特許第5960987号(P5960987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960987
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】人工畳の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   E04F15/02 102E
   E04F15/02 102J
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-287618(P2011-287618)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136890(P2013-136890A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】392019879
【氏名又は名称】株式会社イケックス工業
(73)【特許権者】
【識別番号】512001843
【氏名又は名称】株式会社ユーワールド
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 知永
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−317188(JP,A)
【文献】 特開平11−131761(JP,A)
【文献】 特開平11−324285(JP,A)
【文献】 特開2000−199330(JP,A)
【文献】 特開2003−064853(JP,A)
【文献】 特開2008−050924(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3152245(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3157803(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳表の凹凸模様が表面に転写された防水性を有するプラスチック製シートからなる表皮部と、
裏面側に配置された補強用のハニカムボードと、
前記表皮部とハニカムボードとの間に設けられた発泡ウレタン製の芯材とを具備してなる人工畳を製造するための方法であって、
前記畳表の凹凸模様を反転した凹凸模様が形成された表面部を有する金型に対し、塗料を吹付け、硬化させた後離型することにより、前記表皮部を形成するシート成形工程と、
発泡型内に、前記表皮部及び前記ハニカムボードを配置した状態で、それらの間にウレタン原液を注入して発泡させることにより、前記表皮部及びハニカムボードと一体化された芯材を形成するウレタン発泡工程とを含んでいることを特徴とする人工畳の製造方法
【請求項2】
前記シート成形工程は、意匠層用の塗料を吹付ける第1工程と、それに重ねて防水層用の塗料を吹付ける第2工程との2段階で行われ、凹凸模様が形成されると共に所定の着色がなされた意匠層と、その意匠層の裏面側に設けられた隙間のない防水層との二層構造の表皮部が得られることを特徴とする請求項1記載の人工畳の製造方法
【請求項3】
前記ウレタン発泡工程後に、前記ハニカムボードの裏面に、塗料の塗布により滑り止め層が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の人工畳の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然いぐさ製の畳表に代えて、プラスチック製シートからなる表皮部を有してなる人工畳の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然いぐさを用いた畳表を有する日本古来の畳は、感触、弾力、透湿性、保湿性、外観、匂い等の様々な面で日本人に好まれている。ところが、近年の建物の機密性向上等の事情から、畳がカビやダニ等の温床となる問題が指摘されてきている。畳が、水(水害)に弱いといった問題もある。また、日本人の居住の洋風化に伴い、畳を敷物の一種(マット)として用いることも多くなっている。
【0003】
そのような事情の下、例えば特許文献1では、非吸水性を備え、丸洗いを可能とした人工畳が提案されている。図6は、この人工畳1の構成を示しており、人工畳1は、非吸水性の人工いぐさからなる畳表2と、畳床3と、プラスチックスプリットヤーンからなる畳裏4とを縫製して構成される。前記畳床3は、詳細には、上から順に、発泡シートからなる保護シート5、硬質プラスチックからなる芯材6、発泡シートからなる緩衝材7、ポリスチレン発泡板からなる厚み調整材8、発泡シートからなる形状保持シート9、発泡シートからなる保護シート10を積層して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−227142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の人工畳1では、人工いぐさを編んで構成された畳表2を採用しているので、畳表2自体が比較的高価になると共に、畳床3を、多数枚のシート状の部材5〜10を積層して構成しているので、部材の数が多くなり、構成が複雑で高価になっていた。また、上記人工畳1では、部材の数が多くなると共に、縫製により製作しているため、製造の工程が複雑で手間がかかり、製造コストも大きなものとなっていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、防水、防ダニの効果に優れ、軽量であり、構成が簡単で比較的安価に済ませることができる人工畳の製造に適した人工畳の製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の製造方法により製造される人工畳は、畳表の凹凸模様が表面に転写された防水性を有するプラスチック製シートからなる表皮部と、裏面側に配置された補強用のハニカムボードと、前記表皮部とハニカムボードとの間に設けられた発泡ウレタン製の芯材とを具備する。
【0008】
本発明の人工畳は、まず、表皮部が、プラスチック製シートから構成されている。この場合、表皮部の表面には、畳表の凹凸模様が転写されているので、天然いぐさの畳表に近い外観を得ながらも、人工いぐさを編んだものと異なり、比較的安価に済ませることができる。また、表皮部の十分な防水性を得ることができ、洗剤等を用いた水拭き、丸洗いも可能となる。ダニ等が内部に入り込むこともなく、カビの発生も抑制することができる。表皮部を、様々な色に自在に着色できることは勿論である。尚、この表皮部の材料としては、例えば特殊アクリルウレタントップコート等を採用することができる。
【0009】
次に、補強用のハニカムボードが、裏面側に配置されているので、軽量でありながら、曲げに対して強い人工畳を得ることができる。尚、このハニカムボードとしては、例えば紙製のもの(ダンボール)を採用することができ、所望の強度を得られるように、密度や厚み等を選定すれば良い。そして、表皮部とハニカムボードとの間に設けられる芯材は、発泡ウレタン製、例えば高密度軟質発泡ウレタン製とされている。これにより、軽量であり、適度なクッション性が得られると共に、断熱や防音等の効果も得られる。この場合、シートを多層に積層して畳床を構成するものと異なり、簡単な構成で済ませることができる。人工畳全体としても、構成する部材数が少なく、簡単で比較的安価な構成で済ませることができる。さらに色や形状等、多様な要望に応えることも可能となる。
【0010】
上記人工畳においては、前記表皮部を、表面側に位置して凹凸模様が形成されていると共に所定の着色がなされた意匠層と、その意匠層の裏面側に設けられた隙間のない防水層との二層構造を備えたものとすることができる。この場合、表皮部として、例えば超速硬化ウレタンエラストマースプレー材シート(防水層)を、特殊アクリルウレタントップコート(意匠層)で被覆したものを採用することができる。これによれば、表皮部の表面側の意匠層によって、意匠面での効果を得ることができながらも、その裏面側の防水層によって、防水性に加えて、硬さ、耐摩耗性、耐薬品性といった、主として物性面での要求される機能を得ることが可能となる。意匠層に特殊アクリルウレタントップコートを採用した場合、その物性としての耐紫外線効果により、色あせを抑える効果も得られる。
【0011】
さらに、前記ハニカムボードの外面に、塗料の塗布による滑り止め層を設けるようにしても良い。これにより、人工畳を建物の床等に敷いた際の、滑り止め層による滑り止め(ずれ動き防止)の効果が得られる。また滑り止め層を設けることにより、人工畳の裏面側における防水効果をも期待できる。尚、この滑り止め層の材質としては、例えば超速硬化ウレタンエラストマースプレー材等を採用することができ、そのスプレー技術での塗布が可能となる。
【0012】
本発明の人工畳の製造方法は、上記した人工畳を製造するための方法であって、前記畳表の凹凸模様を反転した凹凸模様が形成された表面部を有する金型に対し、塗料を吹付け、硬化させた後離型することにより、前記表皮部を形成するシート成形工程と、発泡型内に、前記表皮部及び前記ハニカムボードを配置した状態で、それらの間にウレタン原液を注入して発泡させることにより、前記表皮部及びハニカムボードと一体化された芯材を形成するウレタン発泡工程とを含んでいるところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0013】
シート成形工程においては、畳表の凹凸模様を反転した凹凸模様が形成された表面部を有する金型に対し、塗料を吹付け、硬化させた後離型することにより、畳表の凹凸模様が表面に転写された防水性を有するプラスチック製シートからなる表皮部を得ることができる。そして、ウレタン発泡工程においては、発泡型内の表皮部とハニカムボードとの間にウレタン原液が注入され、発泡、硬化されることにより、表皮部及びハニカムボードと一体化された芯材が形成される。
【0014】
この場合、シート成形工程において、表面に畳表の凹凸模様が転写された防水性を有す表皮部を簡単に得ることができると共に、ウレタン発泡工程において、発泡ウレタン製の芯材を容易に得ることができる。従って、上記した人工畳の製造に適し、全体的に製造工程を簡単に済ませることができる。
【0015】
本発明の人工畳の製造方法にあっては、前記シート成形工程を、意匠層用の塗料を吹付ける第1工程と、それに重ねて防水層用の塗料を吹付ける第2工程との2段階で行い、凹凸模様が形成されると共に所定の着色がなされた意匠層と、その意匠層の裏面側に設けられた隙間のない防水層との二層構造の表皮部を得るようにすることができる(請求項2の発明)。これによれば、意匠層とその裏面側の防水層との二層構造を備えた表皮部を、簡易に得ることができる。
【0016】
前記ウレタン発泡工程後に、前記ハニカムボードの裏面に、塗料の塗布により滑り止め層を形成するように構成しても良く(請求項3の発明)、これにより、滑り止め層を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
また、本発明の人工畳の製造方法によれば、畳表の凹凸模様を反転した凹凸模様が形成された表面部を有する金型に対し、塗料を吹付け、硬化させた後離型することにより、表皮部を形成するシート成形工程と、発泡型内に、表皮部及びハニカムボードを配置した状態で、それらの間にウレタン原液を注入して発泡させることにより、表皮部及びハニカムボードと一体化された芯材を形成するウレタン発泡工程とを含んでいるので、上記したような防水、防ダニの効果に優れ、軽量な人工畳を製造するに適するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例を示すもので、人工畳の外観を示す斜視図(a)及びその表面の一部を拡大して示す図(b)
図2】人工畳の一部を破断して示す図
図3】表皮部用の成形型の製造工程を概略的に示す図
図4】表皮部の製造工程(シート成形工程)を概略的に示す図
図5】人工畳の製造工程を概略的に示す図
図6】従来例を示す人工畳の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1ないし図5を参照しながら説明する。まず、図1及び図2を参照して、本実施例に係る人工畳11の構成について述べる。この人工畳11は、この場合、全体として四角形(正方形)のマット状をなしており、例えば、縦横寸法が45cm×45cm、厚み寸法が50mmとされている。尚、この人工畳11は、様々な寸法に形成することができ、その形状としても、長方形でも良く、更には、台形、平行四辺形、三角形、五角形以上の多角形等としても良いことは勿論である。
【0021】
この人工畳11は、図2及び図5(d)に示すように、表面(上面)及び側面を覆うように配置されるプラスチック製シートからなる表皮部12と、裏面(底面)側に配置された補強用のハニカムボード13と、それら表皮部12とハニカムボード13との間に設けられた発泡ウレタン製の芯材14とを備えて構成されている。更に、本実施例では、人工畳11の裏面側(ハニカムボード13の外面)には、塗料の塗布による滑り止め層15が設けられている。
【0022】
このとき、前記表皮部12は、畳表の凹凸模様が表面に転写されていると共に、防水性を有して構成され、本実施例では、表面側の意匠層16と、裏面側の防水層17との二層構造を備えている。より具体的には、前記意匠層16は、例えば特殊アクリルウレタン塗料からなり、表面に畳表と同様の凹凸模様16aが形成されていると共に所定の着色例えば緑色の着色がなされている。前記防水層17は、例えば超速硬化ウレタンエラストマースプレー材からなり、隙間のない緻密構造とされている。ちなみに、前記意匠層16の厚み寸法は、例えば0.2mm、防水層17の厚み寸法は、例えば2.0mmとされている。尚、後述するように、この表皮部12は、超速硬化ウレタンエラストマースプレー材シートを特殊アクリルウレタントップコートで被覆する工法(以下この工法を、「超速硬化スプレーアップ工法」と称する)により製造されるようになっている。
【0023】
前記ハニカムボード13は、比較的厚みや剛性の大きい紙製のもの(ダンボール)が採用され、人工畳11の裏面よりも一回り小さい正方形状に構成されている。前記発泡ウレタン性の芯材14は、後の製造方法の説明にて述べるように、いわゆる現場発泡方式により、前記表皮部12とハニカムボード13との間に充填された形態に成形されるようになっている。前記滑り止め層15は、例えば超速硬化ウレタンエラストマースプレー材から構成されている。
【0024】
さて、上記した人工畳11の製造方法について、図3図5も参照して述べる。人工畳11を製造するにあたっては、前記表皮部12を形成するシート成形工程が実行され、その後に、ウレタン発泡工程が行われる。
【0025】
そのうち、まずシート成形工程について述べる。このシート成形工程は、畳表の凹凸模様を反転した凹凸模様が形成された表面24aを有する金型18(図3(f)、図4参照)に対し、超速硬化ウレタンエラストマースプレー材を吹付けて硬化させた後離型することにより、前記表皮部12を形成するものであり、ここでは、上記のように、超速硬化スプレーアップ工法が採用される。本実施例では、このシート成形工程は、意匠層16用の塗料である前記特殊アクリルウレタントップコートを吹付ける第1工程と、それに重ねて防水層17用の塗料である超速硬化ウレタンエラストマースプレー材を吹付ける第2工程との2段階で行われる。
【0026】
図3は、シート成形工程を実行するために必要な金型18を製造するための製造手順を示しており、ここでは、例えば電鋳加工を用いた製造方法が採用される。即ち、図3(a)に示すように、まず、前記表皮部12の表面部と同等の外形を有する木型モデル20が作成される。この木型モデル20は、例えば正方形状に裁断された木材の表面(上面及び側面を含む)に、天然いぐさから編成された実際の畳表21を貼付けて構成される。
【0027】
次に、詳しく図示はしないが、上記木型モデル20の表面部に例えばシリコンゴムを注型し、シリコンゴムの硬化後に離型することにより、図3(b)に示すように、上記木型モデル20を反転した反転モデル22が製作される。この反転モデル22は、内面部に、前記木型モデル20即ち天然いぐさ製の畳表21の表面外形とは逆の凹凸形状を有したものとされる。
【0028】
この後、図3(c)に示すように、前記反転モデル22の表面部に例えばエポキシ樹脂を主体としたFRP材料を注型し、硬化後に反転モデル22から離型することにより、反転モデル22を更に反転したマスターモデル23が得られる。このマスターモデル23は、木型モデル20の同等の外形を有しており、その表面部には、前記畳表21の表面と同等の微細な凹凸模様が形成されている。
【0029】
そして、前記マスターモデル23の表面に対して導電処理が行われた後、例えばスルファミン酸ニッケル浴にて電鋳加工が行われ、マスターモデル23の表面にニッケルが電着される。図3(d)に示すように、所定厚みの電着金属層24が得られたら電鋳加工が終了され、その後、図3(e)に示すように、電着金属層24がマスターモデル23から離型される。この電着金属層24の表面24aには、マスターモデル23ひいては木型モデル20の表面、即ち畳表21の微細な凹凸形状が、反転された状態で転写されており、この場合の転写精度は極めて高いものとなる。しかる後、電着金属層24に対し、加熱冷却用のパイプの添設や補強などの仕上げ処理が行われることにより、金型18が得られるのである(図3(f)参照)。
【0030】
図4は、上記シート成形工程(超速硬化スプレーアップ工法)の手順を示している。ここで、図4(a)には、この成形工程で用いられる、超速硬化ウレタンエラストマースプレー装置からなる塗装装置25を概略的に示しており、この塗装装置25は、主剤が収容される主剤タンク26、硬化剤(着色剤等の添加剤を含む)が収容される硬化剤タンク27、それら主剤タンク26及び硬化剤タンク27から所定比率で主剤及び硬化剤を吸上げて混合するヒータ内蔵の混合ポンプ28、混合された塗料液この場合超速硬化ウレタンエラストマースプレー材をスプレー状に吹付けるスプレーガン29等を備えている。
【0031】
シート成形工程にあっては、まず、金型18の表面24aに対し、図4(a)に示すように、塗装装置25により、意匠層16となる前記特殊アクリルウレタントップコートを、所定厚み(例えば0.2mm)で吹付ける第1工程が実行される。意匠層16となる塗料が乾燥すると、次いで、図4(b)に示すように、その意匠層16の上から、塗装装置25により、防水層17となる超速硬化ウレタンエラストマースプレー材を、所定厚み(例えば2.0mm)で吹付ける第2工程が実行される。これにて、金型18の表面24aに対し、塗料が所定厚みで2層(意匠層16、防水層17)をなすように付着した状態となる。
【0032】
金型18の表面24aに付着した塗料の乾燥、硬化後に、図4(c)に示すように、金型18の表面24aから、プラスチック製シートからなる表皮部12を離型する工程が実行される。この後、不要部分を切除する等の仕上げが行われ、表皮部12の成形が完了するのである。この表皮部12は、表面側の意匠層16とその裏面側の防水層17との二層構造を備えていると共に、金型18の表面24aの形状を反転した外形(表面形状)を備え、意匠層16の表面には、図1(b)にも示したように、畳表21と同等の微細な凹凸模様16aが十分に高い転写精度で転写されている。
【0033】
そして、図5は、上記のように成形された表皮部12を用いて、人工畳11を製造する手順(ウレタン発泡工程)を示している。このウレタン発泡工程では、発泡型30内に、前記表皮部12、及び、所定寸法に裁断されたハニカムボード13を配置した状態で、それらの間にウレタン原液を注入して発泡させることにより、それら表皮部12及びハニカムボード13と一体化された芯材14が形成される。
【0034】
図5(a),(b)に示すように、使用される発泡型30は、例えば、下型31と上型32とを備えて構成され、それら下型31及び上型32の突合せ(型締め)状態で、それらの間に人工畳11の外形形状に相当するキャビティ33が形成される。図示はしないが、この発泡型30には、型締め、型開きを行う駆動装置や、ウレタン原液を注入するための注入装置等が設けられる。
【0035】
ウレタン発泡工程を行うにあたっては、まず、図5(a)に示すように、キャビティ33の内面に沿うように、例えば下型31側に上記表皮部12を配置すると共に、上型32側にハニカムボード13を配置し、型締めを行う。次に、図5(b)に示すように、発泡型30の型締め状態で、注入装置により、上型32に設けられた図示しない注入口から、主剤、硬化剤、発泡剤等を混合してなる所定量のウレタン原液が、キャビティ33内に注入される。
【0036】
ウレタン原液がキャビティ33内、つまり、表皮部12とハニカムボード13との間において発泡、硬化することにより、それら表皮部12及びハニカムボード13と一体的に接着(一体化)された状態で、発泡ウレタン製の芯材14が形成される。このときの発泡圧は、発泡型30により受けられ、所定密度の芯材14が得られる。発泡ウレタンの硬化後、発泡型30から取出すことにより、図5(c)に示すように、芯材14の表面側(表面及び側面)を表皮部12で覆うと共に、裏面側にハニカムボード13を配した人工畳11が得られる。しかる後、その人工畳11の裏面側に対し、例えば超速硬化ウレタンエラストマースプレー材を塗布し、乾燥させることにより、図5(d)に示すように、滑り止め層15が形成され、人工畳11が完成する。
【0037】
このような本実施例の人工畳11によれば、次のような作用、効果を得ることができる。即ち、まず表皮部12が、畳表21の凹凸模様が表面に転写されたプラスチック製シートから構成されているので、天然いぐさの畳表21に近い外観を得ながらも、触感(手触り)も天然いぐさの畳に近いものとすることができる。この場合、従来のような人工いぐさを編んだものと異なり、畳表21と同様の凹凸模様16aを転写により得るようにしているので、表皮部12の形成が容易になり、比較的安価に済ませることができる。
【0038】
また、プラスチック製シート、この場合超速硬化ウレタンエラストマースプレー材シートを特殊アクリルウレタントップコートで被覆したシートからなる表皮部12は、表面が汚れにくく、汚れても容易に掃除することができる。これと共に、表皮部12の十分な防水性を得ることができ、内部に水分(湿気)が浸入することを防止でき、洗剤等を用いた水拭きや丸洗いも可能となる。表皮部12にダニ等が入り込むこともなく、カビの発生も抑制することができる。表皮部12を、様々な色に自在に着色できる。
【0039】
特に本実施例では、表皮部12を、表面側に位置して凹凸模様16aが形成されていると共に所定の着色がなされた意匠層16と、その意匠層16の裏面側に設けられた隙間のない防水層17との二層構造に構成したので、意匠層16によって、意匠面での効果を得ることができながらも、その裏面側の防水層17によって、高い防水性が得られると共に、それに加えて、硬さ、耐摩耗性、耐薬品性といった、主として物性面での要求される機能を得ることができる。意匠層16に特殊アクリルウレタントップコートを採用したので、その物性としての耐紫外線効果により、色あせを抑える効果も得られる。
【0040】
次に、人工畳11の裏面側には、ダンボール製の補強用のハニカムボード13が配置されているので、軽量でありながら、曲げに対して強いものとすることができる。特に本実施例では、ハニカムボード13の外面に、滑り止め層15を設けたので、人工畳11を建物の床等に敷いた際の、滑り止め層15による滑り止め(ずれ動き防止)の効果が得られることは勿論、人工畳11の裏面側における防水効果や、外観向上の効果をも期待できる。そして、表皮部12とハニカムボード13との間に設けられる芯材14は、発泡ウレタン製とされているので、軽量であり、適度なクッション性が得られると共に、断熱や防音等の効果も得られる。
【0041】
本実施例の人口畳11は、建物内のフローリングの床や、カーペット上に敷いて使用することができることは勿論、屋外でも、ござ等の代わりとして使用することができる。この場合、人口畳11のデザイン(表皮部12の色や全体の形状)については、バラエティに富んだものとすることができ、ユーザの多様な要望に応えることが可能となる。本実施例の人口畳11は、従来例で挙げたようなシートを多層に積層して畳床を構成するものと異なり、芯材14自体を発泡ウレタンの単層から構成でき、全体として構成する部材数が少なく、簡単で安価な構成で済ませることができる。
【0042】
そして、本実施例の人工畳11の製造方法によれば、シート成形工程において、畳表21の凹凸模様を反転した凹凸模様が形成された表面部24aを有する金型18に対し、塗料を吹付け、硬化させた後離型することにより、プラスチック製シートからなる表皮部12を形成するようにした。この場合、畳表21の凹凸模様が表面に転写された防水性を有する表皮部12を簡単に得ることができ、その際の転写精度を充分に高いものとすることができる。
【0043】
特に本実施例では、シート成形工程を、意匠層16用の塗料である特殊アクリルウレタントップコートを吹付ける第1工程と、それに重ねて防水層17用の塗料である超速硬化ウレタンエラストマースプレー材を吹付ける第2工程との2段階で行い、凹凸模様16aが形成されると共に所定の着色がなされた意匠層16と、その意匠層16の裏面側に設けられた隙間のない防水層17との二層構造の表皮部を得るようにした。これにより、上記したような、意匠層16とその裏面側の防水層17との二層構造を備えた表皮部12を、簡易に得ることができる。
【0044】
そして、ウレタン発泡工程において、発泡型30内に表皮部12及びハニカムボード13を配置した状態で、それらの間にウレタン原液を注入して発泡させることにより、表皮部12及びハニカムボード13と一体化された芯材14を形成するように構成した。これにより、発泡ウレタン製の芯材13を容易に得ることができ、表皮部12を製造するシート成形工程と併せて、人工畳11の製造に適し、全体的に製造工程を簡単に済ませることができる。特に本実施例では、ウレタン発泡工程後に、ハニカムボード13の裏面に、塗料例えば超速硬化ウレタンエラストマースプレー材の塗布により滑り止め層15を形成するようにしたので、滑り止め層15の形成も容易に行うことができる。
【0045】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば、以下のような拡張、変更が可能である。
即ち、表皮部12の成形のための金型18の製造方法に関して、電鋳加工を用いるものに限らず、マスターモデル23に対してシリコン型やエポキシ型を用いるような方法も可能である。上記実施例では、表皮部12を、意匠層16及び防水層17の二層構造としたが、単層構造であっても良く、或いは3層以上の構造としても良い。また、ハニカムボード13の材質としても、紙製(ダンボール)に限らず、例えばポリプロピレン等の合成樹脂製などであっても良い。
【0046】
その他、上記実施例で使用した各部の塗料(被覆材)の材質は一例を挙げたものであり、また、表皮部12の厚み寸法や人工畳11の全体の寸法等の具体的数値についても、一つの具体例を示したに過ぎず、種々変形が可能である等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0047】
図面中、11は人工畳、12は表皮部、13はハニカムボード、14は芯材、15は滑り止め層、16は意匠層、17は防水層、18は金型、25は塗装装置、30は発泡型を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6