特許第5960918号(P5960918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960918
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】構造部材の接続装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/07 20060101AFI20160719BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20160719BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F16B5/07 E
   F16B5/06 A
   F16B7/04 301B
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-531602(P2015-531602)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公表番号】特表2015-534011(P2015-534011A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】EP2013069290
(87)【国際公開番号】WO2014041197
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】202012008847.5
(32)【優先日】2012年9月17日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】202012011684.3
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510130516
【氏名又は名称】ライセデル ユーリッヒ
【氏名又は名称原語表記】LEISEDER,Ulrich
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ライセデル ユーリッヒ
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−308979(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02273048(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B5/00−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対面する2つの接続面(14)に設けられた第1締結構造部(16)を有する2つの構造部材(10,12)を接続するための装置において、
前記構造部材(10,12)は、それぞれが180°以下の角度で円弧状に延在するとともに少なくとも一つの開放端部を有し、反対側に配置された少なくとも二対の前記第1締結構造部(16)を有し、
前記第1締結構造部(16)は、一の対の第1締結構造部の円弧の中心と、他の対の第1締結構造体の円弧の中心とが異なるように設けられ、
少なくとも2つのコネクタ(22)が設けられ、各コネクタは、前記一の対の第1締結構造部(16)に対して補完し、前記開放端部から2つの前記第1締結構造部(16)内へ回転動作により挿入して適合される第2締結構造部(24)を有する接続装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接続装置において、
前記構造部材(10,12)の前記第1締結構造部(16)は、対応する前記構造部材(10,12)の端面に向かって両端が開放する接続装置。
【請求項3】
請求項2に記載の接続装置において、
前記コネクタ(22)は、扇形に形成されているとともに、前記円弧により一部が縁取られ、他の部分は、前記コネクタが前記第1締結構造部(16)に完全に収容された場合に前記構造部材(10,12)の一般端面と面一になるように形成された端部により縁取られている接続装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の接続装置において、
前記構造部材(10,12)の前記第1締結構造部(16)及び前記コネクタ(22)の補完的な第2締結構造部(24)のそれぞれは、連続した同心円の溝(18,28)及びリブ(20,26)を含む接続装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の接続装置において、
前記構造部材(10,12)の前記第1締結構造部(16)及び前記コネクタ(22)の補完的な第2締結構造部(24)のそれぞれは、少なくとも一つのアンダーカット溝(18,28)及びこれを補完するリブ(20,26)を含む接続装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の接続装置において、
一方の構造部材(10)の前記第1締結構造部(16)を補完する前記第2締結構造部(24)と、他方の構造部材(12)の前記第1締結構造部(16)を補完する前記第2締結構造部(24)が、互いに異なる中心で配置された少なくとも一つのコネクタ(22)を有する接続装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の接続装置において、
前記2つの構造部材(10,12)の前記第1締結構造部(16)を補完する前記第2締結構造部(24)が互いに傾斜する面となるように、楔形状に形成された少なくとも一つのコネクタ(22)を有する接続装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の接続装置において、
少なくとも一つのコネクタ(22)は、回転可能に相互に締結する第2締結構造部により互いに接続される2つのディスク(22a,22b;22c,22d)を有する複数パートコネクタである接続装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の接続装置において、
前記構造部材(10,12)の反対側に配置された少なくとも一対の前記第1締結構造部(16)は、接続面(14)がコネクタ(22)の協働する一方により接続されない限り拡開して離間するように傾斜するフランジ(10a,12a)上に形成されている接続装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の接続装置において、
連続して並べられた部材(52)により形成された少なくとも一つのコネクタ(22´)を有し、前記部材(52)のそれぞれは、一方の前記構造部材の前記第1締結構造部(16)の溝(18)の断面に受容される一端部と、他方の前記構造部材(12)の前記第1締結構造部の溝に受容される他端部とを有する接続装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の接続装置において、前記構造部材(10,12)の一方の前記第1締結構造部(16)を補完する形状とされ、前記コネクタ(22)に代わり前記第1締結構造部に挿入されて適合する少なくとも一つの充填体(54)を有する接続装置。
【請求項12】
請求項11に記載の接続装置において、前記コネクタ(22)及び前記コネクタの厚さ方向に一方が他方に積層された2つの充填体(54,56)が、完全円ディスクを構成するべく互いに補完するように構成されている接続装置。
【請求項13】
請求項12に記載の接続装置において、前記構造部材(10,12)を取り囲むフレーム(58)を有し、当該フレームは、前記構造部材(10,12)に向かって開放するとともに、使用者の選択により前記コネクタ(22)又は前記コネクタを補完する前記充填体(54,56)の何れかを受容するように形成されている第1締結構造部(16´)を有する接続装置。
【請求項14】
請求項13に記載の接続装置において、前記構造部材(10,12)及び前記フレーム(58)内で回転する完全円ディスクを同時に操作するための操作機構(62)を有する接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対面する2つの接続面に締結構造部を有する2つの構造部材を接続するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラグインコネクタや、接続平面に平行方向の全ての三次元動作について2つの構造部材をぴったりと固定できる、通称ヒルトコネクタのような非螺子タイプの接続装置が知られている。しかしながら、こうした接続を確立するためには、2つの構造部材を接続面に対して互いに垂直方向に動かされなければならない。
【0003】
一方、フランジ面に垂直方向に構造部材を相対的動作させる必要がないフランジタイプのコネクタが知られているが、この種のものでは、フランジを接続するためのボルトをこれに対応するボルト孔に挿入又は捩じ込むことができる空間が必要とされる。これらのボルトは、フランジ面に対して垂直方向に動かされなければならない。
【0004】
欧州特許第2,273,048号公報(特許文献1)には、環状、円弧状の締結構造部を有する接続装置であって、構造部材の相対的回転を可能とするコネクタと協働するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第2,273,048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、接続面に対して垂直な全ての三次元動作について2つの構造部材を互いにぴったりと固定でき、こうした接続を実現するために接続面に垂直方向の如何なる動きも必要としない接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、構造部材は、それぞれが180°以下の角度で円弧状に延在するとともに少なくとも一つの開放端部を有し、反対側に配置された少なくとも二対の第1締結構造部を有し、第1締結構造部は、一の対の第1締結構造部の円弧の中心と、他の対の第1締結構造体の円弧の中心とが異なるように設けられ、少なくとも2つのコネクタが設けられ、各コネクタは、前記一の対の第1締結構造部に対して補完し、前記開放端部から前記2つの第1締結構造部内へ回転動作により挿入して適合される第2締結構造部を有する接続装置が提供される。
【0008】
有用な細部及びさらなる発明の改良事項は、本願特許請求の範囲の従属請求項に示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る接続装置を示す斜視図である。
図2図1の接続装置の一部を示す斜視図である。
図3図1の接続装置の他例を示す斜視図である。
図4図3の接続装置の一部を示す斜視図である。
図5図3の接続装置の一部を示す斜視図である。
図6図1の接続装置の使用例を示す斜視図である。
図7】本発明に係る接続装置の他の実施例を示す概要平面図である。
図8図1の接続装置の他の使用例を示す斜視図である。
図9】本発明に係る接続装置のさらに他の実施例を示す斜視図である。
図10】本発明に係る接続装置のさらに他の使用例を示す図である。
図11】本発明に係る接続装置のさらに他の使用例を示す図である。
図12】本発明に係る接続装置のさらに他の使用例を示す図である。
図13】本発明に係る接続装置のさらに他の使用例を示す図である。
図14】本発明に係る接続装置のコネクタの他の実施例を示す斜視図である。
図15】本発明に係る構造部材を締結するための接続装置のコネクタを示す図である。
図16図15の装置の原理を説明するための概略図である。
図17】締結タイプの接続のための多部材コネクタを示す図である。
図18】締結タイプの接続のための多部材コネクタを示す図である。
図19】他の実施例のコネクタを示す図である。
図20】構造部材を締結するための接続装置のさらに他の実施例を示す図である。
図21】構造部材を締結するための接続装置のさらに他の実施例を示す図である。
図22】構造部材を締結するための接続装置のさらに他の実施例を示す図である。
図23】構造部材を締結するための接続装置のさらに他の実施例を示す図である。
図24】他のタイプのコネクタを有する接続装置を示す一部破断図である。
図25】コネクタおよび装着補助具を示す図である。
図26】コネクタおよび装着補助具の他の実施例を示す図である。
図27】コネクタおよび装着補助具のさらに他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、構造部材10,12を互いに接続させるための接続装置を示す。図示された実施例において、構造部材10,12は、六角形の輪郭を有する扁平なフランジとして形成されているが、原則としてどんな任意の形でもよい。
【0011】
重要なことは、2つの構造部材10,12が、互いに対面し、少なくとも略平坦な接続面14(図2参照)を有することのみである。円弧状に形成された第1締結構造部16は、これらの接続面に形成され、本例における第1締結構造部16は、半円状の同心円の溝18及び当該溝の間に設けられたリブ20の組として構成されている。
【0012】
図示する例において、2つの構造部材10,12の第1締結構造部16は、対称的に形成されているが、これは必須の構成ではない。2つの構造部材10,12の第1締結構造部が互いに反対側に配置され、且つ円弧の中心が少なくとも概ね互いに一直線上に配列されることのみが実質的な部分である。
【0013】
コネクタ22は、各対をなす第1締結構造部16と協働し、対をなす第1締結構造部16を補完する第2締結構造部24を有する。図2に示す実施例のように、リブ26は溝18の形状を補完する献上とされ、溝28はリブ20の形状を補完する形状とされている。
【0014】
図示する実施例において、コネクタ22は半円ディスク状に形成され、図1及び図2の右側に示されるように、対応する対の第1締結構造部16に回転動作によって挿入可能とされている。図1には、観察者に対面する構造部材10,12の面側において、第1締結構造部16の溝18に完全に収容されるとともに、半円の貯系部分に相当する端面が構造部材10,12の側面と面一になるように、完全に挿入されたコネクタ22が示されている。コネクタ22を装着しない開放された第1締結構造部16を図1の左側に示す。
【0015】
円弧状の溝18,28及びリブ20,26の締結により、2つの構造部材は相対的に互いにぴったりと固定され、その結果、接続面14に平行な方向へ相対的に互いにずれることはない。少なくとも2つのコネクタ22が、対応する対の第1締結構造部に挿入されると、構造部材10,12は、相対的に互いに回転することもない。
【0016】
図示する実施例において、溝18,28はアンダーカット形状(蟻継形状)とされ、構造部材10,12は、リブ20,26を溝に締結することにより、接続面14に垂直方向(図1及び図2の垂直方向)に対しても相対的に互いにぴったりと固定される。この方向の固定が不要な場合は、アンダーカットがない締結構造としてもよい。
【0017】
図3図5に、上述した実施例とは異なる実施例を示す。本例の構造部材10,12の第1締結構造部は、一つの溝18で構成され、これと協働するコネクタ22は、2つの蟻継形状を有する単純な半リングで構成されている。
【0018】
いずれの実施例においても、第1締結構造部16は、たとえばミル(切削)加工など簡単かつ高精度で形成でき、コネクタ22の補完的な第2締結構造部24は、例えばモールド加工などにより形成することができる。その結果、精度のよい締結が実現でき、したがって相互締結構造間に僅かながた(遊び)しか生じない。さらに、それほど大きな抵抗が生じることなく相対的に互いに回転することができる。しかし、任意の方法で、相互締結構造間の一定のがたを目的によっては許容してもよく、及び/又は、リブを溝に容易に挿入させるために、面取りその他を溝及びリブの端部に実施してもよい。同様に、リブは、如何なるがたも除去するために、当該リブを溝の側面に対して偏力をかける2つの舌部として構成することにより、例えば弾性を付与することもできる。
【0019】
構造部材10,12の間の接続強度は、第1締結構造部16の数と直径とを適当に選定することにより所望の値に調節してもよい。
【0020】
このように、接続装置は、シャフトのように高負荷が印加される場合であっても、幾つかのセグメントを組み立てることにより、例えば比較的大型の機械部品を構成するために用いることができる。一例として、図6は、構造部材10,12に加えて同様の外形を有する構造部材12´を積層してなる六角形状のシャフト30を示し、この接続はそれぞれコネクタ22により構成されている。そのため、介在された構造部材12´は、頂面及び底面の両方に第1締結構造部16を有する。
【0021】
円弧状締結構造部16,24は半円形を必須とするものではなく、小さい角度を含む円弧であってもよい。図7は、パイ片(扇形)のような四角形状の角柱34から組み立てられた六角形状の角柱体32を示す概略平面図である。この場合、ここに概略的に示された第1締結構造部16は1/4円として構成され、図6と同様に、幾つかの角柱34を積層するために供される。他の接続装置として、図示が省略するが、角柱34を相互に接続して六角形状の角柱体32を構成するために用いてもよい。しかし、図6に示す半円コネクタを図7に示す1/4円の代わりに用いる場合、2つの角柱34の締結構造部において締結する各コネクタにより、同じ積層に配置される角柱を相互接続するために用いることもできる。
【0022】
図8は、図7と同様に、長手方向に延在する幾つかの角柱34から組み立てられ、円周方向に結合された六角形状の角柱体36を、本発明に係る接続装置であって、長手方向に角柱34を相互に接続するだけでなく円周方向にも角柱を相互に接続するコネクタ22とともに示す。
【0023】
図9に示すように、本発明により円形の構造部材をスタック状に相互に接続することもできる。第1締結構造部16及びコネクタ22は、円弧の2つの端部を相互に接続する側部において、半円に形成されず、構造部材の円周に沿った形状とされている。その結果、コネクタ22を完全に挿入すると構造部材10の周囲が平坦になる。
【0024】
図10(A)は、円筒状シャフト38と多角形シャフト40とのほぞ継手を示す図であり、この接続は、シャフト40の外面とシャフト38のほぞ内に形成された第1締結構造部16により行われる。
【0025】
図10(B)は、同じくほぞ継手を完全に締結した状態を示す図である。
【0026】
図11(A)は、3つの直方体42を箱状ケーシング44に横一列に固定するための本発明に係る接続装置の使用例を示す平面図である。第1締結構造部16及びコネクタ22を有する接続装置は、ここでは、直方体42をケーシング44の内壁面に固定するために使用される一方、直方体42を互いに対面する面に相互に接続する機能も備える。このように、直方体42は極めて安全にケーシング44内に固定される。図11(B)は、2つの直方体42を収容するケーシング44を示す斜視図である。
【0027】
図12及び図13は、本発明に係る接続装置の簡易使用例であって、2つのコネクタ22を有し、木製ポスト48を例えば金属製ポストアンカ50に接続するものである。
【0028】
上述した実施例においては、一片のコネクタ22が各一対の第1締結構造部16と協働するが、図14に示すように、複数片のコネクタ22が用いられた接続装置も考えられる。このコネクタは、2つの半円ディスク22a,22bから構成され、半円ディスクは、両面に設けられたリブ26及び溝28をそれぞれ有し、コネクタ22として同様の方法により第1締結構造部16に挿入される。図14に示す実施例では、2つのディスク22a,22bは同一形状とされ、同じディスクの反対側の第1締結構造部は、他方に対して対称ではなく、補完的構造とされている。そのため、必要に応じて、同様の方法で他のディスクの上にディスクを積層して相互に締結した3つ以上のディスクを有するコネクタを構成することもできる。図14に示すコネクタ22は、他方に対して対称ではなく補完的な第1締結構造部16を有する構造部材とともに使用されることが理解できる。
【0029】
図15は、単一のディスクで構成されたコネクタ22を示す図である。頂面及び底面に設けられた第2締結構造部24は、僅かに離心して配置されている。頂面に設けられた第2締結構造部は、軸Aを中心とする溝及びリブにより構成され、これに対して底面に設けられた第2締結構造部の溝及びリブは、僅かにオフセットされた軸Bを中心とする。この離心は、ベクトルEによる横方向を特徴とする。図示する実施例では、ベクトルEは、半円ディスクの直線縁部に平行である。
【0030】
図15に示すタイプのコネクタによれば、第2締結構造部のがたつきを抑制するために、コネクタと当該コネクタにより接続された構造部材とを締結することができる。
【0031】
本発明の原理を図16に示す。図16(A)は、僅かにオフセットした位置で一方を他方に積層した2つの長方形の構造部材10,12を示す。これにより、下側の構造部材12の殆どは隠れている。簡便のため、単一の半円コネクタ22が、2つの構造部材それぞれのために示されている。半円コネクタ22は、挿入直前の状態、すなわち直線縁部が互いに平坦とされた構造部材10,12の端面を締結する状態として示されている。コネクタの頂面の第2締結構造部の中心は実線で示され、これに対してコネクタの底面の第2締結構造部の中心は点線で示されている。2つの構造部材10,12のオフセットは、コネクタ22の第2締結構造部の離心に相当する。
【0032】
さて、構造部材12を固定し、点線で示す底面の第1締結構造部16の中心廻りにコネクタ22を反時計回りに回転させることにより、当該コネクタ22を第1締結構造部16に挿入する。図16(B)は、135°回転させた後の状態を示す図である。2つの構造部材10,12は、それらの接続面に沿って相対的にずれ、このずれは、その半径が偏心Eに相当する円弧上にあることが見て取れる。180°回転させると、すなわちコネクタ22が構造部材10,12の端面と面一になると、構造部材10は、構造部材12に対して反対方向にオフセットされることになる(比較として図16(A))。
【0033】
2以上のコネクタによって構造部材が接続された場合に、構造部材とコネクタとを締結するために上述した効果が役に立つ。2つのコネクタを設けると、偏心Eは同じ大きさで方向が逆となる。偏心量は、図15及び図16においては誇張して示すが、実際には締結構造部のリブ及び溝のがた量に概ね近い値に設定することが望ましい。これにより、偏心しているにも拘らずコネクタを構造部材の第1締結構造部16に挿入することができる。そして、一方のコネクタは一の方向にプレート(構造部材)を移動させる傾向を有し、これに対して他方のコネクタは逆方向にプレート(構造部材)を移動させる傾向を有する。しかしながら、いずれの構造部材も剛体であるため、このようにして構造部材が締結される。
【0034】
偏心コネクタの挿入を容易にするために、構造部材10,12の第1締結構造部は、2つの構造部材10,12が互いに整列した場合に第1締結構造部が互いに僅かに偏心するように構成してもよい。単一の(偏心)コネクタが挿入された場合に生じる構造部材の移動は、この偏心を補償又は過補償し、その結果、2以上のコネクタを使用した場合に、構造部材は互いにさらに強固に締結する。
【0035】
また偏心Eは、第1締結構造部16が設けられた構造部材の端面と直角または他の角度で構成してもよい。例えば、図1に示す実施例において、構造部材10,12の締結効果は、構造部材の6つの面に挿入されるコネクタ22の偏心によって、内側又は外側に選択的に向かう、底面の構造部材12に対する頂面の構造部材10の移動が生じるという構成によって達成される。他方、全ての6つのコネクタの偏心Eが、図1に示す接続装置の同じ円周方向に向く場合、構造部材10,12の僅かな相対的回転が実現することになる。
【0036】
図17は、複偏心として形成され、図14に示すコネクタに類似する2つの半円ディスク22a,22bから構成された他部材コネクタ22を示す図である。ただしこの場合、2つのディスクの頂面及び底面に設けられた第2締結構造部は偏心され、2つのディスク22a,22bの各偏心は等しい寸法で逆方向とされている。その結果、図17に示す位置において、コネクタ22が一部非偏心コネクタとして作用するように、その偏心は互いに打ち消し合う。ただし、2つのディスク22a,22bが互いに回転すると、構造部材を相対的に移動させる傾向を有する偏心を得る結果となり、そのため、少なくとも一つの第2コネクタ(偏心又は非偏心)とともに締結効果が実現される。
【0037】
図18は、図17に示すコネクタの2つのディスク22a,22bを互いに90°回転させた状態を示す図である。
【0038】
他例として、ディスク22a,22bは、半円形状ではなく、180°以下の円弧が広がる鈍角の扇形に形成することもできる。これにより、ディスクが相対的に僅かに回転したとしても、コネクタは、構造部材10,12の輪郭内に完全に収容される。
【0039】
他方、ディスク22a,22bが半円ではなく完全円形とされたコネクタとすることもできる。この場合、構造部材10,12に接続するために、ディスク22a,22bの外側の面の溝28と締結され、これら(完全円の)溝内を回転可能なさらなる半円(又は扇形)のコネクタが必要とされ、その結果、これらを回転させることにより構造部材10,12の第1締結構造部16に挿入する。この解決手段は、第1締結構造部16における半円コネクタの位置関係を変えることなく、ディスク22a,22bを互いに相対的に回転させることにより、偏心の範囲が調節できるという利点がある。そして、相対的移動と構造部材の締結は、再度第1締結構造部16における半円コネクタの位置関係を変えることなく、半円コネクタに対するディスク22a,22bの結合回転により得ることができる。ただし、完全円形ディスク22a,22bは、締結が完了した後であっても、構造部材10,12の外径から突出することになる。
【0040】
溝28がアンダーカット状でない場合、半円コネクタは、その後の工程でディスク22a,22b内に挿入してもよい。あるいは、完全円形ディスク22a,22bは、当初は互いに分割され、2つの半片が完全円を構成するために互いに結合される前に半円コネクタが挿入される2つの半片から組み立ててもよい。
【0041】
図19は、図2に示すものと同様に、偏心コネクタ(この場合は一つの片)が単一の半リングとして形成されてもよい可能性を示す図である。
【0042】
締結タイプの構造部材の接続装置を得るための多の可能性として、偏心コネクタではなく楔状(V字状)コネクタを用いることが挙げられる。楔状コネクタ22の誇張した実施例を図20に示す。本例において、コネクタの厚さの変更は、構造部材10,12の第1締結構造部16における第2締結構造部24のがたの大きさに応じて設定すればよく、または構造部材10,12の第1締結構造部16の面は、コネクタが挿入可能なように、接続面14に対して僅かに傾斜している。この場合、コネクタ22をさらに挿入(回転)させると、楔形状は構造部材10,12の動作に対して傾倒することとなる。締結効果は、構造部材を異なる方向に傾斜させる傾向を有する少なくとも2つのコネクタを使用することにより奏される。この変形例として、図21は、完全円形に形成され、互いに相互連結され、半円ディスク22e,22fとして形成された他のコネクタと回転可能に締結された2つの楔状ディスク22c,22dを有する複合コネクタの実施例を示す。これらの外面において、ディスク22e,22fは、構造部材10,12の第1締結構造部16に締結される締結構造部を有する。
【0043】
図22は、楔状ディスク22c,22dを、これらの楔形状がちょうど相殺されるまで回転させた状態の当該コネクタを示す。これにより、半円ディスク22e,22fの軸が互いに整列することになる。この場合、2つのディスク22c,22dは、ディスク22e,22fの軸が倒れることなく、またこれに接続される構造部材10,12が互いに傾くことなく、互いに回転することができる。ただし、ディスク22c,22dが互いに回転すると、ディスク22e,22fの軸は、互いに(小さな)角度を形成し、構造部材10,12はそれに応じて傾斜又は締結される。
【0044】
偏心コネクタとは対照的に、2以上の楔状コネクタは、全てのコネクタが、同じ角度及び同じ方向に互いに相対的に構造部材を傾斜させる傾向を有していたとしても、構造部材に締結効果を付与することもできる。これは、構造部材の相対的傾斜により、接続面14間の距離が変化するが、他方においてこの距離は、個々のコネクタの形状により定まるものだからである。しかしながら、ディスク22c,22dの相対的回転は、軸の傾きをもたらすだけでなく複合コネクタの実質的厚さの変化ももたらす。複数のコネクタを使用した場合に、傾斜動作と距離の変化が互いに一致する配列構成を使用することもできる。その結果、構造部材は、締結されるよりむしろ、たとえばできる限りのずれを修正するために、実際に相対的に互いに傾斜する。
【0045】
2つの構造部材10,12間の締結タイプのコネクタの他例を図23に示す。この例では、構造部材10,12は、互いに対面する端部にそれぞれフランジ10a,12aを有する中空形状とされている。互いに対面するフランジ面は、図示しないコネクタのための第1締結構造部16が形成された接続面14を構成し、当該第1締結構造部16(概略のみを図示)は、ここでは必要に応じてアンダーカットが形成されている。図23の上側に、負荷がかからない状態のフランジ10a,12aを示す。この状態では、フランジは、接続面14がわずかに押し広げられた位置をとる。これに対し、図23の下側に、接続面にある力が作用して互いに押し付けられた状態のフランジを示す。この状態では、コネクタは挿入され、アンダーカット締結構造により、互いに突き当たる状態でフランジが維持される。フランジの内側端部は、図23の上側に示す位置にスプリングバックする傾向を有するので、コネクタは、テンションがかかった状態に保持され、フランジの外側端部、延いては構造部材10,12は、互いにしっかりと押圧される。
【0046】
図24は、半円ディスクとされたコネクタ22を、複数のダブルコーンローラ52により構成され、各ダブルコーンローラは、一方が構造部材10の第1締結構造部のアンダーカット溝18に適合する円錐状に拡開する端部を有し、他方が他の構造部材12の第1締結構造部のアンダーカット溝に適合する円錐状に拡開する端部を有するコネクタ22´で置き換えた点で、図1に示す実施例と相違する実施例を示す図である。第1締結構造部16に当該コネクタ22´を「挿入する」ために、ローラ52は、溝の開放端部から当該溝へ単純に押し込まれ、これにより各ローラは、先に挿入されたローラを前進させる。
【0047】
勿論、対応するローラ52は第1締結構造部16の他の溝にも挿入され、このタイプのコネクタは、構造部材10,12の全ての第1締結構造部に使用してもよい。ローラ52は、極めて効率的に組み立てられ、コネクタを異なる形状及び寸法で形成することができるという利点がある。ローラを個々に溝内へ押し込むことに代えて、ローラに糸を通し、又はローラボールをボールベアリングに入れるようにローラをケージに入れることもできる。
【0048】
上述した実施例において、第1締結構造部の溝18は、コネクタを挿入していないときは開放されたままである。もし見栄えの点で好ましくない場合は、図25に示すように、半円ディスク状コネクタ22と2つの充填体54,56との組み合わせを使用してもよい。充填体54,56は、半円形状に形成されコネクタ22として同じ締結構造部を有するが、コネクタ22の厚さの半分とされ、締結構造部の反対側に平坦な半円面を有する。図25に示す状態において、充填体はこの平坦面の他方に対して押し込まれ、コネクタ22を完全円に補完する。
【0049】
充填体54,56は、コネクタ22に代えて構造部材10,12の第1締結構造部16内に挿入されてもよい。これにより、第1締結構造部は満たされるが、構造部材が互いに実際結合することはない。そして、コネクタ22による接続を行うのが望ましい場合、コネクタ22を通常の方法で第1締結構造部に挿入し、これにより充填体54,56は第1締結構造部の外に押し出される。
【0050】
逆に、充填体54,56を再度押し込むことにより、コネクタ22を第1締結構造部から除去することができる。
【0051】
コネクタ及び/又は充填体54,56の第1締結構造部16への挿入を容易にするために、コネクタ22及び充填体54,56は、その端部に相互締結するアライメントピン及び孔が設けられてもよい。付加的に、コネクタ22及び充填体54,56は、その外周面に波形を形成してもよく、これにより完全円を互いに形成する補完部が、構造部材10,12の端面を超えて突出する完全円の外周面を親指で擦ることにより第1締結構造部内において容易に回転する。このようにして、充填体54,56は、装着補助具として使用される。
【0052】
本案のさらに他の改良案を図26及び図27に示す。
【0053】
図26(A)は、互いに接続され又は既に接続された2つの構造部材10,12(構造部材10のみを示す)を取り囲む環状のフレーム58を示す斜視図である。フレーム58は、一方を他方に重ねた2つの扁平ディスク58a,58bからなる。下側のディスク58bは別に図26(B)に示す。このディスクは、(その頂面に)構造部材10,12の第1締結構造部16に相当する第1締結構造部16´を有することが理解される。構造部材10,12の相当する第1締結構造部16とともに、各第1締結構造部16´は、構造部材10,12の外面及びこれに対面するフレーム58の内面で半分に分割された同心円の完全円としての溝及びリブの系を形成する。図25に示すコネクタ22及び充填体54,56の配置は、この構造に挿入される。例えば、図26(B)に2つの第1締結構造部を示すように、フレーム58が構造部材10,12から分離されている間は、充填体56は、第1締結構造部16´に挿入されていてもよい。
【0054】
さて、構造部材10,12はコネクタ22により互いに接続されている。この接続を分解するとき、フレーム58及びこれに挿入された充填体54,56は、構造部材10,12に押しつけられてもよい。これにより、充填体54,56は、それぞれコネクタ22を完全円に補完する。図26(A)及び図27に示すように、このようにして形成された完全年のディスクの外周面端部は、フレーム58の外周面から僅かに突出する。このため、このような突出端部60は、同時に完全年ディスクのハンドル(把持部)として供される。全てのディスクが180°回転すると、充填体54,56は、構造部材10,12の第1締結構造部16に受容される。これにより、これら構造部材は互いに分離され、逆にコネクタ22はディスク58a,58bの第1締結構造部16´に受容され、これらのディスクを相互接続する。好ましくは、フレーム58は、一方の上に他方を緩く重ねた構造部材10,12から無傷で引っ込められてもよい。上述した手順で反転させることにより、構造部材10,12は再び容易に接続される。
【0055】
充填体とコネクタとを同時に操作するために、適切な操作機構を設けることができる。例えば、コネクタ及び充填体により形成された完全ディスクの外周端部は、フレーム58の外周を取り囲む鋸歯状のベルト62(図27)に噛み合う歯車として構成してもよい。付加的には、こうした歯車は、フレーム58を取り囲むリングギヤと噛み合ってもよい。同様に、構造部材10,12の内部に太陽歯車を設けることもでき、太陽歯車は、構造部材10,12の中心を通る軸の廻りに回転するとともに、遊星歯車のように鋸歯状の端部60と噛み合う。
【0056】
このような操作機構のいずれも、構造部材10,12が素早く簡単に安全に互いに接続及び解除されるファストロック継手を提供する。
図1
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図3
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