特許第5960778号(P5960778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 渡辺 芳男の特許一覧

<>
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000002
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000003
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000004
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000005
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000006
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000007
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000008
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000009
  • 特許5960778-紙扇子の開閉固定構造 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960778
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】紙扇子の開閉固定構造
(51)【国際特許分類】
   A45B 27/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   A45B27/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-239678(P2014-239678)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-101209(P2016-101209A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000218281
【氏名又は名称】渡辺 芳男
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 芳男
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−304919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支点を中心点にして円周軌道を描いて扇状に開閉する扇ぎ葉の各々をa葉とb葉とし、該扇ぎ葉どうしが扇状に開いた状態で重なり合う領域を開重域とし、該開重域でa葉のa側折線袋折されたa側片を延設し、b葉のb側折線袋折されたb側片を延設し、該b側片の下部に該支点を中心点とする略円周形状のb滑縁を設け、該a側片の下部に跨ぎ域を設け、該跨ぎ域の基部を滑端とし、該跨ぎ域が該b滑縁を跨いで該滑端が該b滑縁で滑り移動した基部端で該扇ぎ葉どうしの開き状態を固定することを特徴とする紙扇子の開閉固定構造。
【請求項2】
b葉の外側折線袋折された外片を延設し、該外片に該支点を中心とする略円周形状で外滑縁を設け、跨ぎ域が該外滑縁を跨いで滑端が該外滑縁で滑り移動した基部端で扇ぎ葉どうしの閉じ状態を固定することを特徴とする請求項1記載の紙扇子の開閉固定構造。
【請求項3】
扇ぎ葉の外側縁上部に凹部を設け、該凹部へ閉じ状態で重なる側片の縁が組み込んで該扇ぎ葉どうしの閉じ状態を固定することを特徴とする請求項1記載の紙扇子の開閉固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙扇子の開閉固定構造に関する物である。
【背景技術】
【0002】
従来の紙扇子の開閉固定構造は、開き固定では、切込どうしを組込む構造、側返し片どうしを重ね合わせて開き状態を固定する構造であり、閉じ固定では、扇の要穴を束ねて固定することで、閉じ状態でも束ね状態を維持できる固定構造であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−43948号
【特許文献2】実用新案登録第3182803号
【特許文献3】特開平10−304919号
【特許文献4】特開2014−83223号
【特許文献5】特開平8−242920号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術で、開き状態の固定をするには切込どうしの位置関係を目で確認して組込む必要があり、閉じ状態では固定はされていないので扇ぎ葉どうしが分離する恐れがあった。要穴束ね固定構造では、要穴を束ねるための余分な構造が必要であった。本発明では、上記の従来技術の問題箇所を考慮し、切込の組込みをしなくても自動的に開き状態が固定され、閉じ状態も自動的に固定されるという課題の解決をする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本体は支点を中心にして反転する反転域の折線の各々にa葉とb葉の扇ぎ葉を延設し、該扇ぎ葉の開き状態で重なり合う領域を開重域とし、該扇ぎ葉各々の側折線を介して側片を延設し、該側片双方は該開重域で重なり合い、a葉にa側折線を袋折して延設されたa側片の下部を跨ぎ域とし、b葉にb側折線を袋折して延設されたb側片の下部を膨出させて膨出域を設け、該膨出域にb滑縁を設け、該b滑縁は該支点を中心とする略円周形状を成している。該b葉に外側折線を袋折して延設された外片の天縁を外滑縁とし、該外滑縁は該支点を中心点とする略円周形状を成す。該跨ぎ域の基部端を滑端とし、該跨ぎ域がb滑縁と外滑縁を跨いで滑る構造にして設ける。
【発明の効果】
【0006】
扇ぎ葉どうしを開くに従って、跨ぎ域の滑端が外縁からb滑縁へ移行して滑り移動するので、該扇ぎ葉どうしは分離せずに開き状態が固定される。該扇ぎ葉どうしを閉じるに従って、該跨ぎ域の滑端がb滑縁から外縁へ移行して滑り移動するので、該扇ぎ葉どうしは分離せずに閉じ状態が固定される構造にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】開き状態要部透視部分剥離正面斜視図である。(実施例1)
図2】閉じ状態要部透視部分剥離正面斜視図である。
図3】展開正面図である。
図4】開き状態要部透視部分剥離正面斜視図である。(実施例2)
図5】閉じ状態要部透視部分剥離正面斜視図である。
図6】展開正面図である。
図7】開き状態要部透視部分剥離正面斜視図である。(実施例3)
図8】閉じ状態要部透視部分剥離正面斜視図である。
図9】展開正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
紙扇子の開閉状態が自動的に固定できる構造を実現した。
【実施例1】
【0009】
図1は開き状態要部透視部分剥離正面斜視図である。透視線は破線で示し、剥離線は二重線で示し、折線は一点鎖線で示し、該折線が透視線になる場合は破線で示し、縁及び切線は一本の実線で示す。山折と谷折で表示する折り曲げ方向は正面方向からを基準にする。左右方向を横とし、天地方向を縦とし、正面背面方向を前後とする。本発明を形成する素材は限定ではなく、プラスチックであっても良いが、適宜に腰のある厚紙であることが望ましく、前記厚紙の硬さは楽に折り曲げられて扇ぎ使用に耐えられる硬さであれば良く、具体的に述べるならば、官製ハガキよりも硬ければ目的を果たせる。
【0010】
本体1で大きな面積を占める扇ぎ葉2は二枚で構成されており、総称する場合は扇ぎ葉2とするが、具体的に区別して表示する場合は、a葉3とb葉4にする。該扇ぎ葉2の形状は限定ではなく、扇状に開いて扇子として使用できる形状であれば良く、開き形状は扇子形状、花形状、動物の顔形状であっても良いが、実施例1の開き形状では支点5が中央の下端に位置しているのでハート型に適しており、前記ハート型を具体形状として述べることにする。
【0011】
a葉3とb葉4は反転域6から折線を介して延設されており、該反転域6は支点5を中心点にして表裏方向へ反転する領域であり、該支点5側を鋭角にした三角形であることが望ましいが、該支点5を中心とする扇形状であっても良い。
【0012】
実施例1ではa葉3を背方へ位置させることにし、該a葉3の下部に開折線7を介して延設された反転域6を正面へ袋折し、該反転域6から閉折線8を介してb葉4を延設し、該開折線7と該閉折線8は支点5を基点とする放射線の位置関係で設けられている。
【0013】
開き状態の本体1は下端を支点5とするハート型を成しており、中央を天地に縦断する重なり領域を開重域9とし、該開重域9側を内側とし、該開重域9から遠い側を外側とし、該開重域9ではa葉3の正面にb葉4が重なっており、該開重域9の重なった面どうしは前後方向から隠されており、該開重域9が隠された領域であるのを利用して側片を延設する。前記側片の延設構造を具体的に述べるならば、該a葉3から正面へ袋折されたa側折線10を介してa側片11を延設し、該b葉4から背方へ袋折されたb側折線12を介してb側片13を延設しているので、該開重域9では背方からa葉3とb側片13とa側片11とb葉4の順で折り重なっている。該開重域9は該a側折線10とb側折線12を区分線とする挟まれた領域である。
【0014】
a側片13とb側片11との折り重なりだけでは本体1の開き状態の固定が不十分であり、前記の開き状態の固定を強固にするために、b側片13の下部をb側折線12と反対側へ膨出させて膨出域14を形成し、該膨出域14の上部縁をb滑縁15とし、該b滑縁15は支点5を中心点とする略円周形状であることが望ましく、完全な円周形状であっても良いが、該b滑縁15の先領域は該支点5へ少しだけ近付けており、基部領域では部分的に突出させた峠部16を形成することが望ましい。
【0015】
上記開き状態の固定を強固にするために、a側片の下部領域を跨ぎ域17とし、該跨ぎ域17の下縁の基部端を滑端18とし、該跨ぎ域17が上記膨出域14を跨ぐことで該滑端18が上記b滑縁15の縁線上で滑り移動し、該滑端18は支点5を中心点とする真円軌跡を描くのであり、該滑端18の真円軌跡の円周から僅かに外周へ突出させた箇所に上記峠部16が位置しており、扇ぎ葉2が開き終える直前で該滑端18は該峠部16を乗り越えて、前記乗り越え後に該峠部16は該滑端18が戻るのを堰止めるので、前記扇ぎ葉2の開き状態がロックして固定される構造と成る。
【0016】
上記b滑縁15だけでも滑端18の滑り移動は可能であるが、該b滑縁15を形成するための膨出域14が開重域9から食み出していることから該膨出域14の先が浮いて固定されておらず、該膨出域14の先領域を挟み込んで固定できる位置関係で外片19を設け、該外片19はb葉4下部から背方へ袋折された外側折線20を介して延設されて設けられ、該膨出域14は該外片19の袋折に挟まれた構造で固定されている。該外片19の形状は支点5を中心点とする略円周縁の扇形状であることが望ましく、前記略円周縁を外滑縁21とし、該外滑縁21は滑端18の真円軌道と同じ円周線上に位置していても良いが、該外片19の先へ向かうに連れて支点5方向へ僅かに近付く曲線であることが望ましい。
【0017】
図2でも示すが、本体1の閉じ状態では滑端18は外滑縁21の基部(外側折線20に近い方)領域に接しており、本体1を開くに従って該滑端18の接し箇所はb滑縁15へ移行し、最終的には峠部16を乗り越えてb滑縁15の基部(b側片13に近い方)に達してロック固定される。前記の接し箇所の移行が行われる構造的な原理は、該外滑縁21と該b滑縁15の基部が滑端18の真円軌道と同じ円周線上に位置していて、先領域が支点5へ僅かに近付く曲線だからである。該外滑縁21と該b滑縁15の縁線全てが滑端18の真円軌道と同じ円周線上に重なっていても良いのであるが、前記縁線は先へ近付くに連れて支点5へ近付く曲線にして該滑端18との接し箇所の移行が行われることで該峠部18によるロック固定能力が増すのである。
【0018】
図2は閉じ状態要部透視部分剥離正面斜視図である。支点5を中心点としてa葉3を右へb葉4を左へ回転移動させることで扇ぎ葉2の重なり領域が広くなって本体1は閉じ状態と成り、閉じ状態ではb側片13とa側片11との重なりは解除されて互いに離れることに成り、前記側片どうしが離れることで、b滑縁15の基部に位置して峠部16で堰止められていた滑端18は該峠部16を乗り越えて堰止めが解除されてb滑縁15から外滑縁21へ接し箇所を移行して、本体1が閉じ終えた状態では該外滑縁21の基部端に滑端18が位置付けられており、外片19を延設している外側折線20が跨ぎ域17を堰止めるので閉じ状態を通り越して更に閉じ方向へ扇ぎ葉2どうしが移動するのを防止している。
【0019】
峠部16を外滑縁21に設けても良いが、堰止め構造の峠部16が外滑縁21の中央部分に位置することになるので外片19の中央が外側折線20の方向へ押し付ける力が働き、前記押し付け力によって該外片19が曲がる場合もあり、該外片19が曲がれば、該峠部16を滑端18が乗り越えられなくなるので、該峠部16はb滑縁15にだけ設けるのが望ましい。
【0020】
滑端18は支点5を中心点とする真円軌道を描いて移動し、b滑縁15と外滑縁21では先へ向かうに連れて前記真円軌道から中心方向へ外れて行くので、該滑端18が膨出域14の先角に引っ掛るのを防止しており、峠部16を確実に露出できるので該峠部16のロック固定能力が向上する。
【0021】
本体1の開き形状をハート型にしたことで、本体1を閉じると側折線よりも外側に食み出す領域が生じるのであり、前記食み出し領域は摘んで引き出すことで開き状態にできることから摘み域22とする。
【0022】
図3は展開正面図である。折線は一点鎖線で表示し、谷折山折で表示する折り曲げ方向は正面からを基準にし、本図での折り曲げ方向は全て山折線であり、前記山折線を折り曲げる構造は、180度折り返される袋折にする。b側片13の下端と反転域6とに挟まれた領域は切り取られているが、それは図示し易くて説明し易くするためで、製品化する場合は切り取らずに残しておくことが望ましい。
【0023】
本体1の折線を折り曲げて組み立てて行く順序を述べるならば、最初にb側片13を背方へ折り返し、次に外片19を背方へ折り返して膨出域14の先領域を挟み込む。a側片11を背方へ折り返し、反転域6下縁の開折線7を山折することでa葉3は背方へ折り返されて図1で示したように開重域9で折り重なり、a側片11先領域の跨ぎ域17をb滑縁15と外滑縁21とに跨がせて開き状態での組立は終了し、該開折線7の袋折を閉折線8へ移行することで、図2で示すように本体1は閉じ状態に成る。
【実施例2】
【0024】
図4は開き状態要部透視部分剥離正面斜視図である。図4から実施例2になるのであるが、上記実施例1では左からa葉3とb葉4の順で表示していたのに対し、実施例2では左からb葉4とa葉3の順で表示することにする。左右を逆にした理由は、本体1の開き状態で下部に有する回転域6を正面から表示したいからである。
【0025】
実施例1の開き状態は下が尖ったハート型であったのに対して、実施例2の開き状態は下端が平らな開折線7となっており、支点5は該開折線7の延長線上に位置している。開き状態では、b葉4に対してa葉3の方が少々長くなっている。前記の二箇所が異なっている以外は、実施例1と殆ど同じ構造である。
【0026】
最前面(正面)にa葉3があり、該a葉3の下縁に閉折線8を介して延設された反転域6の下縁に袋折された開折線7を介してb葉4を延設する。該反転域6の形状は支点5を起点とする二本の放射線である開折線7と閉折線8とに挟まれた扇形状或いは三角形状を成しており、該開折線7と該閉折線8との交点が支点5ではあるが、前記の開閉折線と該支点5とが僅かに(2〜3ミリ)離れていることが望ましく、該支点5が離れていても前記の開閉折線の延長線を細い実線で表示することにし、該支点5が離れていることから該反転域6の詳細な形状は三角形に極めて近い台形を成しており、該反転域6が台形であることから紙の厚みの影響を逃がすための遊びになると共に、打ち抜くための木型の作成を容易にできる。
【0027】
本体1の組立順序を述べるならば、背方へ折り起こされた(先領域が上に位置している)状態のb葉4のb側折線12を袋折してb側片13を正面へ折り返し、該b葉4の外側折線20を袋折して外片19を正面へ折り返し、a葉3のa側折線10を袋折してa側片11を背方へ折り返し、該a側片11の下部領域である跨ぎ域17をb滑縁15と外滑縁21とに跨がせることによって、該跨ぎ域17の基部端である滑端18が峠部16で堰止められて本体1の開き状態はロック固定される。
【0028】
本体1の開き状態でb葉4とa葉3とが重なり合う領域を開重域9とし、該開重域9の折り重なる順番を背方から述べるならば、b葉4とa側片11とb側片13とa葉3である。
【0029】
図5は閉じ状態要部透視部分剥離正面斜視図である。図4の開き状態で袋折されていた開折線7の折り曲げ箇所を閉折線8へ移行することで支点5を中心点として反転する反転域6と連動して扇ぎ葉2の双方は該支点5を中心点とする円周移動で閉じ状態と成り、滑端18は峠部16を乗り越えてb滑縁15から外滑縁21へ接し縁を移行して外滑縁21の基部端(外側折線20)まで達して閉じ状態は維持される。
【0030】
本体1の開き状態で滑端18は峠部16に引っ掛った状態で固定されていたが、b側片13を引っ張る方向で該峠部16の引掛りを外すので膨出域14が折れ曲がる恐れは無くなり、b滑縁15から外滑縁21への接し縁移行を難なく行える。
【0031】
図6は展開正面図である。本体1の折線を折り曲げて組み立てて行く順序を述べるならば、最初にb側片13を背方へ折り返し、次に外片19を背方へ折り返して膨出域14の先領域を挟み込む。a側片11を背方へ折り返し、反転域6下縁の開折線7を山折することでb葉4は背方へ折り返されて図4で示したように開重域9で折り重なり、a側片11先領域の跨ぎ域17をb滑縁15と外滑縁21とに跨がせて開き状態での組立は終了し、該開折線7の袋折を閉折線8へ移行することで、図5で示すように本体1は閉じ状態に成る。
【実施例3】
【0032】
図7は開き状態要部透視部分剥離正面斜視図である。本体1の開き方向は限定ではないが正面に重なっているb葉4の上部を右へ回転移動させて開く構造であることが望ましい。
実施例3は簡易型であり、組立を楽に行えるのが特徴であり、請求項3の内容である。実施例1と実施例2では膨出域14と外片19とを有していることから大型の跨ぎ域17を組立時に跨がせる作業が必要であったのに対し、実施例3での跨ぎ域17は小型であるので、組立時に跨がせる作業を不要とすることから、組立を楽に行える。
【0033】
扇ぎ葉2の双方と反転域6の形状は実施例2と同じであることが望ましいが、該扇ぎ葉2が開閉される各々の固定構造が異なっており、前記固定構造で特に開き状態の固定構造を明瞭に説明する目的でb滑縁15と跨ぎ域17と滑端18を正面方向から見せるために該扇ぎ葉2の左右の位置関係を実施例2とは逆にして、a葉3を左にし、b葉4を右にして図示する。
【0034】
開折線7を袋折することで反転域6は背方へ折り返されて扇ぎ葉2どうしは開き状態になって、前記開き状態の扇ぎ葉2どうしが重なる領域を開重域9とし、該開重域9の領域内にa側片11とb側片13とが収まっており、該扇ぎ葉2はa葉3とb葉4の二枚で構成されており、該a葉3から袋折されたa側折線10を介してa側片11を延設し、該b葉4から袋折されたb側折線12を介してb側片13を延設する。
【0035】
a側片11の略中央部までa切込23を切り込んで跨ぎ域17を形成し、該跨ぎ域17の基部(切り込んだ奥)端を滑端18とする。b側片13の略中央部までb切込24を切り込んでb滑縁15を形成し、該b滑縁15の基部(切り込んだ奥)より僅かに戻した箇所に峠部16を設ける。
【0036】
扇ぎ葉2の双方を互いに開く方向へ円周移動させるに従ってb滑縁15の縁に沿って滑端18は滑り移動し、該滑端18は峠部16を乗り越えてb切込24の基部端でロック固定される。前記のロック固定は該滑端18が該峠部16で堰止められて引っ掛って行われている。
【0037】
峠部16は小さな山形状の上突出縁であるので、扇ぎ葉2の双方を互いに閉じる方向へ力を加えるとb切込24の基部端に固定されていた滑端18が該峠部16を乗り越えてb滑縁15の縁線上に沿って滑り移動して、最終的には該b切込24の切口から抜け出て閉じ状態へ移行する。
【0038】
図8は閉じ状態要部透視部分剥離正面斜視図である。閉折線8を袋折することで扇ぎ葉2双方の重なり領域が最大値になった状態を閉じ状態とし、少なくても該扇ぎ葉2の上縁どうしが重なり合っている形状であることが望ましい。
【0039】
本体1の閉じ状態ではb側片13とa側片11との双方は一番離れた位置関係にあるが、全てが離れるのではなくて片先域28どうしは離れずに重なり合っており、前記の重なり領域は閉じた状態でも重なっていることから閉重域27とする。
【0040】
b側折線12とa側折線10は袋折されてはいるものの、完全な180度に折り潰すことは技術的に不可能なので完全に折り潰されているわけではなく、扇ぎ葉2の面に対して適宜に浮いた状態で側片は折り返されており、閉重域27の領域で前後(正面背面)方向から押し合っているのでb切込24とa切込23の双方の切込は自然に開いた状態になる。
【0041】
切込の双方が開いた状態を保てるので、扇ぎ葉2双方を開き状態へ回転移動させるとb切込24とa切込23との双方が互いに組み込んだ状態になり、図7で示した開き固定状態へと移行する。
【0042】
実施例3は簡易型なので、実施例1と実施例2で有していた膨出域14と外片19は省かれていることから閉じ状態で跨ぎ域17が跨いでいる箇所は基本的には無く、本体1は閉じた状態のままでは固定されておらず、閉じ状態での固定が無くても不便性は少ないのであるが、閉じ固定箇所を設けて固定する方が安定する。実施例3での閉じ状態の固定をする箇所として、扇ぎ葉2の外側縁上部に凹部25を設け、該凹部25へ閉じ状態で重なる側片の縁が組み込んで該扇ぎ葉2どうしの閉じ状態を固定するのであり、該凹部25はa葉3とb葉4の双方へ設けても良いが、どちらか一方で充分であり、具体的に述べるためにb葉4にだけ該凹部25設ける構造で述べることにする。
【0043】
実施例3での閉じ状態の固定構造を具体的に述べるならば、b葉4の他方(右)の側縁上部を適宜に凹ませて凹部25を設け、a葉3の他方に位置して袋折されたa側片11の上部に該凹部25が組み込まれて固定される構造を成し、該a側片11の縁は直線であっても良いが、該a葉3の他方に位置して袋折された該a側片11の上部を部分的に突出させて凸片26を設けることが望ましく、該凸片26の形成によって該凹部25の組み込み成功の確率は格段に上昇する。
【0044】
本体1の閉じ状態はa葉3の正面にb葉4がピッタリと重なり合っている状態であり、前記閉じ状態では本体1の底辺は閉折線8が袋折された状態で位置しており、前記閉じ状態からb葉4を少しだけ左へ回転移動させることで凸片26が正面へ食み出し、正面へ食み出した該凸片26の下部が凹部25に嵌まり込んで本体1の閉じ状態が固定される構造に成る。実施例3に限り、閉じ状態での自動固定は完全ではないが、閉じた状態から少しだけ行き過ぎて戻すだけで閉じ固定がされるので、半自動の固定構造である。
【0045】
図9は展開正面図である。扇ぎ葉2の形状は自由にデザイン化したものであっても良いが、縦(天地)に細長い略扇形状であることが望ましく、該扇ぎ葉2は二枚で有しており、該扇ぎ葉2の各々を区別する名称としてa葉3とb葉4で表示する。
【0046】
組立状態でb葉4を正面に重ねることが望ましい構造にしているので、展開図では該b葉4の下へ反転域6を介してa葉3を延設し、該反転域6は左に位置する支点5を中心点とする二本の放射折線に挟まれた細長い扇形状であることが望ましく、該反転域を挟む二本の放射折線で下を閉折線8とし、上を開折線7とし、該閉折線8は水平な折線であることが望ましい。該支点5は該反転域6から僅かに(2〜3ミリ)離れた箇所に位置付けられていることが望ましく、延長線を細い実線で表示した上記二本の放射折線の交点に該支点5は位置しており、該支点5が該反転域6の外に位置していることから該反転域6は三角形に極めて近い台形を成している。
【0047】
a葉3の他方の側縁にa側折線10を介してa側片11を延設し、該a側片11は図7で示された開重域9の範囲内に収まる略直角三角形状を成し、該a側片11の角領域は図8で示された閉重域27と成る一方の片先域28aとし、該a側片11の横外側縁からa切込23を略中央箇所まで切り込んで跨ぎ域17を形成し、該a切込23の切り込んだ奥端を滑端18とし、該a側片11の横外側の端領域(片先域と離れた箇所)を部分的に膨出させて凸片26を形成する。
【0048】
b葉4の一方の側縁にb側折線12を介してb側片13を延設し、該b側片13は図7で示された開重域9の範囲内に収まる略直角三角形状を成し、該b側片13の角領域は図8で示された閉重域27と成る他方の片先域28bとし、該b側片13の横外側縁からb切込24を略中央箇所まで切り込んでb滑縁15を形成し、該b切込24の切込によって鋭角となる角領域を切り取って切角29を形成することが望ましく、該切角29の形成によって本体1の開閉時に引っ掛る恐れのある鋭角領域を除去できる。
【0049】
b葉4の他方の側縁上部を部分的に切り取って凹ませた箇所を凹部25とし、該凹部25の形状は限定ではなくて適宜な形状であっても良いが、切り取り箇所の奥を鋭角にする略V字形状で切り取ることが望ましい。
【0050】
実施例3の組立順序を述べるならば、a側折線10を袋折してa側片11を背方へ折り返し、b側折線12を袋折してb側片13を背方へ折り返し、閉折線8を袋折してa葉3を背方へ折り返してb葉4の背方へ重ねて閉じ状態に成り、前記閉じ状態でb葉4を少しだけ左へズラして戻すことで凹部25が凸片26の基部に嵌まり込んで図8で示した閉じ固定状態になる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、扇子形状の広告媒体として使用することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 本体
2 扇ぎ葉
3 a葉
4 b葉
5 支点
6 反転域
7 開折線
8 閉折線
9 開重域
11 a側片
13 b側片
15 b滑縁
17 跨ぎ域
18 滑端
19 外片
21 外滑縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9