特許第5961169号(P5961169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961169
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】廃水からの最適化された栄養素の除去
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   C02F3/34 101A
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-529142(P2013-529142)
(86)(22)【出願日】2011年7月7日
(65)【公表番号】特表2013-537107(P2013-537107A)
(43)【公表日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】US2011043163
(87)【国際公開番号】WO2012039814
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2013年10月22日
(31)【優先権主張番号】12/886,321
(32)【優先日】2010年9月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/982,060
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512138943
【氏名又は名称】アメリカン・ウォーター・ワークス・カンパニー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100161595
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 梓
(72)【発明者】
【氏名】ジラルド,エウジェニオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤンジン
(72)【発明者】
【氏名】ムツクリシュナン,スワルナ
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−146495(JP,A)
【文献】 特開2001−314890(JP,A)
【文献】 特開2005−211832(JP,A)
【文献】 特開2000−107787(JP,A)
【文献】 特開2006−035138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/30
C02F 3/34
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸素タンクと通気タンクを用いて、流れの中のアンモニアを低減させるための方法であって:
アンモニアを含有する流れを供給すること;
溶存酸素の量が1.0mg/l未満である低酸素タンクの中で、アンモニアを含有する流れを、酸素を含有する流れと有効な処理条件の下で接触させ、それによって第一の生成物流れを形成すること、このとき、酸素を含有する流れの中の酸素に対するアンモニアを含有する流れの中のアンモニアの比率は、2.28g O/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下である;
通気タンクの中で、第一の生成物流れを、0.57gCOD/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量)以下の比率での有効な処理条件下で有機物質に曝露し、それによってアンモニアの減少を生じさせること、このとき、混合液が形成される;
流出液から分離された活性スラッジを低酸素タンクに戻すこと;
を含む方法。
【請求項2】
有効な処理条件には、アンモニアを含有する流れからリンを除去するために用いられるバクテリアの存在が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有効な処理条件は微好気性の条件である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
微好気性の条件によって、第一の生成物流れの中の粒状有機物質の発酵が促進される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
微好気性の条件によって、リンの除去のために用いられる微生物の個体群の発育が可能になる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
アンモニアを含有する流れは酸素を含有する流れと、窒素ガス、亜硝酸、および水を生成するのに有効な処理条件の下で反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第一の生成物流れは有機物質と、窒素ガス、水、および二酸化炭素を生成するのに有効な処理条件の下で反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
低酸素タンクと通気タンクを用いて、流れの中のアンモニアを低減させるための方法であって:
溶存酸素の量が1.0mg/l未満である低酸素タンクの中で、アンモニアを含有する流入液の流れを、2.28g O/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下の量の酸素を用いて処理し、第一の生成物流れが形成されること;
タンクの中で微好気性の条件を維持し、それにより微生物の個体群の発育を促進すること;
通気タンクの中で、第一の生成物流れを、0.57gCOD/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量)以下の比率で有機物質に曝露し、第二の生成物流れが形成されること;
流出液から分離された活性スラッジを低酸素タンクに戻すこと;
を含む方法。
【請求項9】
低酸素タンクの中で脱窒素が起こる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
微生物の個体群はリンの除去のために用いられる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
粒状有機物質の加水分解と発酵によって、通気タンクの中でリンの除去が起こる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
流れの中のアンモニアを低減させるための方法であって:
アンモニアを含有する流入液の流れを供給すること;
流入液の流れを、1.0mg/l未満の量の溶存酸素の存在下で作用するタンクに流すこと;
微生物の存在下で、タンクの中の流入液の流れを、2.28gO/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下の量の酸素と、そして0.57gCOD/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量)以下の量の有機物質と反応させること;
流出液から分離された活性スラッジをタンクに戻すこと;
を含む方法。
【請求項13】
タンクの中で脱窒素が起こる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
タンクは微好気性の条件下で作用し、それによってリンの除去のために用いられる微生物の個体群の発育が可能になる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
微好気性の条件によって、タンクの中の粒状有機物質の発酵が促進される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
タンクの中の溶存酸素の濃度は、混合液の0.3mg/l未満である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についてのクロス・リファレンス
本出願は「廃水からの最適化された栄養素の除去」と題する米国特許出願12/982060号(2010年12月30日提出)の優先権を主張し、その米国出願は「同時的に行う低酸素で生物的なリンと窒素の除去」と題する米国特許出願12/886321号(2010年9月20日提出)の継続出願であり、その両者の米国出願の内容は全てがこの明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
廃水から窒素、炭素、およびリンのような様々な成分を除去することは、困難で高コストのプロセスになることがあり、ある場合には、廃水処理プロセスに炭素源を添加することを要するかもしれない。さらに、多くの廃水処理プロセスにおいて用いられる高濃度の溶存酸素は、実質的に廃水処理プラントのエネルギー利用のコストの原因となる。例えば硝化と脱窒素を促進するために、メタノールのような炭素源がプロセスでの低酸素タンクに添加されるかもしれない。さらに、通気タンクは、生物学的酸素要求量(BOD)とアンモニアに関する酸化を促進するための高濃度の溶存酸素を必要とするかもしれない。しかし、炭素源の添加と高濃度の溶存酸素の必要性は高い費用を招き、廃水を処理するための費用を著しく増大させる原因となる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様は、この概要ではなく、後述する特許請求の範囲によって定義される。開示についての概観を提示するために、また後述する詳細な説明の部分でさらに説明される概念についての選択を紹介するために、本発明の様々な態様についての高い位置での概観がここで提供される。この概要は、権利請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を確認することを意図したものではなく、また権利請求される主題の範囲を決定するための助けとして独立して用いることを意図したものでもない。
【0004】
第一の態様において、流れの中のアンモニアを低減させるための方法が提供される。この方法は、アンモニアを含有する流れを供給し、そしてそのアンモニアを含有する流れを酸素を含有する流れと有効な処理条件の下で接触させ、それによって第一の生成物流れを形成することを含む。酸素を含有する流れの中の酸素に対するアンモニアを含有する流れの中のアンモニアの比率は、約2.28gO/gN−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下である。さらに、この方法は、その第一の生成物流れを、約0.57gCOD/gN−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量(COD))以下の比率での有効な処理条件下で、有機物質に曝露することを含む。
【0005】
第二の態様において、流れの中のアンモニアを低減させるための方法が提供される。この方法は、タンクの中で、アンモニアを含有する流入液の流れを酸素を用いて2.28gO/gN−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下の量で処理することを含む。アンモニアは酸素と反応して、窒素ガス、亜硝酸、および水を含む第一の生成物流れが形成される。この方法はさらに、タンクの中で微好気性の条件を維持し、それによりバクテリアの個体群の発育を促進することを含む。さらに、この方法は、第一の生成物流れを、0.57gCOD/gN−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量(COD))以下の比率で有機物質に曝露することを含む。有機物質は亜硝酸と反応し、それにより窒素ガス、水、および二酸化炭素を含む第二の生成物流れが形成される。
【0006】
第三の態様において、流れの中のアンモニアを低減させるための方法が提供される。この方法は、アンモニアを含有する流入液の流れを供給し、そしてその流入液の流れを、脱窒素を行うために有効な処理条件下で作用するタンクに流すことを含む。その有効な処理条件には、低レベルの溶存酸素の存在が含まれる。この方法はさらに、バクテリアの存在下で、タンクの中の流入液の流れを2.28gO/gN−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下の量の酸素と、そして0.57gCOD/gN−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量(COD))以下の量の有機物質と反応させることを含み、それによってアンモニアは窒素ガス、水、および二酸化炭素に転化される。
【0007】
本発明は、下記の態様を包含する。
(1) 流れの中のアンモニアを低減させるための方法であって:アンモニアを含有する流れを供給すること;アンモニアを含有する流れを酸素を含有する流れと有効な処理条件の下で接触させ、それによって第一の生成物流れを形成すること、このとき、酸素を含有する流れの中の酸素に対するアンモニアを含有する流れの中のアンモニアの比率は、約2.28g O/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下である;および、第一の生成物流れを、約0.57gCOD/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量)以下の比率での有効な処理条件下で有機物質に曝露し、それによってアンモニアの減少を生じさせること、このとき、混合液が形成される;を含む方法。
(2) 有効な処理条件には、溶存酸素の量が混合液の1.0mg/l未満であるという、溶存酸素が低レベルであることが含まれる、(1)に記載の方法。
(3) 有効な処理条件には、アンモニアを含有する流れからリンを除去するために用いられるバクテリアの存在が含まれる、(1)に記載の方法。
(4) 有効な処理条件は微好気性の条件である、(1)に記載の方法。
(5) 微好気性の条件によって、第一の生成物流れの中の粒状有機物質の発酵が促進される、(4)に記載の方法。
(6) 微好気性の条件によって、リンの除去のために用いられる微生物の個体群の発育が可能になる、(4)に記載の方法。
(7) アンモニアを含有する流れと酸素を含有する流れをタンクの中で接触させる、(1)に記載の方法。
(8) アンモニアを含有する流れは酸素を含有する流れと、窒素ガス、亜硝酸、および水を生成するのに有効な処理条件の下で反応する、(1)に記載の方法。
(9) 第一の生成物流れは有機物質と、窒素ガス、水、および二酸化炭素を生成するのに有効な処理条件の下で反応する、(1)に記載の方法。
(10) 流れの中のアンモニアを低減させるための方法であって:タンクの中で、アンモニアを含有する流入液の流れを酸素を用いて2.28g O/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下の量で処理すること、このとき、アンモニアは酸素と反応して、窒素ガス、亜硝酸、および水を含む第一の生成物流れが形成される;タンクの中で微好気性の条件を維持し、それにより微生物の個体群の発育を促進すること;および、第一の生成物流れを、0.57gCOD/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量)以下の比率で有機物質に曝露すること、このとき、有機物質は亜硝酸と反応し、それにより窒素ガス、水、および二酸化炭素を含む第二の生成物流れが形成される;を含む方法。
(11) タンクの中の条件には、低溶存酸素であることが含まれる、(10)に記載の方法。
(12) タンクの中で脱窒素が起こる、(10)に記載の方法。
(13) 微生物の個体群はリンの除去のために用いられる、(10)に記載の方法。
(14) 粒状有機物質の加水分解と発酵によって、タンクの中でリンの除去が起こる、(10)に記載の方法。
(15) 流れの中のアンモニアを低減させるための方法であって:アンモニアを含有する流入液の流れを供給すること;流入液の流れを、脱窒素を行うために有効な処理条件下で作用するタンクに流すこと、このとき、その有効な処理条件には、低レベルの溶存酸素の存在が含まれる;および、微生物の存在下で、タンクの中の流入液の流れを2.28gO/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り2.28グラムの酸素)以下の量の酸素と、そして0.57gCOD/g N−NH(アンモニア中の窒素1グラム当り0.57グラムの化学的酸素要求量)以下の量の有機物質と反応させ、それによってアンモニアを窒素ガス、水、および二酸化炭素に転化させること;を含む方法。
(16) タンクの中で脱窒素が起こる、(15)に記載の方法。
(17) タンクは微好気性の条件下で作用し、それによってリンの除去のために用いられる微生物の個体群の発育が可能になる、(15)に記載の方法。
(18) 微好気性の条件によって、タンクの中の粒状有機物質の発酵が促進される、(17)に記載の方法。
(19) タンクの中の溶存酸素の濃度は、混合液の1.0mg/l未満である、(15)に記載の方法。
(20) タンクの中の溶存酸素の濃度は、混合液の0.3mg/l未満である、(15)に記載の方法。
本発明を例証する態様が、添付図面を参照して以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の態様に従う廃水処理プロセスの概略図を示す。
図2図2は、本発明の態様に従う代替の廃水処理プロセスの概略図を示す。
図3図3は、本発明の態様を実施した結果としての廃水処理プラントにおけるエネルギー使用量の減少を示す。
図4図4は、本発明の態様が廃水処理プラントにおいて実施されたときのアンモニアとホスフェート(リン酸塩)の両者の減少を示す。
図5図5は、各々のタンク中のリン、溶存酸素、および硝酸塩の濃度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の態様の主題を、法定の要件を満たすための特殊性とともにここで説明する。しかし、その説明自体は、特許請求の範囲を限定することを必ずしも意図していない。むしろ、権利請求される主題は、他の現在ある技術または将来の技術とともに、本明細書の中で説明されるものと類似する別の工程または工程の組み合わせを含めるように、別のやり方で具現化されるだろう。個々の工程の順序が明確に記述される場合を除いて、本明細書で開示される様々な工程の中またはそれらの間の任意の特定の順序を含むものとして、用語が解釈されるべきではない。
【0010】
図1は、廃水処理プロセス10の概略図を示す。特に、この廃水処理プロセスは、プラントの流入廃水から窒素、リン、および有機物質を同時に除去するための、エネルギー効率と費用効率のよい方法を提供する。多くの装置においては、外部の炭素源と高レベルの溶存酸素を必要とするが、本発明の態様においてはそのいずれも必要とせず、実際には、廃水処理装置において典型的に用いられる量と比較して非常に少ない量の溶存酸素と炭素しか必要としない。例えば、多くの装置においてはリンの除去と窒素の除去のための外部の炭素源を必要とするが、しかし本発明の態様においては、窒素の除去には大部分がアンモニアを用いるので、最少量の炭素だけを必要とする。さらに、リンの除去には、溶存炭素または外部の炭素源だけを用いるのではなく、廃水中に存在する溶存炭素と粒状炭素(例えば粒状有機物質)を用いる。図1の態様において、プラントの流入廃水12から窒素、リン、および有機物質を同時に除去するために、三つの個別のタンクが用いられる。ここで言うプラントの流入廃水12は、処理されていない元のままの廃水であり、従って、廃水処理装置(例えば、本明細書で説明される廃水処理装置)には未だ導入されていないものを指す。
【0011】
図1に示される第一のタンクは、プラントの流入廃水12と戻りの活性スラッジ14を含めた少なくとも二つの流れを受け入れる低酸素タンク16である。本明細書中でさらに説明されるであろうが、戻りの活性スラッジ14は、第三のタンク(すなわちメンブランタンク(膜タンク)20)から一つ以上の他のタンク(例えば低酸素タンク16)の中へ再循環される活性スラッジの一部である。ここで言う活性スラッジは、プラントの流出液から分離された流れである。この活性スラッジの流れは、硝酸塩(ニトレート)と溶存酸素に加えて、微生物群を含んでいる。微生物群には、バクテリア、真菌類、原生動物、ワムシなどを含めた様々な生物学的成分が含まれる。従属栄養バクテリアと独立栄養バクテリアの両者が活性スラッジの中に存在するかもしれないが、典型的には従属栄養バクテリアが優勢である。従属栄養バクテリアは、新たな細胞の合成のために、プラントの流入廃水の中の炭素質有機物質からエネルギーを得る。次いで、これらのバクテリアは、有機物質を二酸化炭素や水のような化合物に転化させることによってエネルギーを放出する。活性スラッジの中の独立栄養バクテリアは一般に、細胞の成長のための酸化した炭素化合物(例えば二酸化炭素)を減少させる。これらのバクテリアは、アンモニアをニトレート(硝酸塩)へと酸化すること(これは硝化として知られる)によってエネルギーを得るが、これについてはさらに後述する。
【0012】
上述したように、戻りの活性スラッジ14は、処理プロセスの最後における分離工程(例えば、メンブランタンクまたはメンブランバイオリアクター)によって生成される活性スラッジの一部である。戻りの活性スラッジ14は低酸素タンク16の中へ再循環され、そしてそのタンクに微生物群、残留酸素、ニトレート(硝酸塩)およびニトリット(亜硝酸塩)を供給する。リンの放出は、典型的には、硝酸塩と溶存酸素を有する戻りの活性スラッジを用いて低酸素タンクの中では起きないが、しかし、本発明の態様においては、低酸素タンク16の中でリンの放出が起こる、ということに注目されたい。戻りの活性スラッジ14の中にリンを消費するために用いられるバクテリアも存在するために、リンの放出が起こる。さらに、流入廃水の中に存在する粒状有機物質の活性のある加水分解と発酵の条件のために、リンの放出が起こる。ここで言う加水分解とは、バクテリアの作用によるポリマー有機物質のモノマーへの分解である。一つの態様において、加水分解とは、化学機構の過程において、反応の間に水の分子が水素陽イオンと水酸化物陰イオンに分裂する化学反応を指す。このタイプの反応は、特定のポリマーを分解するために用いられる。従って、リンの除去のための炭素源として溶存態有機物質を用いるだけではなく、本発明の態様によれば、リンの除去のための炭素源として溶存態有機物質と粒状有機物質の両者を用いることが可能になる。通常は粒状有機物質を用いることはできないが、しかし、ここではそれは発酵されるので、それを炭素源として用いることができて、従って、外部の炭素源を用いる必要がなくなる。
【0013】
廃水中では、有機物質は粒状有機物質と溶存態有機物質として存在する。廃水中の有機物質を決定するために、三つの主要な試験が用いられる。これらには、生物学的酸素要求量(BOD)、全有機炭素(TOC)、および化学的酸素要求量(COD)が含まれる。溶存態有機物質と異なって、粒状有機物質は廃水中で見いだされる浮遊した固体の形態をとる。本明細書中でさらに説明するように、本発明の態様が利用されるとき、粒状有機物質は加水分解のプロセスを受け、それによって粒子は可溶性の固体へ転化され、従って、より高速度のリンの除去が可能になる。
【0014】
リンの放出とリンの取り込みは、細胞内の小粒中のエネルギー保留体としてポリリン酸塩を貯蔵するリン蓄積性有機体(PAOs)のプロセスと関連する。嫌気性の条件下で、PAOsはオルトリン酸塩を放出し、これは単純な有機体を蓄積してそれらをポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)として貯蔵するために、エネルギーを利用する。好気性の条件下で、あるいは少なくとも幾分かの酸素が存在する条件下では、PAOsは貯蔵された有機物質の上で成長し、このとき、オルトリン酸塩を取り込んでそれをポリリン酸塩として貯蔵するために、エネルギーの幾分かを利用する。従って、PAOsが将来の成長のために炭素を貯蔵するとき、PAOsはリンの放出も行い、しばしばこれらを同時に行う。PAOsが貯蔵された炭素を利用するとき、それらはリンを取り込む。本明細書中でさらに説明されるであろうが、通気タンクは低レベルの溶存酸素を有しているが、しかしそれでもPAOsはリンを取り込む。酸素が存在するとき、PAOsは炭素からエネルギーを得ることができる。従って、炭素が豊富にあるとき、PAOsはそれを細胞の中に貯蔵し、そして、酸素が存在することによって成長のための炭素を利用してリンを取り込むことができるような条件になるまで待つ。次いで、リン酸塩は廃棄活性スラッジ26の中で除去されるが、そのスラッジは一般に、低酸素タンク16へ循環されない活性スラッジである。PAOの個体群の発育については後にさらに説明する。低酸素タンク16は、溶存酸素がほとんど存在しないか、あるいは全く存在しないが、しかし硝酸塩(例えばNO2およびNO3)が存在するかもしれないような低酸素の条件下で作用する。連続的な酸素の不足状態は、低酸素タンク中で維持される。
【0015】
一つの態様において、低酸素タンク16は、プラントの流入廃水12と戻りの活性スラッジ14を混合して混合液を形成するための混合器を有する。ここで言う混合液は単に、プラントの流入廃水12と戻りの活性スラッジ14の混合物を指す。低酸素タンク16におけるリンの放出を制御するために、戻りの活性スラッジ14の流量を調節することに加えて、混合の割合を調節してもよい。本発明の態様を実施するために追加の炭素源を必要としないので、本発明の態様においては外部の炭素源(例えばメタノール)の添加が避けられることに注目すべきである。低酸素タンク16においては、リンの放出に加えて脱窒素も起こる。脱窒素は亜硝酸塩または硝酸塩が分解して窒素ガスを放出することであり、また同時に、微生物が亜硝酸塩または硝酸塩から酸素を消費する。より具体的には、脱窒素は、硝酸塩の異化還元が微生物によって促進されるプロセスであり、最終的に分子状窒素(N2)が生成し、これが大気へ戻される。硝酸塩と亜硝酸塩は脱窒素プロセスによって窒素ガスへ転化される。脱窒素によって一般に、酸化された形の窒素が有機物質のような電子供与体の酸化に応じて還元され、この場合、その有機物質は戻りの活性スラッジ14の中に存在する。このプロセスは主として、低酸素タンク16や通気タンク18のような、酸素が消耗した環境または酸素の消費が酸素が供給される速度を上回る環境において従属栄養バクテリアによって行われる。本発明の態様を用いると、低酸素タンク16や通気タンク18の中の低溶存酸素の条件下で独立栄養硝化細菌によっても脱窒素プロセスが行われる。下記の反応は脱窒素プロセスを説明するものであり、これには酸化還元反応の説明が含まれる。
【0016】
【化1】
【0017】
プラントの流入廃水12からの粒状有機物質と溶存態有機物質は、低酸素タンク中で発酵される。本発明の態様における低酸素タンク中の条件は粒状有機物質の高速度の加水分解と発酵を誘発し、これにより脱窒素反応に必要な量よりも過剰な発酵有機物質が得られ、そのためリンの放出とPHAsの形成が同時に起こることが可能になる。粒状有機物質の発酵は、リンの除去のために追加の炭素が用いられることを可能にする。低酸素タンクでの流入廃水の流れの平均の滞留時間は、1時間から10時間までの間で変動するだろう。一つの態様において、低酸素タンク中の溶存酸素の濃度は0.3mg/L未満である。さらなる態様において、低酸素タンク中の溶存酸素の濃度は0.2mg/L未満である。さらなる態様において、低酸素タンク中の溶存酸素の濃度は0.1mg/L以下である。さらに、戻りの活性スラッジの再循環の割合は、流入廃水の流量の0.3〜6倍の間で変動するだろう。
【0018】
低酸素混合液は通気タンク18へ移される。図1においては単一の通気タンク18が例示されているが、複数の通気タンクを用いてもよく、またそれらは平行または直列のいずれかに構成されていてもよい。あるいは、一つの通気タンクを用いてもよいが、しかし、その通気タンクは、混合液が通過する一つよりも多い区画を有しているかもしれない。一つよりも多い区画を設ける目的は、タンクの容積を最小にするような全体的なプロセスの動力学的条件を改善することである。場合により、粒状有機物質と溶存態有機物質を発酵させ、そしてリンの放出を促進させるのに必要な追加のバクテリアの個体群を供給するために、活性スラッジの一部が通気タンクの中へ移される。このことは、メンブランタンク中の硝酸塩の濃度が過度に高い場合に有利である。多くの通気タンクと違って、本発明の態様において設けられる通気タンク18は、微好気性の条件のような非常に低い溶存酸素濃度の下で操作され、そのような条件は、リンの放出と取り込みのために用いられるバクテリアの個体群(例えば、リン酸塩蓄積性有機体(PAO))の発育を促進する。一般に、このバクテリアの個体群は、ポリリン酸塩などの形でリンを貯蔵することができ、そしてそれをエネルギーの生成と細胞の合成のために代謝し、その結果、活性スラッジを通る系からリンが除去される。この特定のバクテリアの個体群は、高濃度の溶存酸素が存在する場合には発育することができない。この特定の微生物の個体群は、通気タンク18の中では発育することができるので、それは、低酸素タンク16へ再循環される戻りの活性スラッジ14の中にも存在し、それによって、低酸素タンク16の中でのリンの放出が可能になる。通気タンク18の中では、リンの放出と同時にリンの取り込みが起こるだろう。
【0019】
リンの放出とリンの取り込みに加えて、通気タンク18の中では硝化と脱窒素も起こる。一つの態様において、通気タンク18の中で硝化、脱窒素、およびリンの放出が同時に起こる。前に述べたように、脱窒素は、硝酸塩の異化還元が微生物によって促進されるプロセスであり、最終的には、酸化された形の窒素が還元されることによって窒素ガスが生成する。一方、硝化は、硝酸塩と水へのアンモニアの分解である。特に、硝化は、酸素によるアンモニアの亜硝酸塩への生物的酸化であり、それに続いて亜硝酸塩の硝酸塩への酸化が起こる。一般に、二つのグループの有機体が、アンモニアの亜硝酸塩への酸化の原因となる。それら二つのグループは、アンモニア酸化性バクテリア(AOB)とアンモニア酸化性古細菌(AOA)である。次の式が硝化のプロセスを表す。
【0020】
【化2】
【0021】
しかし、本発明の態様においては、式(4)および(6)によって表される反応は最少限に起こり、従って、酸素の必要性は減少して、エネルギーの利用はかなり省かれる。幾つかの態様において、反応(4)および(6)はプロセスの全体で非常に小さな割合となるので、混合液中に硝酸塩はほとんど見出されないか、あるいは全く見出されず、従って、前の式(1)において窒素ガスに転化されるのは硝酸塩ではなく、主として亜硝酸塩である。従って、式(2)において、亜硝酸塩を窒素ガスへ転化するのに必要な電子は10未満である。本発明の態様において、これらの電子は、メタノールまたはその他の外部の炭素源から来るのではなく、アンモニアから来る。これについては、後にさらに詳細に説明するだろう。上の反応(3)および(5)によって示されるように、亜硝酸塩を窒素ガスへ転化するためにアンモニアが用いられる。外部の炭素源を必要としないので、アンモニアの幾分かは反応(3)および(5)のために用いられるが、しかしアンモニアの幾分かは、脱窒素のために電子を還元するための供給源としても用いられる。このようにして、低酸素濃度で外部の炭素源を用いない系において硝化と脱窒素が起こりうる。
【0022】
さらに、微好気性の条件は通気タンク18の中の粒状有機物質と溶存態有機物質の発酵を可能にし、これは典型的に、高濃度の溶存酸素を伴った場合には生じないであろう。
上述したように、本発明の態様によれば、硝化と脱窒素は低酸素タンクと通気タンクの両者において起こる。従来の硝化−脱窒素は、下の反応(7)、(8)および(9)によって表される。反応(9)は反応(7)および(8)の最終結果である。多くの場合、この反応の連鎖は高濃度の溶存酸素と外部の炭素源を必要とする。ここで、反応(7)については1グラムのN-NH3につき約4.57グラムのO2が必要であり、反応(8)については1グラムのN-NO3につき約2.86グラムのCOD-O2が必要である。これらの式は次の通りである。
【0023】
【化3】
【0024】
下の反応(9)と(10)は硝化の近道と呼ばれるプロセスを示していて、この場合、最初の反応(すなわち、反応(10))は亜硝酸塩についてだけ進み、その結果、酸素と有機物質の両者の必要量が節約される。反応(9)については1グラムのN-NH3につき約3.43グラムのO2が必要であり、反応(10)については1グラムのN-NH3につき約1.71グラムのCOD-O2が必要である。一つの例として、上の第一の反応の組(反応(7)および(8))と下の第二の反応の組(反応(9)および(10))を比較すると、酸素要求量は約25%減少し(4.57gO2/gN-NH3−3.43gO2/gN-NH3=1.15gO2/gN-NH3)、そして有機物質の必要量は約40%減少する(2.86gO2/gN-NO3−1.71gO2/gN-NH3=1.15gCOD/gN-NH3)。
【0025】
【化4】
【0026】
下の(11)および(12)と表示した反応の組は、低酸素タンクと通気タンクにおいて起こる。幾つかの場合、この反応の組は硝化細菌−脱窒素プロセスと呼ばれる。式(11)で示されるように、アンモニアと酸素は窒素ガス、亜硝酸および水へ転化される。次いで、有機物質が用いられて、亜硝酸が窒素ガス、水および二酸化炭素へ転化される。反応(11)については1グラムのN-NH3につき約2.28グラムのO2が必要であり、反応(12)については1グラムのN-NH3につき約0.57グラムのCODが必要である。三つの反応の組を比較すると、この第三の反応の組(反応(11)および(12))が最も少ない量の酸素を必要とする。下記の第三の反応の組について必要な有機物質の量を第一の反応の組(反応(7)および(8))と比較すると、有機物質の節約は約80%である(2.86gO2/gN-NO3−0.57gCOD/gN-NH3=2.29gO2/gN)。さらに、化学式の第一の組と第三の組との間で必要な酸素の節約は約50%である(4.57gO2/gN-NH3−2.28gO2/gN-NH3=2.28gO2/gN)。
【0027】
【化5】
【0028】
図1に戻ると、次に混合液は、微生物が処理水から分離される固−液分離工程のために、通気タンク18から第三のタンク(ここではメンブランタンク(膜タンク)20として示されている)へ移される。ここで説明されているような活性スラッジのプロセスにおいて、溶存有機汚染物質は水、二酸化炭素およびバイオマスに変換され、その結果、スラッジが過剰に生成する。メンブランタンク20は、このスラッジを、処理済みのプラント流出液22から分離する。一つの態様において、メンブランタンクはメンブランバイオリアクターであり、これは浮遊成長バイオリアクターを用いる膜プロセス(例えば、精密ろ過、限外ろ過、中空繊維、フラットシート、チューブ式)の組み合わせである。バイオリアクターは、生物学的に活性な環境で使用される装置である。バイオリアクターは、バイオマスと精製された液体を回収するために分離装置と結合させなければならず、個別の装置を用いる非効率さと不便さがある故に、単一の装置において同等か、またはもっと良好な結果を得るためにメンブランバイオリアクターが用いられる。従って、メンブランバイオリアクターは生物学的反応器とクロスフロー式ろ過を結合させたものである。一例として、メンブランタンク20は、水没させた膜フィルターを洗い流すための水の乱流を与えるために、通気される。一つの態様において、膜フィルターは精密ろ過を利用するが、しかし別の態様においては、限外ろ過が用いられる。
【0029】
メンブランタンク20において行われる膜ろ過の結果、処理済みのプラント流出液22と活性スラッジ24を含む少なくとも二つの出口流れが生じ、活性スラッジの一部は低酸素タンク16へ再循環され、そして幾つかの態様においては、通気タンク18へ再循環される。ここで言う処理済みのプラント流出液22とは、炭素、窒素、リン、およびその他の望ましくない成分を除去するために処理された、第三のタンクから出る流れである。超過の活性スラッジは、活性スラッジ26として示されている。低酸素タンク16へ再循環される活性スラッジ24の量は変化するが、しかし幾つかの態様においては、低酸素タンク16に入るプラントの流入廃水12の量のおよそ50%〜600%の範囲である。従って、プラントの流入廃水12の1ガロンにつき、0.5〜6ガロンの戻りの活性スラッジ14が低酸素タンク16に加えられるだろう。図1の態様における第三のタンクはメンブランタンク20として示されているが、別の態様においては、これは清澄器である。清澄器は、活性スラッジを分離し、濃縮し、そして再循環させるために用いられるタンクである。典型的に、清澄器はメンブランバイオリアクターよりもずっと大きな設置面積を有する。
【0030】
ここで図2を参照すると、代替の廃水処理プロセスの概略図が示されている。図2の態様においては、低酸素タンク16a、通気タンク18a、およびメンブランタンク20aが示されていて、これらは図1で説明したものと同様に作用する。ここでは、低酸素タンク16aの下流に(すなわち、後ろに)、そして通気タンク18aの上流に(すなわち、前に)、無気タンク(嫌気タンク)28が付加されている。一般に、無気タンク28は嫌気性の条件下で(すなわち、酸素が存在しない下で)作用する。無気タンク28は非通気タンクであり、従って、酸素は添加されず、硝酸塩も存在しない。無気タンク28の中で内容物は混合され、従って、ミキサーが存在する。図2の態様、すなわち、特に無気タンク28が装置に加えられる場合の態様は、流入廃水の流れの中に存在する有機物質の性質が粒状有機物質の加水分解と発酵の両方のために追加の滞留時間が必要であるような条件において用いられる。一つの態様において、追加のリンの放出が無気タンク28の中で起こる。図1で説明したものと同様に、プラントの流入廃水12aが、低酸素タンク16aの中で戻りの活性スラッジ14aと混合される。混合液は最初に無気タンク28へ移され、次いで通気タンク18aへ移され、そして最後にメンブランタンク20aに送られる。メンブランタンク20aから出てくるものは、処理済みのプラント流出液22と活性スラッジ24aである。活性スラッジ24aの一部は、戻りの活性スラッジ14aとして低酸素タンク16aへ再循環され、そして場合により、一部は通気タンク18aへも再循環される。一つの態様において、廃棄活性スラッジ26aは処分される。
【0031】
図3は、本発明の態様を実施した結果としての廃水処理プラントにおけるエネルギー使用量の減少を示す折れ線グラフ300である。すでに説明したように、通気タンクにおいて溶存酸素濃度が最少に保たれた場合、廃水処理プラントのための全エネルギーコストについて溶存酸素を添加するコストが占める割合は50%以下であろうから、エネルギー使用のコストは著しく減少する。「試験の開始」と表示しているように、ここで説明されている技術が試験されて、そして少なくとも部分的には、通気タンクにおいて必要な溶存酸素の量が少ないことにより、エネルギーコストが著しく減少したことが見いだされた。そこで示されているように、試験の前の最も高いエネルギー使用量は約64000kWh/月であり、一方、試験後の最も高い使用量は約54000kWh/月であり、そのレベルは試験前の月よりもずっと低い量になった。
【0032】
ここで図4を参照すると、廃水処理プラントにおいて本発明の態様が実施されるときにアンモニアとリン酸塩の両者が減少することを示す棒グラフ400が示されている。そこで示されているように、アンモニアの流入濃度は約72mg/lであったが、ここで説明されている処理方法を用いてプラントの流入廃水が処理された後には約1mg/lに低下した。さらに、リン酸塩の流入濃度は、ここで説明されている処理方法を用いてプラントの流入廃水が処理された後には、約74mg/lから約4mg/lに低下した。
【実施例】
【0033】
以下の実施例は、第一のトレイン(トレインA)と第二のトレイン(トレインB)を含む、二つの並行するトレイン(トレイン:縦に並んだ系列)を有するプラントについて例証するものである。それぞれのトレインにおけるタンクは同一であり、そして同じ位置にある。しかし、タンクにおける条件は異なる。トレインAは、本発明の態様を用いずに行われる典型的なプロセスを表し、一方、トレインBは、先に説明したように、通気タンク中の溶存酸素の濃度を低くした本発明の態様を用いるプロセスを表す。例えば、下の表1に示すように、トレインAの通気タンク中の溶存酸素の濃度は1.3mg/lであり、一方、トレインBの通気タンク中の溶存酸素の濃度は0.1mg/lである。リンおよび硝酸塩または亜硝酸塩が除去されるレベルによって示されるように、トレインBをトレインAと比較すると、通気タンク中のより低いレベルの溶存酸素によって、通気タンク中のリン除去性バクテリアの発育が可能になる。次に、これらのリン除去性バクテリアは、メンブランタンクから低酸素タンクへ戻される戻りの活性スラッジ(図示せず)の中に存在する。リンの放出はトレインBの低酸素タンク中で認められるが、トレインAの低酸素タンク中では認められない。正味のリンの取り込みがトレインBの通気タンク中では起こり、トレインAの通気タンク中では起こらない。従って、このプロセスにおいて高いレベルのリンの取り込みと除去が起こる。その結果、メンブランタンク(すなわち、プラント流出液)中のリンのレベルは、トレインBについて3.65mg/lであり、これはトレインAについてのメンブランタンク中のレベルである7.41mg/lよりもずっと低い。同様に、硝酸塩の濃度における著しく大きな差によって表されているように、トレインBの通気タンク中で同時の硝化−脱窒素が起きているのに対して、トレインAの通気タンク中では硝化だけが起きている。トレインBについてのメンブランタンク中の硝酸塩または亜硝酸塩のレベルは7.15mg/lであり、これはトレインAのメンブランタンク中の8.31mg/lというレベルよりも低い。
【0034】
上で説明した実施例について続け、そして下の表1において例証を行うと、図5は、それぞれのタンク中のリン、溶存酸素、および硝酸塩の濃度を示す棒グラフ500を例示している。例えば、リンのレベルを比較すると、そのレベルはトレインBについてのメンブランタンクにおいて、トレインAよりもずっと低いことがわかり、それは、ある程度は、通気タンク中の溶存酸素濃度が低いことによる。
【0035】
【表1】
【0036】
説明された様々な構成要素および示されていない構成要素の多くの異なる配置が、特許請求の範囲から逸脱することなく可能である。これらの技術の態様は、限定的なものではなく、例示する意図をもって説明されたものである。この開示を読む人にとっては、代替の態様が明らかであろう。さらに、上述したことを実施するための代替手段は、特許請求の範囲から逸脱することなく完成させることができる。特定の態様とサブコンビネーション(下位の組み合わせ)が有用であり、それらは他の態様やサブコンビネーションと関係なく用いることができて、そして特許請求の範囲に含まれると考えられる。
【符号の説明】
【0037】
10、10a 廃水処理プロセス、 12、12a プラントの流入廃水、 14、14a 戻りの活性スラッジ、 16、16a 低酸素タンク、 18、18a 通気タンク、 20、20a メンブランタンク、 22、22a 処理済みのプラント流出液、 24、24a 活性スラッジ、 26、26a 廃棄活性スラッジ、 28 無気タンク、 300 折れ線グラフ、 400 棒グラフ、 500 棒グラフ。
図1
図2
図3
図4
図5