(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960980
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】三層一体編テープ
(51)【国際特許分類】
D04B 21/16 20060101AFI20160719BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20160719BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
D04B21/16
D04B21/00 B
D04B1/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-271738(P2011-271738)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2012-136817(P2012-136817A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2014年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2010-276118(P2010-276118)
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500294268
【氏名又は名称】東京吉岡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069992
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 政義
(72)【発明者】
【氏名】高岡 政宏
【審査官】
長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−273007(JP,A)
【文献】
特開平09−137380(JP,A)
【文献】
特開2009−167555(JP,A)
【文献】
特開2012−136816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表編地、裏編地及びそれらを上下に離隔してモノフィラメントにより連結する連結層から構成される三層一体編テープにおいて、前記表編地は吸水速乾糸が配されて編成され、前記裏編地は前記表編地と対向して一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成されてなる三層一体編テープであって、前記表編地は左右側縁の所要巾が、吸水速乾糸が配されて密編みされる左側縁編部と右側縁編部が編成され、それらを両側に接続する中間編部が、吸水速乾糸が配されてメッシュ編みされ、前記裏編地は前記表編地と対向して一般糸又は吸水速乾糸が配されて平編みされてなる三層一体編テープ。
【請求項2】
前記裏編地は一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成され、前記表編地と同幅に本体部が対向するとともにその左側縁に突出する左耳部と右側縁に突出する右耳部とが一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成されて配備され、前記表編地と裏編地の左耳部と右耳部を除く部分が、所要に離隔して弾力性のあるモノフィラメントにより連結されてなる請求項1の三層一体編テープ。
【請求項3】
前記裏編地は一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成され、前記表編地と同幅に本体部が対向するとともにその左側縁に突出する左耳部と右側縁に突出する右耳部とが一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成されて配備され、かつ、該左耳部と右耳部には一般糸又は吸水速乾糸よる左被覆編みと右被覆編みが施され、前記表編地と裏編地の左耳部と右耳部を除く部分が上下を所要に離隔して弾力性のあるモノフィラメントにより連結されてなる請求項1又は請求項2の三層一体編テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水速乾・通気・クッション性及びフィット性の機能を具える三層一体編テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長手方向の経糸に吸水性に富みかつ速乾性の繊維糸とポリウレタン系高弾性繊維糸を、幅方向の緯糸にポリウレタン系高弾性繊維糸を用いて平織された長手と幅の二方向に伸縮し、かつ抗菌加工された汗取り帯が、野球帽、サンバイザー、登山用ハットなどのクラウン内周に逢着された帽子が提案されている。
【0003】
特許文献2には、環状起毛素材3又は立毛状起毛素材5の裏面に吸水速乾性素材2を設け二層構造とし、表面には防水性素材1を被覆加工した構造を有する防水性吸湿速乾素材が提案されている。
【0004】
特許文献3には、表裏二層の編地と該二層の編地を連結するモノフィラメントによる連結糸からなる連結層で構成された立体編地であって、立体編物、表層単独編地及び裏層単独編地の張設圧縮撓み量が、いずれも20mm以上85mm以下であり、[(表層単独編地の張設圧縮撓み量)/(裏層単独編地の張設圧縮撓み量)]の値が1.2以上1.9以下であり、連結層圧縮寄与余裕度が1.0以上3.0以下である立体編物が提案されている。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3128627号公報
【特許文献2】特開平9−141775号公報
【特許文献3】特開2004−218114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1で提案される汗取り帯は、吸水速乾性繊維糸と高弾力繊維糸を経糸に、高弾力繊維糸を緯糸に平織されて長手と幅の二方向に伸縮しかつ抗菌加工されたものであるが、単層であるために機能部材としてのクッション性及びフィット性に欠けるものであった。
【0007】
前記特許文献2で提案される防水性吸湿速乾素材は、表面に吸水速乾素材2が、裏面に環状起毛素材3又は立毛状起毛素材5が配備されるものであるから機能部材としてのクッション性及びフィット性には欠けるものであった。
【0008】
前記特許文献3で提案される立体編物は、表裏二層の編地と、該二層の編地を連結するモノフィラメントによる連結糸からなる連結層で構成される立体編地であるが、用途物品の吸水速乾機能と通気機能を目的としていない。
【0009】
本発明の三層一体編テープは、吸水速乾・通気・クッション性及びフィット性を機能部材として高度に奏することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
表編地、裏編地及びそれらを
上下に離隔してモノフィラメントにより連結する連結層から構成される三層一体編テープにおいて、前記表編地は吸水速乾糸が配されて編成され、前記裏編地は前記表編地と対向して一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成されてなる三層一体編テープ
であって、前記表編地は左右側縁の所要巾が、吸水速乾糸が配されて密編みされる左側縁編部と右側縁編部が編成され、それらを両側に接続する中間編部が、吸水速乾糸が配されてメッシュ編みされ、前記裏編地は前記表編地と対向して一般糸又は吸水速乾糸が配されて平編みされてなる三層一体編テープにある。
【0011】
前記裏編地は一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成され、前記表編地と同幅に本体部が対向するとともにその左側縁に突出する左耳部と右側縁に突出する右耳部とが一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成されて配備され、前記表編地と裏編地の左耳部と右耳部を除く部分が、所要に離隔して弾力性のあるモノフィラメントにより連結されてなる三層一体編テープとしてもよいものである。
【0012】
前記裏編地は一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成され、前記表編地と同幅に本体部が対向するとともにその左側縁に突出する左耳部と右側縁に突出する右耳部とが一般糸又は吸水速乾糸が配されて編成されて配備され、かつ、該左耳部と右耳部には一般糸又は吸水速乾糸よる左被覆編みと右被覆編みが施され、前記表編地と裏編地の左耳部と右耳部を除く部分が上下を所要に離隔して弾力性のあるモノフィラメントにより連結されてなる三層一体編テープとしてもよいものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の三層一体編テープは、吸水速乾・通気・クッション性及びフィット性の機能を奏する多機能の編みテープを提供し、衣服、身
の回り品その他多数の用品に活用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の三層一体編テープの第1実施例を示す表面図である。
【
図5】同じく、第1実施例の三層一体編テープを帽子のスベリに実施した実施例の斜視図である。
【
図6】本発明の三層一体編テープの第2実施例を示す表面図である。
【
図10】同じく、第2実施例の三層一体編テープの左耳部と右耳部に被覆編を施した実施例を示す説明断面図である。
【
図11】同じく、第2実施例の三層一体編テープをスラックスのウエストベルトに実施した実施例の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
表編地、裏編地及びそれらを上下に離隔してモノフィラメントにより連結する連結層から設けられる三層一体編テープにおいて、前記表編地は左右側縁の所要巾が、吸水速乾糸が配されて密編みされる左側縁編部と右側縁編部が編成され、それらを両側に接続する中間編部が、吸水速乾糸が配されてメッシュ編みに編成され、前記裏編地は一般糸又は吸水速乾糸が配されて平編みに編成され、前記表編地と同幅に本体部が同幅に対向するとともに上下を所要に離隔して弾力性のあるモノフィラメントにより連結されてなる三層一体編テープ。
【実施例1】
【0016】
本発明の三層一体編テープの第1実施例の三層一体編テープ1を
図1〜
図4により説明すると、第1実施例の三層一体編テープ1は、表編地2、裏編地3及びそれらを上下に離隔してモノフィラメントで連結する連結層4が
経編み機により編成されるものである。
【0017】
前記表編地2は、その長手方向を前後方向とし、横断方向を左右方向とすると、左右方向の全巾が、吸水速乾糸5が配されてなる編地としてもよいが、図面に示す第1実施例では、左右側縁の所要巾が、吸水速乾糸5が配されてリブ編みされて密編みの左側縁編部2aと右側縁編部2bが編成され、それらを両側に接続する中間編部2cが、同じく、吸水速乾糸5が配されてメッシュ編みに編成される。
【0018】
前記裏編地3は、前記表編地2と同幅で、一般糸6が配されてなる編地としてもよいが、図面に示す第1実施例では平編みされて編成される。
【0019】
前記モノフィラメントで連結する連結層4は、弾力性のあるモノフィラメント7を使用し、前記表編地2と裏編地3が所要に離隔されて連結され、表編地2と裏編地3に通気性とクッション性を付与する。
【0020】
前記表編地2に配される吸水速乾糸5は、ポリエステル100%である。前記裏編地3に配される一般糸6は、吸水速乾に機能を特化されていない一般のポリエステル100%の糸である。前記連結層4に使用されるモノフィラメント7は、ナイロン100%であるが、ポルエステル100%であってもよいものである。
【0021】
前記表編地2の左側縁編部2aと右側縁編部2bのリブ編みと中間編部2cのメッシュ編みは吸水速乾糸5と一般糸6が混在する編成としてもよいものである。また、前記裏編地3は、図示しないが、吸水速乾糸5による編成としてもよいものである。また、同じく、図示しないが、前記裏編地3は、一般糸6と吸水速乾糸5とが混在する編成としてもよいものである。
【0022】
前記第1実施例の三層一体編テープ1は、上述のように構成され、特に図面に示すように、前記表編地2の左側縁編部2aと右側縁編部2bのリブ編みと中間編部2cのメッシュ編みの組み合わせにより構成した表編地2が押圧を受けた場合に、第1に、左右側縁編部2a、2bの型くずれがなく、側縁形状を維持することができる。第2に、中間編部2cのメッシュ編み部分は左右側縁部2a、2bに比較して通気性を大幅に確保し、吸水水分を速乾させることができる。
【0023】
前記裏編地3は、一般糸6で編成されるものでは、基盤の強度の強化と耐久性を確保できる。
また、吸水速乾糸5を配したものでは、表編地2と裏編地3を相対して二重に吸水速乾機能を奏する。
【0024】
前記連結層4には、弾力性のあるモノフィラメント7が使用され、上方の表編地2は、左側縁編部2aと右側縁編部2bのリブ編みと中間編部2cのメッシュ編みに接続するので、リブ編みの左側縁編部2aと右側縁編部2bでは密に接続し、メッシュ編みの中間編部2cでは、編目の部分の連結をなくし、前記のテープの側縁形状の維持と、通気性の大幅拡大確保に寄与し、かつ、本来の目的である上方の表編地2と下方の裏編地3を所要に離隔し、それらにクッション性を確保する。
【0025】
前記第1実施例の三層一体編テープ1は、上述のように構成されるから、
図5に示す実施例のように、帽子8の帽体8aの下端内面の下縁寄りに三層一体編テープ1を逢着してスベリ9として配備することができ、表編地2のリブ編みとメッシュ編みの組み合わせは、帽子8を着用したとき、頭に当る部分の摩擦を少なくして快適感を持たせるものである。また、吸水速乾糸5で編成される表編地2が着用者の頭から発生する汗を直接に吸水速乾し、汗による不快感を解消するものである。前記一般糸6で編成される裏編地3は、基盤の強度の強化と耐久性を確保できる。また、裏編地3に吸水速乾糸5を配したものでは、表編地2と裏編地3を相対して二重に吸水速乾機能を奏するものである。
【0026】
また、前記連結層4は、弾力性のあるモノフィラメント7を使用しているから、帽子8を着用した状態で充分な通気機能と良好なフィット感を備え、帽子8が脱げにくい安定感を付与するものである。
【実施例2】
【0027】
次に、本発明の三層一体編テープの第2実施例の三層一体編テープ10を
図6〜
図11により説明すると、第2実施例の三層一体編テープ10は、表編地11、裏編地12及びそれらを上下に所要に離隔してモノフィラメント7で連結する連結層13が
経編み機により編成されるものである。
【0028】
前記表編地11は、前記第1実施例の三層一体編テープ1の表編地2と同様の編地でもよいが、図面に示す実施例では、左右側縁の所要巾が、吸水速乾糸5が配されてリブ編みされて密編みの左側縁編部11aと右側縁編部11bが設けられ、それらを両側に接続する中間編部11cが、同じく、吸水速乾糸5が配されてメッシュ編みされて編成される。
【0029】
前記裏編地12は、前記第1実施例の三層一体編テープ1の裏編地3と同様の一般糸6が配されて平編みされ、前記表編地11と同幅に本体部12cが対向するとともにその左側縁に突出する左耳部12aと右側縁に突出する右耳部12bが、一般糸6が配されて編成されて配備される。そして、
図10に示すように、左耳部12aと右耳部12bは一般糸6による左被覆編み14aと右被覆編み14bを施してもよいものである。
【0030】
前記裏編地12は吸水速乾糸5が配されて編成されてもよいものである。また、前記裏編地12の左耳部12aと右耳部12bには吸水速乾糸5により編成してもよいものである。また、左耳部12aと右耳部12bには吸水速乾糸5により左被覆編み14aと右被覆編み14bが施してもよいものである。また、裏編地12に吸水速乾糸5を配したものでは、表編地11と裏編地12を相対して二重に吸水速乾機能を奏するものである。
【0031】
前記連結層13は、前記第1実施例の三層一体編テープ1の連結層4と同様の弾力性のあるモノフィラメント7を使用し、前記表編地11と裏編地12の左耳部12aと右耳部12bを除く部分が所要に離隔して連結され、表編地11と裏編地12に良好な通気性とクッション性が付与される。
【0032】
前記表編地11の左側縁編部11aと右側縁編部11bのリブ編みと中間編部11cのメッシュ編みは吸水速乾糸5と一般糸6が混在する編成としてもよいものである。また、前記裏編地12は一般糸6と吸水速乾糸5が混在する編成としてもよいものである。
【0033】
前記表編地11に配される吸水速乾糸5は、前記第1実施例の三層一体編テープ1の表編地2と同様のポルエステル100%である。前記裏編地12に配される一般糸6は、前記第1実施例の三層一体編テープ1の裏編地3と同様の吸水速乾に機能を特化されていない一般のポリエステル100%の糸である。前記連結層13に使用されるモノフィラメント7は、前記第1実施例の三層一体編テープ1の連結層4と同様のナイロン100%であるが、ポルエステル100%であってもよいものである。
【0034】
前記第2実施例の三層一体編テープ10は、上述のように構成されるから、前記第1実施例の三層一体編テープ1と同様の機能を奏し、加えて裏編地12の左耳部12aと右耳部12bとが設けられるから、部材への逢着が両側縁においてできる。また、
図11に示す実施例のように、左耳部12aと右耳部12bの夫々に左被覆編み14aと右被覆編み14bが施されるものでは、特に、
図11に示すように、スラックス15のウエスト部の内面に第2実施例の三層一体編テープ10を逢着してウエストベルト16として配備することができ、実施例の表編地11のリブ編みとメッシュ編みの組み合わせは、スラックス15を着用したとき、ウエストに当る部分の摩擦を少なくして快適感を持たせるものである。また、吸水速乾糸5で配される表編地11は着用者の汗を吸水速乾し、ウエスト部分の快適感を持続する機能を奏するものである。
【0035】
また、連結層13は、弾力性のあるモノフィラメント7を表編地11と裏編地12との間に構成されてスラックス15のウエスト部分に充分な通気機能と良好なフィット感を具備させ、またウエスト部分がずれにくく安定して着用することができる。
【0036】
前記裏編地12の左耳部12aと右耳部12bに左被覆編み14aと右被覆編み14bが夫々施される実施例では、左耳部12aと右耳部12bを構成する一般糸6が白色の場合は、左被覆編み14aと右被覆編み14bを施す一般糸6を、例えば、黒色のものを配し、前記左耳部12aと右耳部12bの汚れを防ぐことができ、同時に前記左耳部12aと右耳部12bの強度を補強することもできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の三層一体編テープは、衣服、身
の回り品その他多数の用品に吸水速乾・通気・クッション性及びフィット性を高度に機能させることができ、該機能を発揮する新規商品の需要を喚起するものである。
【符号の説明】
【0038】
1 第1実施例の三層一体編テープ
2 表編地
2a 左側縁編部
2b 右側縁編部
2c 中間編部
3 裏編地
4 連結層
5 吸水速乾糸
6 一般糸
7 モノフィラメント
8 帽子
8a 帽体
9 スベリ
10 第2実施例の三層一体編テープ
11 表編地
11a 左側縁編部
11b 右側縁編部
11c 中間編部
12 裏編地
12a 左耳部
12b 右耳部
12c 本体部
13 連結層
14a 左被覆編み
14b 右被覆編み
15 スラックス
16 ウエストベルト