特許第5961005号(P5961005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5961005-エンジンの制御装置 図000002
  • 特許5961005-エンジンの制御装置 図000003
  • 特許5961005-エンジンの制御装置 図000004
  • 特許5961005-エンジンの制御装置 図000005
  • 特許5961005-エンジンの制御装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961005
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/06 20060101AFI20160719BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20160719BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   F02D41/06 330J
   F02D29/02 321A
   F02D17/00 Q
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-35444(P2012-35444)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170522(P2013-170522A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(72)【発明者】
【氏名】林 裕
【審査官】 河端 賢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/139040(WO,A1)
【文献】 特開2007−278224(JP,A)
【文献】 特開2006−170068(JP,A)
【文献】 特開2006−169989(JP,A)
【文献】 特開2005−030237(JP,A)
【文献】 特許第4029891(JP,B2)
【文献】 特開2006−258078(JP,A)
【文献】 特開2003−065191(JP,A)
【文献】 特開2004−225561(JP,A)
【文献】 特開2007−239584(JP,A)
【文献】 特開2002−303171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00−29/02
F02D 41/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた停止条件が成立したとき、気筒毎に燃料カットを実行してエンジンに対する燃料供給を停止させ、予め定めた始動条件が成立したとき、前記燃料カットを停止して前記燃料供給を再開するエンジンの制御装置において、
前記停止条件が成立したとき、前記燃料カットの実行回数を積算する燃料カット回数積算部と、
前記燃料カットの開始からエンジンの回転が停止するまでの間に前記始動条件が成立したとき、前記燃料カット回数積算部で積算した燃料カット回数を所定の閾値と比較して、前記燃料供給の再開によって自立回転への復帰が可能か否かを判断する自立回転復帰判断部とを備え、
前記自立回転復帰判断部は、
前記燃料カット回数が前記閾値以下の場合、エンジンの自立回転への復帰は可能と判断して前記燃料供給を再開させ、前記燃料カット回数が前記閾値より大きい場合には自立回転への復帰は不可と判断して前記燃料カットを継続させ、エンジンの回転を停止させることを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記自立回転復帰判断部は、前記燃料カット開始時のエンジン回転数とエンジンに印加されている負荷トルクとの少なくとも一方に基づいて、前記閾値を設定することを特徴とする請求項1記載のエンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の条件が成立したとき、エンジンを自動的に停止/始動させるエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排気エミッションの低減や騒音の低減、燃費改善等を目的として、赤信号でドライバがブレーキを踏む等の車両の走行を停止する一定の条件が成立したとき、エンジンを自動的に停止させ、その後、信号の切替わり等でドライバが発進操作(例えば、ブレーキからアクセルに足を踏み替える等の操作)を行うと、エンジンを自動的に再始動させるアイドルストップシステムを備える車両が増えている。
【0003】
このようなアイドルストップシステムを備える車両では、アイドルストップの実施条件が成立したとき、エンジンの回転を停止させるために燃料カットを実行するが、燃料カットを開始してからエンジンの回転が完全に停止するまでの間にエンジンの再始動条件が成立することがある。この場合、ピニオンギヤを押し出してエンジン側のリングギヤに噛み合わせる電磁押し込み式のスタータを用いる車両では、ギヤの噛み合いをスムーズに行わせるためにエンジンの回転が完全に停止若しくはそれに近い状態になるまで待たなければならず、運転者の意図に反して再始動が遅れてしまう。また、常時噛み合い式のスタータを用いる場合であっても、アイドルストップからの再始動の度にスタータを駆動することになり、スタータの耐久性にも懸念が生じる。
【0004】
これに対処するに、特許文献1には、エンジンの停止条件が成立して燃料の供給を停止した後で且つエンジンの回転が停止する前に始動条件が成立した場合、燃料の供給無しに慣性力によってエンジンが回転している状態から、燃料の供給を再開することによりエンジンが自立回転する状態に復帰可能か否かを、エンジン回転数によって判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4029891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているように自立回転復帰の可否をエンジン回転数によって判定する技術では、エンジン回転数を算出するまでに遅れが生じるため、自立回転復帰可と判定しても、実際には自立回転に復帰できない虞がある。
【0007】
すなわち、エンジン回転数は、一般にクランク角センサの検出信号間の時間から演算されるが、燃焼による角速度変化を平均化するために各気筒の上死点間で算出することが多く、低回転になる程、エンジン回転数の演算に時間を要し、自立回転復帰の判断に遅れが生じる。また、燃料噴射のタイミングにもよるが、或る気筒の燃料カットを実行しても、他の気筒において前回のサイクルで噴射された燃料が燃焼するため、エンジン回転が低下するまでには時間を要し、同様に、自立回転復帰の判断に遅れが生じる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、燃料の供給を停止してからエンジンの回転が停止するまでの間に始動条件が成立したとき、エンジンが自立回転に復帰が可能か否かを遅れなく且つ正確に判断することのできるエンジンの制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるエンジンの制御装置は、予め定めた停止条件が成立したとき、気筒毎に燃料カットを実行してエンジンに対する燃料供給を停止させ、予め定めた始動条件が成立したとき、前記燃料カットを停止して前記燃料供給を再開するエンジンの制御装置において、前記停止条件が成立したとき、前記燃料カットの実行回数を積算する燃料カット回数積算部と、前記燃料カットの開始からエンジンの回転が停止するまでの間に前記始動条件が成立したとき、前記燃料カット回数積算部で積算した燃料カット回数を所定の閾値と比較して、前記燃料供給の再開によって自立回転への復帰が可能か否かを判断する自立回転復帰判断部とを備え、前記自立回転復帰判断部は、前記燃料カット回数が前記閾値以下の場合、エンジンの自立回転への復帰は可能と判断して前記燃料供給を再開させ、前記燃料カット回数が前記閾値より大きい場合には自立回転への復帰は不可と判断して前記燃料カットを継続させ、エンジンの回転を停止させる
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料の供給を停止してからエンジンの回転が停止するまでの間に始動条件が成立したとき、エンジンが自立回転に復帰可能か否かを遅れなく且つ正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】エンジン制御系の概略構成図
図2】アイドルストップに係る機能ブロック図
図3】各気筒の燃料カットとエンジン回転数算出のタイミングを示す説明図
図4】燃料カット気筒数に対する閾値の設定例を示す説明図
図5】アイドルストップ燃料カット制御ルーチンのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1はエンジンであり、このエンジン1に、変速機2が連設されると共に、エンジン1をクランキングして始動させるためのスタータ3が連設されている。エンジン1は、アイドルストップシステム(ISS)を有する車両に搭載されており、ドライバがブレーキを踏んで車両が停止すると、自動的にエンジン1が停止され、その後、ドライバがブレーキを離してアクセルを踏む等して走行を再開する場合、自動的にエンジン1が再始動される。
【0013】
エンジン1を始動させるスタータ3は、本実施の形態においては、DCモータを使用したギヤ式スタータである。このギヤ式のスタータ3は、エンジン回転が零若しくは零に近い回転状態で、マグネットスイッチの作動によりモータ側のピニオンギヤを押し出してエンジン側のリングギヤに噛合させることが可能となり、エンジンをクランキングして始動させることができる。
【0014】
スタータ3は、マイクロコンピュータ等から構成されるアイドルストップ制御ユニット(ISS−ECU)10により駆動制御される。アイドルストップ制御ユニット(ISS−ECU)10は、アイドル運転の所定の条件が成立したときにエンジンの回転を停止させるアイドルストップシステム(ISS)の主要部を担う制御ユニットであり、同じくマイクロコンピュータ等から構成されるエンジン制御用のエンジン制御ユニット(ENG−ECU)20を介したアイドルストップ(エンジン停止)、及びスタータ3を駆動してのアイドルストップからのエンジン再始動を制御する。
【0015】
アイドルストップ制御ユニット10及びエンジン制御ユニット20には、エンジン1のクランク角を検出するクランク角センサ4やその他の図示しないセンサ類が接続されている。クランク角センサ4からは、例えば180°CA毎に信号が出力され、この180°CA毎の信号の時間間隔からエンジン回転数が算出される。
【0016】
また、アイドルストップ制御ユニット10及びエンジン制御ユニット20は、CAN(Controller Area Network)等の車内ネットワーク100に、変速機制御ユニット(TM−ECU)30、エアコン制御ユニット(AIRCON−ECU)40等の他の制御ユニットと相互通信可能に接続されている。アイドルストップ制御ユニット10は、センサ類からの信号や他の制御ユニットからの制御情報に基づいて、アイドルストップを実施するために予め定めた停止条件(アイドルストップ許可条件)が成立するか否かを判断し、アイドルストップ許可条件が成立すると判断したとき、エンジン制御ユニット20にエンジンの燃料供給をカットする制御指令(ISS燃料カット要求)を送信する。
【0017】
エンジン制御ユニット20は、ISS燃料カット要求を受けて、図示しない燃料噴射弁の駆動を停止させ、エンジン1への燃料供給を遮断(燃料カット)する。エンジン制御ユニット20は、ISS燃料カット要求のオンオフ状態を監視し、ISS燃料カット要求がオンの状態に維持されている限り、燃料カットを実行してエンジンの回転を停止させる。
【0018】
一方、エンジンの回転が停止する前に、アイドルストップから復帰するために予め定めた始動条件が成立(アイドルストップ許可条件が不成立)して、ISS燃料カット要求がオフになった場合には、エンジン制御ユニット20は、エンジンの自立回転復帰が可能か否かを判断する。すなわち、エンジン制御ユニット20は、ISS燃料カット要求がONからOFFになったとき、燃料の供給無しに慣性力によってエンジンが回転している状態から、燃料噴射を再開することにより、燃料の燃焼によってエンジンが自立回転する状態に復帰可能か否かを判断する。
【0019】
その結果、エンジンの自立回転復帰が可能と判断した場合、直ちに燃料噴射を再開し、エンジンを自立回転に復帰させる。一方、エンジンの自立回転復帰は不可と判断した場合には、燃料カットを継続することでエンジンの回転を速やかに停止させ、スタータ3の駆動によるエンジン再始動を早期に可能とする。
【0020】
エンジンが自立回転復帰可能な否かの判断は、燃料カット開始後に燃料カットの回数を気筒間に渡って積算した値を用いて判断する。このため、エンジン制御ユニット20は、図2に示すように、アイドルストップに係る制御機能として、燃料カット実行/自立回転復帰判断部21、燃料カット回数積算部22、エンスト判定部23を備えている。
【0021】
エンジン制御ユニット20は、これらの機能部により、アイドルストップ制御ユニット10からのISS燃料カット要求がONの場合にエンジンの回転を停止させるべく燃料カットを実行すると共に、エンジン回転の停止前に運転者が発進の意思を示す操作を行い、ISS燃料カット要求がOFFになった場合には、エンジンの自立回転復帰が可能か否かを判断し、自立回転復帰可能と判断したとき、燃料カットから復帰(燃料噴射を再開)する機能を実現する。
【0022】
詳細には、アイドルストップ制御ユニット10において、アイドルストップ許可条件が成立するか否かを調べ、アイドルストップ許可条件が成立するとき、ISS燃料カット要求をONする。アイドルストップ許可条件は、例えば、車速がゼロに近い設定値以下である条件、ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキスイッチがONである)条件等であり、これらの条件が成立する場合、アイドルストップ制御ユニット10から出力されるISS燃料カット要求がONになる。
【0023】
また、アイドルストップ制御ユニット10は、アイドルストップ許可条件が成立してISS燃料カット要求をONにした後、運転者がブレーキを開放する等して発進の意思を示する操作を行った場合、ISS燃料カット要求をOFFする。このとき、未だエンジンの回転が停止していない場合には、エンジン制御ユニット20でエンジンの自立回転復帰が可能か否かを判断し、エンジンの自立回転復帰が可能の場合、燃料噴射を再開してエンジンを自立回転させ、自立回転復帰が不可の場合、燃料カットを継続してエンジンの回転を停止させる。そして、エンジンの回転が停止したとき、アイドルストップ制御ユニット10がスタータ3を駆動してエンジンを再始動させる。
【0024】
エンジン制御ユニット20は、アイドルストップ制御ユニット10からのISS燃料カット要求を燃料カット実行/自立回転復帰判断部21にて受信する。燃料カット実行/自立回転復帰判断部21は、ISS燃料カット要求がONになったとき、燃料噴射を制御する燃料噴射制御部(図示せず)に気筒毎の燃料カットの実行を指示すると共に、燃料カット回数積算部22に燃料カットの実行回数の積算を指示する。
【0025】
燃料カット回数積算部22は、燃料カット実行/自立回転復帰判断部21からの指示によって燃料カットの実行が開始されたとき、気筒毎の燃料カットの回数を気筒間に渡って積算し、燃料カット気筒数とする。また、この燃料カットの実行に伴い、エンスト判定部23は、クランク角センサ4からの信号に基づいてエンジンの回転が停止したか否かを判定する。例えば、設定時間内にクランク角センサ4からの信号を検出できない場合、エンジン停止(エンスト)と判定する。
【0026】
また、燃料カット実行/自立回転復帰判断部21は、エンジンの回転が停止する前にISS燃料カット要求がOFFになった場合、エンジンの自立回転復帰が可能か否かを判断し、その判断結果に応じて燃料カットの再開或いは継続を指示する。自立回転復帰の可否は、エンジン回転数ではなく燃料カット気筒数を用いて判断する。この燃料カット気筒数を用いて自立回転復帰を判断することにより、燃料カット開始後にエンジン回転数が低下するまでの遅れ、エンジン回転数を算出可能なタイミングとなるまでの遅れの影響を排除し、自立回転復帰の判断精度を向上することができる。
【0027】
例えば、本実施の形態におけるエンジン1が4気筒エンジンであり、燃料気筒が#1気筒→#3気筒→#2気筒→#4気筒の順で、排気行程中に燃料噴射を行う場合、エンジン制御ユニット20による燃料カット及びエンジン回転数の算出処理は、図3に示すようなタイミングで行われる。図3の例では、#1気筒の排気行程から燃料噴射が停止され、#2気筒の吸気行程から燃料噴射が再開される。
【0028】
また、エンジン回転数は180°CA毎に演算され、燃料カットの実施中、#3,#2,#4気筒では、それぞれ、燃料カットが開始される前の排気行程で噴射された燃料が燃焼するため、エンジン回転数は直ぐには低下しないが、燃料カットが解除された後の#1,#3気筒の爆発行程において燃焼すべき燃料がないため、エンジン回転数は略3行程分の遅延を持って低下する。そして、燃料カットが解除されると、#2,#4気筒の燃料燃焼により、エンジン回転数が上昇に転じる。従って、自立回転復帰の可否をエンジン回転数で判断しようとすると、判断に遅れが生じばかりでなく、エンジン回転数を算出した時点で実際のエンジン状態との間に乖離が生じて正確な判断が困難となる。
【0029】
このため、本実施の形態においては、燃料カットの回数をカウントして燃料供給を停止した気筒数を把握するようにしており、燃料カット気筒数(何気筒分燃料カットを実施したか)の大小により、自立回転への復帰が可能か否かを迅速且つ正確に判断することが可能となる。具体的には、燃料カット気筒数を所定の閾値と比較し、燃料カット気筒数が閾値以下で燃料供給を停止した気筒が少ない場合には、自立回転への復帰可能と判断し、燃料カット気筒数が閾値より大きい場合(燃料供給を停止した気筒数が多い場合)には、自立回転への復帰は不可と判断する。
【0030】
この場合、自立回転復帰の可否を判断する閾値は、エンジンの特性によって異なるため、実験或いはシミュレーションによって予め求めた値を機種毎の固定値としてシステムに記憶させても良いが、自立回転への復帰が可能か否かは、「エンジンの回転を停止させようとする力(トルク)」、「現在の回転エネルギー(回転数)」に依存するため、これらに相関のあるパラメータを用いて閾値を設定するようにしても良い。具体的には、燃料カット開始時のエンジン回転数とエンジンに印加されている負荷トルクとの少なくとも一方を引数とする閾値のテーブルを作成しておき、テーブル参照によって閾値を設定する。負荷トルクとしては、例えば以下の(1)〜(4)に示すようなトルクを用いることができる。
【0031】
(1)エンジン本体のフリクショントルク…油温(又は水温)とエンジン回転数とで決定することができる。
(2)オルタネータの消費トルク…発電量で決定することができる。
(3)油圧パワーステアリングの消費トルク…パワーステアリング用駆動ポンプの作動状態(油圧等)で決定することができる。
(4)エアコン用コンプレッサの消費トルク…コンプレッサの作動状態(各種温度や冷媒圧等)で決定することができる。
【0032】
図4は、燃料カット開始時のエンジン回転数[rpm]と負荷トルク[Nm]との双方を引数とする閾値テーブルの例を示している。この閾値テーブルでは、負荷トルクが同じ場合、エンジン回転数が高くなる程、燃料カット気筒数に対する閾値が大きくなり、エンジン回転数が同じ場合には、負荷トルクが大きくなる程、燃料カット気筒数に対する閾値が小さくなる特性を有している。
【0033】
次に、エンジン制御ユニットのアイドルストップ制御に係る各部の機能を実現するプログラム処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
図5のフローチャートは、アイドルストップ制御ユニット10から送信されるISS燃料カット要求を受けて燃料噴射の停止/再開を制御するアイドルストップ燃料カット制御ルーチンを示している。
【0035】
このアイドルストップ燃料カット制御ルーチンにおいては、先ず、最初のステップS1において、ISS燃料カット要求がONか否かを調べる。ISS燃料カット要求がOFFの場合、ステップS1から本ルーチンを抜け、ISS燃料カット要求がONの場合には、ステップS1からステップS2へ進んで燃料カットを実行し、エンジンへの燃料供給を遮断する。
【0036】
次に、ステップS3で燃料カット気筒数を積算し、ステップS4でクランク角センサ4からの信号に基づいてエンジンの回転が停止したか否かを調べる。そして、エンジンの回転が停止した場合、ステップS4から本ルーチンを抜け、エンジンの回転が停止していない場合、ステップS4からステップS5へ進んでISS燃料カット要求がOFFされたか否かを調べる。尚、エンジンの回転が停止した場合には、それまで積算された燃料カット気筒数はクリアされる。
【0037】
燃料カット要求がOFFされていない場合、ステップS5からステップS2へ戻り、ステップS2〜S5で、燃料カットの実行、燃料カット気筒数の積算、エンジンの回転停止及び燃料カット要求を調べる処理を繰り返す。また、エンジンの回転が停止する前にISS燃料カット要求がOFFになった場合には、ステップS5からステップS6へ進み、燃料カット気筒数が閾値以下か否かを調べる。
【0038】
その結果、燃料カット気筒数が閾値以下の場合には、ステップS6からステップS7へ進んで燃料噴射を再開(燃料カットを中止)し、燃料カット気筒数のクリア等の処理を行って本ルーチンを抜ける。この条件下では、燃料噴射を再開することにより、スタータ3を駆動することなくエンジンを自立回転させることができる。
【0039】
一方、ステップS6において、燃料カット気筒数が閾値を超えている場合には、エンジンの自立回転は不可と判断してステップS6からステップS8へ進み、エンジンの回転を迅速に停止させるべく燃料カットを継続する。そして、ステップS9でエンジンの回転が停止したか否かを調べ、エンジンの回転が停止していなければ、ステップS8で燃料カットを継続し、燃料カットの継続によりエンジンの回転が停止した場合、本ルーチンを抜ける。
【0040】
このように本実施の形態においては、燃料カットによるアイドルストップのエンジン停止処理中に、運転者の発進操作によってアイドルストップが解除された場合、エンジンが自立回転復帰可能か否かを燃料カット気筒数によって判定する。これにより、自立回転復帰の可否を精度良く判定することが可能となり、しかも、自立回転復帰の可否をエンジン回転数で判定する場合に比較して、遅れなく判定することができる。この自立回転復帰の判断精度の向上により、スタータの無駄な駆動を回避して電力浪費の防止、ライフサイクル中のスタータ作動回数を低減することに繋がり、ひいてはスタータの寿命を延ばすことができる。
【0041】
また、自立回転復帰の判定精度を向上することにより、自立回転復帰が不可の場合に燃料噴射を再開させてエンジンの回転停止までの時間を延ばしてしまい、スタータによる始動が遅れるといった事態を防止することができる。すなわち、自立回転復帰が不可の場合には燃料カットを継続させることで早期にエンジンの回転を停止させることができ、スタータによる再始動までの時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 エンジン
3 スタータ
4 クランク角センサ
10 アイドルストップ制御ユニット
20 エンジン制御ユニット
21 燃料カット実行/自立回転復帰判断部
22 燃料カット回数積算部
23 エンスト判定部
図1
図2
図3
図4
図5