特許第5961120号(P5961120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961120
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/26 20060101AFI20160719BHJP
   B65D 5/50 20060101ALI20160719BHJP
   B65D 5/44 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   B65D77/26 S
   B65D5/50 101Z
   B65D5/44 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-8911(P2013-8911)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2013-241218(P2013-241218A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-102121(P2012-102121)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】國富 一郎
【審査官】 西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−081140(JP,A)
【文献】 特開2008−094441(JP,A)
【文献】 特開平10−338271(JP,A)
【文献】 実開昭59−78432(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/44
B65D 5/50
B65D 77/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部と立面部を備えた製品が、補強用支持材と共に、包装外箱の内部に収容された包装体であって、
上記製品の平面部が包装外箱の底板に載置されており、
上記補強用支持材は、平面板とその両端辺から内側に傾斜して立ち上がる斜板とを備えたもので、平面板が製品の平面部に載置されており、斜板の長さが製品の平面部から包装外箱の天板までの距離よりも長く設定されて、斜板の上端が包装外箱の天板に当接もしくは接近している、
ことを特徴とする包装体。
【請求項2】
上記斜板の上端に、外側に向って延びる外延板が備わっている、ことを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
上記製品が軟質合成樹脂で作製されたものである、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
上記包装外箱の内部に収容された製品の個数が二個以上であって、立面部が向かい合うように製品が一個ずつ又は数個ずつ反対向きに積み重ねられ、上側に積み重ねられた製品の立面部側の端部がパッドで下方から支持されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
上記外延板を、包装外箱の天板又は側板に固定した、ことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面部と立面部を備えた製品を補強用支持材と共に包装外箱の内部に収容した包装体に関し、更に詳しくは、上方から荷重がかかっても、包装外箱が押し潰されて製品が変形、破損したり、補強用支持材による押圧痕が製品に残ったりすることがないように工夫した包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
軟包装品を収納する梱包ケースとして、例えば、コーナー補強用底パッドを内装した梱包ケースが知られている(特許文献1)。この梱包ケースに内装されるコーナー補強用底パッドは、梱包ケースの内底と相似形状の矩形状又はほぼ八角形状のパッド本体と、その両端辺から立ち上がる一対の矩形の内側板と、それぞれの内側板の左右両側縁に設けられた両袖片とを備えたものであって、パッド本体と内側板を梱包ケースの内底と両側板に重ねて内装し、袖片を、梱包ケースの隅角部において断面三角形のコーナー補強ポストを形成するように梱包ケースの両側板間に跨がって係止させることにより、梱包ケースの耐圧強度を高め、梱包される軟包装品を保護するものである。
【0003】
ところで、図7に示す階段用床材のような、平面部11と立面部12を備えた製品1を、図9に示すように裏返しにして段ボール製の包装外箱200に収容する場合は、製品1の平面部11と包装外箱200の天板201との間に内部空間Vが存在するので、なにも補強しない場合は、包装外箱200を積み重ねたときの荷重で側板202が座屈して包装外箱200が押し潰され、製品1の立面部12が変形したり、破損したりすることがある。特に、製品1が軟質合成樹脂製の階段用床材である場合は、踏み面部に相当する平面部11と段鼻被覆部に相当する立面部12との夾角θ1を75°〜85°に維持する必要があり、上記のように包装外箱200が押し潰されることによって立面部12が上記夾角θ1よりも鋭角に折り曲げられたり鈍角に押し広げられたりすると、階段用床材を階段に貼着する際に、段鼻被覆部(立面部12)が階段の段鼻端面に沿わなくなって、段鼻端面から跳ね上がったり隙間ができたりして貼着作業に支障が出るので、包装外箱200が押し潰されないように耐荷重強度を高めることが必要になる。
なお、製品1が階段用床材である場合は、後述するように、階段用床材を2〜10個程度重ねて包装外箱に収容するのが普通であるが、図9では便宜的に1個だけ包装する場合を示している。
【0004】
上記のような平面部11と立面部12を備えた製品1を収容する包装外箱200の耐荷重強度を高める手段としては、例えば、(A)特許文献1に記載されたコーナー補強用底パッドを包装外箱200に内装する、(B)井桁状の補強用支持材を製品1の平面部11と包装外箱200の天板201との間に介在させる、(C)平面板の両端に直角に立ち上がる立板を設けたU字状の補強用支持材を、製品1の平面部11と包装外箱200の天板201との間に介在させる、等の手段が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−001396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記(A)のように、特許文献1に記載されたコーナー補強用底パッドを包装外箱200に内装する場合は、包装外箱200の四隅に形成される断面三角形のコーナー補強ポストと製品1とが干渉しないように、包装外箱200を製品1よりも一回り大きく作製する必要があるため、包装外箱のコストが高くなり、保管や運搬に要するスペースも増大するという問題がある。
【0007】
また、上記(B)のように、井桁状の補強用支持材を製品1の平面部11と包装外箱200の天板201との間に介在させる場合は、優れた耐荷重強度が得られる反面、上方からの荷重が井桁状の補強用支持材を介して製品1の平面部11に加わるため、製品1が軟質合成樹脂で作製された階段用床材等である場合には、製品1の平面部11に井桁状の押圧痕が残るという問題がある。
【0008】
これに対し、上記(C)のように、平面板の両端に直角に立ち上がる立板を設けたU字状の補強用支持材を製品1の平面部11と包装外箱200の天板201との間に介在させる場合は、平面板の両端の二枚の立板で荷重を受けることになるので、上記の井桁状の補強用支持材を介在させる場合に比べると、耐荷重強度が少し低下するという問題があり、しかも、荷重が二枚の立板に集中するため、上記と同様に、製品1の平面部11(立板の直下に位置する部分)に押圧痕が残るという問題がある。
【0009】
また、上記(B),(C)の場合は、井桁状の補強用支持材の高さや、補強用支持材の立板の高さが、製品1の平面部11から包装外箱200の天板までの高さより少しでも高くなると、補強用支持材を包装外箱200に収容することが困難になるという問題もある。
【0010】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、平面部と立面部を備えた製品を補強用支持材と共に包装外箱の内部に収容した包装体において、補強用支持材の収容が容易であり、上記(C)の場合に比べると耐荷重強度が若干低下するとはいうものの、想定以上の荷重がかかった場合でも包装外箱が押し潰されて製品が変形、破損することが殆どなく、補強用支持材による押圧痕が製品に残ることも殆どないようにした包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る包装体は、平面部と立面部を備えた製品が、補強用支持材と共に、包装外箱の内部に収容された包装体であって、
上記製品の平面部が包装外箱の底板に載置されており、
上記補強用支持材は、平面板とその両端辺から内側に傾斜して立ち上がる斜板とを備えたもので、平面板が製品の平面部に載置されており、斜板の長さが製品の平面部から包装外箱の天板までの距離よりも長く設定されて、斜板の上端が包装外箱の天板に当接もしくは接近している、ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の包装体においては、斜板の上端に、外側に向って延びる外延板が備わっていることが望ましい。また、製品が軟質合成樹脂で作製されたものであることが望ましく、包装外箱の内部に収容された製品の個数が二個以上であって、立面部が向かい合うように製品が一個ずつ又は数個ずつ反対向きに積み重ねられ、上側に積み重ねられた製品の立面部側の端部がパッドで下方から支持されていることが望ましい。更に、外延板を、包装外箱の天板又は側板に固定することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の包装体のように、補強用支持材が平面板とその両端辺から内側に傾斜して立ち上がる斜板とを備えたもので、平面板が製品の平面部に載置されており、斜板の長さが製品の平面部から包装外箱の天板までの距離よりも長く設定されて、斜板の上端が包装外箱の天板に当接もしくは接近していると、補強用支持材を製品の平面部と包装外箱の天板との間の空間部に容易に収容することができ、上方から想定以上の荷重がかかった場合でも、包装外箱の側板が座屈して押し潰されることが殆どないように、補強用支持材の斜板が包装外箱の天板を支えるため、耐荷重強度が向上し、製品の変形、破損を防止することができる。
【0014】
そして、本発明の包装体のように、補強用支持材の斜板が平面板の両端辺から内側に傾斜して立ち上がっていると、後述するように、斜板の上端にかかる下向きの荷重が、斜板に沿う方向の力と斜板に直角な方向の力とに分力され、この斜板に沿う方向の力が斜板の下端から製品の平面部に作用するため負荷が減少し、製品の平面部において斜板の下端が当たる箇所に凹んだ押圧痕が形成されて残ることは殆どない。
【0015】
また、本発明の包装体のように補強用支持材の斜板が内側に傾斜していると、斜板の上端が包装外箱の天板の高さを越えるために補強用支持材を包装外箱に収容し難いような場合であっても、斜板を内側にもう少し傾斜させて斜板の上端を天板と同じ高さにすることにより、補強用支持材を包装外箱に容易に収容することができる。そして、内側に傾斜する斜板の長さが製品の平面部から包装外箱の天板までの距離よりも長く設定されていると、上方から荷重がかかったときに、斜板が内側に更に傾斜することはあっても、逆に外側に傾斜して製品の立面部に倒れ掛かることはないので、製品が軟質合成樹脂で作製された階段用床材の場合でも、その立面部(段鼻被覆部)が斜板によって外側に鈍角に傾斜、変形する心配はない。
【0016】
そして、斜板の上端に、外側に向って延びる外延板が備わっていると、包装外箱の天板にかかる上方からの荷重を、外延板が面として支えるので、耐荷重強度が一層向上する。それに加えて、包装外箱の天板に外延板が当接することで、運搬中に補強用支持材が包装体内部で移動してしまうといった不具合がなくなり、運搬中の製品の変形、破損を防止することができる。
【0017】
特に、階段用床材のように軟質合成樹脂で作製された製品は、その平面部に凹んだ押圧痕が残りやすく、その立面部も傾斜、変形しやすいものであるから、このような軟質合成樹脂で作製された製品を上記の補強用支持材と共に包装外箱に収容した本発明の包装体は、上述した補強用支持材による押圧痕防止効果や変形防止効果が顕著であり、極めて有効なものである。
【0018】
また、包装外箱の内部に収容された製品の個数が二個以上であって、立面部が向かい合うように製品が一個ずつ又は数個ずつ反対向きに積み重ねられ、上側に積み重ねられた製品の立面部側の端部がパッドで下方から支持されている包装体は、上側に積み重ねられた製品の立面部側の端部(平面部の端部)が下方に撓み変形するのをパッドで防ぐことができ、しかも、補強用支持材の斜板の下端から製品の立面部側の端部に作用する下向きの力がパッドによってある程度、吸収、緩和されるので、その分だけ押圧痕がさらに生じ難くなる。
【0019】
更に、外延板を、包装外箱の天板又は側板に固定した包装体は、外延板を天板に固定することで、上方からの荷重によって斜板が内側へ倒れてしまうのを防止できると共に、補強用支持材が包装体内部で移動してしまうという運搬中の不具合を完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る包装体の分解斜視図である。
図2】同包装体の横断面図である。
図3】同包装体の縦断面図である。
図4】補強用支持材の説明図である。
図5】(a)(b)(c)はいずれも、斜板の異なる倒れ防止手段を設けた補強用支持材を示す概略図である。
図6】(a)は補強用支持材の他の例を示す斜視図、(b)はその側面図である。
図7】平面部と立面部を備えた製品の代表例である階段用床材の斜視図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る包装体の横断面図である。
図9】同階段用床材を包装外箱に収容して包装する場合の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る包装体の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係る包装体の分解斜視図、図2は同包装体の横断面図、図3は同包装体の縦断面図、図4は補強用支持材の説明図であって、この実施形態に係る包装体は、図示のように、平面部11と立面部12を備えた複数個(複数枚)の製品1を、補強用支持材2やパッド3と共に、包装外箱4の内部に収容して包装したものである。
【0023】
この実施形態の製品1は、前述した階段用床材、即ち、平面部11に相当する踏み面部と、立面部12に相当する段鼻被覆部とを備え、踏み面部と段鼻被覆部との夾角θ1が75°〜85°に設定された、L形の軟質合成樹脂製の階段用床材であって、図2に示すように、全ての製品1が裏返しにされ、立面部12が向かい合うように製品1が複数個(複数枚)ずつ反対向きに積み重ねられ、一番下側の製品1の平面部11が包装外箱4の底板41に載置されて、包装外箱4の内部に収容されている。この実施形態では、5個(枚)の製品1が同じ向きに積み重ねられ、その上に2個(枚)の製品1が反対向きに積み重ねられているが、これに限定されるものではなく、例えば、2〜5個(枚)ずつ反対向きに積み重ねられていてもよいし、一個(枚)ずつ交互に反対向きに積み重ねられていてもよい。包装される製品1の数が多くなり過ぎると、包装体の全質量が大きくなって持ち運びし辛くなるので、2〜10個(枚)程度にすることが好ましい。なお、包装される製品1の数は、1個(枚)であってもよいことは言うまでもない。
【0024】
階段用床材の軟質合成樹脂としては、可塑剤を含有させるなどして軟質化した各種の塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーなど、またはそれらを複合させた樹脂混合物が好適であり、この実施形態では、可塑剤を含有させた軟質塩化ビニル樹脂製の階段用床材が製品1として包装されている。
なお、製品1は前記の階段用床材に限定されるわけではなく、他の用途の製品であってもよく、本発明は立面部が平面部の一辺に立設された製品、平面部の2辺またはそれ以上の各辺に立面部が立設された製品にも適用できる。また、立面部は平面部の端縁からL字状を形成するように立設されるだけではなく、平面部の端縁から若干の距離をおいて立面部が逆T字状を形成するように立設されていてもよく、さらに夾角θ1が75°〜85°となるように鋭角になるように立面部が立設されるだけではなく、鈍角や直角となるように設けられていてもよい。
【0025】
包装外箱4は、図2図3に示すように、底板41と、四周の側板42,43,44,45と、天板46とを備えたもので、図1に示すように、底板41と四周の側板42,43,44,45は、外箱本体を構成するように段ボールで一体に組み立てられており、天板46は外箱本体から分離して段ボールで形成されている。この包装外箱4は、包装される製品1(階段用床材)に対応した長方形の箱体とされ、幅方向両側の側板43,45は、製品1(階段用床材)の立面部12(段鼻被覆部)の傾斜角と同じ75°〜85°の傾斜角で内側に傾斜している。
【0026】
包装外箱4の天板46は、図1に示すように、幅方向両側に側板46a,46aが延設されており、図2に示すように天板46を被せると、その側板46a,46aが包装外箱4(外箱本体)の幅方向両側の側板43,45に重なるようになっている。そして、この側板46a,46aの下端縁を粘着テープ5で包装外箱4の底板41の両側縁に貼付けると共に、図3に示すように、天板46の長さ方向の両端縁を粘着テープ5で包装外箱4の長さ方向両端の側板42,44に貼付けることによって、天板46が包装外箱4(外箱本体)に貼着固定されるようになっている。
【0027】
この実施形態では、天板46を包装外箱4の外箱本体から分離して設けているが、天板46を包装外箱4の四周の側板42,43,44,45のいずれかの上端に一体に設けてもよく、また、場合によっては、四周の側板42,43,44,45の上端に4枚のフラップを設け、これらのフラップを折り曲げて天板46を構成するようにしてもよい。
【0028】
包装外箱の材料となる段ボールとしては、紙製の両面段ボール、複両面段ボール、複々面段ボールや、合成樹脂製の各種段ボール(所謂プラダン)などが使用可能であるが、本実施形態のように製品1として軟質合成樹脂製の階段用床材を2〜10個(枚)程度包装する場合は、強度的に紙製の両面段ボールを使用すれば十分であり、その中でも、中芯の種類がAフルート、ライナーの種類がK6(秤量180g)である両面段ボールが好ましく使用される。
【0029】
包装外箱4の天板46と、一番上に積み重ねられた製品1の平面部11との間の空間には、本発明の特徴とする補強用支持材2が設けられている。この補強用支持材2は、図1図4に示すように、長方形の平面板21と、その幅方向の両端辺から内側に傾斜して立ち上がる斜板22,22とを備えたもので、平面板21が一番上の製品1の平面部11に載置され、斜板22の長さLは一番上の製品1の平面部11から包装外箱4の天板46までの距離D(図2参照)よりも長く設定されて、双方の斜板22,22の上端が包装外箱4の天板46に当接している。補強用支持材2の平面板21と斜板22との夾角θ2は、特に制限されないが、包装外箱4の耐荷重強度を高め、製品1に押圧痕が生じないようにする観点から、20°〜80°の範囲に設定することが好ましい。また、距離Dは、包装外箱4の高さや、製品1の積み重ね個数(枚数)によって変わるが、距離Dが40〜80mm程度(本実施態様では60mm)である場合には、斜板22の長さLは80〜120mm程度(本実施態様では100mmで、夾角θ2は約30°)であることが適当である。
【0030】
尚、補強用支持材2の斜板22,22の上端は、この実施形態のように包装外箱4の天板46に当接している必要はかならずしもなく、包装外箱4の天板46に荷重がかかって天板46が下方に撓みかけたときに、斜板22,22の上端が天板46に当接して支えることができるように天板46に近接していてもよい。
【0031】
補強用支持材2の材質としては、包装外箱4と同様の紙製もしくは合成樹脂製の段ボールが適しており、長方形の段ボールの幅方向の両側縁を折り曲げ加工することによって、平面板21の幅方向の両端辺から内側に傾斜して立ち上がる斜板22,22を形成した補強用支持材2が好ましく使用される。また、合成樹脂で成形もしくは発泡成形された補強用支持材なども使用される。
【0032】
補強用支持材2を段ボールで作製する場合は、平面板21及び斜板22の長さ方向が、段ボールのフルート(波状の中芯)の波長方向と直交する方向に合致していること(換言すると、補強用支持材2の長さ方向と段ボールのフルートの中芯の波状の凹凸条が延びる方向とが同一であること)が好ましい。このように直交する方向に合致していると、段ボールを折り曲げるときの曲げ強さが適当となり、作業性が向上する利点がある。平面板21及び斜板22の長さ方向がフルートの波長方向に合致する場合は、折り曲げるときの反発力が大きくなるだけでなく、復元力も大きくなるため、補強用支持材2を包装外箱4に収容したとき、斜板22,22が復元力によって包装外箱4の天板46を押し上げ、包装外箱4を変形させる原因になるので好ましくない。
【0033】
上記のような補強用支持材2が、包装外箱4の天板46と一番上の製品1の平面部11との間に設置されて包装外箱4に収容されていると、上方から想定以上の荷重が包装外箱4の天板46にかかった場合でも、補強用支持材2の斜板22,22が包装外箱4の天板46を支えるため耐荷重強度が向上し、包装外箱4の四周の側板42,43,44,45や天板46の側板46a,46aが座屈して包装外箱4が押し潰されることが殆どないので、製品1の変形、破損を防止することができる。
【0034】
そして、図4に示すように、包装外箱の天板から補強用支持材2の斜板22の上端にかかる下向きの荷重Gは、斜板22に沿う方向の力f1と斜板22に直角な方向の力f2とに分力され、この斜板22に沿う方向の力f1が斜板22の下端から製品1の平面部11に作用することになるため、背景技術のところで述べた直角に立ち上がる立板を有する支持材のように荷重Gが分力されないで製品1の平面部11に真上から作用するものに比べると、負荷が減少する。従って、製品1が軟質合成樹脂で作製された階段用床材であっても、補強用支持材2の斜板22の下端が当たる箇所に、凹んだ押圧痕が形成されて残る心配は殆どない。
【0035】
押圧痕の原因となる斜板22に沿う方向の力f1は、夾角θ2が小さくなるほど減少するが、補強用支持材2が段ボールで作製されている場合、夾角θ2が小さくなりすぎると、荷重Gによって斜板22が内側へ倒れ込みやすくなり、包装外箱4の天板46を斜板22の上端で支え難くなるので、前述したように、夾角θ2は20°〜80°の範囲に設定することが好ましく、さらに好ましくは、25°〜50°である。夾角θ2がこの範囲であれば、背景技術のところで述べた直角に立ち上がる立板を有する支持材に比べて、耐荷重強度は少し低下するけれども、押圧痕の防止効果は顕著になる。
【0036】
また、この補強用支持材2のように斜板22が内側に傾斜していると、斜板の22上端が包装外箱4の天板46の高さを越えるために補強用支持材2を包装外箱4に収容し難いような場合であっても、斜板22を内側にもう少し傾斜させて斜板22の上端を天板46と同じないし少し低い高さにすることにより、補強用支持材2を包装外箱4に容易に収容することができる。しかも、この補強用支持材2のように内側に傾斜する斜板22の長さLが製品1の平面部11から包装外箱4の天板46までの距離Dよりも長く設定されていると、上方から荷重がかかったときに、斜板22が内側に更に傾斜することはあっても、逆に外側に傾斜して製品1の立面部12に倒れ掛かることはないので、製品1が軟質合成樹脂で作製された階段用床材の場合でも、その立面部12(段鼻被覆部)が斜板22によって外側に鈍角に傾斜、変形する心配はない。
【0037】
ところで、上記の補強用支持材2を段ボール等で作製すると、斜板22が上方からの荷重を受けて内側に更に傾斜して倒れ込みやすいため、斜板22の倒れ込み防止手段を補強用支持材に設けるようにしてもよい。図5はそのような倒れ込み防止手段を設けた補強用支持材の例を示したものである。即ち、図5(a)に示す補強用支持材2は、倒れ込み防止手段として、一方の斜板22の上端から上板23を水平に延設し、その先端から傾斜板24を他方の斜板22と平行に延設したものであり、図5(b)に示す補強用支持板2は、倒れ込み防止手段として、双方の斜板22,22の上端から内側斜め下方に向かって傾斜板25,25を延設したものであり、図5(c)に示す補強用支持板2は、倒れ込み防止手段として、平面板21の両側縁と双方の斜板22,22との間に三角形の倒れ防止部材26,26を設けたものである。これらの倒れ込み防止手段を設けた補強用支持材2は、斜板22,22が内側に倒れ込むことなく包装外箱4の天板46を支えるので、耐荷重強度を大幅に向上させることができる。
【0038】
(b)の場合、傾斜板25,25の製品の平面部11側先端は、上方からの荷重によって補強用支持材2の平面板21を介して、製品の平面部11側に押し付けられ、平面部11に押圧痕が発生するおそれがあるが、傾斜板25,25の平面部11側先端は平面板21と固定されていない(ないしは仮固定程度の強度で固定されている)ため、上方からの荷重がかかったとしても、容易に斜板22,22が倒れずに荷重を支持する(傾斜板25,25の平面部11側先端が食い込むようになって平面板21を変形させながら内側にずれるので、容易に倒れることはない)と共に、その先端が内側方向にずれながら荷重を分散して平面部11に押圧痕を発生することを防止できる。
なお、前記したように、補強用支持材2の長さ方向が段ボールのフルートの波長方向と直交する方向に合致する場合は、フルートの波状凹凸と傾斜板25,25の先端とが干渉しあってずれることになり、より斜板22,22が倒れづらくなる。
【0039】
上述した補強用支持材2はいずれも、平面板21の幅方向の両端辺から一対の斜板22,22を内側に傾斜させて立設したものであるが、図6に示す補強用支持材2のように、平面板21の幅方向の両端辺と長さ方向の両端辺から二対の斜板22,22,22,22を内側に傾斜させて立設してもよい。このように二対の斜板を設けた補強用支持材2は、二対の斜板で包装外箱4の天板46を支えるので耐荷重強度が向上し、特に、隣接する斜板22,22同士を例えば粘着テープ等で連結した場合は、各斜板22が内側に倒れ込むことがないので耐荷重強度を顕著に向上することになる。
【0040】
図1図4に示す実施形態の包装体は、前述したように、製品1の立面部12が向かい合うように製品1が複数個(枚)ずつ反対向きに積み重ねられており、更に、上側に積み重ねられた製品1の立面部12側の端部(平面部11の端部)が、図2に示すように、パッド3で下方から支持されている。このパッド3は、前記の段ボールを角筒状に折り曲げて作製されたものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、角棒状の樹脂発泡体なども好ましく使用される。
【0041】
このように、上側に積み重ねられた製品1の立面部側の端部がパッド3で支持されていると、上側に積み重ねられた製品1の立面部側の端部が下方に撓み変形するのをパッド3で防ぐことができ、しかも、補強用支持材2の斜板22の下端から製品1の立面部側の端部に作用する力がパッド3によってある程度、吸収、緩和されるので、その分だけ押圧痕がさらに生じ難くなる利点がある。
【0042】
以上の説明から理解できるように、本発明の包装体は、包装外箱の天板と包装外箱に収容された製品の平面部との間に、平面板の両端辺から内側に傾斜して立ち上がる斜板を備えた補強用支持材を設けたため、上方から想定以上の荷重がかかっても、包装外箱が押し潰されて製品が変形、破損することが殆どなく、しかも、製品の平面部に押圧痕が残ることも殆どないといった効果を奏し、すこぶる有用なものである。
【0043】
図8は本発明の他の実施形態に包装体の横断面図である。
【0044】
図8に示す包装体は、前述した補強用支持材2の代わりに、外延板22aを備える補強用支持材20を用いたものである。この補強用支持材20は、前述した補強用支持材2と同様に、長方形の平面板21と、その幅方向の両端辺から内側に傾斜して立ち上がる斜板22,22とを備え、この斜板22,22の上端に、外側方向(斜板22の上端から包装外箱4の四周の側板43,45方向)に向って延びる外延板22a,22aを設けたものである。
【0045】
この外延板22aは、耐荷重強度を向上させるため、斜板22の長さ方向全域に亘って設けられており、その外側端部は、図8に示すように、包装外箱4の四周の側板43,45に当接もしくは接近するまで延設されている。また、この補強用支持材20の斜板22と外延板22aとの夾角は、平面板21と斜板22との夾角θ2と同角度になっており、外延板22aの上面は、天板46の裏面に当接して、補強用支持材20が包装外箱4の内部で動かないよう接着剤により天板46に固定されている。
なお、天板46に外延板22aを固定する方法は、本実施形態のように、接着剤による固定に限定されるものではなく、接着剤の他にも、粘着剤やテープによる固定や、嵌合による固定(例えば、外延板22aの一部を折り曲げて、その折り曲げ部が嵌合する切込み溝を天板46に設けるなど)によっても行うことができる。また、外延板22aは、本実施形態のように天板46にではなく、包装外箱4の四周の側板43,45に固定してもよい。
【0046】
上記のような、補強用支持材20は、予め斜板22の長さLを長めに設定し、斜板22の上端が天板46に当接もしくは接近する箇所を外側に折り曲げ加工すると、外延板22aを容易に形成することができるので好ましい。
なお、このような外延板22aは、前述した図1図4に示す実施形態の包装体において、包装外箱4の内部に収容する製品1の個数が当初の想定よりも増加して、製品1の平面部11から包装外箱4の天板46までの距離Dが短くなった場合など、補強用支持材2の斜板22の上端を折り曲げることで形成することもできる。
この実施形態に係る包装体のその他の構成は、前述した図1図4に示す包装体と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0047】
上記構成の補強用支持材20が、包装外箱4の天板46と一番上の製品1の平面部11との間に設置されて包装外箱4に収容されていると、包装外箱4の天板46にかかる上方からの荷重を、外延板22aが面として支える、換言すれば、天板46を支持する面積が増大するので、前述した実施形態の補強用支持材2よりも耐荷重強度がより一層向上し、包装外箱4の四周の側板42,43,44,45や天板46の側板46a,46aが座屈して包装外箱4が押し潰されたり、補強用支持材20による押圧痕が製品1に残る心配が解消される。しかも、外延板22aは接着剤により天板46に固定されているので、運搬中に補強用支持材20が包装外箱4の内部で移動してしまうといった不具合もなくなり、斜板22が内側に倒れ込むという不具合もなくなるので、運搬に伴う製品1の変形、破損をより確実に防止することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 製品
11 平面部
12 立面部
2,20 補強用支持材
21 平面板
22 斜板
22a 外延板
3 パッド
4 包装外箱
41 底板
42,43,44,45 四周の側板
46 天板
L 補強用支持材の斜板の長さ
D 製品の平面部から包装外箱の天板までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9