(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
治療有効量の抗コネキシン43薬と、治療有効量の創傷治癒の促進または改善に有効なタンパク質またはペプチドとを含む、被験体における慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷の創傷治癒を促進または改善するための組成物であって、ここで、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、上皮形成の膠着状態または減少あるいは潰瘍形成によって特徴付けられ、ここで、前記抗コネキシン43薬が配列番号1〜3から選択される配列を含むアンチセンスポリヌクレオチドであり、ただし、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、火傷または火傷の潰瘍を除く、組成物。
前記タンパク質またはペプチドが、創傷治癒の促進または改善に有効な成長因子および創傷治癒の促進または改善に有効なサイトカインからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
前記成長因子が、血小板由来成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、結合組織成長因子、血管内皮成長因子、インスリン様成長因子、またはトランスフォーミング成長因子β3からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
前記アンチセンスポリヌクレオチドが、生理学的条件下で20℃を超える融点を有する二重鎖を形成するのに十分にコネキシン43mRNAと相補的である、請求項1に記載の組成物。
第1の創傷治癒組成物および第2の創傷治癒組成物を含む、慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷の治癒の促進または改善のための組み合わせ物であって、前記第1の創傷治癒組成物が治療有効量の抗コネキシン43薬を含み、前記第2の創傷治癒組成物が治療有効量の創傷治癒の促進または改善に有効なタンパク質またはペプチドを含み、前記第1の創傷治癒組成物および第2の創傷治癒組成物が、治癒が遅い難治性創傷を有する被験体に連続的に投与されるものであることを特徴とする、組み合わせ物であって、ここで、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、上皮形成の膠着状態または減少あるいは潰瘍形成によって特徴付けられ、ここで、前記抗コネキシン43薬が配列番号1〜3から選択される配列を含むアンチセンスポリヌクレオチドであり、ただし、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、火傷または火傷の潰瘍を除く、組み合わせ物。
前記第1および第2の創傷治癒組成物が、互いに1時間以内、互いに1日以内、または互いに1週間以内に投与されるものであることを特徴とする、請求項18に記載の組み合わせ物。
前記創傷治癒の促進または改善に有効なタンパク質またはペプチドが、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、結合組織成長因子、IL−7、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター、インスリン様成長因子、およびインスリン様成長因子結合タンパク質からなる群から選択される、請求項18に記載の組み合わせ物。
前記アンチセンスポリヌクレオチドが、生理学的条件下で20℃を超える融点を有する二重鎖を形成するのに十分にコネキシン43mRNAと相補的である、請求項33に記載の薬学的組成物。
治療有効量の抗コネキシン43薬および創傷治癒の促進または改善に有効なタンパク質またはペプチドを含む、慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷の治癒の促進または改善で用いるための薬学的組成物であって、ここで、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、上皮形成の膠着状態または減少あるいは潰瘍形成によって特徴付けられ、ここで、前記抗コネキシン43薬が配列番号1〜3から選択される配列を含むアンチセンスポリヌクレオチドであり、ただし、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、火傷または火傷の潰瘍を除く、薬学的組成物。
前記ゲルがポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーベースのゲルまたはカルボキシメチルセルロースベースのゲルである、請求項46に記載の薬学的組成物。
一定量の第1の創傷治癒組成物および第2の創傷治癒組成物を合わせる工程を含む、慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷の治療薬の調製方法であって、前記第1の創傷治癒組成物が有効量の抗コネキシン43薬を含み、前記第2の創傷治癒組成物が有効量の被験体の創傷治癒を促進するのに有効なタンパク質またはペプチドを含む、方法であって、ここで、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、上皮形成の膠着状態または減少あるいは潰瘍形成によって特徴付けられ、ここで、前記抗コネキシン43薬が配列番号1〜3から選択される配列を含むアンチセンスポリヌクレオチドであり、ただし、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、火傷または火傷の潰瘍を除く、方法。
抗コネキシン43薬、および、治癒が遅い難治性創傷または慢性創傷を有する被験体への投与によって創傷治癒を促進または改善するのに有効なタンパク質またはペプチドを含む、慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷のための創傷包帯であって、ここで、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、上皮形成の膠着状態または減少あるいは潰瘍形成によって特徴付けられ、ここで、前記抗コネキシン43薬が配列番号1〜3から選択される配列を含むアンチセンスポリヌクレオチドであり、ただし、前記慢性創傷、治癒が遅い創傷、または難治性創傷が、火傷または火傷の潰瘍を除く、創傷包帯。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
定義
本明細書中で使用される場合、「障害」は、創傷治癒を促進し、そして/または腫脹、炎症、および/または瘢痕形成を減少させる薬剤から恩恵を受ける任意の障害、疾患、または容態である。例えば、手術または外傷に起因する創傷、神経障害、虚血、微小血管の病変、骨領域(尾骨(仙骨)、寛骨部(大転子)、臀部(坐骨)、または踵)の圧力、再灌流障害、ならびに弁逆流性疾患および容態に関連する創傷関連異常が含まれる。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「被験体」は、任意の哺乳動物(ヒト、家畜および飼養動物、動物園の動物、競技用動物、または愛玩動物(イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなど)が含まれる)をいう。本明細書中で好ましい哺乳動物はヒト(成人、児童、および高齢者)である。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「防止」は、全部または一部の防止、改善、または調節を意味する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、本発明の化合物または組成物に関する「治療有効量」は、所望の生物学的結果、薬学的結果、または治療結果を誘導するのに十分な量をいう。その結果は、疾患、障害、もしくは容態の徴候、症状、もしくは原因の緩和または生体系の任意の他の所望の変化であり得る。本発明では、結果は、全体または部分的な創傷治癒の促進ならびに腫脹、炎症、および/または瘢痕形成の減少を含むであろう。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「治療」は、治療上の処置および予防的または防止的手段の両方をいう。治療を必要とする者には、創傷または他の関連障害を既に有する者および創傷または関連障害を有する傾向のある者、障害が診断された者、または障害を防止すべき者が含まれる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「抗コネキシン薬」は、コネキシン、コネキシンヘミチャネル(コネクソン)、またはギャップ結合の活性、発現、または形成に影響を及ぼすか調整する化合物である。抗コネキシン薬には、アンチセンス化合物(例えば、アンチセンスポリヌクレオチド)、RNAiおよびsiRNA化合物、抗体およびその結合フラグメント、ならびにペプチドおよびポリペプチド(「ペプチド模倣物」およびペプチドアナログが含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい抗コネキシン薬は抗コネキシン43薬である。例示的抗コネキシン薬を、本明細書中でさらに考察する。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「治療」は、治療上の処置および予防的または防止的手段の両方をいう。治療を必要とする者には、障害を既に有する者および障害を有する傾向があるか障害が診断された者、または障害を防止すべき者が含まれる。
【0048】
用語「ペプチド模倣物」および「模倣物」には、模倣するタンパク質領域と同一の構造的および機能的特徴を実質的に有し得る天然に存在する化合物および合成化合物が含まれる。コネキシンの場合、これらは、模倣物であり得る(例えば、コネクソン−コネクソンドッキングおよび細胞−細胞チャネル形成に関与する対立コネキシンの細胞外ループ)。
【0049】
「ペプチドアナログ」は、テンプレートペプチドに類似する性質を有する化合物をいい、非ペプチド薬であり得る。「ペプチド模倣物」(「模倣ペプチド」としても公知)(ペプチドベースの化合物が含まれる)には、ペプチドアナログなどの非ペプチドベースの化合物も含まれる。治療的に有用なペプチドに類似する構造のペプチド模倣物を使用して、等価または増強された治療効果または予防効果を得ることができる。一般に、ペプチド模倣物は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的な機能または活性を有するポリペプチド)と構造的に同一または類似するが、例えば、−CH
2NH−、−CH
2S−、−CH
2−CH
2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH
2−、−CH(OH)CH
2−、および−CH
2SO−からなる群から選択される結合と任意選択的に置換される1つまたは複数のペプチド結合も有することができる。模倣物は、天然アミノ酸またはアミノ酸の非天然アナログのいずれかから完全に構成されるか、部分的に天然ペプチドアミノ酸および部分的にアミノ酸の非天然アナログのキメラ分子である。模倣物は、かかる置換が実質的に模倣物の活性を変化させない限り、任意の量の天然のアミノ酸保存的置換も含むことができる。例えば、模倣組成物は、コネキシンタンパク質またはコネクソンの生物学的作用または活性を下方制御することができる場合(例えば、コネクソンがドッキングしてギャップ結合媒介性細胞−細胞伝達の形成を防止することまたはコネクソン開口による細胞質の細胞外環境への曝露の防止など)、抗コネキシン薬として有用であり得る。ペプチド模倣物、模倣ペプチド、およびコネキシン調整ペプチドは、本明細書中に記載のかかるペプチド模倣物、模倣ペプチド、およびコネキシン調整ペプチド、ならびに当該分野で公知であり得るもの(現在公知であるかその後に開発されるかは無関係)を含む。
【0050】
用語、コネキシン活性の「モジュレーター」および「調整」は、その種々の形態で本明細書中で使用される場合、コネキシンまたはコネキシンヘミチャネルの発現、作用、または活性の全部または一部の阻害をいい、抗コネキシン薬として機能することができる。
【0051】
一般に、用語「タンパク質」は、一方のアミノ酸(またはアミノ酸残基)のα炭素に結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が隣接アミノ酸のα炭素に結合したアミノ基のアミノ窒素原子に共有結合するようになった場合に生じる、ペプチド結合を介して連結した2つ以上の各アミノ酸(天然かどうかは無関係)の任意のポリマーをいう。これらのペプチド結合およびペプチド結合を含む原子(すなわち、α炭素原子、カルボキシル炭素原子(およびその置換酸素原子)、およびアミノ窒素原子(およびその置換水素原子))は、タンパク質の「ポリペプチド骨格」を形成する。さらに、本明細書中で使用される場合、用語「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」および「ペプチド」(時折、本明細書中で交換可能に使用することができる)が含まれると理解される。同様に、タンパク質のフラグメント、アナログ、誘導体、およびバリアントを、本明細書中で「タンパク質」ということができ、他で示さない限り、「タンパク質」と見なすものとする。用語、タンパク質の「フラグメント」は、タンパク質の全アミノ酸残基よりも少ないアミノ酸残基を含むポリペプチドをいう。タンパク質の「ドメイン」はフラグメントでもあり、活性または機能の付与にしばしば必要なタンパク質のアミノ酸残基を含む。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「同時に」を、1つまたは複数の本発明の薬剤を一斉に投与することを意味するために使用するのに対して、用語「組み合わせ」を、同時または物理的組み合わせでない場合に、両者が治療的に作用するように利用可能な時間枠内で「連続的に」投与されることを意味するために使用する。したがって、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬の両方が有効量で共に存在する場合、「連続的」投与により、一方の薬剤を他方の数分以内(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30分)またはおよそ数時間以内、数日以内、数週間以内、数ヵ月以内に投与することができる。成分の投与間の時間遅延は、成分の正確な性質、相互作用、および各半減期に応じて変化するであろう。
【0053】
「創傷」は、任意の組織の損傷(例えば、急性、亜急性、遅発性、または治癒困難な創傷、および慢性創傷が含まれる)を意味する。創傷の例には、開放性創傷および閉鎖性創傷が含まれ得る。創傷には、例えば、火傷、切開、切除、破裂、擦過傷、穿刺または貫通創、手術創、挫傷、血腫、圧挫傷、および潰瘍が含まれる。
【0054】
本明細書中で使用される場合、遅発性または治癒困難な創傷には、例えば、少なくとも一部が以下によって特徴づけられる創傷が含まれ得る:1)長期炎症期、2)細胞外基質(ECM)形成の遅延、および3)上皮形成の膠着状態または減少。
【0055】
本明細書中で使用される場合、慢性創傷は、例えば、少なくとも一部が以下によって特徴づけられる創傷をいうことができる:1)創傷炎症の慢性自己永続性状態、2)不完全または欠陥のある創傷ECM、3)不十分に応答する(老年)創傷細胞(具体的には、ECM産生が制限された線維芽細胞)、および4)必要なECM組織化の欠如および移動のための足場の欠如に一部起因する再上皮形成の不全。慢性創傷には、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、圧迫潰瘍、血管炎性潰瘍(vasculitic ulcer)、および糖尿病性潰瘍が含まれる。
【0056】
用語「包帯」は、創傷の局所適用のための包帯をいい、全身投与に適切な組成物を除外する。例えば、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の創傷治癒に有用な薬剤、治療薬、および/またはギャップ結合修飾薬を、織布または不織布材料などの創傷接触材料の固体シート中または固体シート上に分散することができるか、ポリウレタンフォームなどのフォーム層中、ヒドロゲル(ポリウレタンヒドロゲル、ポリアクリラートヒドロゲル、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、アルギナート、および/またはヒアルロン酸ヒドロゲルなど)中(例えば、ゲルまたは軟膏中)に分散することができる。一定の実施形態では、抗コネキシン薬および/または1つまたは複数の創傷治癒に有用な薬剤、治療薬、および/またはギャップ結合修飾薬を、有効成分を創傷に徐放する生分解性シート(例えば、凍結乾燥コラーゲン、凍結乾燥コラーゲン/アルギナート混合物(Johnson & Johnson Medical Limitedの登録商標FIBRACOLを利用可能)または凍結乾燥コラーゲン/酸化再生セルロース(Johnson & Johnson Medical Limitedの登録商標PROMOGRANを利用可能)のシート)中またはシート上に分散させる。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「マトリックス」には、例えば、コラーゲン、無細胞性マトリックス、架橋生体足場分子、組織ベースのバイオ工学処理構造フレームワーク、生体光学的に製造された(biomanufactured)生体人工挿入物、および他の移植構造(例えば、創傷治癒の促進で有用な細胞の浸潤および増殖に適切な血管移植片など)などのマトリックスが含まれる。さらなる適切なバイオマトリックス材料には、抗原性および免疫原性を軽減するための化学修飾されたコラーゲン組織が含まれ得る。他の適切な例には、創傷包帯のためのコラーゲンシート、無抗原または抗原を減少させた無細胞性マトリックス(Wilsonら,Trans Am Soc Artif Intern 1990;36:340−343)、または異種移植片材料に対する抗原応答が減少するように操作された他のバイオマトリックスが含まれる。創傷治癒の促進で有用な他のマトリックスには、例えば、不溶性コラーゲンおよびエラスチンを含む加工ウシ心膜タンパク質(Courtmanら,J Biomed Mater Res 1994;28:655−666)および組織再生を促進するために宿主細胞移動に天然の微小環境を提供するのに有用であり得る他の無細胞性組織(Maloneら,J Vasc Surg 1984;1:181−91)が含まれ得る。一定の実施形態では、マトリックス材料に、創傷治癒に有用な薬剤(成長因子または部位特異的放出のための他の創傷治癒促進薬、治療薬、および/またはギャップ結合修飾薬など)を補足することができる。
創傷および創傷の分類
前に提供した定義に加えて、用語「創傷」には、例えば、異なる方法で開始され、種々の特徴を有する皮膚および皮下組織の損傷(例えば、長期の床上安静由来の圧迫性壊死および外傷に誘導された創傷)も含まれ得る。創傷を、創傷の深さに応じて、以下の4つの悪性度のうちの1つに分類することができる:i)悪性度I:上皮に限られた創傷;ii)悪性度II:真皮まで拡大した創傷;iii)悪性度III:皮下組織まで拡大した創傷、;およびiv)悪性度IV(または全層(full−thickness)創傷):骨が露呈した創傷(例えば、大転子または仙骨などの骨圧点)。用語「部分層創傷(partial thickness wound)」は、悪性度I〜IIIを含む創傷をいい、部分層創傷の例には、火傷創、圧迫性壊死、静脈鬱血性潰瘍(venous stasis ulcer)、および糖尿病性潰瘍が含まれる。「深い創傷(deep wound)」は、悪性度IIIおよび悪性度IVの創傷の両方が含まれることを意味する。本発明の組成物および方法は、全創傷型(深い創傷および慢性創傷が含まれる)の治療を意図する。用語「慢性創傷」は、治癒しなかった創傷をいう。好ましくは、慢性創傷は、静脈性潰瘍、圧迫性壊死、血管炎性潰瘍、糖尿病性潰瘍、および褥瘡性潰瘍からなる群から選択される。慢性皮膚創傷には、例えば、圧迫潰瘍、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、血管炎性潰瘍、動脈性潰瘍、および混合潰瘍(mixed ulcer)が含まれる。慢性創傷は、完全または部分的な動脈閉塞に起因する潰瘍形成を含む動脈性潰瘍であり得る。慢性創傷は、静脈弁の機能不全に起因する潰瘍形成を含む静脈鬱血性潰瘍および関連脈管疾患であり得る。慢性創傷は、外傷誘導性潰瘍、糖尿病性潰瘍、または血管炎性潰瘍であり得る。
【0058】
圧迫潰瘍:圧迫潰瘍を、AHCPR(Agency for Health Care Policy and Research、U.S.Department of Health and Human Services)のガイドラインに基づいて、以下の4病期に分類することができる:病期1:病期I圧迫潰瘍は、インタクトな皮膚の観察可能な圧力関連変化であり、身体の隣接領域または反対側領域と比較したその指標には、1つまたは複数の以下の変化が含まれ得る:皮膚の温度(温かさまたは冷たさ)、組織一貫性(安定または浸潤性の感触(feel))、および/または感覚(痛み、痒み)。潰瘍は、軽度に色素沈着した皮膚中の明確な持続性の発赤領域として出現するのに対して、より暗色の肌の色では、潰瘍は持続性の赤色、青色、または紫色の潰瘍が出現し得る。病期1潰瘍形成には、インタクトな皮膚のノンブランカブルな(nonblanchable)紅斑および皮膚潰瘍形成の全長病変が含まれ得る。より暗色の皮膚を有する個体では、皮膚の退色、温かさ、浮腫、硬化、または硬度も病期1潰瘍形成の指標であり得る。病期2:病期2潰瘍形成を、表皮、真皮、またはその両方を含む部分的の厚い皮膚喪失によって特徴づけることができる。潰瘍は、表面的であり、擦過傷、水疱、または浅いクレーターとして臨床的に存在する。病期3:病期3潰瘍形成は、基礎をなす筋膜まで深化し得るが、貫通しない皮下組織の損傷または壊死を含む全層皮膚喪失によって特徴づけることができる。潰瘍は、隣接組織を穿掘するか穿掘しない深いクレーターとして臨床的に存在する。病期4:病期4潰瘍形成を、筋肉、骨、または支持構造(例えば、腱、関節包)の広範囲の破壊、組織壊死、または損傷を伴う全層皮膚喪失によって特徴づけることができる。一定の実施形態では、慢性創傷が、1つまたは複数の圧迫潰瘍形成のAHCPR病期(病期1、病期2、病期3、および/または病期4)によって特徴づけられる慢性創傷治療のための組成物および方法を提供する。
【0059】
褥瘡性潰瘍:褥瘡性潰瘍は、虚血を生じる骨ばっている隆起に対する長期および単調な圧力の結果として生じ得る。本創傷は、重量を逃がすために自ら体位を変えることができない患者(麻痺患者、無意識の患者、または重篤に衰弱した患者など)で生じる傾向がある。米国保健社会福祉省によって定義されるように、主な防止手段には、高リスク患者の同定;頻繁な評価;および予防手段(定期的再配置、適切な圧力軽減寝具類、防湿層、および適切な栄養状態など)が含まれる。治療法の選択肢には、例えば、圧力の軽減、外科的および酵素的デブリードマン、湿式の創傷ケア(moist wound care)、および細菌負荷の抑制が含まれ得る。一定の実施形態では、慢性創傷が、虚血を生じる骨ばっている隆起に対する長期的で単調な圧力に起因する褥瘡性潰瘍または潰瘍形成によって特徴づけられる慢性創傷治療のための組成物および方法を提供する。
【0060】
動脈性潰瘍:動脈性潰瘍を、組織の壊死および/または潰瘍形成を生じ得る完全または部分的な動脈閉塞によって特徴づけることができる。動脈性潰瘍の徴候には、例えば、体肢の無脈状態;有痛性潰瘍形成;通常は十分に局在性の小さな点状潰瘍;低温または寒性の(cool or cold)皮膚;毛細管還流時間の遅延(delayed capillary return time)(足指の末端の短期間の押し込みおよび開放により、通常の色が約3秒以内に足指に戻るはずである);萎縮性皮膚(atrophic appearing skin)(例えば、光沢、薄い、乾性);ならびに指および足の毛の喪失が含まれ得る。一定の実施形態では、慢性創傷が完全または部分的な動脈閉塞に起因する動脈性潰瘍または潰瘍形成によって特徴づけられる慢性潰瘍の治療のための組成物および方法を提供する。
【0061】
静脈性潰瘍:静脈性潰瘍は、下肢に影響を及ぼす最も一般的な潰瘍型であり、静脈弁の機能不全によって特徴づけることができる。正常な静脈は、血液の逆流を防止する弁を有する。これらの弁が無能になる場合、静脈血の逆流によって静脈系鬱血を生じる。赤血球由来のヘモグロビンが逸脱して脈管外隙に漏れ、褐色の変色が共通して認められる。静脈性潰瘍を取り囲む皮膚の経皮酸素圧の減少が認められており、この領域の正常な血管分布を妨害する力が存在することが示唆される。リンパ排液およびリンパ液の流れも、これらの潰瘍で役割を果たす。静脈性潰瘍は、内果付近に出現し、通常、浮腫性および硬結性の下肢と組み合わせて生じ得る。これは、浅く、あまり痛みがなく、罹患部位からの滲出を示し得る。一定の実施形態では、静脈弁の機能不全に起因する静脈性潰瘍または潰瘍形成および関連する脈管疾患によって特徴づけられる慢性潰瘍の治療のための組成物および方法を提供する。
【0062】
静脈鬱血性潰瘍:静脈鬱血性潰瘍を、局所性低酸素症を生じる下肢の慢性受動性静脈系鬱血によって特徴づけることができる。これらの病理発生の1つの起こり得る機構には、厚い血管周囲のフィブリンカフ(cuff)を通過する組織への酸素拡散の妨害が含まれる。別の機構は、皮膚完全性の維持に必要な成長因子を補足した血管周囲組織に漏れる高分子である。さらに、巨大白血球の流れは、静脈系鬱血によって、毛細管閉塞を示し、血管内皮を活性化して損傷し、潰瘍形成する傾向がある。したがって、一定の実施形態では、慢性創傷が下肢の慢性受動性静脈系鬱血および/またはそれによる局所性低酸素症に起因する静脈鬱血性潰瘍または潰瘍形成によって特徴づけられる慢性潰瘍の治療のための組成物および方法を提供する。
【0063】
糖尿病性潰瘍:糖尿病患者は、神経および血管の合併症の両方によって足および他の領域に潰瘍形成する傾向がある。末梢神経ニューロパシーにより、足および/または脚の感覚が変化するか完全に喪失し得る。進行性ニューロパシーを伴う糖尿病患者は、激痛−鈍痛(sharp−dull)を区別する全ての能力を喪失している。ニューロパシー患者では、足の任意の切傷および外傷は、数日間または数週間全く気付かれない。進行性ニューロパシー患者は、持続性の圧力傷害を感知する能力を喪失しており、結果として、組織の虚血および壊死により、例えば、足底潰瘍形成を生じ得る。微小管疾患は、潰瘍形成も引き起こしうる糖尿病の有意な合併症の1つである。一定の実施形態では、慢性創傷が神経および/または糖尿病の血管合併症に起因する糖尿病性の足の潰瘍および/または潰瘍形成によって特徴づけられる慢性潰瘍の治療のための組成物および方法を提供する。
【0064】
外傷性潰瘍:外傷性潰瘍の形成は、身体の外傷の結果として生じ得る。これらの損傷には、例えば、動脈、静脈、またはリンパ系の障害;骨格の骨構造の変化;組織層(表皮、真皮、皮下軟組織、筋肉、または骨)の喪失;身体の一部または器官の損傷、および身体の一部または器官の喪失が含まれる。一定の実施形態では、慢性創傷が身体への外傷に関連する潰瘍形成によって特徴づけられる慢性潰瘍の治療のための組成物および方法を提供する。
【0065】
火傷性潰瘍:潰瘍はまた、火傷(I度火傷(すなわち、皮膚表面上の発赤領域);II度火傷(水疱液を除去した後に自発的に治癒し得る水疱性損傷部位);III度火傷(通常は創傷治癒のための外科的介入が必要な皮膚全体の火傷);熱傷(熱湯、グリース、またはラジエーター液から生じ得る);熱(炎から生じ得る、通常は深達性火傷);化学火傷(酸およびアルカリから生じ得る、通常は深達性火傷);電気(低電圧で約1時間または高電圧での作業時のいずれか);爆発閃光(通常、表面上の損傷);および接触性の火傷(contact burn)(通常は深達性であり、マフラーの排気管、ホットアイロン、およびコンロから生じ得る)が含まれる)の結果としても生じ得る。一定の実施形態では、慢性創傷が身体の火傷に関連する潰瘍形成によって特徴づけられる慢性潰瘍の治療のための組成物および方法を提供する。
抗コネキシン薬
本明細書中に記載の本発明の抗コネキシン薬は、細胞内および細胞外への分子の輸送を調整するか影響を及ぼすことができる(例えば、遮断、阻害、または下方制御)。したがって、本明細書中に記載の一定の抗コネキシン薬は、細胞連絡(例えば、細胞−細胞)を調整する。一定の抗コネキシン薬は、細胞質と細胞膜周辺腔または細胞外間隙との間の分子の伝達を調整するか影響を及ぼす。かかる抗コネキシン薬は、一般に、コネキシンおよび/またはコネキシンヘミチャネル(コネクソン)をターゲティングする。コネキシンを含むヘミチャネルおよび得られたギャップ結合は、開いたヘミチャネルの場合は細胞質と細胞外間隙または組織との間、開いたギャップ結合の場合は隣接細胞の細胞質の間の小分子の放出または交換に独立して関与する。したがって、本明細書中に提供した抗コネキシン薬は、細胞間のカップリングおよび連絡を直接または間接的に減少させるか、細胞と細胞外間隙または組織との間の連絡(または分子の伝達)を減少または遮断することができ、細胞から細胞外間隙または組織(または細胞外間隙または組織から細胞)または隣接細胞間の分子の輸送の調整は、本発明の抗コネキシン薬および実施形態の範囲内である。
【0066】
ギャップ結合またはコネキシンヘミチャネルを介した分子の通過(例えば、輸送)の望ましい阻害を誘発することができる抗コネキシン薬を、本発明の実施形態で使用することができる。ギャップ結合またはコネキシンヘミチャネルを介した分子の通過を調整する任意の抗コネキシン薬も、特定の実施形態(例えば、細胞質から細胞外間隙または隣接細胞質への分子の通過を調整、遮断、または減少させる抗コネキシン薬)で提供する。かかる抗コネキシン薬は、ギャップ結合またはギャップ結合アンカップリング(ギャップ結合を介した分子の輸送の遮断)を含むか含まないコネキシンヘミチャネルを介した分子の通過を調整することができる。かかる化合物には、例えば、タンパク質およびポリペプチド、ポリヌクレオチド、および他の有機化合物が含まれ、これらは、例えば、ギャップ結合またはヘミチャネルの機能または発現を全部または一部遮断するか、コネキシン産生を全部または一部下方制御することができる。一定のギャップ結合インヒビターは、Evans,W.H.およびBoitano,S.Biochem.Soc.Trans.29:606−612(2001)に列挙されている。
【0067】
一定の抗コネキシン薬は、(例えば、mRNAの転写または翻訳の下方制御によって)コネキシン発現を下方制御するか、コネキシンタンパク質、コネキシンヘミチャネル、またはギャップ結合の活性を減少または阻害することができる。下方制御の場合、これは、コネキシン発現が下方制御される部位において、ギャップ結合によって直接的な細胞−細胞連絡を減少させるか、ヘミチャネルによって細胞外間隙への細胞質の曝露を減少させるであろう。
【0068】
抗コネキシン薬の例には、コネキシンmRNAおよび/またはタンパク質の発現または機能を減少または阻害するか、コネキシン、コネキシンヘミチャネル、またはギャップ結合の活性、発現、または形成を減少させる薬剤が含まれる。抗コネキシン薬には、抗コネキシンポリヌクレオチド(アンチセンスポリヌクレオチドおよび他のポリヌクレオチド(siRNAまたはリボザイム機能性を有するポリヌクレオチドなど)など)、抗体およびその結合フラグメント、ならびにペプチドおよびポリペプチド(ヘミチャネルまたはギャップ結合の活性または機能を調整するペプチド模倣物およびペプチドアナログが含まれる)が含まれる。
抗コネキシンポリヌクレオチド
抗コネキシンポリヌクレオチドには、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドおよびコネキシン発現を下方制御させることができる機能を有するポリヌクレオチドが含まれる。他の適切な抗コネキシンポリヌクレオチドには、RNAiポリヌクレオチドおよびsiRNAポリヌクレオチドが含まれる。
【0069】
アンチセンスポリヌクレオチドおよび他の抗コネキシンポリヌクレオチドの合成(RNAi、siRNA、およびリボザイムポリヌクレオチドならびに修飾骨格および混合骨格を有するポリヌクレオチドなど)は、当業者に公知である。例えば、Stein C.A.およびKrieg A.M.(編),Applied Antisense Oligonucleotide Technology,1998(Wiley−Liss)を参照のこと。抗体および結合部位ならびにペプチドおよびポリペプチド(ペプチド模倣物およびペプチドアナログが含まれる)の合成方法は、当業者に公知である。例えば、Lihu Yangら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1;95(18):10836−10841(Sept 1 1998);HarlowおよびLane(1988)”Antibodies:A Laboratory Manuel” Cold Spring Harbor Publications,New York;HarlowおよびLane(1999)”Using Antibodies” A Laboratory Manuel,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照のこと。
【0070】
1つの態様によれば、コネキシン発現の下方制御は、一般に、アンチセンスポリヌクレオチド(DNAまたはRNAポリヌクレオチドなど)、より詳細には、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の使用に基づき得る。これらのポリヌクレオチド(例えば、ODN)は、下方制御すべきコネキシンタンパク質をターゲティングする。典型的には、ポリヌクレオチドは一本鎖であるが、二本鎖でもよい。
【0071】
アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンの転写および/または翻訳を阻害することができる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、コネキシン遺伝子またはmRNA由来の転写および/または翻訳の特異的インヒビターであり、他の遺伝子またはmRNA由来の転写および/または翻訳を阻害しない。本産物は、(i)コード配列に対して5’および/または(ii)コード配列、および/または(iii)コード配列に対して3’のいずれかで、コネキシン遺伝子またはmRNAに結合することができる。
【0072】
アンチセンスポリヌクレオチドは、一般に、コネキシンmRNAに対してアンチセンスである。かかるポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAとハイブリッド形成することができ、それにより、コネキシンmRNA代謝の1つまたは複数の態様(転写、mRNAプロセシング、核からのmRNA輸送、翻訳、またはmRNA分解が含まれる)の干渉によってコネキシン発現を阻害することができる。アンチセンスポリヌクレオチドは、典型的には、コネキシンmRNAとハイブリッド形成して二重鎖を形成し、それにより、mRNAの翻訳の直接的阻害および/または不安定化を生じ得る。かかる二重鎖は、ヌクレアーゼによる分解に感受性を示し得る。
【0073】
アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部または一部とハイブリッド形成することができる。典型的には、アンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAのリボゾーム結合領域またはコード領域とハイブリッド形成する。ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部またはある領域と相補的であり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNAの全部または一部の正確な相補物であり得る。しかし、絶対的に相補的である必要はなく、生理学的条件下で約20℃、30℃、または40℃を超える融点を有する二重鎖を形成するのに十分に相補的であるポリヌクレオチドは、本発明で用いるのに特に有用である。
【0074】
したがって、ポリヌクレオチドは、典型的には、mRNAと配列が相補的なホモログである。ポリヌクレオチドは、中〜高ストリンジェンシー条件下(約50℃〜約60℃で0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウムなど)でコネキシンmRNAとハイブリッド形成するポリヌクレオチドであり得る。
【0075】
一定の態様のために、適切なポリヌクレオチドは、典型的には、約6〜40ヌクレオチド長である。好ましくは、ポリヌクレオチドは、約12〜約35ヌクレオチド長、あるいは、約12〜約20ヌクレオチド長、より好ましくは、約18〜約32ヌクレオチド長であり得る。別の態様によれば、ポリヌクレオチドは、少なくとも約40、例えば、少なくとも約60または少なくとも約80ヌクレオチド長、約100、約200、約300、約400、約500、約1000、約2000、または約3000までまたはそれを超えるヌクレオチド長であり得る。
【0076】
ポリヌクレオチドによってターゲティングされるコネキシンタンパク質は、下方制御されるべき部位に依存するであろう。これは、コネキシンサブユニット組成に関して全身の異なる部位でのギャップ結合の不均一な構成を反映する。コネキシンは、ある局面ではヒトまたは動物中に天然に存在するか、コネキシンの発現または活性が減少されるべき組織中に天然に存在するコネキシンである。コネキシン遺伝子(コード配列が含まれる)は、一般に、1つまたは複数の本明細書中に記載の特定のコネキシンのコード配列と相同性(表8に示すコネキシン43コード配列との相同性など)を有する。コネキシンは、典型的には、αまたはβコネキシンである。好ましくは、コネキシンはαコネキシンであり、治療すべき組織中で発現する。
【0077】
しかし、いくつかのコネキシンタンパク質は、組織中の分布に関して、他よりも遍在する。最も広範囲なものの1つは、コネキシン43である。コネキシン43をターゲティングするポリヌクレオチドは、特に、本発明での使用に適切である。他の態様では、他のコネキシンをターゲティングする。
【0078】
抗コネキシンポリヌクレオチドには、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドおよびコネキシン発現を下方制御させることができる機能を有するポリヌクレオチドが含まれる。他の適切な抗コネキシンポリヌクレオチドには、RNAiポリヌクレオチドおよびSiRNAポリヌクレオチドが含まれる。
【0079】
1つの好ましい態様では、アンチセンスポリヌクレオチドは、1つのコネキシンタンパク質のみのmRNAをターゲティングする。最も好ましくは、このコネキシンタンパク質はコネキシン43である。別の態様では、コネキシンタンパク質は、コネキシン26、30、31.1、32、36、37、40、または45である。他の態様では、コネキシンタンパク質は、コネキシン30.3、31、40.1、または46.6である。
【0080】
個別のコネキシンタンパク質をターゲティングするポリヌクレオチドを組み合わせて使用することも意図される(例えば、1、2、3、4、またはそれを超える異なるコネキシンをターゲティングすることができる)。例えば、コネキシン43および1つまたは複数のコネキシンファミリーの他のメンバー(コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、45、および46.6)をターゲティングするポリヌクレオチドを、組み合わせて使用することができる。
【0081】
あるいは、アンチセンスポリヌクレオチドは、1つを超えるコネキシンタンパク質に対するポリヌクレオチドを含むことができる組成物の一部であり得る。好ましくは、ポリヌクレオチドが指向されるコネキシンタンパク質の1つはコネキシン43である。オリゴデオキシヌクレオチドが指向される他のコネキシンタンパク質には、例えば、コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、45、および46.6が含まれ得る。種々のコネキシンに指向する適切な例示的ポリヌクレオチド(およびODN)を、表1に示す。
【0082】
各アンチセンスポリヌクレオチド特定のコネキシンに特異的あり得るか、1、2、3、またはそれを超える異なるコネキシンをターゲティングすることができる。特異的ポリヌクレオチドは、一般に、コネキシン間で保存されないコネキシン遺伝子またはmRNA中の配列をターゲティングするのに対して、非特異的ヌクレオチドは種々のコネキシンの保存配列をターゲティングするであろう。
【0083】
本発明で用いるポリヌクレオチドは、適切には、非修飾ホスホジエステルオリゴマーであり得る。かかるオリゴデオキシヌクレオチドは、長さが変化し得る。30量体のポリヌクレオチドが特に適切であることが見出されている。
【0084】
本発明の多数の態様は、オリゴデオキシヌクレオチドを参照して記載されている。しかし、他の適切なポリヌクレオチド(RNAポリヌクレオチドなど)をこれらの態様で使用することができることが理解される。
【0085】
アンチセンスポリヌクレオチドを、化学修飾することができる。これにより、ヌクレアーゼ耐性を増強することができ、その細胞侵入能力を増強することができる。例えば、ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドを使用することができる。他のデオキシヌクレオチドアナログには、メチルホスホナート、ホスホルアミダート、ホスホロジチオアート、N3’P5’−ホスホルアミダート、およびオリゴリボヌクレオチドホスホロチオアート、ならびにその2’−O−アルキルアナログおよび2’−O−メチルリボヌクレオチドメチルホスホナートが含まれる。あるいは、混合骨格オリゴヌクレオチド(「MBO」)を使用することができる。MBOは、ホスホチオアートオリゴデオキシヌクレオチドのセグメントおよび修飾オリゴデオキシ−またはオリゴリボヌクレオチドの適切に配置されたセグメントを含む。MBOは、ホスホロチオアート結合のセグメントおよび他の修飾オリゴヌクレオチドのセグメント(非イオン性で、ヌクレアーゼまたは2’−O−アルキルオリゴリボヌクレオチドに非常に高い耐性を示すメチルホスホナートなど)を有する。修飾骨格および混合骨格オリゴヌクレオチドの調製方法は、当該分野で公知である。
【0086】
本発明で使用されるアンチセンスポリヌクレオチドの正確な配列は、標的コネキシンタンパク質に依存するであろう。1つの実施形態では、適切なコネキシンアンチセンスポリヌクレオチドには、ポリヌクレオチド(表1に記載の以下の配列から選択されるオリゴデオキシヌクレオチドなど)が含まれ得る。
【0087】
【表1】
本明細書中に記載の組み合わせポリヌクレオチドの調製に適切なポリヌクレオチドには、例えば、コネキシンCx43に対するポリヌクレオチドならびに上記表1に記載のコネキシン26、30、31.1、32、および37のポリヌクレオチドが含まれる。
【0088】
本発明で使用されるアンチセンスポリヌクレオチドの正確な配列は標的コネキシンタンパク質に依存するにもかかわらず、コネキシン43について、以下の配列を有するアンチセンスポリヌクレオチドが特に適切であることが見出された:
【0089】
【化1】
例えば、コネキシン26、31.1、および32の適切なアンチセンスポリヌクレオチドは、以下の配列を有する。
【0090】
【化2】
本発明の方法で有用な他のコネキシンアンチセンスポリヌクレオチド配列には、以下が含まれる。
【0091】
【化3】
コネキシンタンパク質に指向するポリヌクレオチド(ODNが含まれる)を、任意の都合のよい従来のアプローチによって、そのヌクレオチド配列に関して選択することができる。例えば、コンピュータプログラムMac VectorおよびOligoTech(Oligos etc.Eugene,Oregon,USA)を使用することができる。一旦選択されると、ODNを、DNA合成機を使用して合成することができる。
ポリヌクレオチドホモログ
相同性およびホモログを、本明細書中で考察する(例えば、ポリヌクレオチドは、コネキシンmRNA中の配列の相補物のホモログであり得る)。かかるポリヌクレオチドは、典型的には、(相同配列の)例えば少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約100を超える連続ヌクレオチドの領域にわたって、関連配列と少なくとも約70%相同、好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%相同である。
【0092】
当該分野の任意の方法に基づいて相同性を計算することができる。例えば、UWGCGパッケージは、相同性を計算するために使用することができるBESTFITプログラムを提供する(例えば、そのデフォルト設定で使用される)(Devereuxら(1984)Nucleic Acids Research 12,p387−395)。例えば、Altschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290−300;Altschul,S,Fら(1990)J Mol Biol 215:403−10に記載のように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を計算するか、配列を整列させることができる(典型的には、そのデフォルト設定に関して)。
【0093】
BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さのワードと整列させた場合にいくつかの正の数の閾値スコアTに適合するか満たすクエリー配列中の長さWの短いワードの同定によって高スコアリング配列対(HSP)を最初に同定する工程を含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighbourhood word score threshold)と呼ばれる(Altschulら,上記参照)。これらの最初の隣接ワードヒットは、これらを含むHSPを見出すための検索開始のシード(seed)として作用する。ワードヒットを、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿って両方の方向に伸長する。各方向でのワードヒットの伸長を、以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアが、量Xによってその達成された最大値から低下した場合、1つまたは複数の負のスコアの残基アラインメントの累積によって累積スコアが0以下になる場合、またはいずれかの配列の末端に到達する場合。
【0094】
BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定づける。BLASTプログラムは、デフォルトとして、ワードレングス(W),BLOSUM62スコアリング行列(HenikoffおよびHenikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci USA 89:10915−10919)、50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。
【0095】
BLASTアルゴリズムは、2配列間の類似性の統計分析を行う。例えば、KarlinおよびAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787を参照のこと。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の1つの基準は、最小和確率(smallest sum probability)(P(N))である。これにより、2つのヌクレオチド間またはアミノ酸配列間の適合が偶然に起こる確率の指標が得られる。例えば、第1の配列と第2の配列と比較した最小和確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、一方の配列は別の配列に類似すると見なされる。
【0096】
相同配列は、典型的には、少なくとも約(または、たった約)2、5、10、15、20、またはそれを超える変異(置換、欠失、または挿入であり得る)によって関連配列と異なる。これらの変異を、相同性計算に関する上記のいずれかの領域にわたって測定することができる。
【0097】
相同配列は、典型的には、バックグラウンドを有意に超えるレベルで元の配列と選択的にハイブリッド形成する。選択的ハイブリッド形成を、典型的には、中〜高ストリンジェンシー条件(例えば、約50℃〜約60℃で0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)を使用して行う。しかし、かかるハイブリッド形成を、当該分野で公知の任意の適切な条件下で行うことができる(Sambrookら(1989),Molecular Cloning:A Laboratory Manualを参照のこと)。例えば、高ストリンジェンシーが必要である場合、適切な条件には、60℃で0.2×SSCが含まれる。より低いストリンジェンシーが必要である場合、適切な条件には、60℃で2×SSCが含まれる。
【0098】
ペプチドおよびポリペプチド抗コネキシン薬
結合タンパク質(ペプチド、ペプチド模倣物、抗体、および抗体フラグメントなどが含まれる)はまた、ギャップ結合およびヘミチャネルの適切なモジュレーターである。
【0099】
結合タンパク質には、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)
2、およびFvフラグメントが含まれる);単鎖抗体;単鎖Fvs;および単鎖結合分子(例えば、結合ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むもの)、特定の抗体または他の結合分子と接触する抗原決定基(すなわち、一般にエピトープと呼ばれる分子の一部)に結合することができる組換え抗体および抗体フラグメントが含まれる。これらの結合タンパク質(抗体および抗体フラグメントなどが含まれる)は、キメラまたはヒト化することができるか、投与される被験体で免疫原性が低くなるように作製することができるか、合成することができるか、組換え的に産生することができるか、発現ライブラリー中で産生することができる。当該分野で公知であるか後に発見される任意の結合分子(本明細書中で参照され、そして/または当該分野でより詳細に記載される結合分子など)が想定される。例えば、結合タンパク質には、抗体などだけでなく、標的(例えば、コネキシン、ヘミチャネル、または関連分子)に結合するリガンド、受容体、ペプチド模倣物、または他の結合フラグメントもしくは分子(例えば、ファージディスプレイによって産生される)が含まれる。
【0100】
結合分子は、一般に、所望の特異性(結合特異性が含まれるが、これに限定されない)および所望の親和性を有するであろう。親和性は、例えば、約10
4M
−1以上、約10
6M
−1以上、約10
7M
−1以上、約10
8M
−1以上のKaであり得る。さらに約10
8M
−1を超える親和性(約10
9M
−1以上、約10
10M
−1、約10
11M
−1、および約10
12M
−1の親和性など)が適切である。本発明の結合タンパク質の親和性を、従来技術(例えば、Scatchardら,1949 Ann.NY.Acad.Sci.51:660に記載の技術)を使用して容易に決定することができる。
【0101】
ハイドロパシープロットから得たデータの使用により、コネキシンが4つの膜貫通領域および2つの短い細胞外ループを含むことが提案されている。コネキシンの第1および第2の細胞外領域の配置を、分断(split)ギャップ結合上の対応するエピトープの免疫局在性のために使用される抗ペプチド抗体産生の報告によってさらに特徴づけた。Goodenough D.A.J Cell Biol 107:1817−1824(1988);Meyer R.A.,J Cell Biol 119:179−189(1992)。
【0102】
2つの隣接細胞が寄与するヘミチャネルの細胞外ドメインが互いに「ドッキング」して、完全なギャップ結合チャネルを形成する。これらの細胞外ドメインの相互作用を干渉する試薬は、細胞−細胞連絡を妨害することができる。ギャップ結合およびヘミチャネルのペプチドインヒビターは報告されている。例えば、Berthoud,V.M.ら,Am J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.279:L619−L622(2000);Evans,W.H.およびBoitano,S.Biochem.Soc.Trans.29:606−612,およびDe Vriese A.S.,ら,Kidney Int.61:177−185(2001)を参照のこと。コネキシンの細胞外ループ内の配列に対応する短いペプチドは、細胞間連絡を阻害すると言われている。Boitano S.およびEvans W.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 279:L623−L630(2000)。ツメガエル卵母細胞対中で発現したコネキシン(Cx)32によって産生される細胞−細胞チャネル形成のインヒビターとしてのペプチドの使用も報告されている。Dahl G,ら,Biophys J 67:1816−1822(1994)。Berthoud,V.M.およびSeul,K.H.は、これらの結果のいくつかをまとめている。Am J,Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.279:L619−L622(2000)。
【0103】
抗コネキシン薬には、コネキシン(例えば、コネキシン45、43、26、30、31.1、および37)の膜貫通領域(例えば、第1〜第4)に対応するアミノ酸配列を含むペプチドが含まれる。抗コネキシン薬は、コネキシン45の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含むことができる。抗コネキシン薬には、配列番号13の約5〜20個の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号13の約8〜15個の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号13の約11〜13個の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドが含まれる。他の実施形態は、配列番号13の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30個の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドである抗コネキシン薬に関する。本明細書中に提供した一定の抗コネキシン薬では、配列番号13の46〜75位および199〜228位のアミノ酸に対応するコネキシン45の細胞外ドメインを使用して、特定のペプチド配列を構築することができる。本明細書中に記載の一定のペプチドは、配列番号13の46〜75位および199〜228位の領域に対応するアミノ酸配列を有する。ペプチドは、配列番号13の一部と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するように保存的にアミノ酸を変化させることができる。あるいは、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質領域(例えば、46〜75位および199〜228位に対応しない配列番号13の一部)をターゲティングすることができる。
【0104】
また、適切な抗コネキシン薬は、コネキシン43の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含む。抗コネキシン薬には、配列番号14の約5〜20個の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号14の約8〜15個の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号14の約11〜13個の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドが含まれる。他の抗コネキシン薬には、配列番号14の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30個の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドが含まれる。他の抗コネキシン薬は、配列番号14の37〜76位および178〜208位のアミノ酸に対応するコネキシン43の細胞外ドメインを含む。抗コネキシン薬には、配列番号14の37〜76位および178〜208位の領域に対応するアミノ酸配列を有する本明細書中に記載のペプチドが含まれる。ペプチドは、配列番号14の一部と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するように保存的にアミノ酸を変化させることができる。あるいは、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質領域(例えば、37〜76位および178〜208位に対応しない配列番号14の一部)をターゲティングすることができる。
【0108】
【化7】
抗コネキシンペプチドは、ペプチドが機能的に活性な抗コネキシン薬であるような保存的アミノ酸置換を有するコネキシン細胞外ドメインの一部に対応する配列を含むことができる。例示的な保存的アミノ酸置換には、例えば、非極性アミノ酸の別の非極性アミノ酸との置換、芳香族アミノ酸の別の芳香族アミノ酸との置換、脂肪族アミノ酸の別の脂肪族アミノ酸との置換、極性アミノ酸の別の極性アミノ酸との置換、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸との置換、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸との置換、イオン性アミノ酸の別のイオン性アミノ酸との置換が含まれる。
【0109】
コネキシン43にターゲティングされるペプチドの例を、以下の表2に示す。M1、2、3、および4は、それぞれ、第1〜第4のコネキシン43の膜貫通領域をいう。
【0111】
【表2-2】
表3は、ヘミチャネルまたはギャップ結合機能の阻害で使用されるさらなる例示的コネキシンペプチドを提供する。他の実施形態では、ペプチドまたはそのフラグメントに対して保存的にアミノ酸を変化させる。
【0112】
【表3】
表4は、本明細書中に記載の使用のためのペプチドインヒビターを構築するために使用されるコネキシンファミリーメンバーの細胞外ループを提供する。表4に提供したペプチドおよびそのフラグメントを、一定の非限定的な実施形態におけるペプチドインヒビターとして使用する。他の非限定的な実施形態では、この表4中のペプチドの約8〜約15または約11〜約13個のアミノ連続アミノ酸は、ペプチドインヒビターである。ペプチドまたはそのフラグメントに対して保存的にアミノ酸を変化させることができる。
【0114】
【表4-2】
表5は、ペプチド抗コネキシン薬を構築するために使用することができるコネキシンファミリーメンバーの細胞外ドメインを提供する。ペプチドを表5に提供し、そのフラグメントもペプチド抗コネキシン薬として使用することもできる。かかるペプチドは、この表5中のペプチド配列の約8〜約15または約11〜約13アミノ個の連続アミノ酸を含むことができる。ペプチドまたはそのフラグメントに対して保存的にアミノ酸を変化させることができる。
【0116】
【表5-2】
表6は、コネキシン40の細胞外ループ(E1およびE2)に関して示したコネキシン40のペプチドインヒビターを提供する。太字のアミノ酸は、コネキシン40の膜貫通領域に関する。
【0117】
【表6】
表7は、コネキシン45の細胞外ループ(E1およびE2)に関して示したコネキシン45のペプチドインヒビターを提供する。太字のアミノ酸は、コネキシン45の膜貫通領域に関する。
【0119】
【表7-2】
一定の実施形態では、既存のギャップ結合を破壊することなく、一定のペプチドインヒビターがヘミチャネルを遮断することが好ましい。いかなる特定の理論または機構に拘束されることも望まないが、一定のペプチド模倣物(例えば、VCYDKSFPISHVR(配列番号23))が、ギャップ結合の非カップリングを引き起こすことなくヘミチャネルを遮断するか(Leybeartら,Cell Commun.Adhes.10:251−257(2003)を参照のこと)、より低用量で遮断するとも考えられる。ペプチドSRPTEKTIFII(配列番号19)を使用して、例えば、ギャップ結合の非カップリングを起こすことなくヘミチャネルを遮断することもできる。ペプチドSRGGEKNVFIV(配列番号107)をコントロール配列として使用することができる(DeVrieseら,Kidney Internat.61:177−185(2002))。コネキシン45のペプチドインヒビターの例は以下である:
【0121】
【化9】
ペプチドは、たった3アミノ酸長(SRL、PCH、LCP、CHP、IYY、SKF、QPC、VCY、APL、HVR)であり得るか、より長い(例えば、
【0124】
【表8-2】
治療薬
治療薬には、既存で公知のものまたはその後に開発されるものを問わず、創傷の治療または創傷治癒の促進で有用な薬学的に許容可能な薬剤が含まれる。治療薬には、例えば、抗感染薬、麻酔薬、鎮痛薬、抗生物質、麻酔剤、およびステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬が含まれる。好ましい治療薬には、局所ステロイド性抗炎症薬、抗菌薬、局所および局部麻酔薬、および局所オピオイドが含まれる。一定の実施形態では、1、2、3、4、5、または6つの治療薬を組み合わせて使用することができる。
【0125】
創傷治癒に有用な薬剤
本明細書中で使用される場合、創傷治癒に有用な薬剤には、1)天然の創傷治癒過程を促進または加速するか、2)不適切または遅発性の創傷治癒に関連する影響(例えば、不都合な炎症、上皮形成、血管形成、およびマトリックス沈着、ならびに瘢痕形成および線維症が含まれる)を軽減する、創傷治癒カスケードの刺激因子、エンハンサー、または正のメディエーターが含まれる。
【0126】
正のメディエーター、エンハンサー、および刺激因子には、例えば、創傷部位での創傷治癒または活性な創傷治癒過程、または創傷治癒関連成長因子もしくはサイトカインの量、質、または有効性、または創傷治癒関連成長因子もしくはサイトカイン受容体の活性化を刺激するか、増強するか、容易にするか、加速する(すなわち、アゴナイズする)ことができる薬剤が含まれる。かかる薬剤には、例えば、創傷治癒関連成長因子もしくはサイトカインまたは創傷治癒関連成長因子もしくはサイトカインの部分修飾形態が含まれ得る。創傷治癒関連成長因子またはサイトカインの部分修飾形態は、例えば、天然の創傷治癒関連成長因子またはサイトカインよりも長い半減期を有することができる。あるいは、部分修飾形態は、創傷治癒関連成長因子またはサイトカインの代謝インヒビターであり得る。
【0127】
かかる薬剤の部分修飾は、アミノ酸残基の付加、欠失、または置換によるものであり得る。置換は、例えば、保存的置換であり得る。したがって、部分修飾分子は、由来した分子のホモログであり得る。部分修飾分子は、由来する分子と少なくとも約40%(例えば、約50、60、70、80、90、または95%)相同であり得る。
【0128】
本明細書中で使用される場合、創傷治癒に有用な薬剤には、例えば、当該分野で現在公知であるかその後に開発される治療方法のための創傷治癒促進薬または瘢痕軽減薬が含まれ得る。例示的な因子、薬剤、または方法には、創傷治癒を促進するための天然または合成の成長因子、サイトカイン、またはそのモジュレーター、創傷治癒促進バイオ工学処理マトリックス、包帯剤、および包帯などが含まれる。適切な例には、以下が含まれ得るが、これらに限定されない:1)局所薬または包帯剤および関連する治療薬および排膿促進薬(例えば、サンチル(Santyl)(登録商標)コラゲナーゼおよびヨードソーブ(Iodosorb)(登録商標)(カデキソマーイオジン(cadexomer iodine)など);2)抗菌薬(全身または局所クリームまたはゲルが含まれる)(例えば、銀含有薬(SAG(銀抗菌薬ゲル)、(CollaGUARD(商標)、Innocoll、Inc)(精製I型コラーゲンタンパク質ベースの包帯剤)、CollaGUARD Ag(感染創または感染リスクのある創傷のために銀を含浸させたコラーゲンベースの生体活性包帯剤)、DermaSIL(商標)(深く重度の滲出性創傷(exuding wound)のためのコラーゲン合成フォーム複合包帯剤)が含まれる);3)細胞療法またはバイオ工学処理した皮膚、皮膚代替物、および皮膚等価物(例えば、デモグラフト(Dermograft)(サイトカインおよび成長因子を分泌するヒト線維芽細胞の三次元マトリックス培養物)、アプリグラフ(Apligraf)(登録商標)(ヒト角化細胞および線維芽細胞)、グラフスキン(Graftskin)(登録商標)(組織学的に正常な皮膚に類似し、正常な皮膚によって産生される成長因子に類似の成長因子を産生する上皮細胞および線維芽細胞の二重層)、トランスサイト(TransCyte)(ヒト線維芽細胞由来一過性皮膚代替物)、およびオアシス(Oasis)(登録商標)(成長因子および細胞外基質成分の両方を含む活性生体材料(コラーゲン、プロテオグリカン、およびグリコサミノグリカンなど))が含まれる);4)創傷治癒を促進するために創傷に導入されるサイトカイン、成長因子、またはホルモン(天然および合成の両方)(例えば、NGF、NT3、BDGF、インテグリン、プラスミン、セマホリング(semaphoring)、血液由来成長因子、角化細胞成長因子、組織成長因子、TGF−α、TGF−β、PDGF(以下の3つのサブタイプのうちの1つまたは複数を使用することができる:AA、AB、およびB)、PDGF−BB、TGF−β3、TGFβ3、TGFβ1、およびTGFβ2の相対レベルを調整する因子(例えば、マンノース−6−ホスファート)、性ステロイド(例えば、エストロゲン、エストラジオール、またはエストロゲン受容体アゴニスト(エチニルエストラジオール、ジエノエストロール、メストラノール、エストラジオール、エストリオール、抱合エストロゲン、ピペラジンエストロンスルファート、スチルベストロール、ホスフェストロール四ナトリウム(fosfesterol tetrasodium)、ポリエストラジオールホスファート、チボロン、フィトエストロゲン、17−β−エストラジオールからなる群から選択される)が含まれる);胸腺ホルモン(サイモシン−β−4など)、EGF、HB−EGF、線維芽細胞成長因子(例えば、FGFl、FGF2、FGF7)、角化細胞成長因子、TNF、炎症反応モジュレーターのインターロイキンファミリー(例えば、IL−10、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、およびIL−10、並びにそのモジュレーターなど);INF(INF−α、−β、および−δ);アクチビンまたはインヒビンの刺激因子、インターフェロンγプロスタグランジンE2(PGE2)のインヒビター、およびアデノシン3’,5’−サイクリックモノホスファート(cAMP)経路のメディエーター;アデノシンA1アゴニスト、アデノシンA2アゴニストが含まれる)、または5)他の創傷治癒に有用な薬剤(例えば、VEGF、VEGFA、IGFの天然または合成のホモログ、アゴニスト、およびアンタゴニスト;IGF−1、炎症誘発性サイトカイン、GM−CSF、およびレプチンが含まれる)、および6)IGF−1およびKGF cDNA、自系血小板ゲル(autologous platelet gel)、次亜塩素酸(ステリロックス(Sterilox)(登録商標)リポ酸、一酸化窒素シンターゼ3、マトリックスメタロプロテイナーゼ 9(MMP−9)、CCT−ETA、αvβ6インテグリン、成長因子刺激線維芽細胞(growth factor−primed fibroblast)およびデコリン、銀含有創傷包帯、キセナダルム(Xenaderm)(商標)、パパイン創傷排膿促進薬、ラクトフェリン、基質P、コラーゲン、および銀−ORC、胎盤アルカリホスファターゼもしくは胎盤成長因子、ハリネズミシグナル伝達のモジュレーター、コレステロール合成経路のモジュレーター、およびAPC(活性化プロテインC)、角化細胞成長因子、TNF、トロンボキサンA2、NGF、BMP骨形成タンパク質、CTGF(結合組織成長因子)、創傷治癒ケモカイン、デコリン、乳酸誘導性新血管新生のモジュレーター、肝油、胎盤アルカリホスファターゼもしくは胎盤成長因子、およびサイモシンβ4。一定の実施形態では、1、2、3、4、5、または6つの創傷治癒に有用な薬剤を組み合わせて使用することができる。
【0129】
上記の創傷治癒に有用な薬剤(例えば、成長因子およびサイトカインが含まれる)が全ての天然に存在する多型(例えば、成長因子またはサイトカインの多型)を含むと理解すべきである。また、機能的フラグメント、創傷治癒に有用な薬剤の1つを含むキメラタンパク質またはその機能的フラグメント、創傷治癒薬の1つまたは複数のアミノ酸の類似の置換によって得られたホモログ、および種ホモログが含まれる。1つまたは複数の創傷治癒に有用な薬剤が組換えDNAテクノロジーの産物であり得、1つまたは複数の創傷治癒に有用な薬剤がトランスジェニックテクノロジーの産物であり得ることが意図される。例えば、血小板由来成長因子を、PDGFのコード配列を含む組換えPDGFまたは遺伝子療法ベクターの形態で提供することができる。
【0130】
フラグメントまたはその部分修飾形態は、因子の生物学的機能性または創傷治癒機能性を保持するが、さらなる機能性も勿論有することができる創傷治癒薬のフラグメントまたは部分修飾形態をいう。部分修飾は、例えば、アミノ酸残基の付加、欠失、または置換によるものであり得る。例えば、置換は保存的置換であり得る。したがって、部分修飾分子は、創傷治癒薬のホモログであり得る。これらは、例えば、上記因子と少なくとも約40%相補性を有することができる。これらは、例えば、上記因子と少なくとも約50、60、70、80、90、または95%の相補性を有することができる。例えば、一定の実施形態では、IL−10またはそのフラグメントもしくは部分修飾形態を、約1μMと約10μMとの間の濃度で投与することができる。これを、約2.5μMと約5μMとの間の濃度で投与することができる。一定の他の実施形態では、IL−10またはそのフラグメントもしくは部分修飾形態を、創傷治癒直前に投与することができるが、創傷から約7日以内に投与する場合に有効であり得る。これを、少なくとも2回投与することができる。
【0131】
ギャップ結合修飾薬
本明細書中で使用される場合、「ギャップ結合修飾薬」には、ヘミチャネルまたはギャップ結合の活性、機能、または形成を全部または部分的に防止するか、減少するか、または調整する薬剤または化合物が広く含まれ得る。
【0132】
他の実施形態では、ギャップ結合修飾薬は、ヘミチャネルまたはギャップ結合の形成または活性を全部または部分的に防止するか減少させる。
【0133】
一定の実施形態では、ギャップ結合修飾薬には、ヘミチャネルまたはギャップ結合の全部または部分的な閉鎖を誘導する。他の実施形態では、ギャップ結合修飾薬は、ヘミチャネルまたはギャップ結合を全部または部分的に遮断する。一定の実施形態では、ギャップ結合修飾薬は、ヘミチャネルまたはギャップ結合の開口を全部または部分的に減少させるか防止する。
【0134】
一定の実施形態では、ギャップ結合修飾薬によるギャップ結合またはヘミチャネルの遮断または閉鎖は、開口チャネルを介した細胞外間隙または細胞膜周辺腔へおよびこれらからの小分子の流れの防止または減少によって細胞外ヘミチャネル連絡を減少させるか阻害することができる。
【0135】
一定の実施形態では、ギャップ結合修飾薬は、コネキシン、ヘミチャネル、またはギャップ結合の活性または機能を防止するか、減少させるか、変化させる。本明細書中で使用される場合、ギャップ結合の活性または機能の修飾には、ギャップ結合の開口または閉鎖、コネクソンヘミチャネルの開口または閉鎖、および/またはギャップ結合を介した分子またはイオンの通過が含まれ得る。
【0136】
一定の別の態様では、ギャップ結合修飾薬には、例えば、脂肪族アルコール;オクタノール;ヘプタノール;麻酔薬(例えば、ハロタン)、エトラン、フルオタン、プロポフォール、およびチオペンタール;アナンダミド;アリールアミノベンゾアート(FFA:フルフェナム酸および親油性の類似の誘導体);カルベノキソロン;カルコン:(2’,5’−ジヒドロキシカルコン);CHF(クロロヒドロキシフラノン);CMCF(3−クロロ−4−(クロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン);デキサメタゾン;ドキソルビシン(および他のアントラキノン誘導体);エイコサノイドトロンボキサンA(2)(TXA(2))模倣物;NO(一酸化窒素);脂肪酸(例えば、アラキドン酸、オレイン酸、およびリポキシゲナーゼ代謝産物;フェナマート(フルフェナム酸(FFA)、ニフルム酸(NFA)、およびメクロフェナム酸(MFA));ゲニステイン;グリシルレチン酸(GA):18α−グリシルレチン酸、および18−β−グリシルレチン酸、ならびにその誘導体;リンダン;リゾホスファチジン酸;メフロキン;メナジオン;2−メチル−1,4−ナフトキノン、ビタミンK(3);ナフェノピン;オカダ酸;オレアミド;オレイン酸;細胞外酸性化によってゲーティングするPH(例えば、酸性化剤;多価不飽和脂肪酸;脂肪酸GJICインヒビター(例えば、オレイン酸およびアラキドン酸);キニジン;キニーネ;オールトランスレチノイン酸;およびタモキシフェンが含まれ得る。
【0137】
ギャップ結合機能の変化のために使用される例示的化合物(例えば、ギャップ結合遮断薬、ギャップ結合タンパク質リン酸化剤、脱リン酸化剤)は、Jensenら,(米国特許第7,153,822号を参照のこと)、Larsenら,
(米国特許第7,250,397号を参照のこと)、Gourdieら,(WO2006069181号を参照のこと)、およびTudorら,(WO2003032964号を参照のこと)、ならびに他の種々の公開特許出願によって以前に報告されている。
【0138】
本明細書中で使用される場合、「ギャップ結合リン酸化剤」または「ギャップ結合脱リン酸化剤」には、コネキシン残基のリン酸化または脱リン酸化を誘導することができる薬剤または化合物が含まれ得る。例示的なリン酸化または脱リン酸化部位には、コネキシンタンパク質上の1つまたは複数のチロシン、セリン、またはトレオニンが含まれる。一定の実施形態では、リン酸化の調整は、1つまたは複数のコネキシンタンパク質上の1つまたは複数の残基上で起こり得る。例示的なギャップ結合リン酸化または脱リン酸化剤は、当該分野で周知であり、例えば、c−Srcチロシンキナーゼまたは他のGタンパク質共役受容体アゴニストが含まれ得る。Giepmans B,J.Biol.Chem.,Vol.276,Issue 11,8544−8549,2001年3月16日を参照のこと。1つの実施形態では、1つまたは複数のこれらの残基に対するリン酸化の調整は、特に、ヘミチャネルの閉鎖によってヘミチャネル機能に影響を及ぼす。別の実施形態では、1つまたは複数のこれらの残基に対するリン酸化の調整は、特にギャップ結合の閉鎖によってギャップ結合機能に影響を及ぼす。
投薬形態および処方物ならびに投与
治療有効量の各組み合わせパートナー(例えば、抗コネキシン薬および創傷治癒薬)を、同時、個別、連続的且つ任意の順序で投与することができる。薬剤を、個別に投与するか、固定された組み合わせで投与することができる。固定した組み合わせで投与しない場合、好ましい方法は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の創傷治癒に有用な薬剤の連続投与を含む。そのいずれかまたは両方を、薬剤を単独で投与する場合(すなわち、薬剤を、物理的または創傷治療過程のいずれかで組み合わせて投与しない場合)に使用するよりも少ない量または用量で準備する。投与される薬剤のかかるより少ない量は、典型的には、単独投与の場合の約1/20〜約1/10の薬剤の量であり、単独投与の場合の約1/8の量、約1/6の量、約1/5の量、約1/4の量、約1/3の量、約1/2の量であり得る。好ましくは、薬剤を、互いに少なくとも約30分以内に連続投与する。薬剤を、互いに約1時間以内、互いに約1日〜約1週間以内、その他の適切と見なされる時間内に投与することもできる。好ましくは、抗コネキシン薬を最初に投与する。好ましくは、1つまたは複数の抗コネキシン薬を使用する場合、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣物(例えば、ヘミチャネル開口を遮断または減少させることができる抗コネキシン薬)を、例えば、コネキシンタンパク質発現の下方制御によってコネキシン発現またはヘミチャネルもしくはギャップ結合の形成を遮断または減少させる抗コネキシン薬の投与前に投与する。好ましくは、抗コネキシン薬は、抗コネキシン43薬である。
【0139】
本発明の薬剤を、治療を必要とする被験体(本明細書中に記載の任意の疾患または容態を有する被験体)に投与することができる。したがって、被験体の容態を、改善することができる。したがって、抗コネキシン薬および組み合わせパートナーを、治療によって被験体の身体の治療で使用することができる。これらを、本明細書中に記載の任意の容態の治療薬の製造で使用することができる。したがって、本発明によれば、細胞−細胞連絡を一過性および部位特異的様式で下方制御することができる処方物を提供する。
【0140】
抗コネキシン薬は、実質的に単離された形態で存在し得る。生成物を、生成物の意図する目的を妨害しないキャリアまたは希釈剤と混合し、且つ依然として実質的に単離されたと見なされると理解されるであろう。本発明の生成物はまた、一般に、ポリヌクレオチド(または他の抗コネキシン薬)または乾燥質量の調製物の約90%、例えば、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含む場合、実質的に精製された形態であり得る。
【0141】
意図する投与経路に応じて、本発明の薬学的生成物、薬学的組成物、組み合わせ調製物、および薬物は、例えば、溶液、懸濁液、点滴液(instillation)、蝋膏、クリーム、ゲル、フォーム、軟膏、乳濁液、ローション、湿布剤、徐放性処方物、または粉末の形態を取ることができ、典型的には、約0.1%〜95%の有効成分、好ましくは約0.2%〜70%の有効成分を含む。他の適切な処方物には、プルロニックゲルベースの処方物、カルボキシメチルセルロース(CMC)ベースの処方物、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ベースの処方物が含まれる。他の有用な処方物には、持続放出調製物または遅延放出調製物が含まれる。
【0142】
ゲルまたはゼリーを、適切なゲル化剤(ゼラチン、トラガカント、またはセルロース誘導体が含まれるが、これらに限定されない)を使用して生成することができ、これらには、保湿剤、皮膚軟化剤、および防腐剤としてのグリセロールが含まれ得る。軟膏は、脂肪基剤、ワックス基剤、または合成基剤に組み込まれた有効成分からなる半固体調製物である。適切なクリームの例には、油中水滴型乳濁液および水中油滴型乳濁液が含まれるが、これらに限定されない。油中水滴型クリームを、脂肪アルコール(セチルアルコールまたはセトステアリルアルコールなど)および乳化蝋の性質(これらに限定されない)に類似の性質を有する適切な乳化剤の使用によって処方することができる。水中油滴型クリームを、乳化剤(セトマクロゴール乳化蝋など)を使用して処方することができる。適切な性質には、広範なpHにわたって乳濁液の粘度ならびに物理的および化学的安定性を改変する能力が含まれる。水溶性または水混和性クリーム基剤は、保存系(preservative system)を含むことができ、これを緩衝化して許容可能な生理学的pHを維持することもできる。
【0143】
不活性噴射剤を使用した適切なアプリケーターによって加圧エアゾールキャニスターから送達されるようにフォーム調製物を処方することができる。フォーム基剤の処方に適切な賦形剤には、プロピレングリコール、乳化蝋、セチルアルコール、およびステアリン酸グリセリルが含まれるが、これらに限定されない。潜在的な防腐剤には、メチルパラベンおよびプロピルパラベンが含まれる。
【0144】
好ましくは、本発明の薬剤を、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて薬学的組成物を生成する。適切なキャリアおよび希釈剤には、等張生理食塩水(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)が含まれる。適切な希釈剤および賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、およびその組み合わせも含まれる。さらに、必要に応じて、湿潤剤または乳化剤、安定剤またはpH緩衝剤などの物質も存在することができる。
【0145】
用語「薬学的に許容可能なキャリア」は、それ自体が組成物が投与される個体に有害な抗体の産生を誘導せず、過度の毒性がなく投与することができる任意の薬学的キャリアをいう。適切なキャリアは、巨大でゆっくり代謝される高分子(タンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、およびアミノ酸コポリマーなど)であり得る。
【0146】
薬学的に許容可能な塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、および硫酸塩などの鉱酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、および安息香酸塩などの有機酸塩)も存在することができる。
【0147】
適切なキャリア材料には、局所投与のためのクリーム、ローション、ゲル、乳濁液、ローション、または塗布剤の基剤として一般的に使用される任意のキャリアまたはビヒクルが含まれる。例には、乳化剤、不活性キャリア(炭化水素基剤、乳化基剤が含まれる)、非毒性溶媒、または水溶性塩基が含まれる。特に適切な例には、プルロニック、HPMC、CMC、および他のセルロースベースの成分、ラノリン、固形パラフィン、流動パラフィン、黄色軟パラフィン、白色軟パラフィン、白色蜜蝋、黄色蜜蝋、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ジメチコン、乳化蝋、ミリスチン酸イソプロピル、マイクロクリスタリンワックス、オレイルアルコール、およびステアリルアルコールが含まれる。
【0148】
好ましくは、薬学的に許容可能なキャリアまたはビヒクルは、ゲル、適切には、非イオン性ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーゲル(例えば、プルロニックゲル、好ましくは、プルロニックF−127(BASF Corp.))である。このゲルは低温で液体であるが、生理学的温度で急速に固化し、適用部位または適用部位のごく近くに薬剤を放出させるので特に好ましい。
【0149】
カゼイン、ゼラチン、アルブミン、膠、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはポリビニルアルコールなどの助剤を、本発明の処方物に含めることもできる。
【0150】
他の適切な処方物には、プルロニックゲルベースの処方物、カルボキシメチルセルロース(CMC)ベースの処方物、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ベースの処方物が含まれる。組成物を、任意の所望の送達形態(局所投与、点滴注入投与、非経口投与、筋肉内投与、皮下投与、または経皮投与が含まれる)のために処方することができる。他の有用な処方物には、持続放出調製物または遅延放出調製物が含まれる。
【0151】
抗コネキシン薬が核酸(ポリヌクレオチドなど)である場合、哺乳動物細胞による核酸の取り込みは、いくつかの公知のトランスフェクション技術(例えば、トランスフェクション薬の使用が含まれる)によって増強される。かかる技術を、一定の抗コネキシン薬(ポリヌクレオチドが含まれる)と共に使用することができる。投与される処方物は、かかるトランスフェクション薬を含むことができる。これらの薬剤の例には、陽イオン性薬(例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE−デキストラン)およびリポフェクタント(lipofectant)(例えば、リポフェクタム(商標)およびトランスフェクタム(商標))、および界面活性剤が含まれる。
【0152】
抗コネキシン薬がポリヌクレオチドを含む場合、便宜上、処方物は、ポリヌクレオチドの細胞透過を補助するための界面活性剤をさらに含み、処方物は、任意の適切な負荷薬(loading agent)を含むことができる。任意の適切な非毒性界面活性剤(DMSOなど)を含めることができる。あるいは、尿素などの経皮透過薬を含めることができる。
【0153】
所与の被験体または容態の有効用量を、日常的実験または当該分野で公知であるか後に開発される他の方法によって決定することができる。例えば、一定範囲の投薬量を処方する場合、細胞培養アッセイおよび動物研究を使用することができる。かかる化合物の投薬量は、好ましくは、集団の少なくとも50%に治療的に有効であり、このレベルで毒性はほとんど示さないか全く示さない用量の範囲内である。
【0154】
本発明の方法および組成物で使用される各抗コネキシン薬の有効な投薬量は、多数の要因(使用した特定の抗コネキシン薬、組み合わせパートナー、投与様式、投与頻度、治療条件、治療をうける容態の重症度、投与経路、治療すべき患者の亜集団のニーズまたは異なるニーズが患者に特異的な年齢、性別、体重、関連する医学的容態に起因し得るニーズが含まれる)に応じて変化し得る。
【0155】
抗コネキシン薬を患者に投与する用量は、種々の要因(患者の年齢、体重、一般的状態、治療を受ける容態、および投与される特定の抗コネキシン薬など)に依存するであろう。
【0156】
適切な用量は、約0.001〜約100mg/kg体重(約0.01〜約40mg/kg体重など)であり得る。しかし、適切な用量は、約0.001〜約0.1mg/kg体重(約0.01〜約0.050mg/kg体重など)であり得る。約1〜100、200、300、400、および500マイクログラムの用量が適切である。
【0157】
例えば、一定の実施形態では、抗コネキシン薬組成物を、約0.01マイクロモル(μM)または0.05μM〜約200μMの最終濃度で治療部位および/または治療部位付近に適用することができる。好ましくは、アンチセンスポリヌクレオチド組成物を、約0.05μM〜約100μMの最終濃度で適用し、より好ましくは、抗コネキシン薬組成物を、約1.0μM〜約50μMの最終濃度で適用し、より好ましくは、抗コネキシン薬組成物を、約5〜10μM〜約30〜50μMの最終濃度で適用する。さらに、組み合わせ抗コネキシン薬組成物を、約8μM〜約20μMの最終濃度で適用し、あるいは、抗コネキシン薬組成物を、約10μM〜約20μMの最終濃度または約10〜約15μMの最終濃度で適用する。一定の他の実施形態では、抗コネキシン薬を、約10μMの最終濃度で適用する。さらに別の実施形態では、抗コネキシン薬組成物を、約1〜15μMの最終濃度で適用する。抗コネキシン薬の量を単位とする用量(dose amount)には、例えば、約0.1〜1、1〜2、2〜3、3〜4、または4〜5マイクログラム(μg)、約5〜約10μg、約10〜約15μg、約15〜約20μg、約20〜約30μg、約30〜約40μg、約40〜約50μg、約50〜約75μg、約75〜約100μg、約100μg〜約250μg、および250μg〜約500μgが含まれる。上記のように、0.5〜約1.0ミリグラム以上の量を単位とする用量も提供する。体積を単位とする用量は、治療部位のサイズに依存し、例えば、約25〜100μL〜約100〜200μL、約200〜500μL〜約500〜1000μLの範囲であり得る。ミリリットルを単位とする用量(Milliliter doses)も、より巨大な治療部位に適切である。
【0158】
さらに他の投薬レベル約1ナノグラム(ng)/kgと約100mg/kg体重/日との間の本明細書中に記載の各薬剤のさらなる他の投薬レベル。一定の実施形態では、それぞれの本化合物の投薬量は、一般に、約1ng〜約1マイクログラム/kg体重、約1ng〜約0.1マイクログラム/kg体重、約1ng〜約10ng/kg体重、約10ng〜約0.1マイクログラム/kg体重、約0.1マイクログラム〜約1マイクログラム/kg体重、約20ng〜約100ng/kg体重、約0.001mg〜約100mg/kg体重、約0.01mg〜約10mg/kg体重、または約0.1mg〜約1mg/kg体重の範囲であろう。一定の実施形態では、それぞれの本化合物の投薬量は、一般に、約0.001mg〜約0.01mg/kg体重、約0.01mg〜約0.1mg/kg体重、約0.1mg〜約1mg/kg体重、約1mg〜約10mg/kg体重、または約10mg〜約100mg/kg体重の範囲であろう。1つを超える抗コネキシン薬を使用する場合、各抗コネキシン薬の投薬量は、他と同一範囲である必要はない。例えば、一方の抗コネキシン薬の投薬量は約0.01mg〜約10mg/kg体重であり得、他方の抗コネキシン薬の用量は約0.1mg〜約1mg/kg体重であり得る。他の量は当業者に公知であり、容易に決定されるであろう。
【0159】
便宜上、抗コネキシン薬を、投与後少なくとも約0.5〜1時間、少なくとも約1〜2時間、少なくとも約2〜4時間、少なくとも約4〜6時間、少なくとも約6〜8時間、少なくとも約8〜10時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間、コネキシンタンパク質発現を下方制御するか、ギャップ結合形成またはコネクソン開口を調整するのに十分な量で投与する。
【0160】
本発明の組成物および方法における各抗コネキシン薬の投薬量を、適用する領域のサイズ、長さ、深さ、領域、または体積と関係した組成物濃度を参照することによって決定することもできる。例えば、一定の局所適用および他の適用(例えば、点滴注入)では、薬学的組成物の投与量を、適用領域の長さ、深さ、領域、または体積あたりの薬学的組成物の質量(例えば、マイクログラム)または濃度(例えば、μg/μl)に基づいて計算することができる。
【0161】
本明細書中に記載の薬学的組成物の調製に適切な創傷治癒に有用な薬剤を、当該分野で公知の方法を使用して調製および投与することができる(例えば、米国特許第7,098,190号、同第6,319,907号、同第6,331,298号、同第6,387,364号、同第6,455,569号、同第6,566,339号、同第6,696,433号、同第6,855,505号、同第6,900,181号、同第7,052,684号、および欧州特許第1100529B1号を参照のこと)。各抗コネキシン薬および創傷治癒に有用な薬剤の濃度は、他と同一範囲である必要はない。他の量は当業者に公知であり、容易に決定されるであろう。例えば、本明細書中に記載の種々の態様および実施形態による適切な組み合わせ投薬量および処方物を、発明の名称が「創傷治癒のためのPDGF、KGF、IGF、およびIGFBPの組み合わせ」であるLewisのUS6903078に記載の投与レジメンにしたがって投与することができる。
【0162】
最初および任意のその後の投薬量は、治療を受ける患者の年齢、体重、容態、疾患、創傷、障害、または生物学的状態に依存するであろう。創傷治癒薬に応じて、投薬量または投与プロトコールは変化し、投薬量は、選択した投与方法(例えば、局所投与または全身投与)にも依存するであろう。
【0163】
創傷治癒薬を、内部または外部に適用することができ、創傷を示す任意の組織に指向することができる。IGFの局所投与のために、Tarnowら,Scand J.Plast Reconstr Hand Surg.28:255−259(1994)に記載のように、例えば、酸化亜鉛形成を適用し、IGFの局所産生を誘導することができる。PDGFの有効用量は、局所に適用する場合、米国特許第4,861,757号に記載のように5ng/mm
2以上であり、PDGFのイソ型(例えば、PDGF−AA,PDGF−BB,またはPDGF−AB)では少なくとも1ng/mlの局所濃度であり、Lepistoら,Biochem Biophys Res.Comm 209:393−399(1995)に記載のように、線維芽細胞集団には約30ng/mlまでの局所濃度であると報告されている。PDGFを、約10μg/gm〜約500μg/gmのゲル、約20μg/gm〜約200μg/gm、および約30μg/gm〜約100μg/gmのゲル、任意選択的に約100μg/gmのゲルの濃度にてカルボキシメチルセルロースゲル処方物中で投与することができる。PDGFは、約3μg/ml溶液〜約300μg/ml投与溶液の範囲内で有効であった。
【0164】
Sotozonoら,Invest.Opthal.Vis.Science 36:1524−29(1995)に記載のように、約5μg/mlの濃度の約50μlのKGFは、上皮組織への局所適用による創傷治癒に有効であり得る。米国特許第4,861,757号に記載のように、PDGFと同時投与する場合のIGFの有効量は、少なくとも2.5ng/mm
2〜約5ng/mm
2の範囲であり、IGFに対するPDGFの重量比は、約1:10〜約25:1の範囲であり、IGFに対するPDGFの最も有効な重量比は約1:1〜約2:1である。Jyungら,Surgery 115:233−239(1994)に記載のように、IGFと組み合わせて投与されるIGFBPは、約1.5μgのリン酸化IGFBPを含む約5μgのIGFの用量レベルおよび約11:1のIGF:IGFBPモル比で創傷治癒を増加させることが示されている。
【0165】
ポリペプチド治療薬(例えば、PDGF、KGF、IGF、およびIGFBPポリペプチド)の投与について、投薬量は、約5μg〜約50μg/kg適用組織の範囲であり得、約50μg〜約5mg/kg、約100μg〜約500μg/kg組織、および約200〜約250μg/kgでもあり得る。ポリヌクレオチド治療薬について、例えば、遺伝子療法投与プロトコールでは、患者中のポリヌクレオチドの発現強度に応じて、組織ターゲティング投与のために、発現可能な構築物(PDGF、KGF、IGF、およびIGFBPコード配列が含まれる)を含むベクターを、遺伝子療法プロトコールにおける局所投与については約100ng〜約200mgのDNAの範囲で投与することができ、約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mgのDNAも投与することができ、遺伝子療法プロトコールにおける局所投与中に約5μgのDNA〜約500μgのDNAおよび約20μ〜約100μg、注射または投与あたり約250μgで投与することができる。したがって、作用方法ならびに形質転換および発現の効率などの要因は、DNA治療薬の投与の最終的効率に必要な投薬量を達成する検討材料である。より大きな組織領域にわたってより高い発現を望む場合、連続的投与プロトコールにおけるより大量のDNAもしくは同一の再投与量、または、例えば、創傷部位の異なる隣接部分または閉じた組織部分へのいくつかの投与は、正の治療結果を達成する必要があり得る。
【0166】
本明細書中に記載の薬学的組成物の調製に適切な治療薬およびギャップ結合修飾薬を、当該分野で公知の方法を使用して処方および投与することができる。最初および任意のその後の投薬量は、治療を受ける患者の年齢、体重、容態、および疾患、創傷、障害、または生物学的状態に依存するであろう。治療薬に応じて、投薬量または投与プロトコールは変化し、投薬量は、選択した投与方法(例えば、局所投与または全身投与)も依存するであろう。
【0167】
本明細書中に記載のように、組み合わせて投与した抗コネキシン薬または別の薬剤のいずれかの用量を、単独で投与した場合の投与量よりも低く調整することができる。
【0168】
いくつかの薬剤の組み合わせ使用により、任意の各薬剤の必要な投薬量を減少させることができる。これは、異なる薬剤の効果の開始および持続時間が相補的であり得るからである。好ましい実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬の組み合わせ使用により、相加効果、相乗効果、超相加効果が得られる。
【0169】
いくつかの場合、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬および/または1つまたは複数の創傷治癒に有用な薬剤および/または1つまたは複数のギャップ結合修飾薬の組み合わせにより、相加効果が得られる。他の場合、組み合わせにより、相加効果を超える効果を得ることができる。かかる効果を、本明細書中で、「超相加」効果といい、この効果は、相乗的または増強的相互作用に起因し得る。
【0170】
用語「創傷治癒の超相加的促進」は、抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬の組み合わせの投与によって得られた創傷治癒が、任意の単独の薬剤の個別の投与によって得られた創傷治癒の和よりも統計的に有意に高いことを意味するためにいう。抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬のどの組み合わせ投与によるのかに無関係に、本明細書中に記載され、そして/または当業者に公知の種々の統計的方法によって決定することができる各化合物の予想される相加価値よりも「統計的に有意に高い」。用語「相乗的」は、抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬が共に創傷治癒を促進するか、線維症および瘢痕形成を減少させる能力を有する超相加阻害型をいう。用語「増強的」は、1つの抗コネキシン薬または1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬によって創傷治癒を促進する能力が増加する超相加効果型をいう。
【0171】
一般に、増強を、組み合わせ治療によって治療群における各治療によって得られる平均創傷治癒増加の和と比較した場合に統計的に有意に超相加的である治療群において平均創傷治癒が増加するかどうかを決定することによって評価することができる。平均創傷治癒の増加を、コントロール群と治療群との間の平均創傷治癒の相違として計算することができる。創傷治癒の断片的増加「断片的影響(fraction affected)」(Fa)を、治療群の平均創傷治癒増加をコントロール群の平均創傷治癒で割ることによって計算することができる。統計的に有意な増強についての試験には、各治療群のFaの計算が必要である。組み合わせ治療についての予想される相加的Faを、組み合わせのいずれかの要素を投与した群由来の平均Faの和と解釈することができる。例えば、両側1標本t検定を使用して、試験によって得た結果がp値によって測定される偶然のみによる可能性を評価することができる。0.05未満のp値を、統計的に有意(すなわち、偶然のみに起因しそうにない)と見なす。したがって、組み合わせによって超相加効果が増強されると見なすためには組み合わせ治療群のFaが単一要素治療群の予想される相加的Faよりも統計的に有意に高くなければならない。
【0172】
相乗効果が組み合わせ治療に起因するかどうかを、中央値−効果/組み合わせ指数アイソボログラム法(median−effect/combination−index isobologram method)(Chou,T.,およびTalalay,P.(1984)Ad.Enzyme Reg.22:27−55)によって評価することができる。この方法では、抗コネキシン薬のみ、1つまたは複数の創傷治癒に有用な薬剤のみ、および固定されたモル比での2つの組み合わせの中央値−効果プロットから誘導したパラメータに基づいて、異なる用量−効果レベルについて組み合わせ指数(CI)を計算する。& ltのCI値1は相乗効果を示し、CI−1は相加効果を示し、CP1は拮抗効果を示す。この分析を、コンピュータソフトウェアツール(CalcuSyn、用量効果分析のためのWindows(登録商標)ソフトウェア)(Biosoft(D,Cambridge UK)を使用して行うことができる。
【0173】
組み合わせ治療で超相加効果があるかどうかを分析するための当該分野で公知であるかその後に開発される任意の方法を、1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬と組み合わせて使用するのに適切な抗コネキシン薬のスクリーニングでの使用について考慮する。
【0174】
別の好ましい実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬の組み合わせ使用により、薬物を単独で投与した場合の有効用量と比較して任意のかかる薬剤の有効用量が減少する。一定の実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬と組み合わせて使用した場合の薬剤の有効用量は、単独で使用した場合の薬剤の用量の約1/15〜約1/2、約1/10〜約1/3、約1/8〜約1/6、約1/5、約1/4、約1/3、または約1/2である。
【0175】
別の好ましい実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬の組み合わせ使用により、薬剤を単独で投与した場合の頻度と比較して、薬剤の投与頻度が減少する。したがって、これらの組み合わせにより、所望の治療目的を達成するのに以前よりも低い用量および/または少ない頻度を利用可能である。
【0176】
用量を、単回または分割して投与することができる。用量を1回投与するか、適用を繰り返すことができる。
【0177】
1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を、同一または異なる経路によって投与することができる。本発明の種々の薬剤を、治療過程の異なる時期に個別に投与することができるか、分割したか単回の組み合わせ形態で同時に投与することができる。
【0178】
本発明の1つの態様では、抗コネキシン薬を第1の組成物中で投与し、治療薬、創傷治癒薬および/またはギャップ結合修飾薬を、第2の組成物中で投与する。1つの実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬を含む第1の組成物を、1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を含む第2の組成物の前に投与する。1つの実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬を含む第1の組成物を、1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を含む第2の組成物の後に投与する。1つの実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬を含む第1の組成物を、1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を含む第2の組成物の前後に投与する。1つの実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬を含む第1の組成物を、1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を含む第2の組成物とほぼ同時に投与する。
【0179】
好ましくは、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を、局所投与(末梢または部位への直接投与)(固体支持体(包帯剤および他のマトリックスなど)および医学的処方物(ゲル、混合物、懸濁液、および軟膏など)を使用した局所投与が含まれるが、これらに限定されない)によって送達させる。1つの実施形態では、固体支持体は、生体適合性膜および治療部位への挿入物を含む。別の実施形態では、固体支持体は、包帯剤またはマトリックスを含む。本発明の1つの実施形態では、固体支持体は、持続放出固体支持体組成物であり得る。この組成物は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬が持続放出固体マトリックス(アルギン酸塩、コラーゲン、または合成生体吸収性ポリマーのマトリックスなど)に分散されている。好ましくは、固体支持体組成物は、滅菌されているか生物汚染度が低い。1つの実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬を含む洗浄液を使用することができる。
【0180】
処方物の1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬のある期間、いくつかの場合、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8、または約24時間、またはそれ以上にわたる送達は、より重篤な損傷または容態で特に有益であり得る。いくつかの場合、細胞喪失は、手順を実施する部位をはるかに超えて周辺細胞にまで拡大し得る。かかる喪失は、最初の手順の24時間以内に起こり得、ギャップ結合細胞−細胞連絡によって媒介される。したがって、例えば、コネキシン発現の下方制御またはコネクソン開口の遮断のための抗コネキシン薬は、細胞間の連絡またはコネキシン調節の場合には細胞外間隙への喪失を調整し、さらなる細胞喪失もしくは損傷または損傷の結果を最小にするであろう。
【0181】
送達期間は下方制御が誘導されるべき部位および所望の治療効果の両方に依存する一方で、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8、または約24時間、またはそれ以上の連続放出送達または持続放出送達を提供する。本発明によれば、特に連続放出投与または持続放出投与のための処方物の形態で、薬学的に許容可能なキャリアまたはビヒクルと共に処方物中に抗コネキシン薬および/または1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を含めることによってこれを行う。
【0182】
記載のように、1つまたは複数の本発明の薬剤を創傷形成の前、間、直後(例えば、創傷形成後約180日以内、約120日以内、約90日以内、約60日以内、または約30日以内であるが、好ましくは、約10日以内、約9日以内、約8日以内、約7日以内、約6日以内、約5日以内、約4日以内、約3日以内、または約2日以内またはそれ未満、最も好ましくは、約24時間以内、約12時間以内、約10時間以内、約9時間以内、約8時間以内、約7時間以内、約6時間以内、約5時間以内、約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、または約60分以内、約45分以内、約30分以内、約15分以内、約10分以内、約5分以内、約4分以内、約3分以内、約2分以内、約1分以内)に投与することができる。
【0183】
本明細書中に記載の投与経路および投薬量はガイドのみとして意図される。これは、医師が、任意の特定の患者および容態に最適な投与経路および投薬量を決定するからである。
【0184】
本明細書中で引用または記載されている疾患、障害、および/または容態を有するか、有する疑いがあるか、傾向があるか、リスクがある被験体の任意の治療方法は、本明細書中に記載の任意の用量、投薬形態、処方物、および/または組成物の投与を使用することができる。
包帯剤およびマトリックス
1つの態様では、1つまたは複数の抗コネキシン薬、1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を、包帯剤またはマトリックスの形態で提供する。一定の実施形態では、1つまたは複数の本発明の薬剤を、直接適用のための液体組成物、半固体組成物、または固体組成物の形態で提供するか、組成物を、包帯ガーゼまたはマトリックスなどの固体接触層の表面に適用するか組み込む。包帯組成物を、例えば、流動物またはゲルの形態で提供することができる。1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を、局所投与のための従来の薬学的賦形剤と組み合わせて提供することができる。適切なキャリアには、以下が含まれる:プルロニックゲル、ポロクサマーゲル、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびその混合物が含まれる)を含むヒドロゲル、ポリアクリル酸を含むヒドロゲル(Carbopols)。適切なキャリアには、局所薬学的調製物のためのクリーム/軟膏(例えば、セトマクロゴール乳化軟膏に基づいたクリーム)も含まれる。上記キャリアには、アルギン酸塩(増粘剤または刺激薬として)、防腐剤(ベンジルアルコールなど)、pHを調節するための緩衝液(リン酸水素二ナトリウム/リン酸二水素ナトリウムなど)、浸透圧を調整するための薬剤(塩化ナトリウムなど)、および安定剤(EDTAなど)が含まれ得る。
【0185】
適切な包帯剤またはマトリックスには、例えば、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬と共に以下が含まれ得る:
1)吸収剤:適切な吸収剤には、高吸収性繊維層(例えば、セルロース、綿、またはレーヨンなど)と組み合わせた半接着性または非接着性の層を供与することができる吸収性包帯剤が含まれ得る。あるいは、吸収剤を、一次または二次包帯剤として使用することができる。
【0186】
2)アルギン酸塩:適切なアルギン酸塩には、例えば、天然の多糖類繊維または海草由来のキセロゲルから構成される不織の非接着性パッドおよびリボンが含まれる。適切なアルギン酸包帯剤は、例えば、滲出液との接触の際のイオン交換過程によって湿性ゲル(moist gel)を形成することができる。一定の実施形態では、アルギン酸塩包帯剤を、軟らか且つ快適で、包装しやすく、不規則な形状の領域を包み込むか適用するようにデザインする。一定の実施形態では、アルギン酸塩包帯剤を、第2の包帯剤と共に使用することができる。
【0187】
3)抗菌薬包帯剤:適切な抗菌薬包帯剤には、例えば、必要に応じて、感染に対する有効性を維持するために生体活性剤(例えば、銀およびポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)など)の送達を容易にすることができる包帯剤が含まれ得る。一定の実施形態では、適切な抗菌包帯剤は、スポンジ、含浸織布ガーゼ、フィルム包帯剤、吸収物質、アイランドドレッシング(island dressing)、ナイロン繊維、非接着性バリア、または材料の組み合わせとして利用することができる。
【0188】
4)生体物および生合成物:適切な生体包帯剤または合成包帯剤には、例えば、自然源由来のゲル、溶液、または半透性シートが含まれ得る。一定の実施形態では、ゲルまたは溶液を治療部位に適用し、バリアの保護のために包帯剤で保護する。別の実施形態では、膜として作用し、1回の適用後に適所に留まることができるシートをin situで配置する。
【0189】
5)コラーゲン:適切なコラーゲン包帯剤には、例えば、ウシ、ブタ、またはトリ供給源または他の天然供給源もしくはドナー由来のゲル、パッド、粒子、ペースト、粉末、シート、または溶液が含まれ得る。一定の実施形態では、コラーゲン包帯剤は、治療部位の滲出液と相互作用してゲルを形成することができる。一定の実施形態では、コラーゲン包帯剤を、二次包帯剤と組み合わせて使用することができる。
【0190】
6)複合物:適切な複合物包帯剤には、物理的に個別の成分を1つの生成物に組み合わせて複数の機能(例えば、細菌バリア、吸収、および接着など)を提供する包帯剤が含まれ得る。一定の実施形態では、複合物包帯剤は、例えば、多層膜から構成され、半接着または非接着パットが組み込まれている。一定の実施形態では、複合物には、例えば、不織布テープまたは透明フィルムの接着性の縁も含まれ得る。一定の他の実施形態では、複合物包帯剤は、例えば、一次または二次包帯剤として機能することができ、さらに別の実施形態では、包帯剤を、局所薬学的組成物と組み合わせて使用することができる。
【0191】
7)接触層:適切な接触層包帯剤には、例えば、治療部位に適用した他の薬剤または包帯剤との直接的接触から組織を防御するための領域上に配置した薄い非接着性のシートが含まれ得る。一定の実施形態では、接触層を治療部位のその領域の形状になじむ配置することができ、接触層は被せた二次包帯剤によって吸収されるように滲出液を通過することが可能な多孔質である。さらに別の実施形態では、接触層包帯剤を、局所薬学的組成物と組み合わせて使用することができる。
【0192】
8)弾性包帯:適切な弾性包帯には、例えば、伸縮して体輪郭になじむ包帯剤が含まれ得る。一定の実施形態では、繊維組成物には、例えば、綿、ポリエステル、レーヨン、またはナイロンが含まれる。一定の他の実施形態では、弾性包帯は、例えば、圧力をかけて被覆物を適所に保持するか治療部位の衝撃を和らげるための第2の層または包帯剤としての吸収作用を提供することができる。
【0193】
9)フォーム:適切なフォーム包帯剤には、例えば、流動物を保持することができる小さな開放気泡を有する発泡ポリマー溶液(ポリウレタンが含まれる)のシートおよび他の形状が含まれ得る。例示的なフォームを、例えば、他の材料と組み合わせて含浸または層状にすることができる。一定の実施形態では、吸収力を、フォームの厚さおよび組成に基づいて調整することができる。一定の他の実施形態では、治療部位と接触する領域は、容易に除去されるように非接着性を示し得る。さらに別の実施形態では、フォームを、抗感染バリアとしての機能を果たすことができる接着性の縁および/または透明フィルムコーティングと組み合わせて使用することができる。
【0194】
10)ガーゼおよび不織包帯剤:適切なガーゼ包帯剤および織物の包帯剤には、例えば、種々の吸収度を有する乾燥した織物のスポンジまたは不織スポンジおよびラップが含まれる。例示的な繊維組成物には、例えば、綿、ポリエステル、またはレーヨンが含まれ得る。一定の実施形態では、ガーゼおよび不織包帯剤は、滅菌または非滅菌で大量に利用可能であり、接着性の縁を有するか有さない。例示的なガーゼ包帯剤および織物の包帯剤を、種々の治療部位の洗浄、包装、および被覆のために使用することができる。
【0195】
11)ハイドロコロイド:適切なハイドロコロイド包帯剤には、例えば、ゼラチン、ペクチン、またはカルボキシメチルセルロースから構成されるウェハー、粉末、またはペーストが含まれ得る。一定の実施形態では、ウェハーは、自己接着性を示し、接着性の縁を用いるか用いないで利用可能であり、広範な種々の形状およびサイズを有する。例示的なハイドロコロイドは、輪郭形成(contouring)を必要とする領域上で有用である。一定の実施形態では、粉末状およびペースト状のハイドロコロイドを、二次包帯剤と組み合わせて使用することができる。
【0196】
12)ヒドロゲル(無定形):適切な無定形ヒドロゲル包帯剤には、例えば、水を供与して湿性治癒環境を保持し、そして/または治療部位を再水和するようにデザインされた形状をもたない水、ポリマー、および他の成分の処方物が含まれ得る。一定の実施形態では、ヒドロゲルを、二次包帯剤被覆物と組み合わせて使用することができる。
【0197】
13)ヒドロゲル:含浸包帯剤:適切な含浸ヒドロゲル包帯剤には、例えば、無定形ヒドロゲルで飽和したガーゼおよび不織スポンジ、ロープ、およびストリップが含まれ得る。無定形ヒドロゲルには、例えば、乾燥治療部位に水分を供与して湿性治癒環境を保持するようにデザインされた形状をもたない水、ポリマー、および他の成分の処方物が含まれ得る。
【0198】
14)ヒドロゲルシート:適切なヒドロゲルシートには、例えば、水に不溶性を示し、膨潤によって水溶液と相互作用する架橋親水性ポリマーの三次元ネットワークが含まれ得る。例示的ヒドロゲルは、適合性および浸透性が高く、その組成に応じて、種々の量の排液を吸収することができる。一定の実施形態では、ヒドロゲルは、治療部位に非接着性を示すか、容易に除去されるように処理されている。
【0199】
15)含浸包帯剤:適切な含浸包帯剤には、例えば、溶液、乳濁液、オイル、ゲル、またはいくつかの他の薬学的に活性な化合物またはキャリア剤(例えば、生理食塩水、オイル、亜鉛塩、ペトロラタム、キセロフォーム(xeroform)、およびスカーレットレッド、ならびに本明細書中に記載の化合物が含まれる)で飽和したガーゼ、不織スポンジ、ロープ、およびストリップが含まれ得る。
【0200】
16)シリコンゲルシート:適切なシリコンゲルシート包帯剤には、例えば、メッシュまたは織物で補強したかこれらに結合した架橋ポリマーから構成されるソフトカバーが含まれ得る。
【0201】
17)溶液:適切な液体包帯剤には、例えば、マルチプロテイン材料と細胞外基質中で見出される他の要素との混合物が含まれ得る。一定の実施形態では、例示的な溶液を、デブリードマンおよび洗浄後に治療部位に適用し、次いで、吸収性包帯剤または非接着性パッドで覆うことができる。
【0202】
18)透明フィルム:適切な透明フィルム包帯剤には、片方が接着剤でコーティングされた種々の厚さの高分子膜が含まれ得る。一定の実施形態では、透明フィルムは、液体、水、および細菌を透過しないが、水蒸気および大気ガスを透過する。一定の実施形態では、透明性により、治療部位を見ることができる。
【0203】
19)充填剤:適切な充填剤包帯剤には、例えば、泡、クリーム、フォーム、ゲル、軟膏、パッド、ペースト、ピロー(pillow)、粉末、ストランド(strand)、または他の処方物が含まれ得る。一定の実施形態では、充填剤は、非接着性を示し、徐放性抗菌薬を含むことができる。例示的充填剤は、湿性環境の維持、滲出液の管理、および、例えば、填入が必要な部分的および全体が厚い創傷、感染創、排液性創傷、および深い創傷の治療に有用であり得る。
組み合わせ創傷治療
一般的側面
本発明は、組成物が治療有効量の1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を含む、薬学的組成物およびその使用方法に関する。組成物は、創傷治癒の増強または促進で有用であり、かかる創傷には、従来の創傷治療または創傷治癒促進療法に対して治癒が遅いか難治性であり得る創傷が含まれる。
【0204】
同様に、他の組織損傷(特に、創傷)の例では、本発明の方法および組成物は、創傷治癒過程の促進、腫脹および炎症の軽減、および瘢痕形成の最小化で有効である。外部の外傷(external trauma)(火傷を含む)、内部の外傷(internal trauma)、または外科的介入、および慢性創傷の結果のいずれかに関係なく、処方物は、創傷治療で明らかに有益である。
組成物
したがって、1つの態様では、本発明は、治療上の処置で用いる組成物を提供する。この組成物は、以下を含む:少なくとも1つの抗コネキシン薬および少なくとも1つの治療薬、および/または創傷治癒薬および/またはギャップ結合修飾薬。好ましい実施形態では、組成物は、薬学的に許容可能なキャリアまたはビヒクルをさらに含む。
【0205】
1つの好ましい形態では、組成物は、1つのコネキシンタンパク質のみのmRNAに対する1つまたは複数のアンチセンスポリヌクレオチドを含む。別の好ましい形態では、組成物は、1つまたは複数の抗コネキシンペプチドまたはペプチド模倣物を含む。最も好ましくは、このコネキシンタンパク質はコネキシン43である。
【0206】
組成物は、1つを超えるコネキシンタンパク質に対するポリヌクレオチドまたは抗コネキシンペプチドを含むことができる。好ましくは、ポリヌクレオチドまたは抗コネキシンペプチドが指向するコネキシンタンパク質の1つは、コネキシン43である。ポリヌクレオチドまたは抗コネキシンペプチドが指向する他のコネキシンには、例えば、コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、44.6、45、および46が含まれ得る。種々のコネキシンに指向する適切な例示的ポリヌクレオチド(およびODN)を、表1に示す。適切な抗コネキシンペプチドも、本明細書中に提供する。
【0207】
例示的組み合わせ
本発明の組成物および方法の抗コネキシン薬と創傷治癒薬との例示的組み合わせには、以下が含まれる。
【0208】
(a)以下の抗コネキシン薬の1つ:
コネキシン43アンチセンスポリヌクレオチド;
コネキシン43アンチセンスODN;
配列番号2を含むポリヌクレオチド;
配列番号2を含むODN;
配列番号1を含むポリヌクレオチド;
配列番号1を含むODN;
コネキシン43RNAiポリヌクレオチド;または
コネキシン43siRNAポリヌクレオチド;および
(b)以下の創傷治癒に有用な薬剤の1つ:
アクチビン;
FGF−2、すなわち線維芽細胞成長因子2;
FGF−1、すなわち線維芽細胞成長因子−1;
VEGF、すなわち血管内皮成長因子;
GM−SF、すなわち顆粒球単球刺激因子;
血小板因子4;
EGF、すなわち上皮成長因子;
TGF、すなわちトランスフォーミング成長因子β(例えば、TGF−1、2、3);
TNFα、すなわち腫瘍壊死因子α;
IL−1 インターロイキン−1;
IL−4 インターロイキン−4;
IL−7 インターロイキン−7;
IL−8 インターロイキン−8;
IL−10 インターロイキン−10;
GMCSF、すなわち顆粒球マクロファージ/コロニー刺激因子;
CTGF、すなわち結合組織成長因子;
サイモシンβ4;
IGF−1、すなわちインスリン様成長因子−1;
PDGF、すなわち血小板由来成長因子;
PDGF−BB、すなわち血小板由来成長因子BB;
マンノース−6−ホスフェート;
(aFGF)酸性線維芽細胞成長因子
(bFGF)塩基性線維芽細胞成長因子
(HB−EGF)ヘパリン結合上皮成長因子
(hGH)ヒト成長ホルモン
(KGF)角化細胞成長因子
(KGF−2)角化細胞成長因子−2
(MMP)マトリックスメタロプロテイナーゼ
(PDECGF)血小板由来内皮細胞成長因子
(PDEGF)血小板由来上皮成長因子
(rbbFGF)組換えウシ塩基性線維芽細胞成長因子
(rhbFGF)組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子
(rhPDGF−BB)組換えヒト血小板由来成長因子(BB−二量体)
(TGF−α)トランスフォーミング成長因子−α
(TGF−β)トランスフォーミング成長因子−β
(TIMP)マトリックスメタロプロテイナーゼの組織インヒビター
(VEGF)血管内皮成長因子
(IGFBP)インスリン様成長因子結合タンパク質(例えば、IGFBP−2、IGFBP−3、IGFBP−4);および
(FGF)、すなわち線維芽細胞成長因子(例えば、FGF−1、FGF−2)。
【0209】
この組み合わせリストは、事実上例示である。本明細書中に記載の抗コネキシン薬と治療薬との他の組み合わせも含まれる。本明細書中に記載の創傷治癒に有用な抗コネキシン薬と創傷治癒に有用な薬剤との他の組み合わせも含まれる。本明細書中に記載の抗コネキシン薬とギャップ結合修飾薬との他の組み合わせも含まれる。
キット、薬物、および製品
任意選択的に、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の創傷治癒に有用な薬剤、治療薬、および/またはギャップ結合修飾薬(例えば、ペプチド、タンパク質分解インヒビター、細胞外基質成分、フラグメントおよびペプチド、ステロイド、サイトカイン、酸素ドナー、またはビタミン)を、薬物製造で使用することもできる。
【0210】
1つの態様では、本発明は、1つまたは複数の記載の組成物および処方物を含むキットを提供する。例えば、キットは、有効量の1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を含む組成物を含むことができる。
【0211】
本明細書中に記載の組成物または処方物および被験体治療のための使用指示書を含む容器を含む製品も提供する。例えば、別の態様では、本発明は、治療有効量の創傷治癒の促進または改善のための1つまたは複数の薬学的に許容可能な抗コネキシン薬および1つまたは複数の薬学的に許容可能な治療薬ならびに使用指示書(被験体治療のための使用が含まれる)を含む容器を含む製品を含む。
治療
本発明の組成物および処方物を、創傷治癒を促進するか、腫脹、炎症、および/または瘢痕形成を軽減するための組成物と併せるか組み合わせて使用することができる。本発明の組成物および処方物を、急性創傷または慢性創傷の治癒を促進および/または改善するための組成物と併せるか組み合わせて使用することもできる。1つの態様では、創傷は、手術または外傷の結果であろう。
【0212】
創傷治療のための1つまたは複数の抗コネキシン薬と組み合わせて使用される適切な治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬を、本明細書中に記載する。1つの態様では、抗コネキシン薬を、創傷治癒に有用な薬剤(ケモカイン、サイトカイン、成長因子、またはその組み合わせなど)と組み合わせて投与することができる。1つの実施形態では、ケモカインは、ケモカインリガンド2(Ccl2)アンタゴニストである。別の実施形態では、サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)アンタゴニストである。別の実施形態では、サイトカインはIL−10である。1つの実施形態では、成長因子はTGF−β−3である。別の実施形態によれば、創傷治癒薬はサイモシンβ4である。さらに別の実施形態では、抗コネキシン薬を、創傷治癒の促進のためにヒドロキシプロリンおよびコラーゲン1α1型合成を増加させるための1つまたは複数のIGFBP−2、IGF−7、IGF−1、またはそのモジュレーターと組み合わせて投与することができる。
【0213】
創傷治癒に有用な薬剤、治療薬、またはギャップ結合修飾薬と組み合わせた使用に適切な抗コネキシン薬は、本明細書中に記載されており、例えば、ポリヌクレオチド(ODNなど)、遮断薬または他のコネキシン結合薬(例えば、受容体模倣ペプチドなど);活性を除去するための吸収体(absorber)(例えば、合成的に発現した受容体分子または模倣物など);または抗体;ならびに、例えば、ギャップ結合の閉鎖/開口を調整するのに有用な他の薬剤(ギャップ結合をリン酸化または脱リン酸化する化合物など)が含まれ得る。
【0214】
1つの態様では、本発明は、治療有効量の1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬または治癒の促進または改善に有用な化合物を投与する工程を含む、被験体の創傷治癒を促進または改善する方法に関する。一定の実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬の投与は、炎症の軽減、創傷への好中球および/またはマクロファージ浸潤の減少、肉芽組織沈積の減少、創傷の閉鎖および治癒を加速させるための細胞移動の促進、上皮成長、組織の操作、および火傷表面の回復、またはその任意の組み合わせに有効である。一定の実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬の投与は、瘢痕形成の軽減または防止に有効である。瘢痕形成を促進または改善する方法では、抗コネキシン薬を、好ましくは、TGF−β−3またはIL−10またはマンノース−6−ホスフェートの投与と組み合わせるか、投与後、または投与前に投与する。
【0215】
1つの態様では、本発明は、上皮基底細胞の分裂および成長を調節するのに有効な量の1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を投与する工程を含む、被験体の創傷治癒を促進または改善する方法に関する。1つの実施形態では、抗コネキシン薬は、上皮基底細胞の分裂および成長を調節するのに有効なコネキシンアンチセンスポリヌクレオチドである。1つの実施形態では、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシン26アンチセンスポリヌクレオチド、コネキシン43アンチセンスポリヌクレオチド、またはその混合物である。
【0216】
1つの態様では、本発明は、外層ケラチン分泌の調節に有効な量の1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を投与する工程を含む、創傷治癒を促進または改善する方法に関する。1つの実施形態では、抗コネキシン薬は、外層ケラチン分泌の調節に有効なコネキシンアンチセンスポリヌクレオチドである。1つの実施形態では、コネキシンアンチセンスポリヌクレオチドは、コネキシン43アンチセンスポリヌクレオチド、31.1アンチセンスポリヌクレオチド、またはその混合物である。
【0217】
なおさらなる態様では、本発明は、創傷部位および創傷部位のすぐ隣の1つまたは複数のコネキシンタンパク質の発現を下方制御するために1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を創傷に投与する工程を含む、創傷(例えば、外科的創傷(例えば、美容外科および他の手術など))を罹患した患者の瘢痕形成の減少および/または瘢痕外観の改善方法を提供する。また、創傷は、外傷または手術の結果であり得、処方物を、外科的修復および/またはその閉鎖の直前に創傷に適用することができる。本明細書中に記載のように、瘢痕の形成または外観を軽減または改善するための方法では、抗コネキシン薬を、好ましくは、適量のTGF−β−3またはIL−10またはマンノース−6−ホスフェートの投与と組み合わせるか、投与後、または投与前に投与する。
【0218】
1つの態様では、本発明は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬を投与する工程を含む、被験体の組織損傷を軽減、防止、または改善する方法に関する。
【0219】
さらなる態様では、本発明は、上記定義の抗コネキシン組成物または処方物および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬を創傷または組織またはその付近に投与する工程を含む、創傷および/または物理的外傷を受けた組織の治療の一部として腫脹および/または炎症を軽減する方法に関する。1つの実施形態では、創傷は、組織(神経組織(脳、脊髄、または視神経など)、皮膚、または眼が含まれる)に対する物理的外傷の結果である。
【0220】
1つの態様では、本発明は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬の持続的投与に関する。1つの実施形態では、抗コネキシン薬を、少なくとも約1〜24時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間投与する。1つの実施形態では、コネキシン発現を、長期間にわたって下方制御する。好ましくは、コネキシン43発現を、長期間下方制御する。便宜上、コネキシン43発現を、少なくとも約2、4、6、8、10、12、または24時間下方制御する。1つの実施形態によれば、創傷は慢性創傷である。適切な被験体には、糖尿病被験体が含まれる。
【0221】
1つの態様では、本発明は、有効量の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬を創傷に持続投与する工程を含む、創傷を有する被験体の治療方法を提供する。さらなる態様では、本発明は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬を創傷に持続投与する工程を含む、被験体の創傷治癒を促進または改善する方法を提供する。さらなる態様では、本発明は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬を創傷に持続投与する工程を含む、被験体の腫脹および/または炎症を軽減、防止、または改善する方法を提供する。さらなる態様では、本発明は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬を創傷に持続投与する工程を含む、被験体の瘢痕形成を軽減、防止、または改善する方法を提供する。
【0222】
別のさらなる態様によれば、本発明は、創傷領域の再上皮形成速度の増加に有効な量の本発明の抗コネキシン組成物または処方物および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬を創傷に持続投与する工程を含む、創傷を有する被験体における創傷治癒を促進または改善する方法を提供する。1つの実施形態では、本方法は、コネキシン43アンチセンスポリヌクレオチドおよび/またはコネキシン31.1アンチセンスポリヌクレオチドおよび1つまたは複数の治療薬、創傷治癒薬および/またはギャップ結合修飾薬の持続投与を含む。1つの実施形態では、組成物を、徐放性処方物中で投与する。別の実施形態では、組成物を、長期間投与する。便宜上、組成物は、少なくとも約24時間で、コネキシン43および/または31.1のレベルまたは活性(例えば、ヘミチャネルまたはギャップ結合活性)を減少させるのに有効である。1つの実施形態によれば、創傷は慢性創傷である。治療することができる被験体には、糖尿病被験体が含まれる。
【0223】
さらに別の態様では、本発明は、上皮基底細胞の分裂および成長の調節および/または外層ケラチン分泌の調節に有効な量の本発明の抗コネキシン組成物または処方物および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤、および/またはギャップ結合修飾薬を創傷に持続投与する工程を含む、創傷を有する被験体における創傷治癒を促進または改善する方法を提供する。1つの実施形態では、組成物は、上皮基底細胞の分裂または成長の調節に有効なコネキシンアンチセンスポリヌクレオチド(好ましくは、コネキシン26アンチセンスポリヌクレオチド、コネキシン43アンチセンスポリヌクレオチド、またはその混合物)を含む。1つの実施形態では、組成物は、外層角化の調節に有効なコネキシンアンチセンスポリヌクレオチド(好ましくは、コネキシン31.1アンチセンスポリヌクレオチド)を含む。1つの実施形態では、組成物を徐放性処方物中で投与する。別の実施形態では、組成物を、長期間投与する。便宜上、組成物は、少なくとも約24時間で、コネキシン43、26、および/または31.1のレベルを減少させるのに有効である。1つの実施形態によれば、創傷は慢性創傷である。治療することができる被験体には、糖尿病被験体が含まれる。
【0224】
別の態様では、慢性創傷を有する被験体の治療方法を提供する。かかる方法は、1つまたは複数の治療薬、創傷治癒薬および/またはギャップ結合修飾薬を組み合わせて、コネキシンまたはコネキシンヘミチャネルの発現、形成、または活性を阻害することができる抗コネキシン薬を被験体に投与する工程を含む。
【0225】
1つの態様では、本発明は、1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬と組み合わせて、慢性創傷または慢性創傷に関連する組織に投与した有効量の抗コネキシン薬を必要とする被験体に投与する工程を含む、慢性創傷を治療または予防する方法を提供する。別の実施形態では、慢性創傷は慢性皮膚創傷であり、本発明の組成物を、被験体の皮膚または皮膚に関連する組織に有効な期間投与する。治療に適切な慢性皮膚創傷は、例えば、圧迫潰瘍、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、血管炎性潰瘍、および混合潰瘍からなる群から選択され得る。慢性創傷は、完全または部分的な動脈閉塞に起因する潰瘍形成を含む動脈性潰瘍であり得る。慢性創傷は、静脈弁の機能不全および関連する脈管疾患に起因する潰瘍形成を含む静脈鬱血性潰瘍であり得る。慢性創傷は外傷誘導性潰瘍であり得る。
【0226】
1つの実施形態では、抗コネキシン薬を、成長因子と組み合わせて投与する。好ましくは、成長因子は、PDGF、EGF、またはFGF(例えば、FGF−2)である。
【0227】
固定した組み合わせとして投与しない場合、好ましい方法は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の成長因子の連続投与を含む。好ましくは、薬剤を、互いに少なくとも約30分以内に連続投与する。薬剤を、互いに約1時間以内、互いに約1日〜約1週間以内、その他の適切と見なされる時間内に投与することもできる。好ましくは、抗コネキシン薬を最初に投与する。好ましくは、1つまたは複数の抗コネキシン薬を使用する場合、抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣物(例えば、ヘミチャネル開口を遮断または減少させることができる抗コネキシン薬)を、例えば、コネキシンタンパク質発現の下方制御によってコネキシン発現またはヘミチャネルもしくはギャップ結合の形成を遮断または減少させる抗コネキシン薬の投与前に投与する。好ましくは、抗コネキシン薬は、抗コネキシン43薬である。
【0228】
創傷(慢性創傷が含まれる)の治療のための別の実施形態では、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の成長因子のいずれかまたは両方を、薬剤を単独で投与する場合(すなわち、薬剤を、物理的または創傷治療過程のいずれかで組み合わせて投与しない場合)に使用するよりも少ない量または用量で準備する。薬剤のかかるより少ない投与量は、典型的には、単独投与の場合の約1/20〜約1/10の量であり、単独投与の場合の約1/8の量、約1/6の量、約1/5の量、約1/4の量、約1/3の量、および約1/2の量であり得る。
【0229】
1つの実施形態では、慢性創傷を治療または予防する方法は、1つまたは複数の抗コネキシン薬および1つまたは複数の治療薬、創傷治癒に有用な薬剤および/またはギャップ結合修飾薬の持続投与を含む。1つの実施形態では、組成物を、徐放性処方物中で投与する。別の実施形態では、組成物を、長期間投与する。便宜上、組成物は、少なくとも約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約4〜8時間、約12時間、約18時間、または約24時間、コネキシン43レベルを減少させるか、コネキシン43ヘミチャネル開口を遮断または減少するに有用である。治療することができる被験体には、糖尿病被験体および他の潰瘍(静脈性潰瘍および本明細書中に記載および当該分野で公知の他の潰瘍が含まれる)の患者が含まれる。
【0230】
以下の実施例は、例示のみを目的とし、本発明の範囲を制限しないと理解される。
【実施例】
【0231】
(実施例1)
創傷治癒を、8週齢マウスの直径1.6mmの全層切開創傷モデルを使用して評価した。その後に、遺伝子発現のRT−PCR分析を使用して免疫組織化学および組織学を行った。
【0232】
皮膚創傷は、再上皮形成作用、結合組織の収縮、その後の創傷肉芽組織中に密度の高い血管網が得られる血管形成応答の組み合わせによって修復される(Grose,R.およびWerner,S.(2004)。創傷治癒は、トランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスで研究されている(Mol Biotechnol 28,147−66.)。強い炎症反応は、任意の組織損傷の直後に開始される。これにより、微生物感染からの創傷の防御および創傷部位の宿主細胞に作用する多種の生体活性物質の産生の両方が起こる。種々の炎症細胞は創傷に移動し、いくつかの異なる機能を遂行する。好中球は創傷に最も早く動員する白血球であり、その主な役割は、宿主を微生物による侵入から防御する。この防御は、有毒な遊離酸素ラジカルの放出および炎症誘発性サイトカインの分泌によって行われる。その後、マクロファージは、創傷部位の使用済みの好中球、他の細胞、および細胞外基質のデブリを一掃する。マクロファージはまた、サイトカイン、ケモカイン、および成長因子の主な産生者であり、これらは、その後に細胞および組織の修復応答への移動を指示するであろう。炎症および組織修復過程を調節する多数のシグナルが明確に拡散して長距離にわたって操作する一方で、細胞接着分子を介した局所細胞−細胞連絡および細胞−細胞連結も有意な役割を果たすようである。
【0233】
有意に調節する役割を果たすことができる細胞間の1つの連結はギャップ結合であり、これは、コネキシンファミリー由来のタンパク質から形成された六量体チャネルである。ギャップ結合は、体内のほとんど全ての細胞によって発現されることが報告されており(Wei,C.J.,Xu,X.およびLo,C.W.(2004).Annu Rev Cell Dev Biol 20,811−38)、細胞移動の変化を媒介することが報告されている。
【0234】
上皮創傷の縁におけるコネキシン43(Cx43)タンパク質レベルは、24〜48時間にわたって自然に減少すると報告されている。アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(asODN)の皮膚創傷および火傷部位への適用によるCx43タンパク質レベルの下方制御は、コントロールセンスオリゴデオキシヌクレオチド(sODN)処置創傷と比較して治癒が有意に加速されると報告されている(Qiu,C.,Coutinho,P.,Frank,S.,Franke,S.,Law,L.Y.,Martin,P.,Green,C.R.およびBecker,D.L.(2003).Targeting connexin 43 expression accelerates the rate of wound repair.Curr Biol 13,1697−703;Coutinho,P.,Qiu,C.,Frank,S.,Wang,C.M.,Brown,T.,Green,C.R.およびBecker,D.L.(2005).Limiting burn extension by transient inhibition of connexin 43 expression at the site of injury.Br J Plast Surg 58,658−67)。
【0235】
実験により、創傷部位でのCx43タンパク質の急速な下方制御によって角化細胞の増殖および移動が増大し、その速度で、線維芽細胞が創傷に移動し、コラーゲンマトリックスに貯蔵される。本発明者らは、好中球浸潤の減少ならびにケモカインリガンド2(Ccl2)およびサイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF−α)mRNAにおける付随する減少を示した。その後、本発明者らは、マクロファージ動員の減少も示し、これは、初期炎症反応の沈静化の結果であり得、次の創傷治癒過程に下流効果(downstream effect)をもたらすことが公知である。まとめると、これらの応答の修飾により、創傷治癒が有意に改善された。
創傷モデルおよびODN処置
雄8週齢ICRマウスを、以下の実験で使用した。全マウスを、University College Londonの環境制御されたクリーンルームにて特定の無病原体条件下で保持し、全実験をUK Home Office規則下で実施した。マウスを、ハロタン吸入によって麻酔した。4つの直径6mmの全層切開創傷を、6mm生検パンチ(Kai Industries)にて背側中線のいずれかの側面の毛を剃った背中に作製した。各創傷対に、氷上で冷却した50μlの1μM Cx43asODN(配列番号2)(Sigma−Genosys)を含む30%プルロニックF−127ゲル(Sigma−Aldrich)を一方に単回局所適用し、1μMセンスコントロールsODNの同一の適用を他方に行った。Cx43asODN適用により、2時間以内に送達部位のCx43タンパク質が有意にノックダウンする(Becker,D.L.,McGonnell,I.,Makarenkova,H.P.,Patel,K.,Tickle,C,Lorimer,J.およびGreen,C.R.(1999)。Roles for alpha 1 connexin in morphogenesis of chick embryos revealed using a novel antisense approach.Dev Genet 24,33−42;McGonnell,I.M.,Green,C.R.,Tickle,C.およびBecker,D.L.(2001)。Connexin 43 gap junction protein plays an essential role in morphogenesis of the embryonic chick face.Dev Dyn 222,420−38;Qiu,C.,Coutinho,P.,Frank,S.,Franke,S.,Law,L.Y.,Martin,P.,Green,C.R.およびBecker,D.L.(2003).Targeting connexin 43 expression accelerates the rate of wound repair.Curr Biol 13,1697−703)。各創傷領域を、表示の時間間隔にてデジタル撮影し、創傷領域を計算した。全創傷領域を、最初の創傷領域の比率として示した。いくつかの一連の実験では、創傷およびその周辺領域(痂皮および上皮の縁が含まれる)を、マウスを過剰量のクロロホルムで死亡させた後の表示の時間間隔で、8mm生検パンチ(Kai Industries)で採取した。各試験ポイントについて最小で8匹のマウスを使用した。
組織学および免疫染色
創傷組織を、PBSで緩衝化した4%ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン中に包埋した。切片(厚さ6μm)を、ヘマトキシリンおよびエオシン染色または免疫染色に供した。H&E中の肉芽組織領域の測定を、Improvision Openlab(商標)4.0.2ソフトウェア(Improvision)を使用して行った。免疫組織化学のために、脱パラフィン処理した切片を、内因性ペルオキシダーゼ遮断試薬(Dako Cytomation A/S)およびプロテイナーゼK(Dako Cytomation A/S)にて室温でそれぞれ20分間および6分間処理した。次いで、15%脱脂粉乳での室温で1時間のブロッキング後、これらをウサギ抗ミエロペルオキシダーゼ(MPO)ポリクローナル抗体(NeoMarkers)(200倍希釈)、ラット抗マウスF4/80 モノクローナル抗体(mAb)(Abcom Limited)(400倍希釈)、またはラット抗マウスCD31(血小板内皮細胞接着分子1、PECAM−1)mAb(PharMingen)もしくはウサギ抗マウスTGF−β1ポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology,Inc)(共に200倍希釈)と4℃で一晩インキュベートした。さらに、いくつかの切片を、ファロイジン−テトラメチルローダミンBイソチオシアナート(Sigma−Aldrich)(500倍希釈)と室温で1時間反応させた。抗体を、バックグラウンド減少成分(Dako Cytomation A/S)を含む抗体希釈物中で適切に希釈した。抗MPO抗体および抗TGF−β1抗体と反応させた切片を、製造者の指示書にしたがってEnVision+(商標)(Dako Cytomation A/S)で染色してシグナルを増強した。抗F4/80および抗CD31抗体と反応させた切片を、ビオチン化ウサギ抗ラット免疫グロブリン(Dako Cytomation A/S)(200倍希釈)と37℃で1時間インキュベートした。次いで、製造者の指示書にしたがってCatalyzed Signal Amplification System(登録商標)(Dako Cytomation A/S)を使用してシグナルを増強した。その後、メチルグリーン(Dako Cytomation A/S)およびその後のMPO、TGF−β1、F4/80、およびCD31染色または4’、6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)およびその後のファロイジン染色を使用して対比染色を行った。
【0236】
コネキシン43、血管、またはα平滑筋アクチンの免疫染色を、創傷のクリオスタット切片上で行った。切片をアセトン中にて4℃で5分間固定し、その後に45分間ブロッキングした。一次抗体中のインキュベーションを、以下の希釈倍率で1時間行った:ウサギ抗Cx43(Sigma)(3000倍);イソレクチンB_FITC(2000倍);フォンウィルブランド因子(ウサギDako)(400倍);抗α平滑筋アクチン(Sigma)(400倍)(室温)。切片を、PBS中で3×5分間洗浄し、その後に抗ウサギFITC二次抗体(Dako)(200倍)中にて室温で1時間インキュベートした。PBS中で3×5分間の洗浄し、いくつかの場合、核対比染色として1μMビス−ベンズイミド(Sigma)で最初に洗浄し、Citifluor(Citifluor,London,UK)中にマウントした。デジタル画像を直接比較するために、全パラメータを一定に保持した共焦点顕微鏡法によって切片を画像化した。
TUNEL染色
創傷組織を、PBSで緩衝化した4%ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン中に包埋し、切片にした。脱パラフィン処理した切片を、プロテイナーゼK(Dako Cytomation A/S)にて室温で5分間処理した。次いで、これらを、製造者の指示書にしたがってIn Situ細胞死検出キット(Roche)を使用して染色した。その後、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を使用して対比染色を行った。TUNEL染色切片を画像化し、3つの無作為な視野中(各創傷の2つの側面および中央(各視野は0.332mm
2であった))の肉芽組織中の陽性細胞を計数した。
5’−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)での標識による増殖細胞の検出
別の実験では、1、2、および7日目の採取の2時間前に、創傷マウスに1mlのBrdU(Sigma)を含むPBS溶液(1mg/ml)を腹腔内注射した。創傷組織を、PBSで緩衝化した4%ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン中に包埋した。脱パラフィン処理した切片(厚さ6μm)を、製造者の指示書にしたがってHistoMouse(商標)−Plusキット(ZYMED Laboratories,Inc)で処理して、バックグラウンドシグナルを減少させた。切片を、製造者の指示書にしたがってBrdU検出キット(BD Bioscience Pharmingen)で染色した。その後、メチルグリーン(Dako Cytomation A/S)を使用して対比染色を行った。
好中球,マクロファージ、線維芽細胞、BrdU陽性細胞、および血管形成の測定
処置盲検化された観察者は、0.332mm
2の3つの無作為な高倍率視野での創傷床(創傷形成していない皮膚、筋膜、再生表皮,および乾燥痂皮)中のMPO陽性好中球およびF4/80陽性マクロファージを計数した。免疫組織化学的に染色された各切片の創傷縁部および初期表皮(nascent epidermis)領域中のBrdU陽性細胞を、前に記載のように計数し、100μmの表皮あたりで示した(Mori,R.,Kondo,T.,Nishie,T.,Ohshima,T.およびAsano,M.(2004).Impairment of skin wound healing in beta−1,4−galactosyltransferase−deficient mice with reduced leukocyte recruitment.Am J Pathol 164,1303−14)。高倍率視野中の創傷縁部の線維芽細胞様細胞(紡錘形のファロイジン陽性細胞)の数も、計数した(各視野は0.332mm
2であった)。創傷後5、7、10、および14日目の内皮細胞のフォンウィルブランド因子蛍光染色を使用して新血管新生を追跡した。筋線維芽細胞を、抗α平滑筋アクチン染色によって同定した。両蛍光染色の定量のために、共焦点顕微鏡を使用して、測定点あたり最小で6匹の動物由来の類似の領域から1切片の画像を撮影した。比較できるように画像収集の全パラメータを一定に保持した。画像を標準的閾値で2値画像にし、ポジティブピクセルをImage J(NIH Image)を使用して計数した。
ヒドロキシプロリン分析
創傷領域のコラーゲン含有量を、ヒドロキシプロリン(HP)(コラーゲンの主成分)量の決定によって評価した。サンプルを、Halt(商標)プロテアーゼインヒビターカクテル(無EDTA)(PIERCE Biotechnology Inc.)を含む1mlのT−PER(登録商標)組織タンパク質抽出試薬(PIERCE Biotechnology Inc.)中で均一化し、15,000rpmにて4℃で20分間遠心分離してデブリを除去した。タンパク質濃度を、BCA(商標)タンパク質アッセイキット(PIERCE Biotechnology Inc.)を使用して測定し、HP量を、Sircol(商標)可溶性コラーゲンアッセイキット(Biocolor Ltd.)を使用して決定した。データを、各サンプルについてのHP量/総タンパク質(ng/μg)として示した。
細胞培養
Swiss3T3 線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清(Labtech)および1%ペニシリンストレプトマイシン溶液(Sigma,Poole)を補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Gibco)中にて、37℃の5%CO2インキュベーター中で成長させた。他で記載しない限り、細胞を、ほとんどの実験についてこの培地中で維持した。細胞を、トリプシン処理によって継代し、集密度約90%の6〜10継代目を使用した。細胞を、24ウェル皿(Nunc)中の13mmガラスカバースリップ上に、1ml培地を含むウェルあたり4〜5×10
5細胞をプレートした。細胞は、72時間後にコンフルエンシーに到達し、これを実験に使用した。
創傷形成による細胞移動アッセイ
線維芽細胞アッセイは、線維芽細胞のコンフルエントな単層中の「創傷」の形成を含んでいた。この広く使用されているin vitro技術は、in vivoでの移動細胞の挙動を模倣している(Lampugnani,M.G.(1999)Cell Migration into a wounded area in vitro.Methods Mol Biol 96:177−182)。微小電極をカバースリップを横切って引き、標準的な幅の損傷を作製することによって創傷形成を行った。37℃で5%CO2のインキュベーションチャンバーを備えた5倍の対物レンズを使用したZeiss倒立顕微鏡によって位相差画像を得た。カバースリップ縁部の規定領域の画像を創傷形成の直後に撮影し、同一領域のさらなる画像を4時間後(移動が明らか起こったことが認められた時間)に撮影した(
図7E、7F)。各コントロール群および処置群において最小限の8つのカバースリップを画像化した。移動を、Image Jソフトウェア(NIH)を使用して創傷領域の変化(ピクセル)を測定する画像分析によって定量した。
【0237】
線維芽細胞中のCx43発現をノックダウンするために、培地を、20μM asODNまたは20μMコントロールsODNのいずれかを含む無血清DMEMと置換した。これを2時間インキュベートし、その後に血清含有DMEMと置換した。次いで、上記のように創傷形成アッセイを行った。以前の実験では、Cx43タンパク質の有意なノックダウンを達成するのに2時間で十分であることが示されており(Qiu,C,Coutinho,P.,Frank,S.,Franke,S.,Law,L.Y.,Martin,P.,Green,CR.およびBecker,D.L.(2003).Targeting connexin 43 expression accelerates the rate of wound repair.Curr Biol 13,1697−703)、創傷移動アッセイ中はノックダウン過程が継続されている。
RNAの単離およびリアルタイムPCRを使用した定量的遺伝子発現レベル
製造者の指示書にしたがってTRIzol試薬(Invitrogen)を使用して、総RNAを皮膚創傷サンプルから抽出した。SuperScript First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen)を使用して、10マイクログラムの総RNAをcDNAに逆転写した。
【0238】
Cx43、Ccl2、Co1α1、TNFα、およびTGFβ1についての遺伝子特異的プライマーおよびプローブを、TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)として入手した。酵素および緩衝系を、TaqMan(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystemes)として購入した。各サンプルを二連で分析した。増幅およびリアルタイム検出を、DNA Engine Opticon(登録商標)2(MJ Research Inc.)で行った。標的遺伝子の発現を、GAPDH発現と比較した。
統計分析
統計的相違を、必要に応じて、対応のないスチューデントt検定またはマン・ホイットニーU検定を使用して決定した。全データを、平均±s.e.mで示す。各試験についての基準レベルを、結果に示す。
Cx43 asODNを使用した創傷部位でのCx43の下方制御
Cx43は、表皮の下部および中間の有棘細胞層ならびに線維芽細胞、血管、およびインタクトな皮膚の皮膚付属器中に主に発現することが見出された。損傷から6時間後、Cx43は高増殖性表皮中で発現したが、先端角化細胞中で下方制御され始めた。損傷時間由来のCx43asODNの送達により、処置から2時間以内の表皮および真皮中のCx43のタンパク質レベルは顕著に減少した。Cx43タンパク質は、急速に、時折、1.5〜2時間以内に代謝回転するので、かかる急速なノックダウンが可能である。Cx43タンパク質およびmRNAノックダウン、およびasODN処置後の回復をより正確に定量するために、本発明者らは、リアルタイムPCRを使用して、処置創傷部位と非処置創傷部位の間でCx43mRNAの発現レベルを比較した(RT−PCR;
図1)。損傷1日後に、Cx43asODN処置創傷でのCx43 mRNAの発現は、コントロールsODN処置創傷と比較して有意に減少した(それぞれ、2.95対4.7単位、37%減少;P<0.05)。しかし、損傷7日後までに、発現レベルは、2つの創傷レジメで類似した(asODNおよびコントロールsODN処置について、それぞれ、4.6対5.2単位)。創傷1日後、2日後、および7日後のCx43についての創傷の免疫染色により、コントロールと比較して、1日目のCx43asODN処置創傷縁の表皮および真皮中のCx43タンパク質レベルは非常に低いことが明らかとなった(
図1)。2日目までに、いくつかのCx43染色は、Cx43asODN処置創傷の真皮まで回復したが、このレベルは表皮では依然として非常に低かった。7日目までに、RT−PCRの所見と一致して、処置および非処置の間でCx43染色の明らかな相違は認められなかった。これらの結果は、このCx43asODNが、プルロニックゲルによって送達された場合、創傷後の初期にCx43mRNAの発現を実際に阻害することが確認された。
Cx43asODN処置創傷における閉鎖の加速および増殖の増加
創傷を完全に同一に巨視的に撮影し、その領域をデジタルで測定した。以前に報告されているように(Qiu,C,Coutinho,P.,Frank,S.,Franke,S.,Law,L.Y.,Martin,P.,Green,C.R.およびBecker,D.L.(2003).Targeting connexin 43 expression accelerates the rate of wound repair.Curr Biol 13,1697−703)、Cx43asODN処置創傷は、1日目および2日目に、コントロール創傷よりも有意に小さく、乾燥し、炎症が小さく、より速く閉鎖した。7日目までに、痂皮が創傷を覆い、創傷閉鎖の正確な測定が不可能になった。創傷縁からの再上皮形成は、裸になった部位を覆うために損傷直後から開始された。切除創傷および切開創傷の両方のCx43asODN処置により、コントロールODN処置創傷よりもさらに迅速に創傷が再上皮形成する。したがって、本発明者らは、これがCx43asODN処置創傷の治癒皮膚中の角化細胞および線維芽細胞の増殖の増強に一部起因するかどうかを試験した(
図2A〜2H)。上皮創傷縁部中の角化細胞増殖は、コントロール群と処置群との間でほとんど相違しなかった一方で(
図2E)、本発明者らは、実際に、2日後および7日後の両方でのCx43asODN処置創傷の初期表記中のBrdU陽性細胞数は有意に増加することを示す(
図2F)。同様に、皮膚創傷縁部中のBrdU陽性細胞数により、1日目および2日目に、asODN処置後に細胞数がわずかに増加し、肉芽組織中で有意に増加することが明らかとなった(
図2Gおよび2H)。これらの結果は、本発明の巨視的顕微鏡による所見と一致し、創傷部位におけるCx43の急速な下方制御によって創傷先端角化細胞が急増し、これが創傷を再上皮形成するにつれて持続することが示唆される。この増殖の増強は、asODN処置創傷における再上皮形成の加速および肉芽組織の成熟の増強に寄与し得る。
Cx43asODN処置創傷における炎症細胞流入の減少−好中球およびマクロファージ
いくつかの白血球細胞系は、組織損傷に対する炎症反応中の種々の経過時間で創傷部位を浸潤する。2つの初代細胞系は好中球およびマクロファージであり、これらは共に修復過程の種々の局面に計り知れない影響を及ぼし得る。本発明者らは、Cx43asODN処置創傷における好中球流入を前に評価しており、ここでは、本発明者らは、抗MPO抗体を使用して、好中球数がコントロール処置創傷において好中球数がピークになる段階で、1日目、2日目にその数が有意に減少することを確認する(
図3)。創傷部位でのマクロファージ流入が創傷部位での再上皮形成速度に関与し、最終的に瘢痕形成範囲に関与し得ることがここで明確に証明される。したがって、本発明者らは、F4/80免疫組織化学を使用してマクロファージ数を調査した(
図4A〜4C)。Cx43asODN処置創傷部位でのマクロファージ数がコントロールsODN処置創傷と比較して損傷の2日後および7日後に有意に減少することが見出され、この減少は、2日目で33%であり、7日目で32%である(
図4C)。これらのデータは、創傷時のCx43の急速なノックダウンによって初期の好中球および後期のマクロファージならびに炎症期の両方でその後に劇的に減少することを明確に示す。
Cx43asODN処置創傷におけるCcl2およびTNF−αの発現の減少
創傷部位中の好中球およびマクロファージは、多種多様の炎症誘発性サイトカインおよびケモカインを放出する。これらは、創傷部位上の細胞(角化細胞、線維芽細胞、内皮細胞)に直接作用して、創傷の炎症反応を増幅させる。どのようにして炎症細胞の流入の減少がCx43ノックダウン後にこれらのシグナルのレベルに影響を及ぼすのかを試験するために、本発明者らは、それぞれ、代表的なケモカインおよびサイトカインとしてCcl2およびTNF−αを分析した。Ccl2およびTNF−αの発現レベルを定量するために、本発明者らは、1、2、および7日目の創傷組織にRT−PCR分析を行った(
図5Aおよび5B)。両mRNAは、1日目のコントロールsODN処置創傷部位で強く上方制御され、共に2日目に発現がピークに達し、その後そのレベルは減少した。比較により、Cx43asODN処置創傷におけるCcl2およびTNF−αの発現レベルは、2日目(Ccl2)および7日目(TNF−α)に有意に(P<0.05)減少した。これらの結果は、Cx43asODN処置創傷における好中球およびマクロファージの動員の減少が、他の細胞型によって補われることなくこれらのシグナル伝達分子の発現の減少に伴って確かに起こったことを示す。
【0239】
Ccl2およびTNF−αの発現レベルを定量するために、1、2、および7日目の創傷組織にRT−PCR分析を行った。両mRNAは、1日目のコントロールsODN処置創傷部位で強く上方制御され、共に2日目に発現がピークに達し、その後にそのレベルは減少した。比較により、Cx43asODN処置創傷におけるCcl2およびTNF−αの発現レベルは、2日目(Ccl2)および7日目(TNF−α)に有意に(P<0.05)減少した。これらの結果は、Cx43asODN処置創傷における好中球およびマクロファージの動員の減少が、他の細胞型によって補われることなくこれらのシグナル伝達分子の発現の減少に伴って確かに起こったことを示す。
Cx43asODN処置創傷部位でのTGF−β1発現の増加
創傷関連成長因子であるTGF−β1は、創傷治癒過程の多数の段階で広範な種々の役割を果たすことが報告されている。したがって、本発明者らは、創傷から1日後、2日後、および7日後にRT−PCRを使用して、コントロールsODNおよびCx43asODN処置創傷部位でのTGF−β1の発現レベルを分析した(
図6)。TGF−β1は、1日目および7日目で低レベルであり、コントロールと処置創傷との間に相違はなかった。しかし、創傷2日後に、asODN処置創傷におけるTGF−β1発現は、コントロールsODN処置創傷と比較して有意に(P<0.05)増加した。2日目のTGF−β1の免疫染色により、創傷部位および隣接組織の両方において真皮中にTGF−β1陽性細胞が明らかとなった。ほとんどの細胞は丸く、白血球の外観を有していた。しかし、Cx43asODN処置組織では、創傷の皮膚縁部にさらなるTGF−β1陽性細胞型が数多く認められた。これらの細胞は、その形状が細長く、線維芽細胞により類似しているようであった。興味深いことに、Cx43asODN処置創傷の表皮では、TGF−β1はコントロール創傷表皮よりもさらにより強く染色されるようであった(
図6)。これらの結果は、TGF−β1発現の増加がCx43asODN処置後の創傷治癒で本発明者らが認めた変化のいくつかに寄与するかもしれないという可能性が挙げられる。
【0240】
肉芽組織の形成および成熟
結合組織の創傷収縮は、皮膚修復過程の重要な要素であるといわれている。この工程は、線維芽細胞の創傷床への移動ならびに収縮性筋線維芽細胞への分化およびその後の喪失と密接に関連している(Martin,P.(1997).Science 276,75−81)。DAPI核対比染色と組み合わせたローダミンファロイジンを使用して、コントロール創傷と比較して、2日目のCx43asODN処置創傷の縁部の細長い線維芽細胞様細胞数の有意な増加(平均は、コントロールで39.4、asODNで99.2;P<0.01)が認められた(
図7AおよびB)。これらのデータにより、線維芽細胞の流入による創傷肉芽組織の形成は、Cx43タンパク質が減少した創傷で増強されることが示唆される。これは、asODN処置創傷の肉芽組織で認められた移動の増強および有意に高い細胞増殖の両方に起因し得る。
【0241】
線維芽細胞の移動速度の増強がCx43タンパク質発現の減少に起因するかどうかを調査するために、本発明者らは、線維芽細胞創傷治癒アッセイを使用した。ここで、掻爬性創傷アッセイの2時間前にコンフルエントな線維芽細胞培養物にCx43asODNを適用することによって、Cx43タンパク質をノックダウンさせた。Cx43タンパク質が急速に代謝回転するので(1.5〜2時間の短さの半減期)、これは、2時間以内にタンパク質の95%をノックダウンさせるのに十分であり、これが細胞型に応じて8時間と48時間との間で持続し得る。Cx43asODNで処置した線維芽細胞培養物は、コントロールと比較して創傷閉鎖速度が有意に増強され(P=0.02)(
図7D)、このことは本発明者らのin vivo所見と完全に一致している。これにより、Cx43タンパク質のノックダウンがin vitroおよびin vivoの両方で線維芽細胞の移動速度を増強し、それにより、肉芽組織の形成速度が促進されることが強く示唆される。
【0242】
肉芽組織領域を測定する場合、処置組織は5日目に非処置組織よりわずかに小さいが、この相違は有意ではないことが見出された。しかし、創傷形成の7、10、および14日後に、Cx43asODN処置創傷がコントロールsODN処置創傷よりも肉芽組織の領域が有意に(*P<0.05;**P<0.01)小さいことが見出された。
【0243】
肉芽組織領域を測定する場合、処置組織は5日目に非処置組織よりわずかに小さいが、この相違は有意ではないことが見出された。しかし、創傷形成の7、10、および14日後に、Cx43asODN処置創傷がコントロールsODN処置創傷よりも肉芽組織の領域が有意に(*P<0.05;**P<0.01)小さいことが見出された(
図9)。どのようにして肉芽組織がより急速に収縮されるのかを調査するために、本発明者らは、TUNEL標識キットを使用して切片を染色してアポトーシス細胞死を検索したか、筋線維芽細胞のマーカーとして抗平滑筋アクチン(SMA)を使用した。処置肉芽組織においてアポトーシス細胞がつねにわずかに少なかったが、創傷形成から5、7、10日後のコントロールと処置動物との間でTUNEL陽性細胞数の相違は有意ではないことが見出された(
図10)。しかし、これらの全時点において2群間でSMA染色の発現に高い有意差が認められた(
図11)。5日目に、Cx43asODN処置創傷の肉芽組織の先端にSMA染色が認められたが、コントロール創傷では依然として染色は認められなかった。7日目までに、コントロール創傷の肉芽組織の先端およびCx43asODN処置創傷の肉芽組織全体にSMA染色を検出することができる(
図11Aおよび11B)。肉芽組織先端の染色の定量により、Cx43asODN処置創傷で有意により高い(P=0.004)ことが明らかとなった(
図11E)。創傷10日後、ほとんどのSMA染色がCx43asODN処置創傷の肉芽組織の先端から消失し、創傷中央部でわずかに維持された。これは、肉芽組織全体に強いSMA発現が示されるコントロール創傷と有意に(P=0.000002)異なっていた(
図11Cおよび11D)。これらの所見は、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化がCx43asODN処置創傷でより早く起こり、これらの細胞が創傷と接触し始めてコントロール創傷よりもはるかに速く喪失されることを意味する。Cx43asODN処置創傷は、その肉芽組織の成熟がコントロールよりも2〜3日進行するようである。
【0244】
血管形成
線維芽細胞の流入に加えて、創傷肉芽組織の他の主な細胞成分は、新規の血管の内皮細胞である。したがって、本発明者らは、抗CD31およびフォンウィルブランド因子抗体またはイソレクチンB−FITCを使用して免疫組織化学染色を行い、創傷から5、7、10、および14日後の処置創傷における血管形成を評価した(
図12A〜12H)。5日目に、コントロール創傷の肉芽組織中に血管染色は認められなかったのに対して、全てのCx43asODN処置創傷の肉芽組織の先端に染色が認められた。7日目に、6つのCx43asODN処置創傷のうちの5つにおいて全肉芽組織の全体に細い血管が見出されたが、この細い血管はコントロールの肉芽組織の先端に辛うじて侵入し始めただけであった。しかし、asODN処置創傷の血管がより広範囲であった一方で、血管は、この時点でのコントロールの血管より有意に小さいか薄いようであった(
図12A)。これは、血管染色を7日目および10日目に定量した場合、血管がより巨大なコントロールで有意により染色された(7日目はP=0.0019;10日目はP=0.015)ことを意味する。14日目に、血管のサイズおよび染色範囲は、処置群およびコントロール群の両方で非常に類似していた(
図12E、12F)。これらの所見により、血管形成がCx43asODN処置後により早く起こることが示唆される。肉芽組織成熟に関する本発明者らの他の所見と考え合わせると、2〜3日目までに処置によって創傷成熟速度が増強されるようである。
【0245】
結果に示すように、プルロニックF−127持続放出ゲルから送達されたCx43asODNを使用した皮膚創傷治癒部位でのCx43の急速な下方制御の例示的な病理学的および生物学的結果を、本明細書中に示す。処置により、少なくとも24時間で創傷部位の表皮および真皮のCx43タンパク質が急速に下方制御され、48時間までに皮膚発現がいくらか回復し、7日後に群間の明確な相違は認められなかった。本発明者らは、Cx43asODN処置によって皮膚創傷治癒が顕著に加速され、これは、白血球浸潤の減少、サイトカインの減少、再上皮形成の増加、および創傷収縮の増強と一致することを示す。
炎症
創傷に対する最初の応答は、典型的には、血餅形成である。血餅形成は、局所損傷組織と共に、炎症誘発性シグナルを放出し、好中球の形態、その後にマクロファージの形態での創傷部位への炎症細胞の浸潤を誘発する。これらのシグナルおよび侵入炎症細胞由来のシグナルは、創傷の再上皮形成および結合組織収縮の両方に影響を及ぼす(Martin、P.(1997).Science 276、75−81)。炎症細胞の創傷への移動および浸潤は、細胞−細胞相互作用および細胞−マトリックス相互作用ならびに創傷付近の血管の血管拡張に関連する。Cx43が、活性化白血球中、ならびに炎症条件下でのその管外遊出中の白血球−白血球および白血球−内皮細胞接触部位で発現され、機能的Cx43チャネルがサイトカインおよび免疫グロブリンの放出に関与することが最近報告されている(Oviedo−Orta,E.およびEvans,W.H.(2004).Biochim Biophys Acta 1662,102−12に概説)。好中球およびマクロファージの両方の数がCx43asODN処置創傷で有意に減少し、これが好中球の管外遊出および炎症誘発性サイトカインの放出にCx43発現が必要であることと一致することを示す結果をここに報告する。さらに、結果は、好中球および単球/マクロファージの化学誘引物質であることが報告されているケモカインCcl2およびサイトカインTNF−α(Rossi,D.およびZlotnik,A.(2000).Annu Rev Immunol 18,217−42)の両方も、それぞれ2日目および7日目のCx43asODN処置後に減少することを示す。明確に、創傷部位におけるこれらおよび他の成長因子、ケモカイン、およびサイトカインのレベルの減少は、創傷治癒に有用なこれらの薬剤が好中球および他の炎症細胞の流入の減少の重要なメディエーター(上流および下流の両方)であることを示す。
【0246】
いくつかの最近の報告は、通常の炎症反応が皮膚創傷治癒に不可欠ではないと主張している(Martin,P.およびLeibovich,S.J.(2005).Trends Cell Biol.)。好中球およびマクロファージを遺伝的に欠くPU.1ヌルマウスは、その野生型同胞と類似するかより速く瘢痕形成を伴わずに皮膚損傷を修復するといわれている(Martin,P.,D’Souza,D.,Martin,J.,Grose,R.,Cooper,L.,Maki,R.およびMcKercher,S.R.(2003).Curr Biol 13,1122−8)。同様に、抗好中球血清による創傷部位の好中球数の減少によって再上皮形成がより速くなることを報告している(Dovi,J.V.,He,L.K.およびDiPietro,L.A.(2003).J Leukoc Biol 73,448−55)。上皮移動および増殖能力の増加と炎症反応の減少との間の相互関係ならびに先端の角化細胞および線維芽細胞におけるCx43ノックダウンの有力な役割。さらに、Cx43ノックダウンにより、白血球流入が減少し得る。Cx43asODN作用の標的組織には内皮細胞または白血球が含まれ、その両方が、有効な管外遊出および強い炎症反応にCx43発現が必要であることが報告されている(Oviedo−Orta,E.,Hoy,T.およびEvans,W.H.(2000).Immunology 99,578−90;Oviedo−Orta,E.,Gasque,P.およびEvans,W.H.(2001).FASEB J 15,768−74)。これらの結果に基づいて、内皮細胞または白血球中のCx43タンパク質発現の変化も炎症反応を調節することができる。
TGF−β1
Cx43asODN処置創傷では、本発明者らは、TGF−β1のmRNAがコントロールと比較して2日目に有意に増加するが、1日目および7日目の処置創傷およびコントロール創傷の両方で比較的低レベルで見出されることを見出した。TGF−β1の発現は、創傷治癒過程で多数の重要な事象と関連することが報告されている。その報告された活性には、免疫抑制性を示すこと、線維芽細胞移動および増殖の促進、創傷収縮の増強、肉芽組織形成の増強、コラーゲン合成および沈着の増強、血管形成の刺激、および再上皮形成の促進が含まれる。創傷に及ぼすTGF−β1の影響は、投薬量および創傷形成モデルにいくらか依存すると報告されている。種々の結果も、TGF−β1シグナル伝達経路の異なる部分の撹乱および遺伝子修飾物を使用した実験に基づいて報告されている。例えば、T細胞およびB細胞が欠損したTGF−β1ノックアウトマウス(Scid−/−マウス)では、創傷治癒は遅延する(Crowe,M.J.,Doetschman,T.およびGreenhalgh,D.G.(2000)J.Invest.Dermatol 115:3−11)。しかし、Smad3ノックアウトマウスのようにTGF−β1シグナル伝達経路が破壊される場合、創傷治癒は加速される(Ashcroft,G.S.,Yang,X,Glick,A.B.,Weinstein,M.,Letterio,J.L.,Mizel,D.E.,Anzano,M.,Greenwell−Wild,T.,Wahl,S.M.,Deng,C.およびRoberts,A.B.(1999)Nat Cell Biol.1:260−6)。同様に、角化細胞中のドミナントネガティブII型TGF−β受容体は再上皮形成を再度加速させる。TGF−β1が過剰発現するトランスジェニックマウスは、瘢痕形成が減少したより質の良い創傷治癒を示す(Shah,M.,Revis,D.,Herrick,S.,Baillie,R.,Thorgeirson,S.,Ferguson,M.およびRoberts,A.(1999)Am.J.Pathol.154:1115−24)。同様に、β3インテグリンを欠くトランスジェニックマウスは、TGF−β1レベルの上昇を示し、これは、治癒の増強および線維芽細胞の創傷へのより迅速な移動に関連する(Reynolds,L.E.,Conti,F.J.,Lucas,M.,Grose,R.,Robinson,S.,Stone,M.,Saunders,G.,Dickson,C.,Hynes,R.O.,Lacy−Hulbert,A.およびHodivala−Dilke,K.(2005)Nat.Med.11:167−74)。CD18ノックアウトマウスは、TGF−β1発現が減少し、創傷治癒が遅延したが、これをTGF−β1の創傷縁部への注射によって救出することができる(Peters,T.,Sindrilaru,A.,Hinz,B.,Hinrichs,R.,Menke,A.,Al−Azzeh,E.A.,Holzwarth,K.,Oreshkova,T.,Wang,H.,Kess,D.,Walzog,B.,Sulyok,S.,Sunderkotter,C.,Friedrich,W.,Wlaschek,M.,Krieg,T.およびScharffetter−Kochanek,K.(2005)EMBO J.24:3400−10)。
【0247】
2日目に本発明者らが確認したTGF−β1染色レベルの上昇は、その大部分が創傷の先端の細長い線維芽細胞様細胞中および創傷の先端の角化細胞中に存在するようである。これは、前に記載した増殖および移動の増強に及ぼすTGF−β1の影響と一致し(Postlethwaite,A.E.,Keski−Oja,J.,Moses,H.L.およびKang,A.H.(1987)J Exp Med 165:251−6)、その両方が組織修復の初期段階で認められる。実際、TGF−β1の上昇は、これらの条件下で本発明者らが初期に認めた線維芽細胞の増殖速度および移動の増加ならびにコラーゲン合成速度の増強の点から見た治癒の促進に寄与する要因の1つであり得る。
【0248】
Cx43タンパク質の能動的な下方制御および創傷関連成長因子TGF−β1の作用の両方が、Collα1発現を活性化することが報告されている(Cutroneo,K.R.(2003).How is Type I procollagen synthesis regulated at the gene level during tissue fibrosis.J Cell Biochem 90,1−5;Waggett,A.D.,Benjamin,M.およびRalphs,J.R.(2006)Eur J Cell Biol. 2006 JuI 19;[Epub ahead of print])。処置後に本発明者らが認めた増強されたCollα1発現およびコラーゲン沈着は、2日目のTGF−β1発現の増加またはCx43タンパク質の下方制御またはその両方に関連し得る。
【0249】
創傷関連成長因子であるTGF−β1は、創傷治癒過程の多数の段階で広範な種々の役割を果たす。TGF−β1は、1日目および7日目で低レベルであり、コントロールと処置創傷との間に相違はなかった。しかし、損傷2日後に、asODN処置創傷におけるTGF−β1発現は、コントロールsODN処置創傷と比較して有意に(P<0.05)増加した。2日目のTGF−β1の免疫染色により、創傷部位および隣接組織の両方において真皮中にTGF−β1陽性細胞が明らかとなった。ほとんどの細胞は丸く、白血球の外観を有していた。しかし、Cx43asODN処置組織では、創傷の皮膚縁部にさらなるTGF−β1陽性細胞型が認められた。これらの細胞は、その形状が細長く、線維芽細胞により類似しているようであった。興味深いことに、Cx43asODN処置創傷の表皮では、TGF−β1はコントロール創傷表皮よりもさらにより強く染色されるようであった(
図6)。これらの結果は、TGF−β1発現の増加がCx43asODN処置後の創傷治癒で本発明者らが認めた変化のいくつかに寄与するかもしれないという可能性が挙げられる。
【0250】
TGF−β1が炎症を抑制することが示唆されている一方で、TGF−β1が上昇するようになる1日前に既に証明されているように、TGF−β1は本発明者らが認めた炎症の減少を導く主な要因でありそうでない。同様に、TGF−β1が創傷治癒過程の後期に血管形成および肉芽組織の成熟を促進することが示されている一方で、本発明者らは、これらの後期にTGF−β1の上昇を認めておらず、むしろ、その時点でコントロールと類似の低レベルである。したがって、他の要因が、処置後に本発明者らが認めた肉芽組織成熟の増強を促進しなければならない。
【0251】
これらの実験は、TGF−β1が創傷治癒過程の炎症の抑制、血管形成の促進、および肉芽組織の成熟に関与しているという推測を支持し、他の創傷治療方法と組み合わせたTGF−β1の調整が創傷治癒過程の促進に有用であり得ることを示す。
【0252】
移動および増殖
線維芽細胞および角化細胞の移動および増殖は、創傷収縮および創傷閉鎖の両方に寄与する皮膚創傷治癒に必須である。本研究では、本発明者らは、Cx43asODN処置後の創傷部位への線維芽細胞の移動の増強およびより迅速な再上皮形成を示す。これらの結果は、Cx43が細胞移動の調整で重要な役割を果たし得ることを示す。細胞移動におけるCx43の役割に関して矛盾した結果が報告されている。他者は、胚発生においてCx43欠損前心外膜細胞がCx43を発現する細胞よりも迅速に移動するという報告をしている(Li,W.E.,Waldo,K.,Linask,K.L.,Chen,T.,Wessels,A.,Parmacek,M.S.,Kirby,M.L.およびLo,C.W.(2002).Development 129,2031−42)。しかし、同グループは、Cx43欠損神経堤細胞が移動速度の減少を示したということも以前に報告している(Huang,G.Y.,Cooper,E.S.,Waldo,K.,Kirby,M.L.,Gilula,N.B.およびLo,C.W.(1998).J Cell Biol 143,1725−34)。この後者の所見は、連絡が撹乱したがCx43発現が減少した網膜神経上皮細胞の移動速度の遅延と一致する(Pearson R.,Luneborg,N.,Becker,D.L.およびMobbs P.(2005)J.Neurosci 25(46),10803−10814)。移動に及ぼす連絡の影響のこれらの相違は、おそらく、関与する異なる細胞型および細胞が独立してか連絡群で移動するかどうかを反映し得る。
【0253】
より速い再上皮形成および肉芽組織の形成速度の増強も、asODN処置群における増殖の増強に寄与することができ、この増強は創傷2日後および7日後の両方にて初期表皮および肉芽組織で認められる。移動速度と同様に、Cx43発現および増殖に関する組み合わせられた(mixed)報告が存在する。Cx43欠損前上皮細胞の増殖は増加するが、これは、Cx43asODNsで処置したCx43欠損心臓神経堤細胞や発生中の神経網膜で認められず、増殖が減少する(Huang,G.Y.,Cooper,E.S.,Waldo,K.,Kirby,M.L.,Gilula,N.B.およびLo,C.W.(1998).J Cell Biol 143,1725−34;Becker,D.L.およびMobbs,P.(1999)Exp.Neurology,156,326−332;Li,W.E.,Waldo,K.,Linask,K.L.,Chen,T.,Wessels,A.,Parmacek,M.S.,Kirby,M.L.およびLo,C.W.(2002).Development 129,2031−42)。前心外膜細胞に及ぼすCx43減少の影響が増殖および移動の両方を促進するのに対して、神経堤細胞および網膜神経上皮細胞に及ぼす影響が増殖および移動を撹乱することであることが興味深い。本発明者らの実験は、ここに、線維芽細胞創傷治癒アッセイにおけるasODNsを使用したCx43発現の減少がその移動速度を有意に加速させることを示す。したがって、Cx43タンパク質の下方制御は、本発明者らに認められたより速い再上皮形成および肉芽組織への線維芽細胞の移動を補助することができる。あるいは、この影響は、TGF−β1レベルの上昇に起因し得る。この上昇は、2日目にCx43asODN処置創傷で認められ、細胞増殖の増強および線維芽細胞の移動速度の増加(Mustoe,T.A.,Pierce,G.F.,Thomason,A.,Gramates,P.,Sporn,M.B.およびDeuel,T.F.(1987).Science 237,1333−6:Postlethwaite,A.E.,Keski−Oja,J.,Moses,H.L.およびKang,A.H.(1987)J Exp Med 165:251−6)、または恐らくその組み合わせが行われることが示唆される。
【0254】
血管形成
血管形成は、肉芽組織の形成および成熟(侵入、拡大、およびその後の再造形)の別の中心的な特徴である。本研究では、Cx43asODN処置創傷肉芽組織に成長する血管は、コントロールよりもさらに進行した。5日目に、全ての処置創傷の肉芽組織に侵入する細い血管が認められたが、この血管は、いかなるコントロール肉芽組織においても認められなかった。7日目までに、細い血管は、処置創傷の大部分の肉芽組織全体に認められたが、コントロール創傷では先端のみに認められた。興味深いことに、コントロール創傷中の血管は、これらの初期段階でより厚いようであり、それにより、7日目および10日目の染色領域は有意に広かった。14日目までに、処置創傷中の血管はより大きなサイズに発達し、コントロールと非常に類似するようであった。Cx43は、冠状動脈の脈管形成および血管形成に関与することが公知である(Walker,D.L.,Vacha,S.J.,Kirby,M.L.およびLo,C.W.(2005).Dev Biol 284,479−98)。しかし、Cx43タンパク質レベルが損傷7日後までコントロールおよび処置創傷と類似するという所見により、この段階でのCx43asODN処置創傷における血管形成が、初期段階で本発明者らが認めたアンチセンス媒介性の変化に間接的に影響を及ぼされる可能性が最も高いことが示唆される。この成長因子は血管形成を促進することが報告されているので、血管形成がTGF−β1の初期の上昇によって促進される可能性があるが(Roberts,A.B.,Sporn,M.B.,Assoian,R.K.,Smith,J.M.,Roche,N.S.,Wakefield,L.M.,Heine,U.I.,Liotta,L.A.,Falanga,V.,Kehrl,J.H.ら(1986).Proc Natl Acad Sci U S A 83,4167−71)、これについての時間枠は適合しない。
【0255】
肉芽組織の成熟、収縮、および細胞死
Cx43asODN処置後の肉芽組織領域は、コントロール創傷よりも一貫して小さい。これは、いくつかの要因に起因する可能性が高い。炎症反応の減少は、次の治癒過程段階にいくつかのノックオン効果がある。好中球侵入の減少により、周辺組織の損傷が減少し、ほとんどの切除創傷が炎症過程の開始として治癒の最初の数日間にわたってサイズが拡大するのに対して、処置創傷は同一期間に劇的に収縮する。したがって、炎症の減少により、線維芽細胞が充填される領域が有意により小さくなると予想されるであろう。本発明者らが認めた他の重要な影響の1つが線維芽細胞の増殖および移動の増強であるので、創傷が小さいほどより迅速に充填することができ、肉芽組織が有意により迅速に成熟し始めることができる。
【0256】
まとめると、これらの研究は、創傷部位でのCx43タンパク質減少の細胞生物学的下流の基礎をなす機構を分析した本発明者らの最初のデータを報告する。局所下方制御は、創傷治癒の非常に初期の事象に強い影響を及ぼす。特に、局所下方制御は、炎症反応の範囲を制限し、再上皮形成の発生および速度ならびに肉芽組織形成のレベルおよび速度を進行させる。次いで、肉芽組織は、より小さな充填領域を有し、この充填をより迅速にすることにより、創傷の収縮および成熟をより早める。このアプローチは、種々の臨床的状況において創傷治癒を改善するための新規の潜在的な治療法を明確に提供する。
【0257】
これらの結果に基づいて、皮膚創傷部位におけるコネキシン43発現の実験的下方制御は、治癒の速度および質を顕著に改良する。修復過程の生理学的および細胞生物学的態様を、例示的な抗コネキシン薬(コネキシン43アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド)を用いた治療および用いない治療で比較する。処置創傷は、角化細胞および線維芽細胞の増殖および移動が有意に増加した皮膚治癒の促進を示した。線維芽細胞創傷治癒モデルにおけるコネキシン43のin vitroノックダウンによっても治癒が有意に速くなり、これは、創傷部位におけるトランスフォーミング成長因子β1のmRNAならびにコラーゲンα1および一般的なコラーゲンの含有量に関連していた。処置創傷は、より急速な血管形成を伴う肉芽組織の形成および成熟の増強を示し、筋線維芽細胞の分化および創傷収縮は、見かけ上2〜3日進行した。好中球およびマクロファージの両方の動員は、処置創傷内で顕著に減少し、白血球浸潤の減少も同時に起こった。同様に、ケモカインリガンド2および腫瘍壊死因子αのmRNAレベルは、処置創傷で減少した。これらのデータは、これらの条件下で、皮膚治癒過程における初期の創傷部位でのコネキシン43特異的アンチセンスでのコネキシン43タンパク質の減少が、細胞の移動および増殖の加速ならびに炎症および起こり得るさらなる損傷の軽減の少なくとも一部によって修復を増強することを示す。
【0258】
創傷部位でのCx43タンパク質の急速な下方制御により、角化細胞の増殖および移動が増大し、この速度で線維芽細胞が創傷に移動し、コラーゲンマトリックスに貯蔵される。これは、好中球浸潤の減少と相関し、ケモカインリガンド2(Ccl2)およびサイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF−α)mRNAの減少を伴う。その後、おそらく初期炎症反応の鎮静化の結果としてマクロファージ動員の減少が認められた。対照的に、ヒドロキシプロリンおよびコラーゲン1α1型でのTGF−β1発現の増加が、Cx43AsODN処置創傷で認められた。まとめると、これらの修飾応答により、創傷治癒が有意に改善された。
【0259】
(実施例2)
細胞剥離(cell denuded)ブタ間質キメラを2週間培養し、次いで、成長因子/サイトカイン抗体アレイ(120種の異なる成長因子/サイトカインのタンパク質レベルを測定する)を使用して評価した。
【0260】
角膜移植(移植)のための角膜中央の切除後の手術から回復したヒト角膜縁周縁部を、大気液体界面(air liquid interface)器官型培養に入れ、剥離ブタ間質細胞外基質を中央領域に挿入した(
図14)。液体窒素中での凍結融解によってブタ間質マトリックスを剥離した(細胞を除去した)。
【0261】
キメラを2週間成長させ、この時点で、ヒト角膜縁上皮細胞は、完全に上皮に分化した通常は5〜7細胞層を有するブタ間質を再上皮形成した。さらに、ヒト角膜縁間質の角質実質細胞は、角膜縁周縁部(ヒト角質実質細胞を有するブタ間質マトリックスを再配置するための間質インサート)を通して増殖および移動した。
【0262】
さらなる実験では、キメラを、1日目にコネキシン43特異的アンチセンスODNで処置した。これにより、コントロールにおける7〜14日と比較して3日以内にブタ間質が上皮で完全に覆われた再上皮形成速度が有意に増加した。
【0263】
培養2週間後、キメラを半分に切断した。一方は組織学的分析に使用し、他方は成長因子およびサイトカインアレイ分析に使用した。成長因子およびサイトカイン分析のために、中央の間質領域(完全に回復したヒト細胞上皮を有する)および部分的に再配置間質(ヒト角質実質細胞)を取り出し、幹細胞集団を含むヒト角膜縁周縁部とは別に均一化した。ホモジネートを成長因子/サイトカインアレイ(
図15)に供し、アレイメンブレンのデンシトメトリー分析を使用して行った成長因子レベルの分析を行った。重要な成長因子の分析により、多数の興味深い結果が明らかとなった(
図16および
図17)。
【0264】
培養2週間後のキメラの角膜縁週縁部領域と比較したキメラ間質中の成長因子レベルの分析により(コントロール角膜−アンチセンス処置せず)、特に興味深い2つの成長因子が明らかとなった(
図16)。これらは、キメラ間質中でIGFBP−2レベルが非常に高く、角膜縁週縁部中のIGF−1レベルがより高かった。前者は、細胞移動を促進すると言われており(角膜縁週縁部から間質を再配置するために間質の角質実質細胞が必要とする)、後者は細胞増殖を促進すると言われている(間質を再配置する細胞供給源を得るために角膜縁週縁部で必要とされる)。
【0265】
培養2週間後のCx43AsODN処置キメラの角膜縁週縁部領域と比較したキメラ間質中の成長因子レベルの分析により、特に興味深い2つの成長因子が明らかとなった(
図17)。これらは、非処置コントロールと比較して、アンチセンス処置キメラ間質中でIGF−7レベルが非常に高く、非処置コントロール、特にコントロール角膜縁週縁部と比較して角膜縁週縁部および間質の両方においてIGFBP−2レベルがより高かった。前者は、上皮成長を促進すると言われており(アンチセンス処置キメラで認められる再上皮形成の増加と一致する)、後者は、細胞移動を促進すると言われている(アンチセンス処置を使用した角膜縁週縁部からの上皮再配置の増加と一致する)。
【0266】
(実施例3)
II度の火傷を、抗コネキシン薬、10ug/mlのKGF、30ng/mlのPDGFイソ型、10ng/ml IGF−I、および30ng/mlのIGFBP−Iを含む噴霧処方物で処置した。噴霧は、大気中で乾燥する。2時間毎の再適用が示唆される。
【0267】
(実施例4)
縫合創傷を閉鎖し、抗コネキシン薬、10%KGFおよび/または5%PDGFから構成された局所蝋膏を縫合部分に適用し、その後に包帯を巻いた。蝋膏を再適用して、創傷治癒を容易にするか改善することができる(例えば、必要に応じて、1日に2〜3回を4〜7日間)。
【0268】
(実施例5)
抗コネキシン薬および1つまたは複数の5%KGF、2.5%PDGF、10%IGFBPを含む20%酸化亜鉛処方物を、創傷のより迅速な治癒のために、小さな掻爬(minor abrasion)、日光皮膚炎、および摩擦に適用する。
(実施例6)
抗コネキシン薬および1つまたは複数の活性抗生物質成分(例えば、1つまたは複数のバシトラシン、ネオマイシン、およびポリミキシン)を含む処方物を調製する。1つのかかる処方物では、1gあたり、硫酸ポリミキシンB(5,000単位)、バシトラシン亜鉛(400単位),および/またはネオマイシン(3.5mg)を含む。処方物の非活性成分には、所望の量のカカオバター、綿実油、オリーブ油、ピルビン酸ナトリム、トコフェリルアセタート、および白色ワセリンが含まれ得る。好ましくは、抗コネキシン薬は抗コネキシン43薬である。かかる処方物を、例えば、創傷のより迅速な/改善された治癒のために、小さな切傷、掻爬、日光皮膚炎、および摩擦に適用する。
【0269】
(実施例7)
局所鎮痛薬(例えば、プラモキシン)も含む実施例6で準備した抗コネキシン薬を含む処方物を調製する。
【0270】
(実施例8)
実施例6および実施例7で準備した抗コネキシン薬を含む処方物を、グラミシジンを含むように調製する。
【0271】
(実施例9)
抗コネキシン薬および1つまたは複数の活性抗菌成分(例えば、硝酸ミコナゾール)を含む処方物を調製する。1つのかかる処方物は、2%硝酸ミコナゾールを含む。非活性成分には、プロピレングリコール300、ポリソルベート20(and)、SDアルコール4OBが含まれ得る。生成物を、クリーム、ゲル、噴霧、または液体として処方することができる。噴霧処方物に適切な噴射剤には、ジメチルエーテルが含まれる。好ましくは、抗コネキシン薬は抗コネキシン43薬である。かかる処方物を、例えば、水虫、たむし、および白癬治療のために適用する。
【0272】
(実施例10)
本実施例は、角膜モデルを使用した創傷治療で有用な潜在的サイトカインの同定方法を示す。角膜は、ランゲルハンス細胞(創傷応答で活性化する)として公知の樹状細胞を含む。次いで、さらなる炎症細胞は、角膜輪部の血管から動員される。本発明者らのモデル角膜を輸血用血液由来の単離物中で培養する。したがって、マクロファージ、T細胞、および多形核細胞の動員は不可能である。
【0273】
モデル角膜を使用して、ランゲルハンス細胞の存在が炎症反応を認める(illicit)のに十分であるかどうか、さらに、応答を治癒応答と区別することができるかどうかを判断した。2つの適合したヒト角膜を、異なる技術を使用して創傷形成した。一方の角膜を、エキシマレーザー光治療的角膜切除焼灼(非常に低レベルの炎症を刺激する技術)を使用して、深さ80μmで直径7mmに焼灼した。他方の角膜を、NaOHに浸漬した7mmの円形濾紙を1分間使用して(炎症誘導が公知の技術)、創傷形成した。24時間の培養後、角膜を半分に分けた(一方は免疫組織化学で使用し、他方はサイトカイン分析に使用した)。角膜を、治癒区分内の部分および治癒区分外の部分にさらに分割し、サイトカインアレイ分析のために処理した。
【0274】
両角膜中で炎症反応を同定するが、炎症反応はアルカリ火傷内で増強された。2群間のサイトカインプロフィールは、アルカリ火傷サンプル内のより強い炎症に起因する。これは、レーザー処理角膜中で治癒がより迅速に開始されるからであり、壊死組織の除去はより少ない。
図18は、両方の創傷で増加するが、炎症性創傷モデルではるかにより高かったサイトカイン群を示す。この群は、インターロイキンを含んでいた。
図19は、両モデルで増加するが、低炎症モデルでさらにより高かったサイトカイン組を示す。したがって、治癒改善のために標的にサイトカインを投与する。
【0275】
創傷治癒モデルにおける種々のサイトカインの有効性を、創傷治癒モデルで増大するサイトカインの影響の評価によって決定する。さらに、目的の種々のサイトカインが創傷治癒速度を増大させて治癒の質を改善する能力を評価する。
【0276】
(実施例11)
本実施例は、治療用のサイトカインの決定方法を示す。サイトカインを、Cx43AsODN処置によって誘導されるその変化したレベルに基づいて本明細書中の使用のために選択することができる。これらのサイトカインは、例えば、サイトカインを創傷治癒の角膜移植モデルに外因的に投与した場合の角膜創傷治癒に影響を及ぼし得る。
【0277】
モデル:ブタ間質移植片を挿入したヒト角膜縁周縁部の対を、培養した角膜移植モデル中でサイトカインレベルの変化について試験する。添加サイトカインの組織レベルを、アレイデータによって測定する。一過性研究のために、治癒過程の発生時にサイトカインを添加する。必要に応じて、さらなるデータポイントを使用して、最適治療期間を決定する。治癒がCx43AsODNモデルと同一の経時変化を辿る場合、3日間および7日間の培養期間を評価する。治癒経時変化を、暗視野顕微鏡法を使用して決定し、必要に応じて調整する。
【0278】
技術:サイトカインあたり5対の角膜縁週縁部を漸増用量で使用して、用量応答曲線を確立する。
【0279】
非抱合角膜創傷治癒で形成される上皮プラグ(plug)を使用して、間質創傷治癒から上皮創傷治癒を単離することを除いて、同一の角膜創傷治癒の調査方法を、上記の実施例9に記載のように使用する。上皮回復に影響を及ぼす要因を、間質細胞の影響と無関係に評価する。いくつかの例では、バリア防御を保存するために角膜上皮創傷治癒が増加するが、間質創傷治癒を増加させずにかすみ(haze)を誘導することが好ましいかもしれない。
【0280】
角膜創傷治癒における目的のサイトカインを同定する。候補には、例えば、通常の組織研究由来のIGFおよびIGFBP2ならびにアンチセンス研究由来のFGF−7が含まれる。
【0281】
本明細書中で引用または言及した全ての特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、ならびに他の書類および資料は、本発明に属する当業者のレベルを示し、それぞれのかかる引用した書類および資料は、その全体が個別に参考として援用されたか、その全体が本明細書中に記載されているのと同程度に、本明細書中で参考として援用される。出願人は、任意のかかる特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、および他の引用した資料または書類由来の任意および全ての資料および情報を本明細書中に物理的に援用する権利を留保する。
【0282】
本明細書中に記載の特定の方法および組成物は、好ましい実施形態の代表および例示であり、本発明の範囲を制限することを意図しない。当業者は、本明細書を考慮した場合に他の目的、態様、および実施形態が思い当たり、これらは、特許請求の範囲によって定義された本発明の精神の範囲内に含まれる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく本明細書中に開示の発明に合わせて種々の置換形態および修正形態を実施することができることが当業者に容易に自明であろう。例示的に本明細書中に記載の発明を、不可欠なものとして本明細書中に具体的に開示されていない任意の要素または制限の非存在下で適切に実施することができる。したがって、例えば、本明細書中の各例、本発明の実施形態または実施例では、任意の用語「comprising」、「consisting essentially of」、および「consisting of」を、明細書中で他の2つの用語のいずれかと置換することができる。また、用語「comprising」、「including」、「containing」などを、開放的に制限せずに読み取るべきである。本明細書中に例示的に記載された方法およびプロセスを、異なる順序の工程で適切に実施することができ、これらは、本明細書または特許請求の範囲に示した工程の順序に必ずしも制限されない。本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用される場合、他で明確に指示しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」には、複数の例が含まれることもある。いかなる状況であっても、本特許が本明細書中に具体的に開示された特定の実施例、実施形態、または方法に制限されると解釈されない。いかなる状況であっても、かかる記述が具体的且つ限定や留保することなく出願人による応答書類で明らかに採用されない限り、本特許が特許商標庁のいかなる審査官、いかなる他の職員、または被雇用者によって作製された任意の記述によって制限されると解釈されない。
【0283】
使用された用語および表現を、制限することを意図せずに記載条件として使用し、かかる用語および表現の使用が、表示および記載の特徴またはその一部の任意の等価物を排除することを意図しないが、特許請求の範囲に記載の発明の範囲内で種々の修正形態が可能であると認識される。したがって、本発明を好ましい実施形態によって具体的に開示しているが、当業者は、本明細書中に開示の概念の任意選択的な特徴、修正形態、および変形形態を採用することができ、かかる修正形態および変形形態が添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内であると見なされると理解されるであろう。
【0284】
本発明を、本明細書中に広範且つ包括的に記載している。包括的開示内に含まれるそれぞれのより狭い種および包括未満の群(subgeneric groupings)はまた、本発明の一部を形成する。これは、切り取った資料(excised material)を本明細書中で具体的に引用するかどうかと無関係に、但し書きまたは属から任意の主題を除いた消極的な限定を含む本発明の包括的説明を含む。
【0285】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に含まれる。さらに、本発明の特徴または態様をマーカッシュグループに関して記載している場合、当業者は、本発明がマーカッシュグループのメンバーの任意の構成要素またはメンバーの下位集団に関しても記載されると認識するであろう。