特許第5960808号(P5960808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960808吸着性のフィルム、繊維、織布および不織布などの材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960808
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】吸着性のフィルム、繊維、織布および不織布などの材料
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20160719BHJP
   D04H 1/407 20120101ALI20160719BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20160719BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B01J20/26 A
   D04H1/407
   D04H1/435
   A62B18/02 C
【請求項の数】20
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-516960(P2014-516960)
(86)(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公表番号】特表2014-519981(P2014-519981A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】US2011045485
(87)【国際公開番号】WO2012177269
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年2月13日
(31)【優先権主張番号】2,744,780
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】CA
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502247813
【氏名又は名称】セルレジン・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウツド,ウイラード・イー
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0084474(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/041479(WO,A1)
【文献】 特表2001−500272(JP,A)
【文献】 特開平04−293518(JP,A)
【文献】 特開平04−346831(JP,A)
【文献】 特開2010−131556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
A62B 18/02
D04H 1/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
15ppm未満の濃度の気体または蒸気相からの望ましくない物質または標的物質を吸着するための吸着剤であって、吸着剤が、
a.Fe(III)化合物、および
b.ポリエチレンイミン
を含み、
前記Fe(III)化合物が水酸化第二鉄であり、固形分に対して1.0から85重量%存在し、且つ前記望ましくない物質または標的物質がHSである、吸着剤。
【請求項2】
Fe(III)化合物の源が、FeCl、K(FeO)またはそれらの混合物である、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
ポリエチレンイミンが、800から1,000,000の分子量(M)を有する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項4】
ポリエチレンイミンが、置換基を含まない、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項5】
ポリエチレンイミンが、エトキシル化ポリエチレンイミンを含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項6】
吸着剤が、200から1000m・g−1の範囲の表面積を有するシリカをさらに含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項7】
固形分に対して0.1から80重量%のポリエチレンイミンが存在する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項8】
15ppm未満の濃度の気体または蒸気相からの望ましくない物質または標的物質を吸着することが可能な吸着剤物品であって、前記吸着剤物品が、少なくとも0.1m・g−1の表面積を有する基材を含み、前記基材が、請求項1、2、3、5または6に記載の吸着剤を、前記基材中またはコーティングとして前記基材上に含む、吸着剤物品。
【請求項9】
基材が、コフォーム、接合−梳毛、ニードルパンチ、エアーレイド、ウエットレイド、メルトブローまたはスパンボンド不織布を含む、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
物品に対して0.1から35重量%のFe(III)化合物および0.1から35重量%のポリエチレンイミンが存在する、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
基材が、天然繊維、ポリオレフィンまたはポリエステルを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項12】
基材が、0.01から10mmの厚さを有するウェブを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項13】
基材が、天然繊維不織布、ポリエステル不織布またはポリオレフィン不織布を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
基材が、密閉空間を有する容器の形態であり、前記空間が、望ましくない物質または標的物質を含む蒸気相を含む、請求項8に記載の物品。
【請求項15】
物品が、繊維状不織フィルター材料を含む顔面マスクの形態である、請求項8に記載の物品。
【請求項16】
15ppm未満の望ましくない物質または標的物質の濃度を有する動的気体または蒸気相からの望ましくない物質または標的物質を、請求項8に記載の吸着剤物品により吸着する方法であって、
i.吸着剤を、動的気体蒸気相が1秒未満の接触時間で吸着剤と接触するように配置すること、および
ii.望ましくない物質または標的物質の濃度を動的気体または蒸気相中で低下させること
を含み、
前記動的気体または蒸気相は、層または開口を介する少なくとも1リットル・分−1(16.6cm・秒−1)の流速を有する気体または蒸気の動的流れである、方法。
【請求項17】
吸着剤中に、吸着剤の固形分に対して1.0から80重量%のFe(III))化合物および0.01から80重量%のポリエチレンイミンが存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
基材が、不織布を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
基材が、0.01から10mmの厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
基材が、ポリエステル不織布またはポリオレフィン不織布を含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、米国以外の全ての指定国に対する出願人である米国企業のCELLRESIN TECHNOLOGIES,LLCおよび米国のみの指定に対する出願人である米国市民のWillard E.Woodの名前で2011年7月27日付のPCT国際特許出願として出願され、および2011年6月23日に出願されたカナダ国特許出願第 号の優先権を主張するものである。その内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
気体または蒸気からの低濃度の望ましくない物質または標的物質を静的および動的条件下で吸着または除去することができる繊維、フィルムおよび布を含む物品または構造体に組成物が使用され得る。気体空間または蒸気相からの低濃度の多種多様な望ましくない物質または標的物質を静的または動的条件下で吸着する上で基本的な問題が存在する。静的条件は、気体または蒸気の流れが最小限である、または存在しないことによって特徴づけられる。動的条件は、層または開口を介する少なくとも1リットル毎分(16.6cm/秒)の流れによって特徴づけられる。最小限のppm(parts per million)濃度において、有意な量の多種多様な望ましくない物質または標的物質を吸着することは重大な問題になる。固体表面が、流体と固体との界面の領域において流体(気体または液滴)中の1つ以上の望ましくない物質または標的物質に曝露され、それらを受け入れる、またはそれらに結合すると吸着が生じる。低分圧の望ましくない物質または標的物質は、吸収する傾向を低下させる。吸着という用語は、望ましくない物質または標的物質(望ましくない分子)が流体と表面との間の界面層に蓄積する過程を扱う。吸着過程(表面過程)には吸収、すなわち気体または液体の固相への浸透が付随する。固体材料による気体または液体の全体的な吸込みおよび除去(吸着および吸収)が収着である。
【0003】
密閉された空間または密閉された周囲蒸気相での低濃度では、エネルギー的根拠から、望ましくない分子を吸着させるための物理的原因がほとんどない。
【0004】
吸着理論は、主として、ラングミュア(エネルギー的に均質な固体表面に形成された単相の吸着の概念)およびBET式(Brunauer、EmmettおよびTellerによって提案された多層等温式)、毛管凝縮理論、ポランニー電位理論(吸着温度に無関係な吸着電位および特徴的吸着曲線)、ならびに後者に関連するDR式(吸着エネルギーの考察に基づく吸着)に基づく。ラングミュアおよびBET式は、特に低および高相対圧力の範囲において実験値からの明確な隔たりを有する。
【発明の概要】
【0005】
理論と実験との間の相違に問題がある。これは、吸着過程に影響を与えるさらなる物理的要因、すなわち界面領域における相互作用に起因する効果の存在を示唆している。この相違は、たいていの実際の固体(多結晶質および非晶質)の吸着剤のエネルギー的不均一性に関連している。いずれの理論にも縛られることを望まないが、(固体表面上の欠陥以外に)表面不均一性の概念が構造体における障害になり得ることが実験により証明されたと考えられる。構造的欠陥の存在は、吸着剤の表面特性に有意に影響を及ぼし得る。標的物質が、非常に低圧力の範囲である場合は、吸着は、表面上の最も高活性な部位または非常に小さな孔内で生じる。繊維、フィルムまたは布の機能的形態のポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレンおよび他の当該材料などの合成ポリマー材料による吸着は、この実質的問題の一例である。
【0006】
本発明者らはまた、望ましくない分子または物質の沸点または分圧が低下するに従って、吸着を促進するエネルギー的根拠がなく、気体物質は移動流体または密閉空間の蒸気相中に実質的に残留するため、一定濃度の気体物質の吸着がますます困難になることも見出した。低分圧は、吸着を生じない。気体物質と界面層との分子相互作用は、特定の表面組成および/または孔構造に依存する。蒸気相中の分子が固体表面に近づくに従って、分子間の引力と反発力の間に均衡が確立される。さらに、塊状材料としての、またはコーティング中の多くの吸着材料は、表面上に存在する小さな残留電荷を有し得る、または電荷の分離、すなわち双極子効果を示す。当該既存の電荷または双極子は、いずれも標的物質の表面への接近を抑止し、表面上での実質的な吸着を防止し得る。例えば、多くの容器において、低いが不都合な濃度の望ましくない物質または標的物質が蓄積し、容器内容物中に維持され得る。これらのエネルギーおよび表面効果を克服し、悪臭の吸着性を向上させる実質的な必要性が生じる。
【0007】
静的条件で吸着し、動的条件で驚くべき吸着を得ることができる組成物は、第二鉄(Fe(III)鉄)化合物源およびポリエチレンイミン(PEI)を含む。PEIは、分子の窒素または炭素原子上に置換基が存在しない。吸着剤組成物は、Fe(III)化合物およびPEI化合物、または少なくとも単層コーティング中にFe(III)化合物およびPEI化合物を含み得る。この組成物は、吸着を防止または回避する当該材料の本来の傾向を成功裏に克服することができる。吸着剤材料は、好ましくは、例えば15ppm未満の濃度で、静的または動的気体または蒸気相からの望ましくない物質または標的物質を除去することができる。
【0008】
動的および静的状態の両方における吸着性の向上は、低濃度の望ましくない物質または標的物質を吸着することができる材料の組合せを含む吸着剤から誘導される。荷電効果が小さく、表面積が大きい除去化合物または構造体(吸着体)は、低い物質濃度に対して機能的吸着性を得ることができる。構造的材料は、吸着剤組成物を成分として含有することができ、または基材上のコーティングから吸着性を得ることができる。基材は、フィルム、繊維、ウェブ、織布、不織布、硬質シート、セルロース梱包材料、および密閉空間を含む、または取り囲む他の当該構造体における塊状ポリマーの形態で使用できる熱可塑性材料で作製された天然または合成材料で構成され得る。
【0009】
第1の態様は、Fe(III)化合物およびPEI化合物を含む吸着剤、吸着剤層またはコーティングを含む。
【0010】
第2の態様は、主要部のポリマー塊、ならびにFe(III)化合物およびPEI化合物を含む有効量の吸着剤、吸着剤層またはコーティングを含む。
【0011】
第3の態様において、構造体は、フィルムまたは繊維、および接着性促進PEI化合物に分散されたFe(III)化合物を含む吸着剤のコーティングを含み得る。
【0012】
第4の態様において、この吸着剤層またはコーティングは、大きな比率の溶媒または液体媒体、ならびにFe(III)化合物およびPEI化合物を含む吸着剤の溶液または懸濁液から作製され得る。この溶液または懸濁液は、液体水性媒体を含み、液体水性/非水性混合媒体をも含み得る。
【0013】
最後に、第5の態様において、不織布物品もしくは成形物体、または他の一般的なポリマー形態の製品は、Fe(III)化合物およびPEI化合物を含む有効量の吸着剤、吸着剤層またはコーティングを有し得る。これらは、容器、織布もしくは不織布物品、サシェもしくは他の製品形式を含む。
【0014】
吸着性を織布もしくは不織布、または容器構造体に使用して、望ましくない物質または標的物質の濃度を低減することができる。吸着剤組成物は、その構造体の化合物である、または少なくとも単層コーティングであり得る。本発明の吸着剤は、典型的には、動的もしくは移動流体、または本発明の吸着剤、および望ましくない濃度の望ましくない物質または標的物質を含む密閉周囲蒸気相としても知られる静的密閉空間の意味合いで使用される。濃度は、検出可能限界または人間感知限界未満まで低減されるべきである。可能な限り低い濃度が所望されることが多い。動的状態での接触時間はより短いため、動的条件で吸着を得ることは、静的条件で経験するより困難である。
【0015】
熱可塑性材料は、ある特定の画定最小表面積を有する活性吸着組成物、またはそのコーティングを含有する。約2から50μmの繊維径の繊維を使用する最小被覆熱可塑性表面積は0.1m・グラム−1である。Fe(OH)に関する最小表面積は、約0.5mである。繊維表面積と繊維径との関係については図2を参照されたい。図2を手短に参照すると、不織布の繊維径が4μ未満、特に2μ未満まで低減されると、不織布の表面積が急激に増大することがわかる。表面積が増大すると、繊維コーティング過程およびコーティング溶液の固体が変化して、均一な表面コーティングが達成される。よって、2から20μの範囲の繊維を効果的に被覆することができ、より小さい直径の繊維を被覆することができるが、1から50μ、2から20μの範囲の繊維が最も迅速に被覆され、製造に使用される。
【0016】
材料は、表面に伸びる塊状ポリマー中、または1つ以上の被覆層の表面コーティングにブレンドまたは分散された吸着剤を有し得る。ポリマーの表面は、効果的に吸着するための最小限の量のFe(III)およびPEI化合物を露出させる必要がある。
【0017】
文脈に応じて、実質的に任意の気体もしくは蒸気相、化学種またはそれらの混合物は、動的流れ、または密閉空間もしくは密閉周囲蒸気相に存在する「望ましくない物質または標的物質」であり得る。当該物質は、少なくとも5ppb;約15から0.01ppm;5から0.01ppm;1から0.01ppmまたは0.5ppm未満から0.01ppm(全体積に対する濃度)の濃度で存在し、濃度を検出不可能な限界、人間に対して攻撃的でない限界、または生物的反応をもたらさない限界まで低減するための本発明の吸着特性の対象であり得る。蒸気中のこれらの材料の濃度が低減されるに従って、動的接触時間が1秒未満まで減少するに従って、吸着の困難さが増す。
【0018】
「動的流れ」という用語は、層または開口を少なくとも1リットル・分−1(16.6cm・秒−1)の流速で流れる流体(気体または蒸気)の流れのことである。「気体」は、気体成分の均一な相またはブレンドを指す。「蒸気」は、気相における小さな粒子状材料(しばしば液滴、固体粒子、およびこれらの組合せ)の分散体を指す。
【0019】
「密閉空間または密閉周囲蒸気相」という用語は、流れがほとんどまたは全くない空間に保持された標的物質を含む静的雰囲気を指す。
【0020】
望ましくない物質または標的物質は、気体、蒸気、または液滴もしくは固体の分散体として、密閉空間または密閉周囲蒸気相に存在し得る。これらの物質は、悪臭、刺激物、または攻撃的もしくは非攻撃的な臭気化合物である。
【0021】
「動的除去」、吸着の後に吸収することは、少なくとも、1秒未満の接触時間で層または開口を流れる少なくとも1リットル・分−1(16.6cm・秒−1)の流速の流れによる望ましくない物質の濃度の低減を含む。
【0022】
活性吸着性複合体とともに熱可塑性ポリマー材料を含む熱可塑性組成物は、負電荷および正電荷材料の実質的に中性の均衡を維持し、吸着剤材料の上または中への組成物の吸着を強化することができる。これらの表面におけるFe(III)種とPEIとの組合せにより優れた吸着性が得られる。組成物は、熱可塑性物品の表面の表面積を増大または拡大することができる材料をも含有し得る。拡大された表面積および有利な孔径は、吸着材料への化合物の吸着を強化することができる。本発明の熱可塑性材料は、ウェブ層または構造体、保護バリヤ布または物品、濾過装置、顔面マスク、収納袋、ゴミ袋、脱臭材および他の当該用途を含む多種多様な最終用途に使用され得る。1つの特に有用な用途は、息からの悪臭を除去することができる1つ以上の層を有する顔面マスクである。当該悪臭は、HSおよび有機硫黄化合物から生じる。
【0023】
「繊維」という用語は、従来の意味で使用される。「布」という用語は、典型的には、様々な厚さ、長さ、幅および組成の材料を含む織布ウェブおよび不織布ウェブの両方を指す。製品は、典型的には、本発明の熱可塑性繊維から作製された布を含むが、セルロース材料および亜麻等の他の布でも構成され得る。本発明の材料の応用物を顔面マスク、ティッシュ、布巾、タオル、衣類、家具、自動車等の輸送手段、工業用途または消費者用途の濾過器に使用することができる。織糸または本発明で記載される他の不織布に使用される繊維は、典型的には、比較的小さな繊維径を有する繊維を指す。当該径は、一般に、約1ミクロン未満から100ミクロン程度までの範囲である。当該繊維は、約1から約50ミクロンの直径を有することが多い。集成されると、最終製品は、以上に開示した構造体の1つ以上を含み得る。繊維を熱可塑性層で組み合わせることができ、2つ以上の熱可塑性層を組み合わせることができ、織布を、フィルムまたは他の当該構造体に積層することもできる不織布と組み合わせることができる。多種多様な組合せ、または本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく作製することができる本発明の構造体の組合せが存在する。
【0024】
本発明の文脈での「容器」という用語は、従来の意味で使用される。容器は、空隙または空間を取り囲む構造体を含み、容器は、吸着剤材料またはそのコーティングを含み得る。容器は、例えば、容器内に保持された吸着剤材料の小片を含む空間を取り囲み得る。当該容器は、本発明の蒸気相または雰囲気を密閉することができる実質的に任意の物品を含み得る。容器は、セルロース材料、プラスチック、熱硬化性樹脂、金属および他の従来の梱包材料を含む実質的にあらゆる材料から作製され得る。容器は、実質的に任意の形状または寸法を得ることができる。容器の内容積は、10ミリメートル程度から100リットルを超える範囲であるが、典型的には約100ミリメートルから4リットルの大きさである。容器の構成は、軟質プラスチック製容器、硬質および半硬質シート、吹込成形プラスチックボトル、折重ねまたは貼合せ板紙材料、プラスチックおよびセルロース系封筒ならびに他の容器構成を含む実質的に任意の構成であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】試験セルの断面を示す図である。
図2】繊維径の変化に伴う繊維の表面積の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
吸着性組成物は、Fe(III)、鉄酸塩またはFe(OH)を含む第二鉄源とポリアルキレンイミン(PEI)との組合せを表面上に含む。有効量の吸着剤をポリマー塊上に含めることによってポリマー組成物を改質することができる。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
吸着性組成物は、層またはコーティングの形態であり、シリカ、CD(シクロデキストリン)、置換シクロデキストリン(置換CD)、またはペンダントCD部分を有するポリマーをも含み得る。吸着剤および場合による成分を含むこれらの材料を、従来の加工技術を使用して、被覆し、積層して、様々な有用なフィルム、シート、繊維、不織布ウェブ、一体式構造体または他の形にすることができる。これらの有用な形態を容器構成に組み込むことができる。
【0031】
気体または蒸気を形成し得る実質的に任意の化学種は、望ましくない物質または標的物質であり得る。望ましくない物質または標的物質は、移動流体、気流もしくは液体中に、または気体、蒸気、もしくは液体もしくは固体の分散体として密閉空間もしくは密閉周囲蒸気相中に存在し得る。これらの物質は、しばしば悪臭、刺激物、または攻撃的もしくは非攻撃的な臭気化合物である。当該化合物の化学系列としては、炭化水素、C3+アルコールまたは酸、硫黄組成物、アミンが挙げられ、アルカン、アルケン、アルキン、アルカンチオール、硫化アルキル、アルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸、エーテルおよびケトンを挙げることができる。非限定的な化合物例としては、HS、メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、2−ブタンチオール、硫化カルボニル、硫化メチルアリル、硫化メチル、二硫化ジメチル、三硫化ジメチル、硫化エチル、硫化メチルプロピル、アリルメルカプタン、ギ酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ジアセチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルメチルアミン、ブチルアミン、シクロプロピルアミン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、アレン、イソブテン、1,3−ブタジエン、1−ブチン、2−メチルプロペン、2−メチル−2−ブテン、シクロプロパン、シクロブタンおよびメチルシクロプロパン等が挙げられる。これらの悪臭の多くは、口臭のある息に存在する。
【0032】
当該物質は、少なくとも5ppbまたは約15から0.010ppm(10ppb)の濃度で存在し、人間によって感知できない濃度、または生物的反応をもたらさない限界に低減するための本発明の吸着特性の対象であり得る。攻撃的限界は、望ましくない物質または標的物質を感知する個人にとって不都合または不愉快である限界を指す。生物的反応をもたらす限界は、フェロモンまたはエチレンなどの気体状ホルモンが生物有機体においてその所望の結果をもたらすことができる量を指す。
【0033】
吸着剤として使用されるポリエチレンイミンは、環式モノマーエチレンイミンを重合することによって作製されたポリアミンである。典型的なポリマーは、一次末端(−NH)基、ポリマー内および分枝鎖における二級(−NH−)アミン基、ならびに分枝点における三級アミン基を含み得る。直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)は、末端一級アミン基とともに、主として二級アミンを含む。分枝状PEIは、一級、二級および三級アミノ基を含む。直鎖状PEIは、室温において固体であり、分枝状PEIは、全ての分子量において液体である。直鎖状ポリエチレンイミンは、低pHで、高温または低温の水、メタノール、エタノールまたはクロロホルムに可溶であり、ベンゼン、エチルエーテルおよびアセトンに不溶である。ポリエチレンイミン(CAS登録番号09002−98−6)は、以下の一般式で表される。
H(−NHCHCH−)NH;または
H(NACHCH−)(NACHCH−)(−NACHCH−NH)H;各A1は、独立に、水素、アルコキシ基または直鎖状もしくは分枝状ポリエチレンイミン基であり、各xは、独立に5から20,000である。
【0034】
ポリエチレンイミンは、平均分子量が約500から約1,000,000であり、好ましくは約2,000から約800,000であり、より好ましくは約10,000から約750,000であり、最も好ましくは約50,000から約750,000である。さらなる材料の非限定的な例としては、エピクロロヒドリン改質PEI、エトキシル化ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンジアミンデンドリマー、ポリ(1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン)およびポリ(ジメチルアミン−co−エピクロロヒドリン−co−エチレンジアミン)が挙げられる。
【0035】
その構成に有用な好適なFe(III)化合物は、鉄酸塩、または独特の鉄の化学量論組成によりオキシ水酸化第二鉄としても知られる水酸化第二鉄Fe(OH)を含む。典型的には、Fe(III)化合物は、ポリマーと組み合わされ、被覆して吸着剤層とされ、被覆および最終的な集成後、Fe(III)は、典型的には水酸化第二鉄に変換される。多種多様なIII鉄(Fe(III))化合物源を使用して、活性吸着剤材料を形成することができる。
【0036】
Fe(III)源は、任意の鉄供給材料であり、カルボニル鉄、鉄塩、キレート化鉄、カプセル化鉄、鉄錯体およびそれらの混合物を挙げることができる。本発明により想定される例示的なFe(III)源は、FeClなどのハロゲン化第二鉄、クエン酸第二鉄、ニトリロ三酢酸第二鉄(Fe(III)−NTA)、Fe(OH)、クエン酸アンモニウム第二鉄、Fe(NO、Fe(SO、酸化第二鉄水和物、硫酸アンモニウム第二鉄、クエン酸ナトリウム第二鉄、エデト酸ナトリウム第二鉄、酢酸第二鉄、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄、フマル酸第二鉄等のいずれかを含む。コーティングの前または後にFe(III)に酸化される場合は、コハク酸第二鉄、水酸化第一鉄、硝酸第一鉄、炭酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム第二鉄、酒石酸第二鉄、酒石酸カリウム第二鉄、および有機第二鉄化合物を含む第一鉄塩を使用することができる。
【0037】
好適なFe(III)源は、水酸化第二鉄、アルカリ金属鉄酸塩、塩化第二鉄、クエン酸第二鉄、硝酸第二鉄、ニトリロ三酢酸第二鉄、粉末状オキシ水酸化第二鉄、他の同様の鉄塩およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
第二鉄の形態の多くの鉄化合物は、基材上で活性な微細形態にて揮発性硫黄化合物などの悪臭を除去することができる。Fe(OH)源とPEIとの組合せは、過去の化学で達成されなかった程度の動的除去をもたらすことが試験により証明された。除去は、粒径、形態および表面積を含む表面の性質に直接関連する。PEIと組み合わせたFe(OH)の表面は、FeとPEIとの同様の組合せより良好な除去特性を有する。
【0039】
工業用途において、塩化鉄(III)は、下水処理および飲料水の精製に使用されている。これらの用途では、やや塩基性の水の中のFeClが水酸化物イオンと反応して、水酸化鉄(III)、またはより厳密には酸化鉄水酸化物として知られるFeO(OH)で定式化される水酸化鉄の綿状沈殿物を形成する。
【0040】
Fe3++4OH→Fe(OH)→FeO(OH)・H
多くの化学種が、酸化−水酸化鉄(III)と呼ばれる。これらの化学物質は、鉄の酸化物−水酸化物であり、無水形態(FeO(OH))または水和形態(FeO(OH)・nHO)で生じ得る。他の場合は、一水和物(FeO(OH)・HO)が水酸化鉄(III)(Fe(OH))として記載されることがあり、水和酸化鉄としても知られている。活性水酸化第二鉄は、BET表面積が235+/−8m・g−1の高度に多孔質の吸着剤(ミクロ細孔容積が約0.0394+/−0.0056cm・g−1、メソ細孔容積が約0.0995+/−0.0096cm・g−1のメソスフェア)である。
【0041】
典型的には水溶液中で塩化第二鉄を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは重炭酸ナトリウムと反応させることによって酸化−水酸化鉄(III)を得ることができる。
【0042】
FeCl+3NaOH→Fe(OH)+3NaCl
FeCl+3KOH→Fe(OH)+3KC1
FeCl+3NaHCO→3NaCl+Fe(OH)+3CO
いくらかの量のNa、KまたはNaCl塩が、これらの合成特性によりコーティング中に残留する。
【0043】
あるいは、鉄酸カリウム(KFeO)の酸化還元反応により、環境的に無害であり、「グリーン酸化剤」と記載されてきた錆様酸化鉄を生成する。KFeOは、水と接触すると分解して酸素を発生し、水酸化第二鉄を形成することによって示されるように反応性である。
【0044】
4KFeO+10HO→3O+4Fe(OH)+8KOH
場合により、その構造は、CD化合物、または非晶質シリカ−シリカゲル、沈降シリカおよびヒュームドシリカの3つの形態の1つ以上を含み得る。
【0045】
好適な材料の粒径は、約0.001から10または0.050から700ミクロンの範囲であり、好適な材料は、約60から750m・gm−1または200から1,000m・gm−1の範囲の表面積を有する。本発明の組成物は、しばしばFe(III)化合物およびポリエチレンイミン材料をポリマーまたはコーティング液に分散させることによって調製される。一実施形態において、Fe(III)ポリエチレンイミン材料の表面に比較的大きな表面を導入する目的で、吸着体をCDまたはシリカ材料とともに使用することができる。
【0046】
シリカ粒子を使用して、本発明の材料の表面積を増大することができる。特に、本発明での使用に好適であるシリカゲル粒子は、グラム当たりの表面積が大きい比較的小さな粒径の材料である。二酸化珪素(SiO)の一形態である合成非晶質シリカ(CAS#7631−86−9)が製造され、かくして天然の非晶質シリカ、例えば珪藻土と差別化される。人工の製品として、それは、95%を超える純度の非晶質シリカであるのに対して、天然の非晶質シリカは、結晶形態のシリカをも含む。非晶質シリカを、それらの異なる製造方法によって特徴づけられる2つの形態、すなわち沈降シリカおよびシリカゲルを含む湿式法シリカ(CAS#112926−00−8)およびヒュームドまたは焼成シリカを含む加熱法シリカ(CAS#112945−52−5)にさらに分けることができる。ヒュームドシリカは、基本的に非多孔性であるのに対して、沈降シリカはいくらかのミクロ細孔(>0.3μm)を含み、シリカゲルは高度に多孔質で、0.0001から1μmの孔径を有するマクロ、メソおよびミクロ細孔を含む。孔径は円筒形孔の直径または溝の両壁の間の距離として測定された孔の幅で定義される。ヒュームドシリカは、Degussa社(Areosil)およびCabot社(Cab−O−Sil)によって商業的に製造されている。シリカゲルは、W.R.Grace社(Davisil)およびMerck Chemicals社によって製造されている。
【0047】
シクロデキストリンを未改質材料として、置換材料として、またはCDグラフトポリマー材料として使用することができる。CDは、CD糖転移酵素(CGTアーゼ)などのある特定の酵素の作用によって形成されたα−Dグルコースの環式オリゴマーである。それぞれ6個、7個および8個のα−1,4−結合グルコースモノマーからなる3つのCD(アルファ、ベータおよびガンマ)が商業的に入手可能である。これらのオリゴ糖に対する最も安定した三次元分子構成はトロイドであり、トロイドの大小の開口が一級および二級ヒドロキシル基を提供する。グルコースモノマーの特定の結合が、特定の容量の内部空洞を有する硬質の円錐台状の分子構造をCDに与えている。CDを、置換CD、またはペンダントCD部分を有するポリマーとして使用することができる。CD分子は、反応に利用可能な一級ヒドロキシルをグルコース部分の6位に有し、二級ヒドロキシルを2位および3位に有する。CD分子の幾何学構造および環置換基の化学作用により、全てのヒドロキシル基の反応性が等しいわけではない。しかし、配慮および効果的な反応条件により、実質的に乾燥したCD分子を反応させて置換またはグラフトCDを得ることができる。望まれる場合は、選択された置換基を有するCD、すなわち一級ヒドロキシルのみが置換されたCD、または1つまたは両方の二級ヒドロキシル基のみが選択的に置換されたCDをグラフトすることもできる。2つの異なる置換基または3つの異なる置換基を有する誘導体化分子の指向性合成も可能である。これらの置換基は無作為に配置する、または特定のヒドロキシルに向けることができる。これらの置換基は、それらがグラフト反応部位となるように選択されてよい。例えば、CDのアルコール誘導体(例えばヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピル)およびアミノ誘導体をポリマー骨格上の置換基と反応させてグラフトCDを作製することができる。
【0048】
置換CD材料を製造するための好適な予備的なスキームは、CD分子の一級または二級ヒドロキシルにおける反応を伴う。CDのヒドロキシル官能基が置換基と反応して反応物質を形成することを意味する。CD分子の一級または二級環ヒドロキシル上のエステルまたはエーテル結合の形成は、周知の反応を伴う。この特許開示の目的のために、CDに対する「置換度(D.S.)」という用語は、CD環の各グルコース部分上の統計的平均置換基数を指す。
【0049】
本発明は、ペンダントCD部分を有するポリマーをも含み得る。例えば、当該技術分野で既知の溶液、溶融および固体状態経路を使用して商業的なポリマー官能化を達成することができる。その方法は、一般にポリマー上にモノマーを共有結合させる。例えば、主にオレフィン部を構成する、オレフィンとビニルモノマーなどの他のモノマーとのコポリマーを含むポリオレフィンポリマーを使用することができる。本開示に有用なポリオレフィンとしては、例えば、ポリ(エチレン)またはPE、ポリ(プロピレン)またはPP、ポリ(エチレン−co−プロピレン)またはPEP、エチレン/アクリル酸メチルコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン−α.−オクテンコポリマー、エチレン−ブテンコポリマー、ならびに同様のポリマーおよびコポリマーが挙げられる。ポリオレフィンを不飽和無水物およびカルボン酸などの不飽和化合物で機能的に改質することができる。さらに、例えば、エチレン−アクリレート(エチルまたはブチル)−無水マレイン酸、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジルおよび同様のポリマーの改質ターポリマーが存在し得る。ある実施形態において、任意の梱包材料グレードのビニルポリマーを使用することができる。いくつかの実施形態において、メルトインデックスが約0.7から1,800g・10分−1のポリマーから本発明の改質ポリマーを誘導することができる。他の実施形態において、メルトインデックスが約1から約1,200g・10分−1のポリマーから本発明の改質ポリマーを誘導することができる。
【0050】
官能化ポリオレフィンを本発明のコーティングとともに使用する、またはCDペンダントポリマーとブレンドすることができる。官能化ポリオレフィンは、食品工業用多層フィルムおよびボトルにおける押出または共押出接着樹脂、自動車工業用エンジニアリングポリマーおよびプラスチック燃料タンク接着樹脂における相溶化剤、ケーブル用および屋根葺き構造に使用される充填材用の無ハロゲンポリマーの可撓化および相溶化、ならびに同様の用途などの広範な工業用途を有する。本開示において有用な官能化ポリオレフィンとしては、例えば、マレイン化ポリエチレンおよびポリプロピレン(ペンシルバニア州PhiladelphiaのAtofina Chemicals社のOREVACおよびLOTRYL、テキサス州HoustonのEquistar Chemicals L.P社のPLEXARおよびINTEGRATE樹脂、デラウェア州WilmingtonのDuPont社のFUSABOND樹脂、トルコのAnkaraのManas社のOPTM樹脂、ニューヨーク州Rye Brookの三井化学社のADMER樹脂、およびテキサス州IrvingのExxon/Mobil社のEXXELOR)、無水マレイン酸官能化エチレン酢酸ビニルコポリマー(Atofina社のOrevac EVA−MAまたはDuPont社のFusabond CシリーズEVA−MAなどのEVA−MA);EPDM(エチレン−プロピレン−ブタジエンまたはエチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエンポリマーなど)、エチレン/1−ブテンコポリマー、エチレン/1−ヘキセンコポリマー、エチレン/1−オクテンコポリマー、エチレン−nアクリル酸ブチル−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸ターポリマー、またはエチレンとメタクリル酸グリシジルとのコポリマーが挙げられる。オレフィン系でない他のポリマーを本発明の実施形態に採用することもできる。例えば、スチレン−無水マレイン酸(SMA)コポリマーは、特に有用なグループの反応性コポリマーである。SMAコポリマーは、例えば、オハイオ州AkronのA.Schulman社のHiloy SMAコポリマー、コネチカット州FairfieldのGeneral Electric社のPrevex、SMA、ペンシルバニア州Calgary、Alberta Moon TownshipのNOVA Chemicals社のDylark SMAとして入手可能である。エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエンポリマーを以下のように表すことができる。例えば、約70から90重量%のエチレン、約10から30重量%のプロピレンおよび約5重量%までの1,4−ヘキサジエンを得るようにx、yおよびzを選択することができ、RおよびRは、同様の基、Hまたは末端基であってもよい。
【0051】
スチレンと無水マレイン酸とを共重合してSMAコポリマーを形成すると、材料は、ポリスチレンより高いガラス転移温度が付与され、無水マレイン酸官能基が提供されるために化学的に反応性になる。SMAコポリマーは、無水マレイン酸の相互作用または反応が望ましい界面効果を提供するブレンドまたは複合体でしばしば使用される。SMAは、自動車工業において、内装部品の射出成形および熱成形のために利用される。ポリスチレンに対するSMAの優越は、自動車用途に必要とされるより高い熱撓み温度に起因する。SMAコポリマーは、1つ以上の基で容易に官能化されて調整可能な表面エネルギーおよび化学的相溶性を与えることができる反応性無水マレイン酸部分により、バインダーポリマーとしても大いに使用されてきた。例えば、Keilらの米国特許第5,576,145号明細書、同第5,698,370号明細書および同第5773518号明細書には、2つの不相溶ポリマーの間の層間接着を確保する手段として、無水マレイン酸残基を、分子量が100を超える約50から約65モルパーセントのアルキル、アリール、シクロアルキル、アルカリールまたはアリールアルキルアルコールにモノエステル化したSMA系バインダーポリマーが開示されている。
【0052】
本発明のCDグラフトポリマーを形成するためにCDをグラフトすることができる別の有用なポリマーは、ポリプロピレンである。商業的には、ポリプロピレンに結合した無水マレイン酸が、例えば、ベルギーのHeverleeのHoneywell Performance Products社、またはミズーリ州St.LouisのSigma Aldrich社から入手可能である。しかし、無水マレイン酸はまた、例えば、無水マレイン酸をポリプロピレンの溶融押出流に添加することによる押出反応にてポリプロピレンに容易に添加される。当該反応スキームでは、CDを有利には押出経路のさらに下方で添加することができ、それが改質ポリプロピレン上の無水マレイン酸基と反応することができる。過酸化水素などのラジカル源を使用して無水マレイン酸をポリプロピレンに組み込む一般的な反応スキームを以下に示す。
【0053】
本開示のペンダントCD組成を有するポリマーは、例えば、乾燥CDまたはその誘導体(水分<0.10%)、官能化ポリオレフィンおよび場合により第2のポリオレフィンを押出機に、CDが溶融ポリマーとしての官能化ポリオレフィンと反応し、CDが押出機を移動して反応生成物を形成する温度で供給することによる反応性押出を用いて調製され得る。1つの有用なポリマー類は、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび関連コポリマーおよびターポリマーを含むポリオレフィンである。いくつかの実施形態において、シクロデキストリン(CD)、置換CDまたはペンダントCD部分を有するポリマーの混合物を未改質ポリオレフィン樹脂と使用またはブレンドすることができる。これらの実施形態において、未改質熱可塑性樹脂は、約0.5から1800g・10分−1のメルトインデックスを有することができ、改質ポリマーは、約0.7から1,500g・10分−1または約1から1,200g・10分−1のメルトインデックスを有するポリマーから誘導され得る。他の有用なポリマー類はポリエステルである。
【0054】
層または複合体を通る空気の流量は、用途に応じて1から50リットル・分−1、5から20リットル・分−1(16.6から833.3cm・秒−1または83から333cm・秒−1)の範囲であり得る。顔面マスクでは、容量は、吸気/呼気容量であり(男性の肺容量対女性の肺容量)、通常の呼吸または急速な呼吸により、繊維に対する接触時間が約0.1から0.01秒未満および約0.05から0.01秒になる。通常の静的または動的HS洗浄処理は、数分の接触時間を必要とする。シリカモノリス上のいくつかのPEIコーティングは、直線流に基づいて0.1から0.2秒の範囲の接触時間を有する。開示された吸着剤/吸着剤構造体は、Fe(OH)/PEI/繊維表面に対するHSの接触時間が極めて小さくても有効であり得る。動的試験の代わりに静的試験を使用すると、たいていのコーティングは、表面積/幾何学構造および悪臭、Fe(III)およびPEIの濃度に応じてある程度の除去をもたらす。動的試験において、カチオンおよび鉄酸塩アニオン(FeO−2を有する鉄酸塩化合物、例えば鉄酸ナトリウムNa(FeO)もしくは鉄酸カリウムK(FeO)またはFe(OH)とPEIとを組み合わせると除去の向上が得られる。鉄酸塩化合物は、マスク層においてFe(OH)に変換される。
【0055】
有用な構造体は、基材とともに基材中に活性濃度のFe(III)およびPEIを含み得る、または基材は、Fe(III)およびPEIのコーティングを含み得る。当該基材は、繊維、フィルム、布(織布または不織布)シート、硬質もしくは半硬質層または他の物品であり得る。その構造体は、構造体の化合物または除去層として吸着剤を有する単一または多層の集成体を使用することができる。構造体を通過する動的な流れから悪臭物質を除去することが可能な活性化学作用を有する除去層は、吸着を向上することができる。
【0056】
吸着剤を基材材料とブレンドすることによっても、構造体または基材をFe(III)化合物およびポリエチレンイミンの溶液で被覆することによっても除去層を作製することができる。基材は、フィルム、繊維、シート、半硬質もしくは硬質シート、容器、不織布または織布等の形態の任意の材料であり得る。基材は、天然または合成ポリマーであり得る。
【0057】
有用な基材材料の例は、ポリエステル不織布、合成不織ポリプロピレンおよび天然織木綿インターロック材料などの天然材料または合成材料である。基材材料を、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリ乳酸、ポリエステル(PET、CPETおよびrPET)、ナイロン、アセテート、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリブタジエンおよびポリα−オクテンなどのポリ−α−オレフィン、ならびにナイロン−6およびナイロン−6,6などのポリアミド、ポリ尿素、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリケトン、ポリ(塩化ビニル)、ならびにフルオロポリマーからなる群から選択することができ、シリコーンポリマーは、有用な物品を形成するのに広く使用されているポリマーである。同様に、多くの商業的に有用なコポリマーおよびターポリマー等を使用することができる。例えば、ポリエステル、PLAポリマーおよびコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリ(エチレンオキシド)−co−(プロピレンオキシド)、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびポリ(エーテル−エーテル−ケトン)等は、様々な最終用途に有用なコポリマーおよびターポリマーである。フィルムまたは繊維に成形することが可能な任意の他のポリマーおよびコポリマーを使用することができる。天然繊維は、シートまたは織布およびそれらの組合せに成形することが可能な木綿またはセルロースを含む。
【0058】
ポリエステルは、それにより多くの容器、不織布および様々な他の物品が作製される有用なポリマー類である。ポリエステルの用途は、同時係属中の米国特許出願第10/163,817号に記載されている用途を含む。本発明の材料とのブレンドに組み込む、またはそれで局所的に被覆することができる1つの有用なポリエステル材料は、ポリ乳酸またはポリラクチド(PLA)である。PLAは、再生可能な資源に由来し、−−CH(R)−−C(O)−−O−−の一般的繰返し単位を有する生分解性の熱可塑性脂肪族ポリエステルである。それは、最も一般的には、トウモロコシデンプンまたはサトウキビなどの出発材料から形成される。細菌発酵を利用して乳酸を製造し、それをオリゴマー化し、次いで触媒作用によって二量体化して、環開重合のためのラクチドモノマーを作製する。それは、最も一般的にはオクタン酸第一錫または塩化錫(II)開環触媒を使用して環開重合から高分子量の形態で容易に製造され得る。PLAをたいていの熱可塑性樹脂と同様に(例えば従来の溶融紡糸法を使用して)繊維およびフィルムに加工することができる。Cargill社の完全子会社のNatureWorks LLC社は、商品名NatureWorksポリマーでPLAを製造している。PLAを得ることができる他の企業としては、トヨタ社(日本)、Hycail社(オランダ)およびGalactic社(ベルギー)が挙げられる。PLAは、生分解性であるため、食品梱包材料、バラ詰め梱包材料および使い捨て容器などの物品に向けたバイオプラスチックの調製に採用され得る。PLAを繊維にすることも可能である。
【0059】
基材は、吸着剤に加えて、様々な実施形態において、天然および合成繊維の混合物、反応性繊維、捕捉用繊維(例えば、ゼオライト、活性木炭および同様の捕捉剤)、ポリ乳酸などの生分解性ポリマー材料、坪量低減剤、またはそれらの組合せを含み得る。本開示の容器は、通気性、伸縮性、形状またはボディ追従性、衣服様美観および感触、剛性、高強度、透明性または不透明性、およびなめらかな表面またはパターン化された表面等の一連の特性が付与されてよい。
【0060】
それらの組成物は、密閉雰囲気または蒸気相内の望ましくない物質または標的物質の濃度の低減に向けられる。当該雰囲気または蒸気相は、容器内に保持される、または実質的に容器に取り囲まれることが多い。本発明の容器の重要な特性は、本発明の雰囲気または蒸気相を封じ込め、密閉された雰囲気または蒸気相からの本発明の望ましくない組成物または標的組成物の濃度を低減する目的で、本発明の組成物から作製する、またはそれと組み合わせることが可能なことである。この点で、本発明の容器の製造において、本発明の組成物を、容器を作製する材料に組み込むことができる。例えば、PETプラスチック容器内に保持された蒸気相内に形成し得る望ましくない物質または標的物質の濃度を低減することができる本発明のFe(III)およびPEI化合物ならびに他の材料を含む熱可塑性ポリエステルからPET飲料容器を作製することができる。あるいは、容器の内部を吸着剤組成物で被覆することによって当該容器を作製することができる。
【0061】
あるいは、挿入物を容器の内部に入れることによって挿入物を利用することができる。挿入物材料を本発明の組成物から作製する、または本発明の組成物で被覆することができ、挿入物が吸着可能であり、本発明の内部構造体内に保持されるのであれば、本発明の組成物は、望ましくない組成物または標的組成物の濃度を低減することができる。本発明の組成物、または本発明の組成物で被覆された材料を含む挿入物は、多種多様な実施形態をとることができる。例えば、軟質食品包装材を本発明の組成物で被覆することができる。当該包装材は、熱可塑性材料、またはセルロースもしくは紙由来組成物から作製され得る。当該包装材は、一次包装構造体として使用され得る、または例えば朝食用シリアルの内封筒に使用されるように、食料製品を含む内封筒を含み得る。本発明における熱可塑性組成物を食品梱包に有用な実質的に任意の形状または構成に形成することができ、本発明のコーティング組成物を梱包技術に有用な実質的に任意の容器表面に塗布することができる。
【0062】
本発明の別の実施形態は、吸着剤組成物を含む多孔質不織布(スパンボンドまたはメルトブロー)または織布である。当該布を使用して、動的流れ、または梱包物の閉鎖雰囲気からの望ましくない物質または標的物質を連続的に低減することができる。
【0063】
本発明の組成物をサシェの形態で使用することができる。サシェは、粒子状フィルムまたは繊維の形態で本発明の組成物を含み得る。あるいは、サシェを本発明の組成物から作製された繊維またはフィルムで構成することができ、本発明の材料を含むように形成することができる。本発明のサシェは、透過性、多孔質または非多孔質の材料から作製された中空容器を含む。容器は、封筒、シート、不織布または織布形態を含むが、それらに限定されない任意の形態をとることができる。接着閉鎖、ヒートシール技術または縫合を含む任意の閉鎖技術を使用して容器を閉鎖することができる。多孔質材料は、本発明の標的吸着剤に対して多孔性である。本発明のサシェは、筐体に形成することができる透過性または多孔質材料から作製される。布、不織布またはサシェは、天然繊維で構成され得る、または織布、不織布もしくはフィルムの形態の合成熱可塑性物質から作製され得る。吸着剤が生じる際に通過できるように壁が不連続の開口部を有する場合は、吸着性物品を非多孔質材料から作製することもできる。
【0064】
一部の実施形態において、本開示は、吸着剤を含む、または吸着剤コーティングを有する本発明のフィルムを含む容器物品を提供する。当該フィルムは、好ましくは、500μm以下の厚さを有し、より好ましくは0.5から400μmの厚さを有する。ある特定の薄膜用途および/またはハンドリングにおいて、フィルムの厚さは、好ましくは5から200μmであり、より好ましくは10から100μmである。フィルムは、ポリオレフィン樹脂と化学的に改質されたポリオレフィン樹脂とのブレンド、または熱可塑性樹脂(例えば、PE、PP、PETおよびポリ乳酸(PLA))のブレンドを含む熱可塑性ポリマー組成物を含み、従来の方法を使用して作製され得る。軟質フィルムは、典型的には、直線または円形ダイから溶融押し出しされ、例えば、約4マイクロメートル(μm)から約200μmの厚さを有し得る。フィルムをより大きな厚さで押し出し、次いで一方向または二方向に延伸して、薄い均一のフィルムにしてもよい。押出後に一軸または二軸延伸しても、フィルムの強度およびバリヤ性をさらに向上させることができる分子構造の配向をもたらすことができる。熱可塑性材料の押出およびラミネーション方法は、米国特許第3,400,190号明細書;同第3,440,686号明細書;同第3,477,099号明細書;同第3,479,425号明細書;同第3,476,627号明細書;同第3,524,795号明細書;同第3,557,265号明細書;同第3,583,032号明細書;および同第3,365,750号明細書に記載されている。多くの共押出構造体が、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンで構成されている。これらのポリオレフィンは、本発明の組成物に有用である。低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂は、それらの強靱性およびシール性により共押出構造体で広く使用されてきた。高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂は、それらの水分バリヤ性、剛性および機械加工性により選択されている。ポリプロピレン(PP)は、配向を通じて、高耐衝撃性および剛性を有する透明な機械加工性フィルムを提供するその能力により選択されている。ポリオレフィンを他の樹脂と組み合わせて、多層機能性を達成することができる。エチレン−酢酸ビニル(EVA)、エチレン−アクリル酸(EAA)およびエチレン−メタクリル酸(EMA)のコポリマーは、それらの低温シール性により表層として常に使用されている。
【0065】
半硬質フィルムは、直線ダイ溶融押出またはカレンダー法によって製造される。多層構造は、例えば、共押出または接着ラミネーションであり得る。典型的な熱成形グレードのフィルムは、例えば、約200ミクロンから約1ミリメートルの厚さを有し得る。共押出シート構造体は、高バリヤ梱包材料であり得る。ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレンは、半硬質梱包材料用途に向けた共押出で使用される支配的な構造材料である。半硬質梱包材料のための既知の共押出構造体は、米国特許第3,479,425号明細書および同第3,557,265号明細書に記載されている。構造樹脂の選択は、使用要件、共押出加工性および容器形成上の考慮事項に依存する。当該フィルムを熱で軟化させ、タブ、ポット、ブリスター、トレーおよび籠に真空形成することができる。
【0066】
硬質フィルムは、例えば、押出、共押出、異形押出、射出成形、圧縮成形、反応射出成形、射出吹込み成形、または当該技術分野で既知の任意の他の熱的方法によって作製され得る。硬質構造体は、典型的には、1ミリメートルを超える厚さを有し、2.0cmまでの厚さ、またはさらにより大きな厚さを有してもよい。これらの容器の多くは、大きな壁厚が十分なバリヤ性を与えるため単層構造である。高バリヤ性が必要な場合は、多層構造技術を使用することができる。1つの当該硬質構造体は、食品、衣類、汚れ物および家庭廃棄物等を保管するための保管ユニットである。当該構造体は、例えば、おむつバケツ、冷蔵庫の野菜箱、再利用可能な食品容器、一般的な保管箱またはゴミ箱であり得る。
【0067】
複合材料、典型的には多層プラスチック構造体をさらに拡大して、1つ以上のプラスチックまたは非プラスチック材料を含めることができる。プラスチックと組み合わせて複合体を形成することができる材料は、例えば、熱硬化性樹脂、アルミニウム、紙、フェルト、板紙、不織布および同様の材料であり得る。紙、板紙、箔および熱可塑性ポリマーを組み合わせると、例えばシール性の高バリヤ構造体を得ることができる。多層梱包構造体は、米国特許第3,274,905号明細書;同第4,720,039号明細書;同第5,829,669号明細書および同第6,244,500号明細書に記載されている。熱可塑性材料を板紙と組み合わせると、丸形、キャニスターおよび成形複合板紙管、板紙バケツ、繊維カートリッジなどの密封性の硬質複合構造体を得ることができる。当該構造体の一般的な用途は、例えば、粉末飲料および乳児用粉乳、シリアル、コーヒー、スナック菓子、ナッツ、クッキーおよびクラッカー、糖菓、スパイス/調味料、栄養補給剤およびペットフードであり得る。当該用途において、本発明の組成物は、特に梱包物内の望ましくない食品分解風味および臭いを生じやすい食品に使用される場合は、高バリヤ性梱包物に対して新たな梱包性能特性を提供する。
【0068】
多機能性梱包材料樹脂を、例えば共押出技術を使用して1つの製造工程に組み込むことができる。多層構造体は、単一ダイからのポリマーの同時押出によって形成される異なるポリマーの異なる共押出層である。ラミネーションまたは共押出によって製造された多層フィルムは、単層フィルムと比較して多くの、または全ての性能特性の向上をもたらすことができる。典型的には、多層プラスチックフィルムは、本発明の組成物を、所望の機能性に応じて1つ以上の層、典型的には密閉雰囲気に曝露される層に組み込むことができる。
【0069】
共押出多層構造体を単一樹脂、不平衡および平衡の3つの範疇に分けることができる。例えば、1つのポリマーのみを使用した多層フィルム(AAA)、2つ以上のポリマーの組合せによる不平衡共押出フィルム(ABC)、および2つ以上のポリマーの組合せによる平衡多層構造体(A/B/C/B/A)が存在し得る。不平衡構造体は、典型的には、機能層をヒートシール樹脂と組み合わせたものである。平衡構造体は、一般には、フィルムの外面および内面の両方に同一のヒートシール性樹脂を有する。
【0070】
一部の実施形態において、本開示は、布を含む容器物品を提供する。当該布は、密閉空間または密閉周囲蒸気相を含む構造体の一部であり得る。布は、織布または不織布ウェブを含み、ウェブは、ポリオレフィン樹脂と化学的に改質された樹脂とのブレンド、または熱可塑性樹脂(例えば、PE、PP、PETおよびポリ乳酸(PLA))のブレンドを含む繊維を含む。物品は、スパンボンド布、メルトブロー布、エレクトロスパン布およびそれらの組合せを含む不織布ウェブを含む。スパンボンド布およびメルトブロー布の例は、当該技術分野で既知であり、スパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SMS)、スパンボンド−メルトブロー−メルトブロー−スパンボンド(SMMS)および同様の順列または組合せであってもよい。ゴミ箱、靴箱、食品保管箱もしくは瓶、洗濯籠、または衣類箱もしくは袋などの他の物品は、有利には、本発明の組成物が組み込まれたライナーを含んでいてもよい。さらに、使い捨てのプラスチックゴミ袋、衣服袋、おむつ袋および掃除機袋等に使用されるポリオレフィンを、共有結合したCDを有する有効量のポリオレフィンを含むポリマーを使用して作製することもできる。ある実施形態において、上記の方法のいずれか、またはスパンボンド、メルトブロー、ナノ繊維、多孔質フィルムまたはコフォームを含む溶融に基づく方法のいずれかを用いて上記物品または構成要素のいずれかを調製または加工して、所望の物品または構成要素構造体およびそれらの組合せを形成することができる。ある実施形態において、水流交絡、接合−梳毛、ニードルパンチ、エアレイド、ウェットレイド、ならびに同様の方法および構造、またはそれらの組合せを含む短繊維または天然繊維に基づく方法または構造およびそれらの組合せのいずれかを用いて上記物品または構成要素のいずれかを調製または加工することもできる。
【0071】
本開示における繊維は、一般には、約0.1ミクロンから200ミクロンおよび約2から50ミクロンの直径を有する材料の連続的長さを指す。当該繊維を綿毛、ウェブ、織布もしくは不織布、または複合材料として使用することができる。それらから形成されたウェブおよび布は、二成分繊維をも含み得る。二成分繊維技術は、製造者が、例えば、コストを削減すること、強度および軟度を向上させること、超微細繊維を製造すること、膨れ、捲縮またはその両方を改善すること、および同様の方法および製品の改善を行うことを可能にする。1つのタイプの二成分繊維は、繊維が、比較的高い融点を有するある量のポリマー、および比較的低い融点を有する第2の量のポリマーを含む既知の材料である。ウェブまたはウェブの層の形成において、繊維は、低融点ポリマーが溶融し、融合し、層またはウェブに接合して、機械的に安定した一体の塊になることができる温度に加熱される。比較的融点の高いポリマー成分は、層またはウェブに機械的強度および安定性を与えることができる。したがって、二成分繊維は、熱接合ウェブの作製を可能にすることで、それらから作製された不織布ウェブのさらなる強度、凝集性および頑丈さをもたらすことができる。当該特性が所望される場合は、二成分繊維を使用するだけで、これらの特性を付与するのに十分であることが多く、さらなる凝集性、強度等をウェブに与えるためにさらなるバインダーまたは処理を必要としない。本発明のいくつかの実施形態は、ナノ繊維を含んでいてもよい。ナノ繊維は、例えば、繊維を約10nmから数百nmの直径で紡糸するエレクトロスピニングによって形成され得る。得られた繊維特性は、例えば、フィールド均一性、ポリマー粘度、電場強度、ノズルと集電器との距離、および同様の考慮事項に依存し得る。
【0072】
繊維および布の調製に有用なウェブ製造方法は、押出、共押出、スパンレース、多孔質フィルム、コフォーム、接合−梳毛、ニードルパンチ、エアレイド、ウェットレイド、および同様の方法またはそれらの組合せなどの任意の他の好適な方法を含み得る。水流交絡としても知られているスパンレース加工は、高速水噴射の使用によりウェブの繊維を機械的にラッピングし、結びつけることを含む。スパンレース不織布は、軟質で強く、取扱いが容易で、良好な吸収を確保するため、布巾用に良好に機能する。ある実施形態において、繊維および布の調製に有用な方法は、任意の他の好適な加工方法、例えば熱接合、化学または樹脂接合および同様の方法をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、本発明の繊維、布および吸収性材料は、他の好適な機能または性能添加剤または処理、例えば、抗菌剤、帯電防止剤、難燃剤、フルオロケミカル、湿潤剤、紫外線安定剤、ラミネート、バインダーもしくは接着剤、ホットメルト接着剤、充填剤、シランカップリング剤、および同様の添加剤もしくは処理、またはそれらの組合せを含み得る。ある実施形態において、繊維または最終物品における傾向および目的に応じて、添加剤を、例えば、マスターバッチに含めるか、押出機に直接加える、繊維もしくはウェブの表面に局所的に塗布する、および同様の封入方法、またはそれらの組合せを用いることができる。ある実施形態において、バインダーまたは接着剤は、例えば、アクリル、ホットメルト、ラテックス、ポリ塩化ビニル、感圧式接着剤、スチレン化アクリル、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ビニルアクリル、溶融融合性繊維、部分溶融性二成分繊維(例えば、PE/PP、PE/PET、特殊処方PET/PET)および同様の材料、またはそれらの組合せを含み得る。
【0073】
熱可塑性フィルム、繊維、不織布等をFe(III)化合物およびPEIの両方の溶液と接触させることによってコーティングを作製することができる。
【0074】
熱可塑性材料を水性または補助溶媒系コーティングで被覆することができる。好適な補助溶媒は、低級アルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステルまたは水性媒体などの無害な液体媒体である。コーティングは、典型的には、コーティング成分を液体にブレンドしてコーティング溶液を形成することによって作製される。その溶液は、従来の添加剤を含む活性Fe(III)材料およびPEI、補助溶媒および染料等を含有し得る。次いで、ナイフコーティング、ロールコーティング、スロットコーティング、飽和コーティング、液浸ニップコーティング、ロッドコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング等を含む従来のコーティング技術を使用してコーティング溶液を塗布することができる。
【0075】
反応性押出によりCDを官能化ポリオレフィン上にグラフトする前に、Fe(III)もしくはPEI化合物、またはその両方を粒子上に均一に塗布して、シリカ粒子またはCD粒子の表面積を増大することができる。微粒子のFe(III)/PEIコーティングおよび乾燥は、制御雰囲気中で加熱を行う乾燥器にて同時に実施される。循環オイル加熱壁で覆われ、乾燥器の水平回転の中心に沿って移動する液体吹付けバーを備えたステンレス鋼タンブル乾燥器を使用して、水性PEIコーティング溶液を一定の動作で粒子上に吹きつけることができる。真空が水の沸点を下げる一方、粒子が容器壁と接触して均一な乾燥のための迅速な熱投入を確保する。このコーティング法は、ランピング、分離を防止し、CD粒子の均一なPEIコーティングを可能にする。
【0076】
それらの組成物は、以下の表に示される量の成分で作製され得る。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
コーティングは、連続または部分コーティングであり得る。コーティングをフィルム、繊維、布(不織布または織布)、容器、シートまたは他のポリマー形式上に作製することができる。コーティングは、約0.5から25ミクロン、1から20ミクロンまたは5から10ミクロンの厚さを有し得る。不織布に対する付加量は、約30から800マイクログラム・cm−2、約50から600マイクログラム・cm−2または約100から400マイクログラム・cm−2であり得る。繊維に対する付加量は、約15から300ミリグラム・gm−2、約25から225ミリグラム・gm−2または約50から175マイクログラム・gm−2であり得る。容器、フィルムまたはシートに対する付加量は、約30から800マイクログラム・cm−2、約50から600マイクログラム・cm−2または約100から400マイクログラム・cm−2であり得る。
【0080】
以上に例示した吸着剤組成物は、通常、溶媒、水性媒体、溶媒および水、または有用な補助溶媒を含む水に分散される。次いで、基材が曝露される密閉空間からの望ましくない物質または標的物質を低減するために、水性組成物が基材に塗布される。使用または塗布される組成物の量は、基材(すなわち繊維またはフィルム)の性質および意図する用途に応じて異なり得る。たいていの実施形態において、臭気抑制組成物は、基材の約2.5から約50重量%を占め、いくつかの実施形態において基材の約5から約30重量%を占め、いくつかの実施形態において基材の約10から約20重量%を占める。吸着剤組成物は、多種多様な周知の塗布技術のいずれかを使用して基材に塗布されてもよい。例えば、組成物を基材のマトリックス内に組み込むこと、および/またはその表面に塗布することができる。水性組成物を基材に塗布するための好適な技術としては、吹付け、浸漬、水性コーティングおよび印刷等が挙げられる。非水性組成物を塗布するための技術としては、既に記載した様々な溶融押出技術が挙げられる。
【0081】
フィルム、不織布、サシェ、挿入物、フィルタ、継手、通気口、キャップ、栓、トレー、蓋、ラミネート箔およびシート等を含む多種多様な物品に組成物を組み込むことができる。
【0082】
本開示の食品梱包物品または食品梱包構成要素は、例えば、トレー、梱包ライナー、バリヤ層、捕捉層および同様の構成要素、またはそれらの組合せなどの梱包物構成要素であり得る。長期にわたって確立された食品梱包コンセプトは、食料製品の貯蔵寿命を延ばす能力が限定されている。本開示の革新的な食品梱包コンセプトは、例えば、梱包物内部の環境と相互作用し、それらの特性を変化させることによって応答して、特定の梱包物上部空間を維持、調整もしくは改善する、または「スカルピング」(すなわちポリマー梱包物材料による食品からの揮発性成分の吸収)による梱包物への食品風味のロスを最小限に抑えることによって、製品の品質を高め、貯蔵寿命を延ばす。梱包物上部空間の酸素を抑制するために今日使用されている最も著名なグループの技術は、酸素捕捉剤である。
【0083】
本開示は、梱包食品から望ましくない異臭を選択的に除去するための梱包食品接触ポリマー層の使用に関する。食品梱包物接触層は、例えば、梱包食品の脂質酸化、脂質加水分解、タンパク質/アミノ酸分解、および同様の変化または反応により生成された食品梱包物の内部からの攻撃的な臭気/香気を除去するように構成され得る。本開示のこれらの活性梱包材料ポリマー改良物は、従来のポリオレフィンと比較して有意であり、製品の貯蔵寿命期間にわたって食品の味を大幅に改善することができる。
【0084】
少なくとも1つの層が、静的条件でエチレンなどの臭気または植物ホルモンを吸着除去し、動的条件で驚くべき吸着を得ることができるフィルムまたは多層フィルムを食品梱包フィルムとして使用することができる。梱包材料を製造するのに使用される主たる製造方法としては、例えば、キャストフィルム押出、ブローンフィルム押出(チューブラー)、押出コーティング、押出ラミネーション、接着ラミネーション、配向押出フィルム、ブロー成形、射出成形および圧縮成形が挙げられる。梱包用途では、熱可塑性物質を、通常、軟質フィルム、硬質シート、ボトルおよびタブの構造範疇の1つに加工することができる。フィルムは、第二鉄(Fe(III))源およびポリエチレンイミン(PEI)またはそれらのコーティングを含有し得る。吸着剤組成物は、少なくとも単層コーティングにFe(III)化合物およびPEI化合物を含むコーティングを含み得る。本発明のさらに別の実施形態において、本発明のCDグラフトポリマーをフィルムのFe(III)もしくはPEIでコーティングされたウェブまたは不織布繊維として提供することができ、後に生鮮果物、野菜または花が充填される梱包物に1枚のウェブが単に加えられる。当該実施形態において、使用される梱包材料は、任意の好適な材料であってよく、決して限定されない。本発明の組成物を、梱包される生鮮農産物とともに、仕上げられた梱包物に加えるだけであるため、ポリエチレン、PLAまたはポリエステル等の広く使用されている梱包材料を限定することなく使用することができる。組成物は個別の材料に存在するため、望ましくない蒸気相物質を捕捉することが望ましい任意の梱包物に加えることができる。
【0085】
それらの組成物を顔面マスクに形成してもよい。顔面マスクは、口臭を低減する材料を使用することができる。吸着剤は、HSの少なくとも20%の低減を達成するのに十分なポリエチレンイミン(PEI)とFe(III)化合物との組合せを最小限の量で使用する。ポリマーアミン化合物と鉄化合物との組合せは、硫化水素、硫化アルキル、小分子C3+酸またはアルコール、ジエチルアミン、および不快息または悪臭息の原因となることが知られている他の化合物などの悪臭化合物の除去を強化し、驚くべき動的活性を達成する。
【0086】
長年にわたって使い捨て顔面マスクが製造されてきた。顔面マスクは、選択された繊維性材料の複数の層を含む。本発明は、圧力降下が比較的小さいため呼吸が楽であるとともに、臭気性蒸気がマスク構造体を通過することを防止する使い捨て顔面マスク材料に関する。発明の顔面マスク材料は、一連の坪量を有する異なるタイプの繊維性不織布(例えば、スパンボンド、メルトブローおよびスパンボンド/メルトブロー)またはセルロース性フィルタ材料を含む。これらの材料を選択すると、微生物に対する所望の程度の濾過またはバリヤが確保されると同時に、マスクを通じて着用者に至る空中の不快な臭気、またはマスク着用者の呼気からマスクを通る臭気を軽減する所望の特性がもたらされる。顔面マスクに使用される材料は、微生物(ウイルスおよび細菌)を含み得る大きな粒子滴、飛沫、しぶきまたは跳物が着用者の口および鼻に達するのを阻止する助けとなることを意図する。顔面マスクは、着用者の唾液および呼吸排泄物が他人に触れることを抑える助けにもなり得る。顔面マスク材料は、微生物バリヤ性を提供し、加えて臭気性蒸気(例えば、硫化水素−HS、メタンチオール−CHSH、ジメチルスルフィド−CHSCH)の通過を防止する点で、マスクは有意な技術的利点を有する。望ましいバリヤ材料は、空気をいずれの方向にも自由に通過させながら、臭気性蒸気成分の通過を抑制するように工作されている。特定の性能要件を満たすために1つを超える不織布またはセルロースバリヤ材料を使用できることが理解される。
【0087】
息の処理は、顔面マスクのほとんどの領域を通る空気流によって達成される。いずれかの方向でマスクを通過する空気から非凝縮性ガスを含む不快な蒸気を除去するように、マスクにおける繊維性フィルタ材料の1つ以上の層を組成物で表面処理する。表面処理組成物は、不織布顔面マスク材料における弾性率を変化させない。典型的な使い捨て顔面マスクは、3つの層、すなわち外層、内側層および内部マスク層を含む。任意の層または組合せを被覆することができる。顔面マスクの最外層は、滴、飛沫、しぶきまたは跳物に対する部分的バリヤとして機能する。顔面マスクは、細菌濾過差、圧力効率(BFE)、塩化ナトリウムエアロゾル刺激−NIOSH、ウイルス濾過効率(VFE)および合成血液浸透飛散抵抗における最小限の要件に合わせて保持される。
【0088】
細菌濾過効率(BFE)試験は、生物的エアロゾルから保護するように設計された顔面マスク、手術衣、キャップおよびエアフィルタなどの濾過材料およびデバイスで実施される。この試験は、黄色ブドウ球菌の生物的エアロゾルで刺激された場合のこれらの材料の濾過効率を判断するものである。BFE試験手順は、軍用仕様書36954Cに基づいており、99.9%までの濾過効率を評価することができる。この試験は、ASTM F2100およびEN14683によって要求されているとともに、FDAに対する510K提出物に使用される。この試験は、軍用仕様書36954C、ASTM F2101およびASTM F2100に準じて実施される。
【0089】
差圧試験は、手術用顔面マスクおよび他の濾過デバイスなどの多孔質材料の空気交換差を判断するものである。この試験は、軍用仕様書36954Cに従って設計され、一般には細菌濾過効率(BFE)試験について提出される試料に必要とされている。この試験は、ASTM F2100、EN14863によって要求されているとともに、FDAに対する510K提出物に使用される。
【0090】
塩化ナトリウムエアロゾル刺激(NaCl)−NIOSH呼吸マスク事前審査試験は、多種多様な濾過材料の粒子透過および空気流抵抗性を評価するための広く受け入れられている方法を使用する。この試験は、99.999%までの濾過効率測定値を求めることが可能である。呼吸マスクは、認定のためにNIOSHに提出される前に事前審査される必要がある。呼吸系フィルタおよび顔面マスクなどの他の材料は、市販に向けて濾過効率を判断するために試験される。試験は、42CFRパート84およびNIOSH手順番号RC−APR−STP−0057、0058および0059に準じて実施される。
【0091】
ウイルス濾過効率試験は、マスクおよびフィルタ材料などの様々な濾過材料の濾過効果を判断するものである。この試験は、マスクまたは他のフィルタ材料のウイルス濾過効率に関して市販請求を行うのに必要である。この試験は、ASTM F2101から採用された。
【0092】
合成血液浸透−飛散抵抗試験は、血液−骨病原体に対するバリヤとして作用する製品の能力を判断するためにNelson Labsによって提示された2つの異なる合成血液抵抗試験の1つである。飛散抵抗試験方法は、マスクの中心に高速度で導かれる一定容量の合成血液で医療用顔面マスクを刺激する。この試験は、ASTM F2100によって要求されており、ASTM法F1862、ASTM F2100およびEN14683に準じて試験される。
【0093】
マスクは、外層、皮膚に接触する内部快適層、およびこれらの間に配置された1つ以上の内側吸着剤層を有する。これらの層は、この製造において典型的なスパンボンド、メルトブローまたはセルロース材料で構成されている。当該材料としては、坪量が約20から30g・m−2のスパンボンド、坪量が約17から26g・m−2のメルトブロー、坪量が約30から40g・m−2のメルトブロー/スパンボンドの組合せ、約17から21g・m−2の坪量で使用できるセルロース快適層が挙げられる。
【0094】
マスク外層は、スパンボンドポリプロピレン、セルロース組織またはスパンボンドポリエステルなどの不織布から構成され得る。スパンボンド繊維は、例えばポリエチレンを含む二成分繊維で構成されていてもよい。外層は、典型的には、15から35g・m−2(0.45oz・yd−2から1.0oz・yd−2)の坪量を有するのが好ましい。
【0095】
マスク内部快適層は、好ましくは不織布で構成される。これらの層は、ポリエステルおよび/またはポリオレフィン(ポリエチレンもしくはポリプロピレン)材料またはセルロース組織から構成されてもよい。内層は、典型的には、13から30g・m−2(0.4oz・yd−2から0.85oz・yd−2)の坪量を有し、好ましくは坪量が約13−25g・m−2である。内部層は効果的に被覆することができる。
【0096】
マスク内側吸収層は、坪量が15から30g・m−2で、吸着剤コーティングを有するメルトブローポリオレフィン織布または不織布であり得る。一実施形態は、典型的には、メルトブローポリプロピレンから構成されるが、メルトブローポリオレフィン、ポリエステルまたはウレタンから構成されてもよい。層(1つ以上)は、一重、二重または多重被覆された、または被覆されていない内部層を含み得る。内部層材料は、良好な気体透過性を有し、空気がフィルタ本体を両方向に通過することを可能にする。内部層は、吸着剤組成物を好ましくは繊維コーティングに含む不織布である。鼻および口を顔面マスクで覆うと、着用者により温かい湿った空気が吐き出される。吐き出された空気は、マスク内に含まれる高濃度の水蒸気をもたらす傾向がある。臭気性蒸気の除去は、使用中に繊維の表面に水分が蓄積するため影響を受けない。
【0097】
動的硫化水素(HS)により試験された吸着の実質的な改善を示した。動的HS試験法は、HSの動的嗅覚計表示勾配を使用して不織布顔面マスク構造体の臭気減衰性能を測定するように設計された分析技術を伴う。試験嗅覚計は、7リットル毎分の流量を使用して源から12インチ(30.5cm)の距離に基づく動的硫化水素濃度をシミュレートする。例えば、口腔で測定された200ppbの硫化水素濃度は、10リットル/分の呼吸量において典型的な12インチの距離で20ppbの濃度を有する。口腔硫化水素は、20ppb(vol/vol)未満から1,000ppb(vol/vol)を超える濃度の範囲であり得る。硫化水素およびメチルメルカプタン(メタンチオール)(CHSH)などの硫黄ガスは、ともに口臭の悪臭に対する関わりがしばしば示唆されている。「社会的に受け入れられる」口腔硫化水素は、250ppb(vol/vol)未満である。該方法は、顔面マスク構造体によるHSの減衰を測定する。この手順は、以下の化合物の測定を可能にする。
【0098】
悪臭および濃度
試験化合物 ppb(nl/L)
硫化水素(HS) 5から500
【0099】
この試験方法には、3つの工程が含まれる。それらは、(a)計測器感度較正、(b)HS減衰を測定する動的顔面マスク試験および(c)試験の品質管理である。
【0100】
顔面マスク構造体は、嗅覚計に搭載された直径13cmのガラス浸透セル(図1)で試験される。図1は、硫化水素の動的流れの下でマスク構造体を試験するためのガラス試験デバイスを示す。図1において、ガラス試験デバイス10は、第1の筐体12aおよび第2の筐体12bを含む。容量は、その間に配置された試験不織布11によって隔てられた筐体12AM12によって画定されている。流入物13は、嗅覚計デバイス(不図示)により規定の速度で連続的に供給される。流出物14は、適宜の測定デバイスによって硫化水素が測定される。ガラスフラスコフランジのいずれの側にも取りつけられたアルミニウムの締付環は、6つのネジを使用して締めつけられて、2つのフラスコガラスフランジの間の顔面マスク構造体を気密密封する。嗅覚計(St.Croix Sensory ACSCENT(登録商標)嗅覚計)からの動的流れが、105リットルの総流量に対して15分の連続試験期間にわたって7リットル毎分で浸透セルの流入末端に送り込まれる。Jerome631−X硫化水素試験計を使用して、時間の関数としてHS濃度が測定され、流入および流出HS濃度が測定される。試験の開始前に、7肺容量の空気を繊維全体に吹きつけることによって、浸透セルに搭載された不織布ウェブが加湿される。次いで、浸透セルが嗅覚計流入口に搭載される。3回の硫化水素測定が1、5および15分目に2回ずつ行われる。それらの値は、15分の試験期間にわたって平均され、ppb(vol/vol)で報告される。
【0101】
硫化水素は、一般的な試験悪臭であり、他の硫黄化合物の悪臭の活性を予測するために使用され得る。HSの減衰率(減少率)は、対照および被覆試料の平均HS濃度から算出される。20%を超えるHS減少率は、悪臭抑制が達成できる指標として許容可能である。被覆不織布繊維顔面マスク構造体の性能は、15分の試験時間にわたって、対照マスク構造体と比較して、被覆繊維により吸収されたHS蒸気質量から求められる((対照繊維構造体−被覆繊維構造体)÷対照繊維構造体×100=HS減少率(%))。
【0102】
顔面マスクの繊維層を通過する望ましくない物質または標的物質を軽減するために、以下に例示される組成物の硫化水素収着物が繊維基材に塗布される。使用される、または繊維表面に塗布される組成物の量は、不織布(例えばスパンボンド、メルトブローおよびスパンボンド/メルトブロー)またはセルロースフィルタ材料、ならびに材料坪量および意図する用途に応じて異なり得る。
【0103】
たいていの実施形態において、臭気抑制組成物は、基材の約1.5から約30重量%を占め、いくつかの実施形態において基材の約3から約20重量%を占め、いくつかの実施形態において基材の約5から約10重量%を占める。組成物は、多種多様な周知の塗布技術のいずれかを使用して基材に塗布されてもよい。例えば、吹付け、浸漬および水性コーティング等を含む好適な技術を使用して水性組成物を表面に塗布することができる。組成物を以下の表に示す量の成分で作製することができる。
【0104】
【表6】
【0105】
【表7】
【0106】
以下の実施例のセクションでは、各繊維性材料についての材料組成および詳細な試料調製情報を示す。
【実施例】
【0107】
[実施例1]
繊維基材をハンドコーティングするための水性コーティング溶液を100グラムおよび50グラムバッチで調製する。コーティング製剤AおよびBについて、添加の順序は、水および鉄酸カリウムである。赤味がかった水酸化第二鉄綿状沈殿物が形成するまで溶液を機械的に撹拌し、次いでエタノールおよびグリセリンを添加する。最後に、ポリエチレンイミン(Aldrich181978)を10重量%溶液として添加する(全製剤中の水分比率)。
【0108】
メルトブロー(MB)不織布ポリプロピレン繊維およびセルロース紙試料(20℃/50%RHの室で保存)を16.5cm×16.5cmのハンドシートに切断し、0.1ミリグラムまで正確に秤量する。MB繊維対照は、27g/mポリプロピレンであり、被覆MB繊維は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン上にグラフトされた2重量%アルファCDを含有していた。
【0109】
2種類の坪量のセルロース紙(15g/mおよび65g/m)を試験する。
【0110】
モールピペットを使用して正確な容量の溶液をシートに移す。コーティング溶液は、疎水性のポリプロピレン繊維と比較して親水性であるため、ゴムインクローラを使用してコーティング溶液を繊維シート中に均一に分散する。
【0111】
セルロース紙シートは、デンプンが塗られて、ゴムインクローラがコーティング溶液を繊維中に均一に分散させることを必要とする。シートを裏返し、コーティング処理を繰り返す。
【0112】
被覆試料シートを多孔質乾燥スクリーンに配置し、20℃/50%RHの室で終夜空気乾燥させる。被覆シートを再度秤量し、コーティング重量を算出する(被覆シート重量−未被覆シート重量)/未被覆シート重量×100%=コーティング重量%)。コーティング製剤Cをホウ酸塩/リン酸塩緩衝剤から調製する。0.001モルホウ酸ナトリウム溶液(1mMのNaOH、pH:約8.2)を、0.040gのNaOH(50%溶液)を500ml蒸留水に添加し、次いで0.118gのホウ酸を添加することによって調製する。最終溶液を0.2ミクロンのフィルタメンブレンで濾過する。0.005モルリン酸塩/0.001モルホウ酸塩緩衝剤(pH:約9)を、0.670gのNaHPO・7HOを500mLのホウ酸塩溶液に添加することによって調製する。鉄酸カリウム、エタノール、グリセリンおよびポリエチレンイミンを既に記載したように添加する。被覆シートを調製し、コーティング重量を以上に示したように求める。
【0113】
対照(未被覆)MB不織布およびセルロース紙シート、ならびにコーティング製剤A、BおよびCで被覆された同一の試料シートについて、動的硫化水素試験方法により硫化水素の収着量を求める。既に記載した硫化水素収着方法を使用して、選択された繊維性材料−MBポリプロピレンおよびセルロース紙−の複数の層を試験する。試料試験シートの前の上流の硫化水素測定値と、試料試験シートを通過した後の下流の硫化水素測定値とを比較することにより、対照シートは、硫化水素を収着していないことが判明した。
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
【表10】
【0117】
[実施例2]
繊維基材をハンドコーティングするための水性コーティング溶液を100グラムおよび50グラムバッチで調製する。添加の順序は、水および鉄酸カリウムである。赤味がかった水酸化第二鉄綿状沈殿物が形成するまで溶液を撹拌し、次いでエタノールを添加する。最後に、ポリエチレンイミン(Aldrich181978)を10重量%溶液として添加する(全製剤中の水分比率)。不織布の材料の複数の層−メルトブロー(MB)およびスパンボンド(SB)ポリプロピレン−(20℃/50%RHの室で保存)を16.5cm×16.5cmのハンドシートに切断し、0.1ミリグラムまで正確に秤量する。ポリプロピレンMBおよびSB繊維対照は、それぞれ21g/mおよび27g/mウェブであり、被覆スパンボンド繊維試料は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン上にグラフトされた2重量%アルファCDを含有していたが、メルトブローはCDを含有していない。セルロース紙ウェブは19g/mである。モールピペットを使用して正確な容量の溶液をシートに移す。コーティング溶液は、疎水性のポリプロピレン繊維と比較して親水性であるため、ゴムインクローラを使用してコーティング溶液を繊維シート中に均一に分散する。セルロース紙シートは、デンプンが塗られて、ゴムインクローラがコーティング溶液を繊維中に均一に分散させることを必要とする。シートを裏返し、コーティング処理を繰り返す。被覆試料シートを多孔質乾燥スクリーンに配置し、20℃/50%RHの室で終夜空気乾燥させる。被覆シートを再度秤量し、コーティング重量を算出する。コーティング製剤Cをホウ酸塩/リン酸塩緩衝剤から調製する。
【0118】
対照(未被覆)MB不織布およびセルロース紙シート、ならびにコーティング製剤で被覆された同一の試料シートについて、動的硫化水素試験方法により硫化水素の収着量を求める。選択された繊維性材料−MB、SB、およびセルロース紙−の複数の層を試験する。試料試験シートの前の上流の硫化水素測定値と、試料試験シートを通過した後の下流の硫化水素測定値とを比較することにより、対照シートは、硫化水素を収着していないことが判明した。
【0119】
【表11】
【0120】
【表12】
【0121】
[実施例3]
繊維基材をハンドコーティングするための水性コーティング溶液を100グラムおよび50グラムバッチで調製する。コーティング製剤D、EおよびFについて、添加の順序は、水および鉄酸カリウムである。赤味がかった水酸化第二鉄綿状沈殿物が形成するまで溶液を機械的に撹拌する。最後に、ポリエチレンイミン(Aldrich181978)を10%溶液として添加する(全製剤中の水分比率)。不織布の材料の複数の層−スパンボンド/メルトブロー(S/M)およびスパンボンド(SB)−(20℃/50%RHの室で保存)を16.5cm×16.5cmのハンドシートに切断し、0.1ミリグラムまで正確に秤量する。ポリプロピレンS/MおよびSB繊維対照は、それぞれ30g/mおよび27g/mである。被覆SB繊維試料は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン上にグラフトされた2重量%アルファCDを含有していた。被覆S/M繊維はCD改質ではない。モールピペットを使用して正確な容量の溶液をシートに移す。コーティング溶液は、疎水性のポリプロピレン繊維と比較して親水性であるため、ゴムインクローラを使用してコーティング溶液を繊維シート中に均一に分散する。シートを裏返し、コーティング処理を繰り返す。被覆試料シートを多孔質乾燥スクリーンに配置し、20℃/50%RHの室で終夜空気乾燥させる。被覆シートを秤量し、コーティング重量を算出する。
【0122】
対照(未被覆)メルトブロー不織布およびセルロース紙シート、ならびにコーティング製剤D、EおよびFで被覆された試料シートについて、動的硫化水素試験方法により硫化水素の収着量を求める。選択された繊維性材料−S/M、MBおよびセルロース紙−の複数の層を試験する。試料試験シートの前の上流の硫化水素測定値と、試料試験シートを通過した後の下流の硫化水素測定値とを比較することにより、対照シートは、硫化水素を収着していないことが判明した。15分間の収着試験の最後に、7肺容量の空気を繊維全体に吹きつけることによって、浸透セルに搭載された被覆不織布繊維が再度加湿される。次いで、浸透セルが嗅覚計流入口に再度搭載される。2回の硫化水素測定が、17分おきに行われる。17分間の再度加湿平均値は、15分間の測定値よりも約4ppb(vol/vol)低い。再度加湿された未被覆対照不織布繊維は、15分間の測定値よりも約1ppb(vol/vol)低い。
【0123】
【表13】
【0124】
【表14】
【0125】
[実施例4]
繊維基材をハンドコーティングするための水性コーティング溶液を100グラムおよび50グラムバッチで調製する。添加の順序は、水および鉄酸カリウムである。赤味がかった水酸化第二鉄綿状沈殿物が形成するまで溶液を機械的に撹拌する。次いで、ポリエチレンイミン(Aldrich181978)を10重量%溶液として添加する(全製剤中の水分比率)。メルトブロー(MB)不織布ポリプロピレン繊維およびセルロース紙試料(20℃/50%RHの室で保存)を16.5cm×16.5cmのハンドシートに切断し、0.1ミリグラムまで正確に秤量する。MB繊維対照は、27g/mポリプロピレンであり、被覆MB繊維は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン上にグラフトされた2重量%アルファCDを含有していた。セルロース紙−対照および被覆試料−は55g/mである。モールピペットを使用して正確な容量の溶液をシートに移す。コーティング溶液は、疎水性のポリプロピレン繊維と比較して親水性であるため、ゴムインクローラを使用してコーティング溶液を繊維シート中に均一に分散する。シートを裏返し、コーティング処理を繰り返す。セルロース紙シートは、デンプンが塗られて、ゴムインクローラがコーティング溶液を繊維中に均一に分散させることを必要とする。被覆試料シートを多孔質乾燥スクリーンに配置し、20℃/50%RHの室で終夜空気乾燥させる。試料シートを秤量し、コーティング重量を算出する。
【0126】
対照(未被覆)MB不織布およびセルロース紙シート、ならびにコーティング製剤で被覆された試料シートについて、動的硫化水素試験方法により硫化水素の収着量を求める。選択された繊維性材料−MBポリプロピレンおよびセルロース紙−の複数の層を試験する。試料試験シートの前の上流の硫化水素測定値と、試料試験シートを通過した後の下流の硫化水素測定値とを比較することにより、対照シートは、硫化水素を収着していないことが判明した。
【0127】
【表15】
【0128】
【表16】
【0129】
【表17】
【0130】
[実施例5]
繊維基材をハンドコーティングするための水性コーティング溶液を100グラムおよび50グラムバッチ調製する。コーティング製剤GおよびHについて、添加の順序は、水および塩化第二鉄である。塩化第二鉄が溶けるまで溶液を機械的に撹拌する。次いで、水酸化第二鉄綿状沈殿物が形成するまで塩化第二鉄溶液を10重量%水酸化カリウム(全製剤中の水分比率)で中和する。その後ポリエチレンイミン(Aldrich181978またはEPOMIN P1000)を10重量%溶液として添加する(全製剤中の水分比率)。最後にコーティング溶液のpHを10%水酸化カリウムでpH12.5に調整する。スパンボンド(SB)不織布ポリプロピレン繊維試料(20℃/50%RHの室で保存)を16.5cm×16.5cmのハンドシートに切断し、0.1ミリグラムまで正確に秤量する。SB繊維対照は、27g/mポリプロピレンであり、被覆SB繊維は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン上にグラフトされた2重量%アルファCDを含有していた。モールピペットを使用して正確な容量の溶液をシートに移す。コーティング溶液は、疎水性のポリプロピレン繊維と比較して親水性であるため、ゴムインクローラを使用してコーティング溶液を繊維シート中に均一に分散する。シートを裏返し、コーティング処理を繰り返す。被覆試料シートを多孔質乾燥スクリーンに配置し、20℃/50%RHの室で終夜空気乾燥させる。試料シートを秤量し、コーティング重量を算出する。
【0131】
対照(未被覆)スパンボンド不織布およびコーティング製剤で被覆された無水マレイン酸グラフトポリプロピレンSB試料シート上にグラフトされた2重量%アルファCDについて、動的硫化水素試験方法により硫化水素の収着量を求める。SB繊維の複数の層を試験する。試料試験シートの前の上流の硫化水素測定値と、試料試験シートを通過した後の下流の硫化水素測定値とを比較することにより、対照シートは、硫化水素を収着していないことが判明した。15分間の収着試験の最後に、7肺容量の空気を繊維全体に吹きつけることによって、浸透セルに搭載された被覆SB繊維が再度加湿される。次いで、浸透セルが嗅覚計流入口に再度搭載される。2回の硫化水素測定が17分おきに行われる。17分間の再度加湿平均値は、15分間の測定値よりも約3ppb(vol/vol)低い。再度加湿された未被覆対照不織布繊維は、15分間の測定値よりも約1ppb(vol/vol)低い。
【0132】
【表18】
【0133】
【表19】
【0134】
[実施例6]
繊維基材をハンドコーティングするための水性コーティング溶液を100グラムおよび50グラムバッチで調製する。添加の順序は、水および鉄酸カリウムである。赤味がかった水酸化第二鉄綿状沈殿物が形成するまで溶液を機械的に撹拌する。次いでポリエチレンイミン(Aldrich181978)を10重量%溶液として添加する(全製剤中の水分比率)。最後に、ヒュームドシリカを機械的に溶液中に分散する。メルトブロー(MB)不織布ポリプロピレン繊維試料(20℃/50%RHの室で保存)を16.5cm×16.5cmのハンドシートに切断し、0.1ミリグラムまで正確に秤量する。MB繊維対照は、27g/mポリプロピレンであり、被覆MB繊維は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン上にグラフトされた2重量%アルファCDを含有していた。モールピペットを使用して正確な容量の溶液をシートに移す。コーティング溶液は、疎水性のポリプロピレン繊維と比較して親水性であるため、ゴムインクローラを使用してコーティング溶液を繊維シート中に均一に分散する。シートを裏返し、コーティング処理を繰り返す。被覆試料シートを多孔質乾燥スクリーンに配置し、20℃/50%RHの室で終夜空気乾燥させる。試料シートを秤量し、コーティング重量を算出する。
【0135】
対照(未被覆)MB不織布およびコーティング製剤で被覆された無水マレイン酸グラフトポリプロピレンMB試料シート上にグラフトされた2重量%アルファCDについて、動的硫化水素試験方法により硫化水素の収着量を求める。MBポリプロピレン繊維の複数の層を試験する。試料試験シートの前の上流の硫化水素測定値と、試料試験シートを通過した後の下流の硫化水素測定値とを比較することにより、対照シートは、硫化水素を収着していないことが判明した。
【0136】
【表20】
【0137】
【表21】
【0138】
前述の通り本発明の実施形態を開示する。明細書および特許請求の範囲において、例えば、本開示の実施形態の説明に採用されている組成物における成分の量、濃度、体積、処理温度、処理時間、収率、流量、圧力、および同様の値ならびにそれらの範囲を修飾する「約」は、例えば、化合物、組成物、濃縮物または使用製剤の作製に使用される典型的な測定および取扱い手順、これらの手順における不慮の誤り、方法を実施するために使用される出発材料または成分の製造、供給源または純度の違い、および同様の直接的要因を通じて起こり得る数量の変動を指す。「約」という用語は、特定の初期濃度または混合物を有する製剤の経時変化により異なる量、および特定の初期濃度または混合比を有する製剤の混合または処理により異なる量をも包含する。「約」という用語によって修飾される場合は、本明細書に添付の特許請求の範囲は、これらの量の同等量を含む。「場合による」または「場合により」は、続いて記載される事象または状況が生じてもよく、生じなくてもよいこと、ならびにその記載が、事象または状況が生じる場合、および生じない場合を含むことを意味する。例えば、「A場合によりB」は、Bが存在してもよく、しなくてもよいこと、ならびにその記載が、AがBを含む場合、およびAがBを含まない場合を含むことを意味する。「含む」もしくは「含んでいる」または同様の用語は、「含むが、それに限定されない」ことを意味する。本発明は、開示または列挙された要素のいずれかを好適に含み、それらから構成され、または本質的にそれらから構成され得る。したがって、本明細書に例示的に開示されている発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素の不在下で好適に実行され得る。単数形の使用は、典型的には、複数形を含み、少なくとも複数形を排除しない。
【0139】
明細書、図、実施例およびデータは、今日までに開発された本発明の詳細な説明を示している。しかし、本発明は、発明の趣旨もしくは意図する範囲から逸脱することなく、不織布、繊維、フィルム、シート、ボトル、キャップおよび他の実施形態の形態をとることができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に存在する。
図1
図2