特許第5961105号(P5961105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961105
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】積層装置および積層体形成方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/00 20060101AFI20160719BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20160719BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B65H37/00
   B32B37/00
   B29C43/32
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-280764(P2012-280764)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-125285(P2014-125285A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232645
【氏名又は名称】日本飛行機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100079175
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 佳男
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良一
(72)【発明者】
【氏名】肥田 厚
(72)【発明者】
【氏名】地西 徹
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−218720(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2327547(EP,A1)
【文献】 特開2012−1285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/00−37/06
B65H 41/00
B65H 45/00−47/00
B32B 1/00−43/00
B29C 39/00−39/44
B29C 43/00−43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断された複数枚の繊維シート材の積層体を形成する積層装置であって、
裁断後の複数枚の積層前の繊維シート材が順次に供給される配膳部と、
前記配膳部に供給された繊維シート材をロールで把持し該ロールの回転により前方斜め下方に搬送する把持・搬送部と、
前記把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を載せる載置台と該載置台を前後方向に移動させる移動機構とを有し、該把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を、該載置台上に載置し、又は該載置台上に既に載置されている繊維シート材上に積層する積層部と、
幅方向に延びる回転軸の回りに回転自在な加圧ローラと該加圧ローラで前記載置台上の繊維シート材を加圧する加圧機構とを有するコンパクション部と、
前記配膳部に繊維シート材が1枚供給されるごとに該配膳部に供給された繊維シート材を前記把持・搬送部に搬送させ、
前記把持・搬送部による繊維シート材の搬送に同期させて前記載置台を前方に移動させることにより、該把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を該載置台上又は該載置台上の繊維シート材上に載せて、
該載置台を後方に移動させる、という一連の制御を繰り返し実行するとともに、
少なくとも前記載置台上にあらかじめ定められた枚数の繊維シート材が積層された段階における該載置台の前方又は後方への移動時に、該載置台上の繊維シート材を前記加圧ローラで加圧する加圧制御を実行する制御部とを備えたことを特徴とする積層装置。
【請求項2】
前記把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材と前記載置台上の繊維シート材との双方の位置および姿勢を認識する認識部と、
前記把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材と前記載置台上の繊維シート材との間の相対的な位置および姿勢を調整する調整機構とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の積層装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材が前記載置台上に既に載置されている繊維シート材に接触する直前に繊維シート材の搬送を一旦停止させ、前記認識部により認識された前記双方の位置および姿勢に応じて前記調整機構に前記相対的な位置および姿勢を調整させてから、該繊維シート材の搬送を再開させる制御を行なうものであることを特徴とする請求項2記載の積層装置。
【請求項4】
裁断後の複数枚の積層前の繊維シート材が順次に供給される配膳部と、
前記配膳部に供給された繊維シート材をロールで把持し該ロールの回転により前方斜め下方に搬送する把持・搬送部と、
前記把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を載せる載置台と該載置台を前後方向に移動させる移動機構とを有し、該把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を、該載置台上に載置し、又は該載置台上に既に載置されている繊維シート材上に積層する積層部と、
幅方向に延びる回転軸の回りに回転自在な加圧ローラと該加圧ローラで前記載置台上の繊維シート材を加圧する加圧機構とを有するコンパクション部とを備えた積層装置を用いて、
前記配膳部に繊維シート材が1枚供給されるごとに該配膳部に供給された繊維シート材を前記把持・搬送部に搬送させ、
前記把持・搬送部による繊維シート材の搬送に同期させて前記載置台を前方に移動させることにより、該把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を該載置台上又は該載置台上の繊維シート材上に載せて、
該載置台を後方に移動させる、という一連の工程を繰り返すとともに、
少なくとも前記載置台上にあらかじめ定められた枚数の繊維シート材が積層された段階における該載置台の前方又は後方への移動時に、該載置台上の繊維シート材を前記加圧ローラで加圧することにより、裁断された複数枚の繊維シート材の積層体を形成することを特徴とする積層体形成方法。
【請求項5】
前記積層装置が、
前記把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材と前記載置台上の繊維シート材との双方の位置および姿勢を認識する認識部と、
前記把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材と前記載置台上の繊維シート材との間の相対的な位置および姿勢を調整する調整機構とをさらに備えた装置であって、
前記把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材先端が前記載置台上の繊維シート材に接触する直前に繊維シート材の搬送を一旦停止させ、前記認識部により認識された前記双方の位置および姿勢に応じて前記調整機構に前記相対的な位置および姿勢を調整させてから、該繊維シート材の搬送を再開させることを特徴とする請求項4記載の積層体形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断後の繊維シート材、代表的にはFRP(繊維強化樹脂)のプリプレグ(繊維に未硬化の樹脂を含浸させたもの)を複数枚積層して積層体を形成する積層装置および積層体形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テープ状の長尺の繊維シート材を用いて繊維シートの積層体を形成する装置については、様々なタイプのものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところが、裁断後のプリプレグはテープ状のものよりも取扱いが難しく、従来は、裁断後のプリプレグを取扱う場合は、指定された枚数のプリプレグを手作業で指定された位置へ順番に積層することでプリプレグの積層体を形成している。また、この積層体には、真空吸引による大気圧を利用した、プリプレグ同士の密着(コンパクション)の作業が随時行なわれる。
【0004】
ここで、特許文献4には、可視光硬化プリプレグの材料に関する提案があり、この特許文献4には、裁断後のプリプレグをカセットに収容することで取扱い性を高めた装置の概要が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−200898号公報
【特許文献2】特開2005−297513号公報
【特許文献3】特開2006−218720号公報
【特許文献4】特開2006−281548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の、手作業で積層する方法では、手作業による製造コストの上昇、作業者の違いによる品質のばらつき、積層作業とコンパクション作業の分離による作業時間の増加等の課題がある。
【0007】
また、上掲の特許文献4に紹介されている装置は、積層、コンパクション、および光照射を1台で行なうものであるが、前作業としてプリプレグをカセットに収容する必要があり、必ずしも作業効率が良いとは言い難い。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、裁断後のプリプレグ等の繊維シート材を、カセットに収容することなどの前処理を行なうことなく、確実に積層およびコンパクションすることが可能な積層装置および積層体形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の積層装置は、
裁断された複数枚の繊維シート材の積層体を形成する積層装置であって、
裁断後の複数枚の積層前の繊維シート材が順次に供給される配膳部と、
配膳部に供給された繊維シート材をロールで把持しロールの回転により前方斜め下方に搬送する把持・搬送部と、
把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を載せる載置台とその載置台を前後方向に移動させる移動機構とを有し、把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を、載置台上に載置し、又は載置台上に既に載置されている繊維シート材上に積層する積層部と、
幅方向に延びる回転軸の回りに回転自在な加圧ローラとその加圧ローラで載置台上の繊維シート材を加圧する加圧機構とを有するコンパクション部と、
配膳部に繊維シート材が1枚供給されるごとにその配膳部に供給された繊維シート材を把持・搬送部に搬送させ、
把持・搬送部による繊維シート材の搬送に同期させて載置台を前方に移動させることにより、把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を載置台上又は載置台上の繊維シート材上に載せて、
載置台を後方に移動させる、という一連の制御を繰り返し実行するとともに、
少なくとも載置台上にあらかじめ定められた枚数の繊維シート材が積層された段階における載置台の前方又は後方への移動時に、載置台上の繊維シート材を加圧ローラで加圧する加圧制御を実行する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の積層装置は、繊維シート材を1枚ずつローラで前方斜め下向きに搬送し、その繊維シート材の搬送に同期させて載置台を移動させてその繊維シート材を載置台上に載置し、又はその載置台上に既に載置されている繊維シート材上に積層して、コンパクションを行なう構成であり、カセットに収容することなどの前処理を行なうことなしに繊維シート材の積層体を形成することができる。
【0011】
ここで、本発明の積層装置において、把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材と載置台上の繊維シート材との双方の位置および姿勢を認識する認識部と、
把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材と載置台上の繊維シート材との間の相対的な位置および姿勢を調整する調整機構とをさらに備えることが好ましい。
【0012】
認識部と調整機構を備えると、ローラによる繊維シート材の搬送の精度が十分でなくても正確な積層が可能となる。
【0013】
この場合にさらに、上記制御部は、把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材が載置台上に既に載置されている繊維シート材に接触する直前に繊維シート材の搬送を一旦停止させ、認識部により認識された上記の双方の位置および姿勢に応じて調整機構に相対的な位置および姿勢を調整させてから、繊維シート材の搬送を再開させる制御を行なうものであることが好ましい。
【0014】
ローラによる繊維シート材の搬送を一旦停止させて認識部による認識および調整機構による調整を行なうことにより、積層の精度を一層向上させることができる。
【0015】
また、上記目的を達成する本発明の積層体形成方法は、
裁断後の複数枚の積層前の繊維シート材が順次に供給される配膳部と、
配膳部に供給された繊維シート材をロールで把持しロールの回転により前方斜め下方に搬送する把持・搬送部と、
把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を載せる載置台とその載置台を前後方向に移動させる移動機構とを有し、把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を、載置台上に載置し、又は載置台上に既に載置されている繊維シート材上に積層する積層部と、
幅方向に延びる回転軸の回りに回転自在な加圧ローラとその加圧ローラで載置台上の繊維シート材を加圧する加圧機構とを有するコンパクション部とを備えた積層装置を用いて、
配膳部に繊維シート材が1枚供給されるごとにその配膳部に供給された繊維シート材を把持・搬送部に搬送させ、
把持・搬送部による繊維シート材の搬送に同期させて載置台を前方に移動させることにより、把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材を載置台上又は載置台上の繊維シート材上に載せて、
載置台を後方に移動させる、という一連の工程を繰り返すとともに、
少なくとも載置台上にあらかじめ定められた枚数の繊維シート材が積層された段階における載置台の前方又は後方への移動時に、載置台上の繊維シート材を加圧ローラで加圧することにより、裁断された複数枚の繊維シート材の積層体を形成することを特徴とする。
【0016】
ここで本発明の積層体形成方法において、
上記積層装置が、
把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材と載置台上の繊維シート材との双方の位置および姿勢を認識する認識部と、
把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材と載置台上の繊維シート材との間の相対的な位置および姿勢を調整する調整機構とをさらに備えた装置であって、
把持・搬送部により搬送されてきた繊維シート材が載置台上の繊維シート材に接触する直前に繊維シート材の搬送を一旦停止させ、認識部により認識された上記の双方の位置および姿勢に応じて調整機構に相対的な位置および姿勢を調整させてから、繊維シート材の搬送を再開させることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上の本発明によれば、カセットへの収容などの前処理を行なうことなく、繊維シート材を確実に積層してコンパクションを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の積層装置の一実施形態である自動積層装置を含む、FRPの積層部品作製に関わる装置を工程順に示したブロック図である。
図2図1に示す各装置の役割を示す模式図である。
図3図1に1つのブロックで示す自動積層装置の概略平面図である。
図4図1に1つのブロックで示す自動積層装置の概略正面図である。
図5図3図4に示す自動積層装置の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の積層装置の一実施形態である自動積層装置を含む、FRPの積層部品作製に関わる装置を工程順に示したブロック図である。
【0021】
また、図2は、図1に示す各装置の役割を示す模式図である。
【0022】
分かり易さのために、図1の各ブロックと、それら各ブロックの役割を示す図2の各模式図とで同一の符号を付して示す。
【0023】
図1には、プリプレグ自動裁断機10、自動ライナー剥がし装置20、本実施形態としての自動積層装置30、ホットドレープ装置40、およびオートクレーブ50が、各1つずつのブロックで示されている。
【0024】
プリプレグ自動裁断機10では、図2に示すように、繊維に未硬化の樹脂を含浸させたFRPのシート11が裁断されて、必要な寸法、形状のプリプレグ12が生成される。このFRPのシート11には、その両面に保護用の薄膜(ライナー)が貼り付けられている。このため、裁断後のプリプレグ12にも、この段階ではその両面にライナーが貼り付けられている。
【0025】
この裁断後のプリプレグ12は、自動ライナー剥がし装置20に引き渡される。自動ライナー剥がし装置20は、プリプレグ自動裁断機10から受け取ったプリプレグ12の両面のライナー121を剥がし、両面が剥き出しのプリプレグ12とする装置である。
【0026】
自動ライナー剥がし装置20でライナー121が剥がされた後の剥き出しのプリプレグ12は、1枚ずつ自動積層装置30に引き渡される。この自動積層装置30では、その引き渡されたプリプレグ12が載置台331上に1枚ずつ順次積層されて、プリプレグ12の積層体が形成される。この自動積層装置30については後で詳述する。
【0027】
この自動積層装置30で形成された積層体120は、ホットドレープ装置40に引き渡される。
【0028】
このホットドレープ装置40では、図2(c)に示すように、プリプレグの積層体120が型41に当てがわれ、図2(d)に示すように、型41の形状に合う形状に賦形される。その後、その折り曲げ後の積層体120は、型41と一緒に真空パックされ、そのままオートクレーブ50に引き渡される。オートクレーブ50は真空パックされた型付きの積層体120を加熱・加圧する。これにより硬化したFRPの部品が作製される。
【0029】
本実施形態の自動積層装置30は、この一連の工程の中でプリプレグ12の積層を担う装置である。
【0030】
図3は、図1に1つのブロックで示す自動積層装置の概略平面図、図4は、その自動積層装置の概略正面図である。
【0031】
この自動積層装置30は、裁断された複数枚のプリプレグ12の積層体を形成する装置である。
【0032】
この自動積層装置30は、配膳部31、把持・搬送部32、積層部33、コンパクション部34、および制御装置35を備えている。
【0033】
配膳部31には、矢印A−A’方向に往復自在な配膳台311が備えられている。
【0034】
この配膳台311には、自動ライナー剥がし装置20(図1図2参照)で両面のライナー121が剥がされた後の剥き出しのプリプレグ12が置かれる。自動ライナー剥がし装置20からこの配膳台311へのプリプレグの搬送は、吸盤付きのハンドリング装置(図示せず)が担っており、プリプレグ12はそのハンドリング装置で持ち上げられて、矢印A方向に移動した状態で待機している配膳台311の上に、プリプレグ12の先端部12aが配膳台311の把持・搬送部32側の端縁から食み出した状態に載置される。1枚のプリプレグ12が配膳台311の上に置かれると、その情報が制御装置35に通知される。制御装置35はその通知を受け、配膳台311を把持・搬送部32側(矢印A’方向)に移動させる。
【0035】
把持・搬送部32は、プロプレグ12の搬送路に沿って配列された、複数のローラ321を有する。これらのローラ321は、モータによって矢印B方向に回転駆動されてプリプレグ12を搬送移動するモータローラ321aと、プリプレグ12を押える役割を有しプリプレグ12が搬送されることによって回転するフリーローラ321bとで構成されている。
【0036】
モータローラ321aは、制御部35によって回転および停止が制御される。
【0037】
配膳台311にプリプレグ12が置かれてその配膳台311が把持・搬送部32側(矢印A’方向)に移動すると、プリプレグ12の、配膳台311の端部から食み出ている先端部12aが、把持・搬送部32を構成する複数のローラ321のうちの配膳部31寄りの上下の2つのローラ321によって把持される。そしてそのプリプレグ12はローラ321の配列に沿って前方斜め下方に搬送される。
【0038】
積層部33は、載置台331と、その載置台331をレール332aに沿って前後方向(図4に示す矢印C−C’方向)に移動させる移動機構332を備えている。この積層部33にはさらに、載置台331を幅方向(図3に示す矢印D−D’方向)に移動させる移動機構333と、載置台331を上下方向(図4に示す矢印E−E’方向)に移動させる移動機構334も備えられている。この載置台331を上下方向に移動させる移動機構334は、載置台331を水平面内で回転させる(図3に示す矢印F−F’方向に回転させる)回転機構も備えている。これらに移動機構332,333,334は、それらの組合せにより、本発明にいう調整機構の一例を構成している。載置台331の幅方向中央には、把持・搬送部32のローラ321によって搬送されてきたプリプレグ12の先端が突き当てられる突当ピン335が突出している。この突当ピン335は、バネ付勢により突出していて、後述する加圧ローラ341が上に乗って引っ込む構造となっている。この載置台331は、移動機構332によって前方(矢印C’方向)に移動し、その移動の間に、把持・搬送部32によって搬送されてきたプリプレグが載置台331上に載置され、又はその載置台331上に既に載置されているプリプレグ上に積層される。
【0039】
また、コンパクション部34は、加圧ローラ341を備えている。この加圧ローラ341は、幅方向(図3に示す矢印D−D’方向)に延びる回転軸341aの回りに回転自在なローラである。載置台331が前方(矢印C’方向)に移動し、その移動に伴って載置台331上又はその載置台331上に既に置かれているプリプレグ上に新たに置かれたプリプレグは、加圧ローラ341により上から押圧(コンパクション)される。
【0040】
このコンパクション部34は、レール332aの両側にそれぞれ立設した柱342と、それらの柱342の上端どうしを繋ぐ梁343を備えており、その梁343には取付部材344を介してプランジャ345が取り付けられている。加圧ローラ341は、このプランジャ345に連結されている。プランジャ345は、加圧ローラ341を上下方向(矢印G−G’方向)に移動させるものである。このプランジャ345は、加圧ローラ341を下向(矢印G方向)に移動させることにより加圧ローラ341にプリプレグ12を押圧させる加圧機構としての役割を担っている。
【0041】
さらに、この自動積層装置30は、プリプレグ12の把持・搬送部32からの出口付近にセンサ361とカメラ362とからなるセンサ部36を備えている。センサ361は、把持・搬送部32のローラ321によって搬送されてきたプリプレグ12の先端が規定の位置に達したことを検出して制御装置35に通知するセンサである。また、カメラ362は、載置台331上に既に置かれているプリプレグと、把持・搬送部32のローラ321によって今回搬送されてきたプリプレグとの双方の先端部分を映し出すカメラである。カメラ362で撮影された画像も制御装置35に入力される。制御装置35は、入力されてきた画像に基づいて、今回搬送されてきたプリプレグ12の位置および姿勢が認識される。そしてこの制御装置35は、今回搬送されてきたプリプレグ12が、最初の1枚のプリプレグであって載置台331にはプリプレグが未だ載置されていない場合は、今回搬送されてきたプリプレグ12が載置台331の既定の位置および姿勢に正しく載置されるように載置台331の位置および姿勢を調整する。また制御装置35は、載置台331上に既に載置されているプリプレグが存在するときは、入力された画像に基づいて、今回搬送されてきたプリプレグ12の位置および姿勢に加え、載置台331上のプリプレグ12の位置および姿勢も認識される。そしてこの制御装置35は、今回搬送されてきたプリプレグ12が載置台331上に既に載置されているプリプレグの上に正確に積層されるように、載置台331の位置および姿勢を調整する。
【0042】
載置台331の位置および姿勢の調整にあたっては、移動機構333が、載置台331の幅方向の位置が搬送されてきたプリプレグ12の幅方向位置に合うように載置台331を移動させ、かつ移動機構334が、載置台331の水平面内での回転方向の姿勢が搬送されてきたプリプレグ12の姿勢に合うように調整する。さらに、ここでは、移動機構334により、載置台331上に既に載置(積層)されているプリプレグの枚数に応じて、載置台331の高さ位置の調整も行なわれる。
【0043】
すなわち、カメラ362と、制御装置35の、プリプレグ12の先端の位置および姿勢の認識処理を合わせたものが、本発明にいう認識部の一例に相当する。
【0044】
図5は、図3図4に示す自動積層装置30の動作フローを示すフローチャートである。このフローチャートに従う動作は、制御装置35の制御によって実行される。
【0045】
載置台331上にプリプレグ12を積層するにあたっては、先ず、配膳台311上にプリプレグが置かれるまで待機する(ステップS01)。
【0046】
ハンドリング装置(図示せず)により、プリプレグ12が自動ライナー剥がし装置20(図1参照)からこの自動積層装置30に搬送されて、そのプリプレグ12が自動積層装置30の配膳台311上に置かれると、プリプレグ12が配膳台311上に置かれたことがそのハンドリング装置により制御装置35に通知される。すると、制御装置35は、配膳台311を前方(把持・搬送部32側,矢印A’方向)に移動させ(ステップS02)、把持・搬送部32のモータローラ321aを回転させる。すると、配膳台311上のプリプレグ12が、把持・搬送部32のローラ321により把持されて搬送される(ステップS03)。この搬送が開始されると、次のプリプレグを配膳台311に置くことができるように、載置台331が初期位置(矢印A方向)に戻される(ステップS04)。ローラ321によるプリプレグ12の搬送は、センサ361によりプリプレグ21の先端が検出されるまで続行され(ステップS05)、センサ361によりプリプレグ21の先端が検出された時点でモータローラ321aの回転が停止する(ステップS06)。
【0047】
次にカメラ362により、搬送されてきたプリプレグ12の先端部、および載置台331上に既に置かれているプリプレグが存在するときにはその載置台331上のプリプレグの先端部の画像が取り込まれて制御装置35に送られ、制御装置35によりそれらのプリプレグの位置および姿勢の認識処理が行なわれる(ステップS07)。次いで制御装置35は、載置台331の位置および姿勢を、認識されたプリプレグの位置および姿勢に応じた位置および姿勢に調整する(ステップS08)。この調整が終わると、制御装置35は、把持・搬送部32のローラ321による、プリプレグ12の搬送を再開させる(ステップS09)。また、プリプレグの搬送の再開されると、そのプリプレグ12の搬送に同期して載置台331が前方(矢印C’方向)に移動を開始し、搬送されてきたプリプレグの載置台331上への載置が開始され、又は、その載置台上のプリプレグへの積層が開始される(ステップS10)。
【0048】
さらに、加圧ローラ341を降下させて加圧ローラ341に載置台331に載置又は積層されつつあるプリプレグを押下(コンパクション)させる(ステップS11)。
【0049】
今回搬送されてきたプリプレグの載置台331への載置又は積層、およびコンパクションが終了すると、載置台331が停止し(ステップS12)、加圧ローラ341が持ち上げられる(ステップS13)。制御装置35ではさらに、載置台331上に今回のFRPの積層体を形成するのに必要な規定枚数のプリプレグが積層されたか否かが判定される(ステップS14)。未だ規定枚数まで積層されていないときは、ステップS15に進んで、載置台331が初期位置(矢印C方向に戻った位置)に移動し、配膳台311に次のプリプレグが置かれるのを待つ状態(ステップS01)となる。
【0050】
一方、ステップS14において載置台331上に、1つの積層体の形成に必要な規定枚数のプリプレグが積層されたことが判定されると、載置台331上からその積層体が取り出されるまで待機する(ステップS16)。載置台331上の積層体は、吸盤付きの図示しないハンドリング装置により持ち上げられて、次工程の装置であるホットドレープ装置40(図1参照)に引き渡される。載置台331から積層体が取り出されたことは、その取出しを担当しているハンドリング装置から制御装置35に通知される。制御装置35は、積層体取出しの通知を受けると、載置台331を初期位置に移動させる(ステップS17)。制御装置35ではさらに、今回作製しようとしている積層体が規定枚数に達したか否かが判定され(ステップS18)、規定枚数には未だ達していないときはステップS01に戻って配膳台311に次のプリプレグが置かれるのを待つ状態となる。一方、積層体の形成が規定枚数に達したときは、この自動積層装置30の動作を終了する。
【0051】
尚、この図5に示す動作フローは、1枚のプリプレグの処理が完了してから次のプリプレグの処理を開始する動作フローであるが、ステップS09のプリプレグの再開の時点で次のプリプレグの把持および搬送を同時に開始するように、連続的な処理を行なってもよい。
【0052】
また、図5の動作フローは、載置台331上に最初に載置されたプリプレグについてもコンパクション動作を行なう動作フローであるが、最初の1枚のプリプレグについてはコンパクション動作は行なわずにその次のプリプレグが積層されたときからコンパクション動作を行なう構成としてもよい。また、プリプレグの厚さや柔軟性など、そのプリプレグの性質によっては、コンパクション動作は1枚おきあるいは2枚おきなど、載置台331上にプリプレグが複数枚積層されるごとにコンパクション動作を行なってもよい。さらにはそのプリプレグの性質によっては、規定枚数のうちの最後のプリプレグが積層された時点でのみコンパクション動作を行なってもよい。
【0053】
また図5の動作フローは、載置台331を前方(矢印C’方向)に移動させるとともにコンパクション動作を行なっているが、初期位置へ戻るとき(矢印C方向に移動するとき)にコンパクション動作を行なってもよい。
【0054】
また、図3図4に示す自動積層装置30では、プリプレグの搬送を一旦停止させてから位置および姿勢の調整を行なっているが、プリプレグの搬送を停止させることなく、その搬送中に位置および姿勢を調整する構成としてもよい。
【0055】
さらに、上述の実施形態は、プリプレグを正確に積層させるために載置台331を調整する構成の装置であるが、把持・搬送部32の位置および姿勢を調整する構成としてもよい。
【0056】
尚、ここでは、FRP(繊維強化樹脂)のプリプレグ(繊維に未硬化の樹脂を含浸させたもの)を積層する自動積層装置およびFRPのプリプレグを積層する積層体形成方法について説明したが、本発明の積層装置および積層体形成方法は、FRPのプリプレグを取り扱うものには限定されず、裁断後のシート材を取り扱うものであればよい。例えば一方向性繊維に樹脂を含浸させたプリプレグや樹脂を含浸する前の繊維材を取り扱うものであってもよい。また、本発明は繊維や樹脂の材料を限定するものでもない。
【符号の説明】
【0057】
10 プリプレグ自動裁断機
11 シート
12 プリプレグ
12a 先端部
20 自動ライナー剥がし装置
30 自動積載装置
31 配膳部
32 把持・搬送部
33 積層部
34 コンパクション部
35 制御装置
40 ホットドレープ装置
41 型
50 オートクレーブ装置
120 積層体
121 ライナー
311 配膳台
321 ローラ
321a モータローラ
321b フリーローラ
331 載置台
332,333,334 移動機構
335 突当ピン
341 加圧ローラ
361 センサ
362 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5