【実施例】
【0014】
図1は実施例の透過型光学センサのブロック図である。実施例の透過型光学センサ1は、投光ユニット100と、これと対をなす受光ユニット200とで構成されている。投光ユニット100と受光ユニット200とは物理的に別体であり、これらは距離を隔てて互いに対向して配置される。
【0015】
投光ユニット100は投光素子102を有し、この投光素子102は駆動回路104によってパルス発光が可能な発光素子、具体的にはLEDやLD等で構成される。この実施例では、任意であるが、投光素子102の発光の期間は1μ秒である。投光ユニット100の投光周期などの全体的な制御は投光制御回路106によって行われ、投光ユニット100の運転状態は表示灯108で表示される。参照符号110は投光レンズである。
【0016】
受光ユニット200は典型的にはフォトダイオード(PD)からなる受光素子202を有し、受光素子202が出力するアナルログ信号はハイパスフィルタ204で検出に必要としない低周波成分を除去した高周波帯域の信号だけが抽出されて増幅回路206に入力され、この増幅回路206で増幅された信号がバッファメモリ208を経由して受光制御回路210に入力される。バッファメモリ208には、受光信号データが時間情報と共に順次記憶される。
【0017】
受光ユニット200は、典型的には遮光時に点灯する出力表示灯212と、受光ユニット200の動作が安定的であるか否かを表示する安定表示灯214とを更に有している。図中、参照符号216は受光レンズを示す。
【0018】
投光ユニット100が出射するパルス光の幅(パルス幅)が1μ秒であるため、受光ユニット200は上述したハイパスフィルタ204によって1μ秒のパルス光以外の光が減衰されるが、このハイパスフィルタ204に代えてバンドパスフィルタであってもよく、また、投光パルスのパルス幅(1μ秒)に対応したパルス幅のパルス光を選択的に増幅するように増幅回路206を構成してもよい。また、ハイパスフィルタ204(又はバンドパスフィルタ)と、1μ秒のパルス幅の光を選択的に増幅する増幅回路206との両者を設けてもよい。
【0019】
増幅回路206からの受光制御回路210に入力される受光信号は、A/D変換により時系列でデジタル波形として受光制御回路210に入力されてもよいが、この実施例では、予め定められている二値化しきい値により二値化した信号が受光制御回路210に取り込まれる。受光制御回路210では、二値化値が変化したタイミングによってパルス光の特定が行われる。例えば二値化値「0」を「遮光」、二値化値「1」を「入光」と設定すると、「0」から「1」へ変化するタイミングをパルス光の入光タイミングとして特定する。その際に、「0」から「1」へ変化するタイミングだけでなく「1」から「0」へ変化するタイミングに基づいてパルス光のパルス幅を特定し、パルス幅が小さすぎるものや大きすぎるものは投光ユニット100が投光したパルス光ではないとして以後の処理に利用しないようにしてもよい。
【0020】
また、受光したパルス光の受光量(受光強度)が小さい場合には、受光したパルス光の受光量(受光強度)が十分に大きい場合に比べて二値化しきい値を横切るタイミングにズレが生じる。具体的には、受光したパルス光の受光量(受光強度)が小さい場合には、例えば二値化値「0」を「遮光」、二値化値「1」を「入光」と設定すると、「0」から「1」へ変化するタイミングにやや遅れが生じ、「1」から「0」へ変化するタイミングがやや早まることになる。その結果、二値化された受光信号のパルス幅はやや小さくなる。この特性を利用してパルス幅によってパルス光の受光タイミングを補正するのが好ましい。
【0021】
図2は投光ユニット100の投光パターンを示す。
図2に図示の投光パターンは、各パルス光のパルス幅が前述したように1μ秒であり、パルス間隔が40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒、40μ秒というように、第1パルス間隔40μ秒と次の第2のパルス間隔38μ秒とが交互に混在した非等間隔のパターンで構成されている。
【0022】
図3は変形例の投光パターンを示す。この第2の投光パターンはパルス幅1μ秒でパルス間隔が36μ秒、27μ秒、36μ秒、27μ秒、36μ秒というように、第1パルス間隔36μ秒と次の第2のパルス間隔27μ秒とが交互に混在した非等間隔のパターンで構成されている。
【0023】
上述した2つの投光パターンは、互いに隣接する3つの投光パルスの第1パルス間隔と次の第2のパルス間隔とが異なる値に設定されているが、これは単なる例示であり、互いに隣接する例えば4つの投光パルスの3つのパルス間隔つまり第1パルス間隔と次の第2のパルス間隔と更に次の第3のパルス間隔とを夫々異なる値に設定してもよい。
【0024】
実施例の光学センサ1は、一つの投光パターンが投光ユニット100に設定され、この投光パターンが受光ユニット200に記憶されているが、投光ユニット100及び受光ユニット200に予め複数の投光パターンを用意しておいて、その中からユーザが選択できるようにしてもよいし、ユーザが任意に投光パターンを設定できるようにしてもよい。
【0025】
受光ユニット200は、バッファメモリ208に逐次記憶されている受光タイミングを含む受光信号データの中から、予め設定されている投光パターンつまり非等間隔性を有するパルス組を探し、当該非等間隔性のパルス組であれば投光ユニット100からの信号光であると判断され、そうでなければ外乱光であると判断される。
【0026】
変形例として、バッファメモリ208に逐次記憶されている受光タイミングを含む受光信号データと、予め設定されている投光パターンとに基づいて、次に投光ユニット100が発射する信号光のタイミングを予測して、この予測したタイミングで入光があったときには、この入光は投光ユニット100が発射する信号光であると判断するようにしてもよい。
【0027】
図4は比較例として、投光を等間隔のパルス光列で行う従来例を示す。この等間隔のパルス光列で投光を行う場合、これを受光する受光素子202を有効化する期間(
図1の破線で囲んだボックス)を「受光有効期間At」(
図5)と呼ぶと、設定したパルス発光タイミングに対する受光有効期間Atを拡大するほど投光ユニット100のクロック発生回路32のバラツキに対応できる。例えば、
図5に示すように、40μ秒毎の各パルス発光タイミングに対してその前後に4μ秒の受光を有効化する期間を設けたとすると、36μ秒〜44μ秒の間が受光有効期間Atであり、その整数分の1の周期の外乱光を投光ユニット100が出射した信号光と誤って認識してしまう。
【0028】
投光素子102のパルス投光を40μ秒の周期で等間隔のパルス間隔で行った場合に、受光ユニット200が誤認してしまう外乱光の周期を例示すれば、(1)1/2周期である18μ秒〜22μ秒、(2)1/3周期である12μ秒〜14.7μ秒、(3)1/4周期である9μ秒〜11μ秒、(4)1/5周期である7.2μ秒〜8.8μ秒、(5)1/6周期である6μ秒〜7.3μ秒、・・・であるが、周期が8.8μ秒以下の外乱光に対して受光ユニット200は投光ユニット100からの信号光であるか外乱光であるかを判別できない。更に、15μ秒未満の外乱光に対する耐性が弱いということができる。これが従来の問題点である。
【0029】
これに対して、実施例の光学センサ1にあっては、第1投光パターン(
図2)や第2投光パターン(
図3)のようにパルス間隔40μ秒、38μ秒又は36μ秒、27μ秒が交互に混在した非等間隔であるため、一定周期の外乱光に対して耐性が強くなる。
【0030】
しかしながら、非等間隔のパルス間隔の投光パターンを採用し且つ受光有効期間Atで判別しても外乱光に対する耐性を高めるには限界がある。例えばパルス間隔が40μ秒、30μ秒、40μ秒の非等間隔のパルス間隔を採用した場合に40μ秒の一定間隔の外乱光の影響を除去することができるものの、最大公約数である10μ秒の等間隔の外乱光に対して、投光素子102が発する信号光と外乱光とを区別して外乱光を排除できない。同様に、最大公約数10μ秒の整数分の1の一定間隔の外乱光も同様に投光素子102が発する信号光から区別できない。そこで、比較的精度の高いクロック発生回路32(例えば、周波数偏差がプラスマイナス0.01%、ジッターがピコ秒オーダー)を採用して、受光を有効化する期間を狭め、更に、パルス間隔差を小さくすることで、例えば、パルス間隔を40μ秒、39.6μ秒とすることで、そのパルス間隔の最大公約数0.4μ秒よりも大きな間隔の一定間隔で発光する外乱光に対しては信号光と外乱光とを区別することができるようになり、外乱光に対する耐性を向上させることができる。
【0031】
時間間隔で投光ユニット100からのパルス光か外乱光であるかを識別する上記の手法の変形例として、パルス光列の投光パルス間の相対的な関係、例えばパルス間隔比で投光ユニット100からの信号光か外乱光であるかを識別するようにしてもよい。パルス間隔比は、上述した時間間隔に比べて誤差が比較的小さくなる。この点に着目すると、信号光のパルス光であるか一定周波数の外乱光であるかを判別する際に、信号光の周期に誤差があったとしてもその影響を受けないため、パルス間隔比の誤差許容範囲を相当程度小さく設定することができるため、投光素子102が発する信号光と外乱光とを識別する精度を高めることができる。
【0032】
非等間隔の投光パターンでのパルス間隔比を採用することによる上記の効果を
図2に図示の第1投光パターン(40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒、40μ秒・・・)を例に具体的に説明すると、比較的精度の低いクロック発生回路32(誤差プラスマイナス数%〜10%、ジッターがナノ秒オーダー)を採用したと仮定したとしても、その変動は、最大44μ秒、41.8μ秒、44μ秒・・・、最小36μ秒、34.2μ秒、36μ秒・・・であり、基準となるパルス間隔比40:38を維持したまま全体の周期がプラスマイナス10%程度変動することがあり得る。しかし、投光パルスのパルス間隔比40:38の比率の誤差は1%程度であることから40:37.6乃至40:38.4の範疇に収まる。したがって、仮に38μ秒、36μ秒、38μ秒・・・(パルス間隔比40:37.9)の投光が行われたとしても、その誤差は僅かであるため投光ユニット100からの信号光と外乱光とを識別して外乱光の影響を排除した検出動作を実行することができる。
【0033】
前述したパルス間隔及びパルス間隔比に基づく受光判定について、第1投光パターン(40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒、40μ秒・・・)を例に具体的に説明すると、40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒、40μ秒のパルス間隔を基準に、そのパルス間隔の誤差としてプラスマイナス10%を許容する基準間隔の設定を行った場合に、一律に10%小さい36μ秒、34.2μ秒、36μ秒、34.2μ秒、36μ秒のパルス間隔の入光は、パルス間隔に基づく判定によれば、投光ユニット100からの信号光として認識する。同様に、40μ秒、37μ秒、40μ秒、37μ秒、40μ秒のパルス間隔であった場合に2番目、4番目のパルス間隔37μ秒だけが基準値(38μ秒)よりも小さいが、この基準値である38μ秒のマイナス10%の基準間隔は34.2μ秒であり、プラス10%の基準間隔は41.8μ秒であることから、37μ秒は許容誤差の範囲に入っていることから、パルス間隔に基づく判定によれば、この第3番目、第5番目の入光は投光ユニット100からの信号光として認識する。
【0034】
これに対して、パルス間隔比に基づく判定を説明すると、40μ秒、37μ秒、40μ秒、37μ秒、40μ秒のパルス間隔であった場合には、パルス間隔比の誤差としてプラスマイナス1%を許容する基準比率の設定を行った場合に、基準である40:38のマイナス1%の基準比率は40:37.6であるから、40:37は許容誤差の範囲から外れている。したがって第3番目、第5番目の入光は外乱光である(投光ユニット100が発した信号光ではない)と認識することができる。
【0035】
一定間隔で発光する外乱光が40μ秒と38μ秒との最大公約数である2μ秒又はその整数分の1の間隔で発光すると、そのパルス列の中に間隔が40μ秒と38μ秒となるパルスが存在することになるため信号光と区別できなくなる。また、周期の許容誤差をプラスマイナス10%とするならば、一定間隔で発光する外乱光が、1.8μ秒〜2.2μ秒又はその整数分の1の間隔で発光すると、信号光と区別できなくなる。しかしながら、一定間隔で発光する外乱光のパルス間隔が、信号光のパルス間隔の最大公約数を超える場合には、信号光のパルス信号と同じ間隔となる組み合わせのパルスが存在し得ないことから、外乱光と信号光とを区別することができる。
【0036】
実施例の光学センサ1は、40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒・・・の時間間隔の光を受光したときには遮光状態から入光状態に変化して検出出力を、遮光状態を示す信号から入光状態を示す信号へと切り替えられる。この遮光から入光状態への切り替えは所定時間遅延させてもよい。例えば、入光無しから40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒のパルス間隔の5つのパルス光の受光を確認した後に遮光状態を示す信号から入光状態を示す信号へと切り替えてもよいし、それ以上の数のパルス光を受光し得る時間を確認し続けた後に遮光状態を示す信号から入光状態を示す信号へと切り替えてもよい。
【0037】
他方、40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒のパルス間隔の投光パターンに相当する期間に40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒のパルス間隔のパルス光を認識できないときには、投光ユニット100からの信号光ではないと判断して、入光状態から遮光状態へ変化したと判断すると共に、入光状態を示す信号から遮光状態を示す信号へと検出出力が切り替えられる。そして、この状態が維持されているときには、遮光状態を示す信号の出力を維持する。この入光状態や遮光状態は前述した出力表示灯212を使って表示される。
【0038】
なお、40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒のパルス間隔の少なくとも5つの入光を認識できた場合又は認識できない場合以外の場合には前回の判断を維持してもよい。
【0039】
40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒のパルス間隔の5つの時系列に並んだパルス光の組の一部は認識できるものの5つのパルス光の全てを認識できない場合には、光学センサ1は、現状の検出出力を維持するように構成してもよいし、投光ユニット100のパルス組の投光を部分的に判別できるその割合や頻度に応じて入光状態又は遮光状態を判断するようにしてもよい。この入光状態又は遮光状態の判断に使用するしきい値として、例えば入光状態と判断するしきい値のパルス光の数を「5」と設定した場合に、遮光状態と判断するしきい値のパルス光の数を「3」と設定するというように入光状態と判断するしきい値と遮光状態と判断するしきい値との間にヒステリシスを設けるようにしてもよい。
【0040】
投光ユニット100の投光を安定した状態で受光ユニット200が受光しているかを安定表示灯214を使って表示するのが好ましい。例えば時系列で40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒のパルス間隔の投光パターンで投光ユニット100が投光する場合に、40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒のパルス間隔の5つのパルス光からなる組の中の全てのパルス光を受光ユニット200が認識できた場合及び5つのパルス光を全く認識できない場合には検出動作が安定的に行われているとみなして、これに対応した表示を安定表示灯214で行うのがよい。逆に、時系列で40μ秒、38μ秒、40μ秒、38μ秒のパルス間隔の少なくとも5つのパルス光の組の中の一部のパルス光を認識できるものの全てのパルス光を認識できない場合には不安定な検出動作であるとみなして、これに対応した表示を安全表示灯214で行うのがよい。
【0041】
パルス光の受光量(受光強度)が二値化しきい値を超えている場合に、この二値化しきい値よりも大きい第2のしきい値を超えている場合に検出動作が安定的に行われているとみなして、これに対応した表示を安定表示灯214で行ってもよい。また、パルス光の受光量(受光強度)が二値化しきい値を超えているが、上記の第2のしきい値を下回る場合には、検出動作が安定的に行われていないとみなして、これに対応した表示を安定表示灯214で行ってもよい。また、検出動作が安定的に行われていないとみなしたときには、投光ユニット100の投光パターンを他のパターンに自動的に変更するようにしてもよい。
【0042】
また、投光ユニット100からの投光以外の光を受光していないと判別できるときには検出動作が安定的に行われているとみなして、これに対応した表示を安定表示灯214で行ってもよいし、逆に、外乱光であると判別できるときには検出動作が安定的に行われていないとみなして、これに対応した表示を安定表示灯214で行ってもよい。
【0043】
入光状態又は遮光状態の判断において、受光ユニット200の過去の受光信号データを時間情報と一緒に保存し、光を受光する毎に過去のデータと照合して、投光ユニット100が投光し得る周波数と位相を備えたパルス光が過去のデータに含まれているか否かを検索して、投光ユニット100が投光し得るパルス光であると判断したときには「受光有り」と判断するようにしてもよい。これにより外乱光の影響を排除することができる。変形例として、予め過去のデータを検索して次に投光ユニット100が投光するパルス光のタイミングを予測しておいて、この予測したタイミングと一致した受光があったときに「受光有り」と判断するようにしてもよい。
【0044】
実施例の光学センサ1は、異なる2種類のパルス間隔が交互に混在する非等間隔の投光パターンを有するが、本発明はこれに限られず、3種類以上の異なるパルス間隔が繰り返し混在する非等間隔の投光パターンを有する光学センサであってもよい。また、実施例の光学センサ1は、投光ユニット100と受光ユニット200とが物理的に別体の透過型光学センサであるが、本発明はこれに限られず投光ユニット100と受光ユニット200とが物理的に一体化されて、互いに対向して配置される透過型光学センサであってもよい。また、本発明は、投光素子(投光ユニット)と受光素子(受光ユニット)が内蔵され、光ファイバのヘッドユニットが接続される光学センサ(ファイバセンサ)であってもよい。また、本発明は、投光素子(投光ユニット)と受光素子(受光ユニット)が内蔵され、検出対象物や対向配置される回帰反射体からの反射パルス光に基づいて検出動作を行う光学センサ(反射型光学センサ)であってもよい。