【文献】
ISMAIL, J. et al,Organic Additive-Mediated Synthesis of Novel Cobalt(II) Hydroxides,Journal of Solid State Chemistry,1995年 2月 1日,Vol.114, No.2,p.550-555,DOI:10.1006/jssc.1995.1084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グリシンを含有する2価のコバルトの塩化物、硝酸塩又は硫酸塩の水溶液であり、グリシンの含有量が、原子換算のコバルト1モルに対して、0.010〜0.300モルであるコバルト水溶液(A液)と、アルカリ水溶液(B液)とを、グリシンを含有せず、溶媒が水であり、pHが9.8〜10.2に調整されたC液へ添加し、反応温度65〜75℃、pH9.8〜10.2で中和反応を行うことにより、平均粒径が8〜40μm、[平均粒子径(D50%)]/[標準偏差(SD値)]が3.0〜7.0である水酸化コバルトを得る中和工程を有することを特徴とする水酸化コバルトの製造方法。
請求項1記載の水酸化コバルトの製造方法を行い得られる水酸化コバルトを、200〜700℃で焼成して酸化することにより、酸化コバルトを得る酸化焼成工程を有することを特徴とする酸化コバルトの製造方法。
請求項1記載の水酸化コバルトの製造方法を行い得られる水酸化コバルトと、リチウム化合物とを混合する粒子混合工程と、該粒子混合工程を行い得られる粒子混合物を焼成する焼成反応工程と、を有することを特徴とするコバルト酸リチウムの製造方法。
請求項2に記載の酸化コバルトの製造方法を行い得られる酸化コバルトと、リチウム化合物とを混合する粒子混合工程と、該粒子混合工程を行い得られる粒子混合物を焼成する焼成反応工程と、を有することを特徴とするコバルト酸リチウムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭電器においてポータブル化、コードレス化が急速に進むに従い、ラップトップ型パソコン、携帯電話、ビデオカメラ等の小型電子機器の電源としてリチウムイオン二次電池が実用化されている。このリチウムイオン二次電池については、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)がリチウムイオン二次電池の正極活物質として有用であるとの報告がなされて以来、リチウム遷移金属複合酸化物に関する研究開発が活発に進められており、これまで多くの提案がなされている。
【0003】
リチウム遷移金属複合酸化物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)などが好ましく使用されており、特にLiCoO
2は、その安全性、充放電容量などの面から広く使用されている。
【0004】
近年は、リチウム二次電池の高容量化の要求から、高容量化が可能なリチウム二次電池用のコバルト酸リチウム系の複合酸化物が必要となっている。
【0005】
リチウム二次電池を高容量化するための手法としては、(1)大粒子のコバルト酸リチウムと小粒子のコバルト酸リチウムとを混ぜて、正極活物質の充填率を高めることにより、体積当たりの容量を増やし、高容量化を図る方法(例えば、特許文献1)、(2)LiNi
0.85Co
0.15O
2のように、LiCoO
2の組成を変更し、重量当たりの容量を増やすことにより高容量化を図る方法(例えば、特許文献2)等が、従来より行われていた。
【0006】
しかし、上記(1)の方法では、小粒子が電池の安全性、特に、充放電を繰り返した際に起こる非水電解液との反応に伴うガス発生が多くなるという問題があった。また、上記(2)の方法では、LiNi
0.85Co
0.15O
2の製造に用いられたリチウム化合物が残存アルカリとして残存してしまうために、電池の安全性、特に、充放電を繰り返した際に起こる非水電解液との反応に伴うガス発生が多くなるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上記従来方法に代わる手法が求められる。リチウム二次電池を高容量化する方法としては、LiCoO
2の粒径を大きくすることにより、タップ密度を高くして、体積当たりの電池の容量を高くする方法が考えられる。
【0009】
平均粒子径が10〜35μmと大きく、更に粒度分布がシャープで、且つ微粒子分が少ないコバルト酸リチウムを正極活物質として用いたリチウム二次電池は、特に安全性にも優れたものとなることが知られている。
【0010】
この平均粒子径が10〜35μmと大きなコバルト酸リチウムは、通常、平均粒子径が5μm未満の微細な四酸化三コバルトをコバルト源として用い、リチウム化合物をLi/Coのモル比で1.03以上と多くして、反応させ、粒成長させる必要がある。ところが、過剰分の炭酸リチウムはそのままコバルト酸リチウムに残存し、その結果、返って電池性能を劣化させ、また、ガス発生等により電池安全性の問題を生じさせる。
【0011】
製造原料として用いる水酸化コバルト又は酸化コバルトの粒径を5μm以上と大きくすれば、水酸化コバルト又は酸化コバルトと反応させるリチウム化合物の過剰率をできるだけ低く抑えて、平均粒径が10〜35μmのコバルト酸リチウムを得ることができると考えられる。
また、コバルト酸リチウムの粒度分布は、コバルト源となる酸化コバルトや水酸化コバルトの粒度分布に依存することから、粒度分布がシャープで平均粒子径が5μm以上で、且つ粒径が1μm以下である微粒子分を実質的に含有しない水酸化コバルト及び酸化コバルトの開発が望まれている。
【0012】
従って、本発明の目的は、平均粒子径が5μm以上で、二次粒子の粒度分布が狭く、粒径が1μm以下である微粒子分を実質的に含有しない水酸化コバルト及び酸化コバルトを得ることにある。また、本発明の目的は、平均粒子径が10〜35μmと大きいにもかかわらず残存するアルカリ量が少なく、粒径が1μm以下の微粒子分を実質的に含有しないコバルト酸リチウムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、コバルト塩を溶解させたコバルト水溶液(A液)とアルカリ水溶液(B液)との中和反応において、コバルト水溶液(A液)として、グリシンを存在させたコバルト水溶液を用い、コバルト水溶液(A液)中のコバルトとグリシンのモル比を特定の範囲とし、且つA液とB液とをグリシンを含有しない水(C液)へ添加することにより中和反応を行えば、一次粒子が凝集した平均粒子径が5μm以上の二次粒子であり、二次粒子の粒度分布が狭く、粒径が1μm以下である微粒子分を実質的に含有しない水酸化コバルトが得られることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、グリシンを含有する2価のコバルトの塩化物、硝酸塩又は硫酸塩の水溶液であり、グリシンの含有量が、原子換算のコバルト1モルに対して、0.010〜0.300モルであるコバルト水溶液(A液)と、アルカリ水溶液(B液)とを、
グリシンを含有せず、溶媒が水であり、pHが9.8〜10.2に調整されたC液へ添加し、反応温度
65〜75℃、pH
9.8〜10.2で中和反応を行うことにより、
平均粒径が8〜40μm、[平均粒子径(D50%)]/[標準偏差(SD値)]が3.0〜7.0である水酸化コバルトを得る中和工程を有することを特徴とする水酸化コバルトの製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(2)は、本発明(1)の水酸化コバルトの製造方法を行い得られる水酸化コバルトを、200〜700℃で焼成して酸化することにより、酸化コバルトを得る酸化焼成工程を有することを特徴とする酸化コバルトの製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明(3)は、本発明(1)の水酸化コバルトの製造方法を行い得られる水酸化コバルトと、リチウム化合物とを混合する粒子混合工程と、該粒子混合工程を行い得られる粒子混合物を焼成する焼成反応工程と、を有することを特徴とするコバルト酸リチウムの製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(4)は、本発明(2)の酸化コバルトの製造方法を行い得られる酸化コバルトと、リチウム化合物とを混合する粒子混合工程と、該粒子混合工程を行い得られる粒子混合物を焼成する焼成反応工程と、を有することを特徴とするコバルト酸リチウムの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、平均粒子径が5μm以上で二次粒子の粒度分布が狭く、粒径が1μm以下である微粒子分を実質的に含有しない水酸化コバルト及び酸化コバルトを提供できる。また、本発明によれば、平均粒子径が10〜35μmと大きいものであっても残存するアルカリ量が少なく、粒径が1μm以下の微粒子分を実質的に含有しないコバルト酸リチウムを得ることができる。
また、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行い得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行い得られる酸化コバルトをコバルト源として製造されるコバルト酸リチウムを正極活物質として用いるリチウム二次電池は、体積当たりの容量が高く、サイクル特性にも優れ、安全性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の水酸化コバルトの製造方法は、グリシンを含有するコバルト水溶液であり、グリシンの含有量が、原子換算のコバルト1モルに対して、0.010〜0.300モルであるコバルト水溶液(A液)と、アルカリ水溶液(B液)とを、水溶媒(C液)へ添加し、中和反応を行うことにより、水酸化コバルトを得る中和工程を有することを特徴とする水酸化コバルトの製造方法である。
【0021】
本発明の水酸化コバルトの製造方法に係る中和工程は、A液とB液とをC液へ添加することにより、A液中のコバルト塩とB液中のアルカリとをC液中で反応させる工程である。
【0022】
A液は、グリシン(NH
2CH
2COOH)を含有するコバルト水溶液である。そして、A液は、グリシン及びコバルト塩を、水に溶解させることにより、調製される。
【0023】
A液に係るコバルト塩としては、特に制限されず、コバルトの塩化物、硝酸塩、硫酸塩等が挙げられ、これらのうち、塩素による不純物混入の無い硫酸塩が好ましい。また、必要に応じて少量の他の金属塩を共存させてもよい。共存させることができる金属塩としては、例えば、ニッケル、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン等の金属塩が挙げられる。
【0024】
A液中のコバルトイオンの濃度は、特に制限されないが、原子換算で、好ましくは1.0〜2.2モル/L、特に好ましくは1.5〜2.0モル/Lである。A液中のコバルトイオン濃度が、上記範囲にあることにより、生産性が良好となり、且つ、A液からのコバルト塩の析出が起こり難くなる。一方、A液中のコバルトイオン濃度が、上記範囲未満だと、生産性が低くなり易く、また、上記範囲を超えると、A液からコバルト塩が析出し易くなる。
【0025】
A液中のコバルトに対するグリシンの含有量は、原子換算のコバルト1モルに対して、0.010〜0.300モル、好ましくは0.050〜0.200モル、特に好ましくは0.050〜0.180である。A液中のコバルトに対するグリシンの含有量が、上記範囲にあることにより、水酸化コバルトの二次粒子の粒度分布を狭くすることができる。一方、A液中のコバルトに対するグリシンの含有量が、上記範囲未満だと、水酸化コバルトの二次粒子の粒度分布が広くなり、また、上記範囲を超えると、未反応のコバルト塩が一部反応液中に残るため、生産性が悪化する。
【0026】
B液は、アルカリ水溶液である。そして、B液は、アルカリを水に溶解させることにより、調製される。
【0027】
B液に係るアルカリとしては、特に制限されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられ、これらのうち、工業的に安価である点で、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0028】
B液の濃度及びC液に添加するアルカリの総量は、A液中のコバルトイオンの濃度及び総量により、適宜選択される。
【0029】
B液の濃度は、好ましくは5〜15モル/L、特に好ましくは5〜10モル/Lである。
【0030】
A液及びB液が添加されるC液は、グリシンを含有しない水である。なお、C液は、グリシンを含有しないが、必要に応じて、例えば、pH調整剤を含有することができる。
【0031】
A液及びB液のC液への添加量は、A液中の原子換算のコバルトイオンの総モル数に対するB液中の水酸化物イオンの総モル数の比(B液中の総OHイオンのモル数/A液中の総Coイオンの原子換算のモル数)が、好ましくは1.8〜2.1、特に好ましくは1.9〜2.0となる量である。A液中の原子換算のコバルトイオンの総モル数に対するB液中の水酸化物イオンの総モル数の比が上記範囲であることにより、反応液(C液)中に未反応のコバルトイオンが残存することなく、目的の水酸化コバルトを得易くなる。
【0032】
そして、中和工程では、反応容器に予め、C液を入れておき、そのC液に対して、A液とB液とを添加する。C液の反応前の張り込み量、すなわち、A液及びB液が添加される前のC液の量は、A液中のコバルト量、反応容器の容量、反応容器内でのC液の撹拌状態等により、適宜選択される。
【0033】
中和工程において、中和反応の反応温度は、55〜85℃、好ましくは60〜75℃、特に好ましくは65〜75℃である。つまり、中和工程において、A液とB液とをC液へ添加する際の反応液(C液)の温度、すなわち、反応前のC液の温度及び中和反応中の反応液(C液)の温度は、55〜85℃、好ましくは60〜75℃、特に好ましくは65〜75℃である。A液とB液とをC液へ添加する際の反応液(C液)の温度が上記範囲内であることにより、水酸化コバルトの二次粒子の平均粒子径が大きく、粒径が1μm以下である微粒子分の含有量が低くなる傾向がある。一方、A液とB液とをC液に添加する際の反応液(C液)の温度が、上記範囲未満だと、水酸化コバルトの二次粒子の平均粒子径が小さくなり、粒径が1μm以下である微粒子分も多くなる傾向がある。また、A液とB液とをC液へ添加する際の反応液(C液)の温度が、上記範囲を超えても、水酸化コバルトの二次粒子の平均粒子径が小さくなり、粒径が1μm以下である微粒子分も多くなる傾向がある。
【0034】
中和工程において、A液とB液とをC液へ添加する際の反応液(C液)のpH、すなわち、反応前のC液のpH及び中和反応中の反応液(C液)のpHは、9.0〜11.0、好ましくは9.5〜10.5、特に好ましくは9.8〜10.2である。A液とB液とをC液へ添加する際の反応液(C液)のpHが上記範囲であることにより、二次粒子の平均粒子径が大きく且つ粒度分布がシャープな水酸化コバルトが得られる。一方、A液とB液とをC液へ添加する際の反応液(C液)のpHが、上記範囲より低いと、未反応のコバルトイオンが一部反応液中に残るため、生産性が低くなり易く、また、得られる水酸化コバルトが、硫酸根などの塩類を不純物として含有し易くなる。また、A液とB液とをC液へ添加する際の反応液(C液)のpHが、上記範囲より高いと、水酸化コバルトの二次粒子の平均粒子径が小さくなり易く、微小粒子が発生するため、粒度分布が広くなり易い。なお、中和工程において、A液とB液とをC液へ添加する際の反応液(C液)のpHは、例えば、B液中の水酸化物イオン濃度、A液中のコバルトイオンの濃度に対するB液中の水酸化物イオンの濃度の比、A液に対するB液のC液への添加速度の比等の条件を選択することにより、調節される。
【0035】
中和工程において、A液とB液とをC液へ添加する際のA液中のコバルトイオンの添加速度に対するB液中の水酸化物イオンの添加速度の比(B液/A液)は、好ましくは1.8〜2.1、特に好ましくは1.9〜2.0である。なお、A液中のコバルトイオンの添加速度に対するB液中の水酸化物イオンの添加速度の比とは、反応容器に添加するA液中のコバルトイオンの添加速度(モル/分)に対する反応容器に添加するB液中の水酸化物イオンの添加速度(モル/分)の比を指す。
【0036】
中和工程において、A液とB液とをC液へ添加する際に、A液とB液とをC液へ添加し始めてから、添加を終了するまでの添加時間は、特に制限されないが、工業的に有利になる観点から、好ましくは0.5〜10時間、特に好ましくは1〜5時間である。
【0037】
中和工程において、A液とB液とを混合する際の反応液(C液)の撹拌速度、すなわち、反応直前のC液の撹拌速度及び中和反応中の反応液(C液)の撹拌速度は、反応容器の大きさ、攪拌羽の径、反応液の量等により、適宜選択されるが、攪拌羽の周速0.5〜4.0m/秒が好ましく、攪拌羽の周速0.5〜2.0m/秒が特に好ましい。そして、中和工程において、A液とB液とをC液へ添加する時間帯のうち、始めの方の時間帯、好ましくは添加開始直後から1時間後までの時間帯の撹拌速度を緩やかにすることが、水酸化コバルトの二次粒子の平均粒子径を大きくし易くなる点で、好ましい。
【0038】
本発明の水酸化コバルトの製造方法では、このようにして中和工程を行うことにより、水酸化コバルト(二次粒子)を得る。
【0039】
中和工程を行った後、反応液中に生成した水酸化コバルト(二次粒子)を、減圧ろ過、遠心分離等することにより、反応液中から水酸化コバルト粒子を分離し、必要に応じて、洗浄、乾燥、解砕する。
【0040】
本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルトは、一次粒子が凝集した二次粒子であり、平均粒子径が5μm以上、好ましくは8〜40μmであり、粒度分布がシャープなものである。なお、本発明において、粒度分布がシャープであるとは、[平均粒子径(D50%)]/[標準偏差(SD値)]が、3.0〜7.0、好ましくは3.5〜6.5であることを示す。
【0041】
本発明の水酸化コバルトの製造方法により得られる水酸化コバルトは、二次粒子の粒度分布がシャープなので、このような水酸化コバルトをコバルト源として製造されるコバルト酸リチウムも粒度分布がシャープなものが得られ易く、このようなコバルト酸リチウムをリチウム二次電池用正極活物質として用いることにより、リチウム二次電池の正極材に均一な厚さの塗膜を形成することが特に有利になる。
【0042】
更に、本発明の水酸化コバルトの製造方法により得られる水酸化コバルトは、平均粒子径が5μm以上、好ましくは8〜40μmであり、且つ、粒径が1μm以下である微粒子分を実質的に存在しないので、このような水酸化コバルトをコバルト源として製造されるコバルト酸リチウムには、粒径が1μm以下である微粒子分も実質的に存在しないことから、このようなコバルト酸リチウムをリチウム二次電池正極活物質として用いることにより、電池の安全性、特に、充放電を繰り返した際におこる非水電解液との反応に伴うガス発生を抑制することができる。なお、本発明において、平均粒子径は、レーザー散乱法で得られた体積分布におけるD50%である。また、本発明において、粒径が1μm以下である微粒子分を実質的に含有しないとは、レーザー散乱法で得られた体積分布で表記される結果において、粒径が1μm以下である微粒子分の累積頻度が1%以下、好ましくは0.1%以下であることを意味する。なお、後述する酸化コバルト及びコバルト酸リチウムについても同義である。
【0043】
また、本発明の水酸化コバルトの製造方法により得られる水酸化コバルトは、最大粒子径が100μm以下であり、このような水酸化コバルトをコバルト源として得られるコバルト酸リチウムを用いることにより、リチウム二次電池の正極板を作製する際の混練ペーストの経時変化や、アルミ箔より剥離し易いなどの問題を生じ難くすることができる。
【0044】
これらのことにより、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルトによれば、体積当たりの容量が高く且つ容量維持率が高いことに加えて、安全性にも優れ、また、塗料安定性や操作性にも優れたリチウム二次電池用正極活物質用のコバルト酸リチウムを提供することができる。
【0045】
本発明の酸化コバルトの製造方法は、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルトを、200〜700℃で焼成して酸化することにより、酸化コバルトを得る酸化焼成工程を有することを特徴とする酸化コバルトの製造方法である。
【0046】
本発明の酸化コバルトの製造方法に係る酸化焼成工程において、水酸化コバルトを焼成する際の焼成温度は、200〜700℃、好ましくは300〜500℃である。また、焼成時間は、2〜20時間、好ましくは2〜10時間である。また、焼成雰囲気は、空気中、酸素ガス中等の酸化雰囲気である。
【0047】
本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトを、適宜、粉砕、分級してもよい。
【0048】
次に、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトを用いて、コバルト酸リチウムを製造する方法について述べる。
【0049】
本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトを用いるコバルト酸リチウムの製造方法は、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトと、リチウム化合物と、を混合する粒子混合工程と、粒子混合工程で得られた粒子混合物を、800〜1150℃で焼成することにより、コバルト酸リチウムを得る焼成反応工程と、を有するコバルト酸リチウムの製造方法である。
【0050】
粒子混合工程は、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトと、リチウム化合物と、を混合する工程である。
【0051】
粒子混合工程に係るリチウム化合物としては、通常、コバルト酸リチウムの製造用の原料として用いられるものであれば、特に制限されず、リチウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び有機酸塩等が挙げられ、これらのうち、工業的に安価な点で、炭酸リチウムが好ましい。
【0052】
リチウム化合物の平均粒子径は、0.1〜200μm、好ましくは2〜50μmであることが、反応性が良好であるため好ましい。
【0053】
粒子混合工程において、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトと、リチウム化合物とを混合する際、原子換算のコバルトのモル数に対する原子換算のリチウムのモル数の比(混合モル比、Li/Co)は、0.900〜1.040、好ましくは0.950〜1.030、特に好ましくは0.980〜1.020である。原子換算のコバルトのモル数に対する原子換算のリチウムのモル数の比が上記範囲にあることにより、コバルト酸リチウムを正極活物質とするリチウム二次電池の容量維持率が高くなる。一方、原子換算のコバルトのモル数に対する原子換算のリチウムのモル数の比が、上記範囲未満だと、リチウムが足りないため、未反応のコバルトが存在し、そのために重量当たりの放電容量が著しく減少する傾向となり、また、上記範囲を超えると、コバルト酸リチウムを正極活物質とするリチウム二次電池の容量維持率が低くなる。
【0054】
粒子混合工程において、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトと、リチウム化合物と、を混合する方法としては、例えば、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー等が挙げられる。
【0055】
焼成反応工程は、粒子混合工程で得られた、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトとリチウム化合物との粒子混合物を、加熱することにより、水酸化コバルト又は酸化コバルトと、リチウム化合物と、を反応させて、コバルト酸リチウムを得る工程である。
【0056】
焼成反応工程において、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトとリチウム化合物との粒子混合物を焼成反応する際、焼成反応温度は、800〜1150℃、好ましくは900〜1100℃である。また、焼成反応時間は、1〜30時間、好ましくは5〜20時間である。また、焼成反応雰囲気は、空気中、酸素ガス中等の酸化雰囲気である。
【0057】
焼成反応工程を行った後は、生成したコバルト酸リチウムを、必要に応じて、解砕又は分級して、コバルト酸リチウムを得る。
【0058】
本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトを用いて得られるコバルト酸リチウムは、粒度分布がシャープなものになり易く、このようなコバルト酸リチウムをリチウム二次電池正極活物質として用いることにより、リチウム二次電池の正極材に均一な厚さの塗膜を形成することが特に有利となる。
【0059】
更に、本発明の水酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる水酸化コバルト又は本発明の酸化コバルトの製造方法を行うことにより得られる酸化コバルトを用いて得られるコバルト酸リチウムは、平均粒子径が10〜35μmのものであっても残存する炭酸リチウムが少なく、且つ、粒径が1μm以下である微粒子分を実質的に含有しないものであるので、このようなコバルト酸リチウムをリチウム二次電池正極活物質として用いることにより、体積当たりの容量が高く且つ容量維持率が高いことに加えて、電池の安全性、特に、充放電を繰り返した際に起こる非水電解液との反応に伴うガス発生が抑制される。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
<反応用の原料水溶液の調製>
(1)コバルト水溶液1
工業用の硫酸コバルト7水和物425.5gと、グリシン7.1gとを、水に溶解させ、更に水を添加して全量を1Lにして、コバルト水溶液1を調製した。このとき、コバルト水溶液1中のコバルトイオン濃度は、原子換算で1.5モル/Lであり、グリシン濃度は0.094モル/Lであり、原子換算のコバルト1モルに対してグリシンは0.062モルであった。
(2)コバルト水溶液2
工業用の硫酸コバルト7水和物425.5gを、水に溶解させ、更に水を添加して全量を1Lにして、コバルト水溶液2を調製した。このとき、コバルト水溶液2中のコバルトイオン濃度は、原子換算で1.5モル/Lであった。
(3)コバルト水溶液3
工業用の硫酸コバルト7水和物425.5gを、水に溶解させ、更に水を添加して全量を0.9Lにして、コバルト水溶液3を調製した。このとき、コバルト水溶液3中のコバルトイオン濃度は、原子換算で1.67モル/Lであった。
(4)アルカリ水溶液1
25質量%の水酸化ナトリウム水溶液となるように、水酸化ナトリウムを水に溶解させて、アルカリ水溶液1を0.5L調製した。このとき、アルカリ水溶液1中の水酸化物イオン濃度は18.7モル/Lであった。
(5)初期張込液1
0.35Lの水を、初期張込液1とした。つまり、初期張込液1は、グリシンを含有していない。
(6)初期張込液2
グリシン7.1gを、水に溶解させ、更に水を添加して全量を0.35Lにして、初期張込液2を調製した。このとき、初期張込液2中のグリシン濃度は0.268モル/Lであった。
(7)初期張込液3
グリシン1.4gを、水に溶解させ、更に水を添加して全量を0.35Lにして、初期張込液3を調製した。このとき、初期張込液2中のグリシン濃度は0.053モル/Lであった。
(8)グリシン水溶液1
グリシン7.1gを、水に溶解させ、更に水を添加して全量を0.10Lにして、グリシン水溶液1を調製した。このとき、グリシン水溶液1中のグリシン濃度は0.937モル/Lであった。
【0062】
(実施例1〜2、比較例1〜3)
<水酸化コバルトの製造>
2Lの反応容器に、0.35Lの初期張込液を入れ、表1に示す反応温度に加熱した。
次いで、反応容器中の反応液(初期張込液)を、表1に記載の撹拌速度で撹拌しながら、反応容器に対して、反応液のpHが表1の記載のpHとなるように、実施例1及び2並びに比較例1及び2においては、コバルト水溶液とアルカリ水溶液とを、比較例3においては、コバルト水溶液とアルカリ水溶液とグリシン溶液とを、表1に示す反応温度及び滴下時間で滴下し、中和反応を行った。
中和反応後、反応液を冷却し、次いで、生成物をろ過及び水洗し、次いで、70℃で乾燥して、水酸化コバルトを得た。
得られた水酸化コバルトの諸物性を、表2に示す。
【0063】
(実施例3)
<酸化コバルトの製造>
実施例2で得られた水酸化コバルトを大気中、500℃で2時間焼成し、酸化コバルト(Co
3O
4)を得た。
得られた酸化コバルトの諸物性を、表2に示す。
【0064】
(実施例4〜5、比較例4〜7)
<コバルト酸リチウムの製造>
上記で得られた水酸化コバルト、酸化コバルトのコバルト源と、炭酸リチウムとを、表3に示すLi/Coモル比で混合し、次いで、表3に示す焼成反応温度で加熱し、コバルト酸リチウムを製造した。
得られたコバルト酸リチウムの平均粒子径、タップ密度、容量維持率、初期放電容量(重量当たり)、初期放電容量(体積当たり)及び平均作動電圧を、表3に示す。
【0065】
<評価>
(1)水酸化コバルト又は酸化コバルトの粒度分布
二次粒子の平均粒子径、最大粒子径、最小粒子径、粒径が1μm以下である微粒子分の含有量を、レーザー回折・散乱法により測定した。測定には、日機装社製マイクロトラックHRA(X−100)を用いた。
なお、粒度分布がシャープなかどうかの指標となる平均粒子径(D50%)/標準偏差(SD値)の値も、粒度分布の測定結果から求めた。
また、実施例1及び2で得られた水酸化コバルトの粒度分布図を
図1〜
図2に示し、比較例1〜3で得られた水酸化コバルトの粒子分布図を
図3〜
図5にそれぞれ示す。また、実施例5及び比較例6で得られたコバルト酸リチウムの粒度分布図を
図6〜
図7にぞれぞれ示す。
(2)タップ密度
JIS−K−5101に記載された見掛け密度又は見掛け比容の方法に基づいて、50mlのメスシリンダーにサンプル30gを入れ、ユアサアイオニクス社製、DUAL AUTOTAP装置にセットし、500回タップし、容量を読み取り見掛け密度を算出し、タップ密度とした。
(3)残存する炭酸リチウム量
サンプル30gを10mgの単位まで精秤し、ビーカーに入れる。メスシリンダーで脱イオン水100mlを量り取り、ビーカーに加え、マグネチックスターラーで5分間攪拌する。攪拌終了後、懸濁液を濾紙で濾過し、濾液を回収する。メスシリンダーで濾液を60ml分取し、自動滴定装置にてN/10塩酸溶液で滴定し、Li
2CO
3の中和反応における第二終点を読み取る。各測定値を下記式に代入し、残存アルカリ量を求めた。
残存アルカリ量={N
HCl×f
HCl×(A/1000)×(M
Li2CO3/B)×(C/D)}/2×100
N
HCl:滴定に使用した塩酸溶液のモル濃度
f
HCl:滴定に使用した塩酸溶液の力価
A:中和までに要した塩酸溶液の滴下量(ml)
M
Li2CO3:Li
2CO
3分子量
B:使用したサンプル量(g)
C:過剰Li分の抽出に使用した脱イオン水の量(ml)
D:1回の滴定に用いた濾液の量(ml))
【0066】
以下のようにして、電池性能試験を行った。
<リチウム二次電池の作製>
実施例4〜5及び比較例4〜7で得られたコバルト酸リチウム91重量%、黒鉛粉末6重量%、ポリフッ化ビニリデン3重量%を混合して正極剤とし、これをN−メチル−2−ピロリジノンに分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥、プレスして直径15mmの円盤に打ち抜いて正極板を得た。
この正極板を用いて、セパレーター、負極、正極、集電板、取り付け金具、外部端子、電解液等の各部材を使用してコイン型リチウム二次電池を製作した。このうち、負極は金属リチウム箔を用い、電解液にはエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの1:1混練液1リットルにLiPF
61モルを溶解したものを使用した。
<電池の性能評価>
作製したコイン型リチウム二次電池を室温で下記試験条件で作動させ、下記の電池性能を評価した。
(1)サイクル特性評価の試験条件
先ず、0.5Cにて4.4Vまで2時間かけて充電を行い、更に4.4Vで3時間電圧を保持させる定電流・定電圧充電(CCCV充電)を行った。その後、0.2Cにて2.7Vまで定電流放電(CC放電)させる充放電を行い、これらの操作を1サイクルとして1サイクル毎に放電容量を測定した。このサイクルを20サイクル繰り返した。
(2)初期放電容量(重量当たり)
サイクル特性評価における1サイクル目の放電容量を初期放電容量とした。
(3)初期放電容量(体積当たり)
正極板作製時に計測された電極密度と初期放電容量(重量当たり)の積により算出した。
(4)容量維持率
サイクル特性評価における1サイクル目と20サイクル目のそれぞれの放電容量(重量当たり)から、下記式により容量維持率を算出した。
容量維持率(%)=(20サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
(5)平均作動電圧
サイクル特性評価における20サイクル目の平均作動電圧を平均作動電圧とした。
【0067】
【表1】
1)撹拌周速が「0.5〜2.0」とは、混合開始後1時間は0.5m/秒で、その後は2.0m/秒で撹拌したことを指す。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
表3の結果より、本発明の水酸化コバルト及び酸化コバルトをコバルト源として製造された平均粒子径が10〜35μmのコバルト酸リチウムを正極活物質とするリチウム二次電池は、体積当たりの放電容量が450(mAh/mL)以上と高く、容量維持率も96%以上と高いことに加えて、粒径が1μm以下の微粒子分と残存する炭酸リチウムも低く抑えられているので、電池安全性にも優れていることが分かる。