(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ITO透明導電膜付きフィルムの該ITO透明導電膜上に、高分子と酸化チタン粒子とを含む組成物から形成された多孔質膜が積層されており、前記高分子が、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、及びポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする酸化チタン含有多孔質膜積層体。
前記ITO透明導電膜付きフィルムにおけるフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルムを含む請求項1〜5の何れか1項に記載の酸化チタン含有多孔質膜積層体。
前記多孔質膜形成用材料分散液を、ITO透明導電膜付きフィルムの該ITO透明導電膜上へフィルム状に流延した後、相対湿度70〜100%、温度15〜100℃の雰囲気下に0.2分間以上保持し、その後、これを凝固液中に浸漬する請求項7記載の酸化チタン含有多孔質膜積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体は、ITO透明導電膜付きフィルムの該ITO透明導電膜上に、高分子と酸化チタン粒子とを含む組成物から形成された多孔質膜が積層されている。
【0022】
[ITO透明導電膜付きフィルム]
ITO透明導電膜付きフィルムとしては、フィルム基材表面にITO(indium tin oxide;スズを含むインジウム酸化物)膜が形成されたものであれば特に限定されない。
【0023】
前記フィルム基材としては、少なくとも樹脂フィルムを有するフィルム基材を使用でき、単層であってもよく、同一又は異なる素材からなる複数の層からなる複合フィルムであってもよい。また、前記フィルム基材は、樹脂フィルムのみで構成されていてもよく、樹脂フィルムと樹脂フィルム以外の薄葉体との積層体であってもよい。樹脂フィルム以外の薄葉体としては、例えば、金属箔等が挙げられる。ITO膜は、前記樹脂フィルム上に、例えばスパッタ法により形成できる。
【0024】
前記樹脂フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂、非芳香族ポリアミド系樹脂)、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、ポリアリレート系樹脂等のプラスチック等が挙げられる。これらの材料は単独で又は2種以上を混合して使用してもよく、また、上記樹脂の共重合体を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。さらに、上記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を主鎖又は側鎖に含むポリマー(例えば、ポリシロキサンとポリイミドの骨格を主鎖に含むポリシロキサン含有ポリイミド等)を用いることもできる。
【0025】
前記フィルム基材としては、少なくともポリエステルフィルム(特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等)を含むのが好ましい。この場合、ITO膜は該ポリエステルフィルム上に形成されるのが好ましい。また、前記フィルム基材は、ポリエステルフィルム(特にポリエチレンテレフタレートフィルム)のみから構成されていてもよく、ポリエステルフィルムと、他の樹脂フィルム及び/又は樹脂フィルム以外の薄葉体との積層体であってもよい。
【0026】
ITO透明導電膜付きフィルム(又は、フィルム基材)の厚みは、例えば1〜300μm、好ましくは50〜250μm、さらに好ましくは100〜200μmである。厚みが薄くなりすぎると取り扱いが困難になり、一方厚すぎる場合には柔軟性が低下する場合がある。
【0027】
[多孔質膜]
本発明における多孔質膜は高分子と酸化チタンとを含む組成物から形成された多孔質膜であり、多数の微小孔が存在する。前記多孔質膜における孔(微小孔)の平均孔径は0.01〜10μmの範囲が好ましく、空孔率は30〜85%の範囲が好ましい。この多孔質膜においては、酸化チタン粒子が高分子中に良好な均一性で分散している。また、酸化チタン粒子が高分子中に分散しているため、空孔を埋めることなく高い空孔率を維持している。
【0028】
多孔質膜を構成する高分子としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂、非芳香族ポリアミド系樹脂)、ポリスルホン系樹脂、アクリル系樹脂、アラミド系樹脂、ポリイミダゾール系樹脂、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂(液晶性ポリエステル樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は共重合体(グラフト共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体)であってもよい。また、上記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を主鎖又は側鎖に含むポリマー(例えば、ポリシロキサンとポリイミドの骨格を主鎖に含むポリシロキサン含有ポリイミド等)を用いることもできる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
これらの中でも、前記高分子として、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂、非芳香族ポリアミド系樹脂)及びポリスルホン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。また、特に、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂、非芳香族ポリアミド系樹脂)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。これらの高分子は、特に、耐熱性に優れ、機械的強度、耐薬品性、電気特性に優れる。
【0030】
なお、多孔質膜を構成する高分子は架橋構造を有する高分子であってもよい。このような高分子は、例えば、後述する本発明の多孔質膜の製造方法において、架橋可能な官能基を有する高分子と、前記架橋可能な官能基と架橋反応しうる架橋剤とを含む多孔質膜形成用材料を用いて多孔質膜を形成し、その後、架橋反応させることにより得ることができる。架橋構造を有する高分子を用いた多孔質膜は、膜強度、耐熱性、耐薬品性、耐久性に優れる。
【0031】
前記架橋可能な官能基としては、例えば、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルデヒド基、酸無水物基などが挙げられる。
【0032】
ポリイミド系樹脂は、例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応によりポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を得て、それをさらにイミド化することにより製造することができる。多孔質膜をポリイミド系樹脂で構成する場合には、イミド化すると溶解性が悪くなるため、まずポリアミック酸の段階で多孔質膜を形成してからイミド化(熱イミド化、化学イミド化等)することが多い。ポリイミド前駆体の分子中には多数のカルボキシル基やアミド基を有しているため、これを架橋可能な官能基として用いることができる。また、ポリイミド系樹脂は、末端にカルボキシル基、アミノ基等が残存していることが多く、これらも架橋可能な官能基として利用することができる。
【0033】
ポリアミドイミド系樹脂は、通常、無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応、又は無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応により重合した後、イミド化することにより製造することができる。ポリアミドイミド系樹脂は、分子中にアミド基を多数有しているため、これを架橋可能な官能基として用いることができる。また、イミドの一部が未反応の前駆体(アミック酸)の状態で反応性を残したものも存在し、このアミック酸を構成するアミド基やカルボキシル基を架橋可能な官能基として利用することができる。また、ポリアミドイミド系樹脂は、上記の反応により製造されるため、末端にカルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基等が残存している場合が多く、これらを架橋可能な官能基として利用することもできる。
【0034】
ポリエーテルイミド系樹脂は、例えば、エーテル結合を有する芳香族テトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応によりポリアミック酸を得て、それをさらにイミド化することにより製造することができる。このアミック酸を構成するアミド基やカルボキシル基を架橋可能な官能基として利用することができる。また、ポリエーテルイミド系樹脂は、末端に、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基等が残存している場合が多く、これらも架橋可能な官能基として利用することができる。
【0035】
ポリアミド系樹脂は、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合などによって製造することができる。ポリアミド系樹脂には芳香族ポリアミド系樹脂も含まれる。ポリアミド系樹脂は、分子中に多数のアミド基を有しているため、これを架橋可能な官能基として好ましく用いることができる。また、ポリアミド系樹脂は、末端にカルボキシル基、アミノ基等が残存している場合が多く、これらを架橋可能な官能基として利用することができる。
【0036】
また、架橋可能な官能基は、樹脂の主鎖に存在していてもよいし、側鎖に存在していてもよい。さらに分子鎖の途中に存在していてもよいし、末端に存在していてもよい。また、架橋可能な官能基は高分子に含まれるベンゼン環等の環に存在していてもよい。
【0037】
前記架橋剤は、前記高分子が有している架橋可能な官能基と反応して架橋構造を形成しうる化合物である。架橋剤としては、例えば、2個以上のエポキシ基を有する化合物、ポリイソシアネート化合物、シランカップリング剤、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、アルキッド樹脂、ジアルデヒド化合物、酸無水物などが挙げられる。架橋剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
前記2個以上のエポキシ基を有する化合物は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルデヒド基、酸無水物基と反応しうる。ポリイソシアネート化合物は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、酸無水物基と反応しうる。シランカップリング剤は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルデヒド基、酸無水物基と反応しうる。メラミン樹脂は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、アルデヒド基と反応しうる。フェノール樹脂は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルデヒド基、酸無水物基と反応しうる。尿素樹脂は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、アルデヒド基と反応しうる。グアナミン樹脂は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、アルデヒド基と反応しうる。アルキッド樹脂は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、エポキシ基、酸無水物基と反応しうる。ジアルデヒド化合物は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基と反応しうる。酸無水物は、前記高分子が有している架橋可能な官能基、例えば、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、エポキシ基と反応しうる。
【0039】
高分子中の架橋可能な官能基と架橋剤とを反応させる方法としては、熱、活性エネルギー線(可視光線、紫外線、電子線、放射線等)照射による方法が挙げられる。架橋剤との反応は無触媒で進行させることも可能であるが、触媒を添加して反応を促進させることもできる。
【0040】
前記架橋可能な官能基を有している高分子と架橋剤との配合比については、特に限定されることはなく、所望の架橋度合い、高分子と架橋剤の種類、官能基と架橋剤との反応性等を考慮して、適宜決定される。例えば、架橋剤の配合量は、架橋可能な官能基を有する高分子100重量部に対して、2〜312.5重量部、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは20〜150重量部である。架橋剤の量が多すぎると、架橋反応に寄与しない架橋剤が架橋処理後の多孔質膜に残存し、多孔質膜の特性を低下させるおそれが生じる。
【0041】
本発明においては、多孔質膜が酸化チタン粒子を含有するため、多孔質の機能に加えて、反射特性、美観、吸着特性(分離特性)、濡れ性、光触媒活性、高誘電性等の機能を有する。従って、ITOを用いた電極に、空孔特性に加えて、反射特性、美観、吸着特性(分離特性)、濡れ性、光触媒活性、高誘電性等の機能を付与できる。
【0042】
酸化チタン粒子の一次粒子の平均粒径は、例えば0.01〜10μm、好ましくは0.05〜8μm、さらに好ましくは0.1〜3μmである。酸化チタン粒子の平均粒径が小さすぎる場合は、凝集が起こりやすく、高分子中に均質に分散するのが難しくなる。また、酸化チタン粒子の平均粒径が大きすぎると、高分子が形成する孔構造を不均質なものにしやすくなる。
【0043】
前記多孔質膜における酸化チタン粒子の含有量は、例えば10〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、さらに好ましくは25〜85重量%である。酸化チタン粒子の含有量が少なすぎると、酸化チタン粒子の添加効果、すなわち酸化チタン粒子に基づく機能性が小さくなり、逆に酸化チタン粒子の含有量が多すぎると、膜が脆くなる傾向となる。
【0044】
多孔質膜の厚みは、例えば5〜200μm、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは15〜50μmである。厚みが薄くなりすぎると、安定して製造することが困難になり、また、クッション性、印刷特性、機械強度が低下する場合がある。一方、厚すぎる場合には孔径分布を均一に制御することが困難になる。
【0045】
本発明において、多孔質膜の多数の微小孔は、連通性の低い独立した微小孔(独立微小孔)であってもよいし、連通性のある微小孔(連続微小孔)であってもよい。独立微小孔の多い多孔質膜は、断熱性やクッション性、非透過性が求められる用途に適しており、連続微小孔の多い多孔質膜は、透過性や吸着性、高触媒活性等が求められる用途に適している。多孔質膜における微小孔の平均孔径[連続微小孔の多い多孔質膜(ガーレー値が30秒/100cc以下の多孔質膜)の場合は、多孔質膜表面の平均孔径であり、独立微小孔の多い多孔質膜(ガーレー値が30秒/100ccを超える多孔質膜)においては多孔質膜内部の微小孔の平均孔径]は、0.01〜10μmである。微小孔の平均孔径は、好ましくは0.1〜8μm、さらに好ましくは0.5〜5μmである。微小孔の平均孔径が上記範囲を外れると、用途に応じた所望の効果が得られにくい。例えば、微小孔の平均孔径が小さすぎる場合には、透過性能及び強度が低下する。また、微小孔の平均孔径が大きすぎる場合は、多孔質膜中で孔径分布を均一に制御することが困難になり、多孔質膜の各部位で比誘電率が不均質となる場合があり、また、分離効率、反射特性、吸着特性、触媒活性等が低下しやすくなる。なお、多孔質膜表面の最大孔径は15μm以下が好ましい。
【0046】
本発明において、多孔質膜の空孔率(内部の平均開孔率)は、30〜85%であり、好ましくは35〜83%、さらに好ましくは40〜80%である。多孔質膜の空孔率が上記範囲を外れると、用途に応じた所望の空孔特性が得られなくなる。例えば、空孔率が低すぎると、透過性能、吸着特性、クッション性等が充分でなかったり、機能性材料を充填しても機能が発揮できないことがある。一方、空孔率が高すぎると、機械的強度に劣るおそれがある。
【0047】
多孔質膜がこのような微小孔の平均孔径と空孔率とを備えることにより、柔軟性と優れた空孔特性を備える一方、適度な剛性を有するため取扱性にも優れる。
【0048】
多孔質膜の表面の開孔率(表面開孔率)としては、例えば48%以上(例えば48〜80%)であり、好ましくは60〜80%程度である。表面開孔率が低すぎると透過性能が充分でない場合が生じる他、空孔に機能性材料を充填してもその機能が十分に発揮できないことがあり、逆に高すぎると機械的強度が低下しやすくなる。
【0049】
多孔質膜に存在する微小孔の連通性は、透気度を表すガーレー値、及び純水透過速度などを指標とすることができる。膜厚30μmの多孔質膜のガーレー値は、例えば0.2〜30秒/100cc、好ましくは0.5〜25秒/100cc、さらに好ましくは0.8〜20秒/100cc、特に好ましくは1〜10秒/100ccである。数値が大きすぎると、実用上の透過性能が充分でなかったり、機能性材料を充分に充填できないためにその機能が発揮できないことがある。一方、数値が小さすぎると、機械的強度に劣る可能性がある。
【0050】
多孔質膜の微小孔の径、空孔率、透気度、開孔率は、後述する酸化チタン含有多孔質膜積層体の製造方法において、水溶性ポリマーの種類や量、水の使用量、流延時の湿度、温度及び時間などを適宜選択することにより所望の値に調整することができる。
【0051】
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体は、例えば、下記方法に基づくテープ剥離試験を行ったとき、前記ITO透明導電膜付きフィルムと多孔質膜層との間で界面剥離を起こさないものが好ましい。すなわち、ITO透明導電膜付きフィルムと多孔質膜層とが、下記のテープ剥離試験で界面剥離を起こさない程度の層間密着強度で直接的に積層されていることが好ましい。
テープ剥離試験:
積層体の多孔質膜層表面に24mm幅の寺岡製作所製マスキングテープ[フィルムマスキングテープNo.603(♯25)]をテープ一端から50mmの長さ分貼り付け、貼り付けられた前記テープを、直径30mm、200gf荷重のローラー(Holbein Art Materials Inc.社製、耐油性硬質ゴムローラーNo.10)で圧着し、その後、引張試験機を用いてテープ他端を剥離速度50mm/分で引っ張り、T型剥離を行う。
【0052】
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体は、強度の高いITO透明導電膜付きフィルムに柔軟な多孔質膜が積層された構成であるため、上記のような優れた空孔特性及び酸化チタン粒子の持つ諸特性を有すると同時に十分な耐折性を備えている。耐折性は、下記条件に基づく折り曲げ試験を繰り返し行い、被検材が切断されるまでの回数が10回以上である場合に耐折性を有すると評価する。また、切断までの折り曲げ回数が高いほど優れた耐折性を有すると判断され、例えば電子材料等で繰り返し折り曲げが要求される用途においては切断までの回数が100回以上程度の耐折性を備えていることが好ましい。折曲げ試験は、東洋精機製作所製MIT耐揉疲労試験機MIT−Dを使用し、サンプル形状15×110mm、折り曲げ角度135°、折り曲げ面の曲率半径(R)0.38mm、折り曲げ速度175cpm、張力4.9Nの条件下、JIS C 5016の耐折性試験に準じて行われる。
【0053】
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体によれば、折り曲げ回数が20000回でも切断されず、極めて優れた耐折性を有しているものも含まれる。このため、優れた加工性、成形性を発揮でき、多様な形態で広範な用途に利用できる。
【0054】
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体の特に好ましい形態は、連通性が高い微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔質膜層を有する酸化チタン含有多孔質膜積層体であり、その多孔質膜層の厚みが5〜200μmであり、空孔率が30〜85%であって、ITO透明導電膜付きフィルムの厚みが1〜300μmである。このような酸化チタン含有多孔膜積層体は、多孔質膜層及びITO透明導電膜付きフィルムを構成する材料や厚み、製造条件(例えば、加湿条件)等を適宜設定することにより製造できる。
【0055】
[酸化チタン含有多孔質膜積層体の製造]
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体は、相転換法を利用して製造できる。すなわち、多孔質膜(多孔質膜層)を構成すべき高分子と無機粒子とを含む多孔質膜形成用材料の分散液を、ITO透明導電膜付きフィルムの該ITO透明導電膜上へフィルム状に流延し、その後、これを凝固液中に浸漬し、次いで乾燥に付す工程を経ることにより製造できる。
【0056】
多孔質膜形成用材料の分散液(以下、単に「分散液」と称する場合がある)は、例えば、多孔質膜を構成する主たる素材となる高分子成分、酸化チタン粒子、及び水溶性極性溶媒を含み、必要に応じて水溶性ポリマー、必要に応じて水、必要に応じて架橋剤(高分子の分子内に架橋構造を形成する場合)を含んでいる。該分散液においては、多孔質膜を構成する高分子成分の代わりに、該高分子成分の単量体成分や、そのオリゴマー、イミド化や環化等の前の前駆体等を用いてもよい。
【0057】
前記分散液に水溶性ポリマーや水を添加することは、膜構造をスポンジ状に多孔化するために効果的である。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、多糖類等やその誘導体などが挙げられる。これらの水溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、多孔質膜に存在する微小孔の連通性の点から、ポリビニルピロリドンが特に好ましい。多孔化のためには、水溶性ポリマーの重量平均分子量は200以上がよく、好ましくは300以上、さらに好ましくは1000以上、特に好ましくは5000以上(例えば、5000〜20万)である。水の添加量により孔径を調整でき、例えば、前記分散液への水の添加量を増やすことで孔径を大きくすることが可能となる。
【0058】
水溶性ポリマーは、膜構造を均質なスポンジ状多孔構造にするのに非常に有効であり、水溶性ポリマーの種類と量を変更することにより多様な構造を得ることができる。このため、水溶性ポリマーは、所望の空孔特性を付与する目的で、多孔質膜を形成する際の添加剤として極めて好適に用いられる。
【0059】
一方、水溶性ポリマーは、最終的には多孔質膜を構成しない、除去すべき不要な成分である。湿式相転換法を利用する本発明の方法においては、水溶性ポリマーは水等の凝固液に浸漬して相転換する工程において洗浄除去される。これに対し、乾式相転換法においては、多孔質膜を構成しない成分(不要な成分)は加熱により除去され、水溶性ポリマーは通常加熱除去には不向きであることから、添加剤として利用することは極めて困難である。このように、乾式相転換法によっては多様な空孔構造を形成することは困難であるのに対し、本発明の製造方法は、所望の空孔特性を有する多孔質膜を容易に製造することが可能である点で有利である。
【0060】
本発明の方法において、水溶性ポリマーの添加量を増やしていくと、孔の連通性が高くなる傾向となる。よって、連通性の低い多孔質膜(独立微小孔の多い多孔質膜)を得たい場合には、水溶性ポリマーの量を最小量とするのが好ましく、水溶性ポリマーを使用しないことも可能である。
【0061】
水溶性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド,N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられ、前記高分子成分として使用するポリマーの化学骨格に応じて溶解性を有するもの(高分子成分の良溶媒)を使用することができる。これらの溶媒は単独又は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0062】
前記分散液における各成分の配合量は、前記分散液を基準として、前記高分子成分8〜25重量%、前記架橋剤0〜25重量%、前記水溶性ポリマー10〜50重量%、水0〜10重量%、及び水溶性極性溶媒30〜82重量%とすることが好ましい。この際に、前記高分子成分の濃度が低すぎると多孔質膜の厚みが不十分となったり、所望の空孔特性が得られにくく、多孔質膜の強度も弱くなる傾向となり、一方、高分子成分の濃度が高すぎると空孔率が小さくなる傾向となる。水溶性ポリマーの濃度が低すぎると多孔質膜内部に10μmを超えるような巨大ボイドが発生し均質性が低下しやすくなる。水溶性ポリマーの濃度が高すぎると、各成分の溶解性が悪くなったり、多孔質膜の強度が低下するなどの不具合が生じやすい。
【0063】
前記多孔質膜形成用材料の分散液をITO透明導電膜付きフィルムの該ITO透明導電膜上へフィルム状に流延し、その後、凝固液中に浸漬し、相転換させる。
【0064】
相転換法に用いる凝固液としては、高分子成分を凝固させる溶剤(高分子成分の非溶剤)であればよく、高分子成分として使用するポリマーの種類によって適宜選択されるが、例えば、水;メタノール、エタノール等の1価アルコール、グリセリン等の多価アルコールなどのアルコール;ポリエチレングリコール等の水溶性高分子;これらの混合物などの水溶性凝固液などが使用できる。
【0065】
前記凝固液の温度は、特に制限されないが、例えば0〜100℃の範囲が好ましい。凝固液の温度が0℃未満であると、溶剤等の洗浄効果が低下しやすい。凝固液の温度が100℃を超えると、溶剤や凝固液が揮発して、作業環境が損なわれる。凝固液としては、コスト、安全性等の観点から、水が好ましく用いられる。凝固液として水を用いた場合、水の温度5〜60℃程度が適切である。前記凝固液中への浸漬時間は、特に制限されないが、水溶性極性溶媒、水溶性ポリマーが十分に洗浄される時間を適宜選択する。洗浄時間が短すぎると、残存した溶媒により、乾燥工程で多孔質構造が壊れるおそれがある。洗浄時間が長すぎると、製造効率が低下し、製品コストの上昇につながる。洗浄時間は、多孔質膜の厚み等にもよるため、一概には言えないが、0.5〜30分間程度とすることができる。
【0066】
流延後のフィルム状物を凝固液中に浸漬する前に、流延後のフィルム状物を相対湿度70〜100%、温度15〜100℃からなる雰囲気下に、0.2分間以上(例えば、0.2〜180分間)、好ましくは0.2〜60分間、さらに好ましくは0.2〜15分間)保持し、その後、前記凝固液中へ導くのが好ましい。流延後のフィルム状物を上記の加湿条件に置くことにより、均質性の高い多孔質膜が得られやすくなる。加湿下に置くと、水分がフィルム表面から内部へと侵入し、前記分散液の層分離を効率的に促進すると考えられる。そのため、多孔質膜のITO透明導電膜付きフィルム側表面の反対側の表面(多孔質膜の空気側表面)の開孔率が向上するものと推察される。好ましい条件は、相対湿度90〜100%、温度30〜80℃であり、さらに好ましい条件は、相対湿度約100%(例えば、95〜100%)、温度40〜70℃である。
【0067】
次に、フィルム状多孔質層が積層されたITO透明導電膜付きフィルムを、凝固液から取り出して乾燥する。乾燥処理の方法は、特に制限されず、凝固液等の溶剤成分を除去しうる方法であれば特に限定されず、加熱下でもよく、室温による自然乾燥であってもよい。加熱処理の方法は特に制限されず、熱風処理、熱ロール処理、あるいは、恒温槽やオーブン等に投入する方法でもよく、多孔膜積層体を所定の温度にコントロールできるものであればよい。加熱温度は、例えば室温〜600℃程度の広範囲から選択することができる。加熱処理時の雰囲気は空気でも窒素や不活性ガスでもよい。空気を使用する場合が最も安価であるが、酸化反応を伴う可能性がある。これを避ける場合は、窒素や不活性ガスを使用するのがよく、コスト面からは窒素が好適である。加熱条件は、生産性、多孔質膜層及び基材の物性等を考慮して適宜設定される。乾燥に付すことにより、ITO透明導電膜付きフィルム表面に多孔質膜層が直接成形された酸化チタン含有多孔質膜積層体を得ることができる。
【0068】
こうして得られた酸化チタン含有多孔質膜積層体には、さらに、熱、可視光線、紫外線、電子線、放射線等を用いて架橋処理を施してもよい。前記処理により、多孔質膜層を構成する前駆体の重合、架橋、硬化等が進行して高分子化合物を形成し、剛性や耐薬品性等の特性が一層向上した多孔質膜層を有する積層体を得ることができる。例えば、ポリイミド系前駆体を用いて成形した多孔質膜層には、さらに熱イミド化あるいは化学イミド化等を施すことによりポリイミド多孔質膜層を得ることができる。ポリアミドイミド系樹脂を用いて成形された多孔質膜層には熱架橋を施すことができる。なお、熱架橋は、凝固液に導いた後、乾燥に付すための加熱処理と同時に施すことも可能である。多孔質膜形成用材料の分散液に架橋剤を添加する場合も上記と同様の処理により架橋反応が進行して、高分子の分子内に架橋構造が形成される。
【0069】
なお、酸化チタン含有多孔質膜積層体の多孔質膜(多孔質膜層)の表面上に、後述する各種機能性層を形成する場合には、次の(b)、(c)のように、機能性層の形成(機能性の発現)の際に架橋を起こすようにすれば、多孔質膜と機能性層との密着性向上に有効である。
【0070】
多孔質膜表面に機能性層を設けて(機能性化処理)、機能性積層体を得る場合には、次のような架橋処理を施すタイミングがある。
(a)得られた多孔質膜(ITO透明導電膜付きフィルム上に形成された多孔質膜)に架橋処理を施し、その後、多孔質膜表面に機能性層を設けて、機能性積層体を得る方法
(b)得られた多孔質膜(ITO透明導電膜付きフィルム上に形成された多孔質膜)表面に機能性層を設けて、その後、架橋処理を施し、機能性積層体を得る方法(加熱による架橋処理は、機能性層の機能発現化のための加熱処理を兼ねてもよい)
(c)得られた多孔質膜(ITO透明導電膜付きフィルム上に形成された多孔質膜)に部分的架橋処理を施し、その後、多孔質膜表面に機能性層を設けて、さらに、再度の架橋処理を施して架橋処理を完全とし、機能性積層体を得る方法[ここで、部分的架橋処理とは、それにより、半硬化状態(いわゆるBステージ)とすることを意図している]
【0071】
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体における多孔質膜には、所望の特性を付与するため、必要に応じて熱処理や被膜形成処理が施されていてもよい。
【0072】
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体の製造方法によれば、ITO透明導電膜付きフィルムの該ITO透明導電膜上に、例えば、平均孔径が0.01〜10μm、空孔率が30〜85%であり、厚みが5〜200μm程度の酸化チタン含有多孔質膜層が形成された積層体を容易に得ることができる。多孔質膜の微小孔の径、空孔率等は、前記分散液の構成成分の種類や量、水の使用量、流延時の湿度、温度及び時間などを適宜選択することにより所望の値に調整することができる。
【0073】
本発明の酸化チタン含有多孔質膜積層体における多孔質膜においては、該多孔質膜に耐薬品性高分子化合物を被覆してもよい。
【0074】
ここで、薬品とは、従来の多孔質膜を構成する樹脂を溶解、膨潤、収縮、分解して、多孔性フィルムとしての機能を低下させるものとして公知のものであり、多孔質膜の構成素材や用途によって異なり一概に言うことはできないが、このような薬品の具体例として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、シクロヘキサノン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン、テトラヒドロフラン(THF)等の強い極性溶媒;アルカリ溶液;酸性溶液;及びこれらの混合物等が挙げられる。前記アルカリ溶液には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩;トリエチルアミン等のアミン類;アンモニア等のアルカリ性物質を溶解した水溶液や有機溶媒溶液が含まれる。前記酸性溶液には、塩化水素、硫酸、硝酸等の無機酸;酢酸、フタル酸等のカルボン酸などの有機酸等の酸を溶解した水溶液や有機溶媒溶液が含まれる。
【0075】
耐薬品性高分子化合物としては、強い極性溶媒、アルカリ、酸等の薬品に優れた耐性を有していれば特に制限されないが、例えば、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、アルキッド系樹脂、トリアジン系樹脂、フラン系樹脂、不飽ポリエステル、エポキシ系樹脂、ケイ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂;ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、フタル酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、飽和ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、キチン、キトサンなどの熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの高分子化合物は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。また、高分子化合物は、共重合物でもよく、グラフト重合物であってもよい。
【0076】
このような耐薬品性高分子化合物により多孔質膜が被覆されていると、前記強い極性溶媒、アルカリ、酸等の薬品と接触した場合にも、多孔質膜が溶解したり、膨潤して変形するなどの変質が全く生じないか、使用目的や用途に影響のない程度に変質を抑制できる。例えば、多孔質膜と薬品とが接触する時間が短い用途では、その時間内で変質しない程度の耐薬品性が付与されていればよい。
【0077】
なお、前記耐薬品性高分子化合物は、同時に耐熱性を有する場合が多いため、多孔質膜の耐熱性が低下するおそれが少ない。また、耐薬品性高分子化合物の被覆によって、多孔質膜表面の特性を変化させることも可能である。例えば、フッ素系樹脂を使用すれば、表面を撥水性にすることができ、エチレン−ビニルアルコール共重合体を使用すれば、表面を親水性にすることも可能となる。さらに、フェノール系樹脂を使用すれば、中性の水に対しては表面を撥水性に、アルカリ性の水溶液に対しては表面を親水性にすることも可能となる。このように、被覆に用いる耐薬品性高分子化合物の種類を適宜選択することにより、液体に対する親和性(親水性等)を変更することができる。
【0078】
[機能性積層体(複合材料)]
本発明の前記酸化チタン含有多孔質膜積層体の該多孔質膜層の表面に、導電体層、誘電体層、半導体層、絶縁体層、抵抗体層などの機能性層を設けることができる。このように、前記酸化チタン含有多孔質膜積層体の多孔質膜層の表面に導電体層などを設けることにより、多孔質膜の空孔特性と酸化チタン粒子の機能特性に加えて、さらに別の機能を付加することができる。このような機能性積層体は複数の機能を備えているため、より広範な分野において多様な用途に利用することができる。本明細書では、このように前記積層体の多孔質膜層の表面に機能性層を設けた機能性積層体を「複合材料」と称する場合がある。
【0079】
前記積層体の多孔質膜層の表面上への各種機能性層又はその前駆体層の形成は、例えば、メッキ、印刷技術等により行うことができる。メッキにより形成される層には、金属メッキ層、磁性メッキ層が含まれる。
【0080】
金属メッキ層は、例えば、前記積層体の多孔質膜層(単に「多孔質膜」と称する場合がある)の表面に薄い金属被覆として形成されていてもよい。金属メッキ層を構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、すず、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、鉛、クロム、鉄、インジウム、コバルト、ロジウム、白金、パラジウムやこれらの合金等を挙げることができる。さらにニッケル−りん、ニッケル―銅―りん、ニッケル―鉄―りん、ニッケル―タングステン―りん、ニッケル―モリブデン―りん、ニッケル―クロム―りん、ニッケル―ホウ素―りん等多種多様の金属以外の元素を含む合金皮膜も挙げることができる。金属メッキ層は、上記の金属を単独で又は複数を組み合わせて用いてもよく、単層であってもよく、複数の層を積層してもよい。
【0081】
磁性メッキ層を構成する材料としては、磁性を有する化合物であれば特に限定されず、強磁性体及び常磁性体の何れであってもよく、例えばニッケル−コバルト、コバルト−鉄−りん、コバルト−タングステン−りん、コバルト−ニッケル−マンガン等の合金;メトキシアセトニトリル重合体等のラジカルを発生し得る部位を有する化合物、デカメチルフェロセンの電荷移動錯体等の金属錯体系化合物、グラファイト化途上炭素材料であるポリアクリロニトリルなどの化合物からなる有機磁性体等が例示できる。
【0082】
金属メッキ層の形成には、例えば、無電解メッキ及び電解メッキ等の公知の方法を利用できる。本発明においては、多孔質膜が高分子成分で構成されている観点から、無電解メッキが好ましく用いられ、無電解メッキと電解メッキを組み合わせて用いることもできる。
【0083】
金属メッキ層の形成に用いるメッキ液は、各種の組成のものが知られており、メーカーが販売しているものを入手することもできる。メッキ液の組成は特に制限されず、各種の要望(美観、硬さ、耐磨耗性、耐変色性、耐食性、電気伝導性、熱伝導性、耐熱性、摺動性、撥水性、ぬれ性、半田ぬれ性、シール性、電磁波シールド特性、反射特性等)に合ったものを選択すればよい。
【0084】
複合材料の製造方法の一形態は、上記多孔質膜の表面に、光により反応基を生成する化合物からなる感光性組成物を塗布して感光層を設ける工程、前記感光層にマスクを介して露光し、露光部に反応基を生成させる工程、及び露光部に生成された反応基を金属と結合させて導体パターンを形成する工程を含む方法;又は、上記製造方法において、光により反応基を生成する化合物の代わりに光により反応基を消失する化合物を用い、露光部に反応基を消失させる工程、未露光部に残る反応基を金属と結合させて導体パターンを形成する工程を含む方法で行われる。
【0085】
光により反応基を生成する化合物としては、金属(金属イオンを含む)と結合形成可能な反応基を分子内に生成する化合物であれば特に限定されず、例えば、オニウム塩誘導体、スルフォニウムエステル誘導体、カルボン酸誘導体およびナフトキノンジアジド誘導体から選択される少なくとも1種の誘導体を含有する感光性化合物等が挙げられる。これらの感光性化合物は、汎用性に富み、光照射により金属と結合可能な反応基を容易に生成しうるため、微細なパターンを有する導電部を精度良くできる。
【0086】
光により反応基を消失する化合物としては、例えば、金属(金属イオンを含む)と結合形成可能な反応基を有する化合物であって、光の照射により該反応基が疎水性官能基を生成して、水に溶解あるいは膨潤しにくくなる化合物などが挙げられる。
【0087】
上記光により生成又は消失する反応基とは、前記金属(金属イオンを含む)と結合形成可能な反応基であれば特に限定されず、例えば金属イオンとイオン交換可能な官能基などが例示でき、好ましくは陽イオン交換性基が挙げられる。陽イオン交換性基には、例えば−COOX基、−SO
3X基あるいは−PO
3X
2基等の酸性基(ここで、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウム基)等が含まれる。なかでも、pKa値が7.2以下の陽イオン交換性基によれば、単位面積当たりに十分な金属との結合を形成しうるため、所望の導電性を容易に得ることができ好ましい。このような反応基は、次工程において、金属イオン交換され、金属還元体や金属微粒子による安定した吸着能を発揮することができる。
【0088】
照射光としては、反応基の生成又は消失を促進できれば特に限定されず、例えば280nm以上の波長の光を用いることができるが、多孔質膜の露光による劣化を避けるため、好ましくは波長が300nm以上(300〜600nm程度)、特に350nm以上の光が好ましく用いられる。
【0089】
マスクを介して光照射後、必要に応じて洗浄することにより、露光部又は未露光部に反応基で構成されたパターンを形成できる。こうして多孔質膜表面に設けられた反応基を、以下に示す方法により金属と結合させて導体パターンが形成される。
【0090】
本発明では、反応基を金属と結合する方法として無電解メッキによる方法が好ましく用いられる。無電解メッキは、一般的にプラスチック等で形成された樹脂層に金属を積層する方法として有用であることが知られている。多孔質膜の表面は、金属との密着性を向上する目的で、予め脱脂、洗浄、中和、触媒処理等の処理が施されてもよい。前記触媒処理としては、例えば被処理面に金属の析出を促進しうる触媒金属を付着させる触媒金属核形成法等を利用できる。触媒金属核形成法は、触媒金属(塩)を含むコロイド溶液に接触させた後、酸若しくはアルカリ溶液又は還元剤に接触させて化学メッキを促進させる方法(キャタライザー(触媒)−アクセレータ(促進剤)法);触媒金属の微粒子を含むコロイド溶液に接触させた後、加熱等により溶媒や添加剤等を除去して触媒金属核を形成する方法(金属微粒子法);還元剤を含む酸又はアルカリ溶液に接触させた後、触媒金属の酸又はアルカリ溶液に接触させてアクチベーティング(賦活化)液を接触させて触媒金属を析出させる方法(センシタイジング(感作)−アクチベーティング(賦活化)法)等が挙げられる。
【0091】
キャタライザー−アクセレータ法における触媒金属(塩)含有溶液としては、例えばすず−パラジウム混合溶液、硫酸銅等の金属(塩)含有溶液などを用いることができる。キャタライザー−アクセレータ法は、例えば前記積層体を硫酸銅水溶液中に浸漬した後、必要に応じて過剰な硫酸銅を洗浄除去し、次いで水素化ホウ素ナトリウムの水溶液に浸漬することにより、多孔質膜表面に銅微粒子からなる触媒核を形成できる。金属微粒子法は、例えば、銀のナノ粒子が分散したコロイド溶液を多孔質膜表面に接触させた後、加熱して界面活性剤やバインダー等の添加剤を除去することにより、多孔質膜表面に銀粒子からなる触媒核を析出させることができる。センシタイジング−アクチベーティング法は、例えば、塩化すずの塩酸溶液に接触させた後、塩化パラジウムの塩酸溶液に接触させることによりパラジウムからなる触媒核を析出させることができる。これらの処理液に多孔質膜を接触させる方法としては、金属メッキ層を積層させる多孔質膜表面に塗布する方法、前記積層体を処理液に浸漬する方法等を用いることができる。
【0092】
無電解メッキに用いられる主な金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、ニッケル−りん等を挙げることができる。無電解メッキに用いるメッキ液には、例えば、上記金属又はその塩が含まれている他、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸、グリオキシル酸等の還元剤、酢酸ナトリウム、EDTA、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン等の錯化剤や析出制御剤等が含まれており、これらの多くは市販されており簡単に入手することができる。無電解メッキは、上記のメッキ液に上記処理を施した前記積層体を浸漬することにより行われる。
【0093】
金属メッキ層の厚みは、特に限定されず用途に応じて適宜選択でき、例えば0.01〜20μm程度、好ましくは0.1〜10μm程度である。金属メッキ層の厚みを効率よく厚くするため、例えば無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて金属メッキ層を形成する方法が行われる場合がある。すなわち、無電解メッキにより金属被膜が形成された多孔質膜層表面は導電性が付与されるため、次いでより効率のよい電解メッキを施すことによりにより短時間で厚い金属メッキ層を得ることが可能となる。
【0094】
上記方法は、特に回路基板、放熱材又は電磁波制御材に用いられる複合材料を得る方法として好適である。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0096】
多孔質膜の微小孔の平均孔径、空孔率を以下の方法で算出、測定した。平均孔径及び空孔率は電子顕微鏡写真に見えている微小孔のみを対象として求められている。
【0097】
1.平均孔径
電子顕微鏡写真から、多孔質膜の表面又は断面の任意の30点以上の孔についてその面積を測定し、その平均値を平均孔面積Saveとした。孔が真円であると仮定し、下記式を用いて平均孔面積から孔径に換算した値を平均孔径とした。ここで、πは円周率を表す。
表面又は内部の平均孔径[μm]=2×(Save/π)
1/2
【0098】
2.空孔率
多孔質膜内部の空孔率は下記式により算出した。Vは多孔質膜の体積[cm
3]、Wは多孔質膜の重量[g]、ρは多孔質膜組成物の密度[g/cm
3](ここで、多孔質膜組成物の密度は、該組成物を構成している各成分の密度を重量組成比で分配して算出される値である)を示す。
空孔率[%]=100−100×W/(ρ・V)
なお、実施例で用いた多孔質膜組成物における各成分の密度は以下の通りである。
ポリアミドイミド(商品名「バイロマックスHR−11NN」)の密度:1.45[g/cm
3]
ポリエーテルイミド(商品名「ウルテム1000」)の密度:1.27[g/cm
3]
酸化チタン(商品名「R−45M」)の密度:3.9[g/cm
3]
酸化チタン(商品名「CR−50」)の密度:4.1[g/cm
3]
【0099】
実施例1
ポリエーテルイミド系樹脂(SABICイノベーティブプラスチック社製の商品名「ウルテム1000」)、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を、ポリエーテルイミド系樹脂/NMPの重量比が18/82となる割合で混合して、ポリエーテルイミド系樹脂溶液を調製した。この液に、水溶性ポリマーとしてのポリビニルピロリドン(分子量5万)20重量部、及び酸化チタン(堺化学工業社製の商品名「R−45M」、ルチル型、平均粒子径0.29μm)9重量部を、ポリエーテルイミド系樹脂/NMP/ポリビニルピロリドン/酸化チタンの重量比が18/82/20/9となる割合で混合して、製膜用の原液(分散液)を得た。
ガラス板上に、ITO透明導電膜付きPETフィルム(株式会社トービ製、商品名「OTEC−130」、厚み125μm)をITO透明導電膜面が外側となるようにテープで固定し、25℃とした前記原液をフィルムアプリケーターを使用して、フィルムアプリケーターとITO透明導電膜付きPETフィルムとのギャップ102μmの条件でキャストした。キャスト後速やかに湿度約100%、温度50℃の容器中に4分間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた後、水中から取り出し、室温下で自然乾燥することにより、ITO透明導電膜付きPETフィルム上に酸化チタン含有多孔質膜が積層された積層体を得た。酸化チタン含有多孔質膜のITO透明導電膜付きPETフィルムに対する密着性は良好であった(後述の評価試験参照)。また、得られた積層体は柔軟性にも優れていた。得られた積層体のうち多孔質層の厚みは37μmであった。
この積層体の多孔質膜を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質膜内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が1μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質膜内部の空孔率は70%であった。多孔質膜における無機粒子の含有量は33.3重量%である。
【0100】
実施例2
酸化チタン(堺化学工業社製の商品名「R−45M」、ルチル型、平均粒子径0.29μm)の代わりに、酸化チタン(石原産業社製の商品名「CR−50」、ルチル型、平均粒子径0.25μm)を用い、原液におけるポリエーテルイミド系樹脂/NMP/ポリビニルピロリドン/酸化チタンの重量比を18/82/20/27としたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO透明導電膜付きPETフィルム上に酸化チタン含有多孔質膜が積層された積層体を得た。酸化チタン含有多孔質膜のITO透明導電膜付きPETフィルムに対する密着性は良好であった(後述の評価試験参照)。また、得られた積層体は柔軟性にも優れていた。得られた積層体のうち多孔質層の厚みは56μmであった。
この積層体の多孔質膜を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質膜内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が1μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質膜内部の空孔率は66%であった。多孔質膜における無機粒子の含有量は60重量%である。
【0101】
実施例3
酸化チタン(堺化学工業社製の商品名「R−45M」、ルチル型、平均粒子径0.29μm)の代わりに、酸化チタン(石原産業社製の商品名「CR−50」、ルチル型、平均粒子径0.25μm)を用い、原液におけるポリエーテルイミド系樹脂/NMP/ポリビニルピロリドン/酸化チタンの重量比を18/82/20/42としたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO透明導電膜付きPETフィルム上に酸化チタン含有多孔質膜が積層された積層体を得た。酸化チタン含有多孔質膜のITO透明導電膜付きPETフィルムに対する密着性は良好であった(後述の評価試験参照)。また、得られた積層体は柔軟性にも優れていた。得られた積層体のうち多孔質層の厚みは52μmであった。
この積層体の多孔質膜を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質膜内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が2μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質膜内部の空孔率は64%であった。多孔質膜における無機粒子の含有量は70重量%である。
得られた積層体における多孔質膜表面の電子顕微鏡写真(SEM写真)を
図1に示す。
図1において、黒い部分が孔、灰色の部分が樹脂、白い部分が酸化チタン粒子である。
【0102】
実施例4
酸化チタン(堺化学工業社製の商品名「R−45M」、ルチル型、平均粒子径0.29μm)の代わりに、酸化チタン(石原産業社製の商品名「CR−50」、ルチル型、平均粒子径0.25μm)を用い、原液におけるポリエーテルイミド系樹脂/NMP/ポリビニルピロリドン/酸化チタンの重量比を18/82/20/72としたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO透明導電膜付きPETフィルム上に酸化チタン含有多孔質膜が積層された積層体を得た。酸化チタン含有多孔質膜のITO透明導電膜付きPETフィルムに対する密着性は良好であった(後述の評価試験参照)。また、得られた積層体は柔軟性にも優れていた。得られた積層体のうち多孔質層の厚みは57μmであった。
この積層体の多孔質膜を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質膜内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が1μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質膜内部の空孔率は63%であった。多孔質膜における無機粒子の含有量は80重量%である。
【0103】
実施例5
酸化チタン(堺化学工業社製の商品名「R−45M」、ルチル型、平均粒子径0.29μm)の代わりに、酸化チタン(石原産業社製の商品名「CR−50」、ルチル型、平均粒子径0.25μm)を用い、原液におけるポリエーテルイミド系樹脂/NMP/ポリビニルピロリドン/酸化チタンの重量比を18/82/20/102としたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ITO透明導電膜付きPETフィルム上に酸化チタン含有多孔質膜が積層された積層体を得た。酸化チタン含有多孔質膜のITO透明導電膜付きPETフィルムに対する密着性は良好であった(後述の評価試験参照)。また、得られた積層体は柔軟性にも優れていた。得られた積層体のうち多孔質層の厚みは46μmであった。
この積層体の多孔質膜を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質膜内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が1μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質膜内部の空孔率は64%であった。多孔質膜における無機粒子の含有量は85重量%である。
【0104】
実施例6
ポリアミドイミド系樹脂溶液(東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR−11NN」;固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度20dPa・s/25℃)100重量部に、水溶性ポリマーとしてのポリビニルピロリドン(分子量5万)30重量部、及び酸化チタン(石原産業社製の商品名「CR−50」、ルチル型、平均粒子径0.25μm)22.5重量部を、ポリアミドイミド系樹脂/NMP/ポリビニルピロリドン/酸化チタンの重量比が15/85/30/22.5となる割合で混合して、製膜用の原液(分散液)を得た。
ガラス板上に、ITO透明導電膜付きPETフィルム(株式会社トービ製、商品名「OTEC−130」、厚み125μm)をITO透明導電膜面が外側となるようにテープで固定し、25℃とした前記原液をフィルムアプリケーターを使用して、フィルムアプリケーターとITO透明導電膜付きPETフィルムとのギャップ102μmの条件でキャストした。キャスト後速やかに湿度約100%、温度50℃の容器中に4分間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた後、水中から取り出し、室温下で自然乾燥することにより、ITO透明導電膜付きPETフィルム上に酸化チタン含有多孔質膜が積層された積層体を得た。酸化チタン含有多孔質膜のITO透明導電膜付きPETフィルムに対する密着性は良好であった(後述の評価試験参照)。また、得られた積層体は柔軟性にも優れていた。得られた積層体のうち多孔質層の厚みは40μmであった。
この積層体の多孔質膜を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質膜内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が0.5μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質膜内部の空孔率は75%であった。多孔質膜における無機粒子の含有量は60重量%である。
得られた積層体の多孔質膜の表面の電子顕微鏡写真(SEM写真)を
図2に示す。
図2において、黒い部分が孔、灰色の部分が樹脂、白い部分が酸化チタン粒子である。
【0105】
比較例1
ガラス板上に、ITO透明導電膜付きPETフィルムの代わりに、PETフィルム基材(帝人デュポン社製、HS74ASタイプ、厚み100μm)をPETフィルムの易接着面が外側となるようにテープで固定したこと以外は実施例3と同様の操作を行った。キャスト後速やかに湿度約100%、温度50℃の容器中に4分間保持した後、水中に浸漬して凝固させていると、自然とPETフィルム基材から多孔質層が剥離した。そのため、PETフィルム基材上に酸化チタン含有多孔質膜が積層された積層体は得られなかった。
得られた多孔質層を室温下で自然乾燥することにより、多孔質層のみからなる膜を得た。得られた多孔質層のみからなる膜の厚みは36μmであった。
この多孔質膜を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質膜内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が2μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質膜内部の空孔率は66%であった。多孔質膜における無機粒子の含有量は70重量%である。
【0106】
比較例2
ガラス板上に、ITO透明導電膜付きPETフィルムの代わりに、PETフィルム基材(帝人デュポン社製、HS74ASタイプ、厚み100μm)をPETフィルムの易接着面が外側となるようにテープで固定したこと以外は実施例6と同様の操作を行った。キャスト後速やかに湿度約100%、温度50℃の容器中に4分間保持した後、水中に浸漬して凝固させていると、自然とPETフィルム基材から多孔質層が剥離した。そのため、PETフィルム基材上に酸化チタン含有多孔質膜が積層された積層体は得られなかった。
得られた多孔質層を室温下で自然乾燥することにより、多孔質層のみからなる膜を得た。得られた多孔質層のみからなる膜の厚みは50μmであった。
この多孔質膜を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質膜内部はほぼ均質で全域に亘って平均孔径が0.5μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、多孔質膜内部の空孔率は76%であった。多孔質膜における無機粒子の含有量は60重量%である。
【0107】
評価試験(テープ剥離試験)
実施例1〜6で得られた各積層体について、テープ剥離試験を以下の通りに行った。
(i)酸化チタン含有多孔質膜上に下記のテープを貼り、ローラーで接着部分をなぞる。
(ii)万能引張試験機[(株)オリエンテック社製、商品名「TENSILON RTA−500」]を用いて50mm/分の条件でT型剥離を行う。
(iii)酸化チタン含有多孔質膜とITO透明導電膜付きPETフィルムの界面剥離の有無を観察する。
・テープ:寺岡製作所製フィルムマスキングテープNo.603(#25)、24mm幅
・ローラー:φ30mm、200gf荷重
その結果、実施例1〜6で得られたどの積層体においても、酸化チタン含有多孔質膜とITO透明導電膜付きPETフィルムとが界面剥離を起こさなかった。