【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0031】
実施例1
熱可塑性樹脂として、エチレン−アクリル酸共重合体〔ダウケミカル社製「プリマコール」、融点78℃、アクリル酸含量21質量%、MFR14g/10min(125℃、2.16kgf)、非水溶性〕(以下、「EAA1」という)を用い、下記の押出装置にて厚さ100μmの樹脂フィルムを製膜した。
この樹脂フィルムを、加熱した厚さ100μmの純アルミニウム板(JIS H4000 合金番号:1N30)に融着させながらラミネートして樹脂被覆金属板を作製した。
なお、押出装置は下記のとおりである。
押出装置 押出機:40mm単軸押出機、L/D=28
スクリュー:フルフライトコンスタントピッチ
ダイス:単層Tダイス、巾500mm、コートハンガー型
【0032】
実施例2
熱可塑性樹脂を、エチレン−アクリル酸共重合体〔ダウケミカル社製「プリマコール」、融点75℃、アクリル酸含量20質量%、MFR65g/10min(125℃、2.16kgf)、非水溶性〕(以下、「EAA2」という)に変更したこと以外は実施例1と同様にして押出装置にて100μm厚の樹脂フィルムを製膜した。この樹脂フィルムを、加熱した厚さ100μmの純アルミニウム板(JIS H4000 合金番号:1N30)に融着させながらラミネートして樹脂被覆金属板を作製した。
【0033】
実施例3
熱可塑性樹脂として、EAA1を50質量部、共重合ポリアミド〔エムスケミージャパン社製「グリルテックス」(共重合ポリアミド:融点120℃、MFR3.6g/10min(150℃、2.16kgf)〕(以下「PA」という)を50質量部配合し、実施例1と同様の押出装置にて100μm厚の樹脂フィルムを製膜した。この樹脂フィルムを、加熱した厚さ100μmの純アルミニウム板(JIS H4000 合金番号:1N30)に融着させながらラミネートして樹脂被覆金属板を作製した。
【0034】
実施例4
熱可塑性樹脂としてEAA1を67質量部、PAを33質量部、有機系固形潤滑剤として、ポリエチレングリコール〔三洋化成工業社製「PEG」(ポリエチレングリコール:分子量8000)〕(以下、「潤滑剤1」という)33質量部及びパラフィンワックス〔日本精蝋社製「PALVAX」(パラフィンワックス)〕(以下、「潤滑剤2」という)33質量部を配合し、実施例1と同様の押出装置にて100μm厚の樹脂フィルムを製膜した。この樹脂フィルムを、加熱した厚さ100μmの純アルミニウム板(JIS H4000 合金番号:1N30)に融着させながらラミネートして樹脂被覆金属板を作製した。
【0035】
実施例5
熱可塑性樹脂として、EAA1を67質量部、EAA2を33質量部、有機系固形潤滑剤として、潤滑剤1を33質量部、潤滑剤2を33質量部配合し、実施例1と同様の押出装置にて100μm厚の樹脂フィルムを製膜した。この樹脂フィルムを、加熱した厚さ100μmの純アルミニウム板(JIS H4000 合金番号:1N30)に融着させながらラミネートして樹脂被覆金属板を作製した。
【0036】
比較例1
熱可塑性樹脂を、エチレン−アクリル酸共重合体〔三井デュポンポリケミカル社製「ニュクレル(登録商標)AN4221C」、融点94℃、アクリル酸含量12.0質量%、MFR10g/10min(125℃、2.16kgf)、非水溶性〕(以下「EAA3」という)に変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を作製した。
【0037】
比較例2
熱可塑性樹脂を、エチレン−アクリル酸共重合体〔三井デュポンポリケミカル社製「ニュクレルAN4225C」、融点104℃、アクリル酸含量5質量%、MFR8g/10min(125℃、2.16kgf)、非水溶性〕(以下「EAA4」という)に変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を作製した。
【0038】
比較例3
熱可塑性樹脂を、PAに変更したこと以外は実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を作製した。
【0039】
樹脂特性の評価
融点
樹脂の融点(融解ピーク温度)は、JISK7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠して測定した。すなわち、当該「プラスチックの転移温度測定方法」は、示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製DSC7型)を使用し、アルミニウム製サンプルパンに封入した20mg程度の樹脂フィルム片を、窒素雰囲気下、0℃から250℃を10℃/分の速度で昇温して測定することにより行った。得られた熱量曲線において、曲線がベースラインから離れ再度ベースラインに戻るまでの部分を融解ピークとし、その融解ピークの頂点における温度を融点(融解ピーク温度)とした。
【0040】
デスミア処理試験
実施例及び比較例で作製した樹脂フィルムと同様の組成比となるように原料を混合し、実施例1と同様の押出装置を用いて50μm厚の樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを10mm角に切断し、樹脂フィルム試験片を作製した。この樹脂フィルム試験片を2枚のフッ素樹脂製(100メッシュサイズ)のシートでサンドイッチ状に挟み、四方をSUS304製クリップで止めて積層体1を作製した。この積層体1を、容器中間部にSUSメッシュ(目開き150μm)製の試料台2が附設されたSUS304製の底付き円筒状容器3内の前記試料台2上に静置した(
図1参照)。
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)25質量%水溶液にNaOHを添加してpH13に調整し膨潤液を作製した。この膨潤液を80℃に加温し、この中に上記円筒状容器を5分間浸漬した(膨潤処理)。膨潤処理後、容器を取り出し、水に浸漬し、超音波洗浄を1分間行った。次いで、KMnO
4濃度60g/L、NaOH濃度30g/Lの酸化エッチング液を調製し、80℃に加温して、この中に上記円筒状容器を7分間浸漬した(酸化エッチング処理)。酸化エッチング処理後、容器を取り出し、水に1分間浸漬させた。次いで、硫酸(濃度98質量%)50mL/L、グリオキサール水溶液(濃度40質量%)75ml/Lの還元液を50℃に加温して、上記円筒状容器を5分間浸漬させた(還元処理)。膨潤処理、酸化エッチング処理及び還元処理を行った後、分解されずに残存した樹脂を回収した。具体的には、積層体を取り出してフッ素樹脂製シート間に残っている残存樹脂フィルムを回収し、さらに、SUS304製の円筒状容器内に残っている溶液を濾過し、融解してフッ素樹脂製シートの孔を通り抜けた後、分解することなく固化した熱可塑性樹脂を回収した。回収した残存樹脂フィルム及び濾取物を50℃で1時間乾燥して、残渣物の質量測定を行った。
樹脂フィルム試験片の初期質量と乾燥後の残渣物質量(残存樹脂フィルムと濾取物の合計質量)から、以下の式より分解率を算出し、樹脂フィルムの組成及びデスミア処理試験結果を表1に示した。
【0041】
【数1】
【0042】
【表1】
【0043】
試験例
実施例及び比較例で作製した樹脂被覆金属板についてドリル加工を行った後、デスミア処理を行い、加工穴内壁のスミアを評価した。
【0044】
ドリル加工後の穴内壁部の切粉残渣調査
ドリル加工は、FR−4製、1.6mm厚の4層銅箔張プリント配線基板(外層の銅箔厚み:18μm、内層銅箔厚み:35μm)に対して行った。具体的には、前記樹脂被覆金属板を熱可塑性樹脂膜がドリルに接する側に置き、その下に4層銅箔張プリント配線基板を4枚重ねにして置き、更にその下にバックアップボード(厚さ1.5mm、ベークラ
イト板)を配置して、穴あけ加工を行った。なお、ドリル加工による穴内壁部への切粉残りの発生を促進させるために、ドリル径を太くし、送り量と回転数を低く抑え、さらにドリルマシーンの集塵能力をゼロとして加工を実施した。
【0045】
ドリル加工は、以下に示す条件により行った。
(ドリル加工条件)
ドリルマシーン:ND−6T210−2(日立ビアメカニクス(株)製)
ドリルビット:直径1.00mm(ユニオンツール(株)製、UM30)
回転数:80,000rpm
送り速度:1.0m/分
引き抜き速度:25.4m/分
隣接加工穴中心間距離:1.5mm
ドリルヒット数:5000ヒット
【0046】
(デスミア処理)
ロームアンドハース電子材料株式会社製のサーキュポジット200MLBプロセスに則ってデスミア工程を以下のような条件で実施した。
(1)膨潤工程
脱イオン水(70体積%)、サーキュポジットMLBコンディショナー211(20体積%)及びサーキュポジットZ(10体積%)を十分に混合して、膨潤液を調製した。この膨潤液を50℃に加温し、ドリル加工後のプリント配線基板を5分間浸漬した。
(2)酸化エッチング工程
脱イオン水(60体積%)、サーキュポジットMLBプロモーター213B(15体積%)及びサーキュポジットMLBプロモーター213A−1(10体積%)を十分に混合して酸化エッチング液を調製した。この酸化エッチング液を80℃に加温し、膨潤工程後のプリント配線基板を5分間浸漬した。
(3)還元工程
脱イオン水(80体積%)及びサーキュポジットMLBニュートライザー216−2(20体積%)を混合し還元液を調製した。この還元液を45℃に加温し、酸化エッチングを施したプリント配線基板を5分間浸漬した。
【0047】
(加工後の穴内壁部の調査)
穴内壁部の評価は、最上層の基板について実施した。5000ヒット全てをレーザーマイクロスコープ((株)キーエンス製、「VK−9500/9510」)で切粉残渣の有
無を調査した。結果を表2に示した。
【0048】
【表2】
【0049】
また、実施例4、5で作製した樹脂被覆金属板については、ドリル加工性能についても評価した。
【0050】
ドリル加工は、0.8mm厚の両面銅箔張プリント配線基板(三菱ガス化学製:BT-
HL832HS、外層の銅箔厚み:18μm)に対して行った。具体的には、樹脂被覆金属板を熱可塑性樹脂膜がドリルに接する側に置き、その下に両面銅箔張プリント配線基板を3枚重ねにして置き、更にその下にバックアップボード(厚さ1.5mm、ベークライ
ト板)を配置して、穴あけ加工を行った。
(ドリル加工条件)
ドリルマシーン:ND−6T210−2(日立ビアメカニクス(株)製)
ドリルビット:直径0.20mm((株)タンガロイ製 DSM)
回転数:200,000rpm
送り速度:3.0m/分
引き抜き速度:25.4m/分
隣接加工穴中心間距離:0.4mm
ドリルヒット数:5000ヒット
【0051】
(穴位置精度)
ドリル加工後、穴検査機(日立ビアメカニクス(株)製、「HT-1AM」)を用いて
、最下基板裏面の5000ヒットの穴について、中心設定位置からの変位量を測定し、変
位量平均値及び標準偏差(σ)を求めた。表3に、最大変位量、変位の平均値+3σを示した。
(内壁粗さ)
穴内壁粗さは、4951〜5000ヒットの50穴の穴断面をクロスカットして上述のレーザー顕微鏡を用いて、50穴の最大粗さを測定した。
【0052】
【表3】