(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アースロデティック術が、前記関節における骨癒合の部位を位置合わせすることと、少なくとも1つのスクリューを該関節の少なくとも1つの骨に挿入することとをさらに含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
前記骨足場材料が、1μmから5mm、1μmから1mm、1mmから3mm、1mmから2mm、250μmから750μm、250μmから1mm、250μmから2mm、200μmから3mm、200μmから1mm、100μmから300μm、75μmから300μm、100μmから5mm、または100μmから3mmの範囲の平均直径を有する粒子からなる、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自家骨移植片と関連した困難性からみて、代替の骨形成再生系を提供することが望ましい。さらに骨折治療ならびに足および足首の関節固定を含むアースロデティック術における代替の骨形成再生系を使用する方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アースロデティック術に使用するための組成物および方法を提供する。これらの組成物および方法は、関節の骨癒合を増進する。本発明の実施形態にしたがって、足および足首のアースロデティック術などのアースロデティック術に使用する組成物および方法を提供する。本組成物および方法は、癒合部位での骨結合を含むアースロデティック術の治癒反応を促進する。
【0010】
さらに本発明は、関節の骨癒合に有用な移植材料の調製における本発明の組成物の使用を提供する。さらに本発明は、関節の骨癒合に有用な薬物の調製における本発明の組成物の使用を提供する。
【0011】
一態様において、アースロデティック術で骨癒合を増進するために本発明によって提供される組成物は、血小板由来成長因子(PDGF)を含む溶液および生体適合性マトリックスを含み、ここで溶液は、生体適合性マトリックス内に配置または取り込まれている。一部実施形態において、PDGFは、生体適合性マトリックスによって吸収されている。他の実施形態において、PDGFは、生体適合性マトリックスの1つ以上の表面上に吸着されている。さらなる実施形態において、PDGFは、生体適合性マトリックスによって吸収されており、また生体適合性マトリックスの表面上に吸着されている。
【0012】
一部実施形態において、PDGFは、約0.01mg/mlから約10mg/ml、約0.05mg/mlから約5mg/ml、約0.1mg/mlから約1.0mg/mlまたは約0.2mg/mlから約0.4mg/mlの範囲の濃度で溶液中に存在する。溶液内のPDGFの濃度は、上記の任意の濃度範囲内であり得る。
【0013】
本発明の実施形態において、PDGFは、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、PDGF−CC、PDGF−DDならびにその混合物および誘導体を含むPDGFホモ二量体およびヘテロ二量体を含む。一実施形態において、PDGFは、PDGF−BBを含む。別の実施形態において、PDGFは、組換えヒト(rh)PDGF(例えば、rhPDGF−BB)を含む。
【0014】
本発明の実施形態において、PDGFは、PDGF断片を含む。一実施形態において、rhPDGF−Bは、以下の断片、全体のB鎖のアミノ酸配列1〜31、1〜32、33〜108、33〜109および/または1〜108を含む。PDGFのB鎖の完全なアミノ酸配列(1〜109)は、米国特許第5,516,896号明細書の
図15において提供されている。本発明のrhPDGF組成物が無傷のrhPDGF−B(1〜109)およびその断片の組合せを含み得ることを理解すべきである。米国特許第5,516,896号明細書に開示の断片などの、PDGFの他の断片を使用することができる。好ましい実施形態によれば、rhPDGF−BBは、無傷のrhPDGF−B(1〜109)の少なくとも65%を含む。
【0015】
本発明は、生体適合性マトリックスが骨置換剤(本明細書では骨足場材料とも呼ばれる)および場合によって生体適合性結合剤を含む、生体適合性マトリックス内に配置されたPDGF溶液を含むアースロデティック術における2つ以上の骨の癒合を増進するための組成物を提供する。例示的な骨置換剤は、例えば、リン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム(例えば、β−TCP)、ハイドロキシアパタイト、不完全結晶性ヒドロキシアパタイト、非晶質リン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、二水和リン酸二カルシウム、リン酸ヘプタカルシウム、二水和ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウムおよびリン酸オクタカルシウム)、硫酸カルシウムまたは脱灰骨(例えば、脱灰凍結乾燥皮質または海綿骨)を含む。PDGF溶液は、本明細書に記載のように、任意の濃度のPDGFでもよい。骨足場材料は、一部実施形態において、リン酸カルシウムを含む。一実施形態において、リン酸カルシウムは、β−TCPを含む。一部実施形態において、生体適合性マトリックスは、生体適合性結合剤、または脱灰凍結乾燥骨同種移植片(DFDBA)もしくは粒子脱灰骨マトリックス(DBM)などの骨同種移植片を添加または非添加のリン酸カルシウム粒子を含み得る。別の実施形態において、生体適合性マトリックスは、DFDBAまたはDBMなどの骨同種移植片を含み得る。
【0016】
さらに、生体適合性結合剤は、本発明の一部実施形態によれば、タンパク質、多糖類、核酸、炭水化物、合成ポリマーまたはそれらの混合物を含む。一実施形態において、生体適合性結合剤は、コラーゲンを含む。別の実施形態において、生体適合性結合剤は、ヒアルロン酸を含む。
【0017】
別の態様においては、本発明は、第1の包装に生体適合性マトリックス、および第2の包装にPDGFを含む溶液を含むアースロデティック術に使用するためのキットを提供する。一部実施形態において、溶液は、所定の濃度のPDGFを含む。PDGFの濃度は、実施されるアースロデティック術の要求に従って前もって決定することができる。さらに、一部実施形態において、生体適合性マトリックスは、所定量でキットに存在し得る。一部実施形態において、キットにおける生体適合性マトリックスは、骨足場材料、骨足場材料および生体適合性結合剤、ならびに/またはDFDBAもしくは粒子DBMなどの骨同種移植片を含む。一実施形態において、骨足場材料は、β−TCPなどのリン酸カルシウムを含む。一実施形態において、結合剤は、コラーゲンを含む。
【0018】
キットによって提供される生体適合性マトリックス量は、実施されるアースロデティック術の要求に関連する。一部実施形態において、PDGF溶液を含有する第2の包装は、注射器を含む。注射器は、手術部位(例えば、アースロデティック術での骨癒合部位など)で、塗布のための生体適合性マトリックス内またはその上のPDGF溶液の配置を促進することができる。一部実施形態において、一旦PDGF溶液が生体適合性マトリックスに取り込まれたならば、得られた組成物を、関節の所望の骨癒合部位に送達するために、第2の注射器および/またはカニューレに入れる。この代わりに、組成物をへら、スプーン、ナイフまたは同等の器具などの別の塗布手段で所望の部位に塗布することができる。
【0019】
本発明は、アースロデティック術を実施する方法に加えて、さらにアースロデティック術で使用するための組成物を生産するための方法を提供する。一実施形態において、組成物を生産する方法は、PDGFを含む溶液を提供することと、生体適合性マトリックスを提供することと、および生体適合性マトリックス内にPDGF溶液を配置または取り込むこととを含む。
【0020】
別の実施形態において、アースロデティック術を実施する方法は、生体適合性マトリックス内に配置されたPDGF溶液を含む組成物を提供することと、関節の所望の骨癒合部位に組成物を塗布することとを含む。一部実施形態において、アースロデティック術を実施する方法は、複数の関節の少なくとも1つの所望の骨癒合部位に組成物を塗布することを含む。所望の骨癒合部位に組成物を塗布することは、一部実施形態において、所望の骨癒合部位に組成物を注入することを含む。
【0021】
一部実施形態において、アースロデティック術を実施する方法は、関節の所望の骨癒合部位に外科的にアクセスすることと、生体適合性マトリックス内に配置されたPDGF溶液を含む組成物を取り込むことと、所望の骨癒合部位に組成物を塗布することと、組成物をおおう軟組織を縫合することと、ならびに続く骨形成のための組成物への細胞移動および浸潤を可能にすることとを含む。
【0022】
一部実施形態において、アースロデティック術は、距骨下関節固定を含む。他の実施形態において、アースロデティック術は、距舟関節固定を含む。別の実施形態において、アースロデティック術は、三関節固定を含む。一部実施形態において、アースロデティック術は、踵立方関節固定を含む。更なる実施形態において、アースロデティック術は、足首関節固定を含む。
【0023】
一部実施形態において、アースロデティック術は、中足部癒合(第1、2、3または全3つの内側足根中足(TMT)関節)を含む。他の実施形態において、アースロデティック術は、舟楔状(NC)関節癒合を含む。別の実施形態において、アースロデティック術は、第1中足指節(MP)関節癒合を含む。更なる実施形態において、アースロデティック術は、指節間関節癒合術を含む。
【0024】
したがって、組成物がアースロデティック術における骨癒合を促進する際に有用である、生体適合性マトリックス内に取り込まれたPDGFを含む組成物を提供することが本発明の目的である。
【0025】
本発明の別の目的は、生体適合性マトリックス内にPDGFを含む組成物を使用するアースロデティック術を提供することである。
【0026】
マトリックス内に取り込まれたPDGFを含む組成物、およびアースロデティック術における骨移植片形成を促進するために本組成物を使用する方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0027】
本発明の別の目的は、アースロデティック術において自家骨移植片の代替として役立つ、マトリックス内に取り込まれたPDGFを含む組成物を提供することである。
【0028】
本発明の更なる目的は、アースロデティック術の骨癒合に関連した治癒を加速させることである。
【0029】
これらおよび本発明の他の実施形態は、あとに続く説明にさらに詳細に記載されている。これらおよび本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の「発明を実施するための形態」および「特許請求の範囲」の検討後に明らかとなろう。
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
アースロデティック術において関節において骨を癒合させるための、血小板由来成長因子(PDGF)の溶液および生体適合性マトリックスを含む組成物の使用であって、ここで該溶液が生体適合性マトリックス内に取り込まれている、使用。
(項目2)
関節において骨を癒合させるために有用な薬物の調製における、血小板由来成長因子(PDGF)の溶液および生体適合性マトリックスを含む組成物の使用であって、ここで該溶液が生体適合性マトリックス内に取り込まれている、使用。
(項目3)
PDGFが約0.01mg/mlから約10.0mg/ml、約0.1mg/mlから約1.0mg/ml、約0.1mg/ml、約0.3mg/ml、約0.6mg/mlまたは約1.0mg/mlの濃度で溶液中に存在する、項目1または項目2に記載の使用。
(項目4)
前記生体適合性マトリックスが足場材料を含む、項目1または項目2に記載の使用。
(項目5)
前記足場材料がリン酸カルシウムを含む、項目4に記載の使用。
(項目6)
前記生体適合性マトリックスが生体適合性結合剤をさらに含む、項目4に記載の使用。
(項目7)
前記生体適合性結合剤がタンパク質、多糖類、核酸、炭水化物もしくは合成ポリマー、またはその混合物を含む、項目6に記載の使用。
(項目8)
前記生体適合性結合剤がコラーゲンを含む、項目7に記載の使用。
(項目9)
前記PDGFがPDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、PDGF−CC、PDGF−DDまたはその混合物である、項目1から項目8のいずれかに記載の使用。
(項目10)
前記PDGFが組換えヒト(rh)PDGF−BBである、項目1から項目9のいずれかに記載の使用。
(項目11)
前記生体適合性マトリックスが、約1μmから約5mm、約1μmから約1mm、約1mmから約3mm、約1mmから約2mm、約250μmから約750μm、約250μmから約1mm、約250μmから約2mm、約200μmから約3mm、約200μmから約1mm、約1mmから約2mm、約250μmから約750μm、約100μmから約300μm、約75μmから約300μm、約100μmから約5mm、または約100μmから約3mmの範囲の直径を有する粒子を含む、項目1から項目10のいずれかに記載の使用。
(項目12)
前記生体適合性マトリックスが多孔性であり、骨形成のための生体適合性マトリックス中への細胞の移動および浸潤を可能にする、項目1から項目11のいずれかに記載の使用。
(項目13)
前記生体適合性マトリックスが多孔性であり、多孔度が約25%を超える、40%を超えるまたは約50%を超える、項目1から項目12のいずれかに記載の使用。
(項目14)
溶液が生体適合性マトリックスに取り込まれた、血小板由来成長因子(PDGF)溶液および生体適合性マトリックスを含む組成物を提供することと、
患者にアースロデティック術を実施することと、
関節の所望の骨癒合部位に組成物を適用することと、および
関節に骨癒合を生じさせることを可能にすることとを含む方法。
(項目15)
前記PDGF溶液が約0.01mg/mlから約10.0mg/ml、約0.1mg/mlから約1.0mg/ml、約0.1mg/ml、約0.3mg/ml、約0.6mg/mlまたは約1.0mg/mlの濃度で溶液中にPDGFを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
PDGFが組換えヒト(rh)PDGF−BBを含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記生体適合性マトリックスが足場材料を含む、項目4に記載の方法。
(項目18)
前記足場材料がリン酸カルシウムを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記生体適合性マトリックスが生体適合性結合剤をさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目20)
前記生体適合性結合剤がタンパク質、多糖類、核酸、炭水化物もしくは合成ポリマー、またはその混合物を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記生体適合性結合剤がコラーゲンを含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記生体適合性マトリックスが多孔性であり、骨形成のための生体適合性マトリックス中への細胞の移動および浸潤を可能にする、項目14に記載の方法。
(項目23)
前記生体適合性マトリックスが約25%を超える、40%を超えるまたは約50%を超える多孔度を有する、項目14に記載の方法。
(項目24)
関節における骨癒合の部位を位置合わせすることと、少なくとも1つのスクリューを関節の少なくとも1つの骨に挿入することとをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目25)
前記アースロデティック術が距骨下関節固定、距舟関節固定、三関節固定または足首関節固定を含む、項目14に記載の方法。
(項目26)
アースロデティック術を実施する方法であって、以下:
約0.1mg/mlから約1.0mg/mlの範囲の濃度で血小板由来成長因子(PDGF)を含む液体をその中に取り込んでいる、リン酸カルシウムを含む生体適合性マトリックスを含む組成物を提供する工程であって、ここで該組成物が該組成物への細胞移動を促進する多孔度を有し、リン酸カルシウムが約100μmから約5,000μmの範囲の平均サイズを有する粒子を含む組成物を提供する工程と、
該組成物を関節の所望の骨癒合部位に適用する工程とを含む、
アースロデティック術を実施する方法。
(項目28)
関節における骨結合を加速することを含む方法であって、ここで加速することが、生体適合性マトリックスに取り込まれたPDGF溶液を含む組成物を提供することと、関節の所望の骨癒合部位に組成物を適用することとを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、アースロデティック術で使用するための本発明の組成物の使用を提供する。さらに本発明は、関節の骨癒合に有用な移植材料の調製における本発明の組成物の使用を提供する。さらに本発明は、関節の骨癒合に有用な薬物の調製における本発明の組成物の使用を提供する。
【0031】
本発明は、足および足首のアースロデティック術を含むアースロデティック術における骨癒合を増進するための組成物および方法を提供する。一実施形態において、アースロデティック術で骨癒合を増進するための組成物は、PDGFを含む溶液および生体適合性マトリックスを含み、本溶液は、生体適合性マトリックス内に配置または取り込まれている。別の実施形態において、組成物は、生体適合性マトリックスが骨足場材料および生体適合性結合剤を含む、生体適合性マトリックス内に配置されたPDGF溶液を含む。
【0032】
一部実施形態において、PDGFは、生体適合性マトリックスによって吸収されている。他の実施の形態において、PDGFは、生体適合性マトリックスの1つ以上の表面上に吸着されている。さらなる実施形態において、PDGFは、生体適合性マトリックスによって吸収されており、また生体適合性マトリックスの表面上に吸着されている。
【0033】
また本発明は、第1の包装に生体適合性マトリックス、および第2の包装にPDGFを含む溶液を含むキットを提供する。一部実施形態において、溶液は、所定の濃度のPDGFを含む。一部実施形態において、PDGFの濃度は、本明細書で提供される値と一致する。PDGFの濃度は、実施されるアースロデティック術に従って前もって決定することができる。さらに、一部実施形態において、生体適合性マトリックスは、所定量でキットに存在し得る。生体適合性マトリックスは、場合によって生体適合性結合剤を含有し得る、または結合剤はキットの第3の包装で提供し得る。キットによって提供される生体適合性マトリックス量は、実施されるアースロデティック術に依存し得る。一部実施形態において、PDGF溶液を含有する第2の包装は、注射器を含む。注射器は、手術部位(例えば、アースロデティック術での骨癒合部位)における塗布のための生体適合性マトリックス内のPDGF溶液の配置を促進することができる。
【0034】
次に本発明の様々な実施形態に含めることができる組成物に移ると、本発明の組成物は、PDGFを含む溶液を含む。
【0035】
PDGF溶液
一態様において、本発明によって提供されるアースロデティック術のための組成物は、溶液が生体適合性マトリックス内に配置または取り込まれているPDGFを含む溶液、および生体適合性マトリックスを含む。一部実施形態において、PDGFは、約0.01mg/mlから約10mg/ml、約0.05mg/mlから約5mg/ml、または約0.1mg/mlから約1.0mg/mlの範囲の濃度で溶液中に存在する。PDGFは、各範囲の上限および下限を含む、これらの所定の範囲内における任意の濃度で溶液中に存在し得る。他の実施形態において、PDGFは、以下の約0.05mg/ml、約0.1mg/ml、約0.15mg/ml、約0.2mg/ml、約0.25mg/ml、約0.3mg/ml、約0.35mg/ml、約0.4mg/ml、約0.45mg/ml、約0.5mg/ml、約0.55mg/ml、約0.6mg/ml、約0.65mg/ml、約0.7mg/ml、約0.75mg/ml、約0.8mg/ml、約0.85mg/ml、約0.9mg/ml、約0.95mg/mlまたは1.0mg/mlのいずれか1つの濃度で溶液に存在する。これらの濃度が単に特定の実施形態の例であり、PDGFの濃度が各範囲の上限および下限を含む、上記の任意の濃度の範囲内であり得ることを理解すべきである。
【0036】
様々な量のPDGFを、本発明の組成物において使用することができる。使用されるPDGFの量は、一部実施形態において、以下の範囲の量を含む:約1μgから約50mg、約10μgから約25mg、約100μgから約10mgまたは約250μgから約5mg。
【0037】
PDGFまたは他の成長因子の濃度は、本発明の実施形態において、米国特許第6,221,625号明細書、同第5,747,273号明細書および同第5,290,708号明細書に記載のような酵素結合免疫測定法(参考として本明細書で援用する)またはPDGF濃度を測定するために当該技術分野で公知のいずれか他の測定法を用いて測定することができる。本明細書で使用される場合、PDGFのモル濃度は、PDGF二量体の分子量(MW)に基づいて決定される(例えば、PDGF−BB、MW約25kDa)。
【0038】
本発明の実施形態において、PDGFは、PDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、PDGF−CC、PDGF−DDならびにその混合物および誘導体を含むPDGFホモ二量体およびヘテロ二量体を含む。一実施形態において、PDGFは、PDGF−BBを含む。別の実施形態においてPDGFは、組換えヒト(rh)PDGF(例えば、rhPDGF−BB)を含む。
【0039】
PDGFは、一部実施形態において、天然の供給源から得ることができる。他の実施形態において、PDGFを組換えDNA法によって生産することができる。他の実施形態において、PDGFまたはその断片を、固相ペプチド合成などの当業者に公知のペプチド合成法を使用して生産することができる。天然の供給源から得る場合、PDGFを生体液から誘導することができる。生体液は、一部実施形態によれば、血液を含む生体に関連した任意の処理または未処理の液体を含み得る。
【0040】
また生体液は、別の実施形態において、血小板濃縮液(PC)、成分除去血小板、多血小板血漿(PRP)、血漿、血清、新鮮凍結血漿(FFP)およびバフィーコート(BC)を含む血液成分を含み得る。生体液は、更なる実施形態において、血漿から分離され、生理液に再懸濁された血小板を含み得る。
【0041】
PDGFを組換えDNA法によって生産する場合、単一の単量体をコードするDNA配列(例えば、PDGF B鎖またはA鎖)を、一部実施形態において、発現のために培養原核細胞または真核細胞に挿入し、続いてホモ二量体(例えば、PDGF−BBまたはPDGF−AA)を生産することができる。他の実施形態において、PDGFヘテロ二量体を、ヘテロ二量体の両方の単量体単位をコードするDNA配列を培養原核細胞または真核細胞に挿入し、翻訳された単量体単位を、ヘテロ二量体(例えば、PDGF−AB)を生産するために細胞によってプロセシングさせることによって生成することができる。市販のGMP組換えPDGF−BBは、Chiron Corporation(カリフォルニア州エメリービル)から商業的に入手することができる。リサーチグレードのrhPDGF−BBを、R&D Systems,Inc.(ミネソタ州ミネアポリス)、BD Biosciences(カリフォルニア州サンノゼ)およびChemicon,International(カリフォルニア州テメキュラ)などの複数の供給源より得ることができる。
【0042】
本発明の実施形態において、PDGFは、PDGF断片を含む。一実施形態において、rhPDGF−Bは、全体のB鎖の以下の断片:アミノ酸配列1〜31、1〜32、33〜108、33〜109および/または1〜108を含む。PDGFのB鎖の完全なアミノ酸配列(1〜109)は、米国特許第5,516,896号明細書の
図15において提供されている。本発明のrhPDGF組成物が無傷のrhPDGF−B(1〜109)およびその断片の組合せを含み得ることを理解すべきである。米国特許第5,516,896号明細書に開示の断片など、PDGFの他の断片を使用することができる。一実施形態によれば、rhPDGF−BBは、無傷のrhPDGF−B(1〜109)の少なくとも65%を含む。別の実施形態において、rhPDGF−BBは、無傷のrhPDGF−B(1〜109)の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%または99%を含む。
【0043】
本発明の一部実施形態において、PDGFを精製することができる。本明細書で使用する精製PDGFは、本発明の溶液への取込み前に約95重量%を超えるPDGFを有する組成物を含む。溶液は、任意の薬学的に許容される溶液でもよい。他の実施形態において、PDGFを、実質的に精製することができる。本明細書で使用する実質的に精製されたPDGFは、本発明の溶液への取込み前に、約5重量%から約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。一実施形態において、実質的に精製されたPDGFは、本発明の溶液への取込み前に、約65重量%から約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。他の実施形態において、実質的に精製されたPDGFは、本発明の溶液への取込み前に、約70重量%から約95重量%、約75重量%から約95重量%、約80重量%から約95重量%、約85重量%から約95重量%、または約90重量%から約95重量%のPDGFを有する組成物を含む。精製PDGFおよび実質的に精製されたPDGFを、足場材料および結合剤に取り込ませることができる。
【0044】
更なる実施形態において、PDGFを部分的に精製することができる。本明細書で使用する部分的に精製されたPDGFは、血小板多血漿(PRP)、新鮮凍結血漿(FFP)またはPDGFを生産するための収集および分離に必要な任意の他の血液製剤のコンテキストにおいてPDGFを有する組成物を含む。本発明の実施形態は、ホモ二量体およびヘテロ二量体を含む本明細書で提供された任意のPDGFアイソフォームを、精製または部分的に精製できることを企図している。PDGF混合物を含有する本発明の組成物は、部分的に精製された比率でPDGFアイソフォームまたはPDGF断片を含有し得る。部分的に精製されたPDGFおよび精製されたPDGFは、一部実施形態において、米国特許出願第11/159,533号明細書(広報第20060084602号明細書)に記載のように調製することができる。
【0045】
一部実施形態において、PDGFを含む溶液を、1種以上の緩衝液にPDGFを可溶化させることによって形成させる。本発明のPDGF溶液の使用に適した緩衝液は、炭酸、リン酸塩(例えば、リン酸緩衝食塩水)、ヒスチジン、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、酢酸およびHClなどの酸性緩衝液、およびリシンなどの有機緩衝液、トリス緩衝液(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、ならびに3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)を含むが、これに限定されるものではない。緩衝液は、PDGFとの生体適合性および望ましくないタンパク質修飾を妨げる緩衝液の能力に基づいて選択することができる。緩衝液は、さらに宿主組織との適合性に基づいて選択することができる。一実施形態において、酢酸ナトリウム緩衝液を使用する。緩衝液は、例えば、約0.1mMから約100mM、約1mMから約50mM、約5mMから約40mM、約10mMから約30mM、もしくは約15mMから約25mMの異なるモル濃度、またはこれらの範囲内の任意のモル濃度で使用することができる。一部実施形態において、酢酸緩衝液は、約20mMのモル濃度で使用する。
【0046】
別の実施形態において、PDGFを含む溶液を、水に凍結乾燥PDGFを可溶化させることによって形成させ、ここではPDGFを可溶化の前に適切な緩衝液から凍結乾燥させる。
【0047】
PDGFを含む溶液は、本発明の実施形態によれば、約3.0から約8.0のpHを持ち得る。一実施形態において、PDGFを含む溶液は、約5.0から約8.0、約5.5から約7.0もしくは約5.5から約6.5の範囲、またはこれらの範囲内の任意の値のpHを有する。PDGFを含む溶液のpHは、一部実施形態において、PDGFまたは任意の他の所望の生物活性物質の長期安定性および有効性と両立し得る。PDGFは、酸性の環境においてより安定し得る。したがって、一実施例によれば、本発明は、PDGF溶液の酸性貯蔵配合物を含む。本実施形態によれば、PDGF溶液は、好ましくは約3.0から約7.0または約4.0から約6.0のpHを有する。しかし、PDGFの生物活性は、中性のpH範囲を有する溶液中で最適化し得る。したがって、更なる実施形態において、本発明は、PDGF溶液の中性pHの配合物を含む。本実施形態によれば、PDGF溶液は、約5.0から約8.0、約5.5から約7.0または約5.5から約6.5のpHを有する。本発明の方法によれば、酸性PDGF溶液を、中性pHの組成物に再調合し、次に、かかる調合物を、関節の骨を癒合させるために使用する。本発明の好ましい実施形態によれば、溶液で利用されるPDGFは、rh−PDGF−BBである。更なる実施形態において、溶液を含有するPDGFのpHを、生体適合性マトリックスに対するPDGFの結合動態を最適化するために変更することができる。
【0048】
PDGFを含む溶液のpHを、一部実施形態において、本明細書に列挙される緩衝液によって制御することができる。様々なタンパク質は、それらが安定する異なるpH範囲を示す。タンパク質の安定性は、主にタンパク質上の等電点および電荷に反映される。pH範囲は、タンパク質の立体配座構造、ならびにタンパク質の分解、加水分解、酸化、およびタンパク質の構造および/または生物活性の変更をもたらす可能性のある他のプロセスに対するタンパク質の感受性に影響を及ぼす可能性がある。
【0049】
一部実施形態において、PDGFを含む溶液は、他の生物活性物質などの更なる成分をさらに含み得る。他の実施形態において、PDGFを含む溶液は、さらに細胞培養培地、アルブミンなどの他の安定化タンパク質、抗菌剤、プロテアーゼ阻害剤[例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)―N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、アプロチニン、ε−アミノカプロン酸(EACA)など]および/もしくは線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、インスリン様成長因子(IGF)などの他の成長因子、骨形成タンパク質(BMP)、またはPDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、PDGF−CCおよび/もしくはPDGF−DDの組成物を含む他のPDGFを含み得る。
【0050】
PDGFを含む溶液に加えて、本発明の組成物は、PDGF溶液を取り込む生体適合性マトリックスも含む。また組成物は、生体適合性マトリックスを添加した、または非添加で生体適合性結合剤を含み得る。
【0051】
生体適合性マトリックス
本発明の全態様の別の実施形態において、移植材料の生体適合性マトリックスは、1種以上の骨置換剤であるか、骨置換剤をさらに含む。本発明の全態様の別の実施形態において、移植材料の生体適合性マトリックスは、1種以上の骨足場材料または骨置換剤であるか、骨足場材料または骨置換剤を更に含み、そして、生体適合性結合剤を更に含む。
【0052】
骨足場材料
生体適合性マトリックスは、本発明の実施形態によれば、骨足場材料を含む。骨足場材料および骨置換剤という用語は、本特許出願において、交換可能に使用されることを理解すべきである。骨足場材料は、新しい骨および組織の成長が発生するための骨組みまたは足場を提供する。骨置換剤は、恒久的または一時的に骨に置き換えるために使用できるものである。移植の後、骨置換剤は体に保持されるか、体に再吸収され骨と置き換えられる可能性がある。例示的な骨置換剤は、例えば、リン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム(例えば、β−TCP)、ハイドロキシアパタイト、不完全結晶性ヒドロキシアパタイト、非晶質リン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、二水和リン酸二カルシウム、リン酸ヘプタカルシウム、二水和ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウムおよびリン酸オクタカルシウム)、硫酸カルシウム、石灰化した骨、石灰化した骨同種移植片、石灰化した除タンパク異種移植片または脱灰骨(例えば、脱灰凍結乾燥皮質または海綿状骨)を含む。実施形態において、担体物質は生体再吸収性である。骨足場材料は、一部実施形態において、少なくとも1種のリン酸カルシウムを含む。他の実施形態において、骨足場材料は、複数のリン酸カルシウムを含む。骨足場材料としての使用に適したリン酸カルシウムは、本発明の実施形態において、リンに対するカルシウムの原子比が0.5から2.0の範囲である。一部実施形態において、生体適合性マトリックスは、DFDBAまたは粒子のDBMなどの同種移植片を含む。
【0053】
骨足場材料としての使用に適したリン酸カルシウムの非限定的な例は、非晶質リン酸カルシウム、一水和リン酸一カルシウム(MCPM)、無水リン酸一カルシウム(MCPA)、二水和リン酸二カルシウム(DCPD)、無水リン酸二カルシウム(DCPA)、リン酸オクタカルシウム(OCP)、α−リン酸三カルシウム、β−TCP、ハイドロキシアパタイト(OHAp)、不完全結晶性ヒドロキシアパタイト、リン酸テトラカルシウム(TTCP)、デカリン酸ヘプタカルシウム、メタリン酸カルシウム、二水和ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸含有リン酸カルシウムまたはそれらの混合物を含む。
【0054】
別の実施形態において、骨置換剤は、多孔性組成物を有する。多孔度は、移植材料への細胞移動および浸潤を促進し、その結果、浸潤細胞が細胞外骨基質を分泌できるので、望ましい特性である。また多孔度は、血管化のためのアクセスを提供する。また多孔度は、細胞マトリックスの相互作用を高めるだけでなく、活性物質の吸収および放出を高めるための広い表面積を提供する。組成物を、移植のために適した形状(例えば、球体、円柱またはブロック)で提供することができ、または組成物は、使用の前に大きさおよび形状を決めることができる。好ましい実施形態において、骨置換剤は、リン酸カルシウム(例えば、β−TCP)である。多孔性骨足場材料は、一部実施形態によれば、約1μmから約1mmの範囲の直径を有する孔を含み得る。一実施形態において、骨足場材料は、約100μmから約1mmの範囲の直径を有するマクロ孔を含む。別の実施形態において、骨足場材料は、約10μmから約100μmの範囲の直径を有するメソ孔を含む。更なる実施形態において、骨足場材料は、約10μm未満の直径を有するミクロ孔を含む。本発明の実施形態は、マクロ孔、メソ孔およびミクロ孔またはその任意の組合せを含む骨足場材料を企図する。
【0055】
多孔性骨足場材料は、一実施形態において、約25%を超える、または約40%を超える多孔度を有する。別の実施形態において、多孔性骨足場材料は、約50%を超える、約60%を超える、約65%を超える、約70%を超える、約80%を超える、または約85%を超える多孔度を有する。更なる実施形態において、多孔性骨足場材料は、約90%を超える多孔度を有する。一部実施形態において、多孔性骨足場材料は、足場材料への細胞移動を促進する多孔度を含む。
【0056】
一部実施形態において、骨足場材料は、複数の粒子を含む。骨足場材料は、例えば、複数のリン酸カルシウム粒子を含むことができる。骨足場材料の粒子は、一部実施形態において、骨足場に対して本明細書で提供された孔の直径および多孔度のいずれかを個々に示し得る。他の実施形態において、骨足場材料の粒子は、骨足場材料に対して本明細書で提供された孔の直径および多孔度のいずれかを有するマトリックスを産生するために会合を形成し得る。
【0057】
骨足場粒子は、mm、μmまたは(nm)の大きさであり得る。骨足場粒子は、一実施形態において、約1μmから約5mmの範囲の平均直径を有する。他の実施形態において、粒子は、約1mmから約2mm、約1mmから約3mm、または約250μmから約750μmの範囲の平均直径を有する。骨足場粒子は、別の実施形態において、約100μmから約300μmの範囲の平均直径を有する。更なる実施形態において、粒子は、約75μmから約300μmの平均直径を有する。更なる実施形態において、骨足場粒子は、約25μm未満、約1μm未満および、場合によっては、約1mm未満の平均直径を有する。一部実施形態において、骨足場粒子は、約100μmから約5mmまたは約100μmから約3mmの範囲の平均直径を有する。他の実施形態において、骨足場粒子は、約250μmから約2mm、約250μmから約1mm、約200μmから約3mmの範囲の平均直径を有する。また粒子は、約1nmから約1,000nmの範囲、約500nm未満または約250nm未満であり得る。
【0058】
骨足場材料を、一部実施形態によれば、移植に適した形状(例えば、球体、円柱またはブロック)で提供することができる。他の実施形態において、骨足場材料は、成形可能、押出し成形可能および/または注入可能である。成形可能、押出し成形可能および/または注入可能な骨足場材料は、アースロデティック術中の所望の骨癒合部位で、骨の標的部位の内外および骨間における本発明の組成物の効果的な配置を促進することができる。一部実施形態において、成形可能な骨足場材料を、へらまたは同等の器具で骨癒合部位に塗布することができる。一部実施形態において、骨足場材料は、流動可能である。流動可能な骨足場材料を、一部実施形態において、注射器および針またはカニューレを通して骨癒合部位に塗布することができる。一部実施形態において、骨足場材料は、in vivoで硬化する。
【0059】
一部実施形態において、骨足場材料は、生体再吸収性である。骨足場材料は、一実施形態において、in vivoでの移植後の1年以内に少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%または90%再吸収される可能性がある。別の実施形態において、骨足場材料は、in vivoでの移植の1、3、6、9、12または18カ月以内に少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%または90%再吸収される可能性がある。生体再吸収性は、(1)マトリックス材料の性質(すなわち、その化学的構造、物理的構造および大きさ)、(2)マトリックスが入れられる体内の位置、(3)使用されるマトリックス材料の量、(4)患者の代謝状態(糖尿病/非糖尿病、骨粗鬆症、喫煙者、高齢、ステロイド使用など)、(5)治療される損傷の範囲および/またはタイプ、ならびに(6)マトリックスに加えて、他の骨同化作用、異化作用および抗異化作用因子などの他の材料の使用に依存するであろう。
【0060】
β−リン酸三カルシウムを含む骨足場
一実施形態において、生体適合性マトリックスとして使用するための骨足場材料は、β−TCPを含み得る。β−TCPは、一部実施形態によれば、様々な直径の多方向および相互接続した孔を有する多孔性構造を含み得る。一部実施形態において、β−TCPは、相互接続した孔に加えて、複数のポケットおよび非相互接続した様々な直径の孔を含む。β−TCPの多孔性構造は、一実施形態において、約100μmから約1mmの範囲の直径を有するマクロ孔、約10μmから約100μmの範囲の直径を有するメソ孔、および約10μm未満の直径を有するミクロ孔を含む。β−TCPのマクロ孔およびミクロ孔は、骨誘導および骨伝導を促進することができ、一方、マクロ孔、メソ孔およびミクロ孔は、β−TCP生体適合性マトリックスを通した骨の再成長を支援するために、流体連通および栄養素輸送を可能にする。
【0061】
多孔性構造を含むことにおいて、β−TCPは、一部実施形態において、25%を超える、または約40%を超える多孔度を持ち得る。他の実施形態において、β−TCPは、50%を超える、約60%を超える、約65%を超える、約70%を超える、約75%を超える、約80%を超える、または約85%を超える多孔度を有し得る。更なる実施形態において、β−TCPは、90%を超える多孔度を有し得る。一部実施形態において、β−TCPは、β−TCPへの細胞移動を促進する多孔度を有し得る。
【0062】
一部実施形態において、骨足場材料は、β−TCP粒子を含む。β−TCP粒子は、一部実施形態において、β−TCPに対して本明細書で提供された孔の直径および多孔度のいずれかを個々に示し得る。他の実施形態において、骨足場材料のβ−TCP粒子は、骨足場材料に対して本明細書で提供された孔の直径または多孔度のいずれかを有するマトリックスを産生するために会合を形成し得る。多孔度は、続く骨形成のためのマトリックスへの細胞移動および浸潤を促進する。
【0063】
β−TCP粒子は、一実施形態において、約1μmから約5mmの範囲の平均直径を有する。他の実施形態において、β−TCP粒子は、約1mmから約2mm、約1mmから約3mm、約250μmから約750μm、約250μmから約1mm、約250μmから約2mm、または約200μmから約3mmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態において、β−TCP粒子は、約100μmから約300μmの範囲の平均直径を有する。更なる実施形態において、β−TCP粒子は、約75μmから約300μmの平均直径を有する。更なる実施形態において、β−TCP粒子は、約25μm未満の平均直径、約1μm未満の平均直径、または約1mm未満を有する。一部実施形態において、β−TCP粒子は、約100μmから約5mmまたは約100μmから約3mmの範囲の平均直径を有する。
【0064】
β−TCP粒子を含む生体適合性マトリックスは、一部実施形態において、移植に適した形状(例えば、球体、円柱またはブロック)で提供することができる。他の実施形態において、β−TCP骨足場材料は、成形可能、押出し成形可能および/または注入可能であり、したがって、アースロデティック術中の所望の骨癒合部位(例えば、足および/または足首の部位)の内外におけるマトリックスの配置を促進することができる。流動可能なマトリックスを、注射器、チューブもしくはへら、または同等の器具を通して塗布することができる。流動可能なβ−TCP骨足場材料を、一部実施形態において、注射器および針またはカニューレを通して骨癒合部位に塗布することができる。一部実施形態において、β−TCP骨足場材料は、in vivoで硬化する。
【0065】
β−TCP骨足場材料は、一部実施形態によれば、生体再吸収性である。一実施形態において、β−TCP骨足場材料は、in vivoでの移植後の1年で少なくとも30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%または85%再吸収される可能性がある。別の実施形態において、β−TCP骨足場材料は、in vivoでの移植後の1年で90%を超えて再吸収される可能性がある。
【0066】
骨足場材料および生体適合性結合剤
別の実施形態において、生体適合性マトリックスは、骨足場材料および生体適合性結合剤を含む。生体適合性結合剤を更に含む生体適合性マトリックスの実施形態における骨足場材料は、先に提供された骨足場材料と一致する。
【0067】
生体適合性結合剤は、一部実施形態によれば、複合物質間の密着を増進するために使用可能な材料を含み得る。生体適合性結合剤は、例えば、生体適合性マトリックスの形成において、骨足場材料の粒子間の接着を増進し得る。ある実施形態において、同一材料は、かかる材料が複合物質間の密着を増進するために作用し、新しい骨成長が生じるための骨組みを提供する場合、足場材料および結合剤として役立ち得る。
【0068】
生体適合性結合剤は、一部実施形態において、コラーゲン、多糖類、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリウレタン、ポリ(オルソエステル)、ポリ(無水物−コ−イミド)、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(α−ヒドロキシアルカノアート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリ乳酸、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリ(L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(δ−バレロラクトン)、ポリ(γ−ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリ(アリルアミンヒドロクロリド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、フマル酸ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)−コ−ポリ(プロピレンオキサイド)ブロックコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、ならびにコポリマーおよびその混合物を含み得る。
【0069】
生体適合性結合剤は、他の実施形態において、アルギン酸、アラビアゴム、ガーゴム、キサンタンゴム、ゼラチン、キチン、キトサン、酢酸キトサン、乳酸キトサン、硫酸コンドロイチン、レシチン、N,O−カルボキシメチルキトサン、ホスファチジルコリン誘導体、デキストラン(例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンまたはデキストラン硫酸ナトリウム)、フィブリン接着剤、レシチン、グリセロール、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、セルロース(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース)、グルコサミン、プロテオグリカン、デンプン(例えば、ヒドロキシエチルデンプンまたは可溶性デンプン)、乳酸、プルロニック酸、グリセロリン酸ナトリウム、グリコーゲン、ケラチン、シルク、ならびにその誘導体および混合物を含み得る。
【0070】
一部実施形態において、生体適合性結合剤は、水溶性である。水溶性結合剤を、その移植の直後に生体適合性マトリックスから溶解させることができ、それによって、マクロ多孔度を生体適合性マトリックスに導入する。本明細書で検討されるマクロ多孔度は、アクセスを高め、その結果として、移植部位の破骨細胞および骨芽細胞のリモデリング活性を高めることによって、移植材料の骨伝導性を増加させることができる。
【0071】
一部実施形態において、生体適合性結合剤は、生体適合性マトリックスの約1重量%から約70重量%、約5重量%から約50重量%、約10重量%から約40重量%、約15重量%から約35重量%、または約15重量%から約25重量%の範囲の量で生体適合性マトリックスに存在し得る。更なる実施形態において、生体適合性結合剤は、生体適合性マトリックスの約20重量%の量で存在し得る。
【0072】
骨足場材料および生体適合性結合剤を含む生体適合性マトリックスは、一部実施形態によれば、流動可能、成形可能および/または押出し成形可能であり得る。かかる実施例において、生体適合性マトリックスは、ペーストまたはパテの形態であり得る。ペーストまたはパテの形態における生体適合性マトリックスは、一実施形態において、生体適合性結合剤によって互いに付着した骨足場材料の粒子を含み得る。
【0073】
ペーストまたはパテの形態における体適合性マトリックスは、所望の移植形状に成形するか、または移植部位の輪郭にあわせることができる。一実施形態において、ペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスを、注射器またはカニューレで移植部位に注入することができる。
【0074】
一部実施形態において、ペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスは、移植後に硬化せず、流動可能および成形可能な形態を保持する。他の実施形態において、ペーストまたはパテは移植後に硬化し、したがって、マトリックスの流動性および成形性を減少し得る。
【0075】
また骨足場材料および生体適合性結合剤を含む生体適合性マトリックスを、ブロック、球体もしくは円柱、または任意の所望の形状(例えば、型または塗布部位によって定められる形状)を含む所定の形状で提供することができる。
【0076】
骨足場材料および生体適合性結合剤を含む生体適合性マトリックスは、一部実施形態において、上記の通りに生体再吸収性である。生体適合性マトリックスは、かかる実施形態において、in vivoでの移植の1年以内に再吸収される可能性がある。別の実施形態において、骨足場材料および生体適合性結合剤を含む生体適合性マトリックスは、in
vivoでの移植の1、3、6または9カ月以内に再吸収される可能性がある。生体再吸収性は、(1)マトリックス材料の性質(すなわち、その化学的構造、物理的構造および大きさ)、(2)マトリックスが入れられる体内の位置、(3)使用されるマトリックス材料の量、(4)患者の代謝状態(糖尿病/非糖尿病、骨粗鬆症、喫煙者、高齢、ステロイド使用など)、(5)治療される損傷の範囲またはタイプ、ならびに(6)マトリックスに加えて、他の骨同化作用、異化作用および抗異化作用因子などの他の材料の使用に依存するであろう。
【0077】
β−TCPおよびコラーゲンを含む生体適合性マトリックス
一部実施形態において、生体適合性マトリックスは、β−TCP骨足場材料および生体適合性コラーゲン結合剤を含み得る。コラーゲン結合剤との組合せに適したβ−TCP骨足場材料は、先に提供したものと一致する。
【0078】
コラーゲン結合剤は、一部実施形態において、I型、II型およびIII型コラーゲンなどの任意のコラーゲン型を含み得る。一実施形態において、コラーゲン結合剤は、I型およびII型コラーゲンの混合物などのコラーゲンの混合物を含む。他の実施形態において、コラーゲン結合剤は、生理的条件下で可溶性である。骨または筋骨格組織に存在する他のコラーゲン型を使用することができる。コラーゲンの組換え、合成および自然発生の形態を、本発明において使用することができる。
【0079】
生体適合性マトリックスは、一部実施形態によれば、コラーゲン結合剤で互いに付着した複数のβ−TCP粒子を含み得る。コラーゲン結合剤との使用に適したβ−TCP粒子は、本明細書に記載の任意のβ−TCP粒子を含み得る。一実施形態において、コラーゲン結合剤との組合せに適したβ−TCP粒子は、約1μmから約5mmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態において、コラーゲン結合剤との組合せに適したβ−TCP粒子は、約1μmから約1mm、約1mmから約2mm、約1mmから約3mm、約250μmから約750μm、約250μmから約1mm、約250μmから約2mm、約200μmから約1mm、または約200μmから約3mmの範囲の平均直径を有する。β−TCP粒子は、他の実施形態において、約100μmから約300μmの範囲の平均直径を有する。更なる実施形態において、コラーゲン結合剤との組合せに適したβ−TCP粒子は、約75μmから約300μmの平均直径を有する。更なる実施形態において、コラーゲン結合剤との組合せに適したβ−TCP粒子は、約25μm未満、約1mm未満、または約1μm未満の平均直径を有する。一部実施形態において、コラーゲン結合剤との組合せに適したβ−TCP粒子は、約100μmから約5mmまたは約100μmから約3mmの範囲の平均直径を有する。
【0080】
β−TCP粒子は、一部実施形態において、多孔性構造を有する生体適合性マトリックスを産生するように、コラーゲン結合剤によって互いに付着し得る。一部実施形態において、β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、約1μmから約1mmの範囲の直径を有する孔を含み得る。β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、約100μmから約1mmの範囲の直径を有するマクロ孔、約10μmから約100μmの範囲の直径を有するメソ孔、および約10μm未満の直径を有するミクロ孔を含み得る。
【0081】
β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、約25%を超える、または約40%を超える多孔度を有し得る。別の実施形態において、生体適合性マトリックスは、約50%を超える、約60%を超える、約65%を超える、約70%を超える、約80%を超える、または約85%を超える多孔度を有し得る。更なる実施形態において、生体適合性マトリックスは、約90%を超える多孔度を有し得る。多孔度は、続く骨形成のためのマトリックスへの細胞移動および浸潤を促進する。
【0082】
β−TCP粒子を含む生体適合性マトリックスは、一部実施形態において、生体適合性マトリックスの約1重量%から約70重量%、約5重量%から約50重量%、約10重量%から約40重量%、約15重量%から約35重量%、または約15重量%から約25重量%の範囲の量のコラーゲン結合剤を含み得る。更なる実施形態において、コラーゲン結合剤は、生体適合性マトリックスの約20重量%の量で存在し得る。
【0083】
β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、一部実施形態によれば、流動可能、成形可能および/または押出し成形可能であり得る。かかる実施例において、生体適合性マトリックスは、ペーストまたはパテの形態であり得る。ペーストまたはパテは、所望の移植形状に成形するか、または移植部位の輪郭にあわせることができる。一実施形態において、β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含むペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスを、注射器またはカニューレで移植部位に注入することができる。
【0084】
一部実施形態において、β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含むペーストまたはパテの形態の生体適合性マトリックスは、移植されると流動可能および成形可能な形態を保持することができる。他の実施形態において、ペーストまたはパテは移植後に硬化し、したがって、マトリックスの流動性および成形性を減少し得る。
【0085】
β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、一部実施形態において、ブロック、球体または円柱などの所定の形状で提供することができる。
【0086】
β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、再吸収可能であり得る。一実施形態において、β−TCP粒子およびコラーゲン結合剤を含む生体適合性マトリックスは、in vivoでの移植後の1年に少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%または90%再吸収される可能性がある。別の実施形態において、本マトリックスは、in vivoでの移植後の1、3、6、9、12または18カ月以内で少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%または90%再吸収される可能性がある。
【0087】
PDGFを含む溶液を、本発明の実施形態に従って、アースロデティック術における骨癒合を増進するための組成物を生産するために、生体適合マトリックス内に配置することができる。
【0088】
生体適合性マトリックス内へのPDGF溶液の取り込み
本発明は、アースロデティック術において使用する組成物を生産するための方法を提供する。一実施形態において、骨癒合を増進する組成物を生産するための方法は、PDGFを含む溶液を提供することと、生体適合性マトリックスを提供することと、および生体適合性マトリックスに本溶液を取り込むこととを含む。組合せに適したPDGF溶液および生体適合性マトリックスは、上記のものと一致する。
【0089】
一実施形態において、PDGF溶液を、PDGF溶液に生体適合性マトリックスを浸漬することによって生体適合性マトリックスに取り込ませることができる。PDGF溶液を、別の実施形態において、PDGF溶液と生体適合性マトリックスを注入することによって生体適合性マトリックスに取り込ませることができる。一部実施形態において、PDGF溶液を注入することは、注射器にPDGF溶液を取り込むことと、生体適合性マトリックスにPDGF溶液を放出し、生体適合性マトリックスに染み込ませることとを含み得る。
【0090】
生体適合性マトリックスは、一部実施形態によれば、PDGF溶液を受ける前に、レンガおよび円柱などの所定の形状であり得る。PDGF溶液を受けた後に、生体適合性マトリックスは、流動可能、押出し成形可能および/または注入可能である、ペーストまたはパテの形態を有し得る。他の実施形態において、生体適合性マトリックスは、PDGFを含む溶液を受ける前に、すでに流動可能なペーストまたはパテの形態を示す可能性がある。
【0091】
生物活性物質をさらに含む組成物
アースロデティック術における骨癒合を増進および/または促進するために本明細書に記載される組成物は、一部実施形態によれば、PDGFに加えて1種以上の生物活性物質を含み得る。PDGFに加えて本発明の組成物に取り込むことができる生物活性物質は、有機分子、無機材料、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、遺伝子、遺伝子フラグメント、小型挿入リボ核酸[si−RNA]、遺伝子制御配列、核転写因子およびアンチセンス分子)、核タンパク質、多糖類(例えば、ヘパリン)、糖タンパク質およびリポタンパク質を含み得る。例えば、抗癌剤、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、酵素阻害剤、抗ヒスタミン剤、ホルモン類、筋弛緩剤、プロスタグランジン、栄養因子、骨誘導タンパク質、成長因子およびワクチンを含む、本発明の組成物に取り込みことができる生物活性化合物の非限定的な例は、米国特許出願第11/159,533号明細書(広報第20060084602号明細書)に開示されている。一部実施形態において、本発明の組成物に取り込むことができる生物活性物質は、インスリン様成長因子、線維芽細胞成長因子または他のPDGFなどの骨誘導因子を含む。他の実施形態によれば、本発明の組成物に取り込むことができる生物活性化合物は、骨形成タンパク質(BMP)、BMP模倣剤、カルシトニン、カルシトニン模倣剤、スタチン、スタチン誘導体または上皮小体ホルモンなどの骨誘導および骨刺激性因子を含む。また好ましい因子は、ビスホスホネートを含む骨吸収を減少させる骨粗鬆症治療に加えてプロテアーゼ阻害剤、およびNF−kBリガンドの受容体アクチベータ(RANK)リガンドに対する抗体を含む。
【0092】
更なる生物活性物質の送達のための標準的なプロトコールおよび療法は、当該技術分野で公知である。更なる生物活性物質を、移植部位への適正な用量の薬剤の送達を可能にする量で、本発明の組成物に導入することができる。ほとんどの場合、用量は、開業医にとって公知なガイドラインを使用して決定され、当該の特定の薬剤に適用できる。本発明の組成物に含まれる更なる生物活性物質の量は、状態のタイプおよび範囲、特定の患者の全体の健康状態、生物活性物質の剤形、放出動態、ならびに生体適合性マトリックスの生体再吸収性などの変数に依存し得る。任意の特定の更なる生物活性物質の用量および投薬頻度を最適化するために、標準的な臨床試験を使用することができる。
【0093】
アースロデティック術における骨癒合を増進するための組成物は、一部実施形態によれば、さらにPDGFへの他の骨移植材料(例えば、自家骨髄、自家血小板抽出物および合成骨基質材料)の添加を含み得る。
【0094】
アースロデティック術を実施する方法
また本発明は、アースロデティック術を実施する方法を提供する。一実施形態において、アースロデティック術を実施する方法は、生体適合性マトリックスに取り込まれたPDGF溶液を含む組成物を提供することと、関節の所望の骨癒合部位に組成物を塗布することとを含む。一部実施形態において、アースロデティック術を実施する方法は、複数の関節の所望の骨癒合部位に組成物を塗布することを含む。生体適合性マトリックスに取り込まれたPDGF溶液を含む組成物を、例えば、関節の所望の骨癒合部位に詰めることができる。一部実施形態において、組成物を、関節において癒合される骨の全表面と接触するように詰めることができる。癒合された関節をさらに強固にするために、さらに組成物を骨癒合部位の周囲に塗布してもよい。
【0095】
任意の関節の骨を、本発明の組成物および方法を使用して癒合することができる。かかる関節は、足、足指、足首、膝、臀部、脊椎、肋骨、胸骨、鎖骨、関節、肩、肩甲骨、肘、手首、手、指、顎および頭蓋の関節を含むが、これに限定されるものではない。
【0096】
一部実施形態において、アースロデティック術を実施する方法は、さらに関節を位置合わせすることと、関節の少なくとも1つの骨に固定器具(例えば、スクリュー)を挿入することとを含む。一部実施形態において、複数のスクリューを、関節の少なくとも1つの骨に挿入する。
【0097】
別の実施形態において、本発明の方法は、アースロデティック術において骨癒合を加速させることを含み、この場合、骨癒合を加速させることは、生体適合性マトリックス内に配置されたPDGF溶液を含む組成物を提供することと、関節の少なくとも1つの骨癒合部位に組成物を塗布することとを含む。
【0098】
本発明が四肢または脊椎骨における任意の所望の関節固定部位に適用できることを理解すべきである。
【0099】
本発明の一実施形態において、アースロデティック術は、距骨下関節固定、距舟関節固定、三関節固定および足首関節固定を含む足および足首の関節固定を含む。実施例3は、足および足首のアースロデティック術における骨癒合を増進するための本発明の組成物および方法の有効性を実証するためにデザインされた研究について述べている。
【0100】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するために役立つものであるが、同時に、任意のその制限を制定するものではない。むしろ、様々な実施形態、変更およびその同等物を用いる可能性があり、本明細書の記載を読んだ後、本発明の趣旨を逸脱することなく当業者にそれ自体を示唆し得ることは明らかに理解されるであろう。
【実施例】
【0101】
(実施例1)
PDGF溶液および生体適合性マトリックスを含む組成物の調製
PDGF溶液およびβ−TCPの生体適合性マトリックスを含む組成物を、以下の手段に従って調製した。β−TCPは、約1,000μmから約2,000μmの範囲の平均直径を有するβ−TCP粒子を含んだ。
【0102】
rhPDGF−BBを含む溶液を得た。rhPDGF−BBは、酢酸ナトリウム緩衝液中に10mg/mlのストック濃度(すなわち、Lot#QA2217)でChiron
Corporationから市販されている。rhPDGF−BBは、Chiron Corporationによって酵母発現系で生産されており、米国食品医薬品局によってヒトでの使用が承認されている製品のREGRANEX(Johnson & Johnson)およびGEM21S(BioMimetic Therapeutics)で利用されているrhPDGF−BBと同じ生産施設から得られている。このrhPDGF−BBは、EUおよびカナダでもヒトの使用に関して承認されている。rhPDGF−BB溶液を、酢酸塩緩衝液に0.3mg/mlまで希釈した。rhPDGF−BB溶液を、本発明の実施形態に従って、1.0mg/mlを含む任意の所望の濃度に希釈することができる。
【0103】
組成物を生産するために、β−TCP生体適合性マトリックスの乾燥重量、約1gに対して、rhPDGF−BB溶液、約3mlの比率を使用した。rhPDGF−BB溶液を、注射器で生体適合性マトリックスのβ−TCP粒子上に放出し、得られた組成物を関節の骨癒合部位での塗布に備えて混合および成形した。
【0104】
(実施例2)
PDGFの溶液、生体適合性マトリックスおよび生体適合性結合剤を含む組成物の調製
PDGF溶液および生体適合性結合剤(コラーゲン)を含む生体適合性マトリックスを含む組成物を、以下の手段に従って調製した。
【0105】
β−TCPおよびコラーゲンを含む生体適合性マトリックスの予め計量したブロックを得た。β−TCPは、約100μmから約300μmの範囲の平均直径を有するβ−TCP粒子を含んだ。β−TCP粒子を、約20重量%の可溶性ウシコラーゲン結合剤と調合した。β−TCP/コラーゲンマトリックスは、Kensey Nash(ペンシルバニア州エクストン)から、商業的に得ることができる。
【0106】
rhPDGF−BBを含む溶液を得た。rhPDGF−BBは、酢酸ナトリウム緩衝液中に10mg/mlのストック濃度(すなわち、Lot#QA2217)でChiron
Corporationから市販されている。rhPDGF−BBは、Chiron Corporationによって酵母発現系で生産されており、米国食品医薬品局によってヒトでの使用が承認されている製品のREGRANEX(Johnson & Johnson)およびGEM21S(BioMimetic Therapeutics)で利用されているrhPDGF−BBと同じ生産施設から得られている。このrhPDGF−BBは、EUおよびカナダでもヒトの使用に関して承認されている。rhPDGF−BB溶液を、酢酸塩緩衝液に0.3mg/mlまで希釈した。rhPDGF−BB溶液を、本発明の実施形態に従って、1.0mg/mlを含む任意の所望の濃度に希釈することができる。
【0107】
組成物を生産するために、β−TCP/コラーゲンマトリックスの乾燥重量、約1gに対して、rhPDGF−BB溶液、約3mlの比率を使用した。rhPDGF−BB溶液を、注射器でβ−TCP/コラーゲンマトリックスの上に放出し、得られた組成物を関節の骨癒合部位での塗布に備えて混合および成形した。
【0108】
(実施例3)
足および/または足首の関節固定を実施する方法
実験計画および概要
この前向き、無作為化、管理下、多施設実行可能性臨床試験の目的は、足/足首のアースロデティック術における自家骨移植片(ABG)と比較したβ−TCPマトリックス内に配置されたPDGF溶液を含む組成物の安全性および有効性を評価することであった。本発明の組成物を自家移植片と比較することの臨床的意義は、自家移植片に対する予測可能な合成的代替物を提供することであり、したがって、限られた量でのみ入手できる自家骨移植片を収集するための更なる手技に関連した罹患率および手術時間の増加を排除することである。さらに、付属的な組換え成長因子により、骨髄穿刺液または自家血小板濃縮液を収集および調製することに関連した更なる手技が省かれ、かかるシステムに関連した濃度の変動性を排除することによって、予測性を増加させる。対照群(I群:ABG)とβ−TCPマトリックス内に配置されたPDGF溶液を含む組成物(II群:β−TCP−PDGF(実施例1に従って調製した))との比較を行った。
【0109】
本研究では、足および/または足首の骨癒合を必要とする欠損を伴い来院した患者20例を登録した。最終的な研究の適格性を満たすために、癒合間隙を、手術中に強固な固定で整復および安定化させた。対象を無作為化した。手術日に、骨欠損が登録基準を満たさないこと、または癒合部位をプロトコールに従って適切に整復および安定化できないことを外科医が判定した場合、対象は本研究に登録されなかった。
【0110】
治療群は、I群:標準的強固な固定+ABG、ならびにII群:標準的強固な固定+β−TCPおよびrhPDGF−BB 0.3mg/mlを含有する酢酸ナトリウム緩衝液であった。各群の対象を、標準的手術および手術後のプロトコールに従って固定化した。
【0111】
主要評価項目のX線撮影による結合確認までの平均時間(4つの骨の外観の少なくとも3つの軟骨下表面にわたる骨架橋として定義)を、単純X線に基づいて判定した。コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、結合に関する正確な情報を提供し、治癒の補足的および確証的記録として定期的な間隔で取られた。結合は、上記および一般的に認められた基準に基づき独立した放射線科医の評価によって判定された。臨床的および機能的な評価は、可動域、全体重負荷(FWB)までの時間、疼痛および患者のQOL/転帰スコアから成った。また、手術手技の長さ(すなわち、最初の切開開始から縫合時間まで)を記録した。追跡調査のスケジュールは、表1に従った。
【0112】
【表1】
主要評価項目は、単純X線およびCTスキャンによって評価したX線撮影による治癒(結合)確認までの時間であった。アースロデティック術における治癒を評価するためのX線撮影による2次評価項目は、カルス形成、骨架橋の全体的評価(CTスキャン、6、12および16週のみ)、異常な骨形成の存在(例えば、異所性骨化、外骨症、過形成)、骨吸収のエビデンス、β−TCP吸収の評価、およびスクリューがゆるむなどのハードウェアの合併症などであった。
【0113】
X線撮影による評価項目に加えて、アースロデティック術の治癒を、24週間の結合率、全体重負荷までの時間、浮腫/腫脹、手術部位の疼痛、手術部位の熱感の存在、感染および/または潰瘍のエビデンス、手術時間、合併症または有害事象の発生率、ならびにQOL上の考慮を含む、様々な臨床的および機能的な評価項目によって評価することができる。
【0114】
手術プロトコール
手技は、共存症に従って、また研究者の裁量で、局所または全身麻酔下で実施した。手術手技は、両治療群で同一であったが、無作為化スケジュールでの定義のように、II群では、強固な固定時に癒合部位にrhPDGF/β−TCP粒子マトリックスを塗布し、I群では、癒合部位の強固な固定時に癒合部位にABGを塗布した。ABGを、研究者の決定に従って、局所的に、または腸骨稜から収集した。患者が術後に入院した場合は、研究パラメータと別の理由によると思われる(例えば、疼痛管理、周術期合併症、医学的な監視など)。術前計画の一部として意図されなかった入院または長期入院を必要とした任意のイベントは、症例報告書に記録し、スポンサーに報告した。
【0115】
手術時に、患者を、大腿の回りに止血帯をして、仰向けに配置した。周術期の予防的抗生物質を、手術切開前に投与した。ルーチンの準備および覆布後、標準の外科的露出を用いて、各癒合部位へアクセスした。本研究で用いられた開腹手術のアプローチは、手術時に感覚障害または神経血管損傷の機会を最小化するためにデザインされた標準の内側、外側および/または前方の露出である。適切な軟組織を、標準の手技に従って、必要に応じて解離した。これは、軟部組織バランスが変形のより的確な解剖学的整復を実行するために必要な場合における、例えば、腓腹筋またはアキレス腱の腱解離を含み得る。任意の関連する関節全てを、軟骨下骨まで露出および剥皮し、続く癒合を高めるために皮質を穿孔した。
【0116】
癒合させる関節の反対面を、変形の重症度、骨の質および残りの軟骨量によって、小型骨刀、キューレット、ドリル、バーおよび/またはのこぎりを用いた標準の方法で準備した。適切な軟組織を、標準の手技に従って、必要に応じて解離した。
【0117】
適切な関節を、その後、適切な配置において、強固な圧縮固定を確実にするために、大きなフラグメントスクリュー(患者の足の大きさによって3.5から7.3mm)で癒合した。固定は、最終的な整復が治癒過程中に維持されることを確実にするために強固であった。強固な固定を確実にするために、最大で4つのスクリューを使用した。固定のタイプを、症例報告書に記録した。
【0118】
無作為化スケジュールに基づき、β−TCPマトリックスに配置されたPDGF溶液を含む本発明の組成物を調製するか、またはABGを局所的にもしくは腸骨稜から収集した。対象は無作為化割付けを知らされていなかったので、対象は手術手技の前に局所または腸骨稜骨の移植片を収集することに同意した。ABG処置に無作為化割付けされた対象では、骨移植片の採取部位および量を、症例報告書に記録した。自家移植片は、標準的骨移植手技に従って収集した。移植物質(β−TCP−PDGFまたはABG)を、移植物質が癒合される関節の全体の表面と接触するように、固定時に癒合部位に詰めた。約3から6ccの移植物質を、各関節の癒合ごとに必要とした。一般的なガイドラインとして、三関節固定に対して9cc、距骨下および足首癒合に対して6cc、ならびに距舟および踵立方癒合に対して3ccが使用されることが予期された。ABG処置に無作為化割付けされた患者は、足/足首の癒合手技を実施するために必要なものとは別の更なる外科的切開を受けるが、β−TCP−PDGF処置に無作為化割付けされた患者では、かかる更なる手術は必要としなかった。これらの異なるアプローチの固有のリスクと潜在的利点を、手術同意書において概説した。
【0119】
三関節固定または距舟の癒合などの複数の癒合術では、個々(単一)の関節は、統計解析の目的のための主要癒合部位として定義済みのパラメータに従って、研究者によって定義された。治癒/結合は、単位として関連の全関節に対して一括して評価した。全ての関連の関節の癒合は、無作為化スケジュールに従って治療した。
【0120】
変形の最終的な固定の後、癒合間隙への骨一体化を促進するために、更なる移植物質を癒合部位周囲に入れて、移植片の曝露を最大化した。移植物質が癒合間隙内に含有していることを確実にするために注意を払った。一旦、β−TCP−PDGFまたはABGを、完全にその構築物に加えると、層状の骨膜および上にある軟組織の慎重な縫合を、この移植片を囲み、包含し、任意のリスク(手術部位での流失または骨膜下の再吸収、外骨腫および潰瘍)を最小化するために実施した。
【0121】
続いて止血帯をしぼり、慎重に止血を維持し、最後に残りの切開創を数層で縫合した。その後、0.5%マーカインおよび1%リドカインを使用した踝ブロックを、術後疼痛管理を助けるために投与し、次に患者に中立の配置で滅菌の圧迫包帯および後部副木を施し、麻酔から覚醒させ、その後、回復室に移した。
【0122】
追跡評価
表1に示すように、対象を、術後(Tx)7〜14日後、4、6、8、10、12(+/−7日)、16、24および36(+/−14日)週後に術後評価のために観察した。ルーチンの評価および処置を、追跡期間中に実施した。術後、足または足首を1から2週間、後部副木で固定した。この時点で、最初の術後来院時に、抜糸および短下肢ギプス包帯(SLC)の適用について調べた。副木をつけた最初の2週間後に、全ての患者に短下肢ギプス包帯を施し、これを、続く10週間のコースにわたるその後の患者の追跡来院において、適切なフィット性および完全性のために必要に応じて逐次交換した。プロトコールからの任意の逸脱も記録した。
【0123】
患者は、最初の6週間に非体重負荷状態を維持し、その後、漸進的に、部分体重負荷(PWB)を開始した。術後6週後、患者に、漸進的な体重負荷を助けるための正式な理学療法(例えば、歩行訓練、浮腫管理、非癒合関節の可動域、瘢痕可動化)を開始した。12週後、患者を、ギブス包帯からはずし、過渡的な固定のための足首/後足部ブレースを使用して、標準のウォーキングシューズを履かせた。X線撮影による治癒の時間(研究者により評価された)および全体重負荷を許可した時間を研究者が記録した。独立した放射線科医が、治癒について別々のおよび独立した評価を実施した。X線撮影および機能評価の頻度および性質を表2に示す。
【0124】
【表2】
*確認のCTを6、12および16週後に撮影した(結合が12週後までに達成していない場合)。
【0125】
**6週後に臨床的治癒が達成された場合、8および10週後の臨床的評価は必要とされない。
【0126】
記載された本研究の受診に加えて、退院時に疼痛について評価する。
【0127】
結果
治療群について知らされていない独立した評価者による関節癒合部位のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンの評価は、β−TCPマトリックスに取り込ませたrhPDGF−BBを含む組成物を与えたII群の患者の39%が、6週後に、自家移植患者の34%と比較して、50%を超える骨架橋を示したことを明らかにした。さらに、12週後に、I群の患者の50%と比較して、II群の患者の63%が関節癒合部位での50%を超える骨架橋を示した。
【0128】
6週の時点での臨床的評価(医師は、AOFAS評価を評点した)において、II群の患者は平均スコア56.2を示し、一方、I群の患者は平均スコア52.3を示した。II群でのより高いスコアは、治療した関節部位の機能が改善したことを示した。さらに、疼痛評価(VAS評価)のスコアをつけた患者において、6週後にII群の患者は平均スコア16.3を示し、I群の患者は平均スコア26.1を示した。II群の患者でのより低いスコアは、患者のQOLに関して、アースロデティック術のより良好な転帰を示した。さらにβ−TCP+rhPDGF−BB組成物を与えたII群の患者は、任意の異所性骨形成または周囲もしくは遠位の軟組織に対する有害作用も示さなかった。
【0129】
(実施例4)
イヌの手根骨の部分的関節固定
実験計画および概要
本研究では、イヌの手根骨の部分的関節固定における自家骨移植と比較した、コラーゲン結合剤の添加または非添加によるβ−TCPマトリックス内に配置されたPDGF0.3mg/mlを含む溶液を含む組成物の安全性および有効性を評価した。本発明の組成物を自家移植片と比較する臨床的意義は、自家移植片に対する予測可能な合成的代替物を提供することであり、したがって、限られた量でのみ入手できる自家骨移植片を収集するための更なる手技に関連した罹患率および手術時間の増加を排除することである。
【0130】
本研究では、手根骨の部分的な関節固定を実施したイヌ30頭を登録した。治療群は、以下の通りだった。
【0131】
I群:自家移植片(イヌ10頭)
1.自家移植片+rhPDGF−BB(A側)
2.自家移植片のみ(B側)
II群:粒状β−リン酸三カルシウム(β−TCP)(イヌ10頭)
1.β−TCP+rhPDGF−BB(A側)
2.β−TCPのみ(B側)
β−TCPの粒径は、約250μmから約1mmの範囲であった。組成物は、実施例1で概説された同様な様式で作成した。
【0132】
III群:β−リン酸三カルシウムおよびコラーゲン結合剤(β−TCP/コラーゲン)(イヌ10頭)
1.β−TCP/コラーゲン+rhPDGF−BB(A側)
2.β−TCP/コラーゲンのみ(B側)
β−TCPの粒径は、約100μmから約300μmの範囲であり、β−TCP/コラーゲン物質は、20重量%のI型コラーゲンを含んだ。
【0133】
動物
イヌ30頭をLouisiana State University(LSU)Veterinary School of Medicineから入手し、University of Iowa Office of Animal Resources(OAR)に送達した。各動物に綿密な検査を行い、全ての健康記録をOARに伝達した。全てのイヌは健康状態が良好であり、試験開始前に14日の隔離期間を与えられた。
【0134】
手術プロトコール
各動物に対して、一方の足は自家移植片、β−TCP、またはβ−TCP/コラーゲン単独で治療し、反対側は自家移植片+rh−PDGF−BB、β−TCP+rh−PDGF−BB、またはβ−TCP/コラーゲン+rh−PDGF−BBで治療する両側の手術を実施した。各治療側は、動物ごとに無作為化した。
【0135】
手術の18時間前から食物と水を動物に与えなかった。各動物を手術室(OR)に運び、チオペンタール(20〜25mg/kg静注)を、動物が鎮静するまで頸静脈にゆっくりと投与した。9mmの挿管チューブを、吸入麻酔のために挿入した(イソフルランをO
2中に2%の割合で送り、手技を通して利用した)。18gのカテーテルを大腿静脈に挿入し、乳酸加リンガー溶液を10ml/kg/時間の速度で投与した。また、セファゾリン(20mg/kg静注)を投与した。動物の前肢は、全ての毛を切り、動物が自家移植片群の場合は、イヌ腸骨稜上の10×10インチの範囲の毛を剃った。
【0136】
動物を、腹臥位で手術室の台上に配置し、前肢および臀部をポビドン溶液で外科的に準備した。次に動物を、外科的ドレープでおおった。
【0137】
自家移植片の採取
動物の両方の臀部に対して5cmの切開を行い、筋膜を稜まで切開し、フリーアで切開した。骨鉗子を使用して、両方の腸骨稜から1.5ccの皮質海綿骨の自家移植片を得た。筋膜を、2.0 Vicrylによりランニングステッチで縫合した。皮膚を、同様なルーチンの様式で縫合した。
【0138】
前肢
5cmの正中背側の切開を、橈側皮静脈および副橈側皮静脈直下の皮膚を通して行い、遠位に5cm拡張した。深部前腕筋膜を、橈側手根伸筋腱と総指伸筋の中間で切開し、自家保定牽引子で牽引した。円形2mm高速バーを使用して、遠位橈側手根骨の関節面、第3手根骨の近位および遠位面、ならびに第3中手骨の近位面を露出させた。関節を、生理食塩水10ccで洗浄した。約1ccの移植物質を、関節間隙における第3手根骨の上下に入れた。
【0139】
Synthes Ltd.(ペンシルバニア州ウェストチェスター)から入手した2−T−3 Tプレートを、関節上に配置し、2mmのドリル用ビットを使用して、前腕手根骨関節の正常な動作を確実にするため、できる限り遠位で橈側手根骨に2つの穴をあけた。各18mmの長さの2本の2.7mmセルフタッピングスクリューを橈側手根骨に入れて、プレートを固定した。さらに、第3中手骨および第3手根骨にドリルで穴をあけた。2本の2.7mmセルフタッピングスクリューを中手骨に入れ、1本を手根骨に入れた。深筋膜層および浅筋膜層を、Johnson and Johnson製VICRYL(登録商標)のランニングステッチで縫合した。皮膚を、同様なルーチンの様式で縫合した。
【0140】
イヌの四肢から全ての乾燥した血液およびポビドン溶液を取り除き、2インチの柔らかい包帯および2インチのストッキネットで包んだ。次に各肢を、固定のために3層の2インチのガラス繊維ギブス用テープで包んだ。ギブスを、少なくとも8週間着用させた。
【0141】
手術手技の後、動物を回復用の檻に入れた。1つは50μg/時間、1つは25μg/時間の2つのフェンタニルパッチをイヌの首につけた。フルニキシン(1mg/kg)を、皮下投与した。動物は、起き上がり、前肢で体重を支えることができた。
【0142】
各動物を、疼痛の徴候、感染および食習慣に対して評価した。適切な鎮痛薬を、IACUCの承認に従って本研究を通して投与した。ギブスは、少なくとも週に1度交換した。イヌ30頭中21頭を、手術の5週間後に人道的に屠殺した。残りのイヌを、手術の12週間後に人道的に屠殺した。
【0143】
評価
X線撮影
固定を評価するため、ならびに新しい骨形成および治療した関節を架橋させた骨の癒合を評価するために、各動物の標準の前後(AP)X線を1週間の間隔で撮影した。
【0144】
石灰化組織学
各群からの四肢の試料を、10%ホルマリンに1週間浸漬し、水で24時間すすぎ、その後70%エタノールに浸漬した。脱水は、80%のアルコールから開始し、連続的に90%、95%および100%に進行するというように上昇する、一連のアルコールで達成した。アルコールは、100%アセトンで除去した。各試料を、石灰化組織学のためにSpurrsプラスチックに包埋した。
【0145】
一連の前後方向の切片を、1,000、1,200および、2,000グリットの研磨ディスクで粉砕し、2,400グリットの研摩紙で研磨し、ヘマトキシリン−エオジンで染色した。委員会認定の獣医病理学者がI、IIおよびIII群の組織学的反応を調査した。治療した関節の骨癒合を、関節全体の海綿骨形成に応じて測定した。
【0146】
臨床的評価−触診
5および12週後の触診により、質的に骨癒合を評価した。1名の検査者が、独立に、治療した3群全ての骨癒合の存在を判定した。検査者は、治療群について知らされていなかった。
【0147】
軟組織を試料から除去し、各関節を触診した。橈側手根骨および第3手根骨を持ち、任意の動き(例えば、関節全体の癒合)の存在を判定するために骨に圧力を加えた。同じ手法を、第3手根骨および第3中手関節に対して使用した。結果を、“癒合”または“非癒合”として記録した。
【0148】
結果
本試験では、イヌ30頭を登録し、30頭中28頭が最終段階まで達した。2頭は、あらかじめ除外した。本明細書で示したように、毎週X線像を撮影したものの、Tプレートが取り除かれるまで関節間隙の視覚化はできなかった。Tプレートの除去は、動物の人道的な屠殺後に実施した。結果として、本明細書で示したデータは、屠殺後のX線像に対応する。骨架橋を説明するX線撮影の結果を、表3および4に要約する。
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
触診評価の結果を、表5および6に示す。
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
前述のデータによって示したように、rhPDGF−BBを含む組成物で治療した関節は、骨架橋および癒合が向上した。さらに、rhPDGF−BBを含むβ−TCP組成物は、自家移植片組成物と同等の骨架橋および関節癒合の結果を示し、したがって、このことは、アースロデティック術のための自家移植片収集の必要性を排除するものである。アースロデティック術から自家移植片収集を排除することにより、疼痛および不快感を減少し、一方、関節癒合プロセスを促進する。
【0153】
さらに、本研究の組織学的結果では、周囲または遠位の軟組織に異所性骨形成または有害作用が見られない、正常な骨形成プロセスが確認された。
【0154】
上記で引用された全ての特許、出版物および要約は、これら全体を参考として本明細書で援用される。前述のものが、本発明の好ましい実施形態だけに関すること、ならびに以下の請求項で定義したような本発明の趣旨および適用範囲から逸脱することなく、数多くの修正または変更がその中で可能であることを理解すべきである。