特許第5961154号(P5961154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961154
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】仮設トイレの便槽
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   A47K11/00 112
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-240632(P2013-240632)
(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公開番号】特開2015-100375(P2015-100375A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040958
【氏名又は名称】みのる化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100974
【弁理士】
【氏名又は名称】香本 薫
(72)【発明者】
【氏名】赤松 健一
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−147479(JP,A)
【文献】 実開平6−38785(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/00−11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックのブロー成形体からなり、前面側にステップが形成され、前記ステップの前面壁に前方に突出する接地バンパーが型割面に沿って一体的に形成されていることを特徴とする仮設トイレの便槽。
【請求項2】
前記接地バンパーより下側の前面壁が後方側に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載された仮設トイレの便槽。
【請求項3】
前記接地バンパーが前面壁に接続する中実部とその前方側の中空部からなることを特徴とする請求項1又は2に記載された仮設トイレの便槽。
【請求項4】
前記接地バンパーが板状の中実部からなることを特徴とする請求項1又は2に記載された仮設トイレの便槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共の場所、工事現場、イベント会場、パーキング、被災地など、様々な場所に設置される仮設トイレの便槽に関し、特にプラスチックのブロー成形体からなる仮設トイレの便槽に関する。
【背景技術】
【0002】
仮設トイレは、特許文献1,2に記載されているように、ベースとなる便槽と、便槽の上に設置されたフロアパネルと、フロアパネルの上に設置された踏み台と、踏み台の中央部に設置された便器と、フロアパネルの周囲を囲み、便槽に固定されたボックスと、そのほかボックス内に配置された水洗機器等からなる。ボックスは、四方の壁パネルと、天井パネル、及び前方の壁パネルに設置されたドアからなり、便槽の上に着脱可能である。便槽はプラスチックのブロー成形体からなり、前方側(ドア正面側)に一段低くなったステップが形成され、左右幅より前後方向が長くなっている。
【0003】
仮設トイレは、通常、組み立てた状態でトラックの荷台に載せて設営地に搬送され、設営地で荷台から下ろされる。仮設トイレの搬送用トラックとしては、設営地での荷下ろしを想定して、パワーゲート付きトラックやクレーン付きトラックが用いられる。また、設営地にフォークリフトが用意されている場合、通常のトラックで搬送することもある。その一方で、通常のトラックで設営地に搬送したうえ、機械を使わず、人力で荷下ろし(手下ろしという)を行うことも多い。
【0004】
仮設トイレをトラックの荷台から一人で手下ろしするには、図6に示すように、トラック1の荷台2上で仮設トイレ3を前方側(ドア正面側)に滑らせ(2点鎖線参照)、荷台2から引き出しながら徐々に傾け、便槽4の後端が荷台2の端に引っ掛かった状態で便槽4の前端コーナー部4aを接地させる(実線参照)。次に、接地した便槽4の前端コーナー部4aを軸に仮設トイレ3を90°回転させて荷台2から外し、100kg前後ある仮設トイレ3の自重と、作業者の体重でバランスを取りながら、徐々に傾きを小さくし、便槽4の底面全体を接地させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−103944号公報
【特許文献2】特開平8−84687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
仮設トイレ3をトラック1の荷台から手下ろしする場合、便槽4の前端コーナー部4aが接地するとき同コーナー部に衝撃が掛かり、続いて仮設トイレ3を回転させるとき同コーナー部が地面に擦れ、プラスチックが摩耗する。このため、手下ろしによる仮設トイレ3の設営を繰り返すと、便槽4の前端コーナー部4aが早期に損傷し、穴があいて使用できなくなるという問題がある。なお、便槽4の前端コーナー部4a(図2に付記した2点鎖線参照)は、ブロー成形時にプラスチックのパリソンが膨張して薄肉化しやすい部位である。
【0007】
この穴あきを防止するため、便槽4の前端コーナー部4aにFRP等からなる別部材を貼り付けたり、前端コーナー部4aのプラスチックを厚肉化することが一応考えられる。しかし、別部材を貼り付けるのはコストアップ要因となり、また、前端コーナー部4aを厚肉化するには結局便槽4全体を厚肉化する必要があり、これもコストアップ要因であり、大幅な重量増という問題も生じる。
本発明は、仮設トイレの便槽に関する上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、設営地において仮設トイレをトラックの荷台から手下ろしする場合であっても、特段のコストアップを伴うことなく、便槽(タンク部分)を損傷しにくくし、便槽の寿命を延ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る仮設トイレの便槽は、プラスチックのブロー成形体からなり、便槽の前面側にステップが形成され、前記ステップの閉じた前面壁に前方に突出する接地バンパー(緩衝部)が型割面(パーティングライン)に沿って一体的に形成されていることを特徴とする。
前記便槽において、前記バンパーより下側の前面壁が後方側に傾斜していることが望ましい。前記バンパーは、例えば、前面壁に接続する中実部とその前方側の中空部からなり、あるいは、全体が板状の中実部からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る仮設トイレの便槽は、ステップの前面壁に前方に突出する接地バンパー(緩衝部)が型割面に沿って一体的に形成されていることから、仮設トイレをトラックの荷台から手下ろしする場合、前記接地バンパーを接地させ、かつ前記接地バンパーを軸にして仮設トイレを回転させることができる。また、接地バンパーは型割面に沿って形成されているから、ブロー成形時にプラスチックのパリソンが膨張して薄肉化することが防止され、比較的強度が高い。従って、仮設トイレを手下ろしするに際して、便槽の本体部分(タンク部分)が傷みにくく、寿命の長い便槽とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る仮設トイレの便槽の斜視図である。
図2】同便槽の要部断面図(主としてステップ部分の断面図)である。
図3図1に示す便槽を成形するブロー成形金型の型締め開始直後(a)、型閉め完了直前(b)及び型閉め完了後(c)の断面図(便槽の上下締結座及び凹溝に対応する部分)である。
図4図1に示す便槽を成形するブロー成形金型の型締め完了後の断面図(便槽の上下締結座及び凹溝から外れた部分)である。
図5】別の便槽の要部断面図(主としてステップ部分の断面図)である。
図6】従来の便槽を組み付けた仮設トイレをトラックの荷台から一人で手下ろしする方法を説明する図(トラックの後方側から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図5を参照して、本発明に係る仮設トイレの便槽について説明する。
本発明に係る便槽11(図1参照)は、汚物が収容される本体部分(タンク部分)12と接地バンパー13からなり、プラスチックのブロー成形により一体的に成形される。本体部分12は、前方側に一段低くなったステップ14を有し、天面壁15、ステップ面壁16、底面壁17、側面壁18,19、正面壁20、背面壁21、ステップ前面壁22からなり、天面壁15に便器部穴23と汲み取り穴24が形成されている。
【0012】
便槽11の一方の側面壁18には、前後方向の2箇所に、天面壁15に沿って中実板状の上締結座25が略水平に形成され、その直下の底面壁側(高さ的に底面壁17の近傍)に同じく中実板状の下締結座26が若干外向き下方に傾斜して形成され、その間に上下方向全長にわたって同一幅で同一深さの凹溝27が形成されている。後述するように、上下締結座25,26はブロー成形金型の型割面に沿って形成されたものである。ブロー成形後、上下締結座25,26に組み付け用の穴28,29が形成される。便槽11の他方の側面壁19にも、上下締結座25,26及び凹溝27と対称的に、図示しない上下締結座及び凹溝が形成されている。便槽11(天面壁15)の上に、図示しないフロアパネル及びボックス(特許文献1,2参照)を配置し、前記上下締結座25,26、凹溝27及び穴28,29を適宜利用して便槽11に固定し、仮設トイレを組み立てることができる。
【0013】
ステップ前面壁22の高さ方向中程に、前方に突出する接地バンパー13が本体部分12と一体的に形成されている(図1,2参照)。接地バンパー13は、ステップ前面壁22に接続する挟幅の板状中実部31と、その前方側に形成された中空部32からなり、この例では便槽11の左右幅いっぱいに略水平に形成されている。便槽11のステップ前面壁22は閉じており、本体部分(タンク部分)12の内部空間と中空部32の内部空間は通じていない。
ステップ前面壁22は、接地バンパー13を挟んで上側の上部壁22aと下側の下部壁22bからなり、下部壁22bは後方側に傾斜し、下端で底面壁17に続いている。後述するように、接地バンパー13はブロー成形金型の型割面に沿って形成されている。なお、見方を変えれば、下部壁22bは底面壁17の一部ということもでき、その見方に立てば、底面壁17の前端部(ステップ下部)が前方上向きに傾斜し、その上端がステップ前面壁22に続いているということができる。
【0014】
このような上下締結座25,26、凹溝27及び接地バンパー13を有する便槽11は、図3,4に示す一対のブロー成形金型33,34と一対の可動金型35,35を用いてブロー成形することができる。ブロー成形金型33の内面には、図1に示す一点鎖線36,37,38,40,42より上の部分に対応するキャビティ面が形成されている。ブロー成形金型34の内面には、図1に示す一点鎖線36,37,39,41,42より下の部分に対応するキャビティ面が形成されている。可動金型35,35はブロー成形金型33の対称位置に水平面内で揺動可能に設置され、その内面には図1に示す一点鎖線38,39,40,41に囲まれた部分(側面壁18,19の中央部分)に対応するキャビティ面が形成されている。可動金型35,35の内面には、凹溝27に対応する凸条43と、その両側に上下締結座25,26に対応する切り欠き部44,45が形成されている。
【0015】
図3を参照して便槽11をブロー成形するプロセスの一例を説明すると、次のとおりである。
(1)パリソン46を型開きした一対のブロー成形金型33,34の間に降下させ、下方から図示しないブローパイプをパリソン46内に挿入し、パリソン46の下端をプリピンチする。このとき可動金型35,35は外側に揺動し開いている。
(2)ブロー成形金型33,34の型締めを開始し、同時に前記ブローパイプからエアを導入してパリソン46のプリブローを行う。型閉め開始直後の状態を図3(a)に示す。
(3)ブロー成形金型33,34の型締めの途中で、可動金型35,35を内側に揺動させ、プリブローされたパリソン46を側方から内向きに押さえる。可動金型35,35が内側へ揺動する過程で、パリソン46の一部がブロー成形金型33と可動金型35の切り欠き部44の間に張り出し、図3(b)に示すように、ブロー成形金型33の面と可動金型35の切り欠き部44の面の間に形成される平らな隙間に2重に折り込まれ、互いに溶着する。この溶着した部分が上締結座25となる。また、パリソン46の一部は、ブロー成形金型34と可動金型35の切り欠き部45の間に張り出す。
【0016】
(4)型締め完了の時点で、図3(c)に示すように、パリソン46の一部が、ブロー成形金型34の面と可動金型35の切り欠き部45の面の間に形成される平らな隙間に、2重に折り込まれ、互いに溶着する。この溶着した部分が下締結座26となる。なお、便槽11の上下締結座25,26及び凹溝27から外れた部分では、図4に示すように、ブロー成形金型33,34と可動金型35,35の間に実質的な大きさの隙間は形成されない。
また、型締め完了の時点で、接地バンパー13の板状中実部31に対応する箇所では、パリソン46の一部が、ブロー成形金型33,34の両面の間に形成される平らな隙間に挟まれて互いに溶着し(溶着部が板状中実部31となる)、これによりステップ前面壁22が閉じられ、かつ中空部32となる部分にプリブロー圧が封入される。
【0017】
(5)型締め完了後、前記ブローパイプからパリソン46内に加圧エアを吹き出し、ブロー成形を行う。
(6)成形されたパリソン46を冷却し、エア抜きを行い、ブロー成形金型33,34の型開きを行い、さらに可動金型35,35を外側に開いて、ブロー成形体(便槽11)を取り出す。
【0018】
上記製造プロセスから分かるように、一点鎖線36〜42は金型(ブロー成形金型33,34及び可動金型35,35)の型割面を意味する(以下、一点鎖線38〜42を型割面36〜42という)。なお、型割面38,40をつなぐ稜線部47(天面壁15と側面壁18の稜線部)、及び型割面39,41をつなぐ稜線部48(底面壁17と側面壁18の稜線部)も型割面である(以下、稜線部47,48についても型割面47,48という)。いうまでもなく、側面壁19側にも対称的に型割面が形成されている。
便槽11の上記型割面37〜42,47,48に沿った部分及びその近傍は、ブロー成形の特性上、パリソンの膨張による肉厚の減少がほとんどないか抑えられる。天面壁15及び底面壁17の大部分の領域は型割面47,48に沿っているから比較的肉厚が大きく、特に上下締結座25,26はパーティングライン47,48に沿い、かつパリソン46が2重に折り込まれ溶着した箇所であるため肉厚が大きく、強度が高くなっている。また、接地バンパー13は型割面36に沿っているから、同様に肉厚を大きくし、強度を高くすることができる。
【0019】
この便槽11を用いて仮設トイレを組み立て、トラックに載せて設営地に搬送し、同設営地において荷台から手下ろしする場合、荷台上で仮設トイレを引き出しながら傾け、便槽11の前端を接地させるとき、便槽11の前端に位置する接地バンパー13を接地させることができ、また、続いて仮設トイレを地面の上で回転させるとき、接地バンパー13を接地させた状態で回転させることができる。従って、従来の便槽4(図6参照)のように、便槽11の本体部分(タンク部分)12の一部(便槽4の前端コーナー部4a参照)が地面に直接衝撃的に接地し、又は地面に直接強く擦れるのを防止できる。このように、接地バンパー13が手下ろし作業の際の緩衝部材として機能し、その結果、便槽11の本体部分(タンク部分)12が損傷しにくく、便槽11の寿命を延ばすことができる。
また、ステップ前面壁22の下部壁22bを後方側に傾斜させたことにより、仮設トイレの設営開始から完了までの間、便槽11の本体部分(タンク部分)12の一部が地面に衝撃的に接地し、又は地面に強く擦れるのを、より効果的に防止できる。
さらに、接地バンパー13は本体部分12と同時にブロー成形するので、特段のコストアップを伴わず、便槽11の重量増もわずかである。
【0020】
図3に別の接地バンパー49を示す。この接地バンパー49も、ステップ前面壁22の高さ方向中程において前方に突出し、本体部分12と一体的に形成されているが、全体が板状の中実部からなる点で図1,2に示す接地バンパー13と異なる。接地バンパー49の機能は、接地バンパー13とほぼ同じである。
【符号の説明】
【0021】
11 便槽
12 便槽の本体部分(タンク部分)
13 接地バンパー
14 ステップ
16 ステップ前面壁
37〜42,47,48 型割面
図1
図2
図3
図4
図5
図6