特許第5961188号(P5961188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5961188流体の移動の半径方向速度の遠隔測定から該流体の運動を決定する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961188
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】流体の移動の半径方向速度の遠隔測定から該流体の運動を決定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/00 20060101AFI20160719BHJP
   G01P 5/24 20060101ALI20160719BHJP
   G01P 5/26 20060101ALI20160719BHJP
   G01S 13/95 20060101ALI20160719BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G01P5/00 A
   G01P5/24 A
   G01P5/26 A
   G01S13/95
   G01S13/58 210
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-547890(P2013-547890)
(86)(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公表番号】特表2014-506327(P2014-506327A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】FR2011053200
(87)【国際公開番号】WO2012093221
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】1150057
(32)【優先日】2011年1月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513171161
【氏名又は名称】レオスフェール
【氏名又は名称原語表記】LEOSPHERE
(73)【特許権者】
【識別番号】513171183
【氏名又は名称】アリア テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】ARIA TECHNOLOGIES
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ボケ マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ニバール マクシム
(72)【発明者】
【氏名】アルベルジェル アルマン
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4067833(JP,B2)
【文献】 特開平3−229156(JP,A)
【文献】 特許第4668163(JP,B2)
【文献】 国際公開第2010/052385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S13
G01P5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ボリューム内の流体の流れを決定する方法であって、以下の段階:
− 対象ボリュームを通過する種々の空間的配向を有する少なくとも3つの測定軸(3)に沿って分配された複数の測定点(21)において、前記測定点(21)の近傍で前記流体の半径方向速度(11)を遠隔測定する段階と、
− 対象ボリューム内の格子(20)に従って分配された複数の計算点(22、23)における流体速度(10)を計算する段階と、
を含み、
流体速度(10)の計算が前記流体の力学的挙動モデルを使用し、
前記方法が、
− 対象ボリューム内の流体速度(10)が測定軸(3)が通過する実質的に平行な配向層内で実質的に均一であるという仮定に基づく幾何学的モデルを用いた、半径方向速度(11)の測定値からの計算点(22、23)における流体速度(10)の計算を含む初期化条件の計算の段階
をさらに含
前記初期化条件の計算が以下:
− 対象ボリュームの外周に位置する計算点(23)における流体速度(10)に対する制約条件の計算を含む境界条件の計算、及び
− 対象ボリューム内に位置する計算点(22)における流体速度(10)の計算を含む初期条件の計算、
の少なくとも1つを含んでおり、
前記初期化条件の計算が、
対象ボリューム内又は対象ボリュームの外周に存在する物体表面のトポロジーを用いそして流体の拡張を制限し以下:
記物体表面の近傍に位置する対象ボリュームの計算点(22、23)の決定、及び
− 決定された計算点(22、23)への速度(10)に対する制約条件の割り当て、
を含む段階をさらに含んでいることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記流体の半径方向速度(11)の測定が、前記流体内に予め放射されそして散乱された波のドップラー効果による周波数のずれの測定を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、予め計算された初期化条件を用いて、流体の力学的挙動モデルの方程式を解くことによって、対象ボリューム内の流体速度(10)を計算する段階をさらに含んでいることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
流体の力学的挙動モデルが以下の仮定のセット:
− 流体が非圧縮性ニュートン流体を含んでおりその流れがナビエ・ストークス方程式によって実質的に記述されるという仮定、又は
− 流体が完全流体を含んでおりその流れが流体のオイラー方程式によって実質的に記述されるという仮定、
のいずれか1つを含んでいる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記流体の流れが、流体の速度ベクトル(10)
【数1】
、流体の動粘性係数ν、流体の密度ρ、流体中で作用する物体力の合力
【数2】
、及び流体の圧力pを用いて、下記式:
【数3】
で表される方程式の系のいずれか1つによって記述されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
流体の力学的挙動モデルの方程式が反復法によって対象ボリュームの計算点で数値的に解かれることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
力学的挙動モデルの方程式の解法が、条件付け行列の使用を含んでいることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
流体の力学的挙動モデルが、流体がその流れが対象ボリューム内で実質的に渦なしである完全流体を含んでいるという仮定、を含んでいることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
流体の速度ベクトル(10)
【数4】
及び速度ポテンシャルPを用いて、前記流体の流れが下記式:
【数5】
で表される方程式の系によって記述されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
流体の力学的挙動モデルの前記方程式が、ラプラシアン行列の逆行列によって対象ボリュームの計算点で数値的に解かれることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、以下の段階:
− 流体の力学的挙動モデルの方程式を解くことによって対象ボリューム内で予め計算された流体速度(10)から新たな初期化条件を計算する段階、
− 前記新たな初期化条件を用いて、流体の力学的挙動モデルの方程式を解くことによって、対象ボリューム内の流体速度(10)を計算する段階、
をさらに含んでいることを特徴とする、請求項3〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、対象ボリューム内の流体の半径方向速度(11)の測定及び流体速度(10)の計算という事前順序の少なくとも1つをさらに含んでいること、及び対象ボリューム内の流体速度(10)の計算が流体の力学的挙動の動的モデルの使用、及び前記事前順序1つ又は複数の間に計算された流体速度(10)の使用を含んでいることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、大気の低層内の風を測定するために実施されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法を実施する対象ボリューム内の流体の流れを決定するデバイスであって、以下:
− 対象ボリュームを通過する種々の空間的配向を有する少なくとも3つの測定軸(3)に沿って分配された複数の測定点(21)において、前記測定点(21)の近傍で前記流体の半径方向速度(11)を遠隔測定する手段(1)と、
− 対象ボリューム内の格子(20)に従って分配された複数の計算点(22、23)における流体速度(10)を計算する手段(9)と、
を含み、
流体速度(10)を計算する前記手段(9)が前記流体の力学的挙動モデルを実行するように、且つ、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法における前記初期化条件を計算するために配置されていることを特徴とする、前記デバイス。
【請求項15】
以下のデバイス:ライダ、レーダ、ソーダのいずれか1つをさらに備えていることを特徴とする、請求項14に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の移動の半径方向速度の遠隔測定から該流体の運動を決定する方法に関する。本発明は、前記方法を実施する流体の運動をリモートセンシングするためのデバイスにも関する。
【0002】
本発明の分野はさらにとりわけ、限定的でなく、大気の下層内の風の特徴のリモートセンシングに関する。
【従来技術の状態】
【0003】
大気又は風の運動の測定は、多くの用途で、とりわけ気象学において及び空港及びウィンドファームなどのサイトの監視及び指標として、大変に重要である。
【0004】
それは、広範囲の高度における又は広大なボリュームに相当する領域における気塊の移動を測定するのにしばしば有用であるが、風杯型風速計などの従来型の風速計を用いて実施することはできず、遠隔測定を行うのに適したリモートセンシングの機器を必要とする。
【0005】
これらの機器として、とりわけ、レーダ、ライダ及びソーダを挙げることができる。レーダ及びライダはそれぞれ超周波数及び光周波数の範囲内の電磁波を用いる。ソーダは音波を用いる。
【0006】
ライダの実例を紹介する、A. Dolfi-Bouteyre, M. Valla, B. Augere, J.-P. Cariou, D. Goular, D. Fleury, G. Canat, C. Planchat, T. Gaudo, L. Lombard, O. Petilon, J. Lawson-Dakuによる文献「1.5 μm all fiber pulsed lidar for wake vortex monitoring」、14th Coherent Laser Radar Conference (CLRC XIV), Snowmass, CO, USA, 8-13 July 2007、がよく知られている。
【0007】
かかる機器を用いた気塊の移動の測定は、一般的に以下のように行われる:
− 装置は、測定すべき領域において放射軸に沿って波(音波及び/又は電磁波)の1又は2以上のビームを連続的に又はパルス状に放射する。種々の放射軸に沿った放射は同時又は連続的であることができる。
− ビームは、とりわけ、遭遇した不均一性(inhomogeneite)(エアロゾル、粒子、電磁波の屈折率の変化又は音波の音響インピーダンスの変化)によって、大気中で散乱効果を受ける。ビームが気塊又は運動粒子内で散乱されると、これらの波のビームはそれらの周波数のドップラー効果によるずれも受ける。
− 測定軸に従って配向された1又は2以上の受信機によって後方散乱ビームが検出される。これらの受信機は、それらの測定軸に沿ってそれらの方向において大気によって散乱された波を検出する。
− 散乱が生じた検出器の測定軸に沿った距離は、例えば、飛行時間を測定する方法によって、又は干渉測定法による位相のずれを測定する方法によって、計算することができる。気塊又は粒子の測定軸に従った半径方向速度は、ドップラー効果による波の周波数のずれを測定することによっても得ることができる。この測定された半径方向速度は、検出器の測定軸への散乱サイトの速度ベクトルの投影に対応する。
【0008】
リモートセンシング機器は、とりわけ、大気の低層内の風の特徴を測定するのに適したライダを含むが、モノスタティック型であることが多い。このことは、同じ光学部品又は同じアンテナ(音響又は電磁気)が信号の放射にも受信にも用いられるということを意味する。探測されるボリュームは、一般的に、機器の光学部品又はアンテナの高さにその頂点が位置する円錐に沿って配置される。該円錐に沿った機器の各パルスビームは、放射軸と一つになった(confondu)測定軸に従って粒子の移動の半径方向速度を測定する。このようにして、ビーム伝播軸への風ベクトルの投影を表す、風の半径方向速度の測定値が得られる。
【0009】
次いで、得られた半径方向速度の測定値に基づいて、対象のボリューム全体の風ベクトルを計算することが必要である。
【0010】
既存の装置で、この計算は一般に単純な幾何学的モデルを用いて行われる。これらのモデルは、サンプルの測定期間にわたり風が空間的かつ時間的に均一(homogeneite)であるというあまり現実的でないことがある仮定に基づく不都合を有する。この仮定によれば、所定の高度で、風ベクトルは機器によって探測される大気の全てのポイントにおいて同一である。
【0011】
例えば、所定の高度における風ベクトルの成分は、少なくとも3つの異なる方向に従った或る同じ高度で測定された半径方向速度の少なくとも3つの測定値から、半径方向速度の測定値によって構成される測定軸に従った風ベクトルの投影と風ベクトルとの間の幾何学的関係を記述する3つの未知数を有する少なくとも三次の方程式の系を解くことによって計算されることが知られている。
【0012】
文献名「Velocity Azimuth Display」(VAD)に記載されている幾何学的計算方法が知られているが、これも所定の高度における風の空間的均一性の仮定に基づいている。この方法は、装置が測定円錐の全体をカバーする方向に従って測定を行うことができるのであれば、適用可能である。この方法は、測定円錐の完全な一回転(360度)で測定された半径方向速度の全体が調和関数の形を取るという事実を利用した、水平速度、方向及び垂直速度についてのパラメータの最適化から成る。この方法は、とりわけ、ライダを用いて得られる測定値を処理するのに用いられる。
【0013】
前記VAD法に由来する方法を記載するWernerらによる米国特許第4,735,503号文献が知られているが、この方法によればデータ取得は角度セクターに限定されることができる。しかしながら、この方法は所定の高度における風の空間的均一性という同じ仮定に基づいている。
【0014】
風ベクトルの再構成に幾何学的手法を用いた風測定用の大気リモートセンシング機器は、実質的に平らな地形(ほんのわずかの起伏の地形若しくは起伏のない地形、又はオフショア)の上で測定が行われる場合に、風の平均速度の正確な測定が可能である。例えば、ライダを用いると、10分間にわたる平均測定値についての相対誤差は、較正された(calibre)風杯型風速計によって構成される基準(reference)に対して2%未満である。
【0015】
他方、起伏の多い地形若しくは山の多い地形、又は森に覆われた地形などのようなより複雑な地形の上で測定が行われる場合に、水平速度及び垂直速度の決定の正確さ(precision)は顕著に低下する。これらの同じライダを用いてかつ較正された風杯型風速計を基準にして実施される測定で、複雑なサイトでは、10分間にわたる計算平均値について5%〜10%の程度の相対誤差が観察された。
【0016】
従って、幾何学的モデルを用いる現行の遠隔測定装置は、複雑な地形における風の水平速度及び垂直速度並びに方向の充分に正確な測定を行うことができない。実際に、この特定の場合、当該装置によって探測される大気ボリューム内の所定の高度において風が均一であるとはもはや考えることができない。さて、風の特徴を正確に測定することは、これらの状況において、とりわけ、ウィンドファームの開発の関係において重要である。
【0017】
この制限は、高度に応じた風のプロファイル、すなわち、機器から垂直方向の高度に応じた風の速度ベクトルを調査する場合にも現れる。
【0018】
本発明の目的は、複雑な環境における気塊の運動の測定に適用可能な流体の運動を決定する方法を提供することである。
【発明の開示】
【0019】
この目的は、対象ボリューム内の流体の流れを決定する方法であって、以下の段階:
− 対象ボリュームを通過する種々の空間的配向を有する少なくとも3つの測定軸に沿って分配された複数の測定点において、該測定点の近傍で前記流体の半径方向速度を遠隔測定する段階と、
− 対象ボリューム内の格子(maillage)に従って分配された複数の計算点における流体速度を計算する段階と、
を含み、
流体速度の計算が前記流体の力学的挙動(comportement mecanique)モデルを使用することを含むことを特徴とする、前記方法によって達成される。
【0020】
有利なことには、流体の半径方向速度の測定は前記流体内に予め放射されそして散乱された波のドップラー効果による周波数のずれの測定を含んでいることができる。
【0021】
半径方向速度の測定は、あらゆる形態の機器、とりわけ、モノスタティック型の機器(空間的に一つにされた(confondus)送信機と受信機とを備える)、バイスタティック型の機器(空間的に別々の送信機と受信機とを含む)又は1つのサイトに分配された幾つかの機器の組み合わせを用いて実施されることができる。
【0022】
本発明に係る方法は、もちろん、あらゆる種類の流体、とりわけ、液体又は気体における測定に適用可能であり、前記流体において半径方向速度の測定値を得ることができ、流体は力学的挙動モデルによって記述されることができる。
【0023】
本発明に係る方法は、とりわけ、対象ボリューム内の流体の挙動が従来技術の幾何学的モデルに必要な空間的均一性の仮定を満たさない場合に、複数の測定軸に従って行われる半径方向速度の測定から前記ボリューム内の流体の運動を、公知の幾何学的方法より正確に決定することを可能にする。
【0024】
この仮定は、例えば、以下のように記述されることができる:センサなどのようなリファレンスに対して実質的に等しい距離に位置する対象ボリュームの全ての点について、流体の局地的運動を表す速度ベクトルは実質的に同一である。この仮定は実際上あまり現実的ではないことがしばしば明らかになっている。
【0025】
流体の挙動モデルを用いることは、際立ってより複雑な挙動を記述することを可能にする。従って、とりわけ、複雑な及び/又は摂動を起こさせる(perturbes)環境において、流体の速度ベクトルの成分の測定は実質的に改善されることができる。
【0026】
有利なことに、本発明に係る方法は、該方法がボリューム内の風の速度ベクトルの3次元表示を直接に与えるという意味において、本質的に3次元である。さらに、対象ボリュームに対して的確に分配された空間的配向を有する測定軸に従って半径方向速度の測定が行われる限りは、流体の速度ベクトルの成分は、例えば、水平成分と垂直成分との区別なしに、全て同等の正確さで決定される。
【0027】
対象ボリュームは、計算点を連結する格子によって範囲を定められ又は規定されることができる。この格子は構造化された(structurees)(例えば、長方形又は曲線の断面のデカルト格子)又は構造化されていない格子の目を含んでいることができる。測定点は対象ボリューム内かつ前記格子内に含まれていることができる。
【0028】
本発明に係る方法は、対象ボリューム内の流体速度は測定軸が通過する実質的に平行な配向層(couches d'orientation)内で実質的に均一であるという仮定に基づく幾何学的モデルを用いた、半径方向速度の測定値からの計算点における流体速度の計算を含む、初期化条件(conditions d'initialisation)の計算の段階をさらに含んでおり、前記初期化条件の計算は以下:
− 対象ボリュームの外周に位置する計算点における流体の速度(又は速度ベクトル)に対する制約条件の計算を含む境界条件の計算、及び
− 対象ボリューム内に位置する計算点における流体速度の計算を含む初期条件の計算、
の少なくとも1つを含んでいることができる。
【0029】
対象ボリューム内で、そのZ軸が高度を規定するデカルト座標系(X,Y,Z)を定義すると、均一な層は、例えば、面(X,Y)に実質的に平行に配向されていることができる。
【0030】
本発明に係る方法は、対象ボリューム内又は対象ボリュームの外周に存在する物体表面のトポロジーを用いそして流体の拡張を制限して初期化条件を計算する段階であって、以下:
− 流体の外側に及び/又は前記物体表面の近傍に位置する対象ボリュームの計算点の決定、及び
− 前記の決定された計算点への速度(又は速度ベクトル)に対する制約条件の割り当て、
を含む段階をさらに含んでいることができる。
【0031】
この初期化条件は、存在して流体の流れに影響を与える表面の凹凸を考慮に入れることができる。物体表面は、例えば、そのトポロジーが事前に決定されているであろう対象ボリュームの基底に位置する地形の表面であることができる。次に、この初期化条件を適用可能とするために、前記表面の全体又は一部が含まれるように対象ボリューム及びその格子が定義される。
【0032】
本発明に係る方法は、予め計算された初期化条件を用いて、流体の力学的挙動モデルの方程式を解くことによって、対象ボリューム内の流体の速度(又は速度ベクトル)を計算する段階をさらに含んでいることができる。
【0033】
空間的均一性の仮定に基づいて、境界条件及び初期条件を含む初期化条件だけが計算される。それらは対象のボリューム内の流体速度の計算の出発点を構成し:
− 流体の力学的挙動モデルの方程式を解くことが対象ボリューム内で決定される解に至るように、境界条件は対象ボリュームの外周において流体速度について制約を設けることを可能にする;
− 同様に、決定される解に収束するように、初期条件は流体の力学的挙動モデルの方程式の反復法(methode iterative)による解法を初期化することを可能にする。
【0034】
本発明の枠内で、流体のあらゆる力学的挙動モデルを実行することができる。有利なことに、モデルの選択は、計算の複雑さを最適化するように、状況に応じて適合させることができる。
【0035】
実施形態によれば、流体の力学的挙動モデルは、流体が非圧縮性ニュートン流体を含んでおりその流れがナビエ・ストークス方程式によって実質的に記述されることができるという仮定を含んでいることができる。
【0036】
ナビエ・ストークス方程式は、通常の表示方法によれば、連続の式と運動量のバランス方程式とを含んでいることができる。
【0037】
実施形態によれば、流体の力学的挙動モデルは、流体の流れが定常であるという仮定を含んでいることができる。
【0038】
他の実施形態によれば、流体の力学的挙動モデルは、流体が完全流体を含んでおりその流れが流体のオイラー方程式によって実質的に記述されることができるという仮定を含んでいることができる。
【0039】
この場合、非圧縮性ニュートン流体と比較すると、粘性の影響及び熱勾配も無視される。
【0040】
ニュートン流体は、その粘性応力テンソルが歪みテンソルの一次関数である流体である。このモデルは、とりわけ空気及び水を含む、多くの通常の流体によく当てはまる。
【0041】
以下の変数が定義され、その単位はSI系で表される:
【0042】
そして、流れは、下記式:
で表されるように質量保存の方程式と運動量保存の方程式とを含む方程式の系によって記述されることができる。方程式の系(式1)は非定常(non stationnaire)非圧縮性流体に対するナビエ・ストークス方程式に対応する。
【0043】
例えば、考慮される流体が空気でありかつ対象ボリュームが大気の下層内に位置している場合に、流れが定常でありかつ
であると考えることができることがある。その場合に流体の流れを記述する方程式の系は、下記式:
となる。
【0044】
方程式の系(式2)は、定常非圧縮性流体の境界層の方程式に対応する。
【0045】
式2において粘性の影響を無視することを選択することができ、その場合には、下記式:
で表される、完全流体のオイラー方程式の表現が得られる。
【0046】
方程式の系(式3)は、定常非圧縮性非粘性流体の境界層の方程式に対応する。
【0047】
単純に流体を非圧縮性とみなすことができる場合に、質量保存の方程式によってのみ記述されるモデル:
を用いることもできる。
【0048】
上記式(式4)は定常非回転(non rotationnel)非圧縮性完全流体の流れを記述する。
【0049】
要約すると、これらの実施形態によれば、前記(非圧縮性であるとみなされた)流体の流れは、流体の速度ベクトル
、流体の動粘性係数ν、流体の密度ρ、流体中で作用する物体力の合力
、及び流体の圧力pを用いて、下記式:
で表される方程式の系のいずれか1つによって記述されることができる。
【0050】
流体の力学的挙動モデルのこれらの偏導関数方程式は、対象ボリュームの計算点で有限差分法(methode des differences finies)によって数値的に解かれることができ、その方法において導関数は数値的解法に対し有限差分によって近似される。
【0051】
このようにして、方程式は、予め定義されて計算された初期条件及び境界条件を用いて、例えば、予測子修正子(prediction-correction)タイプの又は制約つきの最小値の探査(recherche de minima sous contrainte)(拡張ラグランジュ関数又は共役勾配)タイプの、反復法によって対象ボリュームの計算点において数値的に解かれることができる。
【0052】
力学的挙動モデルのこれらの方程式の解法は、条件付け行列(matrices de conditionnement)の使用を含んでいることができる。
【0053】
これらの条件付け行列は解の収束及び/又はアルゴリズムの安定性を改善し及び/又はエッジ効果(effets de bord)を低減することができる。
【0054】
流体の力学的挙動モデルの偏導関数方程式も同様に、有限体積、有限要素又はスペクトル法などの他の方法によって対象ボリュームの計算点において数値的に解かれることができる。
【0055】
他の実施形態によれば、流体の力学的挙動モデルは、流体が、その流れが対象ボリューム内で実質的に渦なしである完全流体(すなわち、その粘性が無視できる流体)を含んでいるという仮定を含んでいることができる。
【0056】
質量保存の法則によれば、流体の速度ベクトル
の発散はゼロである:
【0057】
さらに流れが渦なしであると仮定される場合、その結果として対象ボリューム内の流体の速度ベクトル
の回転はゼロであり、そしてそれゆえ流体を記述する速度ポテンシャルPが存在する。これは速度ポテンシャルにおける流れと呼ばれる。Pのラプラシアンはゼロでありそして速度ベクトル
はPの勾配である。
【0058】
このように、流体の速度ベクトル
及び速度ポテンシャルPを用いると、前記流体の流れは下記式:
で表される方程式の系によって記述されることができる。
【0059】
流体の力学的挙動モデルのこれらの方程式は、ラプラシアン行列の逆行列(inversion)によって対象ボリュームの計算点において数値的に解かれることができる。
【0060】
本発明に係る方法は以下の段階:
− 流体の力学的挙動モデルの方程式を解くことによって対象ボリューム内で予め計算された流体速度から新たな初期化条件を計算する段階、
− 前記新たな初期化条件を用いて、流体の力学的挙動モデルの方程式を解くことによって、対象ボリューム内の流体速度を計算する段階、
をさらに含んでいることができる。
【0061】
これらの段階は、先行する反復によって対象ボリューム内で得られた速度から計算される初期化条件を各反復において用いることによって、反復して繰り返されることができる。実際に、半径方向速度の測定値から最初の反復によって計算された初期化条件は、この時点で計算に必要な均一性の仮定によってバイアスされる。このように初期化条件は、次の反復の間に修正される。
【0062】
開示されたように本発明に係る方法の段階は以下:
− 測定軸に沿って半径方向速度を測定する段階と、及び
− 対象ボリューム内の速度ベクトルを計算する段階と、
からなる時系列に要約されることができる。
【0063】
このように、「動きのない(fige)」環境又は定常環境、すなわち、測定時間にわたって流体の移動速度の時間的変化が無視できる環境を仮定することによって、測定の瞬間における対象ボリューム内の速度ベクトルの表示が得られる。しかしながら、この仮定は、測定値の取得時間の間の定常状態、換言すれば、取得時間に環境がゆっくりと変化することを単に課するものであるので、あまり限定的なものではない。ところで、この取得時間は、連続的な測定の場合であってさえも、通常は数秒間に制限されることができる。
【0064】
経時的に対象ボリューム内の流体の挙動を記述するために、流体の力学的挙動の動的モデル、すなわち、変数の時間的変動を考慮に入れたモデルを実行することができる。そして、観察すべき現象の時間定数(constantes de temps)と適合する速度(cadences)に従って、経時的で周期的に測定及び計算の順序(sequences)が実行されることができる。そこで、流体速度を計算するための動的モデルの方程式の解法は、時間導関数を近似させるために、時間内の近接する順序のときに計算された速度を用いることが必要である。
【0065】
このように、本発明に係る方法は、対象ボリューム内の流体の半径方向速度の測定及び流体速度の計算という事前の順序少なくとも1つをさらに含んでいることができ、そして対象ボリューム内の流体速度の計算は、流体の力学的挙動の動的モデルの使用、及び前記事前順序1つ又は複数の間に計算される流体速度の使用を含んでいることができる。
【0066】
順序の時間的周期性は、測定によって規定されることに留意されたい。複数の順序又は全ての順序の測定値を取得すること、及び続いて測定によってカバーされた全時間期間にわたる対象ボリューム内の速度を計算することは、順序の規定における何らの変更もなく、全く同等である。
【0067】
本発明に係る方法は、測定軸に従って流体の半径方向速度を測定するのに適したあらゆるタイプの機器において、そしてとりわけ、以下:
− 測定を行うのに音波及び/又は電磁波を用い;
− 用いられる複数の又は全ての測定軸に従って連続的に、又は同時に測定を行い;
− 1つ又は複数の別個の送信機及び1つ又は複数の別個の受信機を有する、分散型(distribuee)アーキテクチャを備えた、機器において、実施されることができる。
【0068】
本発明に係る方法は、有利なことに、大気の低層内の風を測定するために実施されることができる。本発明に係る方法は、有利なことに、例えば、ライダ、レーダ又はソーダ型の装置において、実施されることができる。
【0069】
本発明の別の側面によれば、前記の方法を用いて対象ボリューム内の流体の流れを決定するデバイスであって、以下:
− 対象ボリュームを通過する種々の空間的配向を有する少なくとも3つの測定軸に沿って分配された複数の測定点において、前記測定点の近傍で前記流体の半径方向速度を遠隔測定する手段と、
− 対象ボリューム内の格子に従って分配された複数の計算点において流体速度を計算する手段と、
を含み、流体速度を計算する前記手段が前記流体の力学的挙動モデルを実行するように配置されていることを特徴とする、前記デバイスが提供される。
【0070】
有利なことに、本発明に係るデバイスは以下のデバイス:ライダ、レーダ、ソーダのいずれか1つをさらに備えていることができる。
【図面及び実施形態の説明】
【0071】
本発明の他の利点及び特徴は、何ら限定的でない実行及び実施形態の詳細な説明及び以下の添付図面を読めば明らかになるであろう:
図1はライダのブロック図を示しており、
図2は流体の測定される半径方向速度と速度ベクトルとの関係を示しており、
図3は格子及び測定軸を備えた、対象ボリュームの全体図であり、
図4は断面X−Yに沿った、対象ボリュームの格子を示しており、
図5は本発明に係る方法を用いて所定の高度における風速を計算した結果の一例を示しており、
図6は、風杯型風速計、幾何学的再構成法を用いるライダ及び本発明に係る方法を実施するライダをそれぞれ用いて、高度に応じた風のプロファイルを計算した結果の一例を示しており、
図7は、風杯型風速計、幾何学的再構成法を用いるライダ及び本発明に係る方法を実施するライダをそれぞれ用いて、1つの位置において経時的に得られる風速の測定結果を示している。
【0072】
大気の下層内の風の測定に適用するための、大気ライダにおける本発明に係る方法の実施形態を説明する。
【0073】
何ら限定的でない特定の実施形態によれば、流体は空気であり、その流れは風を生じさせる。
【0074】
図1を参照するに、本発明は、例えば、前掲のA.Dolfi−Bouteyreらの文献、「1.5 μm all fiber pulsed lidar for wake vortex monitoring」に示されているような、モノスタティックな配置のライダ1において実施される。このライダは、以下:
− MOPFA(マスターオシレータパワーファイバーアンプ(Master Oscillator Power Fibre Amplifier))型のアーキテクチャに基づくパルスファイバーレーザを備え、1.5μmのオーダーの波長を有する直線偏光単色光パルスを放射する光源4と;
− その基部への角度が30°のオーダーである測定円錐(cone de mesure)8内に位置する測定軸3に沿って測定ビームを放射し、かつ400mより高い高度までエアロゾル、粒子又は汚染物質などの散乱中心7により大気中で後方散乱された光を集光することができる、コリメーション光学部品を備えた配向可能な(orientable)コリメータ2と;
− ヘテロダイン検出を行うように、後方散乱した光が光源4から生じたローカルオシレータのビームと混合される検出モジュール6と;
− 光源4によって生じた光をコリメータ2に、そしてコリメータ2によって集光された光を検出モジュール6に移すサーキュレータ5と、このサーキュレータは偏光ビームセパレータなどのような偏光光学素子及び波長板に基づいて形成されている;及び
− 測定値を処理するための、計算装置9と、
を備える。
【0075】
散乱中心7によるビームの後方散乱が起こる測定軸3に沿った距離は、光源4によって放射されそして後方散乱後に検出モジュール6によって検出される光パルスの往復時間を測定することにより得られる。
【0076】
散乱中心7の移動は、後方散乱波の周波数のドップラー効果によるずれを惹起するが、これはヘテロダイン検出によって測定される。
【0077】
図2を参照するに、後方散乱波の周波数のドップラー効果によるずれは、半径方向速度11、すなわち、速度ベクトル10によって表される散乱中心7の移動速度の測定軸3への投影、に比例する。
【0078】
距離及び半径方向速度11の計算は、高速フーリエ変換(FFT)によって、スペクトル領域において実行される。距離及び半径方向速度11に対して得られる解答は、それぞれ、数メートルのオーダー及び1秒当たり数メートルのオーダーである。測定軸3に沿った測定時間は1秒間のオーダーである。
【0079】
図3及び図4を参照するに、本発明に係る方法の目的は、対象ボリューム内の、その速度ベクトル10によって表される風を計算することである。この対象ボリュームは立方メッシュに従って配置された計算点22及び23の格子20によって具体化される(materialise)。そのZ軸が高度を規定するデカルト座標系(X,Y,Z)が格子20に関連付けされる。
【0080】
本発明の方法に従って、計算点22において、流体(この場合は空気)の力学的挙動モデルの方程式を数値的に解くことにより、格子20の一組の計算点22における速度ベクトル10が計算される。この計算は初期化条件の定義を必要とするが、それは異なった配向を有する3つの測定軸3に従って行われる半径方向速度11の少なくとも3つの測定値から得ることができる。
【0081】
この実施形態によれば、例えば4つの基本となる方向に従って、配置された4つの測定軸3に従ってライダ1を用い、そして機器1の測定円錐8の境界に近接した傾きで測定が実施される。垂直軸に従った第5の測定が実施されることもできる。本発明に係る方法の実施に対して、これらの4つ又は5つの測定値を取得するのに必要な時間の間大気が定常であり又は動きがない、すなわち、対象ボリューム内の風の速度ベクトル10はこのデータ取得の時間の間に各点で実質的に定常であると仮定される。しかしながら、データ取得の全時間が実質的に10秒間よりかなり小さくできるので、この仮定はあまり制約的なものとならない。
【0082】
各測定軸3について、半径方向速度11の測定値は、概して等距離にある、所定の高度に対応する測定点21において平均化される。計算を単純化するために、格子20の、常数Zを有する平面(X,Y)に対応する高度が選択される。
【0083】
対象ボリュームの外周における、すなわち、格子20の外周に位置する計算点23における境界条件を計算するために、対象ボリューム全体に、所定の高度における風の空間的均一性の仮定に基づく典型的な幾何学的モデルが用いられる。
【0084】
デカルト座標系(X,Y,Z)で表される風の速度ベクトル10を
としよう。空間的均一性の仮定に従うと、高度Z=Zのあらゆる点でベクトル
は一定であると仮定され、それは下記式:
で表される。
【0085】
先に説明したように、ライダ1を用いて、添数k(k=1...K;K≧3)によって示される種々の配向を有するKの測定軸3に沿って測定が行われる。図2の慣習(conventions)によれば、添数kの測定軸3の配向を規定する角度はφ及びθと表示される。
【0086】
測定値から、測定軸3に沿って位置する測定点21における半径方向速度が計算される。測定軸kに沿って位置する高度Z=Zの測定点における半径方向速度を表すのにWkhを用いると、次式:
(k=1...K)が与えられる。
【0087】
このように、3つの未知数(Vxh,Vyh,Vzh)を持ったK方程式の系が得られ、これは最小二乗法の考え方で解かれて
を得ることができる。
【0088】
次いで、値
は高度Z=Zに位置する格子20の全ての外周点23に割り当てられ、そしてこの操作が直接に又は
の計算値間の補間によってあらゆる高度Zに対して実施される。
【0089】
このように、格子20の外周に位置する全ての点23に対して境界条件が規定される。
【0090】
次の段階は、測定値から規定される境界条件を考慮に入れて、計算点22において選択された流体の力学的挙動モデルの方程式を解くことからなる。これらの方程式の解法は、選択された方程式に適合した数値法によって実施される。
【0091】
経験が示すところによれば、大気の運動の分析に向けられたこの実施形態において、空気を、その流れが対象ボリューム内で渦なしである完全流体(すなわち、その粘性が無視できる流体)とみなすことによって満足な結果が得られる。この選択は、その解法が単純化される数値モデルに導くという利点を有しており、このことは必要な資源及び計算時間の点から重要な利点を与える。
【0092】
このモデルに従って、先に示したように、流体(空気)を記述する速度ポテンシャルPが存在し、そしてその流れ(風)は下記式:
で表される方程式の系によって記述されることができる。
【0093】
この系は、境界条件を考慮に入れながら、計算点22におけるラプラシアン行列の逆行列によって数値的に解かれる。
【0094】
このように、対象ボリュームの計算点22における風の速度ベクトル
が得られる。可能な最良の正確さの条件下で高度に応じて風のプロファイルを決定するために、ライダ1の垂直方向の、すなわち、高度Zの軸に沿った及びその近傍の
の値が用いられる。
【0095】
図5は、所定の高度Zにおける風速の計算結果の一例を示す。面30は、境界条件31から計算された、平面(X,Y,Z=Z)内の風の速度ベクトル10の水平成分の振幅を表している。
【0096】
図6は、高度Zに応じた風速の計算結果(垂直プロファイル)の一例を表している。測定は、基準の2つの風杯型風速計を用いて(点40)、均一性の仮定を用いた幾何学的再構成モデルを実行するライダを用いて(曲線41)及び完全流体のモデルに基づいた本発明に係る方法を実施するライダを用いて(曲線42)それぞれ行われる。風杯型風速計(40)の結果に対して、より至近の結果は本発明に係る方法を用いたライダ(42)によって得られる。
【0097】
図7は、起伏の多い地形について行われた測定手順の間に得られた16時間の風速測定の結果を表している。測定はそれぞれ、高度約80メートルにおいて、基準の風杯型風速計を用いて(曲線50)、均一性の仮定を用いた幾何学的再構成モデルを実行するライダを用いて(曲線51)及び完全流体のモデルに基づいた本発明に係る方法を実施するライダを用いて(曲線52)行われる。
【0098】
風杯型風速計に対するライダの相対誤差は、風を計算するのに幾何学的モデルを用いると約6%であり、本発明に係る方法と完全流体モデルとを用いると約2%である。
【0099】
流体の力学的挙動モデルの方程式が反復法によって解かれる変形によれば、対象ボリューム内の高度Z=Zに位置する格子20の点22における境界条件を規定するために予め計算された値
を割り当てることによっても初期条件が規定され、そしてこの操作があらゆる高度Zに対して、直接に又は
の計算値間の補間によって実施される。
【0100】
別の変形によれば、地形のトポロジーの予備知識が追加の境界条件として用いられて計算の正確さを改善する。この場合に、対象領域が地形の凹凸を含むように広げられ、そして、例えば、風の速度ベクトル
が地形の表面に正接する(tangentiel)ような追加の境界条件が、地形の表面に位置する格子20の点23に適用される。
【0101】
もちろん、本発明はここまで述べてきた例に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなくこれらの例に対して多くの調整を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7