特許第5961006号(P5961006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961006
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】無線中継システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/15 20060101AFI20160719BHJP
   H04W 4/04 20090101ALI20160719BHJP
   H04W 40/20 20090101ALI20160719BHJP
【FI】
   H04B7/15
   H04W4/04 190
   H04W40/20
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-38261(P2012-38261)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-175863(P2013-175863A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232922
【氏名又は名称】日油技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川上 高志
(72)【発明者】
【氏名】安野 正芳
(72)【発明者】
【氏名】米井 弘
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−307263(JP,A)
【文献】 特開2011−055394(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0208621(US,A1)
【文献】 特開2009−118172(JP,A)
【文献】 特開2001−186617(JP,A)
【文献】 特開2005−278367(JP,A)
【文献】 特開2008−099075(JP,A)
【文献】 特開2006−098245(JP,A)
【文献】 特開2009−246766(JP,A)
【文献】 特開2008−244679(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114268(WO,A1)
【文献】 特開2000−341882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/14 − 7/22
H04L 12/44
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線を架設する鉄塔列に、所定の連絡経路を形成するように配置された複数の無線通信装置を備え、該連絡経路に沿って、該無線通信装置が1台先の該無線通信装置へと情報を順次中継可能な無線中継システムであって、
該複数の無線通信装置には、各々を識別可能な識別番号が付されており、
該無線通信装置が、自局の位置から該連絡経路に沿って並ぶ順番に対応づけて、無線通信可能な他の該無線通信装置の該識別番号を予め記録した転送テーブルを有していて、
該無線通信装置が、地絡または閃絡を検出したときに特別情報を出力する地絡検出器または/および閃絡検出器を有しており、
該特別情報を中継する場合であるときに、該無線通信装置が、該転送テーブルに基づいて、該連絡経路に沿って複数台数先の該他の無線通信装置へと該特別情報を含む情報を中継することを特徴とする無線中継システム。
【請求項2】
記特別情報を中継する場合であるときに、前記無線通信装置が、前記転送テーブル中の自局から最も離れた前記他の無線通信装置に該特別情報を中継すること特徴とする請求項1に記載の無線中継システム。
【請求項3】
前記無線通信装置が、前記転送テーブル中の自局から最も離れた前記他の無線通信装置と無線通信が不能なときに、該転送テーブルに基づき、順次1台ずつ近い前記他の無線通信装置と無線通信を試み、無線通信が可能になった該他の無線通信装置に前記特別情報を中継することを特徴とする請求項2に記載の無線中継システム。
【請求項4】
前記特別情報の発信元の前記無線通信装置が、該特別情報を、該連絡経路に沿う一方向だけでなく、反対方向にも発信することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無線中継システム。
【請求項5】
前記無線通信装置が前記1台先の無線通信装置と無線通信が不能な場合であるときに、
該無線通信装置が、前記転送テーブル中の自局の2台先から順次1台ずつ先の前記他の無線通信装置と無線通信を試み、無線通信が可能となった該無線通信装置に前記特別情報を含む情報を中継することを特徴とする請求項1に記載の無線中継システム。
【請求項6】
前記無線通信装置が、時計を有すると共に、送受信を行うウェークアップ期間と送受信を行わないスリープ期間とを交互に繰り返す間欠動作が可能であり、該時計の時刻に基づく時刻同期により該ウェークアップ期間を開始することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の無線中継システム。
【請求項7】
前記無線通信装置が、時刻情報を含む標準電波を受信する標準電波受信機を有しており、該標準電波受信機の受信した時刻情報により前記時計の時刻を修正することを特徴とする請求項に記載の無線中継システム。
【請求項8】
前記無線通信装置が、前記標準電波受信機が前記標準電波を受信不能なときに、無線通信により前記他の無線通信装置から前記時刻情報を取得することを特徴とする請求項に記載の無線中継システム。
【請求項9】
前記無線通信装置が、動作用の電力を供給する蓄電体を有し、該蓄電体の電圧が所定電圧未満になったときに、前記間欠動作を中止して、常に前記スリープ期間の状態となり、予め定められた緊急情報を発信する動作のみを行うことを特徴とする請求項7または8に記載の無線中継システム。
【請求項10】
前記複数の無線通信装置の少なくとも1台が外部通信回線に接続可能な親局であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の無線中継システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の連絡経路を形成するように配置された複数の無線通信装置が情報を中継する無線中継システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線中継システムの一例として、特許文献1に記載された送電線保守監視装置がある。この監視装置は、送電線を支持する各鉄塔に、特定小電力無線で通信可能な子機を配置して、各子機が収集した送電線の情報(電線温度、碍子冠雪、地絡、閃絡など)を、隣り合う各子機間で順番にリレー通信(中継)して、基地装置まで伝送するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−107634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特許文献1の送電線保守監視装置では、中継する無線通信装置(子機)の数が多くなると、情報の伝送に必要な時間が長くなる。しかしながら、送電故障や落雷といった緊急性の高い情報は、短時間に伝送させたいという課題がある。又、一部の無線通信装置が故障したとしても、情報を確実に伝送させたいという課題がある。
【0005】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、所定の連絡経路に沿って配置された複数の無線通信装置が、短時間で情報を中継伝送することができる無線中継システムを提供することを目的とする。又、情報を確実に中継伝送することができる無線中継システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された無線中継システムは、送電線を架設する鉄塔列に、所定の連絡経路を形成するように配置された複数の無線通信装置を備え、該連絡経路に沿って、該無線通信装置が1台先の該無線通信装置へと情報を順次中継可能な無線中継システムであって、該複数の無線通信装置には、各々を識別可能な識別番号が付されており、該無線通信装置が、自局の位置から該連絡経路に沿って並ぶ順番に対応づけて、無線通信可能な他の該無線通信装置の該識別番号を予め記録した転送テーブルを有していて、該無線通信装置が、地絡または閃絡を検出したときに特別情報を出力する地絡検出器または/および閃絡検出器を有しており該特別情報を中継する場合であるときに、該無線通信装置が、該転送テーブルに基づいて、該連絡経路に沿って複数台数先の該他の無線通信装置へと該特別情報を含む情報を中継することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載された無線中継システムは、請求項1に記載のもので、前記特別情報を中継する場合であるときに、前記無線通信装置が、前記転送テーブル中の自局から最も離れた前記他の無線通信装置に該特別情報を中継すること特徴とする。
【0008】
請求項3に記載された無線中継システムは、請求項2に記載のもので、前記無線通信装置が、前記転送テーブル中の自局から最も離れた前記他の無線通信装置と無線通信が不能なときに、該転送テーブルに基づき、順次1台ずつ近い前記他の無線通信装置と無線通信を試み、無線通信が可能になった該他の無線通信装置に前記特別情報を中継することを特徴とする。
【0010】
請求項に記載された無線中継システムは、請求項1から3のいずれかに記載のもので、前記特別情報の発信元の前記無線通信装置が、該特別情報を、該連絡経路に沿う一方向だけでなく、反対方向にも発信することを特徴とする。
【0011】
請求項に記載された無線中継システムは、請求項に記載のもので、前記所定条件が、前記無線通信装置が前記1台先の無線通信装置と無線通信が不能な場合であるときに、該無線通信装置が、前記転送テーブル中の自局の2台先から順次1台ずつ先の前記他の無線通信装置と無線通信を試み、無線通信が可能となった該無線通信装置に前記情報を中継することを特徴とする。
【0012】
請求項に記載された無線中継システムは、請求項1からのいずれかに記載のもので、前記無線通信装置が、時計を有すると共に、送受信を行うウェークアップ期間と送受信を行わないスリープ期間とを交互に繰り返す間欠動作が可能であり、該時計の時刻に基づく時刻同期により該ウェークアップ期間を開始することを特徴とする。
【0013】
請求項に記載された無線中継システムは、請求項に記載のもので、前記無線通信装置が、時刻情報を含む標準電波を受信する標準電波受信機を有しており、該標準電波受信機の受信した時刻情報により前記時計の時刻を修正することを特徴とする。
【0014】
請求項に記載された無線中継システムは、請求項に記載のもので、前記無線通信装置が、前記標準電波受信機が前記標準電波を受信不能なときに、無線通信により前記他の無線通信装置から前記時刻情報を取得することを特徴とする。
【0015】
請求項に記載された無線中継システムは、請求項7または8に記載のもので、前記無線通信装置が、動作用の電力を供給する蓄電体を備え、該蓄電体の電圧が所定電圧未満になったときに、前記間欠動作を中止して、常に前記スリープ期間の状態となり、予め定められた緊急情報を発信する動作のみを行うことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載された無線中継システムは、請求項1からのいずれかに記載のもので、前記複数の無線通信装置の少なくとも1台が外部通信回線に接続可能な親局であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、転送テーブルに記録された複数台数先の無線通信装置に情報を飛越通信できるので、短時間で情報を伝送でき、さらに一部の無線通信装置に通信障害が発生しても確実に情報を伝送することができる。
【0019】
特に、予め設定された特別情報を伝送する場合に、転送テーブル中の自局から最も離れた他の無線通信装置に中継を行うと、最短時間で情報を伝送することができる。この場合、外来ノイズなどの影響で、最も離れた他の無線通信装置と無線通信が不能なときには、順次1台ずつ近い他の無線通信装置に情報を中継することで、情報を確実にしかも可及的に短時間で伝達することができる。この特別情報が、例えば地絡検出器などの検出器が出力する検出情報である場合、緊急性の高い情報を最短時間で伝送できる。又、特別情報を連絡経路の両方向に出力する場合、特別情報を広範囲に拡散することができ、例えば、複数の親局が連絡経路上にあるときは、いずれの親局にも特別情報を伝送することができる。
【0020】
又、無線通信装置が1台先の他の無線通信装置と無線通信が不能な場合に、転送テーブルの2台先から順次1台ずつ遠い無線通信装置に中継することで、隣接し合う無線通信装置間で情報を中継する逐次通信(逐次リレー中継)においても情報を確実に伝送することができる。
【0021】
無線通信装置が間欠動作をする場合、消費電力が低減されるので、動作可能期間を長くすることができる。又、無線通信装置が、標準電波受信機の受信した時刻情報により時計の時刻を修正する場合、全ての無線通信装置が正確に時刻同期することができるので、情報を一層確実に伝送することができる。標準電波受信機が受信不能なときに、無線通信装置が他の無線通信装置から時刻情報を取得する場合、標準電波の有無によらず時刻同期が可能になる。
【0022】
無線通信装置が、蓄電体の電圧が所定電圧未満になったときに、間欠動作を中止して、常時スリープ期間の状態となり、予め定められた緊急情報を発信する動作のみを行う場合、蓄電体の電力を温存して、特に緊急性の高い情報について確実に知らせることができる。
【0023】
無線通信装置の少なくとも1台が、外部通信回線に接続可能な親局である場合、外部の例えば上位ホスト局に情報を連絡でき、種々の遠隔監視システムとして使用することができる。特に送電線を架設する鉄塔列に無線通信装置を配置して送電線監視システムとする場合、鉄塔は落雷、台風、積雪など厳しい動作環境であるので、それら現象で一部の無線通信装置に通信障害が発生したとしても、情報を確実に伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用する無線中継システムの一例である送電線監視システムの概要図である。
図2図1の送電線監視システムに用いる無線通信装置1のブロック図である。
図3図1の送電線監視システムにおける親局から末端局に向かう連絡経路である。
図4図1の送電線監視システムにおける末端局から親局に向かう連絡経路である。
図5】イベント通信における飛越通信を説明する概要図である。
図6】イベント通信における飛越通信を説明する概要図である。
図7】定期通信における飛越通信を説明する概要図である。
図8】間欠動作における定期通信を説明する通信シーケンス図である。
図9】間欠動作におけるイベント通信を説明する通信シーケンス図である。
図10】間欠動作における定期通信の飛越通信を説明する通信シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0026】
本発明を適用する無線中継システムの一例として、送電線監視システムの概要図を図1に示す。この送電線監視システムは、送電線51を架設(支持)する複数の鉄塔50にそれぞれ配置された複数の無線通信装置1を備えている。各無線通信装置1は、通信範囲が広くなるように、見通し距離が長くなる鉄塔50の頂部付近に固定設置されている。この複数の無線通信装置1は、送電線51の経路に沿うように、一例として一列型の連絡経路(ネットワーク経路)を形成している。
【0027】
無線通信装置1は、それぞれの役割に応じて、親局、中継局、末端局となっている。
【0028】
親局となる無線通信装置1は、携帯電話回線、固定電話回線、インターネット回線、又は光ケーブル回線などの外部通信回線に接続可能になっていて、この送電線監視システム外の上位ホスト局(不図示)と通信を行う。連絡経路は、この親局を基準に一列型に形成する。同図では、親局の右側に一列型の連絡経路が形成されているが、さらに左側にも一列型の連絡経路が形成されていてもよい。連絡経路は、分岐の有るツリー型(木型)であってもよい。親局は、一列型の連絡経路内に少なくとも1つ配置するが、複数配置してもよい。又、一つの鉄塔50の根元に親局を配置し、その鉄塔50の頂部に中継局等の他の局を配置してもよい。親局は、末端局への定期通信の発信元又は末端局からの定期通信の宛先となる。又、親局は、末端局からの定期通信、及び各局で発生したイベント送信を受信した場合、必要に応じて上位ホスト局に通知する。又、親局は、上位ホスト局から各局へ指示があった場合、データ(情報)を指定の局宛てに送信する。
【0029】
末端局となる無線通信装置1は、連絡経路の端に配置されていて、定期通信の発信元になる。又、末端局は、親局からの定期通信については終端となり、受信した定期通信データを破棄する。又、末端局は、それ以外のデータを受信したときは、自局宛てでなければ破棄する。
【0030】
中継局となる無線通信装置1は、受信したデータを連絡経路の反対側に送信する。つまり、親局側から送られたデータを末端局側(一方向)に中継し、末端局側から送られたデータを親局側(他方向)に中継する。
【0031】
図2に無線通信装置1のブロック図を示す。
【0032】
無線通信装置1は、CPU(中央演算処理装置)2、無線部3、標準電波受信機4、RTC(リアルタイムクロック)5、内部メモリ6、地絡検出器7、地絡表示器8、携帯電話モジュール9、外部アナログ信号入力端子12、外部接点信号入力端子13、及び電源部30などを備えている。
【0033】
CPU2は、内部メモリ6に記憶されたプログラムにしたがって動作して、無線通信装置1を統括的に制御するものである。CPU2は、主に無線通信の制御を行う無線通信制御部、及び電源部30の監視を行う電源監視部として機能する。親局、中継局、及び末端局となる各無線通信装置1のプログラムは、皆共通であり、後述する転送テーブルの内容で自局が何れの局か判別して動作するようになっている。
【0034】
無線部3は、一例として、標準規格ARIB STD-T66に準拠した、データ通信が可能な2.4GHz帯の小電力無線である。小電力無線は、使用するために免許が不要であるので好ましく用いることができる。無線部3は、変調器21、復調器22、送信用高周波回路23、受信用高周波回路24、受信電界強度測定回路24a、高周波スイッチ25、及びアンテナ26などを備えている。無線部3は、CPU2から出力される送信データを、変調器21が例えばFSK(Frequency-shift keying)変調し、それを送信用高周波回路23が増幅及びフィルタリングしてアンテナ26から無線送信する。送信周波数は、2400MHz以上2483.5MHz以下の所定の周波数であり、送信出力は10mWである。又、回線速度は一例として125kbpsである。アンテナ26は、一例として基板上に1/2波長アンテナ(利得2.14dBi)が形成されたものを用いる。アンテナ26として、外部アンテナを接続して用いてもよい。無線部3は、アンテナ26から入力される無線信号を受信用高周波回路24が中間周波数に直交復調し、それを復調器22がFSK復調して、受信データをCPU2に出力する。高周波スイッチ25など無線部3の送受信は、CPU2によって切り換えられて半二重通信が可能になっている。又、受信電界強度測定回路24aは、受信電界強度(キャリアレベル)を測定し、CPU2に出力する。このような無線部3は、市販されている小電力無線用のモジュールやICなど、公知の種々のものを用いることができる。無線部3は、CPU2の制御により、例えば電源をオン/オフされたり、無線部3に用いたモジュールやICを動作モード/動作停止モード(省電力モード)に制御されたりすることで、送受信を行うウェークアップ期間と送受信を行わないスリープ期間とを交互に繰り返す間欠動作が可能になっている。なお、CPU2自体も、ウェークアップ期間とスリープ期間とに連動するように、消費電力の多い通常動作モードと小電力モードで動作するようにしてもよい。
【0035】
この2.4GHz帯の小電力無線(無線部3)でデータ通信可能な距離を測定したところ、屋外見通しでアンテナ高さ10m時に、少なくとも1200m、最大2000m程度の距離で通信が可能であった。回線速度を遅くすると、通信可能な距離をさらに長くすることができる。例えば回線速度を1/nにすると感度が√(n)倍上がる。無線通信装置1が設置される鉄塔50の間隔は、一律ではなく場所や鉄塔種類にもよるが、概ね50m〜500m程度の間隔になっている。したがって、小電力無線のデータ通信可能な距離内に、複数の鉄塔が存在する場合が多い。例えば、鉄塔間距離を300m、データ通信可能距離を1200mとしたときに、無線通信装置1は、1〜4本先の鉄塔に配置された複数の他の無線通信装置1とデータ通信が可能である。このように通信範囲がオーバーリーチするように無線通信装置1が配置される。
【0036】
なお、免許が不要な無線機として、400MHz帯、900MHz帯、1200MHz帯を使用する特定小電力無線がある。このような特定小電力無線を本発明に用いてもよいが、2.4GHz帯の小電力無線を用いると、周波数が高いため回路素子やアンテナなどを小型化でき、ひいては装置全体を小型化することができるので好ましい。又、必要性に応じて、送受周波数や送信出力などが異なる、小電力無線や特定小電力無線以外の他の規格の無線機を用いてもよい。
【0037】
標準電波受信機4は、長波用のバーアンテナ28によって受信される標準電波を復調して、標準電波に含まれる時刻情報をCPU2に出力する。標準電波受信機4は、市販されている標準電波受信用のモジュールやICなど、公知のものを使用することができる。標準電波とは、正確な時刻情報と正確な周波数情報を含む電波放送であり、わが国では独立行政法人情報通信研究機構が40kHz及び60kHzで運用を行っている。標準電波には、時刻情報として、時、分、通算日、年などの情報が含まれている。
【0038】
RTC5は、時計であり、年、月、日、時、分、秒の時刻をCPU2に出力する。又、RTC5は、CPU2に制御されて時計の時刻を更新設定される。
【0039】
内部メモリ6は、例えばEEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリ、CPU2の動作用のプログラムを記憶するフラッシュROMや、CPU2の作業用エリアとなるRAMなどで構成されている。書き換え可能な不揮発性メモリは、CPU2に制御されて後述する転送テーブルや無線通信周波数、再送回数などの各種設定情報を記憶する。
【0040】
地絡検出器7は、本発明における検出器の一例であって、鉄塔(不図示)に取り付けられて使用され、検出対象現象として送電故障の一例である地絡を検出したときに検出情報を出力する。地絡検出器7は、フォトカプラで電気的に絶縁して検出情報の受け渡しをする地絡検出器用インタフェース11aを介して、CPU2に接続されている。なお、地絡検出器7と共に、又は地絡検出器7に換えて、地絡以外の他の送電故障を検出する他の検出器を備えてもよい。検出器の検出する検出対象現象は、例えば落雷による閃絡を検出してもよい。閃絡を検出する場合、閃絡検出器を用いる。
【0041】
地絡表示器(表示器)8は、検出器7が検出対象現象を検出(この場合、地絡を検出)したときに、例えば、目立つ色の布製の吹き流しを外部に放出したり、色を変色させたりするように外観を変えることで、巡回者等が目視で地絡の発生した鉄塔を発見可能にするものである。地絡表示器8は、電気的に絶縁して表示開始用の信号の受け渡しをしたり、作動用電力の受け渡しをしたりする地絡表示器用インタフェース11bを介して、CPU2に接続されている。
【0042】
携帯電話モジュール9は、携帯電話網と接続が可能なものであり、親局となる無線通信装置1にだけ配置される。携帯電話モジュール9は、携帯電話用インタフェース11cを介して、シリアル通信でCPU2と相互に通信して、CPU2に動作を制御される。これにより、親局は、携帯電話網に接続して例えば上位ホスト局とデータ通信が可能になっている。
【0043】
外部アナログ信号入力端子12は、一例として4つのアナログ信号の入力が可能になっており、検出対象現象を検出したときに検出信号としてアナログ信号を出力する検出器が接続可能になっている。外部アナログ信号入力端子12から入力された信号は、A/D変換器12aがデジタル変換して、CPU2に入力する。外部接点信号入力端子13は、一例として3つの接点信号の入力が可能になっており、検出信号としてハイレベル/ローレベル(又はオープン/クローズ)の接点信号を出力する検出器が接続可能になっている。これら、入力端子12,13に、温度センサ、湿度センサ、積雪センサ、雷撃電流センサなどを検出器として接続してもよい。
【0044】
電源部30は、太陽電池31、リチウムイオンキャパシタ32、充電回路33、レギュレータ34、過放電保護回路35、A/D変換器36a,36bを備え、無線通信装置1の各部に動作用の電力を供給する。太陽電池31の発電した電力は、充電回路33によってリチウムイオンキャパシタ32に蓄電されると共に、レギュレータ34により動作用電圧に安定化されて各部に供給される。リチウムイオンキャパシタ32(蓄電体)は、満充電時に日照なしで少なくとも4日間、より望ましくは8日間、無線通信装置1を動作させることができる電力容量であることが好ましい。又、太陽電池31やリチウムイオンキャパシタ32を必要性に応じて増設できるようにすることが好ましい。又、リチウムイオンキャパシタ32は、過放電に対して弱いので、同図に示すように、電圧低下したときに、CPU2に制御されて出力を遮断する過放電保護回路35を介して電力を出力させることが好ましい。太陽電池31の発電電圧は、A/D変換器36a(検出器の他の一例)によりアナログ/デジタル変換されてCPU2(電源監視部)に入力されている。又、リチウムイオンキャパシタ32の電圧は、A/D変換器36b(検出器の他の一例)によりアナログ/デジタル変換されてCPU2(電源監視部)に入力されている。
【0045】
このように、太陽電池31を用いると、外部から無給電で無線通信装置1を動作させることができるので、交通不便な設置場所も多く、さらに鉄塔の頂部という高所に設置される装置のメンテナンスが簡便になるので好ましい。又、リチウムイオンキャパシタ32を用いると、電気二重層コンデンサと比べて、エネルギー密度が高く、静電容量が大きいため、装置を小型化、軽量化しつつ動作可能期間を長くすることができるので好ましい。なお、蓄電する電力容量、重量、形状の大きさなどが許容できる場合には、電気二重層コンデンサや、リチウムイオン2次電池、ニッケルカドミウム2次電池、鉛蓄電池といった2次電池など公知の種々の蓄電体を用いてもよい。又、外部電源を使用可能なときには、太陽電池31やリチウムイオンキャパシタ32を備えなくてもよい。
【0046】
この送電線監視システムの情報の連絡経路を、図3及び図4に示す。
【0047】
各々の無線通信装置1には、同図にIDで示すように、無線通信装置1を個別に識別可能な識別番号(ID番号)が付与されている。この識別番号が無線通信装置1のアドレスとして使用されることで、無線通信装置1と他の無線通信装置1とが1対1で無線通信(選択呼出し)することが可能になっている。なお、以下において各無線通信装置1をその局種及び識別番号(ID番号)で呼ぶこともある。
【0048】
図3は、親局ID1から末端局ID8に向かう連絡経路を示し、図4は、末端局ID8から親局ID1に向かう連絡経路を示す。
【0049】
各無線通信装置1には、自局の位置から連絡経路に沿って順に並ぶ順番に対応づけて、通信可能な複数の他の該無線通信装置1の識別番号を、転送テーブルとして内部メモリ6(図2参照)に予め記録しておく。この転送テーブルの記録を行うために、最初に、設置者が無線通信装置1と他の無線通信装置1とデータ通信を行わせ、所定の電界強度以上で互いが通信できる、及び/又は所定の符号誤り率以下で互いが通信できる他の無線通信装置1の識別番号を、自局から近い順に確認する。通信ができなくなったときには、それよりも先の無線通信装置1は通信不能であるとして確認しない。このとき連絡経路に沿って最大でも所定の複数台数先(例えば4台先)まで離れた他の無線通信装置1と通信の可否を確認するようにして、記録する複数台数の最大値を規定してもよい。なお、隣接する無線通信装置1を1台先、その次に隣接する無線通信装置1を2台先というように数える。複数台数先の無線通信装置1とは、2台以上先の無線通信装置1のことをいう。
【0050】
次に、設置者は、無線通信装置1に対して、保守・設定用の無線通信装置(図示せず)から記録用のコマンドを付して記録すべき転送テーブルを無線送信する。これにより、この無線通信を受信した無線通信装置1のCPU2(図2参照)が、転送テーブルを内部メモリ6(図2参照)に記録する。なお、無線通信装置1に接続した設定用のコンピュータ(図1に不図示)を操作して転送テーブルを記録するようにしてもよい。
【0051】
なお、上記のように、通信可能となった他の無線通信装置1の識別番号を転送テーブルに記録することが好ましいが、通信可能となる他の無線通信装置1を確認せずに、他の無線通信装置1の識別番号を、一律に所定の複数台数先(例えば4台先)まで、全て転送テーブルに記録してもよい。この場合、後述する検出情報の飛越通信の際に、データ中継に掛かる時間が長くなる場合がある。
【0052】
転送テーブルの例を表1〜表6に示す。転送テーブル中の「右登録」には、図3の連絡経路により自局が送信する方向で通信可能な他の無線通信装置1の識別番号を順番に登録し、「左登録」には、図4の連絡経路により自局が送信する方向で通信可能な他の無線通信装置1の識別番号を順番に登録する。ここでは、記録させる複数台数先の最大値を4台に規定した例を示している。基本的に、無線通信装置1は、転送テーブルに基づいて、自局の「右登録」側から来た情報を「左登録」側に中継し、自局の「左登録」側から来た情報を「右登録」側に中継する。又、この転送テーブルの登録内容から、無線通信装置1(CPU2)は、自局が親局、中継局、末端局のいずれであるか判断する。
【0053】
【表1】
表1は、図3,4に示す親局ID1に登録された転送テーブルである。「右登録」には、自局よりも末端局側方向(図の右側方向)の1台先(「+1」欄)に、中継局ID2の識別番号が記録され、2台先(「+2」欄)に中継局ID3の識別番号が記録され、3台先(「+3」欄)に中継局ID4の識別番号が記録され、4台先(「+4」欄)に末端局ID5の識別番号が記録されている。親局ID1よりも左側には連絡経路が無いので、「左登録」に何も記録されていない。又、「自局ID」欄には、自局の識別番号[ID1]が記録されている。さらに、これらの登録された識別番号の中に親局があるときは「親局ID」欄に親局の識別番号が記録されている。この場合、自局が親局であるので、「親局ID」欄に自局の識別番号[ID1]が記録されている。無線通信装置1は、自局IDと親局IDとが一致している場合、自局が親局であると認識する。なお、親局は、中継局、末端局の条件にも当て嵌まるときは、それらとしても機能する。
【0054】
【表2】
表2は、中継局ID2に登録された転送テーブルの例である。「左登録」の2台〜4台先(「+2」欄〜「+4」欄)の連絡経路は存在しないので空欄である。「自局ID」欄には、自局の識別番号[ID2]が記録されている。又、これらの登録された識別番号の中に親局ID1があるので、「親局ID」欄に[ID1]が記録されている。無線通信装置1(CPU2)は、「右登録」及び「左登録」の「+1」欄に識別番号が記録されていて、「親局ID」と「自局ID」とが一致しない場合、自局が中継局であると認識する。
【0055】
【表3】
表3は、中継局ID3に登録された転送テーブルの例である。
【0056】
【表4】
表4は、中継局ID4に登録された転送テーブルの例である。
【0057】
【表5】
表5は、中継局ID6に登録された転送テーブルの例である。転送テーブル中に親局が無いので、「親局ID」欄には、親局が無いことを示す、一例として「255」が記録されている。
【0058】
【表6】
表6は、末端局ID8に登録された転送テーブルの例である。自局よりも右側方向には連絡経路が無いので、「右登録」には何も登録されていない。「左登録」には、「+1」〜「+4」欄まで順番に、[ID7]〜[ID4]が記録されている。転送テーブル中に親局が無いので、「親局ID」欄には、親局が無いことを示す、一例として「255」が記録されている。無線通信装置1は、同表のように「右登録」に何も記録されていないとき、又は、「左登録」に何も記録されていないときに、自局が親局でなければ、末端局であると認識する。
【0059】
次に、送電線監視システムの動作について説明する。
【0060】
送電線監視システムでは、イベント通信、定期通信、コマンド通信の3種の通信を行う。
【0061】
イベント通信は、送電故障(この例では、地絡)の発生など、予め定められたイベントの発生(所定条件の一例)を検出した無線通信装置1(中継局、末端局)から親局に、そのイベントが発生したことを示す特別情報を、飛越通信で中継伝送する通信である。ここで飛越通信とは、無線通信装置1が連絡経路に沿って複数台数先の他の無線通信装置1と無線通信して情報を中継する通信である。イベント通信では、無線通信装置1が、転送テーブルに記録された中で自局から最も離れた他の無線通信装置1へ飛越通信を行う。無線通信装置1は、その飛越通信先の他の無線通信装置1と無線通信が不能なときには、順次1台ずつ近い他の無線通信装置1と無線通信を試み、無線通信が可能となった他の無線通信装置1に情報を中継することが好ましい。
【0062】
イベント通信の場合、図2に示す無線通信装置1は、地絡検出器7から地絡の検出情報が出力されたとき、外部アナログ信号入力端子12若しくは外部接点信号入力端子13から予め設定された条件を満たす信号が入力されたとき、又は、リチウムイオンキャパシタ32が電圧低下したときなど予め定めたイベントが発生したときに、そのイベントの発生を示す特別情報を、CPU2が無線部3から送信させる。
【0063】
図5に、イベント通信の概要を示す。
【0064】
例えば中継局ID6で地絡が検出された場合、中継局ID6は、内部メモリ6に記憶された転送テーブル(表5参照)から、親局側へ向かう「左登録」中で、自局から最も離れた識別番号(「+4」欄の[ID2])を確認し、図5(a)に示すように、中継局ID2に地絡の検出情報を送信する。この検出情報を受信した中継局ID2は、転送テーブル(表2参照)を確認し、「左登録」中の親局ID1に検出情報を中継する。親局ID1は、検出情報を携帯電話回線で上位ホスト局に連絡する。このように飛越通信を行うと、中継回数を減らすことができるので、短時間で情報を中継伝送することができる。なお、仮に中継局ID2の転送テーブルに親局が記録されていない場合には、中継局ID2は、特別情報であるので、転送テーブルの「左登録」中で最も離れた識別番号の局に情報を飛越通信で中継する。
【0065】
ここで、中継局ID6と中継局ID2との無線通信が不能であったときには、図5(b)に示すように、中継局ID6は、転送テーブルを確認し、1台分近い中継局ID3に地絡の検出情報を送信する。検出情報を受信した中継局ID3は、特別情報であるので、転送テーブル(表3参照)を確認し、「左登録」中の親局ID1に検出情報を飛越通信で中継する。
【0066】
中継局ID6と中継局ID3との無線通信が不能であったときには、中継局ID6は、図5(c)に示すようにさらに1台分近い中継局ID4と無線通信し、中継局ID4が、転送テーブル(表4参照)を確認し、親局ID1に飛越通信で中継伝送する。それでも通信不能であれば、中継局ID6は、図5(d)に示すように、隣接する中継局ID5と無線通信を行う。中継局ID5は、親局ID1に検出情報を飛越通信で中継する。このように、無線通信が不能なときに、1台ずつ近づけて通信を行うことで、情報を確実に伝送することができる。
【0067】
なお、イベント通信では、特別情報の発信元の無線通信装置1が、特別情報を、連絡経路に沿う一方向(左方向)だけでなく、連絡経路に沿う反対方向(右方向)の無線通信装置1へも中継することが好ましい。この場合、左登録側から特別情報を受信した無線通信装置1(中継局)は、右登録側に特別情報を飛越通信で中継する。又、前述したように、通信不能な場合が生じたときに、順次1台ずつ近い他の無線通信装置1と無線通信を試み、無線通信が可能となった他の無線通信装置1に情報を中継することが好ましい。このように両方向に特別情報を発信するのは、図6に示すように、連絡経路内に、複数の親局(親局ID1及び親局ID60)が配置される場合があり、中継局ID6が両方向に検出情報を送信すると、仮に親局ID1が動作不能状態になっていたとしても、他の親局ID60まで検出情報が飛越通信で中継伝送されて、上位ホスト局に連絡できるためである。つまり、上位ホスト局への特別情報の連絡性を高めることができる。又、特別情報の発信元の無線通信装置1が、特別情報を両方向へ発信するようにしておくと、右登録側に親局を配置するという決まりを設けたり、いずれの方向に親局が配置されているか判別したりすることが不要になると共に、ネットワークの拡張性に優れるため好ましい。なお、特別情報を受信した末端局は、その情報を破棄する。
【0068】
次に、定期通信について説明する。
【0069】
定期通信は、連絡経路の端部の無線通信装置1が、定期的に、1台先の無線通信装置1へと順次中継させる定期通信情報を発信する。
【0070】
具体的には、定期通信は、図3に示すように、定期的に(例えば1日ごとに)親局ID1(端部の無線通信装置)から末端局ID8側に向けて、又、図4に示すように、定期的に末端局ID8端部の無線通信装置)から親局ID1側に向けて、隣接し合う無線通信装置1で情報を順次中継する逐次通信を行わせる定期通信情報を伝送する。各無線通信装置1は、転送テーブルを確認して、1台先の無線通信装置1に定期通信情報を中継する。
【0071】
図3のように親局ID1が定期通信情報を発信する理由は、図6に示したように、他にも親局が存在する場合があるからである。そのため、全ての端部の無線通信装置1が定期通信情報を発信することが好ましい。端部に配置されていない親局は、定期通信を発信しない。なお、図4のように、親局ID1が端部にあり、親局ID1しか親局が無い場合には、親局ID1が定期通信情報を発信しないようにしてもよい。又、連絡経路に沿って一方向にしか情報を中継しない場合には、一方向の上流側の端部の無線通信装置1のみが定期通信情報を発信するようにしてもよい。
【0072】
親局ID1、末端局ID8がそれぞれ定期通信を発信する時刻は、適宜ずらしておくことが好ましい。発信する時刻は、予め内部メモリ6に記録されている。
【0073】
この定期通信では、無線通信装置1が1台先の無線通信装置1と無線通信が不能な場合(本発明における所定条件の他の一例)、複数台先の無線通信装置1と飛越通信を行う。定期通信時の飛越通信では、送信側の無線通信装置1が、2台先、3台先・・・というように、2台先の無線通信装置1から順次1台ずつ先の他の無線通信装置1と無線通信を試み、無線通信が可能となった無線通信装置1に情報を中継することが好ましい。
【0074】
図7に、定期通信時の飛越通信の一例を示す。同図は、末端局ID8が定期通信情報を発信した例である。図7(a)に示すように、例えば中継局ID6と中継局ID5との無線通信が不能の場合、中継局ID6は、転送テーブル(表5参照)から、「左登録」中の2台先の識別番号(「+2」欄の[ID4])を確認し、中継局ID4に定期通信情報を中継する。
【0075】
さらに、中継局ID6と中継局ID4との通信が不能であった場合、図7(b)に示すように、中継局ID6は、転送テーブルから、「左登録」中の3台先の識別番号(「+3」欄の[ID3])を確認し、中継局ID3に定期通信情報を中継する。それでも駄目なときには、4台先の中継局ID2に中継する。
【0076】
又、図3に示すように親局ID1が定期通信を発信するときに、図示しないが、例えば中継局ID3と中継局ID4との通信が不能であった場合には、中継局ID3は、転送テーブル(表3参照)を確認し、中継局ID4を飛び越して、2台先の中継局ID5に定期通信情報を中継する。中継局ID3と中継局ID4との通信が不能であった場合には、中継局ID3は3台先の中継局ID4に定期通信情報を中継する。
【0077】
このように、逐次通信で通信不能なときに、順次1台ずつ先の無線通信装置1に情報を中継することで、例えば、落雷等で一部の無線通信装置1が故障したとしても、情報を確実に伝送することができる。
【0078】
このように定期通信を行うことで、例えば親局ID1が定期的に定期通信情報を受信しなくなったときは、システムに何らかの障害が発生したと判別し、障害が発生したことを外部ホスト局に連絡することができる。
【0079】
コマンド通信は、図3に示す連絡経路で、親局ID1が特定の局に対して、その局の状態を逐次通信で問い合せし、問い合わせを受けた局は、その情報を中継せず、代わりに問い合わせに対し、図4に示す連絡経路で親局ID1に逐次通信で応答する。この場合も、定期通信と同様に、無線通信装置1間で通信不能なときには、飛び越し通信を行う。又、コマンド通信も飛越通信で中継するようにしてもよい。
【0080】
なお、親局が連絡経路の途中に配置されているときに、親局は、イベント通信、コマンド通信の何れの情報も、右側及び左側の両方向に発信すると共に、定期通信、イベント通信、コマンド通信の何れかの情報を受信したときには、送られてきた方向と反対側の方向に中継(送信)することが好ましい。又、親局が連絡経路の途中に配置されているときに、親局は受信して中継した情報を、携帯電話回線を介して上位ホスト局に連絡することが好ましい。
【0081】
無線通信装置1が、イベント通信、定期通信、コマンド通信のいずれか2つ、又は3つの通信を共に行う必要性が生じたときは、優先順位として、1:イベント通信、2:コマンド通信、3:定期通信の順番で送信する。イベント通信の中でも、地絡の検出情報を、最も優先して送信する。又、無線通信装置1は、いずれの通信の場合でも、送信を行う前に受信電界強度測定回路24a(図2参照)によりキャリア検出を行い、キャリアが検出されないときに送信を行う。キャリアが検出されたときには、検出されなくなるまで送信を待つ。
【0082】
次に、間欠動作について説明する。
【0083】
各無線通信装置1は、送受信を行うウェークアップ期間と送受信を行わないスリープ期間とを交互に繰り返す間欠動作で情報を中継することが、消費電力を少なくでき、動作可能な期間を長くすることができるので好ましい。
【0084】
図8に間欠動作の概要を示す。同図中の太線がウェークアップ期間Wを示し、破線がスリープ期間Sを示し、繰り返し周期Tで間欠動作する。各無線通信装置1は、各々のRTC5(図2参照)の時刻に基づく時刻同期により、一斉にウェークアップ期間Wを開始する。ウェークアップ期間Wは、一例として2秒間であり、スリープ期間Sは一例として178秒であり、その繰り返し周期Tは一例として180秒で動作する。この場合、各無線通信装置1は、例えば毎時0分、3分、6分・・・57分というように、内部メモリ6に予め記憶されている時刻でウェークアップ期間Wを開始する。
【0085】
無線通信装置1は、標準電波受信機4(図2参照)の受信した時刻情報によりRTC5(図2参照)の時刻を修正するため、正確な時刻同期が可能である。無線通信装置1は、例えば0時及び12時の1日2回、標準電波受信機4から時刻情報を取得してRTC5の時刻修正を行う。なお、無線通信装置1は、標準電波受信機4が標準電波を受信不能なときに、他の例えば隣接する無線通信装置1に対して時刻情報の返信を要求するコマンド通信を実行し、他の無線通信装置1から無線通信で時刻情報を取得することが好ましい。無線通信装置1は、隣接する無線通信装置1と無線通信が不能なときに、飛越通信でさらに先の無線通信装置1から時刻情報を取得することがより好ましい。
【0086】
同図に示すように、一例として、末端局ID8が定期通信を発信する場合、末端局ID8は、ウェークアップ期間中に、中継局ID7に対して定期通信情報を送信する。これを中継局ID7が正常に受信したときは、中継局ID7は、データ転送が正常に終了したことを示すACK(ACKnowledgement)を末端局ID8に送信する。末端局ID8は、中継局ID7の送信したACKを受信できたときに、無線通信が正常に行えたと判別する。中継局ID7は、末端局ID8にACKを送信後、中継局ID6に対して情報を送信し、中継局ID6からACKを受信したときは、正常に無線通信できたと判別する。以下同様に中継局ID5まで情報が無線中継されていく。
【0087】
同図の例では、中継局ID5が、中継局ID4に対して情報を送信するときに、ウェークアップ期間Wが終了してしまう。このようにウェークアップ期間Wが過ぎてしまう場合には、中継局ID5は、送信できなかったデータを内部メモリ6にバックアップ記録して、次のウェークアップ期間Wに中継局ID4に情報を送信する。以下同様に、親局ID1まで情報が中継される。
【0088】
図示しないが、親局ID1から末端局ID8まで定期通信するときも同様に、ウェークアップ期間W中に情報を転送し、そのウェークアップ期間Wが終了するときは、情報をバックアップして次のウェークアップ期間Wに情報を送信する。
【0089】
飛越通信を行う場合にも、同様に、ウェークアップ期間W中に目的とする局に情報を送信し、そのウェークアップ期間Wが終了するときは、情報をバックアップして次のウェークアップ期間Wに情報を送信する。
【0090】
送信側の無線通信装置1は、情報を送信した相手先の無線通信装置1から所定のタイムアウト時間Fが経過するよりも前にACKが返信されたときに、無線通信が正常に行えたと判別し、ACKが返信されないときに、無線通信が不能であったと判別する。なお、送信側の無線通信装置1が、相手先の無線通信装置1からACKが返信されないときに、所定の再送回数(例えば5回)まで情報を再送し、いずれかの再送に対しACKが返信されたときは、無線通信が正常に行えたと判別し、再送回数まで再送してもACKが返信されないときに、無線通信が不能であると判別してもよい。
【0091】
例えば、図9に、中継局ID6から親局ID1に、イベント通信する場合の例を示す。この場合、すでに図5を用いて説明したように、中継局ID6は、飛越通信で中継局ID2に地絡の発生等の特別情報を送信する。中継局ID6は、タイムアウト時間Fが経過しても中継局ID2からACKが返信されないときには、中継局ID2に再送を行う。中継局ID6は、再送回数まで再送しても中継局ID2からACKが返信されないときには、中継局ID2との無線通信が不能であると判別し、同図に示すように、1台近い中継局ID3に特別情報を送信する。この例では、中継局ID3からACKが返信されたので、中継局ID6は、中継局ID3との無線通信が正常に行えたと判別し、中継局ID3への再送は行っていない。なお、中継局ID6は、再送途中にウェークアップ期間Wが終了するときは、それまで再送した回数を内部メモリ6にバックアップし、次のウェークアップ期間Wで残りの回数まで、再送を行う。
【0092】
図10に、親局ID1が定期通信を発信した例を示す。この場合、中継局ID2の送信に対し、中継局ID3からACKが返信されないため、中継局ID2は再送回数まで定期通信情報の再送を行う。再送回数まで再送を行ってもACKが返信されないため、中継局ID2は、中継局ID3との無線通信が不能であると判別し、2台先の中継局ID4に対し飛越通信で定期通信情報を送信する。
【0093】
無線通信では、外来ノイズ等の影響で一時的に通信が不安定になることがあるので、このように所定の再送回数まで情報を再送することで、情報を中継できる確率が高くなるので、情報を一層確実に伝送することができる。
【0094】
又、無線通信装置1は、リチウムイオンキャパシタ32の電圧が、通常動作可能な最低電圧(例えば2.8V。本発明における所定電圧の一例)未満になったときに、その無線通信装置1は間欠動作を止めて常にスリープ状態になり、イベントの中でも最も緊急性の高い送電故障や落雷(この例では、地絡)の発生を検出したときにだけ、その検出情報(緊急情報)を発信することが好ましい。どのイベントが発生したときに緊急情報を発信するかは、内部メモリ6に予め設定しておく。
【0095】
このように低電圧時に一部の無線通信装置1が動作を停止したとしても、情報は飛越通信により問題なく中継される。又、電力を温存することで、最も重要な送電故障等の緊急情報を発信することができる。
【0096】
本発明の無線中継システムの例として送電線監視システムについて説明したが、本発明は、情報を無線中継する種々のシステムに適用することができる。例えば、各家庭のプロパンガスの残量を検出器で検出し、残量が所定値以下になったときにその情報を複数の無線通信装置が中継伝送して連絡するプロパンガス監視システムに本発明を適用してもよいし、山や崖など地表のずれを検出する検出器を配置して、この検出器で山崩れや崖崩れを検出し、その情報を複数の無線通信装置が順次中継伝送する自然災害監視システムに本発明を適用してもよい。又、連絡経路の一端側に外部から無線又は有線で送られた情報を連絡経路の他端側まで中継するような無線中継システムに本発明を適用してもよい。
【0097】
又、図3の連絡経路と図4の連絡経路のように両方向に情報を伝送可能な例について説明したが、必要性に応じ、1方向にのみ情報を伝送するシステムに本発明を適用してもよい。又、親局に外部通信回線を介さずに直接、外部ホスト局をケーブル接続してもよい。又、隣接し合う無線通信装置1間で通信するときに送信出力を必要最小に小さくし、飛越通信するときに送信出力を必要な程度に大きくするようにしてもよい。又、無線通信装置1は、外部電源が使用可能なときや、太陽電池31の発電電力やリチウムイオンキャパシタ32に蓄電された電力に余裕があるときには、間欠動作を行わず、連続動作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1は無線通信装置、2はCPU、3は無線部、4は標準電波受信機、5はRTC、6は内部メモリ、7は地絡検出器、8は地絡表示器、9は携帯電話モジュール、11aは地絡検出器用インタフェース、11bは地絡表示器用インタフェース、11cは携帯電話用インタフェース、12は外部アナログ信号入力端子、12aはA/D変換器、13は外部接点信号入力端子、21は変調器、22は復調器、23は送信用高周波回路、24は受信用高周波回路、24aは受信電界強度測定回路24a、25は高周波スイッチ、26はアンテナ、28はバーアンテナ、30は電源部、31は太陽電池、32はリチウムイオンキャパシタ、33は充電回路、34はレギュレータ、35は過放電保護回路、36a・36bはA/D変換器、50は鉄塔、51は送電線、Fはタイムアウト時間、Wはウェークアップ期間、Sはスリープ期間、Tは繰り返し周期である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10