特許第5960810号(P5960810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960810量子電池の試験用半導体プローブ、試験装置及び試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960810
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】量子電池の試験用半導体プローブ、試験装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20160719BHJP
   G01R 31/36 20060101ALI20160719BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160719BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H01L21/66 B
   G01R31/36 A
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
【請求項の数】24
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-518195(P2014-518195)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2012064232
(87)【国際公開番号】WO2013179471
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】310005722
【氏名又は名称】グエラテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158229
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】出羽 晴匡
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 清康
(72)【発明者】
【氏名】中澤 明
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−028625(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/046325(WO,A1)
【文献】 特表2005−524925(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065094(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/36
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の電極と、
金属酸化物半導体からなる金属酸化物半導体層と、
電気的エネルギーを充電する充電層と、
をこの順序で支持体上に積層して構成されたことを特徴とする半導体プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体プローブにおいて、
前記充電層は、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体プローブにおいて、
前記充電層は、電子を捕獲するために、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体に紫外線を照射して、光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成していること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項4】
請求項2に記載の半導体プローブにおいて、
n型金属酸化物半導体は、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛のうち何れか1種、又は、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛の2乃至3種を組み合わせた複合物質であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項5】
請求項2に記載の半導体プローブにおいて、
前記n型金属酸化物半導体を覆う絶縁性物質は、絶縁性樹脂または無機絶縁物であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体プローブにおいて、
前記金属酸化物半導体は、p型半導体であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体プローブにおいて、
前記p型半導体は、酸化ニッケル又は銅アルミ酸化物であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体プローブにおいて、
前記金属酸化物半導体は、n型半導体であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体プローブにおいて、
前記n型半導体は、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛のうち何れか1種、又は、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛の2乃至3種を組み合わせた複合物質であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体プローブにおいて、
前記電極は、導電性の金属であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体プローブにおいて、
前記支持体は、少なくとも一部が弾性体であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項12】
請求項1に記載の半導体プローブにおいて、
前記支持体は円筒形状であること、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体プローブにおいて、
円筒形状の前記支持体に、接地電極部を備えたこと、
を特徴とする半導体プローブ。
【請求項14】
請求項1に記載の半導体プローブと、
被測定物と、
充放電を行う充放電電流源と、
充放電時における被測定物の電圧を測定する電圧計と、
を備えた充放電特性試験装置。
【請求項15】
請求項14に記載の試験装置において、
前記被測定物は、基板に導電性のベース電極、又は、ベース電極とn型金属酸化物半導体層が積層されていること、
を特徴とする充放電特性試験装置。
【請求項16】
請求項14に記載の試験装置において、
前記被測定物は、基板上に、ベース電極又はベース電極とn型金属酸化物半導体が積層され、さらに絶縁物質で覆われたn型金属酸化物半導体からなる充電層が積層されていること、
を特徴とする充放電特性試験装置。
【請求項17】
請求項16に記載の試験装置において、
前記被測定物の充電層は、前記半導体プローブの充電層と同じ物資で構成され、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体に紫外線を照射して、光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成していること、
を特徴とする充放電特性試験装置。
【請求項18】
請求項14に記載の試験装置において、
前記半導体プローブは、前記被測定物の全面を覆って密着させること、
を特徴とする充放電特性試験装置。
【請求項19】
請求項14に記載の試験装置において、
前記半導体プローブは、複数の前記被測定物の全面を覆って密着させ、複数の前記被測定物を同時測定可能なこと、
を特徴とする充放電特性試験装置。
【請求項20】
請求項14に記載の試験装置において、
前記半導体プローブは、前記被測定物の一部を覆って密着させること、
を特徴とする充放電特性試験装置。
【請求項21】
請求項20に記載の試験装置において、
前記半導体プローブは、支持体が円筒形状であり、被測定物の表面を回転させながら充放電特性を評価すること、
を特徴とする充放電特性試験装置。
【請求項22】
請求項21に記載の試験装置において、
前記支持体を円筒形状とした前記半導体プローブを2個使用し、一方の半導体プローブで被測定物の充電特性を、他の半導体プローブで被測定物の放電特性を評価すること、
を特徴とする充放電特性試験装置。
【請求項23】
導電性の電極と、金属酸化物半導体からなる金属酸化物半導体層と、電気的エネルギーを充電する充電層とをこの順序で支持体上に積層して構成された半導体プローブと、
被測定物と、
充放電を行う充放電電流源と、
充放電時における被測定物の電圧を測定する電圧計と、
を備え、
前記半導体プローブを被測定物に当接し、前記充放電電流源により充放電し、被測定物の電圧を前記電圧計で測定すること、
を特徴とする半導体プローブを用いた充放電特性試験方法。
【請求項24】
導電性の電極と、金属酸化物半導体からなる金属酸化物半導体層と、電気的エネルギーを充電する充電層とをこの順序で支持体上に積層して構成された半導体プローブと、
被測定物と、
前記被測定物への充電時に充電を行う電圧源と、
前記被測定物からの放電時に放電を行う抵抗と、
充放電時における被測定物の電流を測定する電流計と、
を備え、
前記半導体プローブを被測定物に当接し、充電時は前記電圧源により充電し、被測定物の電流を前記電流計で測定し、放電時は前記電圧源を抵抗に切り替えて被測定物の電流を前記電流計で測定すること、
を特徴とする半導体プローブを用いた充放電特性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射による金属酸化物の光励起構造変化を利用し、バンドギャップ中にエネルギー準位を形成して電子を捕獲する新たな動作原理に基づく全固体電池の試験用半導体プローブ、試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やモバイル機器に使用されている二次電池は、ニッケル−水素二次電池が多く搭載されている。最近では、より高出力化、大容量化の可能な二次電池としてリチウムイオン電池が開発され、実用化が開始されている段階にある。
【0003】
リチウムイオン電池は、正極にリチウムを含有する金属複酸化物、負極に炭素などリチウムを受容し、放出できる材料を使用して、イオン乖離可能なリチウム塩とそれを溶解可能な有機溶媒からなる電解液を含浸させる。(特許文献1等参照)。
【0004】
電解液は液体であるため、漏液の可能性があること、可燃物が使用されているため、誤使用時の電池の安全性を高める必要があることから、電解液の代わりに固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池の開示もある(特許文献2等参照)。
【0005】
リチウムイオン電池は、レアメタルであるリチウムを使用するためコスト的にも高価となり、性能的な面からもさらなる高性能かつ大容量の二次電池が望まれている。
【0006】
この様な状況において本願発明者は、簡単な構成により低コスト化及び安定な動作が可能な全固体型の半導体電池(以下量子電池と呼ぶ。)を提案している(PCT/JP2010−067643)。
【0007】
量子電池は、基板と、導電性のベース電極と、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体を光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成して電子を捕獲する充電層と、P型半導体層と、導電性の対向電極とを積層して構成されている。充電層へは、ベース電極と対向電極間に電源を接続して充電する。
【0008】
この様な量子電池は、その製作プロセスにおいて機能を確認するための電流―電圧特性及び充放電特性の評価がおこなわれている。
【0009】
電流―電圧特性は、一般的に半導体の特性を評価す方法として知られているが、二次電池に対しても性能評価に適用されている。
【0010】
例えば、ハイブリッド車両用電池の放電時と充電時の電圧と電流の測定値に基づいて内部抵抗を検出し、正確な電池の電流−電圧特性を推定してより正確な電池の内部抵抗を検出すること(特許文献3等参照)や、電池の出力範囲を複数の領域に分割し、領域毎に設定組数の電圧と電流を測定し、それらの測定値に基づいて電池の電流−電圧特性を特定し、その電流−電圧特性に基づいて電池の最大出力を演算する方法(特許文献4等参照)がある。
【0011】
また、量子電池の製作にあたっては、二次電池としての性能は充電層に依存するため、完成品となってから評価するより、製作プロセスに於いて、充電層が積層された途中段階で充電層の評価をすることにより、効率的な製作を行う事ができる。
【0012】
製作プロセスの途中段階で機能評価をすることは半導体の分野では行われている手段であり、例えば、電界効果型薄膜トランジスタを実際に作成することなく、その活性層となる半導体の電気特性を直接測定することを目的として、絶縁膜で被われた測定用ゲート電極の両側に測定用ソース電極および測定用ドレイン電極がそれぞれ露出されて設けられた測定装置がある。
【0013】
測定用ソース電極、測定用ドレイン電極およびその間の絶縁膜の各露出面を半導体の表面に接触させると、この接触部分によってコプラナ型の疑似電界効果型薄膜トランジスタが構成される。これにより、素子作成前に、素子作成後の通常のコプラナ型の電界効果型薄膜トランジスタの場合と同等の測定を行うことができる(特許文献5等参照)。
【0014】
また、擬似MOSFETを用いて、SOI基板を評価するときに電流−電圧特性を精度良く測定し、経時変化による影響を最小限にして再現性の良い値を得る方法(特許文献6等参照)や、測定のための半導体プローブ(特許文献7等参照)の提案もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−141062号公報
【特許文献2】特開2007−5279号公報
【特許文献3】特開2000−21455号公報
【特許文献4】特開2000−19233号公報
【特許文献5】特開平06−275690号公報
【特許文献6】特開2001−267384号公報
【特許文献7】特開2005−524925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、量子電池は新たな原理に基づく全固体型の二次電池であり、その製作プロセスの途中で評価を行う事、そして電池特性としての充放電特性や電流―電圧特性を評価するためには、従来の方法をそのまま適用することはできす、量子電池特有の構造及び特徴を考慮しなければならない。
【0017】
特に量子電池の充電層は、微粒子化されたn型金属酸化物半導体を絶縁被膜で覆う構造であり、半導体プローブで特性評価を行う場合に、半導体プローブとの機械的な接触により、絶縁被膜が剥がれたり、充電層に傷がついたりする場合があった。このため、充電層の評価を直接行わず、評価用のテストエリアを設け、テストエリアに形成された充電層を評価することで、量子電池としての充電層の評価としていた。
【0018】
本発明は、量子電池の製作プロセス途中での充電層の電気的特性を直接評価できるようにするために、絶縁被膜の剥がれや、傷をつけることなく評価を行う事ができる半導体プローブ、試験装置及び試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明が被測定物として対象とするのは量子電池であり、この量子電池は、基板に、導電性のベース電極と、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体を光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成して電子を捕獲する充電層と、P型半導体層と、導電性の対向電極とを積層して構成されている。さらに安定な動作を行わせるために、ベース電極と充電層の間にn型金属酸化物半導体の層を設けてもよい。
【0020】
量子電池に充電層が積層された時点で、この充電層の電気的特性を評価するためには、充電層上にさらに積層される層を半導体プローブに形成して、この半導体プローブを充電層に接触させて電気的特性を測定することにより、最終的な完成品における充電層の機能を評価することができる。
【0021】
本発明による半導体プローブは、導電性の電極と、金属酸化物半導体からなる金属酸化物半導体層と、さらに電気的エネルギーを充電する充電層を支持体に積層することを特徴とする。
【0022】
充電層は、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体であり、電子を捕獲するために、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体に紫外線を照射して、光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成している。n型金属酸化物半導体は、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛のうち何れか1種、又は、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛の2乃至3種を組み合わせた複合物質であり、n型金属酸化物半導体を覆う絶縁性物質は、絶縁性樹脂または無機絶縁物である。
【0023】
金属酸化物半導体はp型半導体で、例えば、酸化ニッケル又は銅アルミ酸化物である。また、被測定物との対応関係から、金属酸化物半導体はn型半導体であってもよく、例えば、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛のうち何れか1種、又は、二酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛の2乃至3種を組み合わせた複合物質である。
【0024】
導電性の電極は、例えば、銅又はクロムを使用する。支持体は、少なくとも一部が弾性体であり、半導体プローブを量子電池の充電層にコンタクトする際の接触圧を制御し、プローブ面を被測定物の面と密着して接触させる。支持体の全部が弾性体であってもよい。
【0025】
支持体は、円筒形状としてもよく、導電性の電極と金属酸化物半導体層と充電層は、支持体の外周面に積層される。さらに、支持体には、被測定物のベース電極に当接する接地電極部を備えることができる。
【0026】
本発明による半導体プローブと、被測定物と、充放電を行う充放電電流源と、充放電時における被測定物の電圧を測定する電圧計とにより、充放電特性試験装置が構成される。
【0027】
基板に導電性のベース電極、又はベース電極とn型金属酸化物半導体層が積層されている被測定物の評価では、本発明による半導体プローブは充電層が積層されているために、量子電池製作段階でのベース電極、又は、ベース電極とn型金属酸化物半導体層の電気的特性の評価も可能である。基板に電極と絶縁物質で覆われたn型金属酸化物半導体からなる充電層が積層されている被測定物の評価では、充電層が評価される。充電層は、半導体プローブの充電層と同じ物質で構成され、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体に紫外線を照射して、光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成し、量子電池としての機能を備えている。
【0028】
半導体プローブは、被測定物の全面を覆って密着させ、電極及び充電層の電気的特性の評価を行うが、複数の被測定物の全面を覆って密着させることで、同時に複数の電極及び充電層の評価を行うことができる。また、半導体プローブを、被測定物の一部を覆って密着させることで、充電層の局所的な評価ができ、充電層面内での特性のバラツキが評価可能となる。
【0029】
支持体が円筒形状の半導体プローブでは、被測定物の表面を回転させながら充放電特性を評価することができる。支持体を円筒形状とした半導体プローブを2個使用すれば、一方の半導体プローブで被測定物の充電特性を、他の半導体プローブで被測定物の放電特性を評価することもできる。
【0030】
本発明は半導体プローブを用いた充放電特性試験方法を提供し、導電性の電極と金属酸化物半導体からなる金属酸化物半導体層と電気的エネルギーを充電する充電層と支持体とを積層して構成された半導体プローブと、被測定物と、充放電を行う充放電電流源と、充放電時における被測定物の電圧を測定する電圧計とを備え、半導体プローブを被測定物に当接し、充放電電流源により充放電し、被測定物の電圧を前記電圧計で測定する方法であることを特徴とする。
【0031】
なお、充電時の電源として電圧源を適用する事もでき、この場合は電流を測定する。又、放電時の負荷として電流源に代えて抵抗を適用してもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、基板と、導電性のベース電極と、絶縁性物質で覆われたn型金属酸化物半導体を光励起構造変化させることによりバンドギャップ中にエネルギー準位を形成して電子を捕獲する充電層と、P型半導体層と、導電性の対向電極とを積層して構成されている量子電池において、電極と金属酸化物半導体層を備えた半導体プローブに、被測定物としての量子電池の充電層と同じ構成の充電層が積層されているため、充電層同士を接触させて電気的特性を評価でき、量子電池の充電層を損傷することがない。また、被測定物の充電層を積層する前段階においても、半導体プローブに充電層を有しているので、量子電池としての充放電機能を評価できる。
【0033】
また、半導体プローブの支持体を、充電層面を全面的にカバーする大きさとして、独立した電極及び金属酸化物半導体層で構成される層を複数個備える構成とすることで、充電層領域の特性の分布やバラツキ、及び差分測定等が同時に測定可能となり、効率的な特性の把握及び異常個所や不良個所の特定と修復が容易となる。
【0034】
一方、半導体プローブの支持体を、充電層面の一部をカバーする大きさとすることで、充電層領域内での特性の分布やバラツキ、及び差分測定等が測定可能となる。
【0035】
半導体プローブの支持体を円筒形状とすることにより、充電層面を回転させながら電気的特性を評価できるので、効率の良い評価が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明による導体プローブによる量子電池の試験装置及び試験方法を適用する量子電池の構成を示す図。
図2】量子電池の充電層を説明する図。
図3】光励起構造変化を説明するバンド図。
図4】光励起構造変化により形成された新しいエネルギー準位を説明するバンド図。
図5】本発明による半導体プローブを説明する図。
図6】充電時の充放電特性評価装置の概要を示す図。
図7】放電時の充放電特性評価装置の概要を示す図。
図8】量子電池の充放電特性を示す図。
図9】支持体に、複数の測定部を設けた半導体プローブの先端正面図。
図10】支持体を円筒型とした円筒型半導体プローブの断面図。
図11】円筒型半導体プローブを使用した充放電特性評価装置の概要を示す図。
図12】円筒型半導体プローブを用いて測定した充電層の充電特性を示す図。
図13】円筒型半導体プローブを用いて測定した充電層の放電特性を示す図。
図14】2個の円筒型半導体プローブを使用した充放電特性評価装置の概要を示す図。
図15】接地電極部を設けた円筒型半導体プローブの概要を示す断面図。
図16】接地電極部を設けた円筒型半導体プローブで測定する量子電池の充電層面を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、充電層に光励起構造変化技術を採用した新たな充電原理に基づく二次電池である量子電池の製造過程における電気的特性を評価するための半導体プローブ、試験装置及び試験方法であり、本発明をより明確に理解し説明するために、最初に適用対象となる量子電池の構造と原理について説明し、その後に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0038】
図1は、本発明を適用する量子電池の断面構造を示す図である。図1において、量子電池10は、基板12に、導電性のベース電極14が形成され、さらに、n型金属酸化物半導体層16、電気的エネルギーを充電する充電層18、p型金属酸化物半導体層20と対向電極22が積層されている。
【0039】
基板12は、絶縁性の物質でも導電性の物質でもよく、例えば、ガラス基板や高分子フィルムの樹脂シート、あるいは金属箔シートが使用可能である。
【0040】
ベース電極14と対向電極22は、導電膜が形成されていればよく、例えば金属材料として、アルミニウムAlを含む銀Ag合金膜等がある。その形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相成膜法を挙げることができる。また、ベース電極14と対向電極22は、電解メッキ法、無電解メッキ法等により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能である。
【0041】
n型金属酸化物半導体層16は、二酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)又は酸化亜鉛(ZnO)を材料として用いる。
【0042】
図2に示すように、充電層18には、絶縁性の被膜に覆われた微粒子のn型金属酸化物半導体が充填され、紫外線照射により光励起構造変化して、充電機能を備えた層となっている。n型金属酸化物半導体は、シリコーンの絶縁性被膜で覆われている。充電層18で使用可能なn型金属酸化物半導体材料としては、二酸化チタン、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)が好適であり、二酸化チタンと酸化スズと酸化亜鉛を組み合わせた材料としてもよい。
【0043】
充電層18上に形成したp型金属酸化物半導体は、上部の対向電極22からの電子の注入を防止するために設けられている。p型金属酸化物半導体層20の材料としては、酸化ニッケル(NiO)、銅アルミ酸化物(CuAlO)等が使用可能である。
【0044】
充電層18の二酸化チタンの微粒子はシリコーンにより絶縁被膜が形成されているが、均一な皮膜となるとは限らずバラツキが生じ、著しい場合は皮膜が形成されずに電極に直接接する場合もある。このような場合は、再結合により電子が二酸化チタンに注入されてしまい、バンドギャップ中にエネルギー準位が形成されず、充電容量が低下する。従って、充電容量の低下を抑え、より高性能な二次電池とするために、図1に示したようにベース電極14と充電層18の間に、n型金属酸化物半導体層16を形成している。
【0045】
図3(A)、(B)は、紫外線照射された充電層が光励起構造変化によって新たなエネルギー準位が形成される基本的な現象を説明するためモデル構造のバンド図を示している。
【0046】
図3(A)のバンド図は、電極30と中間結晶層32とn型金属酸化物半導体層34からなっている。伝導帯36と価電子帯38の間にはフェルミレベル40が存在し、電極30のフェルミレベル40は伝導帯36に近く、n型金属酸化物半導体層34のフェルミレベル40は、伝導帯36と価電子帯38の中間に存在する。紫外線42が照射されると、中間結晶層32にある価電子帯38の電子44は伝導帯36に励起される。
【0047】
図3(B)に示した紫外線照射中の状態では、紫外線42の照射によって、中間結晶層32の領域における価電子帯38の電子44が伝導帯36に励起され、励起された電子44は伝導帯36の傾斜により電極30の伝導帯36に収容される。一方、価電子帯38には電子44の抜けた正孔46が溜まっている。中間結晶層32においては、紫外線励起と再結合の間に時間差が発生し、この時間差があることにより原子の再配列が行われる。このため、中間結晶層32の価電子帯38に残留している正孔46が、バンドギャップ中に移動し、新たなエネルギー準位48を形成する。
【0048】
図4は、紫外線42の照射により、中間結晶層32のバンドギャップ中に新たなエネルギー準位48が形成された再結合後の状態を示している。電極30とn型金属酸化物半導体層34の界面にのみバンドギャップ中の電子密度の増加、内殻電子のケミカルシフトも観測されており、原子間隔が変化したと考えられる。
【0049】
このように、n型金属酸化物半導体層34に紫外線42を照射することでバンドギャップ内に新たなエネルギー準位48が形成できることを説明したが、二次電池としては、この新たに形成されたエネルギー準位48を利用して、電極とn型金属酸化物半導体との間に絶縁層により障壁を形成し、電子をコントロールすることで充電機能を持たせることができる。
【0050】
図1に示した充電層18は、図1及び図2で説明したように、シリコーンによる絶縁被膜28が形成された二酸化チタンを材料としたn型金属酸化物半導体26である。この場合に二酸化チタンとベース電極の間に絶縁層による障壁を持つことになる。
【0051】
量子電池は、バンドギャップに形成されたエネルギー準位に、外部から電圧を印加することにより電界を形成して電子を充満させ、次いで電極に負荷を接続することで、電子を放出してエネルギーを取り出し、電池としての機能を果たす。この現象を繰り返し行うことで、二次電池としての使用が可能である。
【0052】
量子電池の製作プロセスは、基板に機能層を順次積層するプロセスとなるが、充電層の機能は最も重要であり、量子電池としての完成を待たずに充電層が積層された時点で評価できれば、不良品をカットでき効率的な量産プロセスを確立できるばかりでなく、異常個所、不良の特定による原因究明が行え、生産設備の修理、改良の他、管理も容易となる。
【0053】
図5は、本発明による半導体プローブを示している。量子電池の製作プロセスに於いて充電層積層後に機能評価を行う。なお、充電層積層後とは、充電層が積層され、紫外線を照射して充電層内のn型金属酸化物半導体に光励起構造変化を励起した状態をいう。
【0054】
図5において、半導体プローブ50は、絶縁物である支持体52に、導電性の金属層からなる電極(以下、量子電池の電極と区別するためプローブ電極54という)と金属酸化物半導体56を積層する。
【0055】
金属酸化物半導体56の材料は、被測定物の相対的関係、即ち、量子電池10の機能層積層順によって異なる。図1に示した量子電池10を、基板12にn型金属酸化物半導体層16と充電層18を積層している状態では、その上にp型金属酸化物半導体層20と対向電極22が積層されるため、半導体プローブ50の金属酸化物半導体56は、p型金属酸化物半導体であり、目的とする量子電池10の材料及び層厚と同じものとしている。
【0056】
量子電池10は、図1に示したような機能層の積層順である必要はなく、基板12の上に、対向電極22、p型金属酸化物半導体層20、充電層18、n型金属酸化物半導体層16とベース電極14を順に積層した構造としてもよい。この場合、充電層18が積層された後の評価に使用する半導体プローブ50は、金属酸化物半導体56をn型金属酸化物半導体とする。
【0057】
本発明による半導体プローブ50では、図1に示した量子電池10での充電層18積層後の機能層を設け、充電層18が積層された製作途中の量子電池10に対して、充電層18上に半導体プローブ50を垂直に密着させる。これにより、量子電池としての動作を行わせることができ、充電層を評価することができる。量子電池の充電層18積層後における充電層18の評価は、半導体プローブ50にプローブ電極54と金属酸化物半導体56を積層した状態で可能である。
【0058】
しかしながら、半導体プローブ50の面、即ち、p型金属酸化物半導体56の表面が硬く、量子電池の充電層へコンタクトした時に、押圧により量子電池の充電層に傷をつける場合がある。充電層は、絶縁性の被膜で覆われているが、この絶縁性の被膜は、シリコーン等の樹脂であり、金属に対しては大幅に柔らかな面となっているからである。
【0059】
このために、本発明では、半導体プローブ50の金属酸化物半導体56に、量子電池の充電層と同じ材料で構成した充電層(以下、量子電池の充電層と区別するためにプローブ充電層58と呼ぶ)をさらに積層している。
【0060】
金属酸化物半導体56は、その材料や膜厚は限定されるものではないが、目的とする量子電池10と同じ材料で同じ層厚とすることが好ましい。量子電池の充電層に対して電気的特性の評価精度をより向上させるためである。
【0061】
これに対して評価試験用の半導体プローブ50のプローブ電極54は導電性が得られればよく、必ずしも目的とする量子電池10と同じ材料や層厚とする必要はなく、金属板やメッキ板あるいは導電性樹脂等が使用できる。
【0062】
支持体52は、半導体プローブ50をハンドリングするために都合のよい形状でよく、また、絶縁性の材料とすることが望ましい。また、支持体52に、半導体プローブ50の先端部を充電層に密着させるための機能を持たせることもでき、この場合、支持体52を弾性体として半導体プローブ50を加圧する。弾性体を通して半導体プローブ50の充電層と18とのコンタクト圧を制御して、適正な圧力で加圧することにより密着性を向上させている。具体的な弾性体材料は、例えばエラストマがあり、各種エラストマが使用可能である。
【0063】
支持体52を弾性体とする目的は、微細な粒子からなる充電層18の凹凸面に沿って適正なコンタクト圧で半導体プローブ50と量子電池の充電層との密着性を良好にするためであり、目的からして支持体52の一部を弾性体とし、固体と弾性体を組み合わせた構造としてもよい。
【0064】
次に、本発明による半導体ブローブを用いて量子電池の電気的な特性を測定する充放電特性試験装置を説明する。
【0065】
図6は、本発明による半導体ブローブを用いた充放電特性試験装置60の概略を示した図であり、量子電池における充電層の充電特性を評価する場合の概略図である。半導体プローブ50と、定電流源62と、被測定物から構成される。半導体プローブ50のプローブ充電層58は、被測定物である量子電池の充電層18に圧力で密着される。これにより、量子電池としての機能層がすべて積層された状態となる。充電特性を評価する場合は、充放電電流源として定電流源62を使用している。
【0066】
被測定物としての量子電池は製造過程での途中段階であり、基板12に、ベース電極14とn型金属酸化物半導体16と充電層18が積層されている。被測定物としての量子電池として、例えば、基板12にポリイミドフィルム、ベース電極14に銅合金を使用し、n型金属酸化物層16には二酸化チタンを使用している。また、充電層18は、シリコーンで被覆された二酸化チタン微粒子であり、測定前に紫外線照射されている。
【0067】
半導体プローブ50のプローブ電極54と量子電池のべース電極14を接続し、定電流源62からの電流によりプローブ充電層58と量子電池の充電層18を充電する。定電流源66には電圧リミッタを設けて上限電圧、この場合量子電池の充電電圧のとなる電圧値に設定し、充電層を保護する。充電電圧は電圧計64で測定し、充電電圧の立ち上がり特性から量子電池の充電特性が得られる。
【0068】
半導体プローブ50に充電層58を備えている特徴を利用すれば、被測定物としての量子電池の製造過程での評価は、量子電池の充電層を積層する前の状態での電極評価も可能である。量子電池の基板12にベース電極14を積層した状態で、半導体プローブ50により充電特性を評価すれば、ベース電極14の電極としての評価ができる。基板12に、ベース電極14とn型金属酸化物半導体16を積層した状態としても、同様に評価が可能である、
【0069】
図7は、本発明による半導体ブローブを用いた充放電特性試験装置60の概略を示した図であり、量子電池における充電層の放電特性を評価する場合の概略図である。半導体プローブ50と、放電抵抗66と、被測定物から構成される。図6で説明した充電特性を評価する場合に対して、定電流源62が放電抵抗66に切り替えられている。
【0070】
定電流源62により充電された量子電池の充電層18とプローブ充電層58は、放電抵抗66を通って電流が流れ、蓄積された電気エネルギーを放出する。電圧計に64により放電抵抗66の両端の電圧を、時間経過と共に降下する特性を測定することにより放電特性が得られる。
【0071】
図8は、充放電特性試験装置60により、充電層が積層された量子電池の充放電特性70を測定した結果の一例を示している。図8に示す測定では、上限電圧は1.5Vとしている。定電流源62での充電は、充電開始と共にリミッタ電圧まで直線的に電圧が上昇する。定電流源62の電流値により電圧の傾きは異なるが、あらかじめ定められた電流値では一定の傾きとなり、通常1sec以下で測定される。量子電池の充電層18に欠陥があれば傾きが変化し、例えば充電層14のある部分に充電しない領域が有れば、充電量は少なくなり、図8に破線で示した傾きとなる。
【0072】
充電特性の評価後は、充放電特性試験装置60の定電流源62を、放電抵抗66に切り替えて放電特性を評価する。放電特性は、放電抵抗66の抵抗値RLに依存する。図8に示した放電特性は、抵抗値RLを、100MΩ、10MΩ、0.9MΩとした場合を示している。放電抵抗66に切り替えた時間を0として、時間と共に放電抵抗66の抵抗値RLに依存した放電特性を示している。
【0073】
放電特性は、量子電池の充電層18に欠陥があれば傾きが変化し、例えば図8において、放電抵抗RLが100MΩの場合に、充電層14のある部分に充電しない領域が有れば、充電量は少なくなっているために、図8に破線で示した傾きとなる。
【0074】
量子電池の充電層14を局所的に測定すれば、充電層14の内部の特性分布を測定することが可能となる。この場合、半導体プローブ50の先端形状、より詳しくはプローブ電極54、金属酸化物半導体56とプローブ充電層58の積層部分の形状は、充電層14よりも小さい面積の正方形、長方形あるいは円形でもよく、量子電池10の充電層18を局所的に評価できればよい。
【0075】
図9は、半導体プローブ50の一実施例の先端部を正面から見た図であり、支持体52への積層部分は長方形に分割している。支持体52の縦方向と横方向それぞれに、プローブ電極54、金属酸化物半導体56及びプローブ充電層58の積層部を、XY軸方向に5個ずつ配列して、量子電池の充電層18を全面的にカバーしている。量子電池の充電層領域の大きさを8mm×25mmとすると、半導体プローブ50の先端面では、例えば1.3mm×4.9mmの局部的半導体プローブが複数形成される。
【0076】
充電層18に対応する充電対応領域68は、図9において破線で示している。この半導体プローブ50を使用することにより、充電層18を部分的に分割した領域について電気的特性を同時に測定できる。このため、電気的特性の分布やバラツキを測定でき、さらに分割された各領域の差分測定を同時に行うことも可能である。
【0077】
なお、分割された各プローブ電極54へは、支持体52にスルーホール電極を設けることで、各プローブ電極に独立に充放電電流源を接続する構造とすることができる。
【0078】
また、量子電池の量産では、1つの基板上に複数の量子電池を同時に製作するが、被測定物としての量子電池の充電層が、基板上に複数設けられている場合は、全ての充電層に対応した半導体プローブ50を一体的に構成すれば、複数の充電層を同時に評価可能となる。この場合の半導体プローブは、支持体52を量子電池の全充電層をカバーする大きさとして、支持体52上に、各充電層に対応した大きさ、位置に、プローブ電極54、金属酸化物半導体56とプローブ充電層58の積層部分が形成される。
【0079】
半導体プローブ50は、積層部分を支持体52の平面に形成する構造に限定されるものではなく、支持体を円筒形状として、周囲面に積層部分を形成することも可能である。
【0080】
図10は、円筒型半導体プローブ72を示している。図10において、円筒支持体74の周囲面には、弾性体層76と、プローブ電極54、金属酸化物半導体56及びプローブ充電層58が積層され、プローブ充電層58は、紫外線照射されている。円筒支持体74は金属製の軸であり、円筒支持体を加圧することで、弾性体層76を変形させ、被測定物との接触をある一定の幅とすることができ、また、被測定物との密着性を向上させることができる。
【0081】
図11は、円筒型円筒型半導体プローブ72を使用した充放電特性試験装置74の概略図である。円筒型半導体プローブ72により、量子電池の充電層18を測定する場合は、円筒支持体74を加圧しながら回転させる。この時、図11に示したように、円筒型円筒型半導体プローブ72は、幅Wで充電層18と接触しながら回転し、表面を移動する。また、円筒型円筒型半導体プローブ72を回転可能な状態で固定し、量子電池を移動させてもよい。
【0082】
充電特性を評価する場合は、定電流源62を、円筒型半導体プローブ72のプローブ電極54と量子電池のベース電極14に接続して電流を流す。この時の、プローブ電極54とベース電極14間の電圧を電圧計64で測定することにより充電特性が得られる。
【0083】
円筒型半導体プローブ72を回転させながら充電層18を充電させるため、常に一定の電圧が測定される。
【0084】
図12は、円筒型半導体プローブ72を用いた充電特性82の一例である。縦軸は測定された電圧であり、横軸は、量子電池の充電層18の幅をWとし、充電層10の位置をxとし、幅Wで規格化している。電圧は1.3Vとなっている。この電圧値は、円筒型半導体プローブ72の回転速度と定電流源62の電流値とで決まる。例えば、量子電池の充電層18に、充電層18が形成されない欠陥個所があると、その欠陥個所は充電能力がなく、定電流で充電している場合は、他の正常な状態の充電層18に電流が流れて、電圧は高くなる、図12の破線で示した部分が欠陥個所84である。この評価結果から、充電層18の欠陥個所を特定することが出来る。
【0085】
円筒型半導体プローブ72を用いた充電特性は、円筒型半導体プローブ72の回転により、充電後にプローブ充電層58と量子電池の充電層18が離れる。量子電池は原理的に、充電層中に形成されたエネルギー準位ある正孔と、ベース電極14での電子が絶縁膜を介して対となって電気的エネルギーを蓄えている。
【0086】
このため、充電後にプローブ充電層58と量子電池の充電層18が離れた後は、プローブ充電層58の正孔は対となる電子が存在せず、プローブ電極52へ拡散して消滅する。一方、量子電池の充電層18は、電子が蓄積されているベース電極14の存在によりそのまま充電層に残存している。従って、量子電池の充電層18が充電後に、円筒型半導体プローブ72を用いた放電特性を評価することができる。
【0087】
図13は、円筒型半導体プローブ72を用いて充電特性を評価した後に、再度、円筒型半導体プローブ72を用いて放電特性を評価した例である。縦軸は測定された電圧であり、横軸は、量子電池の充電層18の幅をWとし、充電層10の位置をxとし、幅Wで規格化している。
【0088】
放電は、量子電池の充電層18での電気的エネルギーのみであり、プローブ充電層58には電気的なエネルギーが蓄積されていない。放電抵抗RLは、10MΩを使用している。放電特性も充電と同じく、円筒型半導体プローブ72を回転させながら放電させるため、常に一定の電圧が測定される。量子電池の充電層18に欠陥個所がある場合は、充電量が少ないため、図13の破線で示したように、欠陥個所88の電圧が低下して測定される。この様に、放電特性からも充電層18の評価が可能である。
【0089】
図14は、2つの円筒型半導体プローブ72を用いた充放電特性試験装置90である。円筒型半導体プローブ72−1では、定電流源62を用いて電圧計64−1により電圧を測定して充電特性得る。充電後の放電特性は、円筒型半導体プローブ72−1の後から、円筒型半導体プローブ72−2により、放電抵抗66で放電させ、電圧計64−2により電圧を測定する。この充放電特性試験装置90によれば、充電特性と放電特性を同時に測定でき、効率のよい評価が可能となる。
【0090】
図15は、円筒型半導体プローブの他の実施例として、量子電池のベース電極との電気的接続を図るために、接地電極部を設けた接地電極付円筒型半導体プローブ92の断面図である。円筒支持体74に、充電層測定プローブ部94と並行して、接地電極部96を設けている。
【0091】
充電層測定プローブ部94は、充放電電源との接続のために、弾性体層76と電極54部の一部は、金属酸化物半導体56とプローブ充電層58で覆わずに、充放電電源を接続する充放電電源接続部を設けている。接地電極部96は、弾性体層76−1に接地電極78を設けている。この接地電極78を、量子電池のベース電極に当接して、アースとしている。充放電電源は、この充放電電源接続部98と接地電極78に接続する。
【0092】
接地電極付円筒型半導体プローブ92は、図15に示したように、円筒支持体74の両端部に圧力Pを加えて、弾性体層76,76−1を変形させて、被測定物との密着性を向上させている。
【0093】
図16は、図15で示した接地電極付円筒型半導体プローブ92で充放電特性を測定するための量子電池の平面図である。基板12に積層されたベース電極14は、充電層18よりも広く、このベース電極の部分に、接地電極付円筒型半導体プローブ92に設けた接地電極部96を、また、充電層測定プローブ部94を充電層18に当接し、回転させながら充放電特性を測定する。
【0094】
さらに本発明は、半導体プローブを用いた充放電特性試験方法を提供し、導電性の電極と金属酸化物半導体からなる金属酸化物半導体層と電気的エネルギーを充電する充電層と支持体とを積層して構成された半導体プローブと、被測定物と、充放電を行う充放電電流源と、充放電時における被測定物の電圧を測定する電圧計とを備え、半導体プローブを被測定物に当接し、充放電電流源により充放電し、被測定物の電圧を前記電圧計で測定する。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0096】
10 量子電池
12 基板
14 ベース電極
16 n型金属酸化物半導体層
18 充電層
20 p型金属酸化物半導体層
22 対向電極
26 n型金属酸化物半導体
28 絶縁被膜
30 電極
32 中間結晶層
34 n型金属酸化物半導体層
36 伝導帯
38 価電子帯
40 フェルミレベル
42 紫外線
44 電子
46 正孔
48 エネルギー準位
50 半導体プローブ
52 支持体
54 電極
56 金属酸化物半導体
58 プローブ充電層
60,80 充放電特性試験装置
62 定電流源
64,64−1,64−2 電圧計
66 放電抵抗
68 充電層対応領域
70 量子電池の充放電特性
72,72−1,72−2 円筒型半導体プローブ
74 円筒支持体
76,76−1 弾性体層
78 接地電極
82 円筒型半導体プローブによる充電特性
84,88 欠陥個所
86 円筒型半導体プローブによる放電特性
90 2個の円筒型半導体プローブによる充放電特性試験装置
92 接地電極付円筒型半導体プローブ
94 充電層測定プローブ部
96 接地電極部
98 充放電電源接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16