特許第5961138号(P5961138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961138
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】挿入突然変異の作製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-100415(P2013-100415)
(22)【出願日】2013年5月10日
(62)【分割の表示】特願2010-98(P2010-98)の分割
【原出願日】1999年9月21日
(65)【公開番号】特開2013-165731(P2013-165731A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2013年6月10日
(31)【優先権主張番号】09/159,363
(32)【優先日】1998年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】レズニコフ ウィリアム エス
(72)【発明者】
【氏名】ゴリシン イゴール ワイ
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/010077(WO,A1)
【文献】 特開2010−068813(JP,A)
【文献】 THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1998年 3月,vol.273 no.13,pp.7367-7374
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞中の細胞性核酸のランダム又は準ランダムな部位に挿入突然変異を作製する方法であって、
a)Tn5トランスポザーゼタンパク質と、(b)該Tn5トランスポザーゼと動作可能に相互作用して対合複合体を形成するのに適合したヌクレオチド配列対及び該ヌクレオチド配列対間にある転位性ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを、ポリヌクレオチド鎖の移動を嫌う条件下、in vitroで組み合わせて対合複合体を形成する工程、及び、
対合複合体を、該細胞性核酸への転位を媒介する条件下で、該標的細胞へ導入する工程を含み、ここで該対合複合体は、(a)Tn5トランスポザーゼタンパク質及び(b)ポリヌクレオチドを含み、
対合複合体は、該標的細胞へin vitroで導入され
転位は、該対合複合体が該標的細胞へ導入されるまで起こらない、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
(a)Tn5トランスポザーゼタンパク質及び(b)該Tn5トランスポザーゼと動作可能に相互作用して対合複合体を形成するのに適合したヌクレオチド配列対及び該ヌクレオチド配列対間にある転位性ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの間の対合複合体を形成する方法であって、
(a)と(b)とを、ポリヌクレオチド鎖の移動を嫌う条件下、in vitroで組み合わせて、対合複合体を形成する工程、
を含む方法。
【請求項3】
該Tn5トランスポザーゼタンパク質と該ポリヌクレオチドとを、ポリヌクレオチド鎖の移動を支持するには不十分なレベルのマグネシウムイオンを含む反応においてin vitroで組み合わせる、請求項記載の方法。
【請求項4】
該反応がマグネシウムイオンを欠いている、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
適用なし
政府委託研究又は開発に関する記載
適用なし
発明の背景
細胞の染色体核酸及び染色体外核酸へ外来性核酸を効率的に挿入し、ペプチド及びタンパク質の発現又は調節に関連する染色体領域を同定することが、分子生物学分野において望まれている。同一の技術は、新規な治療薬及び薬物の開発においても有利に使用される。
1つの一般的方法は、in vivoでのTn5突然変異誘発に依存し、興味の対象となるポリヌクレオチドを細胞DNAに挿入して、挿入ポリヌクレオチドをランダム又は準ランダムな部位に含む細胞のライブラリーを構築する。現存のin vivo Tn5突然変異誘発法は、天然又は導入した発現構築物いずれかにより標的細胞がトランスポザーゼをコードすることを要求する。したがって、各標的細胞のタイプに適切な発現系を構築することが必要になる。これには時間がかかり、かつ、各標的細胞のタイプの要求についての広範な知識が要求される。
多くの場合、トランスポザーゼをコードする遺伝子は活性トランスポゾンによりコードされている。活性トランスポゾンは初期の所望の突然変異誘発仮定の後、標的細胞内で転位を続けることができる。このような望ましくない残留性転位は、挿入突然変異体ライブラリーの分析を複雑にする点で好ましくない。
更に、in vivo Tn5突然変異誘発についての多数の技術は、外来性DNAの標的細胞への導入するための複雑な生物学的メカニズム、例えばバクテリオファージλ形質導入ファージ又はコンジュゲートプラスミドなどに依存している。
Shoji-Tanaka, A.ら(B.B.R.C. 203:1756-1764 (1994))は、精製レトロウイルスインテグラーゼを使用してマウス細胞への遺伝子伝達を媒介することを記載している。
Kuspa, A. 及び W.F. Loomis(P.N.A.S. U.S.A. 89:8803 8807 (1992))らは、切断酵素と共に酵素切断核酸を標的細胞へエレクトロポレーションすることによる、制限酵素を用いて線状にしたプラスミドのゲノム制限部位への組み込みを詳細に記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
発明の簡単な要約
本発明は、転位性ポリヌクレオチドを標的細胞の染色体又は染色体外の核酸のランダム又は準ランダムな部位に効率的に挿入する方法に要約される。前記方法は細胞性核酸と対合複合体(cynaptic complex)とを、細胞性DNAへの転位を媒介する条件下、標的細胞内で組み合わせる工程を含み、前記対合複合体は(b)ポリヌクレオチドと複合体化した(a)Tn5トランスポザーゼタンパク質を含み、前記(b)ポリヌクレオチドはTn5トランスポザーゼとの動作可能な相互作用に適合したヌクレオチド配列対及び前記ヌクレオチド対間の転位性ヌクレオチド配列を含んでいる。本発明の方法の対合複合体は、転位する態勢(poise)にある対合複合体が生産的(productive)転位を実際に受けることを嫌う(disfavor)又は阻止する条件下、in vitroにて形成する。転位性ヌクレオチド配列の標的核酸への生産的転位の頻度は、過剰活性化トランスポザーゼ又はTn5トランスポザーゼの存在下での効率的な転位に特に十分に適合した配列を含む転位性ポリヌクレオチドのいずれか又は両方を使用することにより増強することができる。
更に本発明は挿入突然変異を含む細胞のライブラリーの作製方法に要約される。前記方法は、複数の標的細胞の中で、細胞性核酸と対合複合体とを前記と同様にして組み合わせる工程及び挿入突然変異を含む細胞をスクリーニングする工程を含んでいる。
別の側面において本発明は、前記方法にしたがい形成した挿入突然変異を含む細胞のライブラリーとして要約される。ランダムかつ独立した突然変異性挿入をゲノムに含む細胞集団をスクリーニングして、挿入突然変異誘発に付されなかった細胞に対する表現型又は遺伝子型の変化を誘導する挿入突然変異を含む細胞を選択することができる。
対合複合体の形成に使用する転位性ポリヌクレオチドを、全てのフランキング配列から離れた転位性DNAから構成することができることは、本発明の利点である。これは、分子内転位の可能性を減少させ、標的ゲノムへの転位の可能性を増大させる点においても利点である。更に、ポリヌクレオチドからドナーバックボーン(donor backbone)(DBB)配列を除去することにより、本発明の方法に使用することができるトランスポゾン配列の調製を単純化する。
対合複合体を非生産的分子内転位事象を嫌う条件下で形成することができることは、本発明の別の利点である。これは、実質的に全ての対合複合体が細胞性DNAと組み合わされたときに転位を受けることができる点で有利である。対合複合体中の核酸が不活性であることはほとんどない。
転位を促進する条件は、対合複合体が標的細胞内で標的核酸の存在下に存在した後にのみ遭遇することは本発明の特徴である。本発明のその他の対象、利点及び特徴は、下記の詳細な説明を考慮して明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、対合複合体の標的細胞への転位、続く挿入突然変異体の選択を示している。
図2図2は、本発明における使用に好ましいトランスポザーゼ酵素を示している。
図3図3は、本発明において、転位性ポリヌクレオチド配列にて使用することができるトランスポゾン末端配列を示している。
図4図4は、モザイク端及びその間の転位性核酸配列を有するトランスポゾン又は転位性ポリヌクレオチド配列を示している。
【発明を実施するための形態】
【0004】
発明の詳細な説明
国際出願第PCT/US97/15941号(国際公開 第WO 98/10077号)(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される修飾Tn5トランスポザーゼを使用したin vitro転位系において、本件出願人は、修飾突然変異体Tn5トランスポザーゼ及び転位性ヌクレオチドに隣接する修飾Tn5ポリヌクレオチド配列を使用したin vitroでの転位性ポリヌクレオチドの生産的転位を証明する。
本発明は、in vitro転位が実質的に存在しないにもかかわらず対合複合体がin vitroで形成される点で従来の系とは異なる。対合複合体は標的細胞へ導入され、そこでin vivo転位が容易に起こる。図1は、標的細胞の染色体核酸又は染色体外核酸におけるランダム又は準ランダムな部位に挿入突然変異を効率的に導入する本発明のTn5をベースとする方法の1つの側面の概略図を提供する。本発明の方法において、標的細胞内の細胞性核酸と対合複合体とを、細胞性DNAへの転位を媒介する条件下で組み合わせる。前記対合複合体は(a)Tn5トランスポザーゼタンパク質(図1では隣接する円の対として示される)並びに(b)ポリヌクレオチドであって、Tn5トランスポザーゼとの動作可能な相互作用に適合した逆方向(inverted)のヌクレオチド配列対(図1では矢印として示される)及び該ヌクレオチド配列対間の転位性ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含んでいる。対合複合体の構造は、転位性ポリヌクレオチドの細胞性核酸への転位における中間体である。対合複合体がポリヌクレオチド鎖移動(transfer)反応に関与する能力に干渉することにより、対合複合体形成を転位から分離することができることが本明細書にて開示される。本発明の方法において対合複合体は、対合複合体が生産的転位を受けることを嫌う又は防ぐ条件下、in vitroで形成される。本発明は、Tn5突然変異誘発法の使用を、例えばプロモーター及びその他の調節配列の構造及び要件についてほとんど知られていない大腸菌(E.coli)系統に近くない細菌へと拡張することができる。そのような細胞では、トランスポザーゼは適切な量で発現しないか、又は不安定であろう。本発明は、内在性トランスポザーゼ分子の生産の必要性を回避する。更に、導入されるトランスポザーゼはトランスポゾンポリヌクレオチドと完全に複合体化するので、該トランスポザーゼは全ての標的DNAの存在下で機能する態勢にあり、かつ該トランスポザーゼが複合体化するポリヌクレオチドの転位を促進するのに十分に安定である。本発明者等により開発された、対合複合体がポリヌクレオチド鎖移動を受けることを防ぐ1つの方法は、反応混合物からマグネシウムイオン(Mg++)を減少又は除去することにより達成される。したがって、本発明の好ましい態様では、適切なトランスポザーゼ及び適切な転位性DNA要素を、反応混合物がポリヌクレオチド鎖の移動を支持するのに不十分なレベルのマグネシウムを含んでいる、好ましくはマグネシウムイオンを含んでいないin vitro反応において組み合わせる。対合複合体を形成するのに適切な反応緩衝液は、本明細書に組み込まれた前記国際出願の19頁に記載の反応緩衝液を改変して酢酸マグネシウムを除去したものであることができる。反応緩衝液からBSA及びスペルミジンを除去することもできる。反応中にヌクレアーゼが存在しない場合には、tRNAを緩衝液から除去することができる。この場合、tRNAを添加することができる。反応緩衝液を更に単純化することが可能であるかもしれない。典型的な反応は後述の実施例に記載する。
【0005】
対合複合体は効率的な転位を媒介する態勢にあり、必要とされるまで低温貯蔵下に有利に置くことができる。対合複合体を、転位に都合のよい条件を提供することができる適切な標的細胞へ導入することができる。そこでは効率的な転位が起こる。対合複合体を複数の適切な標的細胞へ導入し、挿入突然変異を含む細胞を選択することにより、ランダム又は準ランダムな挿入突然変異を含む細胞のライブラリーを作製することができる。挿入突然変異体のライブラリーを調製するために、転位性核酸配列は、好ましくは便利な選択可能なマーカー、例えば抗生物質耐性を与え、細胞性DNAにて挿入突然変異を欠く細胞を生産的転位が起きている細胞から容易に区別することを可能にする遺伝子を含んでいる。本発明にしたがい形成したライブラリーを、転位後の遺伝子型又は表現型の変化についてスクリーニングすることができる。分子遺伝学のレベルにおいて、ハイブリダイゼーション、制限酵素断片マッピング、ヌクレオチド配列決定及びこれらの組み合わせ又は遺伝子変化を同定するその他の方法を含む標準的な分析方法を使用することができる。表現型レベルにおいて、変化した増殖特性又はその他の表現型を有する個々の突然変異体について転位突然変異体のライブラリーメンバーを評価することができる。
所望の特徴を有する転位性ポリヌクレオチド配列を含む対合複合体のキット、例えば後述のキットを商品化して、後述するように挿入配列が特定の目標を達成するように設計されている挿入突然変異を含むライブラリーの迅速な作製を促進することができる。本発明の対合複合体は、生産的転位を受けるポリヌクレオチド分子を実質的に含まない。更に、対合複合体はin vitro反応で作製されるので、前記複合体をその他のタンパク質、遺伝物質等が除かれた実質的に純粋な調製物として提供することができる。
対合複合体中のTn5トランスポザーゼは、対合複合体をin vitroで効率的に作製するTn5トランスポザーゼ(例えば、約25%以上のトランスポゾンDNAをトランスポザーゼを有する対合複合体へと転換するもの)であることができる。トランスポザーゼは、国際出願第PCT/US97/15941号に開示される過剰活性化Tn5であることができる。好ましい変異体Tn5トランスポザーゼは、野生型Tn5トランスポザーゼに対して修飾した変異体Tn5トランスポザーゼである。前記変異体Tn5トランスポザーゼは部位54及び部位372に突然変異を含み、かつ、ドナーDNAのTn5外側端(outside end)反復配列に対する高い結合活性を有し、野生型Tn5トランスポザーゼよりも低い多量体形成能力を有する。Tn5外側端反復配列に対する高い結合活性を与える部位54における突然変異は、野生型のグルタミン酸からリジンへの変異である。非生産的多量体形成能力の低下を引き起こす部位372における突然変異は、野生型のリジンからプロリンへの変異である。
【0006】
トランスポザーゼと部分的に重複する配列においてコードされかつトランスポザーゼ活性を妨害することができるタンパク質、いわゆるタンパク質性インヒビターを、トランスポザーゼが含まないことも好ましい。本発明の方法では、トランスポザーゼは精製された又は部分的に精製された形態で使用される。トランスポザーゼ酵素が細胞から(通常の方法を用いて)得られる場合、本発明での使用の前にトランスポザーゼをタンパク質性インヒビターを分離することができるだろう。しかしながら、トランスポザーゼをコードする遺伝子からタンパク質性インヒビターの開始コドンを単純に除去することにより、すべての混入タンパク質性インヒビター存在の可能性を遺伝子的に除去することができる。
トランスポザーゼの部位56のアミノ酸であるメチオニンをコードする野生型Tn5トランスポザーゼ遺伝子におけるAUGは、タンパク質性インヒビターの最初のコドンである。しかしながら、部位56のメチオニンの置換はトランスポザーゼ活性に対して明白な影響を与えず、同時にタンパク質性インヒビターの翻訳を阻止し、結果として転位率がやや高くなることが既に示されている(Wygand, T. W. 及び W. S. Reznikoff, "Characterization of Two Hypertransposing Tn5 Mutants," J. Bact. 174:1229-1239 (1992)、参照することにより本明細書に組み込まれる)。特に、本発明者等は好ましい態様においてメチオニンをアラニンで置換した(メチオニンをコードするAUGコドンを、アラニンをコードするGCCで置換した)。それゆえ、この改変は単に技術的に有利である(なぜなら、in vitro系にタンパク質性インヒビターが存在しないことを保証するからである)と考えることができ、本発明に必須ではない(なぜなら、その他の手段を使用してタンパク質性インヒビターをin vitro系から除去することができるからである)けれども、本発明の好ましいトランスポザーゼは、アミノ酸の部位56にメチオニン以外のアミノ酸を含んでいる。図2に模式的に示されるのは、野生型Tn5トランスポザーゼに対して部位54、56及び372に突然変異を有する好ましいトランスポザーゼ酵素である。
【0007】
対合複合体内の転位性ポリヌクレオチドは、in vitro Tn5転位系にて機能することができる長さ18又は19塩基の配列を含む逆方向ポリヌクレオチド対により隣接されるヌクレオチド配列として特徴付けられる。ポリヌクレオチド(又はそのあらゆる部分)は、当業者に周知の方法により合成することができ、又、核酸フラグメントの遺伝子操作法を使用して作製することができる。図3について言及すると、野生型Tn5トランスポゾン配列の外側端(OE)末端配列の既知の核酸配列(5'-CTGACTCTTATACACAAGT-3')を隣接ポリヌクレオチドとして使用することができ、同様に野生型Tn5トランスポゾン配列の内側端(inside end)(IE)末端配列(5'-CTGTCTCTTGATCAGATCT-3')も使用することができる。野生型OE末端配列を使用することができるけれども、構築物中の末端がOEとIE配列との間のモザイク中間体である場合、野生型OEと少なくとも同等、通常は野生型OEよりも有意に高い転位頻度を達成することができることを証明している。好ましいモザイク末端配列は、部位10、11及び12においてそれぞれA、T、Aを含み、更に野生型OE及びIEに共通のヌクレオチド(例えば、部位1〜3、5〜9、13,14、16及び適宜19)を含んでいる。部位4、15、17及び18におけるヌクレオチドは、野生型OE又は野生型IEのいずれかにおいて対応の部位に見いだされるヌクレオチドに対応することができる。部位4のヌクレオチドがTであり、前記のヌクレオチドと組み合わせた場合、転位頻度を野生型OEよりも増強させることができることが注目される。好ましいモザイク配列には、CTGTCTCTTATACACATCT-3'及びCTGTCTCTTATACAGATCT-3'が含まれる。同一でない端の組み合わせも用いることができる。
【0008】
転位性ポリヌクレオチドは好ましくは、Tn5転位に必要な逆方向ポリヌクレオチド配列をその末端に含む線状ポリヌクレオチドである。線状であるが、転位性核酸及び逆方向ポリヌクレオチド配列以外の配列を含む転位性ポリヌクレオチドを使用することも可能であるが、好ましくはない。そのような追加の配列は転位性ポリヌクレオチドのいずれかの側に位置づけることができるが、トランスポゾンDNAの調製を複雑にすることからこのような配置は好ましくない。転位性ポリヌクレオチドが環状、スーパーコイルDNA分子として提供されるとき、転位は起こることができるが、転位頻度は転位性配列が線状分子であるとき程は高くない。
必須の末端配列間の転位性核酸配列は、標的ゲノムへ挿入することが望ましい全ての配列を含むことができる。図4は、いわゆるモザイク端及びその間の転位性ポリヌクレオチドを有する概略的なトランスポゾンを示している。当業者は所望の転位性核酸配列を容易に構築して特定の目的を達成することができる。本発明は、逆方向ポリヌクレオチド配列間のあらゆる特定の核酸に限定されるものではない。むしろ配列は、全ての検出可能な配列、又は、当業者に既知の方法を用いて検出することができる生成物をコードする配列であることができる。非限定的な例により、転位性核酸配列は標的に選択可能なマーカーを提供することができる。前記のマーカーは前記転位性核酸配列によりコードされるペプチド又はタンパク質であることができる。前記配列は、細胞へ抗生物質耐性を与えるタンパク質をコードすることができる。代替として転位性ポリヌクレオチドは、標的細胞においてその存在を検出することができる配列を含むことができる。そのような配列には、希な制限酵素に対する切断配列又はプローブが存在する全ての配列を含むことができる。
更に転位性ポリヌクレオチドは、近くの配列の発現(転写又は翻訳)を調節する配列を含むことができる。調節配列は、転位性ポリヌクレオチド内のコード配列によりコードされるタンパク質又はペプチドの発現を促進することができる。代替として、転位性ポリヌクレオチドは、全てのコード配列から離れた調節配列又は全ての調節配列から離れたコード配列を含むことができる。前者の場合、ゲノムのコード配列上流の転位事象は、内在性コード配列の転写及び/又は翻訳の調節に必要な調節要素を提供することができる。後者の場合、転位した配列は、マーカー遺伝子であって、当該遺伝子が細胞性核酸の調節配列に隣接する部位に転位したときにのみ生成物を生じる遺伝子を導入することにより、ゲノム内の未知の調節配列を明らかにすることができる。
【0009】
対合複合体が前記の同定された成分からin vitroで形成されると、これを当業者に既知の方法を使用して標的細胞へ導入することができる。代替として対合複合体を使用前に−40℃で保存することができる。対合複合体を細胞へ導入する好ましい方法はエレクトロポレーションであり、例えば、Dauer, W.J.ら, Nucleic Acids Research, 16:6127 (1988)(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)の例を使用する。転位は、追加の処置なしに、細胞性核酸への送達へと続く。対合複合体が数μlより多い量で存在する場合は、エレクトロポレーション反応における使用の前に、対合複合体を低塩緩衝液、例えば、限定されるものではないが、7〜10% グリセロールを含む6mM Tris、pH 7.5に対して透析して、電極間のアーク放電が起こらない程十分に低いレベルまで反応混合物中の塩を減少させることも好ましい。対合複合体を標的細胞へ導入するためのその他の適切な方法は既知であり、これには形質転換、形質移入及びリポソーム媒介法を含むことができる。
本発明の系は、突然変異を細胞へ迅速かつ効率的に導入する方法を提供する。転位性ポリヌクレオチド配列が提供されるので、この系は宿主特異的ではなく、全ての標的細胞において機能するだろう。本発明は、細胞、特にトランスポザーゼをコードしない細菌細胞において特別の有用性を見いだす。なぜなら、必要なトランスポザーゼ分子が対合複合体の一部として直接提供されるからである。本発明の方法は、無核標的系、例えば細菌細胞において機能することが証明される。特に対合複合体を、大腸菌細胞(MG1655株)へ導入したとき、生産的な転位が観察された。本発明の方法を有核細胞、例えば古細菌、植物及び動物細胞、特に線虫、両生類並びにげっ歯類及びヒト(ただし、これらに限定されるものではない)を含む哺乳類において使用することを妨げる科学的障害の存在は知られていない。対合複合体の有核細胞への導入方法では、対合複合体に核局在化シグナルを、好ましくは遺伝子修飾されたトランスポザーゼタンパク質の一部として提供することが好ましいだろう。
本発明は以下の実施例を考慮することにより容易に理解されるだろう。但し、実施例は例示であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0010】
実施例
1μgの反応において、0.05μgの精製した過剰活性化トランスポザーゼ(EK54/MA56/LP372)(アミノ酸配列は、本明細書に組み込まれた国際出願第PCT/US97/15941号に報告されている)と、標的細胞にカナマイシン耐性を与えるタンパク質をコードする発現カセットを含む0.1μgの転位性ポリヌクレオチドとを混合した。発現カセットは、本明細書に組み込まれた前記国際出願に記載され、図3に示すモザイク端により隣接されていた。ポリヌクレオチドを、別々の反応において、スーパーコイルしたプラスミド、線状プラスミド又はTn5トランスポザーゼにより媒介される転位に必要な逆方向配列をその末端に含むポリヌクレオチドとして提供した。
混合物を前記の反応緩衝液中、マグネシウムイオン(Mg++)の存在下又は非存在下で1時間インキュベートした。マグネシウムイオンの非存在下では対合複合体が形成したが、in vitro転位は起こらなかった。
インキュベート後、反応混合物を40μlの大腸菌株MG1655と混合し、本明細書に組み込まれるDauerの方法にしたがいエレクトロポレーションに付した。細胞(1.4×109)をLB−Kanプレート上に置き、カナマイシン耐性コロニーを計数した。10μlの反応混合物を使用したとき、混合物を適切な緩衝液に対して透析して、電極間のアーク放電を防止した。
【0011】
表1.Tn5対合複合体のエレクトロポレーション/転位
DNA Tnp Mg++ 容量 Kan4 CFU
スーパーコイル* − + 1μl なし
スーパーコイル* + + 1μl 1.6×103
線状* + + 1μl 6.9×103
遊離要素 + + 1μl 3.9×103
(PvuII切断)
遊離要素 + − 1μl 5.3×104
遊離要素 + − 1μl(透析) 4.0×104
遊離要素 + − 10μl(透析) 5.5×105
*ドナーのバックボーン配列を含む
【0012】
反応混合物をマグネシウムイオンの非存在下でインキュベートしたとき、カナマイシン耐性を与える転位性ポリヌクレオチドの細胞における転位が高いことが表より明らかである。転位性ポリヌクレオチドが転位性部分に隣接する配列を含まないとき(表中、「遊離要素」)に優れた転位が観察された。マグネシウムを反応混合物へ添加したとき、カナマイシン耐性CFUにおける10倍をこえる減少が観察された。これは、マグネシウムイオンの存在下で起こることができる非生産的分子内転位の結果であると考えられる。
ライブラリーの構築において、完全な範囲(すなわち、各ORFへの挿入)の99%の可能性を達成するために、約20000の転位事象が要求される。転位がORF標的選択に関して真にランダムであること及び各ORFが同一の大きさであることをこの計算では仮定している。Tn5挿入物は探求した全ての遺伝子において見いだされたが、Tn5は、遺伝子分布に関するランダム性をゆがめる(skew)ことができる標的配列の偏りを有している。核様体の凝縮/組織化により転位に課される未知の偏りが存在するかもしれない。更に、全てのORFが同じ大きさではなく、大腸菌中では、例えば100コドン以下から2383コドンの範囲である。一方、前記の対合複合体のエレクトロポレーション/転位の結果は、不要な機能への挿入を示した。なぜなら、生存可能なコロニー形成単位のみが形成されたからである。このことは、完全な転位挿入プールを示している。したがって、十分に代表的なライブラリーを形成するために、50000〜500000の実行可能な転位事象のプールが探求されるべきである。本明細書に記載の発明は、この大きさのライブラリーを作製するのに十分に効率的である。
本発明は前記の記載に限定されるものではなく、全ての改変及び修飾が請求の範囲内にあることが意図される。
【0013】
本発明は以下に関するものである。
1.標的細胞中の細胞性核酸のランダム又は準ランダムな部位に挿入突然変異を作製する方法であって、
対合複合体を、該細胞性核酸への転位を媒介する条件下で、該標的細胞へ導入する工程を含み、
該対合複合体は、(a)Tn5トランスポザーゼタンパク質及び(b)該Tn5トランスポザーゼと動作可能に相互作用して該対合複合体を形成するのに適合したヌクレオチド配列対及び該ヌクレオチド対間にある転位性ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むことを特徴とする方法。

2.更に、該Tn5トランスポザーゼタンパク質と該ポリヌクレオチドとを、ポリヌクレオチド鎖の移動を嫌う条件下、in vitroで組み合わせて、対合複合体を形成する工程を含む、前記1記載の方法。

3.(a)Tn5トランスポザーゼタンパク質及び(b)該Tn5トランスポザーゼと動作可能に相互作用して該対合複合体を形成するのに適合したヌクレオチド配列対及び該ヌクレオチド対間にある転位性ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの間の対合複合体を形成する方法であって、
(a)と(b)とを、ポリヌクレオチド鎖の移動を嫌う条件下、in vitroで組み合わせて、対合複合体を形成する工程、
を含む方法。

4.該Tn5トランスポザーゼタンパク質と該ポリヌクレオチドとを、ポリヌクレオチド鎖の移動を支持するには不十分なレベルのマグネシウムイオンを含む反応においてin vitroで組み合わせる、前記3記載の方法。

5.該反応がマグネシウムイオンを欠いている、前記4記載の方法。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]