(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7は従来の問題点を説明する回路図、
図8(A)〜
図8(C)は
図7の回路の電流および電圧を示す図である。100は電池、101は電池100の内部抵抗、102は電圧レギュレータ、103は負荷回路である。V
Bは電池100の電圧、I
Bは電池100から供給される電流、V
Lは電圧レギュレータ102により負荷回路103に供給される電圧、V
B0は電池100の初期状態での電圧、V
RLは負荷回路103が動作可能な下限の電圧を供給可能な電池100の下限電圧である。
【0006】
図8(A)に示すように負荷回路103は、大きな電流を消費するときとほとんど電流を消費しないときがあり、平均すると比較的低い消費電流である。1例として、大きな電流を消費するときには電流I
Bの値は例えば30mA程度であり、ほとんど消費しないときの電流I
Bの値は100μA以下であり、平均すると200μA程度の電流I
Bとなる。
【0007】
図7のような回路に使用される電池100としては、リチウム一次電池が使用され、中でも大容量である塩化チオニルリチウム電池が使用されることが多い。塩化チオニルリチウム電池は、自己放電が少なく長期間安定して使用できるものの、内部抵抗が大きいため、大電流を取り出すには適していない。このような電池は、電池の残容量に関わらず無負荷時の電圧はほぼ一定であるものの、残容量が少なくなるにつれて内部抵抗が増加し、比較的大電流を流したときに電圧が大きく低下することが知られている。
【0008】
図8(A)に示すように、パルス状の電流I
Bが流れることで、
図8(B)、
図8(C)に示すように電池100の電圧V
Bが降下する。電池100の残容量が多い
図8(B)の場合には、電圧V
Bが下限電圧V
RLを下回ることはないが、電池100の残容量が少なくなるについて電圧降下が大きくなるため、電池100の残容量が少ない
図8(C)の場合には、電圧V
Bが下限電圧V
RLを下回り、負荷回路103が正常に動作できなくなる。特許文献1に開示された技術では、電圧V
Bが下限電圧V
RLを下回った時点で電池100の寿命と見なし、警告を発することになる。
【0009】
しかしながら、
図8(C)から明らかなように、電圧V
Bが下限電圧V
RLを下回るのは、比較的大きな電流I
Bが消費された一瞬であり、電流I
Bが少ない場合には電池100から十分な電圧を供給できることが分かる。すなわち、電池100が寿命であるとは言い切れないが、正常な動作が保証できないために、従来の技術では、電圧V
Bが下限電圧V
RLを下回った時点で電池100の寿命と見なし、電池100を交換していた。したがって、従来の技術では、まだ多くの容量が残っている電池100を交換することになり、無駄であるばかりでなく、電池100の交換頻度が高くなるという問題点があった。
【0010】
この問題を解決するために、
図9に示すように、電池100と並列に大容量のコンデンサ104を設け、一時的な電圧降下を回避することがよく行われている。このように、コンデンサ104を設けることで、電池100の残容量が多い場合(
図10(B))、電池100の残容量が少ない場合(
図10(C))のいずれの場合でも、電圧V
Bの一時的な降下を十分に防ぐことが可能となる。しかしながら、
図9に示す回路では、電池100の残容量が少なくなったことを示す内部抵抗の増加が回路上のどこにも現れないため、電池100の残容量を推定することが出来なくなってしまう。このため、電池100が放電限界になるまで警告を発することができないので、メンテナンスを行うのに充分な時間を確保することが難しくなる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、電池の内部抵抗による一時的な電圧低下を回避して電池寿命を延ばすと共に、電池の内部抵抗の上昇による電池寿命を予測することができる電池劣化計測装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電池劣化計測装置は、電子機器に電力を供給する電池と、この電池と並列に設けられたコンデンサと、前記電池と前記コンデンサとの間に設けられたスイッチと、前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出手段と、前記コンデンサの電圧が予め設定された低電圧側閾値を下回ったときに、前記スイッチをONにして前記コンデンサの充電を開始し、前記コンデンサの電圧が予め設定された高電圧側閾値を上回ったときに、前記スイッチをOFFにして前記コンデンサの充電を終了する制御手段と、前記スイッチがONしている時間を計測するON時間計測手段と、このON時間計測手段の計測結果に基づいて前記電池の寿命を判定する電池寿命判定手段と、前記電池が寿命に達したと判定されたときに、前記電池が寿命に達したことを外部に通知する電池寿命通知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の電池劣化計測装置の1構成例は、さらに、電池交換が可能か否かを外部に通知する電池交換可否通知手段を備え、前記制御手段は、外部からの操作により通常モードから電池交換モードになったときに、前記スイッチをONにして前記コンデンサの充電を開始し、この充電開始後に前記コンデンサの電圧が前記高電圧側閾値を上回ったときに、前記スイッチをOFFにして前記コンデンサの充電を終了すると共に、電池交換が可能になったことを前記電池交換可否通知手段を通じて外部に通知することを特徴とするものである。
また、本発明の電池劣化計測装置の1構成例は、さらに、外部からの操作により電池交換モードになったときからの経過時間を計測する経過時間計測手段を備え、前記制御手段は、前記経過時間計測手段で計測している時間が所定時間を超えたときに、通常モードに戻すことを特徴とするものである。
また、本発明の電池劣化計測装置の1構成例において、前記制御手段は、通常モードに戻すときに、通常モードに戻ることを前記電池交換可否通知手段を通じて外部に通知した後に、通常モードに戻すことを特徴とするものである。
また、本発明の電池劣化計測装置の1構成例において、前記制御手段は、通常モードに戻ることを通知している間に、電池交換モードに入る操作が再度なされた場合には、前記経過時間計測手段による経過時間の計測を再度開始させ、計測している時間が前記所定時間を超えたときに、通常モードに戻すことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の電池劣化計測装置の1構成例は、さらに、環境エネルギーを電気エネルギーに変換するエナジーハーベスト電源と、このエナジーハーベスト電源と前記コンデンサとの間に設けられた第1の逆流防止ダイオードと、前記スイッチと前記コンデンサとの間に設けられた第2の逆流防止ダイオードとを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の電池劣化計測装置の1構成例は、複数の前記電池が直列に接続され、さらに、各電池と並列に設けられた複数の転極防止ダイオードと、前記コンデンサと前記電圧検出手段との間に設けられた過電流保護素子と、前記コンデンサと前記電圧検出手段との間に設けられた逆流防止ダイオードとを備え、前記コンデンサおよびスイッチは、電池毎に設けられ、前記電圧検出手段は、直列に接続された複数の前記コンデンサの両端電圧を検出することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の電池劣化計測方法は、電子機器に電力を供給する電池と並列に設けられたコンデンサの電圧を検出する電圧検出ステップと、前記コンデンサの電圧が予め設定された低電圧側閾値を下回ったときに、前記電池と前記コンデンサとの間に設けられたスイッチをONにして前記コンデンサの充電を開始する充電ステップと、前記コンデンサの電圧が予め設定された高電圧側閾値を上回ったときに、前記スイッチをOFFにして前記コンデンサの充電を終了する非充電ステップと、前記スイッチがONしている時間を計測するON時間計測ステップと、このON時間計測ステップの計測結果に基づいて前記電池の寿命を判定する電池寿命判定ステップと、前記電池が寿命に達したと判定したときに、前記電池が寿命に達したことを外部に通知する電池寿命通知ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の電池劣化計測方法の1構成例は、さらに、外部からの操作により通常モードから電池交換モードになったときに、前記スイッチをONにして前記コンデンサの充電を開始する電池交換モード充電ステップと、この充電開始後に前記コンデンサの電圧が前記高電圧側閾値を上回ったときに、前記スイッチをOFFにして前記コンデンサの充電を終了すると共に、電池交換が可能になったことを外部に通知する電池交換可否通知ステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の電池劣化計測方法の1構成例は、さらに、外部からの操作により電池交換モードになったときからの経過時間を計測する経過時間計測ステップと、この経過時間計測ステップで計測している時間が所定時間を超えたときに、通常モードに戻す通常モード復帰ステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の電池劣化計測方法の1構成例において、前記通常モード復帰ステップは、通常モードに戻すときに、通常モードに戻ることを外部に通知した後に、通常モードに戻すステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の電池劣化計測方法の1構成例において、前記通常モード復帰ステップは、通常モードに戻ることを通知している間に、電池交換モードに入る操作が再度なされた場合には、前記経過時間の計測を再度開始させ、計測している時間が前記所定時間を超えたときに、通常モードに戻すステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池と並列に設けたコンデンサから負荷電流を供給するようにし、コンデンサの電圧が低電圧側閾値を下回ったときにコンデンサを充電し、コンデンサの電圧が高電圧側閾値を上回ったときにコンデンサの充電を終了することを繰り返すことにより、大きな電流が流れたときに発生する、電池の内部抵抗による一時的な電圧低下を防ぐことができ、電池の寿命を延ばすことができる。また、本発明では、スイッチのON時間を計測することにより、電池の内部抵抗の上昇による電池の寿命を簡単に予測することができる。また、本発明では、電池をコンデンサに接続してコンデンサを充電する充電時と、電池をコンデンサから切り離す非充電時とに動作を分けることができるので、非充電時であれば、電子機器が動作中でも電池の交換が可能となる。
【0018】
また、本発明では、通常モードと電池交換モードとを明確に分けることができ、また電池の交換が不可能なときか電池の交換が可能なときかを電池交換可否通知手段を通じて作業者に通知するようにしたので、コンデンサの非充電時に電池を交換することができ、この非充電時であれば、電池から電流が流れていないため、電池を交換しても火花が出ることはなく、防爆が必要なエリアにおいても安全に電池交換が可能となる。
【0019】
また、本発明では、外部からの操作により電池交換モードになったときからの経過時間を計測し、計測している時間が所定時間を超えたときに、通常モードに戻すことにより、作業者が通常モードに戻すことを忘れるのを防止できる。
【0020】
また、本発明では、通常モードに戻すときに、通常モードに戻ることを電池交換可否通知手段を通じて外部に通知した後に、通常モードに戻すことにより、作業者に注意を促すことができる。
【0021】
また、本発明では、通常モードに戻ることを通知している間に、電池交換モードに入る操作が再度なされた場合には、経過時間の計測を再度開始させ、計測している時間が所定時間を超えたときに、通常モードに戻すことにより、電池交換モードの延長が可能になる。
【0022】
また、本発明では、エナジーハーベスト電源と第1、第2の逆流防止ダイオードとを設けることにより、容易にエナジーハーベストによる電力利用を実現することができる。
【0023】
また、本発明では、転極防止ダイオードと過電流保護素子と逆流防止ダイオードとを設けることにより、複数の電池を直列に接続した構成に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電池劣化計測装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態の電池劣化計測装置は、電池1と、電流制限抵抗3と、電圧レギュレータ4と、負荷回路5とからなる電子機器に設けられる。電子機器の例としては、無線機器がある。電池1の例としてはリチウム一次電池がある。
図1中の2は電池1の内部抵抗である。
【0026】
本実施の形態の電池劣化計測装置は、電池1と並列に設けられるコンデンサ6と、電池1とコンデンサ6との間に設けられるスイッチ7と、コンデンサ6の両端電圧V
Cを検出する電圧検出部8と、電圧検出部8の検出結果に応じてスイッチ7を制御する制御部9と、スイッチ7がONしている時間を計測するパルス幅計測部10(ON時間計測手段)と、パルス幅計測部10の計測結果に応じて電池1の寿命を判定する電池寿命判定部11と、電池1が寿命に達したと判定されたときに電池1が寿命に達したことを通知する電池寿命通知部12とから構成される。コンデンサ6としては、漏れ電流の少ない大容量コンデンサが適しており、リチウムイオンキャパシタなどが使用可能である。
【0027】
図2(A)〜
図2(C)は本実施の形態の電池劣化計測装置の各部の電流および電圧を示す図、
図3は電池劣化計測装置の動作を示すフローチャートである。
電圧検出部8は、コンデンサ6の両端電圧V
Cを検出する(
図3ステップS100)。電圧検出部8は、コンデンサ6の両端電圧V
Cが予め設定された低電圧側閾値V
thlを下回ったときに出力信号DETをONにし、コンデンサ6の両端電圧V
Cが予め設定された高電圧側閾値V
thhを上回ったときに出力信号DETをOFFにする。
【0028】
制御部9は、電圧検出部8の出力信号DETがONになったとき、すなわちコンデンサ6の両端電圧V
Cが低電圧側閾値V
thlを下回ったときに(
図3ステップS101においてYES)、
図2(C)に示すようにスイッチ7をONにする制御信号SWを出力する(
図3ステップS102)。これにより、スイッチ7がONとなり、コンデンサ6の充電が開始される。以後、制御部9は、電圧検出部8の出力信号DETがOFFになるまで、制御信号SWをONにして、スイッチ7がONの状態を維持する。パルス幅計測部10は、制御信号SWがONになると、時間計測を開始する(
図3ステップS103)。
【0029】
次に、制御部9は、電圧検出部8の出力信号DETがOFFになったとき、すなわちコンデンサ6の両端電圧V
Cが高電圧側閾値V
thhを上回ったときに(
図3ステップS104においてYES)、
図2(C)に示すように制御信号SWをONからOFFに変更する(
図3ステップS105)。これにより、スイッチ7がOFFとなり、コンデンサ6の充電が終了する。以後、制御部9は、電圧検出部8の出力信号DETがONになるまで、制御信号SWをOFFにして、スイッチ7がOFFの状態を維持する。
【0030】
パルス幅計測部10は、制御信号SWがOFFになると、時間計測を終了する(
図3ステップS106)。こうして、ステップS100〜S106の処理を繰り返すことにより、高電圧側閾値V
thhと低電圧側閾値V
thlの間の電圧を電圧レギュレータ4に常に供給することができる。電圧レギュレータ4は、コンデンサ6の電圧V
Cを入力とし、一定の電圧V
Lを生成して負荷回路5に供給する。
【0031】
また、制御信号SWのパルス幅、すなわちスイッチ7がONしている時間t
PHを計測することで、コンデンサ6の両端電圧V
CがV
thlからV
thhになるまでコンデンサ6を充電する時間が分かり、この時間により電池1の内部抵抗2を推定することができる。内部抵抗2が大きいと、電池1が流すことのできる電流が少なくなるので、ON時間t
PHを長く必要とする。このように、ON時間t
PHは、電池1の寿命を反映した時間となる。
【0032】
電池寿命判定部11は、パルス幅計測部10による時間計測が終了した場合、ON時間t
PHが所定時間より長いかどうかを判定する(
図3ステップS107)。電池寿命判定部11は、ON時間t
PHが所定時間より長い場合(ステップS107においてYES)、電池1が寿命に達したと判定する(
図3ステップS108)。そして、電池寿命通知部12は、電池1が寿命に達したことを、例えば図示しないLEDの点灯によって外部に通知する(
図3ステップS109)。これにより、電池1を交換するメンテナンス作業を実施する作業者は、電池1が寿命に達したことを認識することができる。以上のようなステップS100〜S109の処理が一定時間毎に繰り返し実行される。
【0033】
以上のように、本実施の形態では、電池1と並列に設けたコンデンサ6から負荷電流I
Lを供給するようにし、コンデンサ6の両端電圧V
Cが低電圧側閾値V
thlを下回ったときにコンデンサ6を充電し、電圧V
Cが高電圧側閾値V
thhを上回ったときにコンデンサ6の充電を終了することを繰り返すことにより、大きな電流I
Bが流れたときに発生する、電池1の内部抵抗2による一時的な電圧低下を防ぐことができ、電池1の寿命を延ばすことができる。また、本実施の形態では、スイッチ7のON時間t
PHを計測することにより、電池1の内部抵抗2の上昇による電池1の寿命を簡単に予測することができる。
【0034】
また、本実施の形態では、電池1をコンデンサ6に接続してコンデンサ6を充電する充電時と、電池1をコンデンサ6から切り離す非充電時とに動作を分けることができるので、非充電時であれば、電子機器が動作中でも電池1の交換が可能となる。
【0035】
なお、スイッチ7がOFFしている時間t
PLは、負荷電流I
Lによりコンデンサ6の両端電圧V
CがV
thhからV
thlまで低下する時間を表しており、このOFF時間t
PLを計測すれば、次式に示すように負荷電流I
Lの平均値を求めることができる。
I
L={C×(V
thh−V
thl)}/t
PL ・・・(1)
式(1)におけるCはコンデンサ6の容量である。
【0036】
なお、本実施の形態では、コンデンサ6から電圧検出部8と制御部9とパルス幅計測部10と電池寿命判定部11と電池寿命通知部12に電源電圧VDDを供給しているが、これに限るものではなく、これら構成要素のうち少なくとも一部について電圧レギュレータ4から電源電圧を供給するようにしてもよい。
【0037】
高電圧側閾値V
thh、および低電圧側閾値V
thlは、例えば以下のように決めることができる。なお、いかなる場合でも、V
thh>V
thlである必要があり、高電圧側閾値V
thhと低電圧側閾値V
thlの差は十分大きい電圧である方が望ましい。なぜならば、この差が大きいほどコンデンサ6の充電や放電に時間がかかるため、時間t
PHやt
PLをより正確に求めることができるからである。
【0038】
低電圧側閾値V
thlの下限は、主に負荷回路5を正常に動作させるのに必要な電圧レギュレータ4に与えるべき電圧の下限から決定することができる。例えば、電圧レギュレータ4に最低2.4Vを与えた場合に負荷回路5が正常に動作するとした場合、この2.4Vに若干のマージンを加え、2.6Vを低電圧側閾値V
thlとして設定することができる。なお、当然ではあるが、この電圧で電圧検出部8や制御部9が正しく動作することが必要であり、また、コンデンサ6も正しく動作する必要がある。リチウムイオンキャパシタなどは、動作する下限電圧が定義されている場合があり、低電圧側閾値V
thlがこの下限電圧を上回っている必要がある。
【0039】
高電圧側閾値V
thhの上限は、主に使用する電池1の特性から決定することができる。ここでの電池1の特性とは、寿命となる前の無負荷状態での電池1の出力する最低電圧である。例えば、塩化チオニルリチウム電池のような寿命により無負荷時の電圧がほとんど変化しない電池の場合、初期状態で3.6Vであり寿命直前に3.5Vとなると仮定する。なお、ここでの寿命とは、各種条件も含まれるため、例えば温度により電圧が変化する場合、最も電圧が低くなるような温度を仮定する必要がある。この3.5Vに若干のマージンを加え、3.3Vを高電圧側閾値V
thhとして設定することができる。なお、電池1から電圧検出部8までの回路に逆流防止用ダイオードなどの電圧降下を発生しうる素子が含まれている場合、その電圧降下分を加味しなければならない。例えば、逆流防止用ダイオードの電圧降下が0.3Vの場合、3.3Vから0.3Vを減じて高電圧側閾値V
thhを3.0Vと設定することができる。当然ではあるが、電圧検出部8を含む各種回路は、高電圧側閾値V
thhで正常に動作する必要がある。
【0040】
以上から、上記の例では、低電圧側閾値V
thlは2.6V、高電圧側閾値V
thhは3.3Vまたは3.0Vとなり、高電圧側閾値V
thhと低電圧側閾値V
thlの差は0.7Vから0.4Vとなる。
なお、電圧レギュレータ4の消費電力が、電圧レギュレータ4の入力電圧に依存する場合、高電圧側閾値V
thhが高いと電圧レギュレータ4で消費される消費電流が増えてしまう。このような場合には、高電圧側閾値V
thhを低くするような設定を行うことで回避可能であるが、上述のように高電圧側閾値V
thhと低電圧側閾値V
thlの差を大きくすることのメリットが得られなくなるため、電圧レギュレータ4を、消費電力が入力電圧に依存しない構成にすることが望ましい。
【0041】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図4は本発明の第2の実施の形態に係る電池劣化計測装置の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。電子機器においては、複数の電池1を直列に接続して電圧を高くして使うことがある。本実施の形態は、このような場合に適用するものである。
【0042】
図4の例では、2個の電池1を直列に接続している。第1の実施の形態と同様に、コンデンサ6は、電池1と並列に接続され、電流制限抵抗3とスイッチ7とは、電池1とコンデンサ6との間に設けられる。これらの電流制限抵抗3とコンデンサ6とスイッチ7とは、電池毎に設けられる。また、直列接続した各電池1のばらつきなどによって発生しうる転極を防止する転極防止ダイオード13が、電流制限抵抗3およびスイッチ7よりも電池1に近い位置に電池1と並列に設けられる。転極防止ダイオード13のカソードは電池1の正極に接続され、アノードは電池1の負極に接続される。この転極防止ダイオード13も、電池毎に設けられる。
【0043】
また、コンデンサ6と電圧検出部8との間には、過電流が流れることを防止する過電流保護素子14と、電池1に対して電流が流れ込むようなことがないようにする逆流防止ダイオ−ド15とが挿入されている。電池劣化計測装置のその他の構成要素は第1の実施の形態で説明したとおりである。こうして、本実施の形態では、複数の電池1を直列に接続した構成に対応することができる。
【0044】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図5は本発明の第3の実施の形態に係る電池劣化計測装置の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の制御部9aは、表1のような動作を行うことで、通常モードと電池交換モードとを分けることができる。
【0046】
モードスイッチ16(MODE)がOFFである通常モード時の動作は第1の実施の形態と同じなので、説明は省略する。なお、本実施の形態では、制御部9aの出力として制御信号SWとパルス信号PWとがあり、制御信号SWでスイッチ7を制御し、制御信号SWの代わりにパルス信号PWをパルス幅計測部10に入力するようにしている。ただし、通常モード時においては制御信号SWとパルス信号PWは同一の信号なので、電池劣化計測装置の通常モード時の動作は第1の実施の形態と同じである。
【0047】
次に、電池交換モード時の動作について説明する。電池1を交換しようとする作業者は、以下のような手順で電池交換を行う。まず、作業者は、モードスイッチ16(MODE)をONにする。モードスイッチ16がOFFからONになったとき(表1の交換モード切替時)、制御部9aは、CHG端子にパルスPを出力すると共に、電池交換可否通知手段である発光ダイオード17(LED)を点灯させ、電池交換が不可能であることを作業者に通知する。
【0048】
このパルスPの出力により、電圧検出部8aは、コンデンサ6の両端電圧V
Cの値に関係なく、強制的に出力信号DETをONにする。これにより、制御部9aが制御信号SWをONにするので、スイッチ7がONとなり、コンデンサ6の充電が開始される。以後、制御部9aは、電圧検出部8aの出力信号DETがOFFになるまで、制御信号SWをONにして、スイッチ7がONの状態を維持する。電池1の交換前にコンデンサ6を充電する理由は、電圧検出部8aと制御部9aと負荷回路5に供給する電力を確保するためである。
【0049】
次に、制御部9aは、電圧検出部8aの出力信号DETがOFFになったとき、すなわちコンデンサ6の両端電圧V
Cが高電圧側閾値V
thhを上回ったときに、制御信号SWをONからOFFに変更すると共に、発光ダイオード17(LED)を消灯させ、電池交換が可能であることを作業者に通知する。制御信号SWがOFFになったことにより、スイッチ7がOFFとなり、コンデンサ6の充電が終了する。なお、電池交換モードにおいては、制御部9aは、電圧検出部8aの出力信号DETの値に関係なく、モードスイッチ16(MODE)がOFFになるまで、制御信号SWをOFFにして、スイッチ7がOFFの状態を維持する。
【0050】
作業者は、発光ダイオード17(LED)が消灯した後に、電池1を交換する。そして、作業者は、モードスイッチ16(MODE)をONからOFFに切り替えて、通常モードに復帰させる。
【0051】
なお、電池交換モードでは、制御信号SWのパルス幅の計測と電池1の寿命判定とを行う必要はない。そこで、電池交換モードにおいては、制御部9aは、パルス幅計測部10に出力するパルス信号PWを常にOFFにしている。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、通常モードと電池交換モードとを明確に分けることができ、また電池1の交換が不可能なときか(コンデンサ6の充電時)、電池1の交換が可能なときか(コンデンサ6の非充電時)を、発光ダイオード17(LED)で作業者に通知するようにしたので、コンデンサ6の非充電時に電池1を交換することができ、この非充電時であれば、電池1から電流が流れていないため、電池1を交換しても火花が出ることはなく、防爆が必要なエリアにおいても安全に電池交換が可能となる。
【0053】
なお、作業者がモードスイッチ16をOFFにすることを忘れるのを防ぐために、モードスイッチ16を押しボタン式のスイッチとし、制御部9aは、経過時間計測手段となるタイマ(不図示)でモードスイッチ16がONになったときからの経過時間を計測し、所定時間が経過したら、通常モードに戻すようにしてもよい。
【0054】
また、制御部9aは、所定時間が経過したときに即座に通常モードに戻さずに、発光ダイオード17(LED)を点滅させて作業者に注意を促した後に、通常モードに戻すようにしてもよい。また、制御部9aは、作業者に注意を促している間に押しボタン式のモードスイッチ16が再度押下された場合、タイマによる計時を再度開始し、所定時間が経過したら通常モードに戻すようにしてもよい。
【0055】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図6は本発明の第4の実施の形態に係る電池劣化計測装置の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。第1〜第3の実施の形態の構成によれば、容易にエナジーハーベスト(環境発電)に対応することが可能となる。
【0056】
エナジーハーベスト電源18は、熱、光、振動、電磁波、流体エネルギーなど様々な形態で環境中に存在する環境エネルギーを電気エネルギーに変換する。エナジーハーベスト電源18の1例としては太陽電池がある。このエナジーハーベスト電源は、比較的微小で不安定な電力源であるため、一旦蓄電素子に電力を蓄える必要がある。第1〜第3の実施の形態では、蓄電素子としてコンデンサ6を搭載しているため、エナジーハーベスト電源18の出力電圧を入力とし一定の電圧を生成する電圧レギュレータ19を搭載することで、コンデンサ6に充電することが可能となる。
【0057】
本実施の形態では、コンデンサ6に充電する電源として電池1とエナジーハーベスト電源18の2つを用いるため、電圧レギュレータ19とコンデンサ6との間に逆流防止ダイオード20を設けると共に、スイッチ7とコンデンサ6との間に逆流防止ダイオード21を設けることが必要となる。逆流防止ダイオード20のアノードは電圧レギュレータ19の出力に接続され、カソードはコンデンサ6に接続される。逆流防止ダイオード21のアノードはスイッチ7の出力に接続され、カソードはコンデンサ6に接続される。
【0058】
逆流防止ダイオード20を通過した電圧レギュレータ19の出力電圧は、低電圧側閾値V
thlよりも高く、かつ電圧レギュレータ4と電圧検出部8,8aと制御部9,9aとが動作可能な電圧である必要があるが、出来るだけ高い電圧に設定した方がエナジーハーベスト電源18で生成した電力を有効に使用することができるため、逆流防止ダイオード21を通過した電池1の出力電圧よりも高い方が望ましい。
【0059】
こうして、本実施の形態では、エナジーハーベスト電源18を使ってコンデンサ6を充電することができ、エナジーハーベスト電源18から電力を供給しているときには、電池1から電流が流れないため、電池1の寿命を延ばすことができる。エナジーハーベスト電源18から電力が供給されているときには、スイッチ7のOFF時間t
PLに基づいて負荷電流I
Lの平均値を計算することはできなくなるものの、通常、エナジーハーベスト電源18により生成される電力は小さいため、スイッチ7のON時間t
PHに与える影響は少なく、ON時間t
PHの変化による電池寿命の推定は可能である。
【0060】
なお、第1〜第4の実施の形態の電圧検出部8,8aと制御部9,9aとパルス幅計測部10と電池寿命判定部11と電池寿命通知部12とは、ハードウェアで構成してもよいし、CPUおよび記憶装置を備えたコンピュータを用いて構成してもよい。コンピュータを用いる場合、CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。