特許第5961014号(P5961014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961014
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】背負いバッグ
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/04 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   A45F3/04
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-47270(P2012-47270)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-52221(P2013-52221A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-172724(P2011-172724)
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成24年2月2日 http://tsunaguard.net/を通じて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】511177190
【氏名又は名称】下出谷 良治
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】下出谷 良治
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−131222(JP,A)
【文献】 特開2004−098936(JP,A)
【文献】 実開平04−056707(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/04
B63C 9/08 − 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負いバッグ本体に一対の肩ベルトが設けられた背負いバッグであって、
前記各肩ベルトに非膨張状態で収容されると共に気体を供給することで膨張する浮力部と、
この浮力部に気体を供給するガスボンベが取り付けられるガス供給口と、
このガス供給口に取り付けられるガスボンベを開栓してその気体を供給させる開栓手段と
を備え
前記背負いバッグ本体は、
前記背負いバッグ本体の内部に水を取り込むための水取込部と、
前記水取込部を覆う網状ポケットと
を有している
ことを特徴とする背負いバッグ。
【請求項2】
前記肩ベルトが、前記背負いバッグ本体に着脱自在に取り付けられたものである
ことを特徴とする請求項1記載の背負いバッグ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の肩ベルトが設けられた背負いバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の肩ベルトが設けられた背負いバッグが知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の背負いバッグは、本体と、この本体に設けられた一対の肩ベルトとを備えている。この背負いバッグは、本体内部に物を収納した状態で、ユーザーに背負われるよう構成されており、具体的には肩ベルトと本体との間に、ユーザーの腕・肩が通されて装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−45233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここでこの背負いバッグは、本体内に幾つかの物を収容でき、しかも肩と背中とに密着した状態で装着されるため、たくさんの物を楽に運ぶことができる。ところが、仮に、たくさんの物を収容した背負いバッグを背負ったユーザーが、川や海に落下等して水没してしまうような場合、収納物が重くて危険となる場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユーザーが背負ったまま水没するような場合であっても、溺れる危険を回避することができる背負いバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、背負いバッグ本体1に一対の肩ベルト3が設けられた背負いバッグであって、前記各肩ベルト3に非膨張状態で収容されると共に気体を供給することで膨張する浮力部31と、この浮力部31に気体を供給するガスボンベ5が取り付けられるガス供給口42と、このガス供給口42に取り付けられるガスボンベ5を開栓してその気体を供給させる開栓手段43とを備えていることを特徴とする。
【0007】
このような構成の本発明の背負いバッグは、ガスボンベ5がガス供給口42に装着された状態で、開栓手段43が作動すると、ガスボンベ5から浮力部31に向けてガスが供給され、浮力部31が膨張する。これにより、例えば、この背負いバッグを背負ったユーザーは、水没しそうになった場合に、開栓手段43が作動して肩ベルト3に収容された浮力部31が膨張し、この膨張した浮力部31が水に浮くため、溺れる危険を回避することができる。
【0008】
またこの背負いバッグにおいて、前記背負いバッグ本体1が、内部に水を取り込むための水取込部17を有していることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、使用者が水没した際に、水取込部17を通して背負いバッグ本体1内に水を取り込むことができる。これにより、使用者が水没した際に、浮力部31が膨張したとしても、使用者の顔を空気中に位置させることができる。
【0010】
またこの背負いバッグにおいて、前記背負いバッグ本体1が網状ポケット18を有しており、この網状ポケット18により前記水取込部17が覆われていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、背負いバッグ本体1に水取込部17が設けられていても目立たないようにでき、それでいて、背負いバッグ本体1内に水を流入させることができる。
【0012】
またこの背負いバッグにおいて、前記肩ベルト3が、背負いバッグ本体1に着脱自在に取り付けられたものであることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、開栓手段43が作動して浮力部31が膨張した使用後に、別の肩ベルト3に容易に交換することができる。すなわち、膨張作動後は肩ベルト3だけを簡単に交換することができるから、背負いバッグ本体1を長く使用し続けながら肩ベルト3だけを新しいものと交換することも可能である。これにより例えば、緊急時やあるいは誤操作等で浮力部31を膨張させた場合であっても、肩ベルト3だけを交換して、再度使用するようなことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の背負いバッグによれば、ユーザーが背負ったまま水没した場合であっても、溺れる危険を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の背負いバッグであり、(a)は斜視図であり(b)は水取込部の要部断面図である。
図2】上記実施形態の背負いバッグの別の角度からの斜視図である。
図3】上記実施形態の背負いバッグの肩ベルトを取り外した状態の斜視図である。
図4】上記実施形態の背負いバッグの肩ベルトが拡開状態にある斜視図である。
図5】上記実施形態の背負いバッグの作動部にガスボンベが取り付けられた状態の説明図である。
図6】上記実施形態の背負いバッグの浮力部が膨張した状態の正面図である。
図7】上記実施形態の背負いバッグの通常の肩ベルトを装着する直前の分解斜視図である。
図8】(a)は本実施形態の背負いバッグの浮力部が膨張した状態の図であり(b)は、参考例の浮力部が膨張した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態の背負いバッグは、図1に示されるように、背負いバッグ本体1と、一対の肩ベルト3とを備えている。背負いバッグ本体1は、内部に物を収容可能となっている。一対の肩ベルト3は、背負いバッグ本体1に設けられている。本実施形態の背負いバッグは、リュックサックにより構成されている。
【0018】
背負いバッグ本体1は、水不透過性の素地により形成されている。水不透過性の素地は背負いバッグ本体1内への水の通過を阻止する。水不透過性の素地は柔軟性を有する。水不透過性の素地は、例えば、ナイロン,ポリ塩化ビニル等が挙げられる。これにより背負いバッグ本体1は防水性を有する。背負いバッグ本体1は袋状に形成されている。
【0019】
背負いバッグ本体1は、図2に示されるように、第1収納部11及び第2収納部12を備えている。第1収納部11及び第2収納部12は、上方に開口している。第1収納部11と第2収納部12とは、前後に並設されている。第1収納部11と第2収納部12とは、背負いバッグ本体1の内部で区画されている。言い換えると、第1収納部11と第2収納部12とは、内部で互いに繋がっていない。第1収納部11及び第2収納部12の上方の開口には、ファスナー部14が設けられている。ファスナー部14は、対向する開口縁同士を連結する。ファスナー部14はランナー15を備えている。ランナー15を開口に沿って移動させることで、第1収納部11及び第2収納部12の開口は、開いたり閉じたりする。なお、ランナー15は2つ設けられている。ファスナー部14が閉じると、ランナー15の突き合わされた部分には、僅かな隙間が形成される。
【0020】
背負いバッグ本体1は第3収納部13を有している。第3収納部13は、背負いバッグ本体1の左右両側面部に設けられている。第3収納部13は、網状ポケット18により構成されている。網状ポケット18は上方に開口している。網状ポケット18は網状体19を有している。網状体19の外縁は、上方を除いた部分において背負いバッグ本体1の外側面に縫合されている。網状体19は水を透過する。言い換えると網状ポケット18は水を透過する。この網状ポケット18には、例えば、小型のペットボトルや水筒等が収容される。
【0021】
本実施形態の背負いバッグは、図3に示されるように、連結部2を有している。ここで、背負いバッグ本体1は背面部16を有している。背面部16は、ユーザーの背中に当接する。連結部2は、肩ベルト3を着脱自在に装着するために取り付けられている。連結部2は、背面部16と肩ベルト3との間に介装されている。連結部2は、第1の連結体21と、第2の連結体22と、第3の連結体23と、第4の連結体24とを備えている。第1の連結体21は、一対設けられている。第1の連結体21は、背面部16上部に固着されている。第1の連結体21は左右方向に離間している。第2の連結体22は、肩ベルト3の上端部に固着されている。第2の連結体22は、第1の連結体21に着脱自在に保持される。第3の連結体23は一対設けられている。第3の連結体23は、背面部16下部に固着されている。第3の連結体23は左右方向に離間している。第4の連結体24は、肩ベルト3の下端部に固着されている。第4の連結体24は、第3の連結体23に着脱自在に保持される。本実施形態の連結部2は、例えば射出成形や注型成形などで樹脂成形される。
【0022】
肩ベルト3は、背負いバッグ本体1の背面部16に、連結部2を介して着脱自在に取り付けられている。肩ベルト3は、その厚み内に浮力部31が内設されている。肩ベルト3の浮力部31は、水中に浸かると膨張して浮き袋として機能する。これによりこの肩ベルト3は、背負いバッグを装着したユーザーに浮力を与える。
【0023】
肩ベルト3は、図4に示されるように、浮力部31と、作動部4とを備えている。浮力部31は、肩ベルト3に非膨張状態で収容される。作動部4は、装着されたガスボンベ5を作動させて浮力部31にガスを供給させる。
【0024】
肩ベルト3は、拡開状態と通常状態との間で変形する。通常状態とは、肩ベルト3が細く折り畳まれた帯状の状態(図1参照)として定義される。拡開状態とは、通常状態の肩ベルト3が開かれた状態(図4参照)として定義される。肩ベルト3は、胸前部33と、首部34とを備えている。胸前部33は、上下方向に長さを有している。胸前部33は左右一対設けられている。胸前部33は、互いに平行している。首部34は、胸前部33の上端同士を連結する。首部34は、人が装着すると、その人の首の後部に位置する。肩ベルト3は、下向き略U字状となっている。
【0025】
拡開状態の肩ベルト3は、図4に示されるように、内皮体35と、外皮体36とを備えている。内皮体35と外皮体36とは積層されている。内皮体35と外皮体36とは、外周縁部同士が溶着されている。内皮体35は、拡開状態では外皮体36よりも前方に位置する。内皮体35は、通常状態では、肩ベルト3の厚み内(内側)に位置する。外皮体36は、拡開状態では内皮体35よりも後方側に位置する。外皮体36は、通常状態では、肩ベルト3の外側に位置する。
【0026】
通常状態において、肩ベルト3の胸前部33は、拡開状態の胸前部33の幅方向の両端を各胸前部33の幅中央側に折り畳まれる。そして幅方向の両縁部分が面ファスナー37で止着される。また、通常状態において、肩ベルト3の首部34は、拡開状態の首部34上端が下方に折り返される。そして、その上端と下端の両縁部分が面ファスナー37で止着される。
【0027】
また肩ベルト3には、図3に示されるように、支持ベルト39が設けられている。支持ベルト39は、ユーザーの背中側に位置する。この支持ベルト39は、胸前部33との間で腕や肩を通す部分を形成する。支持ベルト39は、首部34と両胸前部33の下端部とを繋ぎ、逆T字状となっている。
【0028】
浮力部31は、内皮体35と外皮体36との間に収容されている。浮力部31は、ガスボンベ5から供給された気体を気体流入口(図示せず)を介して内部に取り込むことにより膨張する。本実施形態の浮力部31は、浮き袋体310により構成されている。浮き袋体310は、非膨張状態で内皮体35と外皮体36とに積層されている。浮き袋体310は、内皮体35及び外皮体36と共に折り畳まれる。これにより浮き袋体310は、通常状態の肩ベルト3の厚み内に収容配置されている。
【0029】
作動部4は、装着されたガスボンベ5を作動させて浮力部31に空気を供給させるよう構成されている。作動部4は、水没すると水を検知して、自動的にガスボンベ5を開栓する。また作動部4は、手動操作部41を有している。手動操作部41は、使用者が手動で強制的にガスボンベ5を開栓できるよう構成されている。言い換えると、手動操作部41は、水没したか否かに拘らず、浮力部31を動作させることができる。
【0030】
作動部4は、図4に示されるように、一対の肩ベルト3のうちの一方の胸前部33に設けられている。作動部4は、肩ベルト3の厚み内に設けられている。本実施形態の作動部4は、肩ベルト3が拡開状態では、カバー38により覆われている。
【0031】
作動部4は、図5に示されるように、ガス供給口42と、開栓手段43と、手動操作部41と、ガス吹き出し口44とを備えている。ガス供給口42は、小型のガスボンベ5を取付け可能となっている。開栓手段43は、ガス供給口42に装着されたガスボンベ5を開栓して気体の供給を開始させる。ガス吹き出し口44は、ガスボンベ5の長手方向とは直交する方向に向けて開口する。ガス吹き出し口44は、ガス供給口42に連通している。作動部4は、このガス吹き出し口44が浮力部31の気体流入口に連通した状態で、内皮体35に固着されている。
【0032】
開栓手段43は、図5に示されるように、作動部本体45により主体が構成されている。作動部本体45は筒状に形成されている。作動部本体45は、一端側にガス供給口42を有している。開栓手段43は、針部(図示せず)と、押圧体46と、付勢体47と、キャップ体48とを備えている。針部は、作動部本体45の内部に設けられている。針部は、筒軸方向にスライド移動自在となっている。押圧体46は、針部をガスボンベ5側に押圧し、これにより、ガスボンベ5の栓部に穿孔して開栓する。付勢体47は、押圧体46をガスボンベ5側に向けて付勢する。付勢体47は、例えばコイルばねにより構成されている。キャップ体48は、付勢体47を内部に収容する。キャップ体48は、作動部本体45に装着される。
【0033】
また開栓手段43は、支持体49を有している。支持体49は、水に浸漬されると溶解する。支持体49は、作動部本体45のガス供給口42とは反対側の開口部に固定されている。この支持体49は、針部と押圧体46との間に介装されており、これにより針部に対する押圧体46の付勢力を遮断する。
【0034】
作動部4のガス供給口42にガスボンベ5が装着された状態で、この作動部4を水没させると、支持体49が水に溶解する。すると、付勢体47により押圧されている針部は、支持体49による移動規制が解除され、当該付勢力に従ってガスボンベ5側に移動し、当該ガスボンベ5の長手方向の一端に設けられた栓部を開栓する。
【0035】
開栓したガスボンベ5は、内部に高圧封入された気体を噴出し、ガス供給口42・ガス吹き出し口44・内皮体35に穿設された気体流入口を介して、浮力部31に気体を供給する。
【0036】
この後、気体が供給された浮力部31は、図6に示されるように、胸前部33及び首部34に気体が充填される。これにより、浮力部31はユーザーの上半身を覆うようにして膨張する。このとき、浮力部31は、膨張してゆくにつれて、肩ベルト3において折り畳んだ状態で止着した面ファスナー37を引き剥がしながら膨張してゆき、目一杯膨張する。そして本実施形態の背負いバッグは、浮力部31がユーザーの胸前に広がると共に首後を支持し、一方、背負いバッグ本体1がユーザーの背中側に位置するようになっており、ユーザーの顔が水面上に出るよう水上でバランスする。
【0037】
ところで、このような背負いバッグにおいては、浮力部31が膨張して水に浮いた際、次の問題が懸念される。使用者が水没し、浮力部31が膨張した時には、背負いバッグ本体1内にも空気が入っている。このとき、浮力部31と背負いバッグ本体1とにより浮力が生じる。したがって、浮力部31と背負いバッグ本体1との浮力により、図8(b)に示すように、胸前部33側が水中側を向いてしまう。これにより、使用者の顔が水中に水没してしまうという問題が考えられる。
【0038】
この問題を解消するために本実施形態の背負いバッグは、図1に示されるように、水取込部17を有している。水取込部17は、背負いバッグ本体1の内部に水を取り込む。より具体的に言うと、水取込部17は、背負いバッグ本体1の内外を連通する。水取込部17は、例えば、内外を貫通する貫通孔であってもよいし、背負いバッグ本体1内に水を取り込むために水を透過する素材により構成されていてもよい。
【0039】
水取込部17は、複数箇所に設けられている。詳しく説明すると、水取込部17は、背負いバッグ本体1の両側の側方に設けられている。水取込部17は、第3収納部13の網状体19により覆われている。言い換えると水取込部17は、網状ポケット18により覆われている。
【0040】
本実施形態の背負いバッグを装着した使用者が水没すると、浮力部31が膨張し始める。またこの水没と同時に、水取込部17を通して、背負いバッグ本体1内に水が取り込まれる。すると、背負いバッグ本体1内の空気が、第1収納部11及び第2収納部12の開口を閉じるファスナーのランナー間の隙間から追い出される。そして次第に、背負いバッグ本体1内に水が充満する。これにより、背負いバッグ本体1に生じる浮力を低減することができる。この結果、図8に示すように、浮力部31が膨張した場合には、背負いバッグ本体1側を水中側に位置させることができ、使用者の顔を空気中に露出させることができる。
【0041】
その上、背負いバッグ本体1は、水不透過性の素地により形成されているため、普段の使用時においては、内部の収容物に対して、防水効果を発揮することができる。一般的には、背負いバッグ本体1が水不透過性の素地により形成されていると、水没時に背負いバッグ本体1内に水が流入しにくいため、背負いバッグ本体1側が沈みにくい。この点につき、本実施形態の背負いバッグは、背負いバッグ本体1に水取込部17が設けられているため、背負いバッグ本体1を効果的に沈ませることができる。すなわち、本実施形態の背負いバッグは、普段の使用時においては、収容物を水等から保護することができ、それでいて、水没時には、背負いバッグ本体1側を水中側に位置させることができる。
【0042】
しかも、水取込部17は、第3収納部13の網状体19により覆われている。言い換えると水取込部17は、網状ポケット18により覆われている。これにより、水取込部17を目立たなくすることができる。これにより背負いバッグの意匠性を向上させることもできる。しかも、網状ポケット18は水を透過するため、網状ポケット18により水取込部17が覆われていても、確実に水を背負いバッグ本体1内に流入させることができる。
【0043】
また手動操作部41は、作動部本体45に設けられており、ユーザーが操作することで強制的にガスボンベ5を開栓するものである。本実施形態の手動操作部41は、その端部が肩ベルト3の下端部から露出する紐部410により構成されており、ユーザーが紐部410を引っ張ることで作動部4の針部をガスボンベ5側にスライド移動させ、当該ガスボンベ5を開栓するよう構成されている。
【0044】
肩ベルト3は、図1に示されるように、胸前部33の下端部同士を連結する接続部6を有している。本実施形態の接続部6は、着脱自在なバックル部61を介して連結されている。接続部6は、肩ベルト3が膨張した状態でも、ユーザーの身体から背負いバッグが外れるのを防止する。
【0045】
ところで肩ベルト3は、図4に示されるように、内皮体35に取り付けられた吹き込みパイプ70を有している。この吹き込みパイプ70は、肩ベルト3に沿って上方に向けて突出しており、浮力部31に連通接続されている。吹き込みパイプ70は、ユーザーが咥えて浮力部31に空気を吹き込むことができるよう構成されている。また、吹き込みパイプ70は、外部から浮力部31に向けた気体の流通を許容し且つその逆を阻止する逆止弁(図示せず)が設けられている。吹き込みパイプ70は、ガスボンベ5からのガスにより膨張した浮力部31が十分に膨張しきれていない場合等に、ユーザーが追加的に空気を吹き込んで、完全に膨張させること等に使用される。
【0046】
また肩ベルト3は、内皮体35に反射部71が取り付けられており、当該反射部71が拡開状態で露出する。さらに肩ベルト3は、内皮体35のポケットに笛72が収容されている。
【0047】
なおガスボンベ5は、その内部に、二酸化炭素などの不活性ガスが封入されている。この不活性ガスとしては、二酸化炭素に替えて、ヘリウムガスであってもよいし、炭素や酸素等の不活性ガスであってもよい。
【0048】
このような構成の背負いバッグは、背負いバッグ本体1に取り付けられた肩ベルト3が、ユーザーの肩に掛けられ、背負いバッグ本体1の背面部16が、ユーザーの背中に密着した状態で装着される。本実施形態の背負いバッグを背負ったユーザーは、河川や海に誤って落ちたり、津波にさらわれたりして水中に没入してしまった場合であっても、肩ベルト3が水に浸ることで浮力部31が膨張し、この結果、背負いバッグの肩ベルト3が浮き袋として作用するため、溺れるのを防ぐことができる。
【0049】
しかも本実施形態の背負いバッグは、肩ベルト3が、背負いバッグ本体1に対し着脱自在となっているため、開栓手段43が作動して浮力部31が膨張した使用後に、別の肩ベルト3に交換することができる。すなわち、膨張作動後は肩ベルト3だけを簡単に交換することができるから、背負いバッグ本体1を長く使用し続けながら肩ベルト3だけを新しいものと交換することも可能である。これにより例えば、緊急時やあるいは誤操作等で浮力部31を膨張させた場合であっても、肩ベルト3だけを交換して、再度使用するようなことが可能となる。
【0050】
そのうえ、仮に背負いバッグ内に、重量が大きな収容物を収容していた場合には、肩ベルト3の浮力部31の浮力に対して、重量が大きくなり過ぎて、ユーザーに働く浮力が弱くなることも起こり得る。ところが、本実施形態の背負いバッグは、肩ベルト3が、背負いバッグ本体1に対し着脱自在となっているため、その場合、背負いバッグ本体1を肩ベルト3から切り離すことができる。切り離された肩ベルト3は、首部34と支持部39とでユーザーを保持する。これにより、ユーザーはより安心して背負いバッグを使用することも可能となる。
【0051】
また、本実施形態の背負いバッグは、図7に示されるように、浮力部31を有していない通常の肩ベルト8に取り替えることも可能である。これによりユーザーは、例えば、河川や海等のない場所にて使用する場合には、通常の肩ベルト8を使用し、河川や海等のある場所にて使用する場合には、浮力部31を有する肩ベルト3を使用するなどして、状況に応じて使い分けることも可能であり、使い勝手が向上する。
【0052】
なお、本実施形態の背負いバッグは、リュックサックにより構成されていたが、本発明においては、背中に背負って使用するバッグにおいて、一対の肩ベルトを有していればよく、例えば、ナップザックやランドセルであってもよい。
【0053】
また開栓手段43の機構は、上記実施形態の構造に限定されない。
【符号の説明】
【0054】
1 背負いバッグ本体
16 背面部
17 水取込部
18 網状ポケット
19 網状体
2 連結部
3 肩ベルト
31 浮力部
310 浮き袋体
33 胸前部
34 首部
4 作動部
41 手動操作部
42 ガス供給口
43 開栓手段
5 ガスボンベ
6 接続部
61 バックル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8