(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961184
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】非反転シール付きの自動車ブレーキシステムのマスターシリンダー及びそのようなマスターシリンダーのためのシール
(51)【国際特許分類】
B60T 11/16 20060101AFI20160719BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20160719BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20160719BHJP
F16J 15/3236 20160101ALI20160719BHJP
【FI】
B60T11/16 Z
F16J15/18 A
F16J15/3232 101
F16J15/3236
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-543716(P2013-543716)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-503412(P2014-503412A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2011072614
(87)【国際公開番号】WO2012080253
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年7月19日
(31)【優先権主張番号】1004951
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・グレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・キニウ
(72)【発明者】
【氏名】ロラン・リュイリエー
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・オギュスト
(72)【発明者】
【氏名】キャロル・シャルパンティエ
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−001262(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19754700(DE,A1)
【文献】
実開昭56−095648(JP,U)
【文献】
国際公開第2005/090837(WO,A1)
【文献】
特開2010−120480(JP,A)
【文献】
実開昭58−148360(JP,U)
【文献】
特開2011−240723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 11/16
F16J 15/18
F16J 15/3232
F16J 15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって後部休止位置と前部制動位置の間で作動され、休止位置方向へ弾力的に戻る少なくとも1つのピストン(130、230)を収容するボア(120)を備えた本体(110)を有する自動車ブレーキシステムのマスターシリンダー(100)であって、
ボア(120)は、ブレーキ液タンク(190)に接続された少なくとも1つの供給室(150、250)を有し、
ピストン(130、230)は、ブレーキ液タンク(190)に接続された供給室(150、250)とブレーキ回路(C1、C2)に接続された圧力室(140、240)を分離する滑り弁を形成し、
供給室(150、250)は、一方の溝(151、251)が、供給室を圧力室から分離する再供給シール(153、253)を収容し、他方の溝(152、252)が、ピストン(130)の表面に対して供給室と外部を分離する密封シール(180、280)を収容する2つの溝(151、152;251、252)によって境界が画され、
密封シール(180、280)は、横向きのU字状断面の周縁シールであり、その一方の脚部(181)が溝(152、252)の底部(152a)とその2つの隣接する側壁(152b、152c)に対して押し当てられ、他方の脚部(182)がピストン(130)に押し当てられて密封性を確保し、
ここにおいて、
密封シール(280)の脚部(281、282)の少なくとも一方脚部の端部(284)が、周縁に配置され各々が平らな又はほぼ平らな表面を有する突出部分(285)によって構成され、
突出部分(285)の脚部の端部(284)が、ボア(120)の軸(xx)に垂直な面に対して0°を超え10°の間に含まれる角度(α)だけ傾斜している、
ことを特徴とするマスターシリンダー。
【請求項2】
シールが溝(152)内に収容されニュートラルな位置にあるとき、突出部分(285)の脚部の端部(284)が、軸方向(xx)に対して円錐台状の傾斜した表面であることを特徴とする、請求項1に記載のマスターシリンダー。
【請求項3】
運転者によって後部休止位置と前部制動位置の間で作動され、休止位置方向へ弾力的に戻る少なくとも1つのピストン(130、230)を収容するボア(120)を備えた本体(110)を有する自動車ブレーキシステムのマスターシリンダー(100)のための横向きのU字状断面の密封周縁シールであって、
ボアは、ブレーキ液タンクに接続された少なくとも1つの供給室を有し、
ピストン(130、230)は、ブレーキ液タンク(170)に接続された供給室(150、250)とブレーキ回路(C1、C2)に接続された圧力室(140、240)を分離する滑り弁を形成し、
供給室(150、250)は、一方の溝(151、252)が、供給室を圧力室から分離する再供給シール(153、253)を収容し、他方の溝(152、252)が、ピストン(130、230)の表面に対して供給室と外部を分離する密封シール(180、280)を収容する2つの溝(151、152;251、252)によって境界が画され、
密封シール(180、280)は、横向きのU字状断面の周縁シールであり、その一方の脚部(181)が溝(152、252)の底部(152a)とその2つの隣接する側壁(152b、152c)に対して押し当てられ、他方の脚部(182)がピストン(130,230)に押し当てられて密封性を確保し、
ここにおいて、
密封シール(280)の脚部(281、282)の少なくとも一方脚部の端部(284)が、周縁に配置され各々が平らな又はほぼ平らな表面を有する突出部分(285)によって構成され、
突出部分(285)の脚部の端部(284)が、ボア(120)の軸(xx)に垂直な面に対して0°を超え10°の間に含まれる角度(α)だけ傾斜している、シール。
【請求項4】
シールが溝(152)内に収容されニュートラルな位置にあるとき、突出部分(285)の脚部の端部(284)、軸方向(xx)に対して円錐台状の傾斜した表面であることを特徴とする、請求項3記載のシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によって後部休止位置と前部制動位置の間で作動され、休止位置方向へ弾力的に戻る少なくとも1つのピストンを収容するボアを備えた本体を有する自動車ブレーキシステムのマスターシリンダーに関するものであり、
ボアは、ブレーキ液タンクに接続された少なくとも1つの供給室を有し、
ピストンは、ブレーキ液タンクに接続された供給室とブレーキ回路に接続された圧力室を分離する滑り弁を形成し、
供給室は、一方の溝が、供給室を圧力室から分離する再供給シールを収容し、他方の溝が、ピストンの表面に対して供給室と外部を分離する密封シールを収容する2つの溝によって境界が画され、
密封シールは、横向きのU字状断面の周縁シールであり、その一方の脚部が溝の底部とその2つの隣接する側壁に対して押し当てられ、他方の脚部がピストンに押し当てられて密封性を確保している。
【0002】
本発明は、また、このようなマスターシリンダーのためのシールに関する。
【背景技術】
【0003】
マスターシリンダーが隔離又は分離位置にあるときに、密封キャップとも呼ばれる密封シールが、ピストンに加えられた摩擦の極限状態で溝内において反転しうる上記のようなマスターシリンダーが知られている。
【0004】
同様に、摩擦のために、マスターシリンダーの組み立て時に、シールが反転することがある。そのようなマスターシリンダーが、文献EP1995138A1に記載されている。
【0005】
単純型マスターシリンダーの場合、再供給シールと密封シールによって境界が画された1つの供給室しか設けられていない。そこでは、前者が、ブレーキペダル上の動作によってマスターシリンダーのピストンの移動方向において後者の後ろに設けられている。タンデムマスターシリンダーの場合、組み合わされて作動する2つのピストンがあり、各ピストンが供給室及び圧力室と協働する。
【0006】
これらの2つの密封シールについて、設置時においても、極限状況においても、反転のおそれが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、組み立て時だけでなく、マスターシリンダーが隔離又は分離位置においてさらされる極限状態においても同様に、単数又は複数のシールの反転を防ぐブレーキシステムのマスターシリンダーを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的で、本発明は、上記のようなマスターシリンダーであって、シールの2つの脚部の少なくとも一方脚部の端部が、溝の側面に押し当てられる平らな表面を有することを特徴とするマスターシリンダーに関する。
【0009】
各々の脚部の端部のこの平らな表面によって、2つの脚部が、特に、溝の底部の近くに位置する外側の脚部が、溝の反対の面に対するU字状断面の基礎部の支持に対抗しながら、溝の側面の表面に強固に押し当てられることが可能となる。このように、U字状断面の外側脚部が溝内に押しつけられ、まず底部の脚部からずれるおそれがなくなる。このずれが生じるならば、それによってU字形状が閉じて部分的に基礎部が剥離するおそれが生じ、ピストンの動きによってこのシールの内側脚部に加えられる激しい摩擦の作用でさらにずれが生じることになるであろう。
【0010】
溝内のシールの固定の効果は、シールの2つの脚部の
ほぼ平らな又は円錐台状の面、特に、溝の底部に位置する平らな面が、対応の側壁の表面に対して小さい角度で傾いた休止位置にあるときに、さらに向上する。この小さい角度は約10°である。
【0011】
このように、U字形状の内側脚部に加えられる摩擦力が増すに従って、外側脚部の表面はますます強固に溝の面に押しつけられ、溝の内部のこのU字状断面部のずれと、それに伴う傾斜や回転のあらゆる可能性を阻止する。
【0012】
本発明の他の特徴によると、シールが溝内でニュートラル位置にあるとき、シールの脚部の少なくとも一方脚部の平らな端部が、軸方向xxに対して円錐台状の傾斜した表面である。
【0013】
特に、傾斜した表面の場合、傾斜は、ボアの軸xxに垂直な面に対して0°
を超え10°の間に含まれる角度である。
【0014】
傾斜がゼロに
近い極端な場合は、実際に
ほぼ平らな表面の場合であり、一方、10°の傾斜の場合は数学的意味で円錐形表面に対応する。
【0015】
他の有利な特徴によると、密封シールの脚部の少なくとも一方脚部の端部が、周縁に配置され各々が平らな又はほぼ平らな表面を有する突出部分で構成される。
【0016】
この場合、傾斜した
脚部の端部は、ボアの軸に垂直な面に対して0°
を超え10°の間に含まれる角度で傾斜しうる。
【0017】
本発明は、また、マスターシリンダーの組み立て時にマスターシリンダーに設置されるシールとして、又はそのようなマスターシリンダーのための交換部品として用いられるマスターシリンダーのためのシールに関する。
【0018】
従って、本発明は、運転者によって後部休止位置と前部制動位置の間で作動され、休止位置方向へ弾力的に戻る少なくとも1つのピストンを収容するボアを備えた本体を有する自動車ブレーキシステムのマスターシリンダーのための横向きU字状断面の密封周縁シールに関するものであり、
ボアは、ブレーキ液タンクに接続された少なくとも1つの供給室を有し、
ピストンは、ブレーキ液タンクに接続された供給室とブレーキ回路に接続された圧力室を分離する滑り弁を形成し、
供給室は、一方の溝が、供給室を圧力室から分離する再供給シールを収容し、他方の溝が、ピストンの表面に対して供給室と外部を分離する密封シールを収容する2つの溝によって境界が画され、
密封シールは、横向きのU字状断面の周縁シールであり、その一方の脚部が溝の底部とその2つの隣接する側壁に対して押し当てられ、他方の脚部がピストン上に押し当てられて密封性を確保しており、
ここにおいて、シールの2つの脚部の少なくとも一方脚部の端部が、溝の側面に対して押し当てられるようになった平らな表面を有することを特徴とする。
【0019】
さらに他の特徴によると、シールの脚部の少なくとも一方脚部の平らな端部は、シールが溝内でニュートラル位置にあるとき、軸方向xxに対して円錐台状の傾斜した表面である。
【0020】
さらに他の特徴によると、
脚部の端部は、ボア(120)の軸xxに垂直な面に対して0°
を超え10°の間に含まれる角度αだけ傾斜している。
【0021】
さらに他の特徴によると、密封シールの脚部の少なくとも一方脚部の端部は、周縁に配置され各々が平らな又はほぼ平らな表面を有する突出部分によって構成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下に、本発明を、下記添付図面を用いてより詳細に説明する。
【
図1】本発明によるタンデムマスターシリンダーの軸方向断面図である。
【
図2】ボアに達したマスターシリンダーの本体の溝に設けられたシールの拡大断面図である。
【
図3】密封シールの断面のU字状の脚部の端部形状を示す。
【
図6】
図4のシールのU字状の一方脚部の端部の形状を示す詳細図である。
【
図7】マスターシリンダーが、マスターシリンダーのピストンとシールの間に加えられた極度の摩擦力を受けるときの、定められた位置における本発明による密封シールの変形の5つの段階を部分
図7A−7Eで示す。
【
図8】比較として、ピストンによって加えられた極度の摩擦力を受けた公知のシールの反転の動きを部分
図8A−8Fで示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1では、本発明はブレーキシステムのマスターシリンダー10に関する。図示の例は、タンデムマスターシリンダーの例である。
【0024】
マスターシリンダーは、以下に、単純型マスターシリンダーの語句で説明されるが、この説明が、二重化を構成して独立した2つのブレーキ回路の制御を可能とするあらゆる構成要素について、実際には二重化した態様でタンデムマスターシリンダーに適用されることが了解されている。
【0025】
マスターシリンダーは、図示されていないサーボブレーキによって、又はマスターシリンダー上に加えられるブレーキペダルの駆動によって直接に、制御されるピストン130を収容する軸(xx)のボア(120)が貫通する本体110で構成される。サーボブレーキで補助されたブレーキペダルの場合、駆動装置によって制御されるシミュレータを設けることができる。シミュレータは一方でマスターシリンダーを制御し、他方でブレーキ上のブレーキペダルの駆動の直接的伝達をシミュレートする反応を生じさせる。
【0026】
ピストン130の移動方向は、
図1で、右側から左側への往路制動駆動に対応する矢印AFで示される。左側に位置するマスターシリンダーの二重化された部分は、「前側部分」と呼ばれ、他方側に位置する部分は、「後側部分」と呼ばれる。
【0027】
マスターシリンダーの上部は、簡略的に表示されたブレーキ液タンクの出口を受け入れる2つの入口101、201を備える。
【0028】
滑り弁を形成するピストン130は、ボア120において、圧力室140に達する穿孔141によってブレーキ回路C1に接続された圧力室140の境界を定める。この圧力室140は、中空のピストン130によって、供給室150から分離される。この供給室150は、マスターシリンダー100の本体110において、ボア120とピストン130の外部表面の間に設けられ、ボア内の周縁溝によって具体化されている。前側と後側において、この供給室150は、ボアに達する周縁溝151、152で境界が画されている。前部溝151は再供給周縁シール153を収容し、後部溝152は、隔離シールとも呼ばれる密封周縁シール180を収容する。
【0029】
再供給シール153は、ブレーキ液の不足又はブレーキの突然の作動の場合に、圧力室140のブレーキ液の供給を可能とする働きをする。この再供給シール153の開閉動作は、文献FR2916405に記載されている。供給室150をマスターシリンダー100の外部から分離する密封シール180は、状況が如何なるものであれ、ボア120とピストン130の表面の間の密封性を確保する働きをする。このシール180は、ボア120/
本体110/ピストン130の全体が受けうる大きい応力に耐えなければならない。従って、
密封シール180は、ピストン130の外部表面上を擦り、ピストンとのシールのこの接触面が、非常に大きい摩擦力を受けうるが、この摩擦力によって、如何なる場合も
密封シール180が引き込まれて、徐々に裏返されるようなことがあってはならない。
【0030】
上記のマスターシリンダーの100の説明は、単純型マスターシリンダーにも当てはまる。図示されたタンデムマスターシリンダー100の場合、2つのブレーキ回路C1、C2の加圧手段が二重化して設けられる。この場合、上記の部分がタンデムマスターシリンダーのプライマリ部分であり、他方の部分がセカンダリ部分となる。上記の記載は、本発明が関わる構成要素について、同一の条件で適用され、それらの構成要素は100を加えた同様の参照記号を有する。
【0031】
2つのピストン130、230は、伸縮棒170によって接続され、これはバネ173で隔てられて保持された2つの
棒の部分171、172で形成され、2つの端部によって、すなわち、一方がピストン130の底部131に対して、他方がピストン230の上部231に対して、押し当てられている。
【0032】
図2は、周縁溝152に収容され、ピストン130に押し当てられた密封シール180の断面図である。この溝152は、正方形又は長方形の断面を有し、軸(xx)に対して放射状に底部152a及び2つの側面152b、152cを有する。シール180は、2つの脚部181、182を有した横向きのU字状の断面を有する。ピストンの軸(xx)に対して外側の脚部181が、溝の底部152aに実際に届き、軸(xx)に対して内側の脚部182が、ピストン130の外部表面に押し当てられる。これらの2つの脚部181、182は連結し、ピストンの推進方向AFに位置する側面152bに対して押し当てられる基礎部183を形成する。
【0033】
シールの一方又は双方の脚部の端部の平らな表面は、不正確であるが、平らであると述べられている。
溝の側面
152cは、軸xxに垂直な面に位置し、一方又は双方の脚部の端部の平らであると述べられている表面は、溝のこの側面152cに対して平らになる。この表面は、厳密な意味で平らになりうる。すなわち、軸xxに垂直な面内に含まれうる。しかし、そのような面に対して、ほぼ平らな又は「傾斜した」表面ともなりうる。実際、溝の対応の面に対して傾斜しているとき、軸xxの円錐台状の面に対応し、頂角が非常に大きく、又は余角が約0−10°で非常に小さい。そこで、頂角が180°に等しく又は余角が
ほぼ0°に等しいとき、平らな表面は
、ほぼ平らになる。
【0034】
図3は、脚部181、182の各々の
脚部の端部184の詳細を示す。軸方向断面図で示されたこの
脚部の端部184の断面は、この
面ができるだけ少ない滑りで押し当てられ留められるようにされた溝152の側面152cに対して例えば約10°の角度αの傾斜を有する。
【0035】
図4は、U字状断面の密封シール280の他の実施例を示し、その脚部281、282の端部が、各脚部に周縁部上に規則的に配置された
突出部分285を備え、刻み目のある輪郭を形成している。突出部分285の
脚部の端部284は、既に上記で規定した意味で平らであり、すなわち、ボアの軸xxに垂直
な面と僅かな角度をなし、非常に大きい頂角の円錐形表面の形状で示される。突出部分285の間の窪んだ底部は、符号286を有する。
【0036】
図5は、溝252内のシールの設置を示し、
図6は、溝15
2の側面152
cに対して「平らな」又はほぼ平らな
脚部の端部284の配置を概略的に示す。
【0037】
本発明によるシールは、例えば、ショア硬さ70のAのEPDMで製造される。
【0038】
図7は、その部分
図7A−7Eにおいて、大きい摩擦を生じさせる強い応力を受けた上記で述べたような本発明の
密封シール180の変形を示す。
【0039】
部分
図7Aでは、シールは、休止状態にある。その外側の脚部181は、溝の側面152cに対して押し当てられ、これは、その基礎部183が側面152bに押し当てられるのと同様である。外側の脚部181は、同様に、溝152の底部152aに対して周縁部において押しつけられている。
【0040】
ピストン130によって内側脚部182上にAF方向(
図7B)に加えられる突然の動きによって、この脚部は或る程度後退し、脚部182の、及び場合によっては基礎部183の対応する部分を圧縮する。この応力は持続して、側面152bの方向に内側脚部182のより強い圧縮力を生じる(
図7B、7C)。
【0041】
図7Dの段階は、さらに強く押圧された状態を示し、部分
図7Eで示すように、最後には、極度のずれ状態であるが反転することがない状態に達する。
【0042】
図8は、比較として、その部分
図8A−8Fにおいて、従来のシール200の変形を示し、ここでは、ピストン130に対してシール200の激しい摩擦を受けて、溝152の側壁に沿ってシールが徐々に滑り、最後にはシール200の反転、すなわち、シールがその役割を果たせない位置に至ることが示されている(部分
図8F)。
【符号の説明】
【0043】
10 マスターシリンダー
101、102 マスターシリンダーの入口
110 マスターシリンダーの本体
120 ボア
130、230 ピストン
131 ピストンの底部
140、240 圧力室
141 穿孔
150、250 供給室
151、152;251、252 溝
152a 底部
152b、152c
側面
153、253 再供給シール
170 伸縮棒
171、172 棒の部分
173 バネ
180、280 本発明の密封シール
181、182;281、282 脚部
183 基礎部
184 端部
190 タンク
200 従来のシール
231 ピストンの上部
284
端部
285 突出部分
286 部分285間の底部
C1、C2 ブレーキ回路