(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予め準備したポリフェニレンエーテルの量の、前記重合溶液に添加される前記フェノール性化合物の量に対する割合が、10質量%以上30質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
(ポリフェニレンエーテルの製造方法)
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法は、反応器内において、フェノール性化合物と芳香族溶媒と触媒とを含む重合溶液に、酸素含有ガスを通気して、前記フェノール性化合物を酸化重合させる重合工程を有する。
上記のように構成されている本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法によれば、酸化重合前期の発泡領域を経由せずに酸化重合を完了させることができるので、酸化重合前期の発泡を十分に抑制しつつ反応器の単位体積当たりの生産性を向上させることができる。
【0013】
本実施形態においては、フェノール性化合物、芳香族溶媒、触媒、必要に応じてその他の材料を含む重合溶液を調整して反応器中に収容し、反応器中で重合溶液に酸素含有ガスを通気して、フェノール性化合物を酸化重合することで、ポリフェニレンエーテルを得ることができる。
【0014】
以下、重合工程(及び予備重合工程)において得られる結果物、並びに重合工程(及び予備重合工程)において用いられる原料(フェノール性化合物、芳香族溶媒、触媒、その他の材料)について詳述する。
【0015】
<ポリフェニレンエーテル>
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法における重合工程で製造されるポリフェニレンエーテルについて以下に説明する。
重合工程によって製造されるポリフェニレンエーテルは、特に限定されないが、具体的には、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する単独重合体又は共重合体である。
【0016】
【化1】
・・・(1)
[上記式(1)において、R
1、R
4は、それぞれ独立して、水素、第一級又は第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、及び炭化水素オキシからなる群より選ばれるいずれかを表し、R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素、第一級又は第二級の低級アルキル、及びフェニルからなる群より選ばれるいずれかを表す。]
【0017】
ポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、特に限定されないが、具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。この中でも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが、原料が安価であり、入手が容易であるという観点から、好ましい。
【0018】
ポリフェニレンエーテルの共重合体とは、フェニレンエーテル単位を単量体単位として含む共重合体である。ポリフェニレンエーテルの共重合体としては、特に限定されないが、具体的には、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。この中でも、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が、原料が安価であり、入手が容易であるという観点から、好ましい。
【0019】
本実施形態の製造方法により得られるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c)は、0.3〜1.0dL/gであることが好ましい。還元粘度は、0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて30℃の温度条件で測定した値とする。還元粘度は、0.3〜0.8dL/gの範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは0.3〜0.6dL/gの範囲である。上記還元粘度が0.3dL/g以上であることにより、ポリフェニレンエーテル本来の機械強度が得られる傾向にある。また、上記還元粘度が1.0dL/g以下であることにより、ポリフェニレンエーテル重合時の過度の分子量上昇を抑制する効果が得られる傾向にある。
【0020】
還元粘度の制御方法について言えば、触媒量と空気通気量の増加と反応時間を長くすることにより還元粘度が高くなる傾向にあり、逆に、触媒量と通気量を下げて反応時間を短くすることにより還元粘度が低くなる傾向にある。
【0021】
<フェノール性化合物>
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法における重合工程(及び予備重合工程)で用いられるフェノール性化合物は、下記式(2)で表される化合物である。
【化2】
・・・(2)
[上記式(2)において、R
5、R
7は、それぞれ独立して、水素、第一級又は第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、及び炭化水素オキシからなる群より選ばれるいずれかを表し、R
6、R
8は、それぞれ独立して、水素、第一級又は第二級の低級アルキル、及びフェニルからなる群より選ばれるいずれかを表す。]
【0022】
フェノール性化合物としては、特に限定されないが、具体的には、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール等が挙げられる。これらのフェノール性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、重合溶液として使用される芳香族溶媒が少量のフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール等を不純物として含んでいても、フェノール性化合物の一部として重合反応により消費されてポリフェニレンエーテル内に組み込まれるので、実質上差し支えない。
【0023】
これらの中でも、フェノール性化合物としては、2,6−ジメチルフェノール、又は2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの混合物であることが好ましく、2,6−ジメチルフェノールがより好ましい。
【0024】
<芳香族溶媒>
芳香族溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、低分子量のフェノール性化合物を溶解し、触媒の一部又は全部を溶解するものを用いることができる。
【0025】
このような芳香族溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;ニトロベンゼン等のニトロ化合物等が挙げられる。この中でも、芳香族溶媒は、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、トルエンがより好ましい。
【0026】
必要に応じて、芳香族溶媒には、水と相溶する性質を持つ溶媒を混在させることができる。水と相溶する性質を持つ溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル;ジメチルホルムアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種以上、必要であればさらに2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
重合工程(及び予備重合工程)で用いる芳香族溶媒としては、実質的に水と相溶しないものを好ましく用いることができる。実質的に水と相溶しないものとしては、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶媒が好ましい。
【0028】
また、本実施形態における重合の形態は、フェノール性化合物を酸化重合させて得られる重合体であるポリフェニレンエーテルに対する良溶媒と貧溶媒との比率の選択によって変化する。具体的には、良溶媒の比率を大きくすることで溶液重合法になり、貧溶媒の比率を大きくすることで反応の進行とともに、重合体が反応溶媒中に粒子として析出する沈殿重合法になる。本実施形態における重合の形態は、特に限定されず、必要に応じて芳香族溶媒に添加する貧溶媒の量を調整して、所望とする重合形態を適宜選択することができる。
【0029】
<触媒>
触媒は、フェノール性化合物と芳香族溶媒と触媒とを含む重合溶液に、酸素含有ガスを通気して、フェノール性化合物を効率的に酸化重合し、ポリフェニレンエーテルを製造するために有効な酸化触媒である。
【0030】
かかる触媒としては、特に限定されないが、具体的には、銅化合物と、臭素化合物と、ジアミン化合物、3級モノアミン化合物、及び2級モノアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことものが好ましく、銅化合物と、臭素化合物と、ジアミン化合物、3級モノアミン化合物、及び2級モノアミン化合物とを必須成分として含有するものがより好ましい。
【0031】
触媒の成分として用いる銅化合物としては、特に限定されないが、具体的には、第一銅化合物、第二銅化合物、又はそれらの混合物を使用することができる。第一銅化合物としては、特に限定されないが、具体的には、酸化第一銅、塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等が挙げられる。また、第二銅化合物としては、特に限定されないが、具体的には、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等が挙げられる。これらの中で好ましい化合物は、第一銅、第二銅化合物については、酸化第一銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。また、これらの銅塩は、酸化銅、炭酸銅炭酸塩、及び水酸化銅等と、これらに対応するハロゲン又は酸とから、使用時に合成してもよい。例えば、酸化第一銅と臭化水素(の溶液)とを混合することにより、臭化第一銅が得られる。銅化合物として好ましいものは第一銅化合物である。これらの銅化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
触媒の成分として用いる臭素化合物としては、特に限定されないが、具体的には、臭化水素、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。また、これらの臭素化合物は、水溶液や適当な溶媒を用いた溶液にした状態で使用してもよい。これらの臭素化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上述した銅化合物と臭素化合物との好ましい組み合わせは、酸化第一銅と臭化水素との水溶液である。これらの化合物の使用量は、特に限定されないが、銅原子のモル量に対して臭素原子のモル量で2倍モル量以上10倍モル量以下が好ましい。また、フェノール性化合物100モルに対する銅原子の割合が0.02〜0.6モルであることが好ましい。
【0034】
触媒の成分として用いるジアミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、下記式(3)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【化3】
・・・(3)
[上記式(3)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、水素、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、全てが同時に水素ではなく、R
5は、炭素数2〜5の、直鎖状若しくはメチル分岐を持つアルキレン基である。]
【0035】
式(3)で表されるジアミン化合物の中でも、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミンが好ましい。
【0036】
これらのジアミン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ジアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、通常使用される銅原子のモル量に対して0.5倍モル量以上とすることができ、上限は特に限定されない。
【0037】
触媒の成分として用いる3級モノアミン化合物としては、特に限定されないが、脂環式3級アミンを含む脂肪族3級アミン等が挙げられる。3級モノアミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、N−ブチル−ジメチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
これらの3級モノアミンは、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
3級モノアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、フェノール性化合物100モルに対して0.1モル〜15モルであることが好ましい。
【0038】
触媒の成分として用いる2級モノアミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジベンジルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミン、N(置換又は非置換フェニル)アルカノールアミン、N−炭化水素置換アニリン等が挙げられる。
【0039】
前記N(置換又は非置換フェニル)アルカノールアミンとしては、特に限定されないが、具体的には、N−フェニルメタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−(m−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(2’,6’−ジメチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−クロロフェニル)エタノールアミン等が挙げられる。
【0040】
前記N−炭化水素置換アニリンとしては、特に限定されないが、具体的には、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−メチル−2−メチルアニリン、N−メチル−2,6−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0041】
これらの2級モノアミン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
2級モノアミン化合物の使用量は特に限定されないが、一般的にフェノール性化合物100モルに対し0.05モル〜15モルの範囲である。
【0042】
<その他の材料>
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法において、重合溶液(及び予備重合溶液)が含みうるその他の材料としては、以下に限定されないが、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩化合物、ポリエチレングリコール基含有アルキルアミン、及びポリエチレングリコール基含有アルキルアンモニウム塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記その他の材料の含有量としては、重合反応の効率の向上を図る観点から、重合溶液(又は予備重合溶液)100質量%に対して0.1質量%を超えない範囲で含有されることが好ましい。
【0043】
その他の材料の具体例としては、下記式(4)、(5)、又は(6)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化4】
・・・(4)
[上記式(4)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、炭素数1〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、Xは、対となる陰イオンである。]
【0045】
【化5】
・・・(5)
[上記式(5)において、R
5は、炭素数1〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、R
6は、炭素数1〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基、−(CH
2CH
2O)
n−H[nは1〜40の整数]で表される基を表し、R
7は、−(CH
2CH
2O)
n−H[nは1〜40の整数]で表す。]
【0046】
【化6】
・・・(6)
[上記式(6)において、R
8、R
9は、炭素数1〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、R
10は、炭素数1〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基、−(CH
2CH
2O)
n−H[nは1〜40の整数]で表される基を表し、R
11は、−(CH
2CH
2O)
n−H[nは1〜40の整数]で表される基を表し、Xは、対となる陰イオンである。]
【0047】
上記式(4)及び(6)において、Xは、好ましくは、Cl
-及びBr
-からなる群より選ばれる陰イオンである。
【0048】
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、上記その他の材料としては、より具体的には、Aliquat336(ヘンケル社製)やCapriquat(株式会社同仁化学研究所製)の商品名で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが好ましく用いられる。
【0049】
((重合工程))
重合工程の重合溶液の調整は、予め準備したポリフェニレンエーテル、フェノール性化合物、芳香族溶媒、触媒の成分を、それぞれ単独で反応器に導入してもよく、また、予め準備したポリフェニレンエーテル、フェノール性化合物、触媒を各々予め、芳香族溶媒に溶解した後、反応器に導入してもよいが、まず、予め芳香族溶媒の一部に溶解した触媒を反応器に導入し、続いて、残りの芳香族溶媒に溶解したフェノール性化合物を反応器に導入するのが好ましい。
【0050】
ポリフェニレンエーテルの酸化重合における重合溶液の温度は、反応の進行と触媒の活性との観点から、0〜80℃に調整することが好ましく、10〜60℃に調整することがより好ましく、20〜50℃に調整することがさらに好ましい。重合工程の前半では温度を低めに、重合工程の後半では温度を高めに設定することが好ましい。これにより、重合反応の進行がより促進される傾向にある。
【0051】
重合工程の重合溶液は、フェノール性化合物と芳香族溶媒との合計を100質量部として、フェノール性化合物10〜25質量部、芳香族溶媒75〜90質量部、及び触媒0.1〜10質量部の配合割合で調製することが好ましい。
このような配合割合とすることにより、ポリフェニレンエーテルの重合反応を安定的に制御することができる傾向にある。なお、重合溶液における、フェノール性化合物、芳香族溶媒、触媒の量は、フェノール性化合物、芳香族溶媒、触媒の反応器への導入が完了した時点の質量に基づくものとする。
【0052】
本実施形態においては、フェノール性化合物と芳香族溶媒との合計を100質量部として、フェノール性化合物12〜23質量部、芳香族溶媒77〜88質量部、及び触媒0.5〜9質量部を含む重合溶液を用いることがより好ましく、フェノール性化合物と芳香族溶媒との合計を100質量部として、フェノール性化合物13〜21質量部、芳香族溶媒79〜87質量部、及び触媒0.8〜8質量部を含む重合溶液を用いることさらに好ましい。上記好ましい配合割合とすることにより、ポリフェニレンエーテルの重合反応を安定的に制御することができる傾向にある。
【0053】
重合工程における反応器気相部の絶対圧力は、0.098MPa以上であり、0.392MPa以下である。反応容器気相部の絶対圧力が0.392MPaを超える場合は過大な設備を必要とすることになるので好ましくない。0.098MPaに満たない場合は大気圧より負圧の領域になり、真空に対応した設備を必要とすることになるので好ましくない。
【0054】
(((酸素含有ガスの通気)))
酸素含有ガスの通気の開始時期は、特に限定されないが、重合溶液の調整において、予め準備したポリフェニレンエーテル、フェノール性化合物、芳香族溶媒、触媒のいずれかを反応器へ導入した後に、酸素含有ガスの通気を開始することが好ましい。
【0055】
酸素含有ガスとしては、特に限定されないが、具体的には、酸素と任意の不活性ガスを混合したもの、空気、空気と任意の不活性ガスとを混合したものを用いることができる。不活性ガスとしては、特に限定されないが、具体的には、重合反応に対する影響が大きくない限り、任意のものが使用できる。代表的な不活性ガスは、窒素である。
【0056】
酸素含有ガスの酸素濃度は、特に限定されないが、具体的には、酸素含有ガス100容量%に対して、5〜25容量%であることが好ましく、特に、窒素含有ガスと空気とを含む場合には、酸素濃度が6〜20容量%であることがより好ましく、酸素濃度が8〜12容量%あることがさらに好ましい。このような好ましい酸素濃度であれば、徐熱や重合速度等がより安定する傾向になる。
【0057】
また、通気後の酸素含有ガス中の酸素濃度(未反応の酸素の濃度)が11.6%を超える場合には、使用溶媒の爆発を防止する観点から、反応器気相部に窒素等の不活性ガスを導入して、酸素濃度を11.6%以下にコントロールすることが好ましい。
【0058】
酸素含有ガスの通気量は、特に限定されないが、重合反応に供するフェノール性化合物1kgに対して、0.5〜15NL/minであることが好ましく、3〜14NL/minであることがより好ましく、6〜13NL/minであることがさらに好ましい。0.5NL/min以上とすることにより、目的とするポリフェニレンエーテルが早期に所望の分子量に達し、生産性が向上する傾向にある。一方、15NL/min以下とすることにより、設備の過大化や排ガス量の増大という問題を回避でき、経済性に優れる傾向にある。
【0059】
反応器気相部の絶対圧力は、酸化重合に用いる反応器の許容範囲内であれば、特に限定されないが、具体的には、発泡抑制の効果を得る観点から、0.294MPa以上とすることが好ましく、酸化重合設備の過大化を防ぐ観点から、0.392MPa以下にすることが好ましい。
【0060】
フェノール性化合物の酸化重合に際しては、反応の進行に従って、反応溶液に泡が生じる。酸化重合を継続し重合溶液中のフェノール性化合物が消費されると発泡が収まることから、酸化重合の初期に重合溶液が発泡するのは、フェノール性化合物が重合溶液中に多く存在することと関係があるものと推察される。
酸化重合反応の前半(前期)においては、反応の進行とともに泡の高さが増加した後に急激に減少し、酸化重合反応の後半(後期)では泡は消失する。ここで、酸化重合反応の前半(前記)から酸化重合反応の後半(後期)に移るタイミングは、泡の高さが減少に転じる時点に定めてよく、完全に消泡した時点の前後10分間とすることが好ましい。なお、実際には、泡の高さが減少し始めてから約10分間で泡は完全に消泡する。
【0061】
前述の通り、一般的なポリフェニレンエーテル重合工程における酸化重合の初期には、発泡層が発生する場合がある。なお、発泡層の発生については発泡量で評価することができ、当該発泡量は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0062】
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、予め準備したポリフェニレンエーテルを、重合工程における酸化重合前のフェノール性化合物に添加することによって、重合溶液の発泡を抑制することができる。
【0063】
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、重合工程の前期に発生する発泡層の発生を抑制できるため、従来技術において重合溶液の発泡層部分のために余分に設計していた反応器の容量を活用することができる。
【0064】
本実施形態において、予め準備したポリフェニレンエーテルの量の、重合溶液に添加されるフェノール性化合物の量に対する割合は、本実施形態における所望の効果を確保できる限り特に限定されないが、重合活性の向上、及び反応時間(重合時間)の短縮を可能とする観点から、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上であり、ポリフェニレンエーテルの生産性を考慮するという観点から、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
なお、反応時間(重合時間)については、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0065】
一方、本実施形態では、ポリフェニレンエーテルの生産性を考慮するという観点から、重合工程の重合溶液におけるフェノール性化合物の割合は、25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは22%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
【0066】
(((酸化重合停止)))
上述のように重合工程を行った後、目的とする重合度に達した時点で重合反応を停止する。
重合反応の停止方法は、特に限定されず、従来公知の方法を適用できる。通常の停止方法としては、塩酸や酢酸等の酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を触媒失活剤として反応液に加えることで、触媒を失活させる方法が挙げられる。
重合停止の後、生成したポリフェニレンエーテルを分離して、メタノール等のポリフェニレンエーテルを溶解しない溶媒で洗浄し、乾燥して、ポリフェニレンエーテルを回収する。
【0067】
ここで、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法の重合工程において用いられる予め準備したポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されることなく、前述の本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法の重合工程において得られるポリフェニレンエーテルと同様のものとしてよい。
【0068】
またここで、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法の重合工程において用いられる予め準備したポリフェニレンエーテルは、製造効率及び製造コストの観点から、予め準備したポリフェニレンエーテルを用いない点以外は、前述の重合工程と同様とした予備重合工程により準備したポリフェニレンエーテルとすることが好ましい。
この場合、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法は、前述の重合工程の前に、フェノール性化合物と芳香族溶媒と触媒とを含む予備重合溶液に、酸素含有ガスを通気して、前記フェノール性化合物を酸化重合させる、予備重合工程(後述)を更に含む。
【0069】
((予備重合工程))
予備重合工程は、予め準備したポリフェニレンエーテルを用いない点以外は、前述の重合工程と同様としてよく、前述の重合工程における、重合溶液の調整、酸素含有ガスの通気、酸化重合停止等は、重合工程におけるそれらと同様としてよい。
【0070】
本実施形態においては、予備重合工程から重合工程に移るときには、反応器内の予備重合工程における予備重合溶液を有機相と水相とを用いて分液することで得られる有機相の少なくとも一部を連続使用して、予備重合工程のフェノール性化合物及び芳香族溶媒を重合工程で再利用(リサイクル)することが肝要である。
この分液操作により、予備重合溶液中に含まれ得る触媒失活剤及び水を、水相中に溶解させて除去しつつ、予備重合工程で生成したポリフェニレンエーテル、未反応のフェノール性化合物、芳香族溶媒等を有機相中に留めることができる。
【0071】
酸化重合後の予備重合溶液を連続使用するための上記分液操作は、予備重合溶液が有機溶媒と水とを含み、重合反応の停止後に有機相と水相とを形成する場合には、そのまま行ってよく、さもなければ、適宜有機溶媒や水を加えながら行ってよい。
そして、この分液操作により得た有機相を含む重合溶液の調製は、特に限定されないが、工業的な実施し易さの観点から、予備重合溶液の有機相を予備重合工程の反応器から一度取り出して別の重合工程の反応器に移した後、この重合工程の反応器において行うことが好ましい。また、重合溶液の調製は、予備重合工程の反応器において行ってもよく、この場合、予備重合工程の反応器において、触媒失活剤及び水を含み得る水相を除去して、リフェニレンエーテル、未反応のフェノール性化合物、芳香族溶媒等を含む有機相の一部を残すことが肝要となる。
【0072】
前述の通り、一般的なポリフェニレンエーテル重合工程における酸化重合の初期には、発泡層が発生する場合があるところ、本発明の好適な実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、予備重合工程における重合溶液を有機相と水相とを用いて分液することで得られる有機相の少なくとも一部を重合工程で連続使用して、重合前記の発泡領域を経由せずに、酸化重合を継続して行う。これにより、重合工程において、反応器の単位体積当たりの生産効率の向上を図ることができる。
【0073】
このように、予備重合工程で生成したポリフェニレンエーテル、未反応のフェノール性化合物、芳香族溶媒等を、重合工程における酸化重合前のフェノール性化合物に添加することによって、重合溶液の発泡を抑制することができる。
また、予備重合工程における重合溶液を有機相と水相とを用いて分液することで得られる有機相の少なくとも一部を使用することによって、重合工程の重合活性が予備重合工程よりも向上する。この製造方法により、重合前期の発泡を抑制することで反応器の容量を十分に活用することが可能となる。
【0074】
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法における好ましい形態としては、フェノール性化合物として2,6−ジメチルフェノールを使用し、触媒成分が銅化合物として酸化第一銅、臭素化合物として臭化水素(水溶液で使用)、ジアミン化合物としてN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2級モノアミン化合物としてN,N−ジ−n−ブチルアミン、3級モノアミンとしてN,N−ジメチル−n−ブチルアミンの5成分を併用した形態が挙げられるが、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法は、この形態に限定されるものではない。
【0075】
以上の通り、本実施形態では、重合溶液中に重合反応に影響を与える消泡剤を存在させる必要がなく、これにより重合反応の活性を低下させることなく、重合溶液の発泡を抑制しながらポリフェニレンエーテルを製造することができる。
【実施例】
【0076】
以下、本実施形態について、具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて具体的に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例に適用した、物性及び特性等の測定方法を下記に示す。
【0077】
(1)還元粘度(ηsp/c)の計測
ポリフェニレンエーテルの0.5g/dLのクロロホルム溶液を調整し、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)(dL/g)を求めた。
【0078】
(2)液面の高さの計測
反応器の側面にスケールを貼り、反応器の下部(0点とする)から液面と反応器の側面との接触部分(液相と泡との界面)までの距離(cm)を、反応溶液の液面の高さとして、測定した。すなわち、各例において、重合溶媒を反応容器へ導入した直後から一定の撹拌速度:500rpmで撹拌を開始し、酸化重合の開始から10分毎に上記距離の測定を行うことによって、重合溶液を撹拌する場合の撹拌状態における液面の高さを測定し、重合反応期間における最大値を各例の液面の高さ(cm)とした。
【0079】
(3)発泡量の計測
上記「液面の高さの計測」における条件と同様の条件下で、前述の液相と泡との界面から、液面上にある発泡層の上面と反応器の側面との接触部分までの距離(cm)を、発泡量を示す値として、計測した。各例において、重合反応期間における最大値を各例の発泡量を示す値(cm)とした。
【0080】
(4)発泡終了時間の計測
重合溶液において発泡が終了したときを目視にて判定し、酸化重合開始から発泡終了までの時間を発泡終了時間(min)として計測した。
【0081】
(5)液粘度の計測及び重合時間の計測
振動式液粘度計(SEKONIC社製、VISCOMATE VM−100A)を用いて、後述の通りサンプリングされた各例の重合溶液の温度を40℃に調整して、溶液の液粘度(cP)を求めた。上記重合溶液に対して酸素含有ガスの通気を開始した時点を酸化重合の開始時点とし、また、上記液粘度の値が250cPとなった時点を酸化重合の停止時点として、酸化重合開始から酸化重合停止までの重合時間(min)を計測した。
【0082】
〔実施例1〕
反応器として、反応液を入れる高さの上限が50cm、内径が16cmの円筒型の反応器であって、反応器の底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼、サンプリング用の排出バルブを設け、反応器の側部にバッフル、温度調整装置を設け、反応器の上部に、重合溶液の導入口、ベントガスラインに凝縮液分離のためのデカンターを付属した還流冷却器を設けた、15リットルのジャケット付きSUS製の反応器を用いた。デカンターのベントガス排出口には、圧力調整弁と圧力測定器を設置した。
分液操作のための液−液分離器として、重合溶液を入れる高さの上限が50cm、内径16cm円筒型の液−液分離器であって、分離器の底部に撹拌タービン翼、サンプリング用の排出バルブを設け、分離器の側部にバッフル、温度調整装置を設け、分離器の上部に、重合溶液の導入口、ベントガスラインに凝縮液分離のためのデカンターを付属した還流冷却器を設けた、15リットルのジャケット付きSUS製の液−液分離器を用いた。
【0083】
(予備重合工程)
2,6−ジメチルフェノール1.08kg、トルエン4.84kg、及び触媒(2.5gの酸化第一銅、15.2gの47%臭化水素水溶液、6.1gのN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、41.2gのN−ブチル−ジメチルアミン、11.4gのジ−n−ブチルアミン)76.4g、で構成される重合溶液を調製し、これを上記反応器に導入し、重合溶液の温度を40℃、反応器気相部の絶対圧力を0.301MPaに調整した。その後、通気用酸素含有ガスとして、絶対圧力が0.301MPaであり、酸素濃度が9容量%である酸素含有ガスを、スパージャーより通気して、2,6−ジメチルフェノールの酸化重合を開始した(この酸素含有ガスの酸素分圧は、0.301(MPa)×0.09=0.02709(MPa)であった)。
重合反応中、上記(2)方法に従って液面の高さを、上記(3)方法に従って発泡量を計測した。上記酸化重合の開始以降、泡の発生が観測されたが、酸化重合開始から90分後に完全に消泡したものと認められた。また、上記(4)方法に従って発泡終了時間を計測した。さらに、酸化重合60分経過時点から5分毎に少量ずつサンプリングを実施し、上記(5)の方法に従って液粘度を計測し、重合時間を計測した。
酸化重合開始から151分後に、エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製)の10%水溶液0.60kgを添加することで酸化重合を停止し、重合溶液を70℃で150分間撹拌した。その後、重合溶液全量を反応器より抜き出し、液−液分離器に導入した。その後、溶液を60分間静置し、液−液分離により有機相と水相とに分離した。
【0084】
(重合工程)
予備重合工程で得られた有機相1.20kg(20質量%)、2,6−ジメチルフェノール1.08kg、トルエン4.84kg、及び触媒(2.5gの酸化第一銅、15.2gの47%臭化水素水溶液、6.1gのN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、41.2gのN−ブチル−ジメチルアミン、11.4gのジ−n−ブチルアミン)76.4g、で構成される重合溶液を調製し、これを上記反応器に導入し、重合溶液の温度を40℃、反応器気相部の絶対圧力を0.301MPaに調整した。その後、通気用酸素含有ガスとして、絶対圧力が0.301MPaであり、酸素濃度が9容量%である酸素含有ガスを、スパージャーより通気して、2,6−ジメチルフェノールの酸化重合を開始した(この酸素含有ガスの酸素分圧は、0.301(MPa)×0.09=0.02709(MPa)であった)。
重合反応中、上記(2)の方法に従って液面の高さを、上記(3)の方法に従って発泡量を計測した。上記酸化重合の開始以降、泡の発生が観測されたが、酸化重合開始から90分後に完全に消泡したものと認められた。また、上記(4)の方法に従って発泡終了時間を計測した。さらに、酸化重合60分経過時点から5分毎に少量ずつサンプリングを実施し、上記(5)の方法に従って液粘度を計測し、重合時間を計測した。
酸化重合開始から146分後に、エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製)の10%水溶液0.60kgを添加することで酸化重合を停止し、重合溶液を70℃で150分間撹拌した。その後、重合溶液全量を反応器より抜き出し、液−液分離器に導入した。その後、溶液を60分間静置し、液−液分離により有機相と水相とに分離した。
得られた有機相をメタノール6.50kgにて析出洗浄した後、ろ過して、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。得られた湿潤ポリフェニレンエーテルを150℃の温度条件で120分間乾燥処理を行い、実施例1のポリフェニレンエーテルを得た。
【0085】
実施例1の詳細及び結果を表1に示す。
【0086】
〔実施例2〕
予備重合工程で得られた有機相を0.60kg(10質量%)、重合工程に使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2のポリフェニレンエーテルを得た。実施例2の詳細及び結果を表1に示す。
【0087】
〔実施例3〕
予備重合工程で得られた有機相を1.80kg(30質量%)、重合工程に使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例3のポリフェニレンエーテルを得た。実施例3の詳細及び結果を表1に示す。
【0088】
〔実施例4〕
予備重合工程で得られた有機相を0.30kg(5質量%)、重合工程に使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例4のポリフェニレンエーテルを得た。実施例4の詳細及び結果を表1に示す。
【0089】
〔実施例5〕
予備重合工程で得られた有機相を2.10kg(35質量%)、重合工程に使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例5のポリフェニレンエーテルを得た。実施例5の詳細及び結果を表1に示す。
【0090】
〔実施例6〕
予備重合工程で得られた有機相を1.20kg(20質量%)、2,6−ジメチルフェノール1.44kg、トルエン6.46kg、及び触媒(3.4gの酸化第一銅、20.3gの47%臭化水素水溶液、8.1gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、15.2gのジ−n−ブチルアミン、54.9gのブチルジメチルアミン)101.9g、で構成される重合溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例6のポリフェニレンエーテルを得た。実施例6の詳細及び結果を表1に示す。
【0091】
〔実施例7〕
予備重合工程で得られた有機相を1.80kg(30質量%)、重合工程に使用したこと以外は、実施例6と同様の操作を行い、実施例7のポリフェニレンエーテルを得た。実施例7の詳細及び結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例8〕
予備重合工程において、2,6−ジメチルフェノール1.50kg、トルエン4.39kg、及び触媒(3.5gの酸化第一銅、21.0gの47%臭化水素水溶液、8.5gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、15.9gのジ−n−ブチルアミン、57.2gのブチルジメチルアミン)106.1g、で構成される重合溶液を用いて、予備重合工程を行い、そして、重合工程において、予備重合工程で得られた有機相を1.80kg(30質量%)、2,6−ジメチルフェノール1.50kg、トルエン4.39kg、及び触媒(3.5gの酸化第一銅、21.0gの47%臭化水素水溶液、8.5gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、15.9gのジ−n−ブチルアミン、57.2gのブチルジメチルアミン)106.1g、で構成される重合溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例8のポリフェニレンエーテルを得た。実施例8の詳細及び結果を表1に示す。
【0093】
〔実施例9〕
ポリフェニレンエーテル0.22kg(旭化成ケミカルズ製、S201A)、2,6−ジメチルフェノール0.86kg、トルエン4.84kg、及び触媒(2.0gの酸化第一銅、12.1gの47%臭化水素水溶液、4.9gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、9.1gのジ−n−ブチルアミン、32.8gのブチルジメチルアミン)60.9g、で構成される重合溶液を用いて、一回の重合工程のみを行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例9のポリフェニレンエーテルを得た。なお、実施例9では、酸化重合の開始以降、泡の発生が観測されたが、酸化重合開始から90分後に完全に消泡したものと認められた。実施例9の詳細及び結果を表1に示す。
【0094】
〔比較例1〕
2,6−ジメチルフェノール1.26kg、トルエン5.65kg、及び触媒(3.0gの酸化第一銅、17.8gの47%臭化水素水溶液、7.1gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、13.3gのジ−n−ブチルアミン、48.0gのブチルジメチルアミン)89.2g、で構成される重合溶液を用いて、一回の重合工程のみを行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1のポリフェニレンエーテルを得た。なお、比較例1では、酸化重合の開始以降、泡の発生が観測されたが、酸化重合開始から88分後に完全に消泡したものと認められた。比較例1の詳細及び結果を表1に示す。
【0095】
〔比較例2〕
2,6−ジメチルフェノール1.44kg、トルエン6.46kg、及び触媒(3.4gの酸化第一銅、20.3gの47%臭化水素水溶液、8.1gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、15.2gのジ−n−ブチルアミン、54.9gのブチルジメチルアミン)101.9g、で構成される重合溶液を用いて、一回の重合工程のみを行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、酸化重合を開始した。酸化重合開始80分経過時点で、発泡量が反応器の上限を超えそうになったため、酸化重合を中断した。比較例2のポリフェニレンエーテルは得られなかった。比較例2の詳細及び結果を表1に示す。
【0096】
〔比較例3〕
予備重合工程で得られた重合溶液のうち、4.80kgを抜き出し、予備重合工程における反応器に有機相(水相も含む)1.20kg残した。そして、この1.20kgの重合溶液を用いて、予備重合工程における反応器において、重合工程を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、酸化重合を開始した。酸化重合開始150分経過時点でも、所定の液粘度に達しなかったため、酸化重合を中断した。比較例3のポリフェニレンエーテルは得られなかった。比較例3の詳細及び結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【課題】本発明は、酸化重合前期の発泡を十分に抑制しつつ反応器の単位体積当たりの生産性を向上させることができるポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することを目的とする。
ポリフェニレンエーテルにフェノール性化合物と芳香族溶媒と触媒とを添加して調製した重合溶液に、酸素含有ガスを通気して、前記フェノール性化合物を酸化重合させる、重合工程を有する。