【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アンテナを介して受信されたOFDM信号の直交検波およびAD変換後の前記受信信号が、前記補正部と前記フィルタリング部に入力され、前記補正部により補正された信号がフーリエ変換部へ出力される、
請求項1記載の受信装置。
【背景技術】
【0002】
これまで、IEEE802.11における無線LAN規格の取り組みとしては、屋内通信をメインターゲットとし、物理層の規格として802.11b(最大11Mbps)、802.11a、11g(最大54Mbps)、802.11n(最大600Mbps)、及び、802.11ac(最大6.9Gbps)等と主に伝送容量の増大を主点とした規格の追加が続いている。一方、スマートグリットを実現するためのスマートメータの検討が本格化しているのに伴い、屋外における低レート・長距離伝送の必要性も高まってきている。このような用途に向けた特定小電力無線の使用可能な周波数の割り当てなどの議論も続いている。これらの背景から、サブGHz帯(1GHzよりやや低い周波数帯)を用いた新たな通信規格策定へ向けた検討が始まり、IEEE802.11においても1GHz以下の周波数帯を用いた無線LAN規格を検討内容としたタスクグループであるTGah(802.11ah)が2010年に立ち上がっている。TGah(802.11ah)における主な要求仕様は、「データレート100kbps以上・最大伝送距離1km」である。
【0003】
TGah(802.11ah)を含めて、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用いるIEEE802.11a以降の規格では、パケット先頭のプリアンブルを用いて各種同期を確立してバースト通信が行われる。プリアンブルは、AGC(Automatic Gain Control)又は粗調整のAFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)に用いられるSTF(Short Training Field。ショートプリアンブルと称されることもある)と、微調整のAFC又は伝送路特性の推定に用いられるLTF(Long Training Field。ロングプリアンブルと称されることもある)とで構成される。また、STFには、時間領域において、STS(Short Training Symbol)が10シンボル繰り返して配置され、LTFには、時間領域においてLTS(Long Training Symbol)が2シンボル繰り返して配置される。
【0004】
通常、OFDM等のデジタル伝送では、受信側で生成される搬送波周波数(キャリア周波数)と、送信側の搬送波周波数とが一致することはないため、受信側は、キャリア周波数の誤差(キャリア周波数誤差)を検出して、キャリア周波数を補正するAFCを行う必要がある。キャリア周波数誤差は、受信信号のコンスタレーションのサンプル毎の位相回転として現れる。
【0005】
例えば、非特許文献1には、802.11aにおけるキャリア周波数誤差の検出及び補正の方式として、STF及びLTFから構成されるプリアンブルを用いてAFCを行う方法が開示されている。具体的には、STF又はLTFの繰り返し配置を利用して、受信信号と、受信信号を繰り返し周期(1シンボル分の時間)だけ遅延させた信号との自己相関演算を行い、得られた信号の角度成分(位相成分)を求めることでキャリア周波数誤差が検出される。
【0006】
図9は、非特許文献1に開示された方法を適用したAFC部10の構成を示している。
【0007】
相関演算部1は、STSの繰り返し配置を利用して相関演算を行う。具体的には、相関演算部1は、STF内の或る時刻のSTSと、繰り返し周期(1STSに相当する時間)だけ遅延させたSTSとの相関演算を行う。検出部2は、相関演算部1の相関結果から得られる位相成分を、繰り返し周期分の時間経過による位相回転量、つまり、キャリア周波数誤差として検出する。補正部3は、検出部2で得られたキャリア周波数誤差を用いてキャリア周波数の補正を行う。
【0008】
ここで、一般的なキャリア周波数誤差の検出方法(相関演算部1及び検出部2の処理)について説明する。ここでは、STFにおいて繰り返し配置されるSTSのうち、n番目のSTSを式(1)又は(2)で表す。式(1)においてA
nはSTSの振幅を表す。
【数1】
【数2】
【0009】
この場合、n番目のSTS(STS
n)に対して、繰り返し周期S(1STSに相当する時間)だけ遅延させたSTSは、式(3)に示すように、n+1番目のSTS(STS
n+1)に相当する。
【数3】
【0010】
ここで、例えば、周期Sの時間経過毎に位相量δ[degree]だけ位相が回転するキャリア周波数誤差が受信信号に含まれる場合、式(1)に示すSTS
nは次式(4)で表される。
【数4】
【0011】
よって、n番目のSTS(STS
n)と、n+1番目のSTS(STS
n+1)との自己相関演算(STS
nとSTS
n+1の複素共役との複素乗算、又は、STS
n+1とSTS
nの複素共役との複素乗算)の結果は、式(5)で表される。
【数5】
【0012】
式(5)に示す相関演算結果における位相成分(角度成分)のみを抽出することにより、時間経過による位相回転量δ、すなわち、キャリア周波数誤差が検出される。
【0013】
以上、一般的なキャリア周波数誤差の検出方法について説明した。
【0014】
また、特許文献1には、通信開始時の初期パケットを用いて、送信側と受信側との間のキャリア周波数誤差を検出し、後続のパケット受信時にそのキャリア周波数誤差を用いてキャリア周波数を補正する方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、802.11aの時間領域におけるパケット構成を示す。
図1に示すように、先頭のショートプリアンブル(STF)には、周期SのSTS(固定パターン)が10回繰り返して配置される。ショートプリアンブルに後続するロングプリアンブル(LTF)には、周期LのLTS(固定パターン)が2回繰り返して配置される。なお、STSとLTSとの間のLTF部分には、ガードインターバル(GI:Guard Interval)が付加される。また、ロングプリアンブルの後には、ペイロード(DATA)部分を復調するための情報(変調方式等)を伝送するための領域(SIG)が配置され、SIGの後にペイロード(DATA)を伝送するための領域が配置される。なお、802.11ahでも、各部の繰り返し数が変更される可能性があるものの、基本的に、
図1に示す802.11aのパケット構成と同じ構成が用いられる。
【0025】
図2は、802.11aのパケットを構成するOFDMシンボルのサブキャリア配置の一例を示す。
図2において横軸は周波数領域に対応したサブキャリア方向を表し、縦軸は時間領域に対応したシンボル方向を表す。また、
図2において、ハッチングされたブロックは、予め定められた振幅及び位相を有し、送受信側で既知であるパイロット信号が割り当てられるリソースを表し、白色のブロックは、データが割り当てられるリソースを表す。
【0026】
図2に示すように、STFでは、パイロット信号が4サブキャリア間隔で多重され、有効シンボル長の1/4時間のシンボル長を有するSTSを10個連続したもので構成され、データシンボルの2シンボル分の時間に相当する。LTFでは、パイロット信号が中央のDC成分(直流成分)のサブキャリア(DCサブキャリア)を除く全サブキャリアに多重されており、「SIG」及び「DATA」では、特定のサブキャリアにパイロット信号が多重され、上記パイロット信号が割り当てられたサブキャリア以外のサブキャリアに制御信号又はデータ信号が多重されている。
【0027】
図3Aは、STF内のサブキャリア配置を示し、
図3BはSTF以外のシンボル(LTF、SIG、DATA)のサブキャリア配置を示す。
図3Aに示すように、STFでは、パイロット信号の送信に使用されるサブキャリア(以下、パイロットサブキャリアと称する)は4キャリア間隔(ただし、DCサブキャリアを除く)で配置されている。つまり、STFにおいてパイロットサブキャリアは間欠に配置される。また、各パイロットサブキャリア間には信号の送信に使用されないサブキャリア(以下、ヌルサブキャリアと称する)が配置される。つまり、STFは、伝送帯域内に所定の周波数間隔で交互に配置される複数のパイロットサブキャリアおよび複数のヌルサブキャリアを有する。
【0028】
これに対して、
図3Bに示すように、STF以外のシンボルでは、全てのサブキャリア(ただし、DC成分のサブキャリアを除く)が信号(データ信号、制御信号又はパイロット信号)の送信に使用される。
【0029】
図4は、本実施の形態に係るOFDM受信装置100の要部構成を示したブロック図である。
図4に示すOFDM受信装置100において、フィルタリング部151は、複数のパイロットサブキャリアが、周波数領域において間欠的に、且つ、時間領域において繰り返し配置されるショートプリアンブル(STF)を含む受信信号を入力し、複数のパイロットサブキャリアのうち周波数領域において隣接する各2個のパイロットサブキャリアの間の周波数成分を減衰させる。補正部154は、フィルタリング部151を通過した複数のパイロットサブキャリアの信号に基づき受信信号のキャリア周波数誤差を補正する。
【0030】
[OFDM受信装置100の構成]
図5は、本実施の形態に係るOFDM受信装置100の構成を示したブロック図である。
図5に示すOFDM受信装置100は、アンテナ101、LNA(Low Noise Amplifier)102、直交検波部103、AD変換部104、AFC部105、FFT(Fast Fourier Transform)部106、等化部107、軟判定部108、誤り訂正部109から構成される。
【0031】
LNA102は、OFDM送信装置(図示せず)から送信された信号(
図1又は
図2参照)を、アンテナ101を介して受信し、受信信号に対して、所定レベルの増幅を施し、増幅後の信号を直交検波部103に出力する。
【0032】
直交検波部103は、LNA102から受け取る信号に対して、予め定められた周波数で直交検波を行い、所望の受信チャネルに配置されたOFDM信号を複素ベースバンド信号(アナログ信号)としてAD変換部104に出力する。
【0033】
AD変換部104は、直交検波部103から受け取る複素ベースバンド信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、デジタル値となった複素ベースバンド信号を、AFC部105に出力する。
【0034】
AFC部105は、AD変換部104から受け取る複素ベースバンド信号のうち、STFの信号を用いて、複素ベースバンド信号のキャリア周波数誤差を検出する。次いで、AFC部105は、検出したキャリア周波数誤差に基づいて、複素ベースバンド信号に対してキャリア周波数補正を施し、補正後の複素ベースバンド信号をFFT部106に出力する。なお、AFC部105におけるキャリア周波数誤差の検出方法の詳細については後述する。
【0035】
FFT部106は、AFC部105から受け取る複素ベースバンド信号のうち、所定の窓位置の有効OFDMシンボル期間に対応する部分を抽出して得られた信号を、時間領域から周波数領域へフーリエ変換する。FFT部106は、フーリエ変換後の信号を、等化部107に出力する。
【0036】
等化部107は、FFT部106から受け取る信号(例えばLTF内のパイロット信号)から推定される伝送路特性を用いて、データ信号に対して、振幅及び位相の補正(等化)を施し、等化後の信号を復調データ信号として軟判定部108に出力する。
【0037】
軟判定部108は、等化部107から受け取る復調データ信号に対して軟判定を行う。
【0038】
誤り訂正部109は、軟判定部108から受け取る軟判定値の尤度に従い、伝送誤りを訂正し、受信データを得る。
【0039】
[AFC部105の動作]
図5に示すAFC部105におけるキャリア周波数誤差の検出方法の詳細について説明する。
【0040】
図6は、AFC部105の内部構成を表すブロック図である。
図6に示すAFC部105は、フィルタリング部151、相関演算部152、検出部153及び補正部154から構成される。なお、相関演算部152、検出部153及び補正部154の動作は、
図9に示す相関演算部1、検出部2及び補正部3の動作と同一である。
【0041】
図6に示すAFC部105では、アンテナ101を介して受信されたOFDM信号の直交検波およびAD変換後の受信信号(複素ベースバンド信号)が、補正部154とフィルタリング部151に入力される。つまり、AFC部105は、AD変換部104から受け取る複素ベースバンド信号(受信信号)を分岐させる分岐部を備え、分岐された一方の受信信号がフィルタリング部151へ送られ、分岐された他方の受信信号が補正部154へ送られる。また、補正部154により補正された信号がFFT部106へ出力される。
【0042】
具体的には、AFC部105において、フィルタリング部151は、AD変換部104から受け取る複素ベースバンド信号のSTFにおいて、フィルタリング処理を行う。具体的には、フィルタリング部151は、複数のパイロットサブキャリアが、周波数領域において間欠的に、且つ、時間領域において繰り返し配置されるSTFを含む複素ベースバンド信号を入力し、複数のパイロットサブキャリアのうち周波数領域において隣接する各2個のパイロットサブキャリアの間の周波数成分を減衰させる。換言すると、フィルタリング部151は、STF内のパイロットサブキャリアの信号成分を通過させ、伝送帯域内のパイロットサブキャリア以外のサブキャリア(ヌルサブキャリア)の信号成分を低減させるフィルタリング処理を行う。例えば、フィルタリング部151は、コムフィルタ(comb filter)である。
【0043】
図7は、フィルタリング部151におけるフィルタリング処理の一例を示す。
図7に示すように、パイロットサブキャリアのサブキャリア番号は-24,-20,-16,-12,-8,-4,4,8,12,16,20,24である。
図7に示すように、フィルタリング部151のフィルタ特性は、パイロットサブキャリアに対応する信号成分を通過させ、かつ、パイロットサブキャリア以外のサブキャリアの信号成分(つまり、雑音成分)を抑圧するように設定される。
【0044】
相関演算部152は、フィルタリング部151を通過した信号を入力し、時間領域において繰り返し配置される信号(STS)の相関演算を行う。具体的には、相関演算部152は、STF内の或る時刻のSTSと、繰り返し周期Sだけ遅延させたSTSとの自己相関演算を行う。上述したように、相関演算部152は、STF内のパイロットサブキャリア以外の信号成分が抑圧された信号を用いて、相関演算を行うことができる。これにより、パイロットサブキャリア以外のサブキャリアの信号成分(雑音成分)の影響に起因する、相関演算結果の位相成分(角度成分)の誤差は小さくなる。
【0045】
検出部153は、相関演算部152における相関演算結果に基づいて受信信号のキャリア周波数誤差を検出する。具体的には、検出部153は、相関演算部152の相関結果の位相成分を、キャリア周波数誤差(位相回転量)として検出する。
【0046】
補正部154は、検出部153で得られたキャリア周波数誤差を用いてキャリア周波数の補正を行う。つまり、補正部154は、フィルタリング部151を通過した複数のパイロットサブキャリアの信号に基づき受信信号のキャリア周波数誤差を補正する。
【0047】
次に、
図8は、コムフィルタを用いた場合のフィルタリング部151の内部構成を表すブロック図である。
図8に示すフィルタリング部151は、遅延部511、加算部512及び調整部513から構成される。
【0048】
フィルタリング部151において、遅延部511は、入力された信号(つまり、OFDM信号の直交検波後の信号)を遅延させる。具体的には、遅延部511は、AD変換部104から受け取る信号に対して周期S(ショートプリアンブルにおける1シンボルに相当する時間)だけ遅延させ、遅延させた信号を加算部512に出力する。
【0049】
加算部512は、遅延部511による遅延後の信号と、遅延前の信号とを加算する。具体的には、加算部512は、AD変換部104から受け取る信号のSTF内のSTSと、遅延部511から受け取る遅延された信号のSTF内のSTSとを加算し、加算結果を調整部513に出力する。つまり、加算部512では、n番目のSTS(STS
n)と、n+1番目のSTS(STS
n+1)とが加算される。
【0050】
調整部513は、加算部512から受け取る加算結果の振幅(ゲイン)を調整し、調整後の信号(つまり、フィルタリング後の信号)を相関演算部152に出力する。
【0051】
ここで、STFでは、周波数領域において、複数のパイロットサブキャリアが4サブキャリア間隔で間欠的に配置され、時間領域において、有効シンボル長の1/4時間のシンボル長(周期Sに相当)を有するSTSが10個繰り返し配置される(
図2参照)。よって、遅延部511における受信信号の遅延時間を周期Sに相当する時間とすることで、コムフィルタのフィルタ特性は、
図7に示すように、4サブキャリア間隔(隣接する各2個のパイロットサブキャリア間隔)でピークが現れる特性となる。
【0052】
また、
図8に示すフィルタリング部151のフィルタリング処理は、次式(6)で表される。
【数6】
【0053】
式(6)において、b(t)はn番目のSTS(STS
n)におけるフィルタリング後の信号を表す。
【0054】
一般に、信号処理において式(6)に示す演算を行うことは、マルチパス妨害を自ら発生させることに等しい。しかし、AFC部105におけるキャリア周波数誤差の検出のように、受信信号(STS)の複素平面上における時間経過による位相回転量のみを抽出する場合には、上記マルチパス妨害の影響は受けない。以下、キャリア周波数誤差の検出の際、フィルタリングによる上記マルチパス妨害の影響を受けないことについて詳細に説明する。なお、以下の説明では、繰り返し配置される各STSの振幅は等しいものとする(つまり、式(7)を満たす)。
【数7】
【0055】
フィルタリング部151によってフィルタリングされた後のSTFにおける、n番目のSTS(STS
n)と、n+1番目のSTS(STS
n+1)との相関演算は、式(8)で表される。
【数8】
【0056】
式(8)に示すように、コムフィルタによるフィルタリング後のSTFを用いた相関演算結果においても、式(5)と同様、位相成分には、位相回転量δのみが現れる。つまり、フィルタリングされたSTSに対して相関演算を行う場合でも、位相成分(角度成分)のみを抽出することにより、キャリア周波数誤差δを求められることが分かる。すなわち、AFC部105は、STFに対するフィルタリング(コムフィルタ)を適用した後にキャリア周波数誤差を検出する場合でも、当該フィルタリングによって生じるマルチパス妨害などの影響を受けることなく、キャリア周波数誤差を検出することができる。
【0057】
また、上述したように、STFにおいて、パイロットサブキャリアは4サブキャリア間隔で配置され、パイロットサブキャリア以外はヌルサブキャリアである。すなわち、各パイロットサブキャリアの両端には、それぞれ3つのヌルサブキャリアが配置されている。これに対して、STF以外のシンボル(例えば、
図3B)では、信号が割り当てられるサブキャリアが連続して配置されている。つまり、STFの各シンボルにおけるパイロットサブキャリアの間隔は、STS以外のシンボルにおいて送信に使用されサブキャリア間隔と比較して広い。よって、
図7に示すように、パイロットサブキャリアの信号成分を通過させるフィルタリング処理を行うことで、当該パイロットサブキャリア周辺のサブキャリアにおいて信号成分が抑圧されても、他の信号に影響を及ぼすことが無い。換言すると、STFでは、フィルタリング処理により信号成分が通過するパイロットサブキャリア周辺のサブキャリアの信号成分は、雑音成分のみが含まれる。よって、OFDM受信装置100は、STFに対するフィルタリング処理において、受信性能を劣化させることなく、雑音成分のみを抑圧することができる。
【0058】
また、
図8に示すように、遅延部511、加算部512及び調整部513という簡易な構成のコムフィルタを用いて、STFにおいてパイロットサブキャリア間の信号成分(雑音成分)を低減させることができる。
【0059】
このように、本実施の形態によれば、OFDM受信装置100は、パイロットサブキャリアの成分のみを通過させるフィルタリングを適用したSTFを用いてキャリア周波数誤差を検出する。こうすることで、雑音の影響が強い受信環境下でも、パイロットサブキャリア間の雑音成分を抑圧することができ、その結果、相関演算により得られる位相成分(角度成分)の誤差が大きくなることを防ぐことができる。よって、本実施の形態によれば、雑音の影響が強い環境でも、雑音の影響を低減してキャリア周波数誤差の検出精度を向上することができ、AFCの精度を向上させることができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、自己相関演算において受信信号(STS)を繰り返し周期Sだけ遅延させる場合(つまり、時間シフトの遅延量:1シンボル)について説明した。しかし、自己相関演算における受信信号の時間シフトの遅延量は、1シンボルに限らず、Nシンボル(Nは繰り返し回数以下の自然数。例えば
図2では、繰り返し回数=10)であってもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、相関演算部152で行う相関演算として、受信信号と受信信号を時間シフト(遅延)させた信号とを用いて行う自己相関演算について説明した。しかし、相関演算部152で行う相関演算は、これに限らず、例えば、AFCに用いるプリアンブル信号が送受信間で既知である場合には、受信信号のプリアンブル信号のパターンと、受信側で生成したプリアンブル信号のパターンとの相互相関であってもよい。
【0062】
また、本実施の形態で説明したフィルタリング部151の一例として、コムフィルタを用いる場合について説明した。しかし、フィルタリング部151の実現方法としては、必ずしもコムフィルタを用いる場合に限らず、パイロットサブキャリアの信号成分を通過させ、パイロットサブキャリア以外のヌルサブキャリアの信号成分を低減させるフィルタリングであればよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、802.11の伝送フォーマット(
図2)を用いる場合について説明した。しかし、上記実施の形態では、伝送フォーマットは、パイロットサブキャリアとヌルサブキャリアとからなるプリアンブルを含むものであればよく、802.11の伝送フォーマットに限定されるものではない。
【0064】
また、上記実施の形態では、
図5において、直交検波部103の後にAD変換部104を備える構成(直交検波後にAD変換を行う構成)について説明したが、これに限らず、AD変換後に直交検波を行う構成としてもよい。また、
図5に示す等化部107よりも後段の構成として、デマップ部、デインタリーブ部及び誤り訂正部を備える構成としてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態の説明に用いたOFDM受信装置の各構成要素(機能ブロック)は、集積回路であるLSIとして実現してもよい。このとき、各構成要素は、個別に1チップ化されてもよいし、一部もしくは全てを含むように1チップ化されてもよい。また、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0066】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセサを利用してもよい。
【0067】
さらに、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあげられる。
【0068】
また、上記実施の形態で示したOFDM受信装置の動作の手順の少なくとも一部をプログラムに記載し、例えばCPU(Central Processing Unit)がメモリに記憶された当該プログラムを読み出して実行するようにしてもよいし、上記プログラムを記録媒体に保存して頒布等するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態のOFDM受信装置は、記載した受信処理の少なくとも一部を行う受信方法を用いて実現してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態を実現する受信処理の一部を行ういかなる受信装置、受信方法、受信回路、又はプログラムを組み合わせて上記実施の形態を実現してもよい。例えば、上記実施の形態で説明した受信装置の構成の一部を受信装置又は集積回路で実現し、その一部を除く構成が行う動作の手順を受信プログラムに記載し、例えばCPUがメモリに記憶された当該プログラムを読み出して実行することによって実現してもよい。