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特許5961161通信方法及び株主総会議決権集計システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961161
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】通信方法及び株主総会議決権集計システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20160719BHJP
   H04W 28/10 20090101ALI20160719BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20160719BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20160719BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20160719BHJP
【FI】
   H04W28/04 110
   H04W28/10
   H04W84/10
   G06Q50/26
   G06Q10/00
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-507658(P2013-507658)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2012058087
(87)【国際公開番号】WO2012133504
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-73007(P2011-73007)
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510219280
【氏名又は名称】齊藤 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 正治
【審査官】 田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−048578(JP,A)
【文献】 特開2010−056942(JP,A)
【文献】 特開2006−195853(JP,A)
【文献】 特開2006−020130(JP,A)
【文献】 特開2009−027740(JP,A)
【文献】 特開2002−175404(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0108298(US,A1)
【文献】 特開2011−070698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
G06Q 10/00
G06Q 50/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の無線通信規格による無線通信機能を有する複数の通信端末と、前記複数の通信端末との間で無線通信によって情報データの授受が可能な管理端末とを備えた無線通信システムにおける通信方法であって、
前記管理端末は、前記複数の通信端末の各々が送信した前記情報データを受信すると、該情報データの送信元である通信端末を特定して該通信端末にデータ受領確認を送信し、
前記複数の通信端末の各々は、前記データ受領確認を受信するまで前記情報データを前記管理端末に対して繰り返し送信し、最初に前記情報データを送信してから所定の時間が経過した後、又は所定の時刻を迎えた後は、前記管理端末からの再送信要求を受信するまで前記情報データの送信を停止し、
前記管理端末は、前記複数の通信端末から送信される前記情報データを予測して送信予測情報として予め記憶しており、前記送信予測情報と実際に受信した前記情報データとの相関値を求め、前記相関値が最も高い値となる前記送信予測情報を実際に受信した前記情報データと判断することを特徴とする通信方法。
【請求項2】
前記情報データは、前記複数の通信端末において異なるビット長の符号に変換されて前記管理端末に対して送信されることを特徴とする、請求項1に記載の通信方法。
【請求項3】
前記管理端末は、前記所定の時間が経過した後、又は前記所定の時刻を迎えた後、前記複数の通信端末のうち、既に前記データ受領確認を送信した通信端末以外の通信端末に対して、順次前記再送信要求を送信することを特徴とする、請求項1又は2に記載の通信方法。
【請求項4】
前記所定の時間及び前記所定の時刻は、前記管理端末より前記複数の通信端末に送信され、前記複数の通信端末の各々に記憶されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項5】
前記所定の無線通信規格はIEEE802.15.4規格であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項6】
前記管理端末は、前記相関値の最も高い値が所定のしきい値よりも低い場合には、受信した前記情報データは正しく受信されていないと判断することを特徴とする、請求項に記載の通信方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の通信方法を用いて、株主総会における議案の採決にあたり株主が行使する議決権数の集計を行うシステムであって、
前記複数の通信端末は、株主が議決権行使の内容を議決権行使データとして入力する議決権行使データ入力手段を備えており、
前記管理端末は、株主が保有する株式数情報または議決権数情報を少なくとも含む株主情報を記憶する株主情報記憶手段と、前記株主情報に含まれる前記株式数情報または前記議決権情報に基づく株主保有の議決権数と前記議決権行使データとに基づいて、株主の議決権行使の結果を集計する議決権行使結果集計手段とを備えており、
前記複数の通信端末の各々は、前記議決権行使データ入力手段によって入力された前記議決権行使データを前記情報データの一部として前記管理端末に送信することを特徴とする株主総会議決権集計システム。
【請求項8】
前記複数の通信端末は、開催される株主総会に固有の議案情報を記憶する外部記憶装置を備えていることを特徴とする、請求項に記載の株主総会議決権集計システム。
【請求項9】
前記複数の通信端末は、前記議決権行使データを前記管理端末に送信するとともに前記外部記憶装置に記憶させることを特徴とする、請求項に記載の株主総会議決権集計システム。
【請求項10】
前記複数の通信端末は、ICカードリーダ/ライタ部を備えていることを特徴とする、請求項に記載の株主総会議決権集計システム。
【請求項11】
前記複数の通信端末は、前記議決権行使データを前記管理端末に送信するとともに前記ICカードリーダ/ライタ部を介してICカードに書き込むことを特徴とする、請求項10に記載の株主総会議決権集計システム。
【請求項12】
前記固有の議案情報には動議情報が含まれており、
前記管理端末は、株主総会において動議及び/又は緊急動議が提出された場合には、前記複数の通信端末に対して動議情報呼出要求を送信することを特徴とする、請求項に記載の株主総会議決権集計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける通信方法および当該通信方法を用いた株主総会議決権集計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を用いて複数の端末間でデータのやり取りを行う場合、通常、送信側端末から受信側端末に対してデータが送信されると、データを受信した受信側端末からACKと呼ばれる受領確認信号を送信側端末に送り、送信側端末においてデータ送信が正しく行われたことを確認する仕組みとなっている。すなわち、送信側端末が一のデータ送信に対して一のACKを確認することにより一つのデータ通信が完了する。
【0003】
また、複数の送信側端末から一の受信側端末に対してデータ送信を行う場合は、各々の送信側端末が一のデータ送信に対して一のACKを確認し、全ての送信側端末がACKを確認することにより全体としてのデータ通信が完了することとなる。
【0004】
例えば会議等で複数の投票用端末を用いて投票し、一の管理用端末でその投票結果を集計するようなシステムを考える。複数の投票用端末(送信側端末)から投票内容を含むデータがほぼ同時に管理用端末(受信側端末)に対して送信される。投票内容を含むデータを受信した管理用端末は、受信を確認したデータの送信元の投票用端末に対して順次ACKを送る。
【0005】
投票用端末は、投票データの送信を完了させるべく、管理用端末からACKが返ってこない場合には、投票データの再送を行う。再送を繰り返すうちに管理用端末が全ての投票用端末からの投票データを受信し、全ての投票用端末に対してACKを送り、最終的に全体としてのデータ通信が完了する。投票用端末の数が増えれば増えるほど、全体としてのデータ通信完了までには時間がかかることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、投票用端末の数が多くなると、一斉に管理用端末に対して投票データの送信を行った場合、電波の衝突によって管理用端末で投票データを正しく受信することができなくなるという問題がある。データを正しく受信できなければ管理用端末から投票用端末にACKを返すこともできなくなり、投票用端末においては投票データの再送を繰り返すことになる。すると、更に電波の衝突が繰り返され、全ての投票用端末からの投票データの送信がいつまでたっても完了しないという状況に陥るか、全てのデータが送信されるとしても完了までに極めて長い時間を要してしまう。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、数多くの送信側端末から無線通信によって受信側端末に対してデータが送信された場合においても、短時間に全てのデータを受信して通信を完了させることができる無線通信システムにおける通信方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、そのような通信方法を採用することによって、集計ミスを生じることなく正確に、かつリアルタイムに株主の議決権行使の結果を集計することができる株主総会議決権集計システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第一に本発明は、所定の無線通信規格による無線通信機能を有する複数の通信端末と、前記複数の通信端末との間で無線通信によって情報データの授受が可能な管理端末とを備えた無線通信システムにおける通信方法であって、前記管理端末は、前記複数の通信端末の各々が送信した前記情報データを受信すると、該情報データの送信元である通信端末を特定して該通信端末にデータ受領確認を送信し、前記複数の通信端末の各々は、前記データ受領確認を受信するまで前記情報データを前記管理端末に対して繰り返し送信し、最初に前記情報データを送信してから所定の時間が経過した後、又は所定の時刻を迎えた後は、前記管理端末からの再送信要求を受信するまで前記情報データの送信を停止することを特徴とする通信方法を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)によれば、一定時間が経過するまでは情報データの再送信が繰り返されるとともに一定時間経過後は管理端末からの再送信要求を受信するまで再送信動作が停止されるため、多くの呼が発生し集中する前の時間帯においては情報データの送信を完了した通信端末数が順調に増加していき、多くの呼が集中する時間帯においては通信端末からのデータ送信を規制して電波の衝突を回避することができ、効率良く短時間に全ての情報データについての通信を完了させることができる。
【0011】
ここで、多くの呼が発生し集中する前の時間帯においては、データ送信開始の準備ができていない通信端末も多いため、最初から管理端末からのデータ送信要求に応じて通信端末に情報データを送信させようとしてもすぐに送信できる通信端末は少なく、かえって通信効率が落ちてしまう。そこで、多くの呼が発生し集中する前の時間帯においては特にデータ送信を規制せず、多くの呼が集中する時間帯になってから通信端末からのデータ送信を規制することにより、通信効率を高めることが可能となる。
【0012】
上記発明(発明1)において、前記情報データは、前記複数の通信端末において異なるビット長の符号に変換されて前記管理端末に対して送信されることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明によれば、送信対象となるデータを符号に変換して送信することにより、電波の衝突に起因する雑音や干渉に対して極めて高い耐力を持つデータ伝送を行うことができる。
【0014】
上記発明(発明1,2)において、前記管理端末は、前記所定の時間が経過した後、又は前記所定の時刻を迎えた後、前記複数の通信端末のうち、既に前記データ受領確認を送信した通信端末以外の通信端末に対して、順次前記再送信要求を送信することが好ましい(発明3)。
【0015】
上記発明(発明3)によれば、一定時間経過後は通信端末からのデータ送信を規制するものの、その後、管理端末からの再送信要求に応じて、データ送信を完了していない通信端末から管理端末に対して順次情報データの送信が行われるため、効率良く短時間に全ての情報データについての通信を完了させることができる。
【0016】
上記発明(発明1〜3)において、前記所定の時間及び前記所定の時刻は、前記管理端末より前記複数の通信端末に送信され、前記複数の通信端末の各々に記憶されていることが好ましい(発明4)。
【0017】
上記発明(発明4)によれば、通信端末の数や電波状況に応じて多くの呼が集中する時間帯を予測した上で、データ送信を規制する時間を最適に設定することができる。
【0018】
上記発明(発明1〜4)において、前記所定の無線通信規格はIEEE802.15.4規格であることが好ましい(発明5)。
【0019】
上記発明(発明1〜5)において、前記管理端末は、前記複数の通信端末から送信される前記情報データを予測して送信予測情報として予め記憶しており、前記送信予測情報と実際に受信した前記情報データとの相関値を求め、前記相関値が最も高い値となる前記送信予測情報を実際に受信した前記情報データと判断することが好ましい(発明6)。その場合において、前記管理端末は、前記相関値の最も高い値が所定のしきい値よりも低い場合には、受信した前記情報データは正しく受信されていないと判断するものとすることが好ましい(発明7)。
【0020】
上記発明(6,7)によれば、複数の通信端末から管理端末への情報データの送信が多数重なり、データの衝突に起因して送信情報にエラーが生じた場合においても、管理端末が正しい情報データを受信したようにエラーを修正することができるため、複数の通信端末からの情報データの受信を効率良く行うことができる。
【0021】
第二に本発明は、上記発明(1〜7)のいずれかに記載の通信方法を用いて、株主総会における議案の採決にあたり株主が行使する議決権数の集計を行うシステムであって、前記複数の通信端末は、株主が議決権行使の内容を議決権行使データとして入力する議決権行使データ入力手段を備えており、前記管理端末は、株主が保有する株式数情報または議決権数情報を少なくとも含む株主情報を記憶する株主情報記憶手段と、前記株主情報に含まれる前記株式数情報または前記議決権情報に基づく株主保有の議決権数と前記議決権行使データとに基づいて、株主の議決権行使の結果を集計する議決権行使結果集計手段とを備えており、前記複数の通信端末の各々は、前記議決権行使データ入力手段によって入力された前記議決権行使データを前記情報データの一部として前記管理端末に送信することを特徴とする株主総会議決権集計システムを提供する(発明8)。
【0022】
上記発明(発明8)によれば、参加人数の多い株主総会において、複数の通信端末から議決権行使の結果を議決権行使データとしてほぼ同時に管理端末に対して送信しても、電波の衝突によって議決権行使データの受信に極めて長い時間を要したり、受信エラーとなったりすることがなくなるため、集計ミスを生じることなく正確に、かつリアルタイムに株主の議決権行使の結果を集計することができる。
【0023】
上記発明(発明8)において、前記複数の通信端末は、開催される株主総会に固有の議案情報を記憶する外部記憶装置を備えていることが好ましい(発明9)。
【0024】
株主が議決権の行使を求められる議案の数や議案の種別等は、それぞれの株主総会によって都度異なる。上記発明(発明9)によれば、開催される株主総会に固有の議案情報を、株主総会が開催される都度外部記憶装置に設定することができるため、当該通信端末を様々な株主総会に対応可能な汎用機とすることができる。なお、本願における議案情報とは、議案番号、その議案が通常議案であるのか専任議案であるのかを示す議案種別等からなり、株主総会において株主が議決権を行使する対象となる事項に関わる一切の情報を含むものである。
【0025】
上記発明(発明9)において、前記複数の通信端末は、前記議決権行使データを前記管理端末に送信するとともに前記外部記憶装置に記憶させることが好ましい(発明10)。
【0026】
上記発明(発明10)によれば、外部記憶装置に記憶した議決権行使データを、無線通信によって通信端末から管理端末へ送信した議決権行使データと突き合わせることにより、リアルタイムに集計した株主の議決権行使の結果に集計ミスがないかどうか、また外部よりデータ改変されていないかどうかを容易に確認することができる。
【0027】
上記発明(発明10)において、前記複数の通信端末は、ICカードリーダ/ライタ部を備えていることが好ましく(発明11)、その場合において、前記複数の通信端末は、前記議決権行使データを前記管理端末に送信するとともに前記ICカードリーダ/ライタ部を介してICカードに書き込むことが好ましい(発明12)。
【0028】
上記発明(発明11,12)によれば、ICカードに書き込んだ議決権行使データを、無線通信によって通信端末から管理端末へ送信した議決権行使データと突き合わせることにより、リアルタイムに集計した株主の議決権行使の結果に集計ミスがないかどうか、また外部よりデータ改変されていないかどうかを容易に確認することができる。
【0029】
上記発明(発明9)において、前記固有の議案情報には動議情報が含まれており、前記管理端末は、株主総会において動議及び/又は緊急動議が提出された場合には、前記複数の通信端末に対して動議情報呼出要求を送信することが好ましい(発明13)。
【0030】
株主総会においては、予定議案以外の議題が出席した株主や代理人、出席役員等から動議として提案され、株主の議決権行使が必要となる場合がある。上記発明(発明13)によれば、株主総会において動議及び/又は緊急動議が提出された場合には、外部記憶装置に記憶されている動議情報が呼び出され、株主は当該動議についても通信端末を介して議決権を行使することができるため、動議及び/又は緊急動議についても集計ミスを生じることなく正確に、かつリアルタイムに株主の議決権行使の結果を集計することができる。なお、本願における動議情報とは、動議番号、その動議が普通動議であるのか緊急動議であるのかを示す動議種別等からなり、株主総会において株主が議決権を行使する対象となる動議に関わる一切の情報を含むものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の無線通信システムにおける通信方法によれば、数多くの送信側端末から無線通信によって受信側端末に対してデータが送信された場合においても、短時間に全てのデータを受信して通信を完了させることができる。また、本発明の株主総会議決権集計システムによれば、集計ミスを生じることなく正確に、かつリアルタイムに株主の議決権行使の結果を集計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムを示す概略構成図である。
図2】同第1の実施形態に係る通信端末の構成を示す概略図である。
図3】同第1の実施形態に係る管理端末の構成を示す概略図である。
図4】同第1の実施形態に係る情報データの構成を示す概略図である。
図5】データ通信の呼発生数と時間との関係を示すグラフである。
図6】データ通信完了端末数と時間との関係を示すグラフである。
図7】本発明の第2の実施形態に係る株主総会議決権集計システムを示す概略構成図である。
図8】同第2の実施形態に係る管理用端末の構成を示す概略図である。
図9】同第2の実施形態に係る投票用端末の構成を示す概略図である。
図10】同第2の実施形態に係る議決権行使書の一例を示す概略図である。
図11】同第2の実施形態に係るICカードの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
〔第1の実施形態〕
最初に本発明の第1の実施形態について説明する。本発明の第1の実施形態は無線通信システムにおける通信方法についてのものである。本実施形態に係る無線通信システム1は、図1に示すように、複数の通信端末2と、管理端末3とが無線通信網4を介して接続され、相互にデータの送受信が可能なように構成されている。
【0035】
通信端末2は、図2に示すように、制御部(CPU)200、送受信部210、アンテナ211、符号生成部212、符号再生部213、タイマー値記憶部220、自己識別符号記憶部230、送信情報記憶部240及び管理端末識別符号記憶部250から構成されている。タイマー値記憶部220、自己識別符号記憶部230、送信情報記憶部240及び管理端末識別符号記憶部250はいずれも制御部200に接続されており、制御部200によって各部にデータを書き込んだり、各部からデータを呼び出したりすることができるように構成されている。
【0036】
送受信部210には無線によってデータを送受信するためのアンテナ211が接続されている。制御部200と送受信部210とは符号生成部212及び符号再生部213を間に介して接続されており、また、送受信部210におけるデータの送受信を制御するために、制御部200から送受信部210に対して送受信制御信号を送ることができるように構成されている。
【0037】
タイマー値記憶部220は、通信端末2から管理端末3へデータを送信する際に、再送信動作を停止するタイミングを決定するためのタイマー値を記憶しておくためのものである。タイマー値は、最初にデータを送信してから再送信動作を停止するまでの時間のように相対時間ΔTとして表されることもあるし、所定の時刻を迎えたら再送信動作を停止するように絶対時間Tとして表されることもある。タイマー値は、予め通信端末2のタイマー値記憶部220に記憶されているものとしてもよいし、管理端末3から通信端末2に対して都度情報として送信し、タイマー値記憶部220に記憶されるものとしてもよい。
【0038】
自己識別符号記憶部230は、複数の通信端末2それぞれに付与されている通信端末識別符号を記憶しておくためのものである。通信端末識別符号は、通信端末2から管理端末3に対してデータを送信する際に、どの端末から送られてきたデータかを管理端末3が特定するために用いられる。
【0039】
送信情報記憶部240は、通信端末2から管理端末3に対して送信する対象のデータを記憶しておくためのものである。また、管理端末識別符号記憶部250は、管理端末3に付与されている管理端末識別符号を記憶しておくためのものである。
【0040】
管理端末3は、図3に示すように、制御部(CPU)300、送受信部310、アンテナ311、符号生成部312、符号再生部313、タイマー値記憶部320、自己識別符号記憶部330、送信情報記憶部340、通信端末識別符号記憶部350及び送信予測情報記憶部360から構成されている。タイマー値記憶部320、自己識別符号記憶部330、送信情報記憶部340、通信端末識別符号記憶部350及び送信予測情報記憶部360はいずれも制御部300に接続されており、制御部300によって各部にデータを書き込んだり、各部からデータを呼び出したりすることができるように構成されている。
【0041】
送受信部310には無線によってデータを送受信するためのアンテナ311が接続されている。制御部300と送受信部310とは符号生成部312及び符号再生部313を間に介して接続されており、また、送受信部310におけるデータの送受信を制御するために、制御部300から送受信部310に対して送受信制御信号を送ることができるように構成されている。
【0042】
タイマー値記憶部320は、上述したタイマー値を記憶しておくためのものである。本実施例においては、タイマー値は管理端末3のタイマー値記憶部320に記憶されており、管理端末3から通信端末2に対して情報として送信し、複数の通信端末2の各々のタイマー値記憶部220に記憶されるものとなっている。
【0043】
自己識別符号記憶部330は、管理端末3に付与されている管理端末識別符号を記憶しておくためのものである。管理端末識別符号は、管理端末3から通信端末3に対してデータ、例えばデータ受領確認や再送信要求等を送信する際に、それぞれの通信端末3が正しい端末から送られてきたデータかどうかを判断するために用いられる。
【0044】
送信情報記憶部340は、通信端末3から管理端末2に対して送信するデータを記憶しておくためのものである。
【0045】
通信端末識別符号記憶部350は、複数の通信端末2の各々に付与されている通信端末識別符号を記憶しておくためのものである。例えば、3000台の通信端末2と1台の管理端末3とを備えた無線通信システムにおいては、1台の管理端末3の通信端末識別符号記憶部350に、3000台の全ての通信端末2の通信端末識別符号が記憶される。
【0046】
送信予測情報記憶部360は、通信端末2から管理端末3に対して送信されてくる情報を制御部300において予測するために必要なデータ系列を記憶しておくためのものである。
【0047】
本実施形態において、無線通信網4を介して送受信される情報データ400としては、例えば図4に示すようなデータが挙げられる。情報データ400には、同期用データ410と、相手先識別符号420と、自己識別符号430と、送信情報440と、誤り検出データ450とが含まれる。
【0048】
同期用データ410は、データビットのタイミング同期やデータの開始時点を示すために用いられる。相手先識別符号420としては、通信端末2から管理端末3に対して情報データ400が送信される場合には管理端末識別符号が、管理端末3から通信端末2に対して情報データ400が送信される場合には通信端末識別符号が用いられる。自己識別符号430としては、通信端末2から管理端末3に対して情報データ400が送信される場合には通信端末識別符号が、管理端末3から通信端末2に対して情報データ400が送信される場合には管理端末識別符号が用いられる。送信情報440は送信対象となるデータであり、例えば会議や株主総会等で複数の投票用端末を用いて投票や議決権の行使をし、一の管理用端末でその投票結果や議決権行使の結果を集計するようなシステムにおいては、その投票データや議決権行使データが送信情報440である。また、誤り検出データ450には一般にCRC(巡回符号)が用いられ、情報データ400の受信時に当該情報データ400に誤りがあるかどうかを確認できるようにするものである。
【0049】
本実施形態におけるデータの送受信は次のようにして行われる。通信端末2から管理端末3へデータを送信する場合を例にとると、まず、通信端末2において、制御部200から送信対象となる情報データ400が符号生成部212に送られる。符号生成部212では送信データ4ビットに対して、32ビットの符号を表1のように割り当てる。すなわちこれは、符号生成部212において1ビットに対して8ビットの符号を割り当てるスペクトラム拡散符号化を行っていることに相当する。
【0050】
【表1】
【0051】
符号化された情報データ400が、通信端末2の送受信部210によってアンテナ211を経て送信され、受信側である管理端末3のアンテナ311を経て送受信部310によって受信される。管理端末3側では上述した符号化の逆の動作が行われる。すなわち、管理端末3の符号再生部313において、送受信回路310から出力される受信波形あるいは受信符号32ビット毎に対応する4ビットの受信データに変換し、情報データ400が再生される。管理端末3から通信端末2へデータを送信する場合も、同様に管理端末3側での符号生成と通信端末2側での符号再生の動作が行われる。
【0052】
なお、送信符号は1ビットずつ交互に直交変調器を用いてI(同相成分)とQ(直交成分)とに振り分けられて変調された上で送信される。このときQ成分はビット周期の1/2だけ遅延され、いわゆるオフセットQPSK変調される。このような変調が行われることで、送信データは拡散率8の直接スペクトラム拡散方式で伝送される。このようにスペクトラム拡散方式で伝送されることにより、雑音や干渉への耐力が増すこととなる。
【0053】
続いて、本実施形態に係る無線通信システムにおける通信方法について説明する。例えば、会議等で複数の通信端末2を用いて投票し、1台の管理端末3でその投票結果を集計するようなシステムにおいて、情報データ400に相当する投票データについてのデータ通信の呼(トラフィック)の発生は、図5に示すようにある時点を中心としてガウス分布するものと仮定できる。ある時点とは、その会議において投票を求めた時である。
【0054】
図5は、通信端末2を3000台、発生確率の標準偏差σを1秒としたときの0.1秒当りの呼発生数の計算例に基づき、時間を横軸に、呼発生数を縦軸にとったものである。ここで、呼の発生に伴う通信時間を10msとした場合に、データ通信が衝突によってエラーとならずに完了した通信端末2の数(通信完了端末数)と時間との関係は図6に示すようになる。
【0055】
図6において、実線で示したものが投票データを送信後、データ受信確認が管理端末3から返ってこなかった場合でもデータの再送信を行わない場合の通信完了端末数であり、破線で示したものが投票データを送信後、データ受領確認が返ってこなかった場合にはデータの再送信を繰り返し行う場合の通信完了端末数である。通信完了端末数は、最初は呼の発生数が増えていくことに伴って増加していくが、その後電波の衝突が発生することにより全く増加しなくなる。データの再送信を行わない場合(すなわち、実線で示された場合)、呼の発生数が減少していくことに伴って電波の衝突の発生も減少し、再び通信完了数は増加していくものの、一度データ送信を行った通信端末2はデータの再送信を行わないため、通信完了端末数は200弱で飽和する。一方、データの再送信を繰り返し行う場合(すなわち、破線で示された場合)、通信完了端末数は早い段階において100弱で飽和し、その後、データの再送信が繰り返し行われていることにより電波の衝突が発生し続けるため、呼の発生数が減少しても通信完了端末数は一向に増えることがない。このように、通信端末2の数が増えると、ほとんどのデータ通信が完了せずに失敗していることとなる。
【0056】
そこで、本実施形態に係る無線通信システムにおいては、通信端末2から管理端末3に対して情報データ400を送信する際、最初に情報データ400を送信してから所定の時間が経過するまで、又は所定の時刻を迎えるまでは、管理端末3からのデータ受領確認を受領するまで情報データ400を管理端末3に対して繰り返し送信するものの、最初に情報データ400を送信してから所定の時間が経過した後、又は所定の時刻を迎えた後は、情報データ400の送信を停止する。その後は、管理端末3から当該通信端末2に対して再送信要求が送信されれば情報データ400を改めて送信する。このような通信方法を採用することにより、多くの呼が発生し集中する前の時間帯においては情報データの送信を完了した通信端末数が順調に増加していき、多くの呼が集中する時間帯においては通信端末からのデータ送信を規制して電波の衝突を回避することができ、効率良く短時間に全ての情報データについての通信を完了させることができる。
【0057】
図6に示すように、多くの呼が集中する前の時間では通信完了端末数は順調に増加していく。逆に、多くの呼が発生し集中する前の時間帯においては、データ送信開始の準備ができていない通信端末2も多いため、最初から管理端末3からのデータ送信要求に応じて通信端末2に情報データを送信させようとしてもすぐに送信できる通信端末2は少なく、かえって通信効率が落ちてしまう。そこで、多くの呼が発生し集中する前の時間帯においては特にデータ送信を規制せず、多くの呼が集中する時間帯になってから通信端末2からのデータ送信を規制することにより、通信効率を高めることが可能となる。ここでいう多くの呼が集中する時刻は、図6からもわかるように、呼の発生分布の中心から標準偏差σだけ前の時刻になることから、この時刻以降でデータ送信を規制することが望ましい。
【0058】
本実施形態において、上述した所定の時間、又は所定の時刻は、通信端末2のタイマー値記憶部220にタイマー値として記憶されている。タイマー値が相対時間ΔTとして記憶されていれば、相対時間ΔTが所定の時間ということになる。すなわち、タイマー値が1分であれば、通信端末2は最初に情報データ400を送信してから1分経過するまでは、管理端末3からのデータ受領確認を受領していない限り、管理端末3へ情報データ400を繰り返し送信し続ける。最初に情報データ400を送信してから1分を経過すると、通信端末2は送信動作を停止し、管理端末3から再送信要求が送信されてくるのを待つことになる。また、タイマー値が絶対時間Tとして記憶されていれば、絶対時間Tが所定の時刻ということになる。すなわち、タイマー値が13時35分であれば、通信端末2は13時35分を迎えるまでは管理端末3からのデータ受領確認を受領していない限り、管理端末3へ情報データ400を繰り返し送信し続ける。13時35分を迎えると、通信端末2は送信動作を停止し、管理端末3から再送信要求が送信されてくるのを待つことになる。Tが多くの呼が集中する時間であると予測可能であるケースにおいては、このように絶対時間Tをタイマー値とすることにより、効率的に多くの呼が集中する時間を避けたデータ通信を行うことが可能となる。
【0059】
会議等における投票内容や通信端末2の数、電波状況等に応じて多くの呼が集中する時間帯が変わり得るため、タイマー値はその都度最適なものを設定することができることが望ましい。そのため、本実施形態においては、タイマー値は管理端末3のタイマー値記憶部320に記憶しておき、管理端末3から通信端末2に対してタイマー値を送信し、通信端末2の各々のタイマー値記憶部220に記憶しておくものとしている。このようにすることにより、データ送信を規制する時間をその時の状況に合わせて最適に設定することができる。
【0060】
管理端末3においては、通信端末識別符号記憶部350に全ての通信端末2の通信端末識別符号が記憶されている。そして、通信端末2から送信されてくる情報データ400には通信端末識別符号が自己識別符号430として含まれているため、管理端末3は受信した情報データ400がどの端末から送られてきたのか、容易に送信元の通信端末2を特定することができる。データを正しく受信した管理端末3は、特定した送信元の通信端末2に対してデータ受領確認を送信する。
【0061】
その後、管理端末3は、通信端末識別符号記憶部350に記憶されている通信端末識別符号から既にデータ受領確認を送信した端末の通信端末識別符号を除き、情報データ400を受信できていない通信端末2に対して再送信要求を送信する。このようにすることにより、管理端末3からデータ送信を完了していない通信端末2にのみデータ再送信の要求がなされ、当該通信端末2から管理端末に対して順次情報データの送信が行われるため、効率良く短時間に全ての情報データについての通信を完了させることができる。
【0062】
通信端末2の数が例えば3000台等、極めて多くなる場合、複数の通信端末2から管理端末3への情報データ400の送信が多数重なり、データの衝突に起因して送信符号にエラーが生じてしまうことが想定される。このような場合においても、管理端末3が情報データ400の受信を効率良く行うために、本実施形態においては、管理端末3が正しい情報データを受信したようにエラーを修正することができる仕組みが採用されている。
【0063】
例えば、通信端末2によって管理端末3に送信される情報データ400が会議の投票データである場合を考えると、通信端末2から送信される情報は「賛成」、「反対」等の極めて単純な情報である。このような送信対象の情報に対して符号を割り当てることにより、通信端末2から管理端末3に対して送信される情報データ400は類型化することができる。例えば、「賛成」を示す符号を「10011111」とし、「反対」を示す符号を「01100000」とする。また、通信端末2の通信端末識別符号を「0000000000000001」、管理端末3の管理端末識別符号を「0000000000000000」とすれば、情報データ400は表2のようになる。
【0064】
【表2】
【0065】
通信端末2から送信される情報が「賛成」である場合、情報データ400は、同期用データ410と、「0000000000000000」という相手先識別符号420と、「0000000000000001」という自己識別符号430と、「10011111」という送信情報440と、誤り検出データ450(CRC)とから構成される。また、通信端末2から送信される情報が「反対」である場合、情報データ400は、同期用データ410と、「0000000000000000」という相手先識別符号420と、「0000000000000001」という自己識別符号430と、「01100000」という送信情報440と、誤り検出データ450(CRC)とから構成される。
【0066】
通信端末2から管理端末3に対して情報データ400を送信するとき、仮に電波の衝突等の何らかの原因により送信情報440に誤りが発生したとしても、本実施形態の管理端末3においては、上述の「賛成」「反対」のように前もって通信端末2から管理端末3に対して送信されてくるであろう情報を予測しておき、その予測を基にして演算によって求められた送信予測情報と実際に受信した情報データ400との間で相関値を求め、相関値が最も高い値となる送信予測情報を実際に受信した情報データ400であると判断する。実際には、送信される情報データ400は符号生成部212によって符号拡散されるため、送信データビット長×拡散率で求めることができる長い符号で相関検出する仕組みを用いることで、雑音や干渉妨害に対して極めて高い耐力を持つデータ伝送を行うことができる。
【0067】
具体的には、表2に示した二つのデータ系列を、管理端末3の送信予測情報記憶部360に記憶し、これらのデータ系列からスペクトラム拡散で符号拡散された送信予測情報の符号(上述した送信データビット長×拡散率で求めることができる長い符号)を制御部300で演算して求める。この送信予測情報の符号を符号再生部313に供給し、符号再生部313ではこの符号化された送信予測情報と、実際に受信した情報データ400との間で相関値を求め、その結果を制御部300に出力する。制御部300は、相関値が最も高い値を示している送信予測情報が実際に受信した情報データ400であると判断することができる。このような相関検出による利得は、相関検出するビット数をnとすればn倍となることから、電波の衝突による干渉があっても、目的とする信号のレベルは干渉波よりもはるかに高いレベルで受信できる。
【0068】
このとき、最も高い値となる相関値が所定のしきい値よりも低い場合には、受信した情報データ400は雑音や干渉による誤検出である可能性があるため、制御部300は情報データ400が正しく受信されていないと判断する。
【0069】
以上のように、管理端末3が正しい情報データを受信したようにエラーを修正することができる仕組みを用いることにより、複数の通信端末2から管理端末3への情報データ400の送信が多数重なり、データの衝突に起因して送信情報にエラーが生じた場合においても、管理端末3が正しい情報データ400を受信したようにエラーを修正することができるため、複数の通信端末2からの情報データ400の受信を効率良く行うことができる。
【0070】
以上説明した無線通信システムにおける通信方法によれば、数多くの送信側端末から無線通信によって受信側端末に対してデータが送信された場合においても、短時間に全てのデータを受信して通信を完了させることができる。
【0071】
〔第2の実施形態〕
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態は株主総会議決権集計システムについてのものである。
【0072】
株主総会は株式会社の意思決定の最高機関であり、株主は、その所有する株式数に応じて、原則として株式1株につき1個の議決権を株主総会において行使することができる。単元株式制度を採用している株式会社の場合は、株主は1単元につき1個の議決権を有するが、いずれにせよ、株主が所有する議決権数は、株主が所有する株式数に応じて定められるものである。
【0073】
議決権は株主総会に出席することによって行使することが原則であるが、一定の場合には書面や電磁的記録によることも可能である。このため、株主が株主総会に出席せず、株主宛てに事前に郵送されてくる議決権行使書に各議案に対する賛否を記入して、証券代行部等にその議決権行使書を返送することや、事前にインターネット投票により議決権を行使することもある。このような場合、株主総会での議案の採決にあたっては、株主総会に出席しない株主が事前に行使した議決権数と、株主総会に出席した株主が当日に総会会場で行使した議決権数とを合算し、議案毎の賛否を決することとなる。
【0074】
ところで、日本企業の株主総会は、株式の持ち合い先企業から事前に委任状を取り付け、実質的な議論のないまま議案を次々に賛成多数で議決していく、いわゆる「シャンシャン総会」が長年続いていた。株主総会に出席した株主による議決権の行使は、すでに事前に大勢が決している以上、議案毎に拍手又は挙手等で賛否の意思表示をする程度のものであり、議長がこれを耳目で確認する以上のことはされていなかった。しかしながら、近年は株式の持ち合い解消が進んだこと、新たに大株主となった外国人株主や年金資金等が独自の判断で議決権を行使することが増えたこと、個人株主の議決権行使に対する意識が高まってきたこと、企業側も株主重視の姿勢を打ち出していることなどから、議案毎の賛否を決するために、賛否票数を正確に確認する必要性が高まってきている。また、社会的にも株主総会の信頼性を高めることが求められており、議決権行使の結果だけでなく、賛否票数まで公表することを証券取引所にてルール化しようとする動きも出てきている。
【0075】
賛否票数を正確に確認し、株主総会中に賛否を決するためには、株主が議決権を行使したその投票結果をその場で迅速に集計する必要がある。しかしながら、参加株主の保有議決権数は各人異なるため、株主総会の現場での議決権行使の集計には、多くの時間やリソースを必要とする。近年、無線LANとICカード及び投票端末とを連携させてリアルタイムに議決権行使の集計を行おうとするシステムも開発されてきているが、大規模な株主総会において投票端末数が多くなると、無線通信時に電波の衝突が発生して全てのデータ送信がいつまでたっても完了しないという状況に陥るか、全てのデータが送信されるとしても完了までに極めて長い時間を要してしまうという問題がある。また、無線通信によりデータ送受信を行う関係上、外部からのデータ改変の懸念を完全に払拭することは難しい。
【0076】
本発明の第2の実施形態に係る株主総会議決権集計システムは、参加人数の多い株主総会において、複数の通信端末から議決権行使の結果を議決権行使データとしてほぼ同時に管理端末に対して送信しても、電波の衝突によって議決権行使データの受信に極めて長い時間を要したり、受信エラーとなったりすることがなくなるため、集計ミスを生じることなく正確に、かつリアルタイムに株主の議決権行使の結果を集計することができるものである。
【0077】
図7に示すように、本実施形態に係る株主総会議決権集計システム10は、複数の受付用端末20と、管理用端末30と、複数の投票用端末40とを備えている。また、複数の受付用端末20と、管理用端末30とはLAN等のネットワーク回線50を介して相互に通信可能に接続されており、管理用端末30と、複数の投票用端末40とはIEEE802.15.4規格の無線通信網60によって相互にデータ送受信可能に接続されている。
【0078】
受付用端末20は株主総会会場の受付に一台または複数台設置され、各受付用端末20には、バーコード情報読取装置21と、ICカードに対する情報の読み取りと書き込みを行うことができるリーダ/ライタ22とが接続されている。図7において受付用端末20は3台設置されているがこれに限られるものではなく、受付用端末20は株主総会に出席が見込まれる株主の人数に応じて増減させることができる。
【0079】
バーコード情報読取装置21は、各株主に予め郵送された議決権行使書70に付されたバーコード71を読み取るために用いられる。バーコード71は、それぞれの議決権行使書70の宛先となっている各株主に固有の株主番号をバーコード化したものである。株主総会に出席を希望する株主は、株式総会当日に議決権行使書70を持参の上で株主総会会場にて受付を行い、バーコード情報読取装置21がバーコード71を読み込むことにより受付用端末20が各株主に固有の株主番号を取得し、株主の識別が可能となる。
【0080】
なお、バーコード情報読取装置21を受付用端末20に接続する代わりに、例えば株主に割り振られた株主番号を二次元コード化した二次元コードを議決権行使書70に付しておき、受付用端末20には二次元コード情報読取装置を接続するようにしてもよい。また、株主に割り振られた株主番号を記憶させたICチップを議決権行使書70に埋め込んでおき、受付用端末20にはICチップから情報を読み取ることができるリーダ装置を接続するようにしてもよい。さらに、株主番号以外の情報を元に株主の識別を行うようにしてもよい。
【0081】
管理用端末30は、株主総会会場の所定の場所に設置されており、本実施形態においては、管理用端末30は独立した一台の端末となっているがこれに限られるものではなく、例えば受付用端末20のうちの一台がその役割を兼ねてもよい。また、管理用端末30は複数台設置されていてもよい。
【0082】
管理用端末30には、図8に示すように、株主情報31および事前投票結果情報32が格納されている。株主情報31には株主番号のほか、株主の氏名、住所、電話番号、保有株式数、保有議決権数、などが含まれる。事前投票結果情報32は、株主総会には出席せず、議決権行使書70を返送することによって、またはインターネット投票をすることによって事前に議決権を行使した株主の議決権行使の結果を集計したものであり、議案毎に賛否別の議決権数が記録されている。
【0083】
投票用端末40は株主総会会場内の座席に固定されている。投票用端末40は、図9に示すように、制御部41と、議決権行使データを入力するためのタッチパネル式のデータ入力部42と、ICカード80をセット可能なICリーダ/ライタ部43と、外部記憶媒体をセット可能な外部記憶部44と、データを送受信する送受信部45とから構成されている。
【0084】
株主総会の受付には、来場した各株主に渡される、入場票券投票券として機能するICカード80が用意されている。ICカード80には、各ICカード80に固有の入場ID81が記憶されている。ICカード80は、株主が途中で入退場する際に株主の識別を行うための入場票として用いられるとともに、投票用端末40のICリーダ/ライタ部43にセットし、投票用端末40をアクティベートしたり、株主が投票用端末40のデータ入力部42から入力した議決権行使データを書き込んだりするための投票券として用いられる。このようにICカード80に議決権行使データを書き込んでおくことにより、ICカード80に書き込んだ議決権行使データを、無線通信網60を介して投票用端末40から管理用端末30へ送信した議決権行使データと突き合わせることにより、リアルタイムに集計した株主の議決権行使の結果に集計ミスがないかどうか、また外部よりデータ改変されていないかどうかを容易に確認することができる。
【0085】
投票用端末40の外部記憶部44には、あらかじめ外部記憶媒体がセットされている。この外部記憶媒体には、当日決議される議案情報が記憶されている。株主が議決権の行使を求められる議案の数や議案の種別等は、それぞれの株主総会によって都度異なる。したがって、開催される株主総会に固有の議案情報を、このような外部記憶媒体を介して株主総会が開催される都度外部記憶部44に設定することができるようにしておくことにより、投票用端末40を様々な株主総会に対応可能な汎用機とすることができる。また、外部記憶媒体に記憶させておく議案情報を、英語やフランス語等の日本語以外の言語を用いて表示可能なように設定しておけば、外国からの株主にも容易に対応することができる。なお、議案情報としては、議案番号、その議案が通常議案であるのか専任議案であるのかを示す議案種別等が考えられるが、これに限られるものではなく、株主総会において株主が議決権を行使する対象となる事項に関わる情報であればよい。
【0086】
また、この外部記憶媒体には、株主総会当日に動議及び/又は緊急動議が提出された場合に対応すべく、動議情報が記憶されている。株主総会においては、予定議案以外の議題が出席した株主や代理人、出席役員等から動議として提案され、株主の議決権行使が必要となる場合がある。したがって、このように動議情報を外部記憶媒体に記憶しておくことにより、動議及び/又は緊急動議が提出された場合には管理用端末30から投票用端末40に対して動議情報呼出要求を送信し、外部記憶媒体から動議情報が投票用端末40の制御部41によって呼び出され、株主が当該動議についても通信端末を介して議決権を行使することができる。なお、動議情報としては、動議番号、その動議が普通動議であるのか緊急動議であるのかを示す動議種別等が考えられるが、これに限られるものではなく、株主総会において株主が議決権を行使する対象となる動議に関わる情報であればよい。
【0087】
さらに、本実施形態においては、外部記憶部44に設定された外部記憶媒体には、株主が投票用端末40のデータ入力部42から入力した議決権行使データが書き込まれるようになっている。これにより、外部記憶媒体に記憶した議決権行使データを、無線通信網60を介して投票用端末40から管理用端末30へ送信した議決権行使データと突き合わせることにより、リアルタイムに集計した株主の議決権行使の結果に集計ミスがないかどうか、また外部よりデータ改変されていないかどうかを容易に確認することができる。
【0088】
このような株主総会議決権集計システム10を利用して株主の議決権行使の結果を集計するには、まず、株主総会への出席を希望する各株主が、予め郵送された議決権行使書70を株主総会会場に持参して受付にて提示し、受付にて株主の識別が行われる。具体的には、受付用端末20に接続されたバーコード情報読取装置21により株主の持参した議決権行使書70に付されたバーコード71が読み取られ、受付用端末20が株主番号を取得する。
【0089】
続いて、受付用端末20は管理用端末30にアクセスし、株主番号をキーにして該当する株主に係る株主情報31を検索し、取得する。当該株主情報31を元に株主の本人確認が行われる。
【0090】
本人確認を終えた後、株主情報31とICカード80との紐付け作業が行われる。具体的には、ICカード80をリーダ/ライタ22にかざすことにより、ICカード80に記憶されている入場ID81が、受付用端末20を経て、当該株主の株主情報31に登録されるとともに、当該株主の株主番号がICカード80に書き込まれる。紐付け作業を終えた後、ICカード80が各株主に引き渡される。
【0091】
なお、議決権行使書70の返送、またはインターネット投票によって議決権を事前に行使した株主が来場した場合は、議決権の二重行使を防止するために、受付で株主の本人確認を行った後、事前投票結果情報32から当該株主の議決権行使結果を減算する処理が行われる。処理が完了した後、当該株主にもICカード80が引き渡され、当該株主は他の株主と同様に株主総会当日に改めて議決権を行使することができる。
【0092】
各株主は、会場内に設置された座席等の着座位置にそれぞれ着座し、座席に備えつけられている投票用端末40のICリーダ/ライタ部にICカード80をセットする。これにより投票用端末40がアクティベートされ、投票が可能な状態となる。ただし、この時点でデータ入力部42を操作しても投票用端末40は動作せず、管理用端末30側からの解除信号等のトリガがなければ実際に議決権行使データの入力及び送信をすることはできない。
【0093】
株主による議決権の行使は議長の指示によって行われる。議案採決の際には、議長の指示とともに管理用端末30から投票用端末40に対してこれから採決しようとする議案番号が送信され、投票用端末40は当該議案番号をキーにして外部記憶部44から議案情報を呼び出し、採決用の画面をデータ入力部42のタッチパネルに表示する。各株主は、この状態になって始めて投票用端末40を用いた議決権行使データの入力及び送信ができるようになる。
【0094】
議決権の行使にあたっては、株主は、データ入力部42のタッチパネル上の賛否の項目を触れる。賛否の項目は「賛成」「否決」「棄権」のいずれかとなっている。株主がデータ入力部42から賛否を入力すると、制御部41において議決権行使データが生成され、当該議決権行使データが送受信部45によって管理用端末30に対して送信される。このとき、当該議決権行使データはICカード80及び外部記憶媒体にも書き込まれる。このようにして、各株主は最終議案まで議決権の行使を進めていく。
【0095】
動議及び/又は緊急動議が提出された場合には、管理用端末30から投票用端末40に対して動議番号を含む動議情報呼出要求を送信し、投票用端末40は当該動議番号をキーにして外部記憶媒体から動議情報が投票用端末40の制御部41によって呼び出され、外部記憶部44から動議情報を呼び出し、採決用の画面をデータ入力部42のタッチパネルに表示する。その後は通常の議案と同様に議決権の行使が行われる。
【0096】
本実施形態に係る株主総会議決権集計システム10における、管理用端末30と投票用端末40との間でのデータ通信は、第1の実施形態で説明した通信方法を用いて行われる。これによって、数多くの投票用端末40から無線通信によって管理用端末30に対して議決権行使データが送信された場合においても、短時間に全てのデータを受信して通信を完了させることができる。
【0097】
議決権行使データの集計作業は、管理用端末30において、投票用端末40から送信された議決権行使データと、株主情報31に含まれている株式数情報または議決権数情報に基づく株主保有の議決権数とに基づいて、株主毎に行われる。具体的には、投票用端末40から送信された議決権行使データ、すなわち、各議案に対する議決権行使の結果に、当該株主が保有する議決権数を加味して、議案毎に賛否別の議決権数が記録された当日投票結果情報33を管理用端末30上に生成する。
【0098】
当日投票結果情報33が生成されたら、管理用端末30に格納されている事前投票結果情報32と当日投票結果情報33とが合算され、議案毎に賛否別の議決権数が集計される。このようにして、集計ミスを生じることなく正確に、かつリアルタイムに株主の議決権行使の結果を集計することができる。集計結果は、例えば株主総会会場内に一又は複数設けられた大型ディスプレイに表示したり、最終的な議決権行使の結果として保存したりすることができる。
【0099】
また、前述したように、ICカード80及び外部記憶媒体には議決権行使データが記憶されている。そこで、投票用端末40から管理用端末30へと送信された議決権行使データを基にした当日投票結果情報33が、無線通信過程において外部からのデータ改変を受けていないかどうか、チェックすることができる。具体的には、ICカード80及び外部記憶媒体を各投票用端末40から回収後、管理用端末30において、ICカード80及び外部記憶媒体に記憶されている議決権行使データと株主番号とを用いて、別途当日投票結果情報チェックデータ34を作成する。次に、当日投票結果情報33と当日投票結果情報チェックデータ34とを比較検討することにより、無線通信過程における外部からのデータ改変の有無を確認することができる。
【0100】
本実施形態に係る株主総会議決権集計システム10においては、IEEE802.15.4規格の無線通信網60を介して管理用端末30と投票用端末40との間での無線通信を行っている。IEEE802.15.4規格は微弱電波による無線通信を行うことを特徴としており、本来近距離無線通信に適した無線通信規格である。したがって、広範囲な場所からの端末接続が不可能であり、株主総会会場内にある投票用端末40にのみ管理用端末30への無線通信を可能とさせることができるため、IEEE802.15.4規格の採用は、外部からのデータ改変リスクを低減させることにつながっている。
【0101】
以上説明した株主総会議決権集計システムによれば、参加人数の多い株主総会において、複数の通信端末から議決権行使の結果を議決権行使データとしてほぼ同時に管理端末に対して送信しても、電波の衝突によって議決権行使データの受信に極めて長い時間を要したり、受信エラーとなったりすることがなくなり、集計ミスを生じることなく正確に、かつリアルタイムに株主の議決権行使の結果を集計することができる。
【0102】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0103】
例えば、受付用端末20にバーコード情報読取装置21などの情報読取手段を設けず、株主の持参した議決権行使書70の内容を受付で確認し、手作業で管理用端末30から株主情報31を呼び出し、株主の本人確認をおこなってもよい。
【0104】
また、投票用端末40を株主総会会場内の座席に固定せず、受付にて配布するものとしてもよい。投票用端末40を座席に固定する場合には、特定の株主がどの座席に座っているのかを管理用端末30側で確認することができるシステムとしてもよい。これにより、特殊株主などの着座位置を確認するとともに、その投票行動を個別に観察することもできるため、株主総会の運営を円滑にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る無線通信システムにおける通信方法は、多くの人が集まるところでの無線によるデータ送受信を短時間に完了させるために有用である。また、本発明に係る株主総会議決権集計システムは、株主総会における議案の採決にあたり株主が行使する議決権数の集計を迅速かつ正確に行うために有用である。
【符号の説明】
【0106】
1…無線通信システム
2…通信端末
200…制御部
210…送受信部
211…アンテナ
212…符号生成部
213…符号再生部
220…タイマー値記憶部
230…自己識別符号記憶部
240…送信情報記憶部
250…管理端末識別符号記憶部
3…管理端末
300…制御部
310…送受信部
311…アンテナ
312…符号生成部
313…符号再生部
320…タイマー値記憶部
330…自己識別符号記憶部
340…送信情報記憶部
350…通信端末識別符号記憶部
360…送信予測情報記憶部
4…無線通信網
400…情報データ
410…同期用データ
420…相手先識別符号
430…自己識別符号
440…送信情報
450…誤り検出データ
10…株主総会議決権集計システム
20…受付用端末
21…バーコード情報読取装置
22…リーダ/ライタ
30…管理用端末
31…株主情報
32…事前投票結果情報
33…当日投票結果情報
34…当日投票結果情報チェックデータ
40…投票用端末
41…制御部
42…データ入力部
43…ICリーダ/ライタ部
44…外部記憶部
45…送受信部
50…ネットワーク回線
60…無線通信網
70…議決権行使書
71…バーコード
80…ICカード
81…入場ID
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図2
図3
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