記T5とは、関係
3.80≦(T1+T3+T5)/T4
を満たすことを特徴とする請求項に記載の光学撮像レンズセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、光学撮像レンズセットに関する。具体的には、本発明は、5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機およびデジタルカメラの普及によって、光学撮像レンズ素子または撮像センサなど、様々な携帯型電子製品の撮影モジュールは急速に開発が進んでおり、さらには、携帯電話機およびデジタルカメラの小型化によって、撮影モジュールの小型化の要求もますます高まっている。最近の研究動向は、良好な品質を損なうことなく、長さが短縮化された光学撮像レンズセットを開発することである。
【0003】
電荷結合素子(CCD:Charged Coupled Device)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)素子の開発および小型化に伴って、撮影モジュールに取り付けられる光学撮像レンズセットも同じく要求にかなうように小型化される。ただし、系の収差の改善など、良好な光学特性および必要な光学特性について、さらには製造コストおよび製造可能性について考慮されなければならない。
【0004】
例えば、特許文献1および特許文献2は、5つのレンズ素子で構成された光学撮像レンズセットについて開示している。しかしながら、第5のレンズ素子の厚さが比較的大きい。また、第1のレンズ素子の物体側から像面までの距離が9mmよりも長い。
【0005】
さらに、特許文献3および特許文献4は、5つのレンズ素子で構成された別の光学撮像レンズセットについて開示している。第1のレンズ素子の物体側から像面までの距離は、6.0mmよりも長い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0087019号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0254029号明細書
【特許文献3】特許第4858648号明細書
【特許文献4】特開2007−298572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの開示されている寸法は、携帯電話機およびデジタルカメラなどの携帯型電子製品の小型化の良い例を示すものではない。一方で、系の長さを効果的に短縮し、他方で、十分な光学性能を維持することは、当該分野において依然として課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑み、本発明は、軽量、低製造コスト、短縮された長さ、高解像度、高い像品質の光学撮像レンズセットを提案することが可能である。本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットは、光軸に沿って物体側から像側へ順に、開口絞りと、第1のレンズ素子と、第2のレンズ素子と、第3のレンズ素子と、第4のレンズ素子と、第5のレンズ素子とを備える。
【0009】
第1のレンズ素子は正の屈折力を有する。第2のレンズ素子は、像側に向いた第2の像側の面を有し、第2の像側の面は、該第2のレンズ素子の周縁部近傍に凹部を有する。第3のレンズ素子は、正の屈折力を有し、像側に向いた第3の像側の面と、物体側に向いた第3の物体側の面とを有する。第3の像側の面は凸面であり、第3の物体側の面は、該第3のレンズ素子の周縁部近傍に凹部を有する。第4のレンズ素子は、物体側に向いた第4の物体側の面を有し、第4の物体側の面は凹面である。第5のレンズ素子は、プラスチックで構成されており、また、像側に向いた第5の像側の面を有し、第5の像側の面は、光軸近傍に凹部を有する。光学撮像レンズセットは、屈折力を有するレンズ素子を5つのみ備える。
【0010】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットにおいて、第1のレンズ素子は、第1のレンズ素子厚T1を有し、第2のレンズ素子は、第2のレンズ素子厚T2を有し、第3のレンズ素子は、第3のレンズ素子厚T3を有し、第4のレンズ素子は、第4のレンズ素子厚T4を有し、第5のレンズ素子は、第5のレンズ素子厚T5を有し、光学撮像レンズセットにおけるすべてのレンズ素子の光軸に沿った全厚は、Tal=T1+T2+T3+T4+T5である。
【0011】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットにおいて、第1のレンズ素子と第2のレンズ素子との間に空隙G12が配され、第2のレンズ素子と第3のレンズ素子との間に空隙G23が配され、第3のレンズ素子と第4のレンズ素子との間に空隙G34が配され、第4のレンズ素子と第5のレンズ素子との間に空隙G45が配されており、第1のレンズ素子から第5のレンズ素子までの隣接するレンズ素子間の光軸に沿った4つの空隙の総和は、Gaa=G12+G23+G34+G45である。
【0012】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、(Tal+Gaa)/(T3+T5)≦4.00である。
【0013】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、Tal/T3≦5.80である。
【0014】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、5.60≦(T1+T3+T5)/T2である。
【0015】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、2.45≦(T3+T5)/T4である。
【0016】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、8.70≦(Tal+Gaa)/(T2+G45)である。
【0017】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、1.20≦G23/(G34+G45)である。
【0018】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、5.00≦(Tal+Gaa)/(T2+T4)である。
【0019】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、3.30≦(G23+G34)/(G12+G45)である。
【0020】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、2.60≦(T1+T5)/(T4)である。
【0021】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、1.30≦T2/(G12+G45)である。
【0022】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、2.00≦T3/T2である。
【0023】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、4.30≦(T1+T3)/T2である。
【0024】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、3.80≦(T1+T3+T5)/T4であり、また、第1のレンズ素子は、像側に向いた第1の像側の面をさらに有し、第1の像側の面は、光軸近傍に凹部を有する。
【0025】
本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットでは、2.30≦G23/(G12+G45)である。
【0026】
さらに、本発明では、上記のような光学撮像レンズセットを備えた電子機器について提案する。電子機器は、ケースと、ケース内に配置された撮像モジュールとを備える。撮像モジュールは、上記のような光学撮像レンズセットと、光学撮像レンズセットを取り付けるための鏡筒と、鏡筒を取り付けるためのモジュール収容ユニットと、光学撮像レンズセットの像側に配置される撮像センサと、を有する。
【0027】
本発明の電子機器において、モジュール収容ユニットは、レンズ素子ハウジングを備える。レンズ素子ハウジングは、第1の台座要素と第2の台座要素とを有する。第1の台座要素は、鏡筒の外側に装着されて、軸に沿って配置される。第2の台座要素は、上記軸に沿って配置されて、第1の台座要素の外側を取り囲んでおり、これによって、光学撮像レンズセットを制御するために、第1の台座要素と、鏡筒と、光学撮像レンズセットとを一緒に光軸に沿って動かすことが可能である。
【0028】
本発明の電子機器において、モジュール収容ユニットは、レンズ素子ハウジングと撮像センサとの間に配置される撮像センサハウジングを有し、撮像センサハウジングは、第2の台座要素に装着される。
【0029】
本発明のこれらおよび他の目的は、種々の図表および図面に示す好ましい実施形態についての以下の詳細な説明を読むことで、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の光学撮像レンズセットの第1の例を示している。
図2】(A)は、第1の例の像面における縦球面収差を示している。(B)は、第1の例のサジタル方向の非点収差を示している。(C)は、第1の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示している。(D)は、第1の例の歪曲収差を示している。
図3】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第2の例を示している。
図4】(A)は、第2の例の像面における縦球面収差を示している。(B)は、第2の例のサジタル方向の非点収差を示している。(C)は、第2の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示している。(D)は、第2の例の歪曲収差を示している。
図5】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第3の例を示している。
図6】(A)は、第3の例の像面における縦球面収差を示している。(B)は、第3の例のサジタル方向の非点収差を示している。(C)は、第3の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示している。(D)は、第3の例の歪曲収差を示している。
図7】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第4の例を示している。
図8】(A)は、第4の例の像面における縦球面収差を示している。(B)は、第4の例のサジタル方向の非点収差を示している。(C)は、第4の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示している。(D)は、第4の例の歪曲収差を示している。
図9】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第5の例を示している。
図10】(A)は、第5の例の像面における縦球面収差を示している。(B)は、第5の例のサジタル方向の非点収差を示している。(C)は、第5の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示している。(D)は、第5の例の歪曲収差を示している。
図11】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第6の例を示している。
図12】(A)は、第6の例の像面における縦球面収差を示している。(B)は、第6の例のサジタル方向の非点収差を示している。(C)は、第6の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示している。(D)は、第6の例の歪曲収差を示している。
図13】本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセットの第7の例を示している。
図14】(A)は、第7の例の像面における縦球面収差を示している。(B)は、第7の例のサジタル方向の非点収差を示している。(C)は、第7の例のタンジェンシャル方向の非点収差を示している。(D)は、第7の例の歪曲収差を示している。
図15】本発明の光学撮像レンズ素子の典型例となる形状を示している。
図16】本発明の光学撮像レンズセットを備えた携帯型電子機器の第1の好ましい例を示している。
図17】本発明の光学撮像レンズセットを備えた携帯型電子機器の第2の好ましい例を示している。
図18】光学撮像レンズセットの第1の例の光学データを示している。
図19】第1の例の非球面データを示している。
図20】光学撮像レンズセットの第2の例の光学データを示している。
図21】第2の例の非球面データを示している。
図22】光学撮像レンズセットの第3の例の光学データを示している。
図23】第3の例の非球面データを示している。
図24】光学撮像レンズセットの第4の例の光学データを示している。
図25】第4の例の非球面データを示している。
図26】光学撮像レンズセットの第5の例の光学データを示している。
図27】第5の例の非球面データを示している。
図28】光学撮像レンズセットの第6の例の光学データを示している。
図29】第6の例の非球面データを示している。
図30】光学撮像レンズセットの第7の例の光学データを示している。
図31】第7の例の非球面データを示している。
図32】これらの例におけるいくつかの重要な比率を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明について詳細に説明するに当たり、まず最初に留意されるべきことは、本発明において、類似の(必ずしも同一ではない)要素は、同一の参照符号を共用しているということである。
本明細書全体において、「ある特定のレンズ素子が、負/正の屈折力を有する」とは、そのレンズ素子の光軸近傍部分が負/正の屈折力を有することを意味する。
「ある特定のレンズ素子の物体側/像側の面が、凹/凸部を有する」とは、その領域に隣接する外側の領域と比較して、その部分が、光軸と平行な方向に、より多く窪んでいる/膨らんでいることを意味する。図15を例にとると、光軸は「I」であり、レンズ素子は、その光軸Iに関して対称である。レンズ素子の物体側は、領域Aに凸部を有し、領域Bに凹部を有し、領域Cに凸部を有する。なぜなら、領域Aは、領域Aに隣接する外側の領域(領域B)と比較して、光軸に平行な方向に、より膨らんでおり、領域Bは領域Cと比較して、より窪んでおり、同様に、領域Cは領域Eと比較して、より膨らんでいるからである。
「ある特定のレンズ素子の周縁部」とは、そのレンズ素子の光を通過させるための面の周縁領域を指し、それは同図における領域Cである。同図において、撮像光は、Lc(主光線)とLm(周辺光線)とを含んでいる。
「光軸近傍」とは、そのレンズ素子の光を通過させるための面の光軸領域を指し、それは図15における領域Aである。さらに、レンズ素子は、該レンズ素子を光学撮像レンズセット内に取り付けるための拡張部Eを備えることができる。理想的には、光は拡張部を通過せず、また、拡張部の実際の構造および形状は、このように限定されることなく、他の様々な変形が可能である。図1、3、5、7、9、11、13では、分かりやすくするため、拡張部を示していない。
【0032】
図1に示すように、本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセット1は、(物体が配置される)物体側2から像側3へ光軸4に沿って順に、第1のレンズ素子10と、第2のレンズ素子20と、第3のレンズ素子30と、第4のレンズ素子40と、第5のレンズ素子50と、フィルタ60と、像面71と、を備える。
一般的に、第1のレンズ素子10、第2のレンズ素子20、第3のレンズ素子30、第4のレンズ素子40、第5のレンズ素子50は、透明プラスチック材料で構成することができ、それぞれ適切な屈折力を有するが、ただし本発明はこれに限定されない。本発明の光学撮像レンズセット1では、屈折力を有するレンズ素子は5つのみである。光軸4は、光学撮像レンズセット1全体の光軸であり、各々のレンズ素子の光軸は、光学撮像レンズセット1の光軸と一致している。
【0033】
さらに、光学撮像レンズセット1は、適切な位置に配置された開口絞り80(ape.stop)を備える。図1では、開口絞り80は、第1のレンズ素子10の前面に配置されている。物体側2に配置された物体(図示せず)によって放射または反射された光が、本発明の光学撮像レンズセット1に入射すると、それは、開口絞り80、第1のレンズ素子10、第2のレンズ素子20、第3のレンズ素子30、第4のレンズ素子40、第5のレンズ素子50、フィルタ60を通過した後に、明瞭かつ鮮鋭な像を、像側3の像面71に形成する。
【0034】
本発明の実施形態において、オプションのフィルタ60は、種々の適切な機能のフィルタとすることができ、例えば、フィルタ60は、第5のレンズ素子50と像面71との間に配置される赤外線カットフィルタ(IRカットフィルタ)とすることができる。フィルタ60は、光学レンズ素子系すなわち本発明の光学撮像レンズセットの焦点距離に影響を与えることなく、ガラスで構成される。
【0035】
本発明の光学撮像レンズセット1における各々のレンズ素子は、物体側2に向いた物体側の面と、像側3に向いた像側の面とを有する。また、本発明の光学撮像レンズセット1におけるそれぞれの物体側の面および像側の面は、光軸4から離れたその周縁近傍の部分(周縁部)と、光軸4に近い光軸近傍の部分(光軸部)とを有する。
例えば、第1のレンズ素子10は、第1の物体側の面11と第1の像側の面12とを有し、第2のレンズ素子20は、第2の物体側の面21と第2の像側の面22とを有し、第3のレンズ素子30は、第3の物体側の面31と第3の像側の面32とを有し、第4のレンズ素子40は、第4の物体側の面41と第4の像側の面42とを有し、第5のレンズ素子50は、第5の物体側の面51と第5の像側の面52とを有する。
【0036】
さらに、本発明の光学撮像レンズセット1における各々のレンズ素子は、光軸4における中心厚Tを有する。例えば、第1のレンズ素子10は、第1のレンズ素子厚T1を有し、第2のレンズ素子20は、第2のレンズ素子厚T2を有し、第3のレンズ素子30は、第3のレンズ素子厚T3を有し、第4のレンズ素子40は、第4のレンズ素子厚T4を有し、第5のレンズ素子50は、第5のレンズ素子厚T5を有する。従って、光学撮像レンズセット1におけるすべてのレンズ素子の光軸4に沿った全厚は、Tal=T1+T2+T3+T4+T5である。
【0037】
また、本発明の光学撮像レンズセット1において、2つの隣接するレンズ素子間には、光軸4に沿って空隙Gが設けられている。例えば、第1のレンズ素子10と第2のレンズ素子20との間に空隙G12が配され、第2のレンズ素子20と第3のレンズ素子30との間に空隙G23が配され、第3のレンズ素子30と第4のレンズ素子40との間に空隙G34が配され、第4のレンズ素子40と第5のレンズ素子50との間に空隙G45が配されている。従って、第1のレンズ素子10から第5のレンズ素子50までの隣接するレンズ素子間の光軸4に沿った4つの空隙の総和は、Gaa=G12+G23+G34+G45である。
【0038】
第1の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第1の例を示す図1を参照する。第1の例の像面71における縦球面収差については、図2(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図2(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図2(C)を参照し、歪曲収差については、図2(D)を参照する。各例における球面収差のY軸は、1.0で表す「視野」である。各例における非点収差および歪曲収差のY軸は、「像高」を表す。像高は、3.085mmである。
【0039】
第1の例の光学撮像レンズセット1は、5つのレンズ素子10〜50を備え、それぞれはプラスチック材料で構成されており、屈折力を有する。光学撮像レンズセット1は、さらに、開口絞り80と、フィルタ60と、像面71とを備える。開口絞り80は、第1のレンズ素子10の前面に、すなわち第1のレンズ素子10の物体側2に設けられる。フィルタ60は、光に必然的に含まれる赤外線が像面に達して撮像品質に悪影響を及ぼすことを防ぐための赤外線フィルタ(IRカットフィルタ)とすることができる。
【0040】
第1のレンズ素子10は、正の屈折力を有する。物体側2に向いた第1の物体側の面11は凸面であり、像側3に向いた第1の像側の面12は、光軸近傍に凹部16(凹状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凸部17(凸状の周縁部)を有する。第1のレンズ素子10の第1の物体側の面11と第1の像側の面12は、どちらも非球面である。
【0041】
第2のレンズ素子20は、負の屈折力を有する。物体側2に向いた第2の物体側の面21は、光軸近傍に凸部23(凸状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凹部24(凹状の周縁部)を有する。像側3に向いた第2の像側の面22は、凹面であり、その周縁部近傍に凹部27(凹状の周縁部)を有する。また、第2のレンズ素子20の第2の物体側の面21と第2の像側の面22は、どちらも非球面である。
【0042】
第3のレンズ素子30は、正の屈折力を有し、物体側2に向いた第3の物体側の面31と、像側3に向いた第3の像側の面32とを有する。第3の物体側の面31は、光軸近傍に凸部33(凸状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凹部34(凹状の周縁部)を有する。第3の像側の面32は凸面である。また、第3のレンズ素子30の第3の物体側の面31と第3の像側の面32は、どちらも非球面である。
【0043】
第4のレンズ素子40は、正の屈折力を有する。物体側2に向いた第4の物体側の面41は凹面であり、像側3に向いた第4の像側の面42は凸面である。第4のレンズ素子40の第4の物体側の面41と第4の像側の面42は、どちらも非球面である。
【0044】
第5のレンズ素子50は、負の屈折力を有し、物体側2に向いた第5の物体側の面51と、像側3に向いた第5の像側の面52とを有する。第5の物体側の面51は、光軸近傍に凸部53(凸状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凸部54(凸状の周縁部)を有し、さらに光軸と周縁部との間に凹部55を有する。第5の像側の面52は、光軸近傍に凹部56(凹状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凸部57(凸状の周縁部)を有する。また、第5のレンズ素子50の第5の物体側の面51と第5の像側の面52は、どちらも非球面である。フィルタ60は、赤外線カットフィルタとすることができ、第5のレンズ素子50と像面71との間に配置される。
【0045】
本発明の光学撮像レンズセット1において、第1のレンズ素子10から第5のレンズ素子50までの物体側11/21/31/41/51と像側12/22/32/42/52の合わせて10面は、すべて非球面である。これらの非球面係数は、以下の式で定義される。
ここで、
Rは、レンズ素子面の曲率半径を表す。
Zは、非球面の深さ(光軸から距離Yにある非球面上の点と、非球面の光軸上の頂点における接平面と、の間の垂直距離)を表す。
Yは、非球面上の点から光軸までの垂直距離を表す。
Kは、円錐定数である。
2iは、2i次の非球面係数である。
【0046】
光学撮像レンズセット1の第1の例の光学データを図18に示しており、非球面データを図19に示している。以下の光学撮像レンズセットの例では、光学レンズ素子系全体のFナンバーはFnoであり、HFOVは、光学レンズ素子系全体の視野の半分である半視野を表し、また、曲率半径、厚さ、および焦点距離の単位は、ミリメートル(mm)である。光学撮像レンズセットの長さは、5.15mmである。像高は、3.085mmである。第1の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(Tal+Gaa)/(T3+T5)=2.75
al/T3=5.80
(T1+T3+T5)/T2=8.85
(T3+T5)/T4=2.99
23/(G34+G45)=1.21
(Tal+Gaa)/(T2+T4)=5.42
(G23+G34)/(G12+G45)=7.02
(T1+T5)/T4=3.52
2/(G12+G45)=1.94
3/T2=2.03
(T1+T3)/T2=5.09
(T1+T3+T5)/T4=4.57
23/(G12+G45)=4.08
(Tal+Gaa)/(T2+G45)=12.98
【0047】
第2の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第2の例を示す図3を参照する。第2の例の像面71における縦球面収差については、図4(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図4(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図4(C)を参照し、歪曲収差については、図4(D)を参照する。
第2の例は、第1の例と類似しているが、光学データが異なる。光学撮像レンズセットの第2の例の光学データを図20に示しており、非球面データを図21に示している。光学撮像レンズセットの長さは、5.15mmである。像高は、3.085mmである。第2の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(Tal+Gaa)/(T3+T5)=2.44
al/T3=4.51
(T1+T3+T5)/T2=11.09
(T3+T5)/T4=4.06
23/(G34+G45)=1.21
(Tal+Gaa)/(T2+T4)=6.46
(G23+G34)/(G12+G45)=5.19
(T1+T5)/T4=4.25
2/(G12+G45)=1.34
3/T2=3.10
(T1+T3)/T2=6.56
(T1+T3+T5)/T4=5.90
23/(G12+G45)=3.10
(Tal+Gaa)/(T2+G45)=13.66
【0048】
第3の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第3の例を示す図5を参照する。第3の例の像面71における縦球面収差については、図6(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図6(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図6(C)を参照し、歪曲収差については、図6(D)を参照する。
第3の例は、第1の例と類似しているが、光学データが異なる。光学撮像レンズセットの第3の例の光学データを図22に示しており、非球面データを図23に示している。光学撮像レンズセットの長さは、5.15mmである。像高は、3.185mmである。第3の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(Tal+Gaa)/(T3+T5)=2.66
al/T3=4.05
(T1+T3+T5)/T2=8.22
(T3+T5)/T4=3.79
23/(G34+G45)=1.21
(Tal+Gaa)/(T2+T4)=6.01
(G23+G34)/(G12+G45)=5.93
(T1+T5)/T4=3.76
2/(G12+G45)=1.64
3/T2=2.64
(T1+T3)/T2=5.25
(T1+T3+T5)/T4=5.55
23/(G12+G45)=3.43
(Tal+Gaa)/(T2+G45)=12.30
【0049】
第4の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第4の例を示す図7を参照する。第4の例の像面71における縦球面収差については、図8(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図8(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図8(C)を参照し、歪曲収差については、図8(D)を参照する。
第4の例は、第3のレンズ素子30の第3の物体側の面31が、その周縁部近傍に凹部34(凹状の周縁部)を有する凹面であり、第5の像側の面52が、光軸近傍に凹部56(凹状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凹部59(凹状の周縁部)を有し、さらに光軸と周縁部との間に凸部58を有すること以外は、第1の例と類似しているが、光学データが異なる。光学撮像レンズセットの第4の例の光学データを図24に示しており、非球面データを図25に示している。光学撮像レンズセットの長さは、5.23mmである。像高は、2.976mmである。第4の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(Tal+Gaa)/(T3+T5)=3.32
al/T3=4.20
(T1+T3+T5)/T2=6.31
(T3+T5)/T4=3.02
23/(G34+G45)=1.65
(Tal+Gaa)/(T2+T4)=5.57
(G23+G34)/(G12+G45)=4.75
(T1+T5)/T4=3.41
2/(G12+G45)=1.44
3/T2=2.04
(T1+T3)/T2=4.57
(T1+T3+T5)/T4=5.04
23/(G12+G45)=3.35
(Tal+Gaa)/(T2+G45)=8.73
【0050】
第5の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第5の例を示す図9を参照する。第5の例の像面71における縦球面収差については、図10(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図10(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図10(C)を参照し、歪曲収差については、図10(D)を参照する。
第5の例は、第1のレンズ素子10の第1の像側の面12が凸面であり、第2のレンズ素子20の第2の物体側の面21が凸面であり、第3のレンズ素子30の第3の物体側の面31が、その周縁部近傍に凹部34(凹状の周縁部)を有する凹面であり、第5のレンズ素子50の第5の像側の面52は、光軸近傍に凹部56(凹状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凹部59(凹状の周縁部)を有し、さらに光軸と周縁部との間に凸部58を有する。これらの点以外は、第1の例と類似しているが、光学データが異なる。光学撮像レンズセットの第5の例の光学データを図26に示しており、非球面データを図27に示している。光学撮像レンズセットの長さは、5.13mmである。像高は、2.968mmである。第5の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(Tal+Gaa)/(T3+T5)=3.78
al/T3=5.52
(T1+T3+T5)/T2=8.26
(T3+T5)/T4=2.49
23/(G34+G45)=1.28
(Tal+Gaa)/(T2+T4)=6.10
(G23+G34)/(G12+G45)=7.30
(T1+T5)/T4=3.41
2/(G12+G45)=1.34
3/T2=2.01
(T1+T3)/T2=5.71
(T1+T3+T5)/T4=4.51
23/(G12+G45)=4.32
(Tal+Gaa)/(T2+G45)=13.23
【0051】
第6の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第6の例を示す図11を参照する。第6の例の像面71における縦球面収差については、図12(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図12(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図12(C)を参照し、歪曲収差については、図12(D)を参照する。
第6の例は、第1のレンズ素子10の第1の像側の面12が凸面であり、第2のレンズ素子20の第2の物体側の面21が凸面であり、第3のレンズ素子30の第3の物体側の面31が、その周縁部近傍に凹部34(凹状の周縁部)を有する凹面であり、第4のレンズ素子40の第4の像側の面42は、光軸近傍に凸部46(凸状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凸部47(凸状の周縁部)を有し、さらに光軸と周縁部との間に凹部48を有し、第5のレンズ素子50の第5の像側の面52は、光軸近傍に凹部56(凹状の光軸部)を有するとともに、その周縁部近傍に凹部59(凹状の周縁部)を有し、さらに光軸と周縁部との間に凸部58を有する。これらの点以外は、第1の例と類似しているが、光学データが異なる。光学撮像レンズセットの第6の例の光学データを図28に示しており、非球面データを図29に示している。光学撮像レンズセットの長さは、5.14mmである。像高は、2.96mmである。第6の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(Tal+Gaa)/(T3+T5)=3.69
al/T3=5.52
(T1+T3+T5)/T2=8.26
(T3+T5)/T4=2.49
23/(G34+G45)=2.23
(Tal+Gaa)/(T2+T4)=5.95
(G23+G34)/(G12+G45)=6.73
(T1+T5)/T4=3.41
2/(G12+G45)=1.34
3/T2=2.01
(T1+T3)/T2=5.71
(T1+T3+T5)/T4=4.51
23/(G12+G45)=5.12
(Tal+Gaa)/(T2+G45)=11.21
【0052】
第7の例
本発明の光学撮像レンズセット1の第7の例を示す図13を参照する。第7の例の像面71における縦球面収差については、図14(A)を参照する。サジタル方向の非点収差については、図14(B)を参照する。タンジェンシャル方向の非点収差については、図14(C)を参照し、歪曲収差については、図14(D)を参照する。
第7の例は、第5のレンズ素子50の第5の物体側の面51が、その周縁部近傍に凹部54’(凹状の周縁部)を有すること以外は、第1の例と類似しているが、光学データが異なる。光学撮像レンズセットの第7の例の光学データを図30に示しており、非球面データを図31に示している。光学撮像レンズセットの長さは、5.15mmである。像高は、3.085mmである。第7の例のいくつかの重要な比率は、以下の通りである。
(Tal+Gaa)/(T3+T5)=3.11
al/T3=5.06
(T1+T3+T5)/T2=7.74
(T3+T5)/T4=2.50
23/(G34+G45)=1.20
(Tal+Gaa)/(T2+T4)=5.16
(G23+G34)/(G12+G45)=3.53
(T1+T5)/T4=2.84
2/(G12+G45)=0.98
3/T2=2.12
(T1+T3)/T2=4.92
(T1+T3+T5)/T4=3.92
23/(G12+G45)=2.32
(Tal+Gaa)/(T2+G45)=8.88
【0053】
各例のいくつかの重要な比率を、図32に示している。
【0054】
上記の例によって、本発明者らは、以下の特徴を観測している。
1)第1のレンズ素子の前面に配置された開口絞りと、第1のレンズ素子の正の屈折力とによって、本発明の5つのレンズ素子の光学撮像レンズセット全体の集光力が高まり、これにより、撮像レンズセットの系の長さが効果的に短縮される。さらには、第3のレンズ素子の正の屈折力によって、第1のレンズ素子の正の屈折力の負担が軽減されることで、撮像レンズセットの製造感度が低減する。
2)第2のレンズ素子の第2の像側の面と、第3のレンズ素子の第3の物体側の面と、その周縁部に凹部を有する第4のレンズ素子の第4の物体側の面と、その周縁部に凸部を有する第3のレンズ素子の第3の像側の面との協働によって、収差が最小限とされることで、辺縁部の撮像品質が確保される。
3)第3の像側の面は凸状の光軸部を有し、第4の物体側の面は凹状の光軸部を有し、第5の像側の面は凹状の光軸部を有する。これらが協働することで、収差を除去する助けとなり得る。第1の像側の面が凹状の光軸部を有する場合は、さらに望ましい。
【0055】
さらに、本発明者らは、上記のいくつかの重要な比率による様々に異なるデータについて、いくつかの、より望ましい比率の範囲があることを発見している。より望ましい比率範囲は、設計者が、より良好な光学性能で、かつ長さが効果的に縮小された、実際に可能な光学撮像レンズセットを設計する際の助けとなる。例えば、
1.(Tal+Gaa)/(T3+T5)は、4.0以下であるべきである。TalおよびGaaが小さいほど、光学撮像レンズセットの全長は短くなる。しかしながら、第3のレンズ素子は正の屈折力を有し、第5のレンズ素子の光学有効半径は比較的大きいので、これらを縮小化することは容易ではない。この関係は、Tal、Gaa、T3、T5を、より望ましい範囲とする助けとなる。(Tal+Gaa)/(T3+T5)は、1〜4であることが推奨される。
2.Tal/T3は、5.8以下であるべきである。Talは、光学撮像レンズセットにおけるすべてのレンズ素子の光軸に沿った全厚であり、これが小さいほど、光学撮像レンズセットのサイズは効果的に縮小されやすい。しかしながら、第3のレンズ素子は正の屈折力を有し、このため、これを相対的に小さくすることは難しい。この関係は、全長を短縮するために、TalおよびT3を、より望ましい範囲とする助けとなる。その範囲は、2〜5.8であることが推奨される。
3.(T1+T3+T5)/T2は、5.6以上であるべきである。第1と第3のレンズ素子はどちらも正の屈折力を有し、第5のレンズ素子の光学有効半径は比較的大きいので、第2のレンズ素子を、第1、第3、第5のレンズ素子に対して相対的に薄くすることができる。この関係によって、より望ましい構成が得られる。その範囲は、5.6〜13であることが推奨される。
4.(T3+T5)/T4は、2.45以上であるべきである。第3のレンズ素子は正の屈折力を有し、第5のレンズ素子の光学有効半径は比較的大きいので、第4のレンズ素子を、第3および第5のレンズ素子に対して相対的に薄くすることができる。その範囲は、2.45〜5.5であることが推奨される。
5.G23/(G34+G45)は、1.2以上であるべきである。第2の像側の面は凹状の周縁部を有し、このため、光が次のレンズ素子に適切な位置で入射することを可能として撮像品質を確保するためには、十分な空隙が必要であり、従って、G23は、G34またはG45と比較して、縮小可能性が小さい。この関係は、短縮された光学撮像レンズセットの、より望ましい構成を提案するものである。その範囲は、1.20〜3.00であることが推奨される。
6.(Tal+Gaa)/(T2+T4)は、5.00以上であるべきである。第1と第3のレンズ素子はどちらも正の屈折力を有し、第5のレンズ素子の光学有効半径は最も大きいので、これら3つのレンズ素子は比較的厚くなり、相対的に薄くすることはより困難である。光学撮像レンズセットを短縮する場合に、T2およびT4は、縮小化における制限がより少なく、相対的に薄くすることができる。製造について考慮すると、これにより、Gaaは制限される。この関係は、短縮された光学撮像レンズセットについて、Tal、Gaa、T2、T4の、より望ましい構成を提案するものである。その範囲は、5.00〜7.00であることが推奨される。
7.(G23+G34)/(G12+G45)は、3.30以上であるべきである。光路および製造について考慮した場合に、この関係は、レンズ素子の空隙の、より望ましい構成を提案している。その範囲は、3.30〜9.00であることが推奨される。
8.(T1+T5)/T4は、2.60以上であるべきである。第1のレンズ素子は正の屈折力を有し、第5のレンズ素子の光学有効半径は比較的大きいので、第1と第5のレンズ素子は、第4のレンズ素子と比較して、厚くなり得る。この関係は、短縮された光学撮像レンズセットの、より望ましい構成を提案するものである。その範囲は、2.60〜6.00であることが推奨される。
9.T2/(G12+G45)は、1.30以上であるべきである。光路および製造について考慮した場合に、この関係は、T2、G12、G45について、より望ましい構成を提案している。その範囲は、1.30〜3.00であることが推奨される。
10.T3/T2は、2.00以上であるべきである。第3のレンズ素子は正の屈折力を有し、第2のレンズ素子よりも厚くなり得るので、この関係は、より望ましい構成を提案するものである。その範囲は、2.00〜5.00であることが推奨される。
11.(T1+T3)/T2は、4.30以上であるべきである。第1と第3のレンズ素子はどちらも正の屈折力を有し、第2のレンズ素子よりも厚くなり得るので、この関係は、より望ましい構成を提案するものである。その範囲は、4.30〜8.00であることが推奨される。
12.(T1+T3+T5)/T4は、3.80以上であるべきである。第1と第3のレンズ素子はどちらも正の屈折力を有し、第5のレンズ素子の光学有効半径は比較的大きいので、これらは、第4のレンズ素子と比較して厚くなり得る。この関係は、より望ましい構成を提案するものである。その範囲は、3.80〜7.00であることが推奨される。
13.G23/(G12+G45)は、2.30以上であるべきである。第2の像側の面は凹状の周縁部を有し、このため、光が次のレンズ素子に適切な位置で入射することを可能として撮像品質を確保するためには、十分な空隙が必要であり、従って、G23は、縮小可能性が小さい。この関係は、より望ましい構成を提案するものである。その範囲は、2.30〜7.00であることが推奨される。
14.(Tal+Gaa)/(T2+G45)は、8.70以上であるべきである。この関係によって、T2およびG45は、より縮小される。その範囲は、8.70〜15.00であることが推奨される。
【0056】
本発明の光学撮像レンズセット1は、携帯型電子機器に適用することができる。図16を参照する。図16は、携帯型電子機器100で使用される本発明の光学撮像レンズセット1の第1の好ましい例を示している。携帯型電子機器100は、ケース110と、ケース110に取り付けられた撮像モジュール120と、を備える。図16では、一例として携帯電話機を示しているが、携帯型電子機器100は、携帯電話機に限定されない。
【0057】
図16に示すように、撮像モジュール120は、上記のような光学撮像レンズセット1を備える。図16では、前述の第1の例の光学撮像レンズセット1を示している。さらに、携帯型電子機器100は、光学撮像レンズセット1を取り付けるための鏡筒130と、鏡筒130を取り付けるためのモジュール収容ユニット140と、モジュール収容ユニット140を取り付けるための基板172と、光学撮像レンズセット1の像側3で基板172に配置される撮像センサ70と、を収容している。光学撮像レンズセット1における撮像センサ70は、電荷結合素子または相補型金属酸化膜半導体素子などの受光素子とすることができる。像面71は、撮像センサ70に形成される。
【0058】
本例で用いる撮像センサ70は、従来のチップ・スケール・パッケージ(CSP:Chip Scale Package)製品ではなく、チップ・オン・ボード(COB:Chip On Board)パッケージ製品であり、従って、基板172に直接装着されており、光学撮像レンズセット1において撮像センサ70の前面に保護ガラスを必要としない。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0059】
特に留意されるべきことは、オプションのフィルタ60を本例では設けているが、他の例では、オプションのフィルタ60を省くことができるということである。ケース110、鏡筒130、および/またはモジュール収容ユニット140は、単一の要素とするか、または複数の要素で構成することができるが、ただし、本発明はこれに限定されない。
【0060】
屈折力を有する5つのレンズ素子10、20、30、40、50の各々は、例示のようにして、2つの隣接するレンズ素子間に空隙を配して、鏡筒130内に取り付けられる。モジュール収容ユニット140は、レンズ素子ハウジング141と、このレンズ素子ハウジング141と撮像センサ70との間に設けられる撮像センサハウジング146と、を含んでいる。ただし、他の例では、撮像センサハウジング146はオプションである。鏡筒130は、軸I‐I’に沿ってレンズ素子ハウジング141と同軸状に配置され、鏡筒130はレンズ素子ハウジング141の内部に設けられる。
【0061】
本発明の光学撮像レンズセット1は、5.15mmほどに短縮され得るので、この理想的な長さによって、携帯型電子機器100の寸法ならびにサイズの小型化および軽量化を可能にしながら、依然として優れた光学性能および像品質が可能である。このように、本発明の種々の例は、小型化および軽量化する製品設計の傾向および消費者需要に応えるだけではなく、使用原料の削減による経済的利益の要求に応えるものである。
【0062】
さらに、第2の好ましい例での、携帯型電子機器200における前述の光学撮像レンズセット1の別の適用について、図17を参照する。第2の好ましい例における携帯型電子機器200と、第1の好ましい例における携帯型電子機器100との主な違いは、レンズ素子ハウジング141が、第1の台座要素142と、第2の台座要素143と、コイル144と、磁性部品145と、を含むことである。第1の台座要素142は、鏡筒130を取り付けるためのものであり、鏡筒130の外側に装着されて、軸I‐I’に沿って配置される。第2の台座要素143は、軸I‐I’に沿って配置されて、第1の台座要素142の外側を取り囲む。コイル144は、第1の台座要素142の外側と第2の台座要素143の内側との間に設けられる。磁性部品145は、コイル144の外側と第2の台座要素143の内側との間に配置される。
【0063】
第1の台座要素142は、鏡筒130と、鏡筒130の内部に配置された光学撮像レンズセット1とを、軸I‐I’すなわち図1の光軸4に沿って動かすように引っ張ることができる。撮像センサハウジング146は、第2の台座要素143に装着されている。赤外線フィルタなどのフィルタ60は、撮像センサハウジング146に取り付けられる。第2の好ましい例における携帯型電子機器200の他の細部は、第1の好ましい例における携帯型電子機器100のものと同様であり、従って、それらについての詳述は繰り返さない。
【0064】
本発明の教示を守りつつ、装置ならびに方法の様々な変形および変更を実施することができることは、当業者であれば容易に認められるであろう。従って、上記開示は、添付の請求項の限界および範囲によってのみ限定されるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32