(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961050
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】電着砥石の修正方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/053 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
B24B53/053
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-145425(P2012-145425)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-8558(P2014-8558A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 富雄
(72)【発明者】
【氏名】福山 修
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−123859(JP,U)
【文献】
特開平05−220663(JP,A)
【文献】
特開2005−246499(JP,A)
【文献】
実開昭63−050656(JP,U)
【文献】
米国特許第4112624(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のシャンクにおける一端側の外周に砥粒層が形成された電着砥石の修正方法であって、
前記シャンクの軸周りに回転させた前記電着砥石における前記砥粒層に対し、所定の軸周りに回転させた修正用工具を当接させた状態で、当該修正用工具と前記砥粒層とを前記シャンクの軸方向に相対的に往復移動させる修正工程を有し、
前記砥粒層に対する前記修正用工具の当接部は、当該修正用工具の回転方向に沿って形成された環状の角部であり、
前記修正工程では、前記砥粒層を構成する砥粒の平均粒径と等しい距離だけ前記角部を前記シャンクの外周面から離間させることを特徴とする電着砥石の修正方法。
【請求項2】
前記砥粒層に対して前記修正用工具を当接させた状態とする前に、前記角部を前記シャンクの外周面に突き当てることにより、前記修正用工具の初期位置を決定した後に、前記角部を前記シャンクの外周面から前記砥粒の平均粒径と等しい距離だけ離間させることを特徴とする請求項1に記載の電着砥石の修正方法。
【請求項3】
前記砥粒層では、複数の砥粒が単層状に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電着砥石の修正方法。
【請求項4】
前記修正用工具は、少なくともその一端側に形成された円柱状部を有し、
前記角部は、前記円柱状部における外周面と端面との連結部位をなすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電着砥石の修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着砥石の形直しや目立て等を行うための修正方法および修正装置に関し、特に、小径穴の内面研削加工に用いられる電着砥石に好適な修正方法および修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイヤモンド砥粒などを保持した電着砥石の修正方法として、例えば、電着砥石を回転させながら、その回転軸線と平行な軸周りに回転するツルーイングロールによってツルーイングして砥粒の表面の高さを揃えた後、同様に平行な軸周りに回転するクラッシングロールによって砥粒の表層部を破砕することにより、ワーク(工作物)の研削抵抗の低減を図ることを目的としたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−50378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ミニュチュアベアリングのレース等に設けられるような小径穴の内面研削加工に用いられる電着砥石では、比較的小径の砥粒が用いられると共に、その砥粒を保持するシャンク(台金)も比較的小さな径(例えば、直径3mm)を有する。そのようなシャンクは片持ち梁となって剛性も低いため、上記特許文献1に記載された従来技術のように、回転するツルーイングロール等を単に電着砥石に接触させて修正する方法では、その修正抵抗によってシャンクにたわみが生じて修正精度(延いては内面研削加工の精度)が低下するという問題があった。また、上記従来技術では、電着砥石の修正に2つのロール(ツルーイングロールおよびクラッシングロール)を用いる必要があるため、装置が複雑化するという問題もあった。
【0005】
なお、電着砥石は小径になるほど有効切れ刃数が少なくなり、例えば直径3mmの電着砥石では、同一の周上には1個か2個の有効切れ刃しかなく、そのために仕上げ面が粗いのが電着砥石の特徴といえる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、電着砥石の修正抵抗を低減することにより、砥粒を保持するシャンクの剛性が低い場合でも高精度の修正を可能とした電着砥石の修正方法および電着砥石の修正装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面では円柱状のシャンク(51)における一端側の外周に砥粒層(52)が形成された電着砥石(13)の修正方法であって、前記シャンクの軸周りに回転させた前記電着砥石における前記砥粒層に対し、所定の軸周りに回転させた修正用工具(32)を当接させた状態で、当該修正用工具と前記砥粒層とを前記シャンクの軸方向に相対的に往復移動させる修正工程を有し、前記砥粒層に対する前記修正用工具の当接部は、当該修正用工具の回転方向に沿って形成された環状の角部(42a)であることを特徴とする。
【0008】
この第1の側面による電着砥石の修正方法では、回転させた修正用工具における環状の角部を電着砥石の砥粒層に対して当接させる(すなわち、実質的に点接触させる)ため、電着砥石の修正抵抗を低減することができ、その結果、小径穴の内面研削加工に用いられる電着砥石のように砥粒を保持するシャンクの剛性が低い場合でも高精度の修正が可能となる。
【0009】
本発明の第2の側面では、上記第1の側面に関し、前記修正用工具は、少なくともその一端側に形成された円柱状部(41a)を有し、前記角部は、前記円柱状部における外周面と端面との連結部位をなすことを特徴とする。
【0010】
この第2の側面による電着砥石の修正方法では、修正用工具や修正装置の構成を複雑化することなく、修正工程において修正用工具と電着砥石の砥粒層とを実質的に点接触させることが可能となる。
【0011】
本発明の第3の側面では、上記第1または第2の側面に関し、前記修正工程では、前記砥粒層を構成する砥粒の平均粒径と等しい距離(G)だけ前記角部を前記シャンクの外周面から離間させることを特徴とする。
【0012】
この第3の側面による電着砥石の修正方法では、修正抵抗を低減しつつ、砥粒層における砥粒の切れ刃高さを精度良く調整することが可能となる。
【0013】
本発明の第4の側面では、上記第1から第3の側面のいずれかに関し、前記電着砥石の周速に対する前記修正用工具の周速の比が0.8であることを特徴とする。
【0014】
この第4の側面による電着砥石の修正方法では、砥粒層の表面形状が適切化され、その結果、電着砥石による研削時のワークの表面粗さを低減することができる。
【0015】
本発明の第5の側面では、円柱状のシャンク(51)における一端側の外周に砥粒層(52)が形成された電着砥石(13)の修正装置(1)であって、前記電着砥石を前記シャンクの軸周りに回転自在に保持する砥石台(15)と、前記砥石台を前記シャンクの軸方向に移動自在に支持する砥石テーブル(16)と、修正用工具をその軸周りに回転自在に支持する工具支持台(34)と、前記工具支持台を前記シャンクの軸方向と直交する方向に移動自在に支持する工具テーブル(12)とを備え、前記シャンクの軸と前記修正用工具の軸とは互いに交差する方向に配置され、前記修正用工具は、少なくともその一端側に形成された円柱状部(41a)を有し、当該円柱状部における端面と外周面との連結部位をなす環状の角部(42a)が前記砥粒層に対して当接することを特徴とする。
【0016】
この第5の側面による電着砥石の修正装置では、回転させた修正用工具の円柱状部における環状の角部を電着砥石の砥粒層に対して当接させるため、修正用工具や修正装置の構成を複雑化することなく、電着砥石の修正抵抗を低減することができ、その結果、小径穴の内面研削加工に用いられる電着砥石のように砥粒を保持するシャンクの剛性が低い場合でも高精度の修正が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、電着砥石の修正抵抗を低減することにより、砥粒を保持するシャンクの剛性が低い場合でも高精度の修正が可能となるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る電着砥石の修正方法に用いられる修正装置の要部平面図である。
【
図2】
図1に示した修正装置におけるツルアと電着砥石との配置を示す図である。
【
図4】
図1に示した修正装置によるツルーイング工程を示す説明図である。
【
図5】
図2に示したツルアと電着砥石との配置の変形例を示す図である。
【
図6】
図1に示した修正装置によるツルーイング結果(砥粒層の表面プロフィールの比較)を示す図である((A)ツルーイング後、(B)ツルーイング前)。
【
図7】
図1に示した修正装置によるツルーイング結果(砥粒層の表面のSEM写真)を示す図である。
【
図8】ツルーイング後の電着砥石による研削結果(オシレーション回数と表面粗さの関係)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。説明にあたり、方向を示す用語は、
図1中の矢印で示す方向に従うものとする。
【0020】
まず
図1〜
図3を参照して、本発明に係る電着砥石の修正装置1の構成について説明する。この修正装置1は、内面研削盤2にツルーイング装置3が付設された構成を有している。内面研削盤2は、周知の構成を有しており、図示しないモータにより駆動されてワークWを回転自在に保持する主軸台11と、主軸台11を左右方向に移動自在に支持するワークテーブル(工具テーブル)12と、電着砥石13をスピンドルモータ14により回転自在に保持する砥石台15と、砥石台15を前後方向に移動自在に支持する砥石テーブル16とを備えている。
【0021】
内面研削盤2において、ワークWは、チャック21を介して主軸台11の主軸に固定される。ワークテーブル12は、第1ベッド25上において、左右方向に延在するガイドレール26に沿って移動可能に設けられている。また、砥石テーブル16は、第2ベッド27上において、前後方向に延在するガイドレール28に沿って移動可能に設けられており、これにより、電着砥石13は、その軸方向となる前後方向に移動可能である。
【0022】
ツルーイング装置3は、ワークテーブル12の右後部に固定された支持板31と、この支持板31に取り付けられ、ツルア(修正用工具)32をスピンドルモータ33により回転自在に保持するツルア台(工具支持台)34とを備える。ツルーイング装置3は、ワークテーブル12と共に左右方向に移動自在である。
【0023】
図2に示すように、ツルア32は、比較的小径(ここでは、外径7mm)の円柱状をなす金属製の軸部41と、この軸部41の先端に設けられた刃先部42とを有している。軸部41の先端部(円柱状部)41aは僅かに拡径されており、この先端部41aの端面に同径の円板状をなす刃先部42がろう付けされている。刃先部42は、後に詳述する電着砥石13の砥粒よりも硬度が高いPCD(Polycrystalline Diamond)で形成されているが、これに限らず、例えば、NPD(Nano-Polycrystalline Diamond)、CVD合成ダイヤモンド、PVD(Nano-Polycrystalline Diamond)及びDLC(Diamond-Like Carbon)等を用いることができる。
【0024】
ツルア32と電着砥石13とは、修正装置1(
図1参照)において中心位置が同じ高さとなるように保持されている。また、ツルア32の軸方向(
図2中の軸線C1参照)は、電着砥石13の軸方向(
図2中の軸線C2参照)に対して交差するように配置されている。ここでは、軸線C1と軸線C2との交差角度θは45°に設定されている。このようなツルア32と電着砥石13との配置により、ツルア32では、その先端部41a(刃先部42)における外周面と端面との連結部位をなす環状の角部42aが電着砥石13に対して当接可能となる。
【0025】
なお、交差角度θは、45°に限定されるものではなく、ツルア32と電着砥石13とを実質的に点接触させることが可能な限りにおいて、変更することができる。ただし、交差角度θを微少な角度(例えば、5°以下)とした場合には、実質的な点接触が損なわれる場合があるため、比較的大きな角度(例えば、20°以上)とするとよい。また、角部42aの角度(電着砥石13の軸線C1を通る断面における角度)は、90°以下であることが好ましい。
【0026】
電着砥石13は、比較的小径(ここでは、外径3mm)の円柱状をなす金属製のシャンク(台金)51と、このシャンク51の先端側の外周に所定の軸方向長さにわたって形成された砥粒層52とを有している。
図3に示すように、砥粒層52は、シャンク51の外周面に形成された下地めっき層53上に設けられ、複数の砥粒54が、下地めっき層53上に順次積層されたニッケルの電解めっき層55および無電解めっき層56によって固定されている。砥粒層52では、複数の砥粒54が単層状に配置されており、砥粒54の下部が下地めっき層53に当接する一方、砥粒54の上部が無電解めっき層の表面から外側に突出している。砥粒54はCBN(Cubic Boron Nitride)で形成されているが、これに限らず、合成ダイヤモンド等の公知の超砥粒を用いることができる。また、砥粒54の粒度は、ふるいの目開き寸法に基づき80/100(JIS B 4130)であり、平均粒径は177μmである。
【0027】
次に、
図4を参照して、修正装置1による電着砥石13のツルーイング工程(修正工程)について説明する。ツルーイング工程の前工程として、内面研削盤2では、
図1に示した砥石テーブル16を前進させた状態で、ツルーイング前(修正前)の電着砥石13を用いてワークWの穴に対して周知の粗研削工程が実施される。この粗研削工程の終了後、砥石テーブル16を所定位置まで後退させると共に、ワークテーブル12を所定位置まで左方に移動させることにより、ツルーイング装置3はツルーイング工程を実施可能(電着砥石13の右側方にツルア32が当接可能)となる。
【0028】
ツルーイング工程では、
図4(A)に示すように、ツルア32の角部42aを電着砥石13のシャンク51の外周面に突き当てることにより、ツルア32の初期位置が決定される。続いて、
図4(B)に示すように、角部42aをシャンク51の外周面から所定の間隔Gだけ離間させる。この間隔Gは、砥粒54の大きさ(シャンク51の外周面からの突出量)に応じて設定することができるが、、特に、砥粒54の平均粒径と同じ大きさに設定するとよい。これにより、ツルーイング抵抗(修正抵抗)を低減しつつ、砥粒層52における砥粒54の突出量(切れ刃高さ)を精度良く調整(均一化)することが可能となる。
【0029】
次に、上記間隔Gを保持しながら、
図4(C)に示すように、回転状態のツルア32の角部42aを回転状態の電着砥石13の砥粒層52の表面に当接させた状態で、ツルア32と電着砥石13(砥粒層52)とをシャンク51の軸方向に繰り返し相対移動させる。より詳細には、回転状態のツルア32の位置を固定した状態で、電着砥石13の前後方向への往復移動(オシレーション)を複数回(ここでは、10回)実施する。このとき、ツルア32の角部42aと当接した砥粒54の上端部が切り込まれることにより、砥粒層52の表面の形状調整と、砥粒54の上端部の鋭利化(微少な凹凸の形成)が行われる。
【0030】
その後、修正装置1では、ツルーイング工程の後工程として、ツルーイング後の電着砥石13を用いた仕上げ研削工程が実施される。つまり、修正装置1では、ツルーイング工程を介して粗研削工程および仕上げ研削工程を同一の電着砥石13を用いて実施することができる。
【0031】
なお、ツルア32の構成は、少なくとも回転状態で電着砥石13と実質的に点接触可能な限りにおいて、上述のものに限らず種々の変更が可能である。例えば、
図5に示すように、ツルア32の軸方向(
図5中の軸線C1参照)を電着砥石13の軸方向(
図5中の軸線C2参照)と平行に配置すると共に、ツルア32の先端部41aを算盤玉状(2つの円錐台の底部を連結した形状)とすることができる。この場合、刃先部42は、先端部41aの最大径部(円錐台の底部の連結部位)の外周縁部をなし、その外周端に環状の角部42aが形成される。
【実施例】
【0032】
以下、
図6〜
図8を参照して、上記構成の修正装置1によるツルーイング結果およびツルーイング後の電着砥石13によるワークWの研削結果について、より具体的な実施例を挙げて説明する。なお、ツルーイング条件や研削条件等について、以下で特に言及しない事項については、上述の場合と同様とする。
【0033】
表1には、実施例におけるツルーイング条件を示す。ここで、周速比は、電着砥石13の周速に対するツルア32の周速の比(ツルア32の周速/電着砥石13の周速)であり、3段階(0.4、0.8、1.25)に切り替えてツルーイング工程を実施した。また、
図6に示す砥粒層52の表面プロフィールは、表面粗さ計にナイフエッジスタイラスを装着して測定した。
【0034】
【表1】
【0035】
図6(A)に示すツルーイング(周速比0.8)後の砥粒層52の表面プロフィールでは、
図6(B)に示すツルーイング前に比べて、切れ刃高さが均一化されることにより表面形状が良好に調整されており、また、砥粒54の上面には微細な凹凸が形成されていることが確認できる。さらに、それら微細な凹凸の間には、よりサイズの大きな凹部(チップポケット)が形成されていることも確認できる。より詳細には、
図7に示すように、砥粒54の上面には、ツルーイング工程における脆性破壊で発生したと考えられる5μm程度の深さの微細な凹凸が形成され、また、これら凹凸の間隔は20μm程度である。なお、周速比0.8の場合において、キスラー3分力動力計で測定したツルーイング抵抗(法線方向)は0.07N であった。
【0036】
表2には、実施例における研削条件を示す。
【0037】
【表2】
【0038】
図8に示すように、研削後のワークWの表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、ツルーイング工程における全ての周速比について0.15μm以下となり、特に、周速比0.8の電着砥石において最小(0.08μm)となった。なお、研削抵抗(法線方向)は、周速比0.4、0.8、1.25の電着砥石において、それぞれ1.13、0.25、0.48Nとなった。つまり、ツルーイング工程は、周速比0.8で実施することが最も好ましく、これにより、砥粒層52の表面形状が適切化され、その結果、電着砥石13による研削時のワークの表面粗さを低減することができる。
【0039】
このように、本発明に係る電着砥石のツルーイング方法(修正方法)および修正装置では、回転させたツルア32における環状の角部42aを電着砥石13の砥粒層52に対して当接させる(すなわち、実質的に点接触させる)ため、電着砥石13のツルーイング時のツルーイング抵抗を低減することができ、その結果、小径穴の内面研削加工に用いられる電着砥石のように、片持ち梁をなす剛性の低いシャンクの場合でもたわみを抑制して高精度の修正が可能となる。また、ツルーイング工程において、砥粒層52の表面の形状調整のみならず、砥粒54の上端部の鋭利化(微少な凹凸の形成)を行うことができるため、その後の目立て等の工程は不要である。
【0040】
本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、本発明に係る電着砥石の修正装置は、内面研削盤2とは別体として構成することも可能である。また、電着砥石の構造は、上述のものに限らず、他の公知の構成を採用することもできる。なお、上記実施形態に示した本発明に係る電着砥石の修正方法および電着砥石の修正装置の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 修正装置
2 内面研削盤
3 ツルーイング装置
11 主軸台
12 ワークテーブル(工具テーブル)
13 電着砥石
15 砥石台
16 砥石テーブル
32 ツルア(修正用工具)
34 ツルア台(工具支持台)
41 軸部
41a 先端部(円柱状部)
42 刃先部
42a 角部
51 シャンク
52 砥粒層
54 砥粒
G 間隙