(54)【発明の名称】三次元網状アルミニウム多孔体及び該アルミニウム多孔体を用いた電極並びに該電極を用いた非水電解質電池、非水電解液を用いたキャパシタ及びリチウムイオンキャパシタ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、巻き出しと、調厚工程と、リード溶接工程と、活物質充填工程と、乾燥工程と、圧縮工程と、切断工程と、巻き取りとを有する電極の製造方法であって、基材として請求項1又は請求項2に記載の電極用の三次元網状アルミニウム多孔体を用いることを特徴とする電極の製造方法。
【背景技術】
【0002】
三次元網目構造を有する金属多孔体は、各種フィルタ、触媒担体、電池用電極など多方面に用いられている。例えば三次元網目状ニッケル多孔体(以下「ニッケル多孔体」という)からなるセルメット(住友電気工業(株)製:登録商標)がニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の電池の電極材料として使用されている。セルメットは連通気孔を有する金属多孔体であり、金属不織布など他の多孔体に比べて気孔率が高い(90%以上)という特徴がある。これは発泡ウレタン等の連通気孔を有する多孔体樹脂の骨格表面にニッケル層を形成した後、熱処理して発泡樹脂成形体を分解し、さらにニッケルを還元処理することで得られる。ニッケル層の形成は、発泡樹脂成形体の骨格表面にカーボン粉末等を塗布して導電化処理した後、電気めっきによってニッケルを析出させることで行われる。
【0003】
一方、ニッケルと同様にアルミニウムも導電性、耐腐食性、軽量などの優れた特徴があり、電池用途では例えば、リチウム電池の正極として、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム等の活物質を塗布したものが使用されている。そして正極の容量を向上するためには、アルミニウムの表面積を大きくした三次元網目状アルミニウム多孔体(以下「アルミニウム多孔体」という)を用い、アルミニウム内部にも活物質を充填することが考えられる。このようにすると電極を厚くしても活物質を利用でき、単位面積当たりの活物質利用率が向上するからである。
【0004】
アルミニウム多孔体の製造方法として、特許文献1には、内部連通空間を有する三次元網状のプラスチック基体にアークイオンプレーティング法によりアルミニウムの蒸着処理を施して、2〜20μmの金属アルミニウム層を形成する方法が記載されている。
この方法によれば、2〜20μmの厚さのアルミニウム多孔体が得られるとされているが、気相法によるため大面積での製造は困難であり、基体の厚さや気孔率によっては内部まで均一な層の形成が難しい。またアルミニウム層の形成速度が遅い、設備が高価などにより製造コストが増大するなどの問題点がある。さらに、厚膜を形成する場合には、膜に亀裂が生じたりアルミニウムの脱落が生じたりするおそれがある。
【0005】
また、特許文献2には、三次元網目状構造を有する発泡樹脂成形体の骨格にアルミニウムの融点以下で共晶合金を形成する金属(銅等)による皮膜を形成した後、アルミニウムペーストを塗布し、非酸化性雰囲気下で550℃以上750℃以下の温度で熱処理をすることで有機成分(発泡樹脂)の消失及びアルミニウム粉末の焼結を行い、アルミニウム多孔体を得る方法が記載されている。
しかしながら、この方法によればアルミニウムと共晶合金を形成する層が出来てしまい、純度の高いアルミニウム層が形成できない。
【0006】
他の方法としては、アルミニウムめっきを三次元網目状構造を有する発泡樹脂成形体に施すことが考えられる。アルミニウムの電気めっき方法自体は知られているが、アルミニウムのめっきは、アルミニウムの酸素に対する親和力が大きく、電位が水素より低いために水溶液系のめっき浴で電気めっきを行うことが困難である。このため、従来よりアルミニウムの電気めっきは非水溶液系のめっき浴で検討が行われている。例えば、金属表面の酸化防止などの目的でアルミニウムをめっきする技術として、特許文献3にはオニウムハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物とを混合溶融した低融点組成物をめっき浴として用い、浴中の水分量を2質量%以下に維持しながら陰極にアルミニウムを析出させることを特徴とする電気アルミニウムめっき方法が開示されている。
しかしながら、アルミニウムの電気めっきについては金属表面へのめっきが可能であるのみで、樹脂成形体表面への電気めっき、とりわけ三次元網目構造を有する樹脂成形体の表面に電気めっきする方法は知られていなかった。
【0007】
本発明者等は三次元網目構造を有するウレタン樹脂成形体の表面にアルミニウムの電気めっきを施す方法について鋭意検討したところ、少なくとも表面が導電化されたウレタン樹脂成形体に、アルミニウムを溶融塩浴中でめっきすることによりめっきが可能であることを見出して、アルミニウム多孔体の製造方法を完成した。この製造方法によると、骨格の芯としてウレタン樹脂成形体を有するアルミニウム構造体が得られる。各種フィルタや触媒担体などの用途によっては、このまま樹脂と金属の複合体として使用しても良いが、使用環境の制約などから、樹脂が無い金属構造体として用いる場合には樹脂を除去してアルミニウム多孔体とする必要がある。
樹脂の除去は、有機溶媒、溶融塩、又は超臨界水による分解(溶解)、加熱分解等任意の方法で行うことができる。
ここで、高温での加熱分解等の方法は簡便であるが、アルミニウムの酸化を伴う。アルミニウムはニッケル等と異なり、一旦酸化すると還元処理が困難であるため、たとえば電池等の電極材料として使用する場合には、酸化により導電性が失われることから用いることが出来ない。そこで、本発明者等はアルミニウムの酸化が起こらないようにして樹脂を除去する方法として、多孔質樹脂成形体の表面にアルミニウム層を形成してなるアルミニウム構造体を溶融塩に浸漬した状態で、該アルミニウム層に負電位を印加しながらアルミニウムの融点以下の温度に加熱して多孔質樹脂成形体を熱分解して除去することによってアルミニウム多孔体を製造する方法を完成した。
【0008】
ところで、上記のようにして得られたアルミニウム多孔体を電極として使用するためには、アルミニウム多孔体に
図1に示すようなプロセスで、アルミニウム多孔体にリード線を取り付けて集電体とし、この集電体としてのアルミニウム多孔体に活物質を充填し、圧縮、切断等の処理を施す必要があるが、アルミニウム多孔体から非水電解質電池及びキャパシタ等の電極を工業的に製造するための実用化技術はまだ知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る三次元網状アルミニウム多孔体は、少なくとも、巻き出しと、調厚工程と、リード溶接工程と、活物質充填工程と、乾燥工程と、圧縮工程と、切断工程と、巻き取りとを有する電極の製造方法において基材として用いられる長尺シート状の三次元網状アルミニウム多孔体であって、引張強度が0.5MPa以上、5MPa以下であることを特徴とする。
非水電解質電池(リチウム電池等)及びキャパシタもしくはリチウムイオンキャパシタ用の電極を工業的に連続的に製造するためには長尺シート状の金属多孔体を使用する必要がある。このため、本発明の三次元網状アルミニウム多孔体は、電極の工業的生産に対応すべくシート上の細長い形状であることを特徴とする。すなわち本発明の三次元網状アルミニウム多孔体の形状は、電極を連続的に製造するラインに応じて適宜変更可能であり、このような一連の工程に利用可能な長尺シート状の形状であればよく、特に寸法が限定されるものではない。例えば、1m幅×200m長さ×1mm厚さとすることができる。
【0015】
一般に、電極を連続的に生産するためには、
図1に示すように長尺シート状の金属多孔体をロールから巻き出し、各工程を経た後に再びロールに巻き取る必要があるが、この一連の過程において金属多孔体は一定の力で引っ張られながら搬送される。特に、充填、圧延工程において強く引っ張られるため、金属多孔体にある程度の引張強度がないと破断してしまうという問題が生じる。このため本発明の三次元網状アルミニウム多孔体は、電極の連続的製造工程に利用できるように、0.2MPa以上、5MPa以下の引張強度を有することを特徴とする。
【0016】
引張強度が0.2MPa未満であると、電極を連続的に製造する工程において破断する可能性が高くなる。逆に、引張強度が5MPaを超える場合には、アルミニウム多孔体を曲げにくくなり、ロール状に巻き取れなくなるため好ましくない。これらの観点から、アルミニウム多孔体の引張強度は、0.2MPa以上、4MPa以下であることがより好ましく、0.3〜2.5MPaであることが更に好ましく、0.5〜1.2MPaであることが最も好ましい。
引張強度が0.2MPa以上のアルミニウム多孔体を得るためには、後述するアルミニウム多孔体の製造工程において、アルミニウムめっき条件(温度、時間、電流等)を調整したり、炭素含有量を調整することにより達成することができる。
【0017】
また、本発明に係る三次元網状アルミニウム多孔体は、結晶平均粒径が1μm以上、100μm以下であることが好ましい。アルミニウム多孔体の結晶平均粒径が1μm未満の場合には延性が低下して加工性が悪くなる場合がある。逆に結晶平均粒径が100μmを超える場合には、機械強度が低下してしまう場合がある。これらの観点からアルミニウム多孔体の結晶平均粒径は2μm以上、10μm以下であることがより好ましく、3μm以上、8μm以下であることが更に好ましい。
アルミニウム多孔体の結晶平均粒径は、後述するアルミニウム多孔体の製造工程において、アルミニウムめっき条件(温度、時間、電流等)を調整することにより調整することができる。
【0018】
アルミニウム多孔体の結晶平均粒径は、FIB(集束イオンビーム)により加工した後、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察することにより測定することができる。より具体的には、例えば
図2に示すようなSEMでのアルミニウム多孔体の観察写真において、アルミニウム多孔体の骨格中にSEMのスケールと同じ長さの線を引き、その線にかかる結晶粒の数をカウントし、スケールの長さを結晶粒の数で割る(スケールの長さ/結晶粒の数)ことにより計算する。この手順を1枚の写真中の異なるポイントで5回行い、その平均値を結晶平均粒径とする。
【0019】
本発明に係る三次元網状アルミニウム多孔体は、炭素を0.05g/m
2以上、20g/m
2以下含有していることが好ましい。アルミニウム多孔体が炭素を0.05g/m
2以上含有することによりアルミニウム多孔体の機械的強度を高めることができる。一方、逆に炭素を20g/m
2を超えて含有する場合には、アルミニウム多孔体の加工性が悪化し、曲げたときに割れの起点となる可能性が高くなるため好ましくない。また、アルミニウム多孔体の溶接性が悪くなる場合もある。これらの観点から、炭素を0.1g/m
2以上、10g/m
2以下含有することがより好ましく、0.2g/m
2以上、5g/m
2以下含有することが更に好ましい。
後述するように、アルミニウム多孔体を製造する際に出発材料として発泡ウレタン等の三次元網状樹脂成形体を使用し、当該樹脂成形体の除去条件を調整(温度、時間等)することにより、最終製品としてのアルミニウム多孔体に含有される炭素の量を調節することができる。
【0020】
以下に、本発明に係る三次元網状アルミニウム多孔体を製造する方法について述べる。以下ではウレタン樹脂成形体の表面にアルミニウム膜を形成する方法としてアルミめっき法を適用する例を代表例として適宜図を参照して説明する。以下で参照する図面で同じ番号が付されている部分は同一またはそれに相当する部分である。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
(アルミニウム構造体の製造工程)
図3は、アルミニウム構造体の製造工程を示すフロー図である。また
図4は、フロー図に対応して樹脂成形体を芯材としてアルミニウムめっき膜を形成する様子を模式的に示したものである。両図を参照して製造工程全体の流れを説明する。まず基体となる樹脂成形体の準備101を行う。
図4(a)は、基体となる樹脂成形体の例として、連通気孔を有する樹脂成形体の表面を拡大視した拡大模式図である。樹脂成形体1を骨格として気孔が形成されている。次に樹脂成形体表面の導電化102を行う。この工程により、
図4(b)に示すように樹脂成形体1の表面には薄く導電体による導電層2が形成される。
続いて溶融塩中でのアルミニウムめっき103を行い、導電層が形成された樹脂成形体の表面にアルミニウムめっき層3を形成する(
図4(c))。これで、樹脂成形体を基材として表面にアルミニウムめっき層3が形成されたアルミニウム構造体が得られる。基体である樹脂成形体については、樹脂成形体の除去104を行う。
樹脂成形体1を分解等して消失させることにより金属層のみが残ったアルミニウム構造体(多孔体)を得ることができる(
図4(d))。以下各工程について順を追って説明する。
【0022】
(多孔質樹脂成形体の準備)
三次元網目構造を有し連通気孔を有する多孔質樹脂成形体を準備する。多孔質樹脂成形体の素材は任意の樹脂を選択できる。ポリウレタン、メラミン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の発泡樹脂成形体が素材として例示できる。発泡樹脂成形体と表記したが、連続した気孔(連通気孔)を有するものであれば任意の形状の樹脂成形体を選択できる。例えば繊維状の樹脂を絡めて不織布のような形状を有するものも発泡樹脂成形体に代えて使用可能である。発泡樹脂成形体の気孔率は80%〜98%、気孔径は50μm〜500μmとするのが好ましい。発泡ウレタン及び発泡メラミンは気孔率が高く、また気孔の連通性があるとともに熱分解性にも優れているため発泡樹脂成形体として好ましく使用できる。
発泡ウレタンは気孔の均一性や入手の容易さ等の点で好ましく、発泡ウレタンは気孔径の小さなものが得られる点で好ましい。
【0023】
多孔質樹脂成形体には発泡体製造過程での製泡剤や未反応モノマーなどの残留物があることが多く、洗浄処理を行うことが後の工程のために好ましい。多孔質樹脂成形体の例として、発泡ウレタンを前処理として洗浄処理したものを
図5に示す。樹脂成形体が骨格として三次元的に網目を構成することで、全体として連続した気孔を構成している。発泡ウレタンの骨格はその延在方向に垂直な断面において略三角形状をなしている。ここで気孔率は、次式で定義される。
気孔率=(1−(多孔質材の重量[g]/(多孔質材の体積[cm
3]×素材密度)))×100[%]
また、気孔径は、樹脂成形体表面を顕微鏡写真等で拡大し、1インチ(25.4mm)あたりの気孔数をセル数として計数して、平均孔径=25.4mm/セル数として平均的な値を求める。
【0024】
(樹脂成形体表面の導電化)
電解めっきを行うために、発泡樹脂の表面をあらかじめ導電化処理する。樹脂成形体の表面に導電性を有する層を設けることができる処理である限り特に制限はなく、ニッケル等の導電性金属の無電解めっき、アルミニウム等の蒸着及びスパッタ、又はカーボン等の導電性粒子を含有した導電性塗料の塗布等任意の方法を選択できる。
導電化処理の例として、アルミニウムのスパッタリング処理によって導電化処理する方法、及び導電性粒子としてカーボンを用いて発泡樹脂の表面を導電化処理する方法について以下述べる。
【0025】
−アルミニウムのスパッタリング−
アルミニウムを用いたスパッタリング処理としては、アルミニウムをターゲットとする限り限定的でなく、常法に従って行えばよい。例えば、基板ホルダーに発泡状樹脂を取り付けた後、不活性ガスを導入しながら、ホルダーとターゲット(アルミニウム)との間に直流電圧を印加することにより、イオン化した不活性ガスをアルミニウムに衝突させて、はじき飛ばされたアルミニウム粒子を発泡状樹脂表面に堆積することによってアルミニウムのスパッタ膜を形成する。なお、スバッタリング処理は発泡状樹脂が溶解しない温度下で行うことが好ましく、具体的には、100〜200℃程度、好ましくは120〜180℃程度で行えばよい。
【0026】
−カーボン塗布−
導電性塗料としてのカーボン塗料を準備する。導電性塗料としての懸濁液は、好ましくは、カーボン粒子、粘結剤、分散剤および分散媒を含む。導電性粒子の塗布を均一に行うには、懸濁液が均一な懸濁状態を維持している必要がある。このため、懸濁液は、20℃〜40℃に維持されていることが好ましい。その理由は、懸濁液の温度が20℃未満になった場合、均一な懸濁状態が崩れ、樹脂成形体の網状構造をなす骨格の表面に粘結剤のみが集中して層を形成するからである。この場合、塗布されたカーボン粒子の層は剥離し易く、強固に密着した金属めっきを形成し難い。一方、懸濁液の温度が40℃を越えた場合は、分散剤の蒸発量が大きく、塗布処理時間の経過とともに懸濁液が濃縮されてカーボンの塗布量が変動しやすい。また、カーボン粒子の粒径は、0.01〜5μmで、好ましくは0.01〜0.5μmである。粒径が大きいと樹脂成形体の空孔を詰まらせたり、平滑なめっきを阻害する要因となり、小さすぎると十分な導電性を確保することが難しくなる。
【0027】
多孔質樹脂成形体へのカーボン粒子の塗布は、上記懸濁液に対象となる樹脂成形体を浸漬し、絞りと乾燥を行うことで可能である。
図6は実用上の製造工程の一例として、骨格となる帯状の樹脂成形体を導電化する処理装置の構成例を模式的に示す図である。図示の如くこの装置は、帯状樹脂11を供給するサプライボビン12と、導電性塗料の懸濁液14を収容した槽15と、槽15の上方に配置された1対の絞りロール17と、走行する帯状樹脂11の側方に対向して設けられた複数の熱風ノズル16と、処理後の帯状樹脂11を巻き取る巻取りボビン18とを備えている。また、帯状樹脂11を案内するためのデフレクタロール13が適宜配置されている。以上のように構成された装置において、三次元網状構造を有する帯状樹脂1は、サプライボビン12から巻き戻され、デフレクタロール13により案内されて、槽15内の懸濁液内に浸漬される。槽15内で懸濁液14に浸漬された帯状樹脂11は、上方に向きを変え、懸濁液14の液面上方の絞りロール17の間を走行する。このとき、絞りロール17の間隔は、帯状樹脂11の厚さよりも小さくなっており、帯状樹脂11は圧縮される。従って、帯状樹脂11に含浸された過剰な懸濁液は、絞り出されて槽15内に戻る。
【0028】
続いて、帯状樹脂11は、再び走行方向を変える。ここで、複数のノズルから構成された熱風ノズル16が噴射する熱風により懸濁液の分散媒等が除去され、充分に乾燥された上で帯状樹脂11は巻取りボビン18に巻き取られる。尚、熱風ノズル16の噴出する熱風の温度は40℃から80℃の範囲であることが好ましい。以上のような装置を用いると、自動的かつ連続的に導電化処理を実施することができ、目詰まりのない網目構造を有し、且つ、均一な導電層を具備した骨格が形成されるので、次工程の金属めっきを円滑に行うことができる。
【0029】
(アルミニウム層の形成:溶融塩めっき)
次に溶融塩中で電解めっきを行い、樹脂成形体表面にアルミニウムめっき層を形成する。溶融塩浴中でアルミニウムのめっきを行うことにより特に三次元網目構造を有する樹脂成形体のように複雑な骨格構造の表面に均一に厚いアルミニウム層を形成することができる。表面が導電化された樹脂成形体を陰極、純度99.0%のアルミニウムを陽極として溶融塩中で直流電流を印加する。溶融塩としては、有機系ハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である有機溶融塩、アルカリ金属のハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である無機溶融塩を使用することができる。比較的低温で溶融する有機溶融塩浴を使用すると、基材である樹脂成形体を分解することなくめっきができ好ましい。有機系ハロゲン化物としてはイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩等が使用でき、具体的には1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EMIC)、ブチルピリジニウムクロライド(BPC)が好ましい。溶融塩中に水分や酸素が混入すると溶融塩が劣化するため、めっきは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、かつ密閉した環境下で行うことが好ましい。
【0030】
溶融塩浴としては窒素を含有した溶融塩浴が好ましく、中でもイミダゾリウム塩浴が好ましく用いられる。溶融塩として高温で溶融する塩を使用した場合は、めっき層の成長よりも樹脂が溶融塩中に溶解や分解する方が早くなり、樹脂成形体表面にめっき層を形成することができない。イミダゾリウム塩浴は、比較的低温であっても樹脂に影響を与えず使用可能である。イミダゾリウム塩として、1,3位にアルキル基を持つイミダゾリウムカチオンを含む塩が好ましく用いられ、特に塩化アルミニウム+1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AlCl
3+EMIC)系溶融塩が、安定性が高く分解し難いことから最も好ましく用いられる。発泡ウレタン樹脂や発泡メラミン樹脂などへのめっきが可能であり、溶融塩浴の温度は10℃から65℃、好ましくは25℃から60℃である。低温になる程めっき可能な電流密度範囲が狭くなり、多孔質樹脂成形体表面全体へのめっきが難しくなる。65℃を超える高温では基材樹脂の形状が損なわれる不具合が生じやすい。
【0031】
金属表面への溶融塩アルミニウムめっきにおいて、めっき表面の平滑性向上の目的でAlCl
3−EMICにキシレン、ベンゼン、トルエン、1,10−フェナントロリンなどの添加剤を加えることが報告されている。本発明者らは特に三次元網目構造を備えた多孔質樹脂成形体上にアルミニウムめっきを施す場合に、1,10−フェナントロリンの添加によりアルミニウム多孔体の形成に特有の効果が得られることを見出した。すなわち、めっき皮膜の平滑性が向上し、多孔体を形成するアルミニウム骨格が折れにくいという第1の特徴と、多孔体の表面部と内部とのめっき厚さの差が小さい均一なめっきが可能であるという第2の特徴が得られるのである。
【0032】
以上の、折れにくい、めっき厚が内外で均一という2つの特徴により、完成したアルミニウム多孔体をプレスする場合などに、骨格全体が折れにくく均等にプレスされた多孔体を得ることができる。アルミニウム多孔体を電池等の電極材料として用いる場合に、電極に電極活物質を充填してプレスにより密度を上げることが行われ、活物質の充填工程やプレス時に骨格が折れやすいため、このような用途では極めて有効である。
【0033】
上記のことから、溶融塩浴に有機溶媒を添加することが好ましく、特に1,10−フェナントロリンが好ましく用いられる。めっき浴への添加量は、0.2〜7g/Lが好ましい。0.2g/L以下では平滑性に乏しいめっきで脆く、また表層と内部の厚み差を小さくする効果が得られ難い。また7g/L以上ではめっき効率が低下し所定のめっき厚を得ることが困難になる。
【0034】
図7は前述の帯状樹脂に対してアルミニウムめっき処理を連続的に行うための装置の構成を模式的に示す図である。表面が導電化された帯状樹脂22が、図の左から右に送られる構成を示す。第1のめっき槽21aは、円筒状電極24と容器内壁に設けられたアルミニウムからなる陽極25およびめっき浴23から構成される。帯状樹脂22は円筒状電極24に沿ってめっき浴23の中を通過することにより、樹脂成形体全体に均一に電流が流れやすく、均一なめっきを得ることが出来る。めっき槽21bは、さらにめっきを厚く均一に付けるための槽であり複数の槽で繰り返しめっきされるように構成されている。表面が導電化された帯状樹脂22を送りローラと槽外給電陰極を兼ねた電極ローラ26により順次送りながら、めっき浴28に通過させることでめっきを行う。複数の槽内には樹脂成形体の両面にめっき浴28を介して設けられたアルミニウムからなる陽極27があり、樹脂成形体の両面により均一なめっきを付けることができる。めっきされたアルミ多孔体に窒素ブローでめっき液を十分除去した後、水洗しアルミ多孔体を得られる。
【0035】
一方、樹脂が溶解等しない範囲で溶融塩として無機塩浴を用いることもできる。無機塩浴とは、代表的にはAlCl
3−XCl(X:アルカリ金属)の2成分系あるいは多成分系の塩である。このような無機塩浴はイミダゾリウム塩浴のような有機塩浴に比べて一般に溶融温度は高いが、水分や酸素など環境条件の制約が少なく、全体に低コストでの実用化が可能とできる。樹脂が発泡メラミン樹脂である場合は、発泡ウレタン樹脂に比べて高温での使用が可能であり、60℃〜150℃での無機塩浴が用いられる。
【0036】
以上の工程により骨格の芯として樹脂成形体を有するアルミニウム構造体が得られる。各種フィルタや触媒担体などの用途によっては、このまま樹脂と金属の複合体として使用しても良いが、使用環境の制約などから、樹脂が無い金属多孔体として用いる場合には樹脂を除去する。本発明においては、アルミニウムの酸化が起こらないように、以下に説明する溶融塩中での分解により樹脂を除去する。
【0037】
(樹脂の除去:溶融塩による処理)
溶融塩中での分解は以下の方法で行う。表面にアルミニウムめっき層を形成した樹脂成形体を溶融塩に浸漬し、アルミニウム層に負電位(アルミニウムの標準電極電位より卑な電位)を印加しながら加熱して発泡樹脂成形体を除去する。溶融塩に浸漬した状態で負電位を印加すると、アルミニウムを酸化させることなく発泡樹脂成形体を分解することができる。加熱温度は発泡樹脂成形体の種類に合わせて適宜選択できる。樹脂成形体がウレタンである場合には分解は約380℃で起こるため溶融塩浴の温度は380℃以上にする必要があるが、アルミニウムを溶融させないためにはアルミニウムの融点(660℃)以下の温度で処理する必要がある。好ましい温度範囲は500℃以上600℃以下である。また、印加する負電位の量は、アルミニウムの還元電位よりマイナス側で、かつ溶融塩中のカチオンの還元電位よりプラス側とする。このような方法によって、連通気孔を有し、表面の酸化層が薄く酸素量の少ないアルミニウム多孔体を得ることができる。
【0038】
樹脂の分解に使用する溶融塩としては、アルミニウムの電極電位が卑となるようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物の塩が使用できる。具体的には塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)からなる群より選択される1種以上を含むと好ましい。このような方法によって連通気孔を有し、表面の酸化層が薄く酸素量の少ないアルミニウム多孔体を得ることができる。
【0039】
次に上記のようにして得られたアルミニウム多孔体から電極を製造するプロセスについて説明する。
図1はアルミニウム多孔体から電極を連続的に製造するためのプロセスの一例を説明する図である。当該プロセスは、巻き出しローラ41から多孔体シートを巻き出す多孔体シート巻き出し工程Aと、圧縮ローラ42を用いた調厚工程Bと、圧縮・溶接ローラ43及びリード溶接ローラ49を用いたリード溶接工程Cと、充填ローラ44、スラリー供給ノズル50及びスラリー51を用いたスラリー充填工程Dと、乾燥機45を用いた乾燥工程Eと、圧縮ローラ46を用いた圧縮行程Fと、切断ローラ47を用いた切断工程Gと、巻取ローラ48を用いた巻取工程Hとを含んでいる。以下、このような工程について具体的に説明する。
【0040】
(調厚工程)
アルミニウム多孔体のシートが巻き取られた原反ロールからアルミニウム多孔体シートを巻き出して、調厚工程でローラプレスにより最適な厚さに調厚すると共に表面を平坦にする。アルミニウム多孔体の最終的な厚さはその電極の用途によって適宜に定められるが、この調厚工程は最終的な厚さとする前の段階の圧縮工程であり、次工程の処理が行いやすい厚みとなる程度に圧縮する。プレス機としては平板プレスやローラプレスが用いられる。平板プレスは集電体の伸びを抑制するためには好ましいが、量産には不向きなため、連続処理可能なローラプレスを用いることが好ましい。
【0041】
(リード溶接工程)
−アルミニウム多孔体の端部の圧縮−
アルミニウム多孔体を二次電池等の電極集電体として用いるに際してはアルミニウム多孔体に外部引き出し用のタブリードを溶着する必要がある。アルミニウム多孔体を使用する電極の場合、強固な金属部が存在しないため、リード片を直接溶接することが出来ない。このため、アルミニウム多孔体の端部を圧縮することによって端部を箔状とすることで機械的強度を付加してタブリードを溶接する。
アルミニウム多孔体の端部の加工方法の一例について述べる。
図8はその圧縮工程を模式的に示したものである。
圧縮用治具としては回転ローラを用いることができる。
圧縮部の厚みは0.05mm以上、0.2mm以下程度(例えば0.1mm程度)とすることにより、所定の機械的強度を得ることができる。
図9において、2枚分の幅を有するアルミニウム多孔体34の中央部を圧縮用治具として回転ローラ35によって圧縮して圧縮部33を形成する。圧縮後に圧縮部33の中央部を切断して端部に圧縮部を有する2枚の電極集電体を得る。
また、複数個の回転ローラを用いてアルミニウム多孔体の中央部に複数本の帯状の圧縮部を形成し、この帯状の圧縮部のそれぞれをその中心線に沿って切断することにより複数個の集電体を得ることができる。
【0042】
−電極周縁部へのタブリードの接合−
前記のようにして得た集電体の端部圧縮部にタブリードを接合する。タブリードとしては電極の電気抵抗を低減するために金属箔を用いて、電極の周縁部の少なくとも一方の側の表面に金属箔を接合することが好ましい。また、電気抵抗を低減するために接合方法としては溶接を用いることが好ましい。金属箔を溶接する幅は、あまり太いと電池内に無駄なスペースが増えて電池の容量密度が低下するため、10mm以下が好ましい。あまり細いと溶接が困難になると共に集電効果も下がるため、1mm以上が好ましい。
溶接方法としては抵抗溶接や超音波溶接などの方法が使用できるが、超音波溶接の方が、接着面積が広いため好ましい。
【0043】
−金属箔−
金属箔の材質としては、電気抵抗や電解液に対する耐性を考慮するとアルミニウムが好ましい。また、不純物があると電池、キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ内で溶出・反応したりするため、純度99.99%以上のアルミニウム箔を用いることが好ましい。また、溶接部分の厚さが電極自体の厚さより薄いことが好ましい。
アルミ箔の厚さは20〜500μmとすることが好ましい。
また、金属箔の溶接は集電体に活物質を充填する前・後どちらで行なってもかまわないが、充填前に行なう方が活物質の脱落を抑えられる。特に超音波溶接の場合は充填前に溶接する方が好ましい。また、溶接した部分に活性炭ペーストがついてもよいが、工程途中で剥離する可能性もあるため、充填できないようにマスキングしておくことが好ましい。
【0044】
なお、上記の説明では端部の圧縮工程とタブリードの接合工程とを別工程として説明したが、圧縮工程と接合工程とを同時に行ってもよい。この場合は、圧縮ローラとしてアルミニウム多孔体シートのタブリード接合用端部と接触するローラ部分が抵抗溶接可能なローラを用い、このローラにアルミニウム多孔体シートと金属箔とを同時に供給して端部の圧縮と圧縮部への金属箔の溶接とを同時に行うこともできる。
【0045】
(活物質の充填工程)
上記のようにして得た集電体に活物質を充填することにより電極を得る。活物質は電極が使用される目的に応じて適宜選択される。
活物質の充填には浸漬充填法や塗工法など公知の方法を用いることができる。塗工法としては、例えば、ロール塗工法、アプリケータ塗工法、静電塗工法、粉黛塗工法、スプレー塗工法、スプレーコータ塗工法、バーコータ塗工法、ロールコータ塗工法、ディップコータ塗工法、ドクターブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、ナイフコータ塗工法、ブレード塗工法、及びスクリーン印刷法などが挙げられる。
活物質を充填するときは、必要に応じて導電助剤やバインダを加え、これに有機溶剤を混合してスラリーを作製し、これを上記の充填法を用いてアルミニウム多孔体に充填する。
図10にはロール塗工法によってスラリーを多孔体に充填する方法を示した。図示のように多孔体シート上にスラリーを供給しこれを所定の間隙を開けて対向する一対の回転ロールに通す。スラリーは回転ロールを通過する際に多孔体中に押圧充填される。
【0046】
(乾燥工程)
活物質を充填された多孔体は乾燥機に搬入され、加熱することによって有機溶剤を蒸発除去することにより、多孔体孔内に活物質が固定された電極材料を得る。
【0047】
(圧縮工程)
乾燥後の電極材料は圧縮工程において最終的な厚さに圧縮される。プレス機としては平板プレスやローラプレスが用いられる。平板プレスは集電体の伸びを抑制するためには好ましいが、量産には不向きなため、連続処理可能なローラプレスを用いることが好ましい。
図1の圧縮工程Fではローラプレスによって圧縮する場合を示した。
【0048】
(切断工程)
電極材料の量産性を高めるためには、アルミニウム多孔体のシートの幅を最終製品の複数枚分の幅とし、これをシートの進行方向に沿って複数の刃で切断することによって複数枚の長尺シート状の電極材料とすることが好ましい。この切断工程は長尺状の電極材料を複数枚の長尺状の電極材料に分割する工程である。
【0049】
(巻取工程)
この工程は上記切断工程で得た複数枚の長尺シート状の電極材料としこれを巻取ローラに巻き取る工程である。
【0050】
次に、上記で得た電極材料の用途について述べる。
アルミニウム多孔体を集電体として用いた電極材料の主な用途としては、リチウム電池や溶融塩電池等の非水電解質電池用電極及びキャパシタ用電極、リチウムイオキャパシタ用電極などがある。
以下では、これらの用途について述べる。
【0051】
(リチウム電池)
次にアルミニウム多孔体を用いた電池用電極材料及び電池について説明する。例えばリチウム電池(リチウムイオン二次電池等を含む)の正極に使用する場合は、活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)等を使用する。活物質は導電助剤及びバインダと組み合わせて使用する。
従来のリチウム電池用正極材料は、アルミニウム箔の表面に活物質を塗布した電極が用いられている。リチウム電池はニッケル水素電池やキャパシタに比べれば高容量であるが、自動車用途などでは更なる高容量化が求められており、単位面積当たりの電池容量を向上するために、活物質の塗布厚みを厚くしており、また活物質を有効に利用するためには集電体であるアルミニウム箔と活物質とが電気的に接触している必要があるので、活物質は導電助剤と混合して用いられている。
これに対し、本発明のアルミニウム多孔体は気孔率が高く単位面積当たりの表面積が大きい。よって集電体と活物質の接触面積が大きくなるため活物質を有効に利用でき、電池の容量を向上できるとともに、導電助剤の混合量を少なくすることができる。リチウム電池は、上記の正極材料を正極とし、負極には銅やニッケルの箔やパンチングメタル、多孔体などが集電体として用いられ、黒鉛、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、SnやSi等の合金系、あるいはリチウム金属等の負極活物質が使用される。負極活物質も導電助剤及びバインダと組み合わせて使用する。
このようなリチウム電池は、小さい電極面積でも容量を向上できるため、従来のアルミ箔を用いたリチウム電池よりも電池のエネルギー密度を高くすることができる。また、上記では主に二次電池についての効果を説明したが、一次電池についてもアルミニウム多孔体に活物質を充填したときに接触面積が大きくなる効果は二次電池の場合と同じであり、容量の向上が可能である。
【0052】
(リチウム電池の構成)
リチウム電池に使用される電解質には、非水電解液と固体電解質がある。
図11は、固体電解質を使用した全固体リチウム電池の縦断面図である。この全固体リチウム電池60は、正極61、負極62、および、両電極間に配置される固体電解質層(SE層)63を備える。正極61は、正極層(正極体)64と正極集電体65とからなり、負極62は、負極層66と負極集電体67とからなる。
電解質として、固体電解質以外に、後述する非水電解液が用いられる。この場合、両極間には、セパレータ(多孔質ポリマーフィルムや不織布、紙等)が配置され、非水電解液は両極およびセパレータ中に含浸される。
【0053】
(アルミニウム多孔体に充填する活物質)
アルミニウム多孔体をリチウム電池の正極に使用する場合は、活物質としてリチウムを脱挿入できる材料を使用することができ、このような材料をアルミニウム多孔体に充填することでリチウム二次電池に適した電極を得ることができる。正極活物質の材料としては、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、ニッケルコバルト酸リチウム(LiCo0.3Ni0.7O
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、リチウムマンガン酸化合物(LiMyMn
2−yO
4);M=Cr、Co、Ni)、リチウム酸等を使用する。活物質は導電助剤及びバインダと組み合わせて使用する。従来のリチウムリン酸鉄及びその化合物(LiFePO
4、LiFe
0.5Mn
0.5PO
4)であるオリビン化合物などの遷移金属酸化物が挙げられる。また、これらの材料の中に含まれる遷移金属元素を、別の遷移金属元素に一部置換してもよい。
【0054】
更に他の正極活物質の材料としては例えば、TiS
2、V
2S
3、FeS、FeS
2、LiMSx(MはMo、Ti、Cu、Ni、Feなどの遷移金属元素、又はSb、Sn、Pb)などの硫化物系カルコゲン化物、TiO
2、Cr
3O
8、V
2O
5、MnO
2などの金属酸化物を骨格としたリチウム金属が挙げられる。ここで、上記したチタン酸リチウム((Li
4Ti
5O
12)は負極活物質として使用することも可能である。
【0055】
(リチウム電池に使用される電解液)
非水電解液としては、極性非プロトン性有機溶媒で使用され、具体的にはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びスルホラン等が使用される。支持塩としては4フッ化ホウ酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、およびイミド塩等が使用されている。電解質となる支持塩の濃度は高い方が好ましいが、溶解に限度があるため1mol/L付近のものが一般に用いられる。
【0056】
(アルミニウム多孔体に充填する固体電解質)
活物質の他に、さらに、固体電解質を加えて充填してもよい。アルミニウム多孔体に活物質と固体電解質とを充填することで、全固体リチウム電池の電極に適したものとすることができる。ただし、アルミニウム多孔体に充填する材料のうち活物質の割合は、放電容量を確保する観点から、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上とすることが好ましい。
【0057】
上記固体電解質には、リチウムイオン伝導度の高い硫化物系固体電解質を使用することが好ましく、このような硫化物系固体電解質としては、リチウム、リン、及び硫黄を含む硫化物系固体電解質が挙げられる。硫化物系固体電解質は、さらに、O、Al、B、Si、Geなどの元素を含有してもよい。
【0058】
このような硫化物系固体電解質は、公知の方法により得ることができる。例えば、出発原料として硫化リチウム(Li
2S)及び五硫化二リン(P
2S
5)を用意し、Li
2SとP
2S
5とをモル比で50:50〜80:20程度の割合で混合し、これを熔融して急冷する方法(溶融急冷法)や、これをメカニカルミリングする方法(ノカニカルミリング法)が挙げられる。
【0059】
上記方法により得られる硫化物系固体電解質は、非晶質である。この非晶質の状態のまま利用することもできるが、これを加熱処理して結晶性の硫化物系固体電解質としてもよい。結晶化することで、リチウムイオン伝導度の向上が期待できる。
【0060】
(アルミニウム多孔体への活物質の充填)
活物質(活物質と固体電解質)の充填は、例えば、浸漬充填法や塗工法などの公知の方法を用いることができる。塗工法としては、例えば、ロール塗工法、アプリケータ塗工法、静電塗工法、粉体塗工法、スプレー塗工法、スプレーコータ塗工法、バーコータ塗工法、ロールコータ塗工法、ディップコータ塗工法、ドクターブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、ナイフコータ塗工法、ブレード塗工法、及びスクリーン印刷法などが挙げられる。
【0061】
活物質(活物質と固体電解質)を充填するときは、例えば、必要に応じて導電助剤やバインダを加え、これに有機溶剤や水を混合して正極合剤スラリーを作製する。このスラリーを上記の方法を用いてアルミニウム多孔体に充填する。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)といったカーボンブラックや、カーボンナノチューブ(CNT)などの炭素繊維を用いることができ、また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガムなどが使用できる。
【0062】
なお、正極合剤スラリーを作製する際に用いる有機溶剤としては、アルミニウム多孔体に充填する材料(即ち、活物質、導電助剤、バインダ、及び必要に応じて固体電解質)に対して悪影響を及ぼさないものであれば、適宜選択することができる。このような有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、溶媒に水を使う場合、充填性を高めるために界面活性剤を使用しても良い。
【0063】
なお、従来のリチウム電池用正極材料は、アルミニウム箔の表面に活物質を塗布している。単位面積当たりの電池容量を向上するために、活物質の塗布厚みを厚くしており、また活物質を有効に利用するためにはアルミニウム箔と活物質とが電気的に接触している必要があるので、活物質は導電助剤と混合して用いられている。これに対し、本発明のアルミニウム多孔体は気孔率が高く単位面積当たりの表面積が大きい。よって集電体と活物質の接触面積が大きくなるため活物質を有効に利用でき、電池の容量を向上できるとともに、導電助剤の混合量を少なくすることができる。
【0064】
(キャパシタ用電極)
図12はキャパシタ用電極材料を用いたキャパシタの一例を示す断面模式図である。セパレータ142で仕切られた有機電解液143中に、アルミニウム多孔体に電極活物質を担持した電極材料を分極性電極141として配置している。分極性電極141はリード線144に接続しており、これら全体がケース145中に収納されている。アルミニウム多孔体を集電体として使用することで、集電体の表面積が大きくなり、活物質としての活性炭との接触面積が大きくなるため高出力、高容量化可能なキャパシタを得ることができる。
【0065】
キャパシタ用の電極を製造するには、アルミニウム多孔体集電体に活物質として活性炭を充填する。活性炭は導電助剤やバインダと組み合わせて使用する。
キャパシタの容量を大きくするためには主成分である活性炭の量が多い方が良く、乾燥後(溶媒除去後)の組成比で活性炭が90%以上あることが好ましい。また導電助剤やバインダは必要ではあるが容量低下の要因であり、バインダは更に内部抵抗を増大させる要因となるためできる限り少ない方がよい。導電助剤は10質量%以下、バインダは10質量%以下が好ましい。
【0066】
活性炭は表面積が大きい方がキャパシタの容量が大きくなるため、比表面積が1000m
2/g以上あることが好ましい。活性炭は植物由来のヤシ殻などや石油系の材料などを用いることができる。活性炭の表面積を向上させるため、水蒸気やアルカリを用いて賦活処理しておくことが好ましい。
【0067】
上記活性炭を主成分とする電極材料を混合して攪拌することにより活性炭ペーストが得られる。かかる活性炭ペーストを上記集電体に充填して乾燥させ、必要に応じてローラプレス等により圧縮することにより密度を向上させ、キャパシタ用電極が得られる。
【0068】
(アルミニウム多孔体への活性炭の充填)
活性炭の充填は、例えば、浸漬充填法や塗工法などの公知の方法を用いることができる。塗工法としては、例えば、ロール塗工法、アプリケータ塗工法、静電塗工法、粉体塗工法、スプレー塗工法、スプレーコータ塗工法、バーコータ塗工法、ロールコータ塗工法、ディップコータ塗工法、ドクターブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、ナイフコータ塗工法、ブレード塗工法、及びスクリーン印刷法などが挙げられる。
【0069】
活性炭を充填するときは、例えば、必要に応じて導電助剤やバインダを加え、これに有機溶剤や水を混合して正極合剤スラリーを作製する。このスラリーを上記の方法を用いてアルミニウム多孔体に充填する。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)といったカーボンブラックや、カーボンナノチューブ(CNT)などの炭素繊維を用いることができ、また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガムなどが使用できる。
【0070】
なお、正極合剤スラリーを作製する際に用いる有機溶剤としては、アルミニウム多孔体に充填する材料(即ち、活物質、導電助剤、バインダ、及び必要に応じて固体電解質)に対して悪影響を及ぼさないものであれば、適宜選択することができる。このような有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、溶媒に水を使う場合、充填性を高めるために界面活性剤を使用しても良い。
【0071】
(キャパシタの作製)
上記のようにして得られた電極を適当な大きさに打ち抜いて2枚用意し、セパレータを挟んで対向させる。セパレータはセルロースやポリオレフィン樹脂などで構成された多孔膜や不織布を用いるのが好ましい。そして、必要なスペーサを用いてセルケースに収納し、電解液を含浸させる。最後に絶縁ガスケットを介してケースに蓋をして封口することにより電気二重層キャパシタを作製することができる。非水系の材料を使用する場合は、キャパシタ内の水分を限りなく少なくするため、電極などの材料を十分乾燥することが好ましい。キャパシタの作製は水分の少ない環境下で行い、封止は減圧環境下で行ってもよい。なお、本発明の集電体、電極を用いていればキャパシタとしては特に限定されず、これ以外の方法により作製されるものでも構わない。
【0072】
電解液は水系・非水系ともに使用できるが、非水系の方が電圧を高く設定できるため好ましい。水系では電解質として水酸化カリウムなどが使用できる。非水系としては、イオン液体がカチオンとアニオンの組み合わせで多数有る。カチオンとしては低級脂肪族4級アンモニウム、低級脂肪族4級ホスホニウム及びイミダゾリニウム等が使用され、アニオンとしては、金属塩化物イオン、金属フッ化物イオン、及びビス(フルオロスルフォニル)イミド等のイミド化合物などが知られている。また、極性非プロトン性有機溶媒があり、具体的にはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びスルホラン等が使用される。非水電解液中の支持塩としては4フッ化ホウ酸リチウム及び6フッ化リン酸リチウム等が使用されている。
【0073】
(リチウムイオンキャパシタ)
図13はリチウムイオンキャパシタ用電極材料を用いたリチウムイオンキャパシタの一例を示す断面模式図である。セパレータ142で仕切られた有機電解液143中に、アルミニウム多孔体に正極活物質を担持した電極材料を正極146として配置し、集電体に負極活物質を担持した電極材料を負極147として配置している。正極146及び負極147はそれぞれリード線148、149に接続しており、これら全体がケース145中に収納されている。アルミニウム多孔体を集電体として使用することで、集電体の表面積が大きくなり、活物質としての活性炭を薄く塗布しても高出力、高容量化可能なリチウムイオンキャパシタを得ることができる。
【0074】
(正極)
リチウムイオンキャパシタ用の電極を製造するには、アルミニウム多孔体集電体に活物質として活性炭を充填する。活性炭は導電助剤やバインダと組み合わせて使用する。
リチウムイオンキャパシタの容量を大きくするためには主成分である活性炭の量が多い方が良く、乾燥後(溶媒除去後)の組成比で活性炭が90%以上あることが好ましい。また導電助剤やバインダは必要ではあるが容量低下の要因であり、バインダは更に内部抵抗を増大させる要因となるためできる限り少ない方がよい。導電助剤は10質量%以下、バインダは10質量%以下が好ましい。
【0075】
活性炭は表面積が大きい方がリチウムイオンキャパシタの容量が大きくなるため、比表面積が1000m
2/g以上あることが好ましい。活性炭は植物由来のヤシ殻などや石油系の材料などを用いることができる。活性炭の表面積を向上させるため、水蒸気やアルカリを用いて賦活処理しておくことが好ましい。また、導電助剤としてはケッチェンブラックやアセチレンブラック、炭素繊維やこれらの複合材料が使用できる。また、バインダとしてはポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムなどが使用できる。溶媒はバインダの種類によって水や有機溶媒を適当に選択すればよい。有機溶媒ではN−メチル−2−ピロリドンが使用される場合が多い。また、溶媒に水を使う場合、充填性を高めるために界面活性剤を使用しても良い。
【0076】
上記活性炭を主成分とする電極材料を混合して攪拌することにより活性炭ペーストが得られる。かかる活性炭ペーストを上記集電体に充填して乾燥させ、必要に応じてローラプレス等により圧縮することにより密度を向上させ、リチウムイオンキャパシタ用電極が得られる。
【0077】
(アルミニウム多孔体への活性炭の充填)
活性炭の充填は、例えば、浸漬充填法や塗工法などの公知の方法を用いることができる。塗工法としては、例えば、ロール塗工法、アプリケータ塗工法、静電塗工法、粉体塗工法、スプレー塗工法、スプレーコータ塗工法、バーコータ塗工法、ロールコータ塗工法、ディップコータ塗工法、ドクターブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、ナイフコータ塗工法、ブレード塗工法、及びスクリーン印刷法などが挙げられる。
【0078】
活性炭を充填するときは、例えば、必要に応じて導電助剤やバインダを加え、これに有機溶剤や水を混合して正極合剤スラリーを作製する。このスラリーを上記の方法を用いてアルミニウム多孔体に充填する。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)といったカーボンブラックや、カーボンナノチューブ(CNT)などの炭素繊維を用いることができ、また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガムなどが使用できる。
【0079】
なお、正極合剤スラリーを作製する際に用いる有機溶剤としては、アルミニウム多孔体に充填する材料(即ち、活物質、導電助剤、バインダ、及び必要に応じて固体電解質)に対して悪影響を及ぼさないものであれば、適宜選択することができる。このような有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、溶媒に水を使う場合、充填性を高めるために界面活性剤を使用しても良い。
【0080】
(負極)
負極は特に限定されず従来のリチウム電池用負極を使用可能であるが、銅箔を集電体に用いた従来の電極では容量が小さいため、前述の発泡状ニッケルのような銅やニッケル製の多孔体に活物質を充填した電極が好ましい。また、リチウムイオンキャパシタとして動作させるために、あらかじめ負極にリチウムイオンをドープしておくことが好ましい。ドープ方法としては公知の方法を用いることができる。たとえば、負極表面にリチウム金属箔を貼り付けて電解液中に浸してドープする方法や、リチウムイオンキャパシタ内にリチウム金属を取り付けた電極を配置し、セルを組み立ててから負極とリチウム金属電極の間で電流を流して電気的にドープする方法、あるいは負極とリチウム金属で電気化学セルを組み立て、電気的にリチウムをドープした負極を取り出して使用する方法などが挙げられる。
いずれの方法でも、負極の電位を十分に下げるためにリチウムドープ量は多いほうがよいが、負極の残容量が正極容量より小さくなるとリチウムイオンキャパシタの容量が小さくなるため、正極容量分はドープせずに残しておく方が好ましい。
【0081】
(リチウムイオンキャパシタに使用される電解液)
電解液はリチウム電池に使用する非水電解液と同じものが用いられる。非水電解液としては、極性非プロトン性有機溶媒で使用され、具体的にはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びスルホラン等が使用される。支持塩としては4フッ化ホウ酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、およびイミド塩等が使用されている。
【0082】
(リチウムイオンキャパシタの作製)
上記のようにして得られた電極を適当な大きさに打ち抜き、セパレータを挟んで負極と対向させる。負極は、前述の方法でリチウムイオンをドープしたものを用いても構わないし、セルを組み立て後にドープする方法をとる場合は、リチウム金属を接続した電極をセル内に配置すればよい。セパレータはセルロースやポリオレフィン樹脂などで構成された多孔膜や不織布を用いるのが好ましい。そして、必要なスペーサを用いてセルケースに収納し、電解液を含浸させる。最後に絶縁ガスケットを介してケースに蓋をして封口することによりリチウムイオンキャパシタを作製することができる。リチウムイオンキャパシタ内の水分を限りなく少なくするため、電極などの材料は十分乾燥することが好ましい。また、リチウムイオンキャパシタの作製は水分の少ない環境下で行い、封止は減圧環境下で行ってもよい。なお、本発明の集電体、電極を用いていればリチウムイオンキャパシタとしては特に限定されず、これ以外の方法により作製されるものでも構わない。
【0083】
(溶融塩電池用電極)
アルミニウム多孔体は、溶融塩電池用の電極材料として使用することもできる。アルミニウム多孔体を正極材料として使用する場合は、活物質として亜クロム酸ナトリウム(NaCrO
2)、二硫化チタン(TiS
2)等、電解質となる溶融塩のカチオンをインターカレーションすることができる金属化合物を使用する。活物質は導電助剤及びバインダと組み合わせて使用する。導電助剤としてはアセチレンブラック等が使用できる。またバインダとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を使用できる。活物質として亜クロム酸ナトリウムを使用し、導電助剤としてアセチレンブラックを使用する場合には、PTFEはこの両者をより強固に固着することができ好ましい。
【0084】
アルミニウム多孔体は、溶融塩電池用の負極材料として用いることもできる。アルミニウム多孔体を負極材料として使用する場合は、活物質としてナトリウム単体やナトリウムと他の金属との合金、カーボン等を使用できる。ナトリウムの融点は約98℃であり、また温度が上がるにつれて金属が軟化するため、ナトリウムと他の金属(Si、Sn、In等)とを合金化すると好ましい。このなかでも特にナトリウムとSnとを合金化したものは扱いやすいため好ましい。ナトリウム又はナトリウム合金は、アルミニウム多孔体の表面に電解メッキ、溶融メッキ等の方法で担持させることができる。また、アルミニウム多孔体にナトリウムと合金化させる金属(Si等)をメッキ等の方法で付着させた後、溶融塩電池中で充電することでナトリウム合金とすることもできる。
【0085】
図14は上記の電池用電極材料を用いた溶融塩電池の一例を示す断面模式図である。溶融塩電池は、アルミニウム多孔体のアルミ骨格部の表面に正極用活物質を担持した正極121と、アルミニウム多孔体のアルミ骨格部の表面に負極用活物質を担持した負極122と、電解質である溶融塩を含浸させたセパレータ123とをケース127内に収納したものである。ケース127の上面と負極との間には、押え板124と押え板を押圧するバネ125とからなる押圧部材126が配置されている。押圧部材を設けることで、正極121、負極122、セパレータ123の体積変化があった場合でも均等押圧してそれぞれの部材を接触させることができる。正極121の集電体(アルミニウム多孔体)、負極122の集電体(アルミニウム多孔体)はそれぞれ、正極端子128、負極端子129に、リード線130で接続されている。
【0086】
電解質としての溶融塩としては、動作温度で溶融する各種の無機塩又は有機塩を使用することができる。溶融塩のカチオンとしては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)等のアルカリ金属、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)等のアルカリ土類金属から選択した1種以上を用いることができる。
【0087】
溶融塩の融点を低下させるために、2種以上の塩を混合して使用することが好ましい。例えばカリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド<K-N(SO
2F)
2;KFSA>とナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド<Na-N(SO
2F)
2;NaFSA>とを組み合わせて使用すると、電池の動作温度を90℃以下とすることができる。
【0088】
溶融塩はセパレータに含浸させて使用する。セパレータは正極と負極とが接触するのを防ぐためのものであり、ガラス不織布や、多孔質樹脂成形体等を使用できる。上記の正極、負極、溶融塩を含浸させたセパレータを積層してケース内に収納し、電池として使用する。
【実施例】
【0089】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
[実施例1]
(導電層の形成)
ウレタン樹脂成形体として、気孔率95%、1インチ当たりの気孔数(セル数)約46個、気孔径約550μm、厚さ1mmのウレタン発泡体を準備し、これを100mm×30mm角に切断した。このポリウレタンフォームの表面にスパッタリングによってアルミニウムを目付量10g/m
2で成膜して導電層を形成した。
【0091】
(溶融塩めっき)
表面に導電層を形成したウレタン発泡体をワークとして、給電機能を有する治具にセットした後、アルゴン雰囲気かつ低水分(露点−30℃以下)としたグローブボックス内に入れ、温度40℃の溶融塩アルミめっき浴(33mol%EMIC−67mol%AlCl
3)に浸漬した。ワークをセットした治具を整流器の陰極側に接続し、対極のアルミニウム板(純度99.99%)を陽極側に接続した。電流密度3.6A/dm
2の直流電流を90分間印加してめっきすることにより、ウレタン発泡体表面に140g/m
2の重量のアルミニウムめっき層が形成されたアルミニウム構造体を得た。攪拌はテフロン(登録商標)製の回転子を用いてスターラにて行った。ここで、電流密度はウレタン発泡体の見かけの面積で計算した値である。
【0092】
(発泡樹脂成形体の分解)
前記アルミニウム構造体を温度500℃のLiCl−KCl共晶溶融塩に浸漬し、−1Vの負電位を30分間印加した。溶融塩中にポリウレタンの分解反応による気泡が発生した。その後大気中で室温まで冷却した後、水洗して溶融塩を除去し、樹脂が除去されたアルミニウム多孔体を得た。得られたアルミニウム多孔体は連通気孔を有し、芯材として使用したウレタン発泡体と同様に気孔率が高いものであった。
【0093】
(アルミニウム多孔体の端部の加工)
得られたアルミニウム多孔体をローラプレスにより厚さ0.96mmに調厚し、5cm角に切断した。
溶接の準備として、圧縮用治具として幅5mmのSUSブロック(棒)とハンマーを用いて、アルミニウム多孔体の1辺の端から5mm部分を両側からSUSブロックで挟み、SUSブロックをハンマーで叩いて圧縮して厚み100μmの圧縮部を形成した。
その後、以下の条件でタブリードをスポット溶接によって溶接した。
【0094】
<溶接条件>
溶接装置: パナソニック社製 Hi−Max100、型番YG−101UD
(最大250Vまで印加可能)
容量100Ws、0.6kVA
電極 : 2mmφの銅電極
荷重 : 8kgf
電圧 : 140V
<タブリード>
材質 : アルミニウム
寸法 : 幅5mm、長さ7cm、厚み100μm
表面状態: ベーマイト加工
【0095】
得られたアルミニウム多孔体の引張強度を引張試験(試験片10mm幅、100mm長、チャック間距離50mm)により測定したところ、0.6MPaであり、電極の工業的連続生産に耐え得るものであることが確認された。
また、得られたアルミニウム多孔体の結晶平均粒径を測定したところ、3μmであった。更に、高周波燃焼赤外吸収法により炭素含有量を測定したところ、0.8g/m
2であった。
【0096】
[実施例2]
実施例1の溶融塩めっきにおいて、電流密度7.2A/dm
2の直流電流を90分間印加してめっきすることにより、ウレタン発泡体表面に280g/m
2の重量のアルミニウムめっき層を形成した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム多孔体を得た。
実施例1と同様に得られたアルミニウム多孔体の引張強度を測定したところ、1.2MPaであった。また、結晶平均粒径は2μmであり、炭素含有量は0.9g/m
2であった。
【0097】
[実施例3]
実施例1において、導電化処理法として下記の方法を採用したこと以外は実施例1と同様にしてアルミニウム多孔体を得た。
(導電化処理法)
粒径0.01〜0.2μmの非晶性炭素であるカーボンブラック100gを0.5Lの10%アクリル酸エステル系樹脂水溶液に分散し、この比率で粘着塗料を作製した。次に樹脂多孔シートを前記塗料に連続的に漬け、ロールで絞った後乾燥させることによって導電化処理を施し、3次元網目状樹脂の表面に導電被覆層を形成した。
【0098】
実施例1と同様にして、得られたアルミニウム多孔体の引張強度を測定したところ、0.5MPaであった。また、結晶平均粒径は2μmであり、炭素含有量は10g/m
2であった。
【0099】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。