(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。なお、「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0031】
[積層体]
まず、本実施形態に係る積層体100について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の積層体の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る積層体100は、基材101と、基材101の少なくとも一方の面に設けられた無機層102と、無機層102上に設けられた、環状オレフィン共重合体(P)の架橋体(Q)を含む樹脂層103と、を含む。環状オレフィン共重合体(P)は、後述するオレフィン由来の繰り返し単位(A)と、環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)と、を含む。
以下、本実施形態に係る積層体100の各構成要素について説明する。
【0032】
[基材]
本実施形態に係る基材101としては、例えば、シリコンなどの金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂フィルム、電子部品などが挙げられる。本実施形態に係る基材101は、これらの基材を1種または2種以上組み合わせたものも含まれる。例えば、樹脂フィルム上に電子部品を積層させたものである。
基材101としては、樹脂フィルムおよび電子部品からなる群から選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。基材101の厚みは、用途により適宜選択することができる。
【0033】
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリブテンなどのポリオレフィン;環状オレフィンポリマー;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリスチレン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン−6、ナイロン−11、ポリメタキシレンアジパミドなどのポリアミド;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルスルフォン;ポリアクリル;ポリアリレート;トリアセチルセルロース;ポリフェニレンスルフィドなどから選択される1種または2種以上の樹脂により形成されるフィルムが挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリブテンなどのポリオレフィン;環状オレフィンポリマー;ポリイミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリアミドなどにより形成されるフィルムが、延伸性、透明性、剛性が良好な点から好ましい。
樹脂フィルムの厚みは、通常は1μm以上1000μm以下の範囲である。
【0034】
なお、上記樹脂フィルムは、本発明の効果を損ねない範囲で、紫外線吸収剤;酸化防止剤;帯電防止剤;界面活性剤;顔料;蛍光増白剤;シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機粒子;アクリル樹脂、スチレン樹脂などを構成成分とする有機粒子などを必要に応じて含有してもよい。
【0035】
上記電子部品としては、例えば、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの素子;光デバイスなどの有機機能素子;無機EL素子などの無機機能素子;面状発光体;電子ペーパーなどを挙げることができる。
【0036】
[無機層]
無機層102は、例えば、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、錫(Sn)、インジウム(In)、および珪素(Si)から選択される元素を含む金属、並びに上記元素を含む酸化物、窒化物、窒酸化物、硫化物、リン化物、リン酸化物、リン窒化物およびリン窒酸化物からなる群から選択される1種または2種以上の無機化合物により形成される。これら無機化合物の中でも、上記元素を含む酸化物および窒酸化物が好ましく、透明性に優れる点から酸化アルミニウム、酸化珪素(シリカ)、珪素窒酸化物および酸化インジウムが好ましく、酸化アルミニウム、酸化珪素(シリカ)および珪素窒酸化物が特に好ましい。
【0037】
無機層102を基材101上に形成する方法としては、気相法とウェット法が挙げられる。
【0038】
気相法による形成方法としては、例えば、化学蒸着(CVD)、触媒CVD(CAT−CVD)、低圧CVDおよびプラズマCVDなどの化学蒸着法;真空蒸着(反応性真空蒸着)、スパッタリング(反応性スパッタリング)およびイオンプレーティング(反応性イオンプレーティング)などの物理蒸着法(PVD)などが挙げられる。無機層102の厚さは、通常は1.5nm以上500nm以下、好ましくは1.5nm以上100nm以下、より好ましくは2nm以上50nm以下の範囲である。
【0039】
ウェット法による形成方法は、例えば、以下の工程(a)、(b)および(c)を含む。
(a)基材101上にポリシラザン含有液を塗布し、塗膜を形成する工程
(b)塗膜を低酸素・低水分濃度雰囲気下において乾燥し、ポリシラザン膜を形成す
る工程
(c)ポリシラザン膜に加熱処理またはエネルギー線照射を行い、ポリシラザン膜の少なくとも一部を変性する工程
【0040】
(工程(a))
工程(a)においては、基材101上に下記一般式(1)で表されるポリシラザンを含む溶液を塗布すことにより、塗膜を形成する方法が挙げられる。
【0041】
−(SiR
1R
2NR
3)
n− (1)
上記一般式(1)において、R
1〜R
3はそれぞれ水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基である。
【0042】
具体的には、基材101上にポリシラザン含有液を塗布し、乾燥することによりポリシラザン膜を形成した後、熱処理またはエネルギー線照射を行い、ポリシラザン膜を変性することにより基材101上に無機層102を形成する。
エネルギー線照射は、例えば、0.1Paから大気圧の圧力範囲で行うことができる。
【0043】
ポリシラザン膜を変性することにより得られる無機層102は、SiO
2、Si
3N
4、SiO
xN
yなどから構成される。
【0044】
ポリシラザンとしては、ペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体より選択される一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。誘導体としては、水素の一部または全部がアルキル基などの有機基または酸素原子などで置換されたペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザンなどを挙げることができる。
【0045】
本実施形態においては、H
3Si(NHSiH
2)
nNHSiH
3で示されるペルヒドロポリシラザンを用いることが好ましいが、水素の一部または全部がアルキル基などの有機基で置換されたオルガノポリシラザンでもよい。また、単一の組成で用いても良いし、二成分以上を混合して使用してもかまわない。
【0046】
ポリシラザン膜を形成するために使用するポリシラザン含有液は、ポリシラザンをセラミックス化する触媒として、金属カルボン酸塩を含んでいてよい。金属カルボン酸塩は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0047】
(RCOO)nM (2)
上記一般式(2)式中、Rは炭素原子数1〜22個の脂肪族基または脂環式基であり、Mは下記金属群から選択される1種または2種以上の金属であり、nは金属Mの原子価である。
【0048】
上記Mは、ニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の金属である。これらの中でもパラジウム(Pd)が特に好ましい。上記金属カルボン酸塩は無水物であっても水和物であってもよい。また、金属カルボン酸塩/ポリシラザン重量比は好ましくは0.001〜1.0、より好ましくは0.01〜0.5である。
【0049】
また、金属カルボン酸塩以外のポリシラザンをセラミックス化する上記触媒としては、アセチルアセトナト錯体が挙げられる。金属を含むアセチルアセトナト錯体は、アセチルアセトン(2,4−ペンタジオン)から酸解離により生じた陰イオンが金属原子に配位した錯体であり、下記一般式(3)で表される。
【0050】
(CH
3COCHCOCH
3)
nM (3)
上記一般式(3)式中、Mはn価の金属を表す。
【0051】
上記Mは、ニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の金属である。パラジウム(Pd)が特に好ましい。アセチルアセトナト錯体/ポリシラザン重量比は、好ましくは0.001〜1、より好ましくは0.01〜0.5である。
【0052】
さらに、金属カルボン酸塩およびアセチルアセトナト錯体以外のポリシラザンをセラミックス化する上記触媒として、アミン化合物;ピリジン類;有機酸、無機酸などの酸化合物;などが挙げられる。
【0053】
上記アミン化合物として、例えば、下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。
【0054】
R
4R
5R
6N (4)
上記一般式(4)中、R
4〜R
6は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。上記アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、トリヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミンなどが挙げられる。なお、これらアミン化合物に含まれる炭化水素鎖は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。特に好ましいアミン化合物は、トリエチルアミン、トリペンチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミンおよびトリオクチルアミンである。
【0055】
上記ピリジン類としては、例えば、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、などが挙げられる。
【0056】
上記酸化合物としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、ステアリン酸などの有機酸;塩酸、硝酸、硫酸、過酸化水素などの無機酸;などが挙げられる。これらの中でも、プロピオン酸、塩酸および過酸化水素が特に好ましい。
【0057】
上記アミン化合物;上記ピリジン類;上記酸化合物;などのポリシラザンに対する添加量は、ポリシラザン重量に対して好ましくは0.1ppm以上であり、より好ましくは10ppm以上10%(100,000ppm)以下である。
【0058】
ポリシラザンのSi−H結合に作用し、同結合状態を活性にすることで、ポリシラザンのエネルギー線照射による反応を容易にする観点から、ポリシラザン含有液には遷移金属化合物を添加しても良い。遷移金属化合物を添加することにより、エネルギー線照射の照射時間を短くすることができる。
【0059】
上記遷移金属化合物の遷移金属種としては、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、オスミニウム(Os)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリア(Y)、ランタン(La)、レニウム(Re)などから選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0060】
上記遷移金属化合物としては、例えば、ハロゲン化遷移金属、ハロゲン化遷移金属錯体、遷移金属塩、遷移金属酸化物などが挙げられる。
【0061】
上記ハロゲン化遷移金属は、上記遷移金属種と、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、またはフッ素(F)が結合した化合物のことである。
上記ハロゲン化遷移金属としては、例えば、クロロ白金酸(H
2PtCl
6.nH
2O )、PtCl
2、PtCl
4、PtCl
2(NH
3)
2、Na
2(PtCl
4).nH
2O、[PtCl(cyclohexene)
2](μ−Cl)
2、RhCl
3、Tris(dibutylsulfide)RhCl
3、(NH
4)
3[RhCl
6] 、RhI
3、(NH
3)
6RhCl
3 、RuCl
3、[Ru(p−cymeme)Cl
2]
2、[Ru(benzene)
Cl
2]
2、(NH
4)
2RuCl
6、(NH
3)
4[RuCl
4(H
2O)]
2(μ−N)、Ni(triphenylphosphine)
3Br
2、Mn(CO)
5Br、IrCl
3、(NH
4)
2IrCl
6、FeCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4、OsCl
3、(NH
4)
2OsCl
6、W(cyclopentadiene)
2Cl
2、などから選択される1種または2種以上である。
【0062】
上記ハロゲン化遷移金属錯体としては、例えば、オレフィン錯体、環状オレフィン錯体、ビニルシロキサン錯体、ホスフィン錯体、ホスファイト錯体、一酸化炭素錯体(CO)、アミン錯体、ニトリル錯体などが挙げられる。ハロゲン化遷移金属錯体は、主としてSiH基とビニル基などを持つ有機物との反応の触媒などとして使用されるものであり、Si-H結合の解離を容易にすることが知られている。本実施形態において、上記ハロゲン化遷移金属錯体をポリシラザン含有液に添加することにより、ポリシラザンのエネルギー線照射による反応を容易にできる。
【0063】
上記ハロゲン化遷移金属錯体としては、より好ましくは、Pt−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane(Pt[CH
2=CH(methyl)Si]
2O)、Pt(CO)(CH
2=CH(methyl)SiO)
4、Pt[CH
2=CH(methyl)SiO]
4、Pt(triphenylphosphine)
2Cl
2 、Rh(cyclooctadiene)Cl
2、[Rh(cyclooctadiene)]
2(μ−Cl)
2、Rh(acethylacetonato)(CO)
2、Rh(triphenylphosphine)
3Cl、Rh(triphenylphosphine)
2Cl
2、[(Bicyclo[2.2.1]hepta−2,5−diene)RhCl]
2、Rh(acethylacetonato)(CO)(triphenylphosphine)、Rh(acethylacetonato)(cyclooctadiene)、Rh(CO)(triphenylphosphine)
2Cl、RhH(CO)(triphenylphosphine)
3、[RhCl(pentamethylcyclopentadienyl)]
2(μ−Cl)
2、Rh
6(CO)
16、Ru(triphenylphosphine)
3Cl
2、 [RuCl
2(CO)
3]
2、[Benzylidene−bis(tricyclophosophine)]RuCl
2、Ru
3(CO)
12、[(2−Methylallyl)PdCl]
2、NaHRu
3(CO)
11、(Triphenylphosphine)
3RuH
2(CO)、Ru(cyclooctadiene)Cl
2]n、(Acenaphthylene)Ru
3(CO)
7、[RuCl(p−cymeme)]
2(μ−Cl)
2、(Pentamethylcyclopentadiene)Ru(cyclooctadiene)Cl、Cr(CO)
6、Zr(cyclopentadiene)Cl
3、Zr(cyclopentadiene)
2Cl
2、Zr(cyclopentadiene)
2HCl、(Pentamethylcyclopentadiene)
2ZrCl
2、Mo(CO)
6 、Mo(cyclopentadiene)
2Cl
2Mo(cyclopentadiene)Cl
4、[(Pentamethylcyclopentadiene)Mo(CO)
3]
2、Nb(cyclopentadiene)Cl
4、Nb(cyclopentadiene)
2Cl
2、Nb(triphenylphosphine)
4、Pd(triphenylphosphine)
2Cl
2、Pd(triphenylphosphine)
4、(Pentamethylcyclopentadiene)
2HfCl
2、Hf(cyclopentadiene)Cl
3、(Pentamethylcyclopentadiene)HfCl
3、Ir(CO)(triphenylphosphine)
2Cl、Ir
4(CO)
12、IrH(triphenylphosphine)
3Cl、[IrCl(pentamethylcyclopentadiene)]
2(μ−Cl)
2、[Ir(cyclooctadiene)]
2(μ−Cl)
2、(Pentamethylcyclopentadiene)TaCl
4、(Pentamethylcyclopentadiene)
2Co、[(Pentamethylcyclopentadiene)Co(CO)
2]
2、La(cyclooctadiene)
3、Ni(triphenylphosphine)
3Cl
2、Ni(triphenylphosphine)
3(CO)
2、Ni(cyclopentadien)
2、Mn
2(CO)
10、Mn(cyclopentadien)(CO)
3、Mn(cyclopentadien)
2、Mn(pentamethylcyclopentadiene)
2、Ti(benzene)
2Cl
2、Fe(CO)
5、Fe
2(CO)
9、[Fe(cyclopentadien)(CO)
2]
2、Os
3(CO)
12、Re
2(CO)
10、Re(CO)
5Cl、Re(CO)
5Br、Re(cyclopentadien)(CO)
3、W(CO)
6、W(cyclopentadien)(CO)
3、Sc(cyclopentadien)
3、V(CO)
6、V(cyclopentadien)(CO)
4、Y[N,N−bis(trimethylsilyl)amide]
3、Y(cyclopentadien)
3、などから選択される1種または2種以上である。
【0064】
上記遷移金属塩としては、例えば、テトラフルオロホウ酸(BF
4)塩、ヘキサフルオロリン酸(PF
6)塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、テトラキス(ペルフルオルフェニル)ホウ酸塩、過塩素酸塩、トリフルオルメチルスルホン酸(CF
3SO
3)塩などが挙げられる。上記遷移金属塩としては、より好ましくは、Rh(cyclooctadiene)
2BF
4、 Pentamethylcyclopentadienyltris(acetonitrile)RuPF
6 、(Pentamethylcyclopentadiene)
2CoPF
6 、La(CF
3SO
3)
3、Sc(CF
3SO
3)
3、などから選択される1種または2種以上である。
【0065】
上記遷移金属酸化物としては、上記遷移金属種に酸素原子が一つ以上結合した化合物のことである。
【0066】
上記遷移金属化合物/ポリシラザン重量比は好ましくは0.0001〜1.0、より好ましくは0.001〜0.5、さらに好ましくは0.01〜0.2である。
【0067】
ポリシラザン含有液は、金属微粒子を含んでもよい。上記金属微粒子を構成する金属はAgが好ましい。上記金属微粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d
50は0.5μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.05μm以下がさらに好ましい。特に、平均粒子径d
50が0.005〜0.01μmの独立分散超微粒子を高沸点アルコールに分散させたポリシラザン含有液が好ましい。金属微粒子の添加量はポリシラザン100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0068】
ポリシラザン含有液は、溶媒に、ポリシラザンおよび必要に応じて用いられる前述した触媒や遷移金属化合物、金属微粒子などが溶解または分散している。
【0069】
上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼンなどの芳香族化合物;n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン、i−デカンなどの飽和炭化水素化合物;エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、デカヒドロナフタレンなどのシクロアルカン;ジペンテン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)、テトラヒドロキシフランなどのエーテル類;MIBK(メチルイソブチルケトン)などのケトン類;塩化メチレン;四塩化炭素などから選択される1種または2種以上である。
【0070】
ポリシラザン含有液を基材101へ塗布する方法としては、公知の塗布方法が適用でき、特に限定されるものではないが、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ディップコート法などが挙げられる。
【0071】
基材101として樹脂フィルムを用いた場合、ポリシラザン含有液を塗工する前に、樹脂フィルムの表面を紫外線オゾン処理、コロナ処理、アーク処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよい。これらの表面処理により、基材101とポリシラザン膜との密着性が向上する。
【0072】
(工程(b))
工程(b)においては、工程(a)で形成されたポリシラザンを含む塗膜を、低酸素・低水分濃度雰囲気下において乾燥し、ポリシラザン膜を形成する。
工程(b)の乾燥処理は、酸素濃度が20%(200,000ppm)以下、好ましくは2%(20,000ppm)、さらに好ましくは0.5%(5,000ppm)以下の範囲であり、相対湿度が70%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下の範囲である、低酸素・低水分濃度雰囲気下で行われることが好ましい。なお、酸素濃度の数値範囲と、相対湿度の数値範囲とは適宜組み合わせることができる。
【0073】
このような低水蒸気濃度雰囲気下において乾燥処理を行うことにより、ポリシラザン膜が酸化珪素(シリカ)に変化するのを、より効果的に抑制することができ、無機層102のバリア性および屈折率を効果的に制御することができる。
【0074】
工程(b)の乾燥処理は、窒素、アルゴンガスなどの不活性ガスが充満された、オーブン内において行うことができる。乾燥条件は、ポリシラザン膜の膜厚によって異なるが、本実施形態においては、例えば、50〜120℃、1〜10分間である。
【0075】
(工程(c))
工程(c)においては、ポリシラザン膜に、加熱処理またはエネルギー線照射を行い、ポリシラザン膜の少なくとも一部を変性する。
【0076】
<加熱処理>
加熱処理では、通常は50℃〜500℃の範囲、好ましくは100℃〜250℃の範囲で処理する。加熱処理により、ポリシラザンを酸化珪素、窒化珪素またはこれらの混合物に変質し、無機層102を形成することができる。
【0077】
<エネルギー線照射>
エネルギー線照射方法としては、プラズマ処理または紫外線処理を挙げることができ、これらを組み合わせて処理することもできる。
エネルギー線照射の波長の範囲としては、150nm以下が好ましく、30〜150nmの範囲がより好ましい。
【0078】
ここで、「酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気」とは、酸素および/または水蒸気が全く存在しないか、あるいは酸素濃度0.5%(5000ppm)以下、好ましくは酸素濃度0.05%(500ppm)以下、より好ましくは酸素濃度0.005%(50ppm)以下、さらに好ましくは酸素濃度0.002%(20ppm)以下、特に好ましくは0.0002%(2ppm)以下であるか、相対湿度0.5%以下、好ましくは相対湿度0.2%以下、より好ましくは相対湿度0.1%以下、さらに好ましくは相対湿度0.05%以下である雰囲気をいう。また、水蒸気濃度(室温23℃における水蒸気分圧/大気圧)では、140ppm以下、より好ましくは56ppm、さらに好ましくは28ppm、特に好ましくは14ppm以下である雰囲気をいう。
【0079】
工程(C)においてプラズマ処理は、酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気で実施するために、装置内の圧力を真空ポンプを用いて大気圧(101325Pa)から圧力100Pa以下、好ましくは10Pa以下まで減圧した後、ガスを導入することで実施される。
【0080】
真空下における酸素濃度および水蒸気濃度は、一般的に、酸素分圧および水蒸気分圧で評価される。具体的には、酸素分圧10Pa以下(酸素濃度0.001%(10ppm))以下、好ましくは酸素分圧2Pa以下(酸素濃度0.0002%(2ppm))以下、水蒸気濃度10ppm以下、好ましくは1ppm以下になるまで減圧した後、ガスを導入することで行われる。
【0081】
また、工程(c)において、プラズマ処理または紫外線処理と同時に、ポリシラザン膜が塗工された基材101の加熱処理を行うことで、より短時間で処理することができる。加熱処理温度としては、高ければ高いほど良いが、基材の耐熱性を考えると、好ましくは25℃〜1000℃、より好ましくは30℃〜500℃、さらに好ましくは60℃〜300℃の範囲である。
【0082】
以下、本実施形態で用いる波長150nm以下の光(VUV:真空紫外光)の照射方法であるプラズマ処理と紫外線処理について、以下に説明する
【0083】
(プラズマ処理)
本実施形態で用いるプラズマ処理について以下に説明する。プラズマ処理は、低圧プラズマ処理、大気圧近傍プラズマ処理がある。これらの中でも低圧プラズマ処理が好ましい。
【0084】
(プラズマガス種)
プラズマ処理に用いるガスとしては、窒素ガスなどの不活性ガス;アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスなどの希ガス;水素ガス、アンモニアガスなどの還元ガス;酸素ガスなどが挙げられる。これらの中でも、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス、水素ガスなどから選択される1種または2種以上が好ましい。
【0085】
(低圧プラズマ処理)
低圧プラズマには、真空の密閉系内に公知の電極または導波管を配置し、直流、交流、ラジオ波あるいはマイクロ波などの電力を、電極または導波管を介して印加することにより任意のプラズマを発生させることができる。プラズマ処理時に印加する電力(W)は、電極の単位面積(cm
2)あたり、好ましくは0.0001W/cm
2〜100W/cm
2、より好ましくは0.001W/cm
2〜50W/cm
2である。
【0086】
(低圧プラズマ圧力範囲)
低圧プラズマ処理では、上記プラズマガス種を導入し、ガス分圧500Pa〜0.1Paの低圧で行う。より好ましくは、100Pa〜0.1Paで行うとプラズマ発生効率が良い。
【0087】
(低圧プラズマ生成方式)
本実施形態で用いるプラズマの生成方式は、従来から知られた方式を用いることができる。好ましくは、幅広の基材101に形成したポリシラザン膜の処理に対応できる方式が良く、例えば、次に示す(A)〜(E)の方式が挙げられる。
【0088】
(A)容量結合プラズマ(CCP)
高周波電力を印加した側の電極と接地側の電極との間にプラズマを生成する方式で、対向した平板電極が代表的な電極構造である。高周波電力を印加した側の電極は、平板状だけでなく、凹凸形状であっても良い。
【0089】
(B)誘導結合プラズマ(ICP)
アンテナコイルに高周波電流を流し、コイルが作る磁場による誘導電界でプラズマを生成する方式で、一般に容量結合プラズマに比べ高い電子密度(プラズマ密度)が得られるとされる。誘電体窓を介してアンテナコイルをチャンバの外に置く外部アンテナ型、アンテナコイルをチャンバ内に設置する内部アンテナ型のどちらを採用してもよい。また、幅広の基材に対応するため、アンテナコイルをアレイ状に配置するなどの工夫をしても良い。
【0090】
上記のような装置構成では、投入電力を上昇させていくと、コイルアンテナとの静電的な結合による放電(Eモードと呼ばれる)から誘導結合による放電(Hモードと呼ばれる)に移行する。場合によっては、モードジャンプ現象としてプラズマ密度が急激に増加する現象が観測されることがある。ポリシラザン膜を処理する際には、Hモードのプラズマになるように、十分な電力を投入する必要がある。
(C)表面波プラズマ
(D)電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ
(E)ヘリコン波プラズマ
【0091】
(大気圧近傍のプラズマ処理)
大気圧近傍プラズマ処理としては、二つの電極間にガスを通し、このガスをプラズマ化してから照射する方式や、二つの電極間に照射するポリシラザン膜付き基材を配置し、そこへガスを通してプラズマ化する方式などが挙げられる。
【0092】
大気圧近傍プラズマ処理を行う際、低酸素および/または低水蒸気の雰囲気で行う必要がある。プラズマガス流量は低酸素・低水蒸気濃度雰囲気にするために、流量が多いほど好ましく、好ましくは0.01〜1000L/min、より好ましくは0.1〜500L/minである。
【0093】
(大気圧近傍プラズマ圧力範囲)
大気圧近傍プラズマ処理において、印加する電力(W)は、電極の単位面積(cm
2)あたり、好ましくは0.0001W/cm
2〜100W/cm
2、より好ましくは0.001W/cm
2〜50W/cm
2である。大気圧プラズマ処理における、ポリシラザン膜付き基材の移動速度は、好ましくは0.001〜1000m/minであり、より好ましくは0.001〜500m/minである。
【0094】
(紫外線処理)
紫外線処理は、大気圧下または真空下で行うことができる。具体的には、酸素および水蒸気を実質的に含まない雰囲気下、大気圧下または真空下で行うことができる。または、紫外線処理は、酸素濃度0.5%(5000ppm)以下、好ましくは0.1%(1000ppm)以下、相対湿度0.5%以下、好ましくは0.1%以下の低酸素・低水蒸気濃度雰囲気下において行うことができる。上記の低水蒸気濃度雰囲気下(常圧)においてプラズマ処理を行う場合は、不活性ガスまたは希ガスまたは還元ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。
【0095】
紫外線の発生方法としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UV光レーザー、などを使用する方法が挙げられる。特に好ましくは、低圧水銀ランプ、エキシマランプ、UV光レーザーである。
【0096】
以上の工程を行うことにより、無機層102を製造することができる。なお、本実施形態において、無機層102に対しさらに以下の処理を行ってもよい。
【0097】
基材101と無機層102の間に、基材101中のオリゴマーおよび添加剤析出の抑制のために、アンダーコート層を設けても良い。アンダーコート層としては、分子内にビニル基を少なくとも1つ以上有する重合性モノマーまたはオリゴマーをコートして、加熱や紫外線、電子線などによる架橋反応によりコート層を形成させるものが好ましい。特に、紫外線や電子線などを用いると反応性が良く好ましい。重合性モノマーまたはオリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物、ポリエーテル(メタ)アクリレート系化合物、ビニル系化合物、不飽和ポリエステル系化合物などのオリゴマー;各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステルなどのモノマー;などが挙げられる。これらの中でも、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物のアンダーコート層を設けることが好ましく、特にウレタン(メタ)アクリレート系化合物のアンダーコート層を設けることが望ましい。
【0098】
上記エポキシ(メタ)アクリレート系化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラク型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などのエポキシ化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とを反応させて得られる化合物;さらにはこれらの化合物をカルボン酸またはその無水物と反応させて得られる酸変性エポキシ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物を、光重合開始剤および必要に応じて他の光重合あるいは熱反応性モノマーからなる希釈剤と共に、基材101の表面に塗布し、その後紫外線などを照射して架橋することによりアンダーコート層が形成される。
【0099】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物からなるオリゴマーをアクリレート化したものから構成される。
ポリウレタン系オリゴマーは、ポリイソシアネートとポリオールとの縮合生成物から得ることができる。具体的なポリイソシアネートとしては、メチレン・ビス(p−フェニレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート・ヘキサントリオールの付加体、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート二量体、水添キシリレンジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオフォスフェートなどが挙げられる。また、具体的なポリオールとしては、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール;ポリアジペートポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステル系ポリオール;アクリル酸エステル類とヒドロキシエチルメタアクリレートとのコポリマーなどが挙げられる。アクリレートを構成するモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0100】
これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、必要に応じて、併用される。また、これらを重合させる方法としては、公知の種々の方法、具体的には電離性放射線の照射または加熱などによる方法が挙げられる。
これらを紫外線で硬化して使用する場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミフィラベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステルまたはチオキサントン類などを光重合開始剤として、また、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルホスフィンなどを光増感剤として混合して使用するのが好ましい。
【0101】
また、これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物やウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、(メタ)アクリル系モノマーで希釈してもよい。このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0102】
これらの中でもアンダーコート層としてウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いた場合は、得られる積層体100のバリア性を向上させることができる。
これらのアンダーコート層の目付量は、通常は0.05〜5.0g/m
2であり、好ましくは0.1〜3.0g/m
2である。
また、無機層102の表面は樹脂層103を設ける前に、コロナ処理、グロー放電処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ放電処理などの前処理をすることが望ましい。中でもコロナ処理が好適である。コロナ処理の条件は、特に限定されないが、例えば放電周波数は、5〜40kHz、中でも10〜30kHz程度を用いることもでき、波形として例えば交流正弦波がある。電極と誘電体ロールとのギャップのクリアランスを0.1〜10ミリメートル、中でも1.0〜2.0ミリメートル程度とし、処理量として0.3〜0.4KV・A・分/m
2程度とすることもできる。空気中常圧で処理できる点で好適である。
【0103】
[樹脂層]
本実施形態に係る樹脂層103は、環状オレフィン共重合体(P)の架橋体(Q)を含む。
【0104】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)は、架橋性基として環状非共役ジエンを有する。環状非共役ジエンを有する環状オレフィン共重合体(P)は、オレフィン由来の繰り返し単位と所定の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位とを所定範囲のモル比で含むため、高密度に架橋することができ、優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、バリア性および加工性を有する架橋体(Q)を形成することができる。
また、架橋性基と無機層102との反応により、無機層102との間で高い密着性が発現する。
【0105】
より具体的には、本実施形態に係る環状非共役ジエンを有する環状オレフィン共重合体(P)は、下記一般式(I)で表される1種または2種以上のオレフィン由来の繰り返し単位(A)と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位および下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種または2種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)と、を含む。
【0106】
なお、本実施形態において、架橋性基を有する環状オレフィン共重合体(P)は、架橋性基が全く反応していない形態(未架橋体)も、架橋性基の少なくとも一部が反応した形態(架橋体)も本実施形態に係る環状オレフィン共重合体に含まれる。
【0108】
上記一般式(I)において、R
300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。
【0110】
上記一般式(II)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
102とR
103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0112】
上記一般式(III)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0114】
上記一般式(IV)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0115】
(オレフィンモノマー)
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)の共重合原料の一つであるオレフィンモノマーは、付加共重合して上記一般式(I)で表される骨格を与えるモノマーであり、下記一般式(Ia)で表されるオレフィンである。
【0117】
上記一般式(Ia)において、R
300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性およびバリア性を有する架橋体(Q)を得る観点から、これらのなかでも、エチレンとプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは二種類以上を用いてもよい。
【0118】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)中に含まれる、繰り返し単位の合計モル数を100モル%としたとき、オレフィン由来の繰り返し単位(A)の割合は、好ましくは1モル%以上80モル%以下、より好ましくは50モル%以上80モル%以下である。
【0119】
(環状非共役ジエンモノマー)
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)の共重合原料の一つである環状非共役ジエンモノマーは付加共重合して上記一般式(II)、上記一般式(III)、または上記一般式(IV)の構成単位を形成するものである。具体的には、上記一般式(II)、上記一般式(III)、上記一般式(IV)にそれぞれ対応する一般式(IIa)、(IIIa)、(IVa)で表される環状非共役ジエンモノマーが用いられる。
【0121】
上記一般式(IIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
102とR
103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0123】
上記一般式(IIIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0125】
上記一般式(IVa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
76ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75およびR
76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0126】
上記一般式(IIa)で表される環状非共役ジエンモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−n-プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−6−メチル−2−ノルボルネン、8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンなどが挙げられる。このうち5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0127】
上記一般式(IIIa)で表される環状非共役ジエンモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式で表される環状非共役ジエンモノマーを挙げることができる。これらのうち5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンが好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネンが特に好ましい。
【0130】
上記一般式(IVa)で表される環状非共役ジエンモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ジシクロペンタジエン、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13] −4,10−ペンタデカジエンなどが挙げられる。このうちジシクロペンタジエンが好ましい。
【0131】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)は、上記環状非共役ジエンモノマー由来の繰り返し単位(B)を含むことによって、側鎖部分、すなわち共重合の主鎖以外の部分に二重結合を有することできる。
【0132】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体中に含まれる、繰り返し単位の合計モル数を100モル%としたとき、上記環状非共役ジエンモノマー由来の繰り返し単位(B)の割合は、好ましくは0.1モル%以上45モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上25モル%以下、さらに好ましくは0.1モル%以上15モル%以下である。
【0133】
上記環状非共役ジエンモノマー由来の繰り返し単位(B)の割合が上記範囲内であると、環状オレフィン共重合体(P)は、より一層高密度に架橋されることが可能となるので、耐熱性、機械特性、誘電特性、透明性、成形性およびバリア性により一層優れた架橋体(Q)を得ることができる。言い換えればこれらの物性のバランスに優れた架橋体(Q)を得ることができる。
また、上記環状非共役ジエンモノマー由来の繰り返し単位(B)の割合が上記範囲内であると、環状オレフィン共重合体(P)の成形性、溶解性が良好で、架橋体(Q)の製造が容易となり、製品の歩留まりが向上する。
【0134】
上記環状非共役ジエンモノマー由来の繰り返し単位(B)の割合が上記上限値以下とすることにより、環状オレフィン共重合体(P)の成形性や溶解性を向上させつつ、架橋体(Q)のバリア性をより一層向上させることができる。また、環状非共役ジエンモノマー由来の構成単位(B)の割合が上記下限値以上とすることにより、架橋体(Q)の耐熱性、機械的特性、無機層102との密着性をより一層向上させることができる。
【0135】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)は架橋性基を有する。架橋性基を有する上記環状非共役ジエンモノマー由来の繰り返し単位(B)は、上記一般式(II)、上記一般式(III)または上記一般式(IV)で表される繰り返し単位であることが好ましく、上記一般式(III)または上記一般式(IV)で表される繰り返し単位であることがより好ましく、上記一般式(III)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0136】
具体的には、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、ジシクロペンタジエンが好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、ジシクロペンタジエンがより好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンがさらに好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネンが特に好ましい。
【0137】
本実施形態に係る環状非共役ジエンを有する環状オレフィン共重合体は、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位、下記一般式(VII)で表される繰り返し単位、および下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種または2種以上の環状非共役ジエン以外の環状オレフィン由来の繰り返し単位(C)をさらに含んでもよい。
【0138】
【化11】
上記一般式(VI)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75〜R
78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい
。
【0139】
【化12】
上記一般式(VII)において、xおよびdは0または1以上の整数であり、yおよびzは0、1または2であり、R
81〜R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基若しくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0140】
【化13】
上記一般式(VIII)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0141】
(環状非共役ジエン以外の環状オレフィンモノマー)
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)の共重合原料の一つである環状非共役ジエン以外の環状オレフィンモノマーは付加共重合して上記一般式(VI)、上記一般式(VII)または上記一般式(VIII)で表される環状非共役ジエン以外の環状オレフィン由来の構成単位(C)を形成するものである。具体的には、上記一般式(VI)、上記一般式(VII)または上記一般式(VIII)にそれぞれ対応する一般式(VIa)、(VIIa)または(VIIIa)で表される環状オレフィンモノマーが用いられる。
【0143】
上記一般式(VIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R
61〜R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75〜R
78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0145】
上記一般式(VIIa)において、xおよびdは0または1以上の整数であり、yおよびzは0、1または2であり、R
81〜R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基若しくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0147】
上記一般式(VIIIa)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0148】
共重合成分として、上述した一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(VIa)、(VIIa)または(VIIIa)で表される環状オレフィンを用いることにより、環状オレフィン共重合体(P)の溶媒への溶解性がより向上するため成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。
【0149】
一般式(VIa)、(VIIa)または(VIIIa)で表される環状オレフィンの具体例については国際公開第2006/118261号パンフレットの段落0037〜0063に記載の化合物を用いることができる。
【0150】
具体的には、ビシクロ−2−ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト−2−エン誘導体)、トリシクロ−3−デセン誘導体、トリシクロ−3−ウンデセン誘導体、テトラシクロ−3−ドデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ−3−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ−3−ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ−4−ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−4−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ−5−ドコセン誘導体、ノナシクロ−5−ペンタコセン誘導体、ノナシクロ−6−ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3〜20のシクロアルキレン誘導体が挙げられる。
【0151】
一般式(VIa)、(VIIa)または(VIIIa)で表される環状オレフィンの中でも、一般式(VIa)で表される環状オレフィンが好ましい。
【0152】
上記一般式(VIa)で表される環状オレフィンとして、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネン)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(テトラシクロドデセン)を用いることが好ましく、テトラシクロドデセンを用いることがより好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体および架橋体(Q)の弾性率が保持され易く、また異種二重結合構造を含まないため架橋の制御をし易くなる利点がある。
【0153】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)中に含まれる、繰り返し単位の合計モル数を100モル%としたとき、上記環状オレフィン由来の繰り返し単位(C)の割合は、通常は0.1モル%以上50モル%以下、好ましくは10モル%以上40モル%以下、より好ましくは20モル%以上35モル%以下である。
【0154】
(鎖状ポリエン)
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)は、鎖状ポリエンをさらに共重合してもよい。例えば、下記一般式(Va)で表される鎖状ポリエンが挙げられる。
【0156】
上記一般式(Va)において、R
201からR
206は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、Pは炭素原子数1〜20の直鎖または分岐状の炭化水素基で、二重結合および/または三重結合を含んでいてもよい。
【0157】
上記一般式(Va)で表される直鎖状ポリエンとして、特に限定されるものではないが、例えば、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、DMDT、1,3−ブタジエン,1,5−ヘキサジエンなどが挙げられる。また1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエンなどのポリエンから環化した環化性のポリエンを用いても良い。
【0158】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)中に含まれる、繰り返し単位の合計モル数を100モル%としたとき、上記鎖状ポリエン由来の繰り返し単位の割合は、通常は0.1モル%以上50モル%以下、より好ましくは10モル%以上40モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上35モル%以下である。
【0159】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)は目的とする用途に応じて、モノマーの仕込み比により、そのコモノマー含有量、およびガラス転移温度(Tg)をコントロールできる。本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)のTgは、通常は50℃以上300℃以下であり、好ましくは60℃以上250℃以下であり、とくに好ましくは70℃以上200℃以下である。Tgが上記上限値以下であると、環状オレフィン共重合体(P)の成形性をより一層向上させることができる。また、Tgが上記下限値以上であると、環状オレフィン共重合体(P)を架橋することによって得られる架橋体(Q)の耐熱性や機械的特性が向上する。
【0160】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)の、135℃中デカリン中で測定した極限粘度[η]は、通常は0.2〜15dl/gであり、好ましくは0.5〜5dl/gであり、より好ましくは0.5〜3dl/gである。極限粘度[η]が上記上限値以下であると、成形性が向上する。また、極限粘度[η]が上記下限値以上であると、環状オレフィン共重合体(P)を架橋することによって得られる架橋体(Q)の耐熱性や機械的特性が向上する。なお、環状オレフィン共重合体(P1)の極限粘度[η]は、重合触媒、助触媒、H
2添加量、重合温度などの重合条件により制御することが可能である。
【0161】
(環状オレフィン共重合体(P)の製造方法)
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)の製造方法は、例えば、国際公開第2012/0246443号パンフレットの段落0075〜0219に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法や国際公開第2006/118261号パンフレットの段落0095〜0234に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法にしたがって製造することができる。ここでは詳細は省略する。
【0162】
(ワニス)
本実施形態において得られた環状オレフィン共重合体(P)は、溶媒と混合することによりワニスとすることができる。上記ワニスを調整するための溶媒としては、環状オレフィン共重合体(P)に対して溶解性または親和性を示すものが好ましい。溶媒として好ましく用いられるものは、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。より好ましくはトルエン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレンである。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0163】
本実施形態において、ワニスを作製する方法としては、いかなる方法で実施してもよいが、通常は環状オレフィン共重合体(P)と溶媒とを混合する工程を含む。各成分の混合については、その順序に制限はなく、一括または分割などのいかなる方式でも実施することができる。ワニスを調製する装置としても、制限はなく、撹拌、混合が可能な、バッチ式、もしくは連続式の、いかなる装置で実施してもよい。ワニスを調製する際の温度は、室温から溶媒の沸点までの範囲で任意に選択することができる。
なお、環状オレフィン共重合体(P)が得られた際の反応溶液をそのまま溶媒として用いてワニスを調製してもよい。また、環状オレフィン共重合体(P)を精製した後、別途溶媒を添加することによりワニスを調製してもよい。
【0164】
(架橋体(Q)の製造方法)
本実施形態の架橋体(Q)は、上述の環状オレフィン共重合体(P)を架橋することにより得られる。環状オレフィン共重合体(P)の架橋方法としては特に制限はないが、ラジカル重合開始剤や硫黄、電子線や他の放射線を用いて、任意の形に成形しながら、または成形後に架橋する方法などが挙げられる。
【0165】
ラジカル重合開始剤による架橋は、ポリオレフィンで適用されている通常のラジカル重合開始剤による架橋方法をそのまま適用できる。すなわち本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(P)にジクミルペルオキシドのようなラジカル重合開始剤を配合し、加熱、架橋する。ラジカル重合開始剤の配合割合は特に制限がないものの、環状オレフィン共重合体(P)100重量部あたり通常は0.02〜20重量部であり、好ましくは0.05〜10重量部であり、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。ラジカル重合開始剤の配合割合が上記上限値以下であると、架橋体(Q)のバリア性が向上し、上記下限値以上であると、架橋体(Q)の耐熱性、機械的特性を向上させることができる。
【0166】
本実施形態において、ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤およびこれらを併用することができる。これらのラジカル重合開始剤のうち、熱ラジカル開始剤を使用する場合は、保存安定性と加工温度の観点から10時間半減期温度が通常30℃以上、好ましくは40℃以上のものである。このような開始剤として、例えば、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)2,5−ジメチルヘキシン−3、ジ−t−ブチルペルオキシド、イソプロピルクミル−t−ブチルペルオキシド、ビス(α−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシド類;1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、エチル−3,3−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブチレート、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5,−テトラオキシシクロノナンなどのペルオキシケタール類;ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルハイドロペルオキシド、t−ヘキシルハイドロペルオキシド、クミンハイドロペエルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、p−メンタンハイドロペルオキシドなどのハイドロペルオキシド類;2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどのビベンジル化合物類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン;などが挙げられる。
【0167】
ラジカル重合開始剤のうち、光ラジカル開始剤は具体的には、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントンおよびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。また、これらの光ラジカル開始剤とともに増感剤を使用することもできる。増感剤の例としては、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p'−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニルなどのカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、2−ニトロフルオレンなどのニトロ化合物、アントラセン、クリセンなどの芳香族炭化水素、ジフェニルジスルフィドなどの硫黄化合物、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン、テトラシアノエチレンなどの窒素化合物などを挙げることができる。
【0168】
硫黄などにより架橋する場合には、環状オレフィン共重合体(P)に硫黄系化合物、必要に応じて加硫促進剤、加硫促進助剤を配合して加熱し、架橋反応を行う。硫黄系化合物の配合量はとくに制限はないものの、架橋反応を効率よく進行させ、かつ得られる架橋体(Q)の物性改善を計ることおよび経済性の面などから、環状オレフィン共重合体(P)100重量部に対して通常は0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部の範囲で使用される。加硫促進剤や加硫促進助剤を併用する場合には通常は0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部の範囲で使用される。
架橋反応を起こすため使用される硫黄系化合物は公知の種々のものが使用でき、例えば、硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなどが挙げられる。また加硫促進剤も種々のものを使用でき、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミドなどのチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンなどのグアニジン系;アセトアルデヒド−アニリン反応物;ブチルアルデヒド−アニリン縮合物;ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミン、またはアルデヒド−アンモニア系;2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系;チオカルバニリド、ジエチルチオユリアジブチルチオユリアなどのチオユリア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛などのジチオ酸塩系;ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのザンテート系;などを挙げることができる。加硫促進剤としては、酸化亜鉛、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、酸化マグネシウム、リサージ、鉛丹、塩基性炭酸鉛などの金属酸化物系;ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸鉛などの脂肪酸系;トリエタノールアミン、ジエチレングリコールなどの有機アミン・グリコール系などを挙げることができる。
【0169】
本実施形態における環状オレフィン共重合体(P)をラジカル開始剤架橋または硫黄架橋する場合、架橋する温度は通常は40〜350℃、好ましくは50〜300℃、さらに好ましくは80〜200℃の温度で行い、温度を段階的に変化させて架橋を行っても良い。上記下限値以上であると、架橋を十分に進行させることができる。また、上記上限値以下であると、得られる架橋体(Q)の着色が抑制できたり、プロセスを簡略化できたりする。なお、参考として、代表的な二重結合含有重合体であるポリブタジエンは、300℃のような高温での架橋条件を必要とする。
【0170】
電子線や他の放射線を用いて架橋する方法は、成形時の温度、流動性の制限を伴わないという利点があり、放射線としては、電子線の他、γ線、UVなどを挙げることができる。
【0171】
ラジカル重合開始剤や硫黄などを用いる方法、放射線を用いて架橋する方法のいずれの場合も、架橋助剤の併用下に架橋することができる。
【0172】
架橋助剤としては、特に制限はないが、例えば、p−キノンジオキシム、p,p'−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのオキシム類;エチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートなどのアクリレートもしくはメタクリレート類;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジンなどのビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル化合物類;N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、N,N'−(4,4'−メチレンジフェニレン)ジマレイミドなどのマレイミド化合物類;ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの環状非共役ジエン類などが挙げられる。これらの架橋助剤は単独で用いてもよいし、組み合わせて使用することもできる。
【0173】
架橋反応は、本実施形態の環状オレフィン共重合体(P)と、上記したラジカル重合開始剤の如き架橋に与る化合物の混合物を溶融状態として行うこともできる。また、該混合物を溶媒に溶解、または分散させた溶液状態で行うこともできるし、溶媒に溶解した溶液状態から溶媒を揮発させ樹脂層に成形した後にさらに架橋反応を進行させることもできる。
【0174】
溶融状態で反応を行う場合はミキシングロール、バンバリーミキサー、押出機、ニーダ、連続ミキサーなどの混練装置を用いて、原料の混合物を溶融混練して反応させる。また、任意の手法で樹脂層に成形した後に、さらに架橋反応を進行させることもできる。
【0175】
溶液状態で反応を行う場合に使用する溶媒としては上記溶液ブレンド法で用いた溶媒と同様の溶媒が使用できる。
【0176】
電子線またはその他の放射線、UVを用いて架橋反応を行う場合には、任意の方法で付形した後に、反応を行うことができる。
【0177】
(樹脂層の製造方法)
本実施形態の樹脂層103の製造方法としては、本実施形態の環状オレフィン共重合体(P)と有機溶媒を混合して、環状オレフィン共重合体(P)を含んだワニスを得る。次に無機層102上に塗布して乾燥後、前述した加熱処理などの架橋反応をおこなうことにより、無機層102上に樹脂層103を形成する方法が挙げられる。
ワニスの無機層102への塗布方法は特に限定されないが、例えば、スピンコーターを用いた塗布、スプレーコーターを用いた塗布、バーコーターを用いた塗布などを挙げることができる。
【0178】
本実施形態の樹脂層103には、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、アンチブロッキング剤などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で適量使用してもよい。
【0179】
[その他の層]
本実施形態に係る積層体100は、その少なくとも片面に、目的の用途に合わせて以下のような熱硬化性樹脂層、紫外線硬化性樹脂層、ハードコート樹脂層、易滑層、導電層、熱融着層、機能素子封止樹脂層をさらに積層しても良く、単一でも組み合わせても、何層か積層させても良い。
【0180】
(熱硬化性樹脂層、紫外線硬化性樹脂層、ハードコート樹脂層)
一般的な熱硬化性樹脂層や紫外線硬化性樹脂、ハードコート樹脂をコートし、加熱や紫外線や電子線などにより架橋させて形成することができる。具体的には、(メタ)アクリル樹脂や、エポキシ樹脂などである。また、これらの樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、必要に応じて、併用してもよい。
紫外線で硬化して使用する場合は、光ラジカル開始剤、光カチオン開始剤、光酸発生剤、光増感剤を混合して使用するのが好ましい。
また、熱硬化性樹脂層、紫外線硬化性樹脂層、ハードコート樹脂層には、滑剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0181】
(導電層)
導電性を有する金属、セラミックス、カーボン材料を積層することで、電子部材として好適な積層体100が得られる。金属としては、特に限定されないが、金、銀、白金、銅、鉛などの金属が好適である。セラミックスでは、インジウムスズ酸化物、酸化亜鉛、酸化チタンなどが使用できる。カーボン材料では、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが使用できる。
導電層は、上記金属、セラミックスまたはカーボン材料の微粒子を水や有機溶媒に分散したペースト状の塗工液をコーティングしたり、蒸着やスパッタといった気相堆積法を用いたりして、金属またはセラミックスまたはカーボン材料の薄膜を作製することができる。
【0182】
(熱融着層)
熱融着層を積層することで、熱ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適な積層体100が得られる。このような熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1などのα−オレフィンの単独若しくは共重合体;高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体などのポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物;などから得られる層である。
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
このような熱融着層の厚さは通常1〜50μmである。
【0183】
[電子部材]
図2は、本発明に係る実施形態の積層体の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る積層体100は、樹脂層103上に、電子部材200がさらに設けらてもよい。電子部材200は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス部材、電子ペーパー部材、および液晶表示部材から選択される電子部材である。
本実施形態に係る電子部材200は、例えば、
図2に示すように、基材201と、基材201上に搭載された電子部品203と、基材201上および電子部品203を覆う封止樹脂層205とを含む。そして、電子部材200上に、基材101と無機層102と樹脂層103とを含む積層体が、樹脂層103が電子部材200側となるように配置される。
【0184】
(基材)
基材201としては、前述した基材101で述べた樹脂フイルムやガラスが用いられる。
【0185】
(電子部品)
電子部品203としては、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの素子;光デバイスなどの有機機能素子;無機EL素子などの無機機能素子;面状発光体;電子ペーパーなどを挙げることができる。
【0186】
(封止樹脂層)
封止樹脂層205は、電子部品203を封止する樹脂層である。封止樹脂層205には、特に限定されないが、ヒートシール性熱可塑性樹脂や、または前述した熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂が用いられる。
封止樹脂層205は、樹脂層103と、接着積層することができる。樹脂層103と封止樹脂層205の間に、必要に応じて接着層として硬化性樹脂を用いることができる。
【0187】
本実施形態に係る積層体100は、特に、高度な水分・酸素バリアを要求される有機EL素子に対し、有効に用いることができる。封止樹脂層205は、有機EL素子の封止樹脂層として用いることができる。有機EL素子の封止樹脂層としては、アクリレートやエポキシ樹脂など、公知の熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂、もしくはヒートシール性熱可塑性樹脂が用いられる。
ヒートシール性熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、低密度ポリエチレン;エチレンと炭素数4ないし8のα−オレフィンとのランダム共重合体であるLLDPE;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体などのプロピレン系エラストマー;ブテン・エチレン共重合体などのブテン系エラストマー;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体などのエチレンと極性モノマーとの共重合体などが挙げられる。
これらは、さらに、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸やエポキシ基含有モノマーなどの極性基含有モノマーで変性されたものでもよい。これらのヒートシール性熱可塑性樹脂は、ラミネートにより積層される方法、コーティングによりコート層として形成される方法がある。
このような層の中でも、コート剤としては、エチレン−ビニル酢酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸ナトリウム塩共重合体などのアイオノマーが例示される。
【0188】
このように、ヒートシール性熱可塑性樹脂層には、加熱溶融により、他の材料に溶融固着するものであれば、特に限定することなく利用することができる。このような材料として、上記の中でも、アクリル酸、無水マレイン酸、これらの誘導体がグラフトされたポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好適である。
【0189】
本実施形態に係る積層体100は、酸素ガスバリア性のみならず、耐水蒸気透過性に優れており、各種包装材料、医療用途、工業用途の様々な用途の利用が可能である。特に、医薬包装材、電子ペーパーおよび有機ELのパネル・封止材、基板の封止材など電気、電子材料へ利用することができる。また、適用される有機ELは、特に限定されるものではなく低分子材料、高分子材料からなるパッシブ型、アクティブ型のいずれの有機ELにも使用することができ、各種ディスプレイ、車載モバイル関連、フレキシブルディスプレイ、照明用、広告表示用、サイドボード用その他の用途に用いることができる。
【0190】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、
図3に示すように、基材101の両面に無機層102および樹脂層103が積層されていてもよい。また、
図4に示すように、基材101の少なくとも一方の面に、複数の無機層102と複数の樹脂層103とが交互に積層していてもよい。
【実施例】
【0191】
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0192】
なお、合成例、実施例、比較例で用いた環状オレフィン共重合体(P)の組成、極限粘度η(dl/g)、ガラス転移温度Tg(℃)は、次に述べる方法で測定した。
【0193】
組成:
1H−NMR測定を行い、二重結合炭素に直接結合している水素由来のピークとそれ以外の水素のピークの強度により環状非共役ジエン含量を算出した。
【0194】
極限粘度[η]:135℃デカリン中で測定した。
【0195】
実験には以下の原材料を用いた。
遷移金属化合物(1)
(特開2004−331965号公報に記載の方法により合成。)
【0196】
【化18】
【0197】
メチルアルミノキサン(アルベマーレ社製:20%MAOトルエン溶液)
シクロヘキサン(和光純薬工業社製:和光特級)
トルエン(和光純薬工業社製:和光特級)
キシレン(和光純薬工業社製:和光特級)
ジシクロペンタジエン(関東化学社製:鹿1級)
5−ビニル−2−ノルボルネン(東京化成工業社製)
テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]-3-ドデセン(三井化学社製)
【0198】
〔合成例1:環状オレフィン共重合体1の合成〕
十分に窒素置換した内容積2Lのガラス製オートクレーブにトルエン1500mL、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)5.8ml、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]-3-ドデセン(TD)12.9mlを装入し、液相及び気相を100NL/hの流量のエチレンガスで飽和させた。その後、このオートクレーブにメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.86mmol、引き続き、遷移金属化合物(1)0.0017mmolをトルエン1mLに溶解させて加え、重合を開始した。上記のエチレンガス雰囲気下25℃常圧で25分間反応させた後、少量のイソブチルアルコールを添加することで重合を停止した。重合終了後、反応物を、20mLの濃塩酸を加えたアセトン5600mLとメタノール1900mLの混合溶媒に投入してポリマーを全量析出させ、撹拌後濾紙でろ過した。本操作を反応物がなくなるまで繰り返して得られた全ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、エチレン/TD/VNB共重合体を2.66g得た。極限粘度[η]は0.65(dL/g)、NMRにより決定したポリマー中のVNB由来構造の組成比は11.8mol%、TD由来構造の組成比は19.8mol%であった。
【0199】
<実施例1>
基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm、「A4100」、東洋紡績社製)上に、ウレタンアクリレート(ウレタンアクリレート系UV硬化塗材(新中村化学社製 商品名 UA−100)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m
2(固形分)になるように塗布し、100℃、15秒間乾燥した。次いで、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm
2、積算光量:117mJ/cm
2の条件で光硬化し、アンダーコート層を形成した。さらにこの上にポリシラザン(NL110A、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)の4.5wt%キシレン(脱水)溶液をバーコートし、150℃で90秒間乾燥して、厚さ0.15μmのポリシラザン膜を作製した。
【0200】
次いで、ポリシラザン膜に低圧プラズマ処理を下記条件にて施し、無機層を得た。
プラズマ処理装置:低圧容量結合プラズマ処理装置
ガス:He
ガス流量:50mL/min
圧力:19Pa
電極単位面積あたりの印加電力:1.3W/cm
2
周波数:13.56MHz
処理時間:30秒
【0201】
その後、<合成例1>で得られたエチレン/VNB/TD共重合体500mg、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂社製、製品名パーヘキサ25Z)20mgをキシレン3mLに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスを、アプリケーターを用いて、無機層上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で80℃30分間、その後120℃に昇温して2時間加熱して樹脂層を作製し、積層体を得た。
【0202】
<実施例2>
合成例1で得られたエチレン/VNB/TD共重合体500mgをキシレン3mLに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスを、アプリケーターを用いて、実施例1と同様に作製した無機層上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で80℃30分間、その後120℃に昇温して2時間加熱して樹脂層を作製し、積層体を得た。
【0203】
<実施例3>
基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm、「A4100」、東洋紡績社製)上に、ウレタンアクリレート(ウレタンアクリレート系UV硬化塗材(新中村化学社製 商品名 UA−100)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m
2(固形分)になるように塗布し、100℃、15秒間乾燥した。
次いで、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm
2、積算光量:117mJ/cm
2の条件で光硬化し、アンダーコート層を形成した。さらにこの上にスパッタコーターを使用して酸化珪素の無機層を作製した。
その後、合成例1で得られたエチレン/VNB/TD共重合体500mg、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂社製、製品名パーヘキサ25Z)20mgをキシレン3mLに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスを、アプリケーターを用いて、無機層上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で80℃30分間、その後120℃に昇温して2時間加熱して樹脂層を作製し、積層体を得た。
【0204】
<比較例1>
架橋性基を有さない環状オレフィン系共重合体(アペル、三井化学社製〉500mgをキシレン3mLに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスを、アプリケーターを用いて、実施例1と同様に作製した無機層の上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で80℃30分間、その後120℃に昇温して2時間加熱して樹脂層を作製し、積層体を得た。
【0205】
<比較例2>
架橋性基を有さない環状オレフィン系共重合体(アペル、三井化学社製〉をキシレン3mLに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスを、アプリケーターを用いて、実施例3と同様に作製した無機層の上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で80℃30分間、その後120℃に昇温して2時間加熱して樹脂層を作製し、積層体を得た。
【0206】
実施例および比較例により得られた積層体について以下の評価をそれぞれおこなった。
<評価方法>
(1)酸素透過率[ml/(m
2・day・atm)]
得られた積層体の酸素透過率を、モコン社製OX−TRAN2/20を用いて、JIS K 7126に準じ、温度23℃、湿度90%RHの条件で測定した。
【0207】
(2)水蒸気透過率[g/(m
2・day)]
得られた積層体の水蒸気透過率をセンテック社製Ca腐食法水蒸気透過試験装置US710を用いて測定した。積層体片面にカルシウムを真空蒸着した後、さらに続いてカルシウムを完全にカバーするようにアルミニウムを1000nmの厚さで真空蒸着し、蒸着面に耐温熱性のある接着材を用いてガラス板と貼り合わせてサンプルを作製した。サンプルは温度60℃、湿度90%RHの雰囲気に120時間置き、積層体のカルシウム/アルミニウム被覆面の反対側から透過してきた水蒸気とカルシウムとの反応によって形成される水酸化カルシウムの腐食スポットを試験装置で観察し、腐食スポットの面積の経時での増加率から水蒸気透過量を計算した。
【0208】
(3)碁盤目剥離試験による接着強度評価
積層体の表面をカッターを使用して碁盤目状に軽くキズを付けた。さらにこれにセロハンテープを接着した後、剥離した。剥離後の積層体表面を光学顕微鏡にて観察し、積層体の樹脂層の剥離度合いを以下の式により評価した。X/100の数値が高いほど、接着強度は高いことを意味する。
剥離度数=X / 100
X: 剥離後に残った切片の数、100碁盤目の数(10×10)
以上の結果を表1に示す。
【0209】
【表1】
【0210】
表1に示すように、実施例1〜3は、比較例1,2と比較して、バリア性に優れていた。実施例1〜3は、接着強度も優れていた。