特許第5961013号(P5961013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961013
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】歯磨剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/26 20060101AFI20160719BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20160719BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   A61K8/26
   A61K8/25
   A61K8/24
   A61Q11/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-47253(P2012-47253)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-181012(P2013-181012A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀徳
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/003989(WO,A1)
【文献】 特開平02−011510(JP,A)
【文献】 特開2003−342141(JP,A)
【文献】 特開平05−163125(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/000260(WO,A1)
【文献】 特開2004−123684(JP,A)
【文献】 特開2001−048719(JP,A)
【文献】 特開2003−128528(JP,A)
【文献】 特開2002−068947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)並びに(B):
(A)分散剤として二酸化ケイ素を0.1〜15質量%含み、平均粒径が15〜70μmであるゼオライト粉砕物、並びに
(B)オルトリン酸若しくはポリリン酸又はこれらのナトリウム塩 0.001〜0.09質量%
を含有し、かつ成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比(A/B)が300〜10000である歯磨剤。
【請求項2】
成分(B)が、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸及びこれらのナトリウム塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項に記載の歯磨剤。
【請求項3】
成分(A)100質量%中のゼオライトの含有量が、60〜99.9質量%である請求項1又は2に記載の歯磨剤。
【請求項4】
次の成分(A)並びに(B):
(A)分散剤として二酸化ケイ素を0.1〜15質量%含み、平均粒径が15〜70μmであるゼオライト粉砕物、並びに
(B)オルトリン酸若しくはポリリン酸又はこれらのナトリウム塩 0.001〜0.09質量%
を含有し、かつ成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比(A/B)が300〜10000である歯磨剤の製造方法であって、
溶媒中で二酸化ケイ素とゼオライトとを混合し、粉砕して成分(A)を得る工程を含む歯磨剤の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトを含む粉砕物を含有する歯磨剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において食生活の多様化がすすむにつれ、歯には歯垢や歯石、色性沈着物等の種々の沈着物が付着しやすい傾向にある。付着した歯垢を放置すると、虫歯や歯周病、口臭等の原因となり、付着した色性沈着物等を放置すると着色による歯の汚れとして認識され、美観が損なわれることとなる。
【0003】
従来より、こうした歯垢や汚れ等を除去する際、研磨剤としてのゼオライトとポリリン酸塩を併用した歯磨用組成物(特許文献1参照)や、顆粒状のゼオライトとポリリン酸塩を併用した歯磨用組成物(特許文献2参照)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−69983号公報
【特許文献2】特開2006−111622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、十分な清掃実感を得るには、組成物中における水溶性ポリリン酸塩の含有量をある程度の量まで高めざるを得ず、その他の有用成分の配合量の自由度が低下するばかりでなく、コスト高にもつながりかねない。そのため、歯垢や汚れ除去性能をさらに高めつつ、こうした効果を十分に実感できる性能をも兼ね備える歯磨剤を得るのは、依然として困難な状況下にある。
【0006】
したがって、本発明の課題は、歯垢又は汚れ除去性能を高めることができるとともに、口腔内でその効果を十分に触知でき、優れた使用感を発揮することのできる歯磨剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、ゼオライトを含む特定の粒径を有する粉砕物と特定量のオルトリン酸又はポリリン酸等とを併用することにより、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮するとともに、口腔内で収斂効果を実感できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)並びに(B):
(A)平均粒径が15〜70μmであるゼオライト粉砕物、並びに
(B)オルトリン酸若しくはポリリン酸又はこれらの塩 0.001〜0.2質量%
を含有する歯磨剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の粒径を有するゼオライト粉砕物と、特定量のオルトリン酸又はポリリン酸等とが相まって、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮できるだけでなく、使用後の口腔内で歯と歯肉の間が引き締まるような感触を付与する良好な収斂感や清掃感を実感することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の歯磨剤は、平均粒径が15〜70μmであるゼオライト粉砕物(A)を含有する。
成分(A)に含まれるゼオライトとしては、天然のものは夾雑物を含み均質性に欠けるので、合成のもの、すなわち合成ゼオライトが好ましく、さらにA型ゼオライトが好ましい。
【0011】
かかるゼオライト自体の粒子の大きさ、すなわち一次粒子の大きさは、好ましくは10μm以下の平均粒径の低研摩性のものが用いられる。低研摩性の粒子であっても、ゼオライト粒子が適度に凝集したものの粉砕物とすれば、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮できる。また、粉砕物であるため長時間の歯磨き操作でも歯を傷つけない(低為害性)という特徴を付与することができる。
【0012】
一方、ゼオライトの平均粒径が小さければイオン交換能が高まり、歯垢又は汚れ除去効果、歯石予防効果がさらに高まるという利点がある。この場合、粒径が小さい程イオン交換能が高くなり、歯垢除去効果は上がるが、研摩効果との兼ね合いから、用いるゼオライトの一次粒子の平均粒径は、0.5〜10μmが好ましく、1〜8μmがより好ましく、2〜7μmがさらに好ましい。なお、この平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0013】
成分(A)の粉砕物の平均粒径は、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮できるだけでなく、使用後の口腔内で歯と歯肉の間が引き締まるような感触を付与する良好な収斂感や清掃感を実感することも可能となるため、15〜70μmであり、20〜60μmであるのが好ましい。粉砕物(A)は、ゼオライトのほか、分散剤を含むのが好ましく、例えば、アルコール等の溶媒中で分散剤とゼオライトとを混合し、粉砕する方法を用いて製造すると、得られた粉砕物は表面が歪みでゴツゴツとした形状となるため、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮できるため、非常に好ましい。かかる分散剤としては、炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、アルミン酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機系分散剤や、シランカップリング剤、シリル化剤等の有機系分散剤が挙げられる。なかでも、分散剤が二酸化ケイ素であると、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮できるだけでなく、使用後の口腔内で歯と歯肉の間が引き締まるような感触を付与する良好な収斂感や清掃感を実感することも可能となるため好ましい。粉砕法としては、乾式粉砕法や湿式粉砕法を用いて製造してもよく、ゼオライト粒子間の凝集を抑制する観点から、湿式粉砕法を用いるのが好ましい。なお、この平均粒径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
粉砕物(A)中のゼオライトの含有量(無水換算)は、歯垢又は汚れ除去効果を十分に発揮させる観点から、好ましくは60〜99.9質量%であり、より好ましくは70〜98質量%であり、さらに好ましくは80〜96質量%である。
【0015】
粉砕物(A)中の分散剤の含有量は、ゼオライト粒子間の凝集を抑制する観点から、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜15質量%である。
【0016】
粉砕物(A)は、さらに上記以外の他の成分、例えば、ゼオライト以外の研磨性粉体、水不溶性繊維、薬用成分、着色剤も、本発明に影響を及ぼさない程度であれば含むことができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0017】
前述のゼオライト以外の研磨性粉体、水不溶性繊維、薬用成分、着色剤の含有量は、崩壊感触の観点から、ゼオライト及び分散剤の合計量100質量部に対して、合計で3質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.1質量部以下がさらに好ましく、配合しないことが殊更に好ましい。
【0018】
本発明の歯磨剤中における成分(A)の含有量は、後述する微量の成分(B)を有効に作用させて、歯垢及び汚れ除去効果を向上させる観点、及び使用後において口腔内が引き締まるような感触の収斂感を実感する観点から、好ましくは1〜25質量%であり、より好ましくは3〜20質量%であり、さらに好ましくは6〜15質量%である。
【0019】
本発明の歯磨剤は、オルトリン酸若しくはポリリン酸又はこれらの塩(B)を0.001〜0.2質量%含有する。かかる成分(B)は、上記成分(A)と併用することにより、歯垢や汚れの除去効果を飛躍的に高めることができ、従来よりも低い含有量でありながら十分な効果を発揮することが可能である。また、歯と歯肉の間が引き締まるような感触を付与することができ、使用後の口腔内に良好な収斂感や清掃感をもたらすことが可能である。このように低い含有量であるが故に、多量に含有させることにより生じがちな口腔内粘膜における刺激をもたらすおそれがなく、また香味とのバランスを考慮する必要も低く、容易にコスト減を実現することも可能となる。
【0020】
成分(B)としては、オルトリン酸のほか、ポリリン酸として、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸が挙げられる。また、これらオルトリン酸及びポリリン酸の塩としては、ナトリウム、カリウムが挙げられる。なかでも、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、及びトリポリリン酸カリウムが好ましく、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムがより好ましい。
【0021】
本発明の歯磨剤中における成分(B)の含有量は、良好な歯垢や汚れの除去効果と収斂感や清掃感とを兼ね備える観点、及びコスト低減の点から、0.001〜0.2質量%であり、好ましくは0.003〜0.09質量%であり、より好ましくは0.005〜0.04質量%である。
【0022】
なお、本発明の歯磨剤中における成分(A)の合計含有量と成分(B)の含有量との質量比(A/B)は、口腔内で歯垢や汚れの除去効果と収斂効果や清掃感とを効果的に高める観点から、好ましくは100〜10000であり、より好ましくは300〜6000であり、さらに好ましくは600〜3000である。
【0023】
本発明の歯磨剤の調製は常法により行うことができる。この際、成分(A)及び成分(B)以外の他の成分として、歯磨剤に通常使用される成分、例えば、粘結剤、湿潤剤、甘味剤、界面活性剤、防腐剤、香料、薬用成分、着色剤、賦形剤等を含有させることができる。
【0024】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、増粘性シリカ、モンモリロナイト、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、グアガム、ペクチン等が挙げられる。本発明の歯磨剤中における粘結剤の含有量は、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮できるだけでなく、使用後の口腔内で歯と歯肉の間が引き締まるような感触を付与する良好な収斂感や清掃感を実感させる観点から、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.3〜5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。
【0025】
湿潤剤としては、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール等が挙げられ、甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、タイマチン(ソーマチン)、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。本発明の歯磨剤中における湿潤剤の含有量は、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮できるだけでなく、使用後の口腔内で歯と歯肉の間が引き締まるような感触を付与する良好な収斂感や清掃感を実感させる観点から、好ましくは1〜60質量%であり、より好ましくは5〜55質量%であり、さらに好ましくは10〜50質量%である。
上記成分は1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明の歯磨剤中における水の含有量は、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮できるだけでなく、使用後の口腔内で歯と歯肉の間が引き締まるような感触を付与する良好な収斂感や清掃感を実感させる観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは10〜65質量%であり、さらに好ましくは20〜55質量%である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
なお、ゼオライト粉砕物(A)の平均粒径は、以下の方法により求めた。
【0028】
《平均粒径》
JISZ8801−1(2000年5月20日制定、2006年11月20日最終改正)規定の2000、1400、1000、710、500、355、250、180、125、90、63、45μmの篩を用いて5分間振動させた後、篩分け法による篩下重量分布について50%平均径を算出し、これを平均粒径とする。
【0029】
[実施例1〜6、比較例1〜5]
ゼオライト粉砕物(A)((ゼオライトの平均粒径:5μm)、ゼオライト95質量%、分散剤5質量%:二酸化ケイ素、湿式粉砕法による粉砕物の平均粒径50μm)を用い、表1に示す組成の歯磨剤を製造して、下記方法にしたがって、収斂感及び歯垢除去効果の評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
(1)収斂感の評価方法
パネラー:40名により、1種類ずつ渡して評価項目をモナディック評価する。
使用方法:いつもの歯磨剤に変え、評価サンプルを一定量取りブラッシングする。
評価項目:
磨けた感じ
汚れが落ちた感じ
歯ぐきの引き締まった感じ
口の中がきれいになった感じ
評価:感じた 1 感じない 0
として各項目について合計(MAX40ポイント)で評価した。ポイントの高い評価のサンプルが、汚れの落ちが良く、歯ぐきの引き締まりの効果も感じられた歯磨剤と判断できる。
【0031】
(2)歯垢除去効果の評価方法
歯間モデル(φ4のパスツールピペットを5本並べ接着固定)の溝に赤い口紅(オーブ(登録商標):RD305)を塗り込む。その後、余分な口紅をハブラシ(毛先が球(登録商標):ふつう)と食洗でブラッシング洗浄(赤色が出なくなるまで)した。各種歯磨きサンプルをモデルの上に一定量取り、口紅が落ちなくなるまで刷掃を行った。モデルに残った口紅をエタノール90mLで10分間超音波洗浄し、注出液を540nmにて吸光度測定(Abs)した。
なお、コントロール(初期値)として、上記ブラッシング洗浄後、エタノール90mLで10分間超音波洗浄した注出液を用いた。評価モデル1の歯垢又は汚れ除去率(%)は、コントロールの吸光度(X0)に対する各歯磨剤での評価後の吸光度(X)の減少率((X0−X)/X0)×100)から算出した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果によれば、ゼオライト粉砕物(A)と、オルトリン酸若しくはポリリン酸又はこれらの塩(B)とを併用した実施例1〜6は、成分(A)又は成分(B)を単独で使用した比較例1〜5に比べ、優れた歯垢又は汚れ除去効果を発揮しつつ、口腔内において良好な収斂感をもたらすことによる、効果感の向上をもたらすことがわかる。