特許第5960775号(P5960775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960775
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】立体シート及び立体シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20160719BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20160719BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   A61F13/15 340
   A61F13/15 352
   A61F13/15 353
   A61F13/15 355B
   A61F13/511 100
   A61F13/512 200
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-229817(P2014-229817)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-142721(P2015-142721A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-272094(P2013-272094)
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100155206
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 源一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 純
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−175689(JP,A)
【文献】 特開平8−246232(JP,A)
【文献】 特開平10−80445(JP,A)
【文献】 特開2009−89965(JP,A)
【文献】 特開2009−201964(JP,A)
【文献】 特開2004−329510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 〜 13/84
A61L 15/16 〜 15/64
B32B 5/12
D04H 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された第1不織布及び第2不織布が部分的に熱融着されてシート形成用融着部が形成され、該第1不織布が、該シート形成用融着部で囲まれた非融着部において該第2不織布から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部を多数形成している立体シートであって、
前記第1不織布及び前記第2不織布は、長繊維からなるウェブを熱融着部により固定した不織布であり、
前記長繊維は、溶融した単一樹脂からなる熱可塑性樹脂を均一に紡糸して形成された単層繊維であり、
前記シート形成用融着部は、その輪郭よりも内側に、該輪郭の形状に相似する形状の外周縁を有する貫通孔を備え、該シート形成用融着部における前記輪郭と該貫通孔の外周縁との間の部分で、前記第1不織布及び前記第2不織布が接合されており、
前記立体シートにおいては、前記シート形成用融着部における輪郭と前記貫通孔の外周縁との間の部分Pで、前記第1不織布及び前記第2不織布が接合されており、前記部分Pのうち、前記貫通孔の外周縁側の内縁部Qにおいては、断面視して、前記第1不織布及び前記第2不織布を構成する長繊維の繊維形状が存在していない状態となっており、
前記部分Pにおける内縁部Qにおいては、繊維形状が存在せずフィルム化した状態となっており、
前記部分Pのうち、前記貫通孔から離れた部位Rにおいては、断面視して、前記第1不織布及び前記第2不織布を構成する長繊維の繊維形状が存在し、完全にはフィルム化していない状態であり、該部分Pのフィルム化の程度は、前記貫通孔の中心から、同心円状に離れた部位ほど、その程度は小さくなる立体シート。
【請求項2】
前記第1不織布及び前記第2不織布は、構成する前記熱可塑性樹脂が同一である請求項1に記載の立体シート。
【請求項3】
前記シート形成用融着部における輪郭と前記貫通孔の外周縁との間の前記部分Pは、該部分Pを厚み方向に沿って断面視したとき、第1不織布及び第2不織布を構成する長繊維の繊維間距離が、内縁部Q側から外縁部R側に向かって漸次広くなっており、グラデーション的な構造を形成している請求項1又は2に記載の立体シート。
【請求項4】
前記第1不織布と前記第2不織布との剥離強度は、0.2N/30mm以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の立体シート。
【請求項5】
前記シート形成用融着部の輪郭と前記貫通孔の外周縁との間の部分における該外周縁側の内縁部には、断面視して前記長繊維の繊維形状が存在していない請求項1〜4の何れか一項に記載の立体シート。
【請求項6】
前記第2不織布は、その親水度が、前記第1不織布の親水度よりも高い請求項1〜5の何れか一項に記載の立体シート。
【請求項7】
前記第2不織布は、その坪量が、前記第1不織布の坪量よりも高く、該第1不織布の坪量は、8g/m以上である請求項1〜6の何れか一項に記載の立体シート。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の立体シートを、前記第1不織布側が着用者の肌側を向くようにして吸収性物品の表面シートとして用いた吸収性物品。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載の立体シートの製造方法であって、
前記第1不織布の原反から前記第1不織布を繰り出し、これとは別に、前記第2不織布の原反から前記第2不織布を繰り出し、そして、繰り出された該第1不織布を、第1ロールと第2ロールとの噛み合わせ部に噛み込ませて該第1不織布を凹凸賦形し、次いで、該第1不織布を前記第1ロールの周面に引き続き吸引保持した状態下に、該第2不織布を重ね合わせ、その重ね合わせたものを、第1ロールと周面平滑な第1ヒートロールとの間で挟圧し、このとき該第1ロールと該第1ヒートロールの両方又は該第1ヒートロールのみを加熱しておき、次いで、熱融着によって接合された前記第1不織布及び前記第2不織布の重ね合わせたものを、前記第1ロールの周面に引き続き吸引保持した状態下で移動させ、該重ね合わせたものを、該第1ロールと周面平滑な第2ヒートロールとの間で挟圧し、このときの該第1ロールと該第2ヒートロールの両方又は該第2ヒートロールのみを加熱しておき、該第1ロールにおける凸部上である各歯車の歯の上に位置する前記シート形成用融着部において、更に前記第1不織布及び前記第2不織布を構成していた熱可塑性樹脂を溶融し、溶融した樹脂が該凸部の周囲に移動して前記貫通孔を形成してなる立体シートの製造方法であって、
前記第1ロールと上流側の前記第1ヒートロールとで前記シート形成用融着部を形成し、その後、該第1ロールと下流側の前記第2ヒートロールとで、前記貫通孔を形成する、立体シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部が中空の凸部を多数形成している立体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートとして用い得る立体シートとして、第1不織布と第2不織布とが部分的に熱融着されて接合部が形成され、第1不織布が、該接合部に囲まれた非接合部において第2不織布から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部を多数形成している立体シートを開示した(特許文献1,2参照)
【0003】
【特許文献1】特開2009−201964号公報
【特許文献2】特開2006−175689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の立体シートは、互いに積層された第1不織布及び第2不織布が部分的に配された接合部で固定して形成されているので、単層の立体シートに比べ、例えば吸収性物品の表面シートとして用いたときに、着用時に中空の凸部が潰れ難くなっている。また、着用時における肌との接触面積が抑えられ、液戻りを低減し、赤みやかぶれを低減することが期待できる。また、軟便の拡がりを抑制し、便の肌への付着を低減することが期待できる。
【0005】
しかし、液戻りを更に低減し、赤みやかぶれを更に低減させたいとのニーズがあった。また、軟便の拡がりを更に抑制し、便の肌への付着を更に低減させたいとのニーズがあった。
【0006】
特許文献2に記載の立体シートは、第1不織布と第2不織布とを接合する接合部に開孔を有しているので、特許文献1に記載の立体シートに比べ、例えば吸収性物品の表面シートとして用いたときに、液残りが低減し、液戻りを更に低減し、赤みやかぶれを更に低減することが期待できる。また、軟便の拡がりを更に抑制し、便の肌への付着を更に低減することが期待できる。
【0007】
しかし、特許文献2に記載の立体シートは、開孔を有する接合部にて接合強度が発現し難く、使用時に第1不織布と第2不織布とが剥がれてしまう場合があり、更に改善の余地があった。
【0008】
したがって本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る立体シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、互いに積層された第1不織布及び第2不織布が部分的に熱融着されてシート形成用融着部が形成され、該第1不織布が、該シート形成用融着部で囲まれた非融着部において該第2不織布から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部を多数形成している立体シートであって、前記第1不織布及び前記第2不織布は、長繊維からなるウェブを熱融着部により固定した不織布であり、前記長繊維は、溶融した熱可塑性樹脂を均一に紡糸して形成された単層繊維であり、前記シート形成用融着部は、その輪郭よりも内側に、該輪郭の形状に相似する形状の外周縁を有する貫通孔を備え、該シート形成用融着部における前記輪郭と該貫通孔の外周縁との間の部分で、前記第1不織布及び前記第2不織布が接合されている立体シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用時に積層間が剥がれ難く、着用時に中空の凸部が潰れ難く、液戻りを更に低減し、赤みやかぶれを更に低減することが期待できる。また、軟便の拡がりを更に抑制し、便の肌への付着を更に低減することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の立体シートの一実施形態の要部を拡大して示す斜視図である。
図2図2は、図1におけるII−II線断面図である。
図3図3は、同一の単一樹脂の熱可塑性樹脂から構成された2枚の不織布を部分的に融着させた場合のシール強度とシール面積率との関係を示すグラフである。
図4図4は、図3のシール強度とシール面積率との関係を求めるための測定サンプルの作製方法と、作製された測定サンプルを用いてシール強度を測定する方法を説明するための図である。
図5図5は、芯鞘構造の長繊維から構成された2枚の不織布を部分的に融着させた場合のシール強度とシール面積率との関係を示すグラフである。
図6図6は、図1に示す立体シートを製造するために好適に用いられる製造装置を示す模式図である。
図7図7は、図6に示す製造装置における第1ロールと第2ヒートロールとを用いて、シート形成用融着部に貫通孔を形成する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1図2には、本発明の立体シートの一実施形態が示されている。図1は、立体シートの要部を一部断面により模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示すII−II線断面図である。本実施形態の立体シート10は、互いに積層された第1不織布1及び第2不織布2が部分的に熱融着されてシート形成用融着部3が形成され、第1不織布1が、シート形成用融着部3で囲まれた非融着部において第2不織布2から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部4を多数形成している立体シートである。第1不織布1と第2不織布2とは部分的に熱融着されており、それにより多数のシート形成用融着部3が形成されている。第1不織布1は、シート形成用融着部3以外の部分において、第2不織布2側とは反対向きに突出して、内部空洞の多数の凸部4を形成している。このように、立体シート10は、第2不織布2側の面がほぼ平坦であり、第1不織布1側に起伏の大きな凹凸が形成されている。第1不織布1側の凸部4は、立体シート10を、例えば、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、着用者の肌側に向く方向に突出する方向に配置する。
【0013】
立体シート10は、長手方向X及びこれと直交する幅方向Yを有している。本実施形態の立体シート10においては、立体シート10の長手方向Xが、第1シート基材11及び第2シート基材12の構成繊維の主な配向方向を見て、該繊維の配向方向に沿うMD方向に一致しており、立体シート10の幅方向Yが、MD方向に直交するCD方向に一致している。また、MD方向(X方向)は、立体シート10を製造するときの搬送方向でもある。
【0014】
非融着部である凸部4は、周囲を、相互に離間した複数のシート形成用融着部3によって囲まれており、図1に示す立体シート10においては、4個のシート形成用融着部3によって周囲を囲まれている。尚、凸部4を囲むシート形成用融着部3の数は、4個に限られず、例えば、2個、3個、5個、6個、或いは7個以上とすることもできる。凸部4を囲むシート形成用融着部3の数は、好ましくは4個以上であり、更に好ましくは5個以上であり、また、より好ましくは8個以下であり、更に好ましくは6個以下である。
【0015】
凸部4の配置について、詳述すると、凸部4は、図1に示すように、長手方向Xに、一定の間隔を空けて一列をなすように配置されており、このような列が幅方向Yに、多列に形成されている。また、凸部4は、幅方向Yにも、一定の間隔を空けて一列をなすように配置されており、このような列が長手方向Xに、多列に形成されている。本実施形態の立体シート10においては、長手方向Xに延びる一つの列に着目すると、該列を構成する凸部4と、該列に幅方向Yに隣り合う別の列を構成する凸部4とが、半ピッチずれて配されている。また、幅手方向Yに延びる一つの列に着目すると、該列を構成する凸部4と、該列に長手方向Xに隣り合う別の列を構成する凸部4とが、半ピッチずれて配されている。
【0016】
内部が中空の各凸部4は、それぞれが別個に独立して存在しているのではなく、任意の一つの凸部4に着目したとき、該凸部4の全周囲にて隣接する凸部4と連結している。凸部4どうしの連結部5の高さは、凸部4の頂部の高さよりも低くなっている。しかし、連結部5の頂部は、シート形成用融着部3よりは高い位置にある。一方、シート形成用融着部3は、立体シート10の凹凸構造の各凹部の中心に位置しており、各凹部は、それぞれが別個に独立して存在している。
【0017】
各凸部4の断面形状としては、全体として稜線が滑らかに丸みを帯びた、ドーム状の形状、扁平な直方体、或いは截頭四角錐体等であることが好ましく、本実施形態の立体シート10においては、図1に示すように、丸みを帯びたドーム状の形状となっている。
【0018】
各シート形成用融着部3を平面視した形状としては、円形状、矩形状、トラック形状、正多角形状等であることが好ましく、本実施形態の立体シート10においては、図1に示すように、円形状となっている。
【0019】
立体シート10においては、シート形成用融着部3は、図1図2に示すように、その輪郭31よりも内側に、該輪郭31の形状に相似する形状の外周縁61を有する貫通孔6を備えている。各貫通孔6は、各シート形成用融着部3の内側に1個、第1不織布1及び第2不織布2を貫通して形成されている。各貫通孔6を平面視した形状としては、シート形成用融着部3の形状を一様に縮小した相似形状であり、本実施形態の立体シート10においては、図1に示すように、円形状となっている。
【0020】
立体シート10は、シート形成用融着部3の内側に貫通孔6を備えているので、図2に示すように、立体シート10においては、シート形成用融着部3における輪郭31と貫通孔6の外周縁61との間の部分Pで、第1不織布1及び第2不織布2が接合されている。前記部分Pにおける貫通孔6の外周縁61側の内縁部Qには、断面視して、後述する第1不織布1及び第2不織布2を構成する長繊維の繊維形状が存在していない状態となっている。具体的には、前記部分Pは、図2に示すように、シート形成用融着部3の輪郭31と貫通孔6の外周縁61との間の幅のある部分であり環状に形成されている。このような環状の前記部分Pは、貫通孔6の外周縁61側の内縁部Qと、シート形成用融着部3の輪郭31側の外縁部Rとを有している。そして、前記部分Pにおける内縁部Qにおいては、長繊維が均一に溶融し、もはや繊維形状が存在せずフィルム化した状態となっている。また、前記部分Pにおける外縁部Rにおいては、断面視して、第1不織布1及び第2不織布2を構成する長繊維の繊維形状が存在する状態、すなわち完全にはフィルム化していない状態になっている。環状の前記部分Pのフィルム化の程度は、内縁部Q側から外縁部R側に向かって、同心円状に離れた部位ほど、その程度は小さくなる。すなわち、環状の前記部分Pは、断面視して、第1不織布1及び第2不織布2を構成する長繊維の繊維間距離が、内縁部Q側から外縁部R側に向かって、漸次広くなっており、グラデーション的な構造を形成している。グラデーション的な構造を形成しているか否かは次の方法で判断する。立体シート10のサンプルを液体窒素に浸漬し、十分に凍結させる。また市販のカミソリを同様に液体窒素に十分に浸漬する。外縁部R近傍の部位、及び内縁部Q近傍の部位を、前記カミソリを用いて厚み方向に沿って切断する。その際、切断面の形状がカミソリによる切断の影響を受けなくすことを目的で、カミソリの刃と反対面をハンマー等で叩き、瞬時に切断する。切断面を電子顕微鏡で観察し、それらの部位の厚みを測定する。内縁部Q近傍の厚みと、外縁部R近傍の厚みを比べ、外縁部R近傍の厚み>内縁部Q近傍の厚みとなっていた場合、「グラデーション的な構造を形成している」と判断する。
【0021】
第1不織布1及び第2不織布2は、長繊維からなるウェブを熱融着部により固定した不織布であり、該不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布等が用いられる。
【0022】
第1不織布1及び第2不織布2を構成する長繊維は、溶融した熱可塑性樹脂を均一に紡糸して形成された単層繊維である。ここで、「単層繊維」とは、同芯型若しくは偏芯型の芯鞘型の繊維、又はサイド・バイ・サイド型の繊維を含まず、紡糸して形成された繊維が均一な一層構造の繊維であることを意味する。上記長繊維の繊維径は、好ましくは0.5dtex以上、更に好ましくは0.8dtex以上であり、5.0dtex以下、特に好ましくは4.0dtex以下である。
【0023】
第1不織布1及び第2不織布2を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ビニル系樹脂、ビニリデン系樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としてはナイロン等が挙げられる。ビニル系樹脂としてはポリ塩化ビニル等が挙げられる。ビニリデン系樹脂としてはポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。また、これら各種樹脂の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることもでき、これら各種樹脂の変成物を用いることもできる。更に、これら各種樹脂としては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーの何れか1種以上を50〜100質量%含んだ樹脂であることが好ましい。また、これらホモポリマー、ランダムコポリマー、或いはブロックコポリマーを混合した樹脂でもよい。尚、第1不織布1と第2不織布2との剥離強度向上の観点からは、第1不織布1及び第2不織布2は、構成する熱可塑性樹脂が同一であることが好ましい。
【0024】
更に、第1不織布1と第2不織布2との剥離強度が実使用に耐え得る強度を得る観点からは、第1不織布1及び第2不織布2を構成する熱可塑性樹脂が、単一樹脂であることが好ましい。ここで、単一樹脂としては、ホモポリマーからなるポリエチレン樹脂、ホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂、或いはホモポリマーからなるポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられ、紡糸性の観点から、ホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂が好ましい。上記観点は、本発明者が、第1不織布1及び第2不織布2を構成する熱可塑性樹脂が同一の単一樹脂であれば、第1不織布1と第2不織布2との剥離強度が、シール面積によらずに一定の強度が得られることを見出したことにより証明される。
【0025】
図3には、同一の単一樹脂の熱可塑性樹脂から構成された第1不織布1及び第2不織布2を部分的に融着させた場合のシール強度とシール面積率との関係がプロットされている。具体的には、図4(a)に示すように、長手方向Xに200mm幅方向Yに50mmの第1不織布1及び第2不織布2を用意し、それらを重ね合わせ、重ね合わせたサンプルの中央部Cに、長手方向Xに30mm、シール幅2mmの熱融着シール線32を幅方向Yに一定の間隔(ピッチ)を空けて複数本配して接着(シール)し、測定サンプルSを作製する。このような測定サンプルSを、熱融着シール線の幅方向Yの間隔(ピッチ)を種々変更して作製し、シール面積率の異なる測定サンプルを複数個作製する。次いで、図4(b)に示すように、作製された各測定サンプルSの接着(シール)強度を、X方向が引張方向となるように、引張試験機(例えば、オリエンテック社製テンシロン引張り試験機「RTA−100」)のチャック(チャック間10mm)に取り付け、引張速度300mm/minで引っ張り、測定サンプル破断までの最大荷重点(シール強度)を測定する。このようにして測定されたシール強度とシール面積率との関係をプロットしたものが図3である。また、図5には、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリエチレン樹脂から構成された芯鞘構造の長繊維から構成された第1不織布及び第2不織布を部分的に融着させた場合のシール強度とシール面積率との関係がプロットされている。尚、図5の測定には、図3と同様に測定サンプルを作製してシール強度を測定している。
【0026】
一般的には、図5に示すように、シール面積率の増加と共にシール強度も増加する。このような現象が起こる原因について考察する。芯鞘構造を有する不織布に熱融着(シール)を施すと、融着(シール)された部位においてフィルム化が生じるが、その断面には芯を形成する高融点の繊維がその繊維形状を維持したまま存在するため、融着(シール)部を構成する、それぞれの第1不織布及び第2不織布は、融着(シール)部において熱によるダメージが小さく、図4に示す剥離を行った際、第1不織布と第2不織布の境界面にて剥離が生じ、その結果、シール面積に比例して剥離強度が増大するものと思われる。しかしながら、本発明者は、図3に示すように、同一の単一樹脂の熱可塑性樹脂から構成された第1不織布1及び第2不織布2を融着させた場合は、図3に示すように、シール強度がシール面積率によらず略一定となることを見出した。このような現象が起こる原因について考察すると、同一の単一樹脂からなる繊維であるが故に、融着(シール)部において、もはや繊維構造を保つことが不可能と思われ、融着(シール)部を構成する第1不織布及び第2不織布は、融着(シール)部において熱による影響を大きく受けると考えられる。一般的にこのように熱による影響を大きく受けると、図4に示す剥離を行うと、ダメージを受けていたシール部が直ぐに損壊し、シール強度は発現しない(極めて弱くなる)と思われるが、本発明者は、融着(シール)部である、シート形成用融着部3の輪郭31と貫通孔6の外周縁61との間の前記部分Pのように、幅のある部分の場合、シート形成用融着部3の輪郭31側の外縁部R側には、融着(シール)時に熱の影響を受けた弱融着部が形成され、貫通孔6の外周縁61側の内縁部Q側には、長繊維が溶融して繊維形状が存在しないフィルム化した融着部が形成されていることを見出した。また、本発明者は、外縁部R側の弱融着部においては、長繊維の繊維形状が消失することなく繊維どうしが部分的に融着しており、剥離の際には、まず該部位を起点として前記部分Pの融着自体の破壊が生じ、それに引き続き、第1不織布及び第2不織布の破壊が生じることを見出した。よって、単一樹脂の熱可塑性樹脂から構成された第1不織布1及び第2不織布2を融着させた場合の剥離強度は、その融着(シール)部の剥離強度ではなく、融着(シール)部を構成するそれぞれの不織布の破断強度相当となるため、シール面積によらず、その強度は略一定になったと考えられる。
従って、第1不織布1及び第2不織布2を構成する熱可塑性樹脂が、同一の単一樹脂であれば、シール面積によらずに一定の強度が得られ、シート形成用融着部3の輪郭31と貫通孔6の外周縁61との間の部分Pだけで第1不織布1及び第2不織布2が接合されていたとしても、実使用に耐え得る、第1不織布1及び第2不織布2の剥離強度が得られることが推測される。以上のことから、第1不織布1及び第2不織布2として、単一樹脂であるホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂を用いて形成されたスパンボンド不織布を使用することが最も好ましい。
【0027】
次に、本実施形態の立体シート10の製造方法を図6図7を参照しながら説明する。
立体シート10の製造方法は、周面が凹凸形状となっている第1ロール11と第1ロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロール12との噛み合わせ部に噛み込ませて第1不織布1を凹凸賦形する賦形工程と、該賦形工程の後、第2不織布2を、第1ロール11における凸部11a上に位置する第1不織布1と、第1ヒートロール13及び第2ヒートロール14により接合してシート形成用融着部3を形成して該シート形成用融着部3内に貫通孔6を形成する融着開孔工程とを備えている。第1ロール11に対して、第2ロール12、第1ヒートロール13及び第2ヒートロール14は、対向配置されており、第1ロール11の回転方向Rの上流側から下流側に向かって第1ロール11の周面に対して、その順に配置されている。周面が凹凸形状となっている第1ロール11及び第2ロール12に関しては、例えば、本出願人の先願の特開2004−174234号公報に記載のもの等を用いることができる。第1ヒートロール13及び第2ヒートロール14は、それぞれ周面に凹凸を有していないフラットなアンビルロールである。
【0028】
まず、第1不織布1の原反(不図示)から第1不織布1を繰り出す。また、これとは別に、第2不織布2の原反(不図示)から第2不織布2を繰り出す。そして、図6に示すように、繰り出された第1不織布1を、第1ロールと第2ロール12との噛み合わせ部に噛み込ませて第1不織布1を凹凸賦形する。
【0029】
次いで、図6に示すように、第1不織布1を第1ロール11の周面に引き続き吸引保持した状態下に、第2不織布2を重ね合わせ、その重ね合わせたものを、第1ロール11と周面平滑な第1ヒートロール13との間で挟圧する。このとき、第1ロール11と第1ヒートロール13の両方又は第1ヒートロール13のみを所定温度に加熱しておく。これによって、第1ロール11における凸部11a上に、つまり各歯車の歯の上に位置する第1不織布1と第2不織布2とを熱融着によって接合してシート形成用融着部3を形成する。
【0030】
次いで、図6図7に示すように、熱融着によって接合された第1不織布1及び第2不織布2の重ね合わせたものを、第1ロール11の周面に引き続き吸引保持した状態下で移動させ、該重ね合わせたものを、第1ロール11と周面平滑な第2ヒートロール14との間で挟圧する。このとき、第1ロール11と第2ヒートロール14の両方又は第2ヒートロール14のみを所定温度に加熱しておく。これによって、第1ロール11における凸部11a上に、つまり各歯車の歯の上に位置するシート形成用融着部3において、更に第1不織布1及び第2不織布2を構成していた熱可塑性樹脂を溶融し、溶融した樹脂が該凸部11aの周囲に移動して貫通孔6を形成する。具体的には、溶融した樹脂が、該凸部11aの中心から外方に向かって同心円状に徐々に離れた部位に移動して、シート形成用融着部3の内に貫通孔6を形成する。その際、シート形成用融着部3の輪郭31と貫通孔6の外周縁61との間の幅のある環状の部分Pにおいては、外周縁61側の内縁部Qが、構成繊維の繊維形状が存在しないフィルム化した状態となり、輪郭31側の外縁部Rが、構成繊維の繊維形状が存在する状態、すなわち完全にはフィルム化していない状態となる。このようにしてシート形成用融着部3内に貫通孔6が形成されるので、シート形成用融着部3の輪郭31と貫通孔6の外周縁61との間の部分Pだけで第1不織布1及び第2不織布2が接合されている立体シート10が連続的に製造される。
【0031】
上述した本実施形態の立体シート10は、第1不織布1側が着用者の肌側を向くようにして、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品の表面シートとして用いられるものである。すなわち、第1不織布1は、立体シート10を、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、着用者の肌側に向けられる面(肌対向面)を形成するようになり、第2不織布2は、前記吸収性物品を構成する収体体側に向けられる面(非肌対向面)を形成するようになる。
【0032】
本実施形態の立体シート10を吸収性物品の表面シートとして使用した際の作用効果について説明する。
本実施形態の立体シート10は、図1に示すように、互いに積層された第1不織布1及び第2不織布2が部分的に配されたシート形成用融着部3で接合して形成されているので、単層の立体シートに比べ、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、着用時に中空の凸部4が潰れ難くなっている。また、第1不織布1及び第2不織布2を構成する長繊維が、溶融した熱可塑性樹脂を均一に紡糸して形成された単層繊維であるので、シート形成用融着部3における剥離強度が高く、使用時に積層間が剥がれ難くなっている。また、各凸部4により着用時における肌との接触面積が抑えられ、液戻りが低減し、赤みやかぶれを低減することが期待できる。また、軟便の拡がりを抑制し、便の肌への付着を低減することが期待できる。更に、シート形成用融着部3内に貫通孔6が形成されているので、液残りが低減し、液戻りが更に低減し、赤みやかぶれを更に低減することが期待できる。また、軟便の拡がりを更に抑制し、便の肌への付着を更に低減することが期待できる。
【0033】
また、本実施形態の立体シート10は、第1不織布1及び第2不織布2を構成する熱可塑性樹脂が同一のものを用いれば、相溶性の向上により剥離強度(シール強度)が向上し、シート形成用融着部3の輪郭31と貫通孔6の外周縁61との間の部分Pだけで第1不織布1及び第2不織布2が接合されているとしても、使用時に積層間が更に剥がれ難くなる。特に、本実施形態の立体シート10においては、前記熱可塑性樹脂が単一樹脂から形成されていれば、貫通孔6が形成され易く、図3に示すように、シール強度がシール面積率によらず略一定となり、実使用に耐え得る、第1不織布1及び第2不織布2の剥離強度が得られ、使用時に積層間が更に一層剥がれ難くなる。具体的には、第1不織布1及び第2不織布2として、単一樹脂であるホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂を用いて製造されたスパンボンド不織布を使用すれば、圧力によりシート形成用融着部3に貫通孔6が開孔し易く、液戻りが低減し、赤みやかぶれを低減することが期待できる。
【0034】
上述した効果が、一層確実に発現されるようにする観点から、立体シート10は、以下の構成を有することが好ましい。
【0035】
凸部4の高さは、1mm以上20mm以下であることが好ましく、3mm以上15mm以下であることが更に好ましい。
立体シート10の単位面積(1cm)当たりの凸部4の数は、1個以上15個以下であることが好ましく、3個以上12個以下であることが更に好ましい。
また、立体シート10の単位面積(1cm)当たりの貫通孔6の数は、1個以上50個以下であることが好ましく、4個以上30個以下であることが更に好ましい。
【0036】
凸部4の底部面積(S1)は、1mm以上400mm以下であることが好ましく、4mm以上300mm以下であることが更に好ましい。シート形成用融着部3の面積(S2)は、1mm以上50mm以下であることが好ましく、1mm以上36mm以下であることが更に好ましい。ここで、シート形成用融着部3の面積(S2)とは、シート形成用融着部3の輪郭31で囲まれた領域の面積を意味する。
【0037】
貫通孔6の開孔面積(S3)は、1mm以上100mm以下であることが好ましく、2mm以上50mm以下であることが更に好ましい。ここで、貫通孔6の開孔面積(S3)とは。貫通孔6の外周縁61で囲まれた領域の面積を意味する。
【0038】
貫通孔6の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、2mm以上7mm以下であることが更に好ましい。また、シート形成用融着部3の長さは0.1mm以上5mm以下程度であることが好ましい。ここで、「貫通孔6の長さ」とは、貫通孔6の最も広い位置での長さを意味し、「シート形成用融着部3の長さ」とは、シート形成用融着部3の最も広い位置での長さを意味する。
【0039】
また、環状の前記部分Pの幅(図2におけるX方向の長さ)は、シート形成用融着部3の長さの3%以上20%以下であることが好ましく、5%以上15%以下であることが更に好ましい。具体的には前記部分Pの幅は、0.5mm以上5mm以下程度であることが好ましい。
環状の前記部分Pの幅の確認方法は次のとおりとする。立体シート10を液体窒素に浸漬し、十分に凍結する。また、市販のカミソリを同様に液体窒素に十分に浸漬する。環状の前記部分Pを、冷やしたカミソリを用いて厚み方向に沿って切断する。その際、切断面の形状がカミソリによる切断の影響を受けなくすことを目的で、カミソリの刃と反対面をハンマー等で叩き瞬時に切断する。切断箇所を、100倍程度に拡大した顕微鏡で観察し、繊維の状態が視認できる領域を外縁部Rとし、フィルム状で繊維が視認できない領域を内縁部Qとして判断し、RとQとの距離をもってPの幅とする。
【0040】
また、立体シート10における第1不織布1と第2不織布2との剥離強度は、0.2N/30mm以上であることが好ましく、0.5N/30mm以上であることが更に好ましい。尚、前記剥離強度の上限値に特に制限はなく、高ければ高いほど好ましいが、上限値として3N/30mm程度であれば、十分に満足すべき効果が得られる。前記剥離強度は、長手方向Xに200mm幅方向Yに30mmに立体シート10をカットしてカットサンプルを作製し、このカットサンプルにおける第1不織布1と第2不織布2との剥離強度を、X方向が引張方向となるように、引張試験機(例えば、オリエンテック社製テンシロン引張り試験機「RTA−100」)のチャック(チャック間10mm)に取り付け、引張速度300mm/minで引っ張り、測定サンプル破断までの最大荷重点(剥離強度)を測定して求める。
【0041】
また、立体シート10を構成する第2不織布2は、その親水度が、立体シート10を構成する第1不織布1の親水度よりも高いことが好ましい。ここで、「親水度」とは、以下に述べる方法で測定された繊維の接触角に基づき判断される。具体的には、親水度が高いことは接触角が小さいことと同義であり、親水度が低いことは接触角が大きいことと同義である。
【0042】
〔接触角の測定方法〕
立体シート10を構成する第1不織布1又は第2不織布2の所定の部位から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には蒸留水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析や画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、不織布から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。第1不織布1又は第2不織布2から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。該繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を接触角と定義する。
【0043】
立体シート10を構成する第2不織布2は、その坪量が、立体シート10を構成する第1不織布1の坪量よりも高いことが好ましい。具体的には、第2不織布2の坪量は、8g/m以上であることが好ましく、10g/m以上であることが更に好ましく、そして、25g/m以下であることが好ましく、20g/m以下であることが更に好ましく、具体的には、8g/m以上25g/m以下であることが好ましく、10g/m以上20g/m以下であることが更に好ましい。第1不織布1の坪量は、8g/m以上であることが好ましく、10g/m以上であることが更に好ましく、そして、20g/m以下であることが好ましく、18g/m以下であることが更に好ましく、具体的には、8g/m以上20g/m以下であることが好ましく、10g/m以上18g/m以下であることが更に好ましい。
【0044】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば上述した立体シート10の製造方法においては、シート形成用融着部3の形成及び貫通孔6の形成を連続的に行っているが、断続的に行ってもよい。
【0045】
また、上述した立体シート10の製造方法においては、第1ロール11と上流側の第1ヒートロール13とでシート形成用融着部3を形成し、その後、第1ロール11と下流側の第2ヒートロール14とで、貫通孔6を形成しているが、第1ロール11及び上流側の第1ヒートロール13のみで、シート形成用融着部3及び貫通孔6を形成してもよい。具体的には、第1ロール11及び上流側の第1ヒートロール13との挟持圧力と温度等を調整することにより、第1不織布1を第2不織布2に重ね合わせたものに対して、シート形成用融着部3を形成しながら、貫通孔6を形成してもよい。
【0046】
上述した実施形態に関し、更に以下の立体シートを開示する。
【0047】
<1>
互いに積層された第1不織布及び第2不織布が部分的に熱融着されてシート形成用融着部が形成され、該第1不織布が、該シート形成用融着部で囲まれた非融着部において該第2不織布から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部を多数形成している立体シートであって、
前記第1不織布及び前記第2不織布は、長繊維からなるウェブを熱融着部により固定した不織布であり、
前記長繊維は、溶融した熱可塑性樹脂を均一に紡糸して形成された単層繊維であり、
前記シート形成用融着部は、その輪郭よりも内側に、該輪郭の形状に相似する形状の外周縁を有する貫通孔を備え、該シート形成用融着部における前記輪郭と該貫通孔の外周縁との間の部分で、前記第1不織布及び前記第2不織布が接合されている立体シート。
【0048】
<2>
前記第1不織布及び前記第2不織布は、構成する前記熱可塑性樹脂が同一である前記<1>に記載の立体シート。
<3>
前記熱可塑性樹脂は、単一樹脂からなる前記<1>又は<2>に記載の立体シート。
<4>
前記第1不織布と前記第2不織布との剥離強度は、0.2N/30mm以上である前記<1>〜<3>の何れか1に記載の立体シート。
<5>
前記シート形成用融着部の輪郭と前記貫通孔の外周縁との間の部分における該外周縁側の内縁部には、断面視して前記長繊維の繊維形状が存在していない前記<1>〜<4>の何れか1に記載の立体シート。
<6>
前記第2不織布は、その親水度が、前記第1不織布の親水度よりも高い前記<1>〜<5>の何れか1に記載の立体シート。
<7>
前記第2不織布は、その坪量が、前記第1不織布の坪量よりも高く、該第1不織布の坪量は、8g/m以上である前記<1>〜<6>の何れか1に記載の立体シート。
<8>
前記立体シートは、前記第2不織布側の面がほぼ平坦であり、前記第1不織布側に起伏の大きな凹凸が形成されている前記<1>〜<7>の何れか1に記載の立体シート。
【0049】
<9>
前記非融着部である前記凸部は、周囲を、相互に離間した複数の前記シート形成用融着部によって囲まれており、前記凸部を囲む前記シート形成用融着部の数は、4個以上であり、好ましくは5個以上であり、また、8個以下であり、好ましくは6個以下である前記<1>〜<8>の何れか1に記載の立体シート。
<10>
前記凸部は、長手方向Xに、一定の間隔を空けて一列をなすように配置されており、このような列が幅方向Yに、多列に形成されており、前記凸部は、幅方向Yにも、一定の間隔を空けて一列をなすように配置されており、このような列が長手方向Xに、多列に形成されており、長手方向Xに延びる一つの列に着目すると、該列を構成する凸部と、該列に幅方向Yに隣り合う別の列を構成する凸部とが、半ピッチずれて配されており、幅手方向Yに延びる一つの列に着目すると、該列を構成する凸部と、該列に長手方向Xに隣り合う別の列を構成する凸部とが、半ピッチずれて配されている前記<1>〜<9>の何れか1に記載の立体シート。
<11>
内部が中空の前記各凸部は、それぞれが別個に独立して存在しているのではなく、任意の一つの凸部に着目したとき、該凸部の全周囲にて隣接する凸部と連結しており、凸部どうしの連結部の高さは、凸部の頂部の高さよりも低くなっており、前記連結部の頂部は、前記シート形成用融着部より高い位置にあり、該シート形成用融着部は、前記立体シートの凹凸構造の各凹部の中心に位置しており、該凹部は、それぞれが別個に独立して存在している前記<1>〜<10>の何れか1に記載の立体シート。
<12>
前記凸部の断面形状としては、全体として稜線が滑らかに丸みを帯びた、ドーム状の形状、扁平な直方体、或いは截頭四角錐体の何れかであり、前記シート形成用融着部を平面視した形状としては、円形状、矩形状、トラック形状の何れかである前記<1>〜<11>の何れか1に記載の立体シート。
<13>
前記シート形成用融着部における前記貫通孔は、該シート形成用融着部の内側に1個、前記第1不織布及び前記第2不織布を貫通して形成されており、該貫通孔を平面視した形状としては、該シート形成用融着部の形状を一様に縮小した相似形状であり円形状である前記<1>〜<12>の何れか1に記載立体シート。
<14>
前記立体シートにおいては、前記シート形成用融着部における輪郭と前記貫通孔の外周縁との間の部分Pで、前記第1不織布及び前記第2不織布が接合されており、前記部分Pのうち、前記貫通孔の外周縁側の内縁部Qにおいては、断面視して、前記第1不織布及び前記第2不織布を構成する長繊維の繊維形状が存在していない状態となっており、前記部分Pにおける内縁部Qにおいては、繊維形状が存在せずフィルム化した状態となっており、前記部分Pのうち、前記貫通孔から離れた部位Rにおいては、断面視して、前記第1不織布及び前記第2不織布を構成する長繊維の繊維形状が存在し、完全にはフィルム化していない状態であり、該部分Pのフィルム化の程度は、前記貫通孔の中心から、同心円状に離れた部位ほど、その程度は小さくなる前記<1>〜<13>の何れか1に記載の立体シート。
<15>
前記シート形成用融着部における輪郭と前記貫通孔の外周縁との間の前記部分Pは、該部分Pを厚み方向に沿って断面視したとき、第1不織布1及び第2不織布を構成する長繊維の繊維間距離が、内縁部Q側から外縁部R側に向かって漸次広くなっており、グラデーション的な構造を形成している前記<1>〜<14>の何れか1に記載の立体シート。
<16>
前記内縁部Q近傍の厚みと、前記外縁部R近傍の厚みを比べたとき、該外縁部R近傍の厚み>該内縁部Q近傍の厚みとなっている前記<1>〜<15>の何れか1に記載の立体シート。
<17>
前記第1不織布及び前記第2不織布は、長繊維からなるウェブを熱融着部により固定した不織布であり、該不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布の何れかである前記<1>〜<16>の何れか1に記載の立体シート。
<18>
前記第1不織布及び前記第2不織布を構成する長繊維は、溶融した熱可塑性樹脂を均一に紡糸して形成された単層繊維であり、該単層繊維は、同芯型若しくは偏芯型の芯鞘型の繊維、又はサイド・バイ・サイド型の繊維を含まず、紡糸して形成された繊維が均一な一層構造の繊維である前記<1>〜<17>の何れか1に記載の立体シート。
<19>
前記第1不織布及び前記第2不織布を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ビニル系樹脂、ビニリデン系樹脂の何れかであり、ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデンの何れかであり、ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート何れかであり、ポリアミド系樹脂としてはナイロンであり、ビニル系樹脂としてはポリ塩化ビニルであり、ビニリデン系樹脂としてはポリ塩化ビニリデンであり、これら各種樹脂の1種を単独で又は2種以上を混合して用い、更に、これら各種樹脂は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーの何れか1種以上を50〜100質量%含んだ樹脂か、これらホモポリマー、ランダムコポリマー、或いはブロックコポリマーを混合した樹脂である前記<1>〜<18>の何れか1に記載の立体シート。
<20>
前記第1不織布及び前記第2不織布は、長繊維からなるウェブを熱融着部により固定したスパンボンド不織布であり、前記第1不織布及び前記第2不織布2を構成する熱可塑性樹脂はホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂である前記<1>〜<19>の何れか1に記載の立体シート。
<21>
前記凸部の高さは、1mm以上20mm以下であり、好ましくは3mm以上15mm以下であり、前記立体シートの単位面積(1cm)当たりの前記凸部の数は、1個以上15個以下であり、好ましくは3個以上12個以下であり、前記立体シートの単位面積(1cm)当たりの前記貫通孔の数は、1個以上50個以下であり、好ましくは4個以上30個以下である前記<1>〜<20>の何れか1に記載の立体シート。
<22>
前記凸部の底部面積(S1)は、1mm以上400mm以下であり、好ましくは4mm以上300mm以下であり、前記シート形成用融着部の面積(S2)は、1mm以上50mm以下であり、好ましくは1mm以上36mm以下である前記<1>〜<21>の何れか1に記載の立体シート。
<23>
前記貫通孔6の開孔面積(S3)は、1mm以上100mm以下であり、好ましくは2mm以上50mm以下であり、前記貫通孔6の長さは、1mm以上10mm以下であり、2mm以上7mm以下であり、また、シート形成用融着部3の長さは0.1mm以上5mm以下である前記<1>〜<22>の何れか1に記載の立体シート。
<24>
前記立体シートにおける前記第1不織布と前記第2不織布との剥離強度は、0.2N/30mm以上であり、好ましくは0.5N/30mm以上であり、上限値は3N/30mmである前記<1>〜<23>の何れか1に記載の立体シート。
<25>
前記立体シートを構成する前記第2不織布は、その坪量が、該立体シートを構成する前記第1不織布の坪量よりも高く、
前記第2不織布の坪量は、8g/m以上であり、好ましくは、10g/m以上であり、そして、25g/m以下であり、好ましくは、20g/m以下であり、好ましくは8g/m以上25g/m以下であり、更に好ましくは、10g/m以上20g/m以下であり、
前記第1不織布の坪量は、8g/m以上であり、好ましくは、10g/m以上であり、そして、20g/m以下であり、18g/m以下であることが好ましく、8g/m以上20g/m以下であることが好ましく、10g/m以上18g/m以下であることが更に好ましい前記<1>〜<24>の何れか1に記載の立体シート。
【0050】
<26>
前記<1>〜<25>の何れか1に記載の立体シートを、前記第1不織布側が着用者の肌側を向くようにして吸収性物品の表面シートとして用いた吸収性物品。
<27>
前記吸収性物品は使い捨ておむつである、前記<26>に記載の吸収性物品。
<28>
前記<1>〜<25>の何れか1に記載の立体シートの製造方法であって、
前記第1不織布の原反から前記第1不織布を繰り出し、これとは別に、前記第2不織布の原反から前記第2不織布を繰り出し、そして、繰り出された該第1不織布を、第1ロールと第2ロールとの噛み合わせ部に噛み込ませて該第1不織布1を凹凸賦形し、次いで、該第1不織布を前記第1ロールの周面に引き続き吸引保持した状態下に、該第2不織布を重ね合わせ、その重ね合わせたものを、第1ロールと周面平滑な第1ヒートロールとの間で挟圧し、このとき該第1ロールと該第1ヒートロールの両方又は該第1ヒートロールのみを加熱しておき、次いで、熱融着によって接合された前記第1不織布及び前記第2不織布の重ね合わせたものを、前記第1ロールの周面に引き続き吸引保持した状態下で移動させ、該重ね合わせたものを、該第1ロールと周面平滑な第2ヒートロールとの間で挟圧し、このときの該第1ロールと該第2ヒートロールの両方又は該第2ヒートロールのみを加熱しておき、該第1ロールにおける凸部上である各歯車の歯の上に位置する前記シート形成用融着部において、更に前記第1不織布及び前記第2不織布を構成していた熱可塑性樹脂を溶融し、溶融した樹脂が該凸部の周囲に移動して前記貫通孔を形成してなる立体シートの製造方法。
<29>
前記第1ロールと上流側の前記第1ヒートロールとで前記シート形成用融着部を形成し、その後、該第1ロールと下流側の前記第2ヒートロールとで、前記貫通孔を形成するか、又は、
前記第1ロール及び上流側の前記第1ヒートロールで、前記シート形成用融着部及び前記貫通孔を形成し、該第1ロール及び上流側の該第1ヒートロールとの挟持圧力と温度等を調整することにより、前記第1不織布を前記第2不織布に重ね合わせたものに対して、該シート形成用融着部を形成しながら、該貫通孔を形成する前記<28>に記載の立体シートの製造方法。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例によって何ら制限されるものではない。
【0052】
[実施例1]
単一樹脂であるポリプロピレン樹脂からなる繊維(2.0dtex)から構成された第1不織布及び第2不織布を、図6に示す製造装置を用いて部分的に熱融着して、図1に示す立体シートを製造した。立体シートの単位面積(1cm)当たりの凸部の数は3個であり、立体シートの単位面積(1cm)当たりの貫通孔の数は12個であった。尚、凸部の底部面積(S1)は9mmであり、シート形成用融着部の面積(S2)5mmであり、貫通孔の開孔面積(S3)は2mmであった。また、貫通孔の長さは1mmであり、シート形成用融着部の長さは0.5mmであった。次に上述した測定方法により測定した立体シートの剥離強度は、1.2N/30mmであった。
【0053】
[実施例2]
単一樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂からなる繊維(2.2dtex)から構成された第1不織布及び第2不織布を用いる以外は、実施例1と同様にして実施例2の立体シートを製造した。実施例2の立体シートの剥離強度は、1.0N/30mmであった。
【0054】
[比較例1]
芯部にポリエチレン、鞘部にポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた芯鞘複合繊維(2.6dtex、繊維長51mm)から構成された第1不織布及び第2不織布を用いる以外は、実施例1と同様にして比較例1の立体シートを製造した。比較例1の立体シートの剥離強度は、0.13N/30mmであった。
【0055】
〔性能評価〕
花王株式会社製の「メリーズ(登録商標)2013年製」の製品から表面シートを取り除き、実施例1〜2の立体シート又は比較例1の立体シートを替わりに用い、第1不織布側が着用者の肌側を向くようにして使い捨ておむつを作製した。実施例1〜2の立体シート又は比較例1の立体シートを表面シートに用いた使い捨ておむつに関し、以下のようにして装着テストを行い、第1不織布及び第2不織布の剥離の有無を評価した。
<試験条件>
テスト環境:温度27℃、湿度60%
装着者 幼児1〜3名
各使い捨ておむつに関して、装着5時間経過後の第1不織布及び第2不織布の剥離の有無を、以下の基準で評価した。得られた結果を表1に示す。
【0056】
第1不織布及び第2不織布の剥離の有無の評価は、以下の3段階で表した。
A:第1不織布と第2不織布との融着部分から全く剥離していない。
B:第1不織布と第2不織布との融着部分から若干剥離している。
C:第1不織布と第2不織布との融着部分から剥離している。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示す結果から、実施例1〜2の立体シートを表面シートに用いた使い捨ておむつは、比較例1の立体シートを表面シートに用いた使い捨ておむつに比べて、第1不織布と第2不織布との融着部分から剥離し難いことが分かった。従って、実施例1〜2の立体シートを表面シートに用いた使い捨ておむつは、使用時に第1不織布と第2不織布との融着部分から剥離し難く、液戻りを低減し、赤みやかぶれを低減することが期待できる。
【符号の説明】
【0059】
10 立体シート
1 第1不織布
2 第2不織布
3 シート形成用融着部
31 シート形成用融着部の輪郭
4 凸部
5 連結部
6 貫通孔
61 貫通孔の外周縁
P シート形成用融着部の輪郭と貫通孔の外周縁との間の部分
11 第1ロール
11a 凸部
12 第2ロール
13 第1ヒートロール
14 第2ヒートロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7