特許第5961190号(P5961190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特許5961190バイオ起源の脂肪族ポリエステルの微粉末と、その製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961190
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】バイオ起源の脂肪族ポリエステルの微粉末と、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20160719BHJP
   C08G 63/88 20060101ALI20160719BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   C08J3/12 ACFD
   C08G63/88
   !C08L101/16
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-549870(P2013-549870)
(86)(22)【出願日】2012年1月20日
(65)【公表番号】特表2014-503025(P2014-503025A)
(43)【公表日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】FR2012050130
(87)【国際公開番号】WO2012098340
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2015年1月20日
(31)【優先権主張番号】1150438
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ル,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】マテュ, シリル
(72)【発明者】
【氏名】ロワイアン, カリン
(72)【発明者】
【氏名】プラデル,ジャン−ロラン
(72)【発明者】
【氏名】フラ,ジャン−ジャック
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−133994(JP,A)
【文献】 特開2010−066491(JP,A)
【文献】 特開2007−197602(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/060470(WO,A1)
【文献】 特開2008−007611(JP,A)
【文献】 特開平09−241417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
99/00
C08G 63/00−64/42
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)と(b)の段階:
(a)、Mnが30,000g/モル以上の脂肪族ポリエスエルを脱重合して得る段階を含む、メタクレゾール中に溶液の全重量に対して0.5重量%の濃度で溶解したポリエステルのウッベローデ粘度計を用いて20℃で測定した固有粘度(Vinhが0.5dl/g以下である脂肪族ポリエステルを用意する段階
(b)上記脂肪族ポリエステルを粉砕して体積中央径が30μm以下のポリエステル粉末を得る段階
を含み
上記脱重合段階を、ポリエステルと、混合物の全重量に対して0.1〜20重量%のアルコールおよび/またはカルボン酸から選択される化合物とを含む混合物をブレンディングすることによって実行し、このブレンディングは、
(1)半結晶ポリエステルの場合には、Tm〜Tm+150℃の範囲の温度にし(ここで、TmはISO規格11357のDSC法に従って測定したポリエステルの融点)、
(2)非晶質ポリエステルの場合には、Tg〜Tdの範囲の温度にし(ここで、TgはISO規格11357のDSC法に従って測定したポリエステルのガラス遷移温度、Tdは熱重量分析で測定したポリエステルの分解温度で、これは窒素下、毎分10℃の温度上昇でのポリエステルの質量減少が50%以上となる温度に対応する)、
ブレンディングしたポリエステルの固有粘度が0.5dl/g以下になるのに十分な時間だけ上記混合物をブレンディングして行う、
ことを特徴とする、ISO規格13319に従った体積中央径(volume-median particle diameter)が30μm以下であるバイオ起源の脂肪族ポリエステル粉末の製造方法。
【請求項2】
上記アルコールをポリオールにする請求項1に記載の方法
【請求項3】
非晶質ポリエステルの場合にTg+50℃〜300℃の範囲の温度にする請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
ブレンディング段階を、ポリエステルの固有粘度が0.10〜0.30dl/gなるのに十分な時間だけ実行する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ブレンディング段階を0.15〜0.25dl/gになるのに十分な時間だけ実行する請求項4に記載の方法
【請求項6】
上記ポリエステルを結晶化および/または乾燥する段階(i)を含み、この段階は段階(a)と段階(b)の間の中間よび/または段階(b)後に実行する請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
バイオ起源の脂肪族ポリエステルを下記(1)〜(6)の中から選択る請求項1〜のいずれか一項に記載の方法:
(1)PLA:混合またはブロックポリマーの形で得られる立体錯体ポリ(D−乳酸)およびポリ(L−乳酸)を含む乳酸の重縮合またはラクチド(各種異性体)の開環で得られるポリ乳酸;
(2)PLAとグリコール酸(またはグリコリド)とのコポリマー、
(3)6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸の中から選択される一種または複数のヒドロキシカルボン酸の重合単位を含むポリ(ヒドロキシカルボン酸)、
(4)ポリ(ε−カプロラクトン)、
(5)ジオールと二酸との重縮合で得られる脂肪族ポリエステル、
(6)上記の混合物。
【請求項8】
上記のジオールと二酸との重縮合で得られる脂肪族ポリエステル(5)がポリ(ブチレンアジペート)およびポリ(ブチレンアジペート−co−スクシネート)である請求項7に記載の方法
【請求項9】
上記アルコールをグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサグリセロール、ジプロピレングリコール、イソソルビド、ソルビトール、および、これらを含むポリマー、へキシレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ブチルジグリコール、および、1,2,3−トリヒドロキシヘキサンおよびこれらの混合物の中から選択し、および/または、上記カルボン酸をヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸およびクエン酸およびこれらの混合物の中から選択する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
上記のアルコールおよび/またはカルボン酸から選択される化合物をグリセロール、ソルビトールおよび乳酸およびこれらの混合物の中から選択する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
段階(b)の粉砕を対向エアジェットミル(opposite air get mill) を用いて実行する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ブレンディング段階の混合物が、第IVB族および第IVA族の中から選択される少なくとも一つの元素、例えばTi、ZrまたはSnを含む0.005〜0.2重量%の触媒をさらに含む請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程中に溶剤を全く含まない請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記脂肪族ポリエステル粉末が化粧品、医薬品または香水で使用される請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品、医薬品または香水等で使用される微粉末に関するものである。本発明は特に、再生可能な材料すなわちバイオ起源の材料から脂肪族ポリエステルの微粉末を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明で「微粉末」とはISO規格13319に従った体積中央径(volume-median particle diameter)が30μm以下である粉末を意味する。
【0003】
公知のポリエステル粉末の製造方法には、粉砕方法、ポリエステルを溶剤に溶かして噴霧乾燥する方法、非溶剤中での析出方法、乳化重合または水溶性ポリマー中へノジュール(結節)の形でポリエステルを溶融懸濁させる方法等ある。一般には低コスト、容易さ、スケールアップのし易さから粉砕が好ましい。その他の方法は有害な溶剤の使用を必要とし、得られた粉末中に痕跡量の溶剤が残ることがある。乳化重合およびポリマー溶融物の懸濁方法はプロセスの制御を必要とし、極めて高いエネルギーを必要とし、排液も生じる。さらに、懸濁方法では生成物中に高濃度の界面活性剤が残ることがある。
【0004】
公知の粉砕プロセスでは、脂肪族ポリエステルを微粉末の形にできない。特に、高分子量ポリエステル(数平均分子量が30,000g/モル以上である)は微粉末に粉砕できない。高分子量ポリエステルは工業的用途に適した量で使用可能な唯一のポリエステルである。特許文献1(米国特許公開第2009/0 197 780号明細書)および特許文献2(米国特許公開第2003/0 176 633号明細書)には硬質添加剤(NaCl、石英、KCl、CaCl2またはKOH)または0℃の氷をベースにした研磨剤をポリマーとの混合物として用いて脂肪族ポリエステルを粉砕するプロセスが記載されている。上記添加剤の場合には、ポリマーのガラス遷移温度に近い温度で混合物を作り、冷却して脆い材料とし、それを粉砕することで体積中央径が4〜500μmの粒子を得ることができる。研磨剤とポリマーを混合する場合には、硬質の脆いポリマーに高い剪断力を加えることで粉砕を容易にし、氷の場合には乾燥させてポリマー粉末を得る。これらの粉砕プロセスにはいくつかの欠点がある。すなわち、ポリマーから添加剤を分離する追加の段階を必要とする。しかし、ポリエステルから添加剤を分離するのは困難であり、不可能でもある。
【0005】
研磨剤を含む粉末は、痕跡量の研磨剤でも化粧品等では使用できない。さらに、氷を使用した場合には得られた生成物を乾燥する追加の段階が必要である。
【0006】
化粧品分野では、再生可能、好ましくは生体適合性および/または生分解性のある材料から得られる微粉末の製造に大きな関心が寄せられている。バイオマスに由来する出発材料は再生可能な資源であり、生育環境への影響は少なく、石油製品の精製工程(高エネルギーが必要)は不必要である。また、CO2の発生量が減り、地球温暖化に対する影響は少ない。さらに、消費者は植物起源の製品により多くの魅力を感じており、より安全で、肌により良いと評価されている。従って、化石燃料起源の出発材料に依存しない、再生可能な材料を起源とする出発材料を使用した合成プロセスが必要である。
【0007】
バイオ材料またはバイオ起源材料ともよばれる再生可能材料を起源とする材料は、再生可能な材料を起源とする出発材料から得られる材料である。材料のバイオ材料の含有量またはバイオ炭素の含有量はASTM規格D6866(ASTM D6866−06)およびASTM規格D7026(ASTM D7026−04)で測定される。
【0008】
また、配合業者は化粧用配合物に簡単に混合して直ぐに使用できる出発材料特に粉末および/または活性成分を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開第2009/0 197 780号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2003/0 176 633号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述の種々の必要条件を満たす脂肪族ポリエステル粉末を製造する簡単な(工程数が少ない)方法を提供することにある。
本発明者は、市販の高分子量ポリエステルから出発することができる脂肪族ポリエステルの微粉末の製造方法を見出した。この粉末は所定化合物を種々の含浸率で含むことができ、その含浸率はプロセス条件の関数で容易に調節できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの対象は、体積中央径(volume-median particle diameter)が30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下であるバイオ起源の脂肪族ポリエステル粉末の製造方法にある。
【0012】
本発明の一つの対象は、ポリオールおよび/またはカルボン酸から選択される少なくとも一種の化合物を含浸した、体積中央径が30μm以下であるバイオ起源の脂肪族ポリエステル粉末の製造方法にある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の方法は下記(a)と(b)を含む:
(a)固有粘度(Vinh)が0.5dl/g以下である脂肪族ポリエステルを用意する段階、
(b)上記脂肪族ポリエステルを粉砕して体積中央径が30μm以下のポリエステル粉末を得る段階。
【0014】
本発明で「脂肪族ポリエステル」とは少なくとも一つの炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素ベースの基によってエステル基が分離されたバイオ起源の脂肪族ポリエステルまたはコポリエステルを意味する。ポリエステルの製造方法は周知であり、特に、少なくとも一種の二酸と一種または複数のジオールとの重縮合、ヒドロキシ酸の重縮合または少なくとも一種の環状エステルまたはジエステルの開環重合が挙げられる。
【0015】
脂肪族ポリエステルは下記(1)〜(6)から選択するのが好ましい:
(1)PLA:乳酸の重縮合またはラクチド(各種異性体)の開環で得られるポリ乳酸、例えば混合またはブロックポリマーの形で得られる立体錯体ポリ(D−乳酸)およびポリ(L−乳酸);
(2)PLAとグリコール酸(またはグリコリド)とのコポリマー、
(3)6−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸から選択される一種または複数のヒドロキシカルボン酸の重合単位を含むポリ(ヒドロキシカルボン酸)、
(4)ポリ(ε−カプロラクトン)、
(5)ジオールと二酸との重縮合で得られる脂肪族ポリエステル、例えばポリ(ブチレンアジペート)およびポリ(ブチレンアジペート−コ−スクシネート)、
(6)これらの混合物。
【0016】
本発明の使用に適した脂肪族ポリエステルの例は、例えば、NatureWorks (PLA), NaturePlast (PLA), Mitsubishi Chemical (PBSおよびPBSA), Solvay and Dow (PLC), Telles (PHA)から市販されている。
【0017】
本発明方法で用いる出発材料すなわち粉砕前の脂肪族ポリエステルの数平均分子量(Mn)は30,000g/モル以下、好ましくは10,000〜30,000g/モル、好ましくは10,000〜25,000g/モル、好ましくは10,000〜20,000g/モルであるのが好ましい。数平均分子量(Mn)は下記条件と下記装置を用いてGPC(ゲル透過クロマトグラフィ)で測定する。THF: 40ーC, 1 ml/分, 濃度 1 g/l, 装置: 2セットのPlgel Mixed B カラム (30 cm). CAP-LCS-14, 屈折率および紫外線検出器、結果(RI)はeq. PS で示し、結果(V)はeq. PLA で示し、標準品はeq. PS−一般品:eq. PLAで計算。
【0018】
国によって、例えば日本の現在の規制では、粉末が例えば化粧品のポリマー添加剤とみなされるにはMnが少なくとも10,000g/モルでなければならない。はMnが1000〜10,000g/モルであるポリマー粉末の場合はMnが1000g/モル以下のオリゴマーを1重量%以下含む必要がある。逆に、Mnが30,000g/モル以上のポリエステルは粉砕が困難で、微粉末に粉砕するのは不可能である。
【0019】
本発明方法の段階(a)は下記の段階を含むのが好ましい:
Mnが30,000g/モル以上の脂肪族ポリエスエルを脱重合(depolymerization)して、固有粘度(Vinh)が0.5dl/g以下および/またはMnが30,000g/モル以下の脂肪族ポリエステルを得る段階。
本発明の方法は予備粉砕段階を含むこともできる。すなわち、Mnが高い30,000〜20,000g/モルであるポリエステルを粉砕して固有粘度が0.5以下のポリエステルを得るために、Mnが30,000g/モル以上の脂肪族ポリエスエルを脱重合して固有粘度(Vinh)が0.5dl/g以下および/またはMnが30,000g/モル以下のる脂肪族ポリエステルを得る。
【0020】
「脱重合(depolymerization)」とは、平均径が30ミクロン以下の粉末を得るためにポリエステルを粉砕できる値までポリエステルのモル質量を下げることを意味する。
【0021】
ポリエステルを脱重合するには溶融および/またはブレンディング(blending、混合)を行って30,000g/モル以下の低い分子量のポリエステルオリゴマーを得るのが好ましい。溶融とブレンディングはこの順番で順次行うのが好ましいが、同時に行うこともできる。ブレンディングした生成物が流体に成れば成る程、数平均分子量は低くなる。Mnが高い(30,000g/モル以上の)ポリエステルの場合には、本発明方法の後に体積中央径が30μm以下の粒子を得るためにこの脱重合段階は必須であり、0.5dl/g以下の最適粘度にする必要がある。
【0022】
本発明方法の脱重合段階は、ポリエステルとアルコール、好ましくはポリオールおよび/またはカルボン酸から選択される化合物(その比率は混合物の全重量に対して0.1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%)との混合物をブレンディングすることで行う。
【0023】
脱重合段階は下記(1)および(2)の範囲の温度で実行する:
(1)半結晶ポリエステルの場合は、Tm〜Tm+150℃の範囲の温度(ここで、TmはISO規格11357のDSC法に従って測定したポリエステルの融点);
(2)非晶質ポリエステルの場合は、Tg〜Td、好ましくはTg+50℃〜300℃の範囲の温度(ここで、TgはISO規格11357のDSC法に従って測定したポリエステルのガラス遷移温度、Tdは熱重量分析で測定したポリエステルの分解温度で、これは窒素下、毎分10℃の温度上昇時のポリエステルの質量ロス減少が50%以上である温度に対応する)
ブレンディング温度は、半結晶ポリエステルの場合は200〜260℃、非晶質ポリマーの場合は100〜300℃であるのが好ましい。
ブレンディングは、ブレンディング済みのポリエステルの固有粘度が0.5pl/g以下になるのに十分な時間だけ実行する。
【0024】
本発明で「アルコール」とは、少なくとも一種の−OH官能基、例えばエタノール、メタノール、n−ブタノールまたはヘプタノール(ヒマから得られる)を有する直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和のアルキルタイプの、好ましくはバイオ起源の化合物を意味する。
【0025】
アルコールはポリオールすなわちアルキル鎖に少なくとも2つの−OH官能基を有する直鎖、分岐鎖または環状の飽和または不飽和のアルキルタイプの化合物およびこれらのポリヒドロキシル化アルキル化合物のポリマー(ポリエーテル)であるのが好ましい。アルコールは2〜12の炭素原子、より好ましくは2〜8の炭素原子を含むアルキル化合物であるのが好ましい。このアルキル化合物は2または3個の炭素原子を含むのが有利である。ポリオールはモノアルコールよりも高い沸点を有し、押出装置で使用できる。ポリオールは加圧下(オートクレーブ)で低温で加工する必要がないという利点を有する。ポリオールは化粧品の標準的な成分である。
【0026】
本発明で用いるポリオールは特に下記の中から選択される:グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサグリセロール、ジプロピレングリコール、イソソルビド、ソルビトールおよびこれらを含むポリマーおよびこれらの混合物。本発明で使用可能なポリオールの中では特に下記のものも挙げられる:へキシレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ブチルジグリコールおよび1,2,3−トリヒドロキシヘキサンおよびこれらの混合物。
【0027】
ポリオールはグリセロールおよびソルビトールおよびこれらの混合物から選択するのが好ましい。
「カルボン酸」とは少なくとも一つの酸基を含む直鎖、分岐鎖または環状の飽和または不飽和のC4−C50化合物を意味する。
「ポリカルボン酸」とは少なくとも2つの酸基を含む直鎖、分岐鎖または環状の飽和または不飽和のC4−C50化合物を意味する。
【0028】
カルボン酸はヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸およびクエン酸およびこれらの混合物から選択するのが好ましい。
【0029】
本発明方法で用いる上記化合物はグリセロール、ソルビトールおよび乳酸およびこれらの混合物から選択するのが好ましい。上記化合物はほぼ同じ質量のグリセロールと乳酸との混合物であるのが有利である。
【0030】
上記化合物は再生可能起源から得られ、且つ、当業者に周知の環境に優しい化学の原理に従って製造するのが好ましい。上記化合物はプロセスのブレンディング、粉砕条件下で熱的に安定でなければならない。化粧品の組成に含むことが可能なINCI(国際命名法化粧品成分)名を有する生成物から選択するのが好ましい。INCI名はPersonal Care Products Councilで作られ、国際化粧品成分表示名称事典で公開されており、アメリカ合衆国、EU、その他の国では化粧品の包装材料に表示される成分リストを作成するのに使用しなければならない。
【0031】
この脱重合段階用装置としては当業者に公知の溶融プラスチックを混合、ブレンディングまたは押出する任意の装置が使用できる。例としては内部ミキサー、ロールミキサー、一軸押出機、逆方向回転または共回転二軸押出機、連続コニーダまたは撹拌反応器が挙げられる。ブレンディング装置は上述の工具の一つまたはこれらの組合せ、例えば、取り込み(uptake)一軸スクリューと組み合わせたコニーダ、ギアポンプと組み合わせた共回転二軸スクリュー、押出機に接続した反応器等にすることができる。押出装置は一般にポリマーの溶融帯域、化学種を互いに混合、反応させる帯域および揮発性化合物を除去する減圧/脱気帯域とを有している。これらの各帯域は押出装置のスクリュー形状、制限帯域の使用または工具のカップリングで具体化できる。この押出装置にはさらに、濾過装置、好ましくは連続濾過装置と、脂肪族ポリエステルのレオロジー、熱的特性に合せてロッド、その他の形状への)水中造粒装置またはポリマー溶融噴霧装置、例えば噴霧冷却装置とを備えることができる。例としては、Werner 30またはCoperion ZSK30押出機が挙げられる。他の例としてはモータ、ブレンディング室、溶融材料のブレンディングを確実にするために異なる速度で逆方向に回転する2つのロータ、熱電温度計およびデータ収集装置で構成されるブレンダー、例えばブラベンダー(Brabender)またはPlastograph W50EHT ブレンダーが使用できる。
【0032】
本発明方法のブレンディング段階はギア式共回転二軸押出機で実行するのが好ましい。その理由は連続プロセスの方がバッチプロセスより高い生産効率を可能にすることにある。さらに、押出機内での滞留時間がミキサー(例えばブラベンダータイプのミキサー)内より短いため、生成物が受ける熱酸化が減り、特に、黄変するリスクが減る。
【0033】
本発明と下記実施例では、ポリエステルの固有粘度はウッベローデ粘度計を用いて20℃で(溶液の全重量に対して)0.5重量%のポリエステルをメタクレゾール中に溶解した濃度で測定する。
【0034】
ブレンディング後のポリエステルの固有粘度は0.5dl/g以下、好ましくは0.4dl/g以下、好ましくは0.3dl/g以下、好ましくは0.10〜0.30dl/g、好ましくは0.15〜0.25dl/g、より好ましくはほぼ0.2dl/gである。
本発明方法では、ブレンディング段階を、ブレンディング後のポリエステルの固有粘度が0.5以下、好ましくは固有粘度が0.10〜0.30、より好ましくは0.15〜0.25になるのに十分な時間維持する。
【0035】
一般に30〜1800秒のブレンディング時間で十分である。ブレンディング段階の時間は30秒〜20分、好ましくは30秒〜15分であるのが好ましい。ブレンディング時間は出発材料のポリエステル、ポリオールおよび/またはカルボン酸の含有量、混合物、温度および使用するブレンディング装置に依存する。
【0036】
本発明方法の一実施例では、ブレンディング段階時に、上記混合物は0.005〜0.2重量%の第IVB族および第IVA族から選択される少なくとも一つの元素、例えばTi、ZrまたはSnを含む触媒をさらに含む。
【0037】
本発明方法の別の実施例では、上記の混合物、粉末の特性を改質する添加剤、例えば、可塑剤(混合物の重量に対して20重量%以下)、核形成剤(5%以下)、ワックス(50%以下)、充填剤(50%以下)、安定剤(5%以下)、有機化合物またはオリゴマー(50%以下)、特にシリコン、ポリオレフィン、フルオロポリマー、例えばPVDF、好ましくは固有粘度が0.5以下のPVDFの存在下で調製する。
【0038】
本発明方法の各段階は溶剤を全く含まないのが有利である。
ブレンディング段階後に、本発明方法では必要に応じてさらに下記の段階を含むことができる:
(1)次の粉砕を容易にするために、ポリエステルの結晶化度をさらに高める任意段階の中間「結晶化」段階;
および/または
(2)有機含浸剤の量、特に添加剤の量または化合物の量を調節するための中間乾燥段階:これは脱重合段階で用いる化合物すなわちアルコール、特にポリオール、および/または酸に対応するのが好ましい。
【0039】
結晶化段階は、ポリマーをそのTgと、ISO規格11357のDSC法によって観察されるポリマーの溶解開始前の温度との間の温度に加熱することで実行する。ポリエステルの結晶化度を高くするのに適した任意タイプの装置、例えば乾燥器、反応器等を使用できる。
【0040】
乾燥段階は、ポリマーをそのTgと、大気圧または真空下でISO規格11357のDSC法によって観察されるポリマーの溶解開始時の温度との間の温度に加熱することによって実行する。ポリマーの乾燥に適した任意タイプの装置、例えば乾燥器、反応器、オーブン、流動床等を使用できる。
【0041】
任意段階の予備ブレンディング段階(および任意段階の結晶化)後に、本発明方法は、固有粘度が0.5dl/g以下の脂肪族ポリエステルを粉砕して、脂肪族ポリエスエルの微粉末にする段階を含む。こうして得られる粉末は体積中央径(d50)が30μm以下である。必要に応じて、こうして得られた粉末に粉砕前にブレンディング段階を実行した時に記載の上記定義の化合物をさらに含浸させることもできる。
【0042】
本発明および本明細書では、平均(体積)径はCoulter Multisizer 3またはCoulter (R) LS230粒度計、ソフトウェアのバージョン 2.11aを用いて、且つ、ISO規格13319に従って測定した粒度分布から求める。
【0043】
本発明の粉砕段階は室温(約15〜25℃)で実行するのが有利である。
粉砕によって丸い不規則な形状の微粉末粒子を得ることができ、粉末粒子の表面に鋭いエッジが形成されるのを避けることができ、これは得られた粉末の知覚特性、特に手触りに影響を与える。
本発明方法で用いる粉砕装置は粉末の製造に適した任意タイプの粉砕装置にすることができる。
【0044】
本発明の好ましい実施例では、粉砕されたポリエステル粒子間の衝突によってだけで粉砕を実行する。この粉砕は好ましくは対向エアジェットミル (opposite air get mill) を用いて、一般に6〜9バール、好ましくは7バール(7×105Pa)の圧力で、圧縮空気が供給される2つの対向ノズルによって行う。用いるのが好ましい空気は濾過および乾燥され、従って、汚染物質を含まないものである。ノズルに供給される空気を任意の他の適切なガスで置換できることは言うまでもない。ポリマーはノズルから出る空気によって直接運搬および支持される。ポリマー粒子は対向エアジェットの作用で互いに衝突し、粒度分布が小さくなり、ポリマー粒子は鋭いエッジのない特徴的な不規則な最終形状に至る。使用する粉砕システムの寸法およびガス流の速度を合せて良好な流動化および所望の粒度分布を得る。粉砕で消費する電力は例えば約1〜2kW.h/粉末1kgである。
【0045】
このタイプのミルはポリマー工業では一般的で、普及している。対向エアジェットミルは、粒度分布曲線が狭い超微粉末の製造に特に適している。特に、機械的ミル(インパクトミル:140 m/秒以下、逆方向回転ミル:250 m/秒以下)の相対速度と比べて、本発明方法で使用する対向エアジェットミルは400 m/秒以上というはるかに速い相対粉砕速度を可能にする。
【0046】
対向エアジェットミルは、一般に一連の補助的調節装置の中で追加を考える必要がある他のシステムとは異なって、所望の粒度分布が得られるように粉砕速度を直接調節できる一体化された分級機または選別機を備えるのが有利である。選別機は不適合な径の粒子を粉砕室の供給システムに送り、一方で、粒度分布が調節に適合する粒子をエアフィルタで回収する。粉末はこのフィルタの底部で例えばバッグ内に直接回収できる。本発明方法で実行する唯一の調節は、所望の粒度分布を得るための粉砕速度と、粉砕室内の生成物を一定量に維持するための供給速度である。粉砕速度は選別機で直接調節でき、本発明のプロセス中に粉末の粒度分布を変更する時の遷移は極めて迅速にできる。このような対向エアジェットミルの使用は本発明プロセスの製造効率を高める。
【0047】
ポリエステル粉末の最終粒度分布はプロセスの粉砕速度を調節することで直接制御するのが有利である。粉砕速度の調節はミルと一体な選別機によって行うのが好ましい。
【0048】
本発明方法は、粉砕段階の後に、必要に応じてさらに、粉砕で得られた粉末を結晶化および/または乾燥させる任意の段階を含む。
この任意の乾燥段階によって、得られる粉末に含浸する化合物の容量(重量%)および粉末の特性、特にその吸油量を正確に制御することができる。
【0049】
本発明で「含浸した化合物」とは、脱重合段階で上記化合物をポリエステルと溶融混合して得られる化合物を意味する。上記化合物は実際にはポリマーのマトリックス、特に本発明方法で得られる粉末粒子のコアに「含浸」される。
【0050】
得られる粉末の結晶化度は乾燥によって増加する。逆に、結晶化、例えばTgに近い温度での結晶化によって必ずしも質量が低下するとは限らない(すなわち、含浸した化合物は失われない)。
【0051】
中間結晶化または中間乾燥すなわち粉砕前の結晶化または乾燥の利点は、粉砕段階が容易になり、中央径がさらに下がり、例えば20μm以下、さらには10μm以下になることにある。
粉砕後の乾燥の利点は、得られた粉末の特性、例えばその化合物含浸率およびその吸油特性および吸水特性の調整にある。
【0052】
粉砕後の結晶化の利点は、粉末の特性、特に耐薬品性および吸油特性、その機械特性、例えばその圧縮性を、その含浸率を変えずに調整できることにある。
ポリエステルの結晶化度をその含浸率を変えずに上げるためには、結晶化段階をポリエステルのガラス遷移温度Tgと結晶化温度Tcの間の温度で、且つ、真空下ではない状態で実行する。
【0053】
粉末の含浸率および粉末の吸油特性はポリエステルの脱重合中および/または乾燥中に調節するのが有利である。
【0054】
本発明の別の対象は、既に述べたように、粒子の体積中央径が30μm以下で、且つ、好ましくは粉末の重量に対して0.1〜20%の比率で、アルコール(好ましくはポリオール)および/またはカルボン酸、特にヒドロキシ酸から選択される化合物を粒子に含浸した本発明方法で得られるバイオ起源の脂肪族ポリエステル粉末にある。
【0055】
この「含浸率」は粉末中の化合物の分析結果に対応する。「含浸率」の測定は粉末のポリマーマトリックスのコア中にある化合物の含有量を測定する手段であり、窒素下でのTGA(熱重量分析)、例えばNetszsch TG209F1 機械を用いて容易に測定できる。
【0056】
本発明の粉末粒子は体積中央径が20μm以下、好ましくは10μmであるのが有利である。
本発明の粉末の(DIN規格ISO 787−5に従って測定した)吸油量が0.5〜1g/gの粉末の範囲であるのが有利である。
本発明の粉末はコスメビオ(cosmebio)の認定基準を満たすのが有利である。
本発明のさらに別の対象は、本発明粉末の化粧組成物、医薬組成物または香料組成物または化粧品、医薬品または香水での使用にある。
【0057】
本発明の粉末を含む製品は特に、下記の製品から選択される着色、非着色または透明な製品である:
(1)ヒトの顔およびボディ用化粧品、例えばファンデーション、色付きクリーム、ルースまたはコンパクトパウダー、アイシャドー、マスカラ、アイライナーまたは口紅;
(2)ヒトの顔およびボディ用のケア製品、例えばクリーム、乳液、ローション、マスク、スクラブ剤、クレンジング剤および/または化粧落とし剤、デオドラント、制汗剤、シェービング剤および除毛剤;
(3)ヘアケア製品、例えばシャンプー、整髪料、ヘアスタイル保持剤、フケ防止剤、抜毛防止剤、髪の乾燥防止剤、ヘアダイおよび脱色剤;
(4)香水製品、例えば香料および芳香乳液、クリームまたはルースまたはコンパクトパウダー。
【実施例】
【0058】
ここで用いる脂肪族ポリエステルはポリ乳酸(PLA)であり、その特性は[表1]に示してある。粘度が0.5dl/g以上であるこのPLAは体積中央径が30μm以下の粉末に直接粉砕することはできない。
PLAを脱重合して固有粘度が0.5dl/gにしたが、これも単純な粉砕(乾燥段階を含まない)では、体積中央径が30μm以下の粉末を得ることができなかった。
本発明方法に従って実行された下記実施例から、固有粘度が0.5dl/g以下(未満)にすると、上記と同じポリエステルを微粉末に粉砕できることがわかる。
【0059】
【表1】
【0060】
(1)ブレンディング段階
押出機でのブレンディング
テスト1〜10はCoperion ZSK30押出機(スクリュー速度300回転/分、流量15 kg/時)で実施する。ブレンディング生成物はダイ出口でカレンダを用いて回収する。カレンダは生成物を冷却し、ハンドリングが容易な約1ミリメートル径のポリマー顆粒または「チップ」に粉砕する。ブレンディング生成物から顆粒を製造するのに他の装置、例えば噴霧冷却装置を使用できることは言うまでもない。
【0061】
この段階の後に、得られたサンプルを分析してその固有粘度を求める。
[表2]は温度を変えて得た固有粘度、PLAの種類およびブレンディング段階のアルコール含有量を示している。
【表2】
【0062】
大部分のブレンディング生成物で0.5以下、さらには0.30以下の粘度が得られる。
テスト番号1では、温度が分解に与える影響を観察できる。ブレンディング時間が等しい場合、ブレンディング温度が高ければ高いほど脱重合の程度も大きくなり、PLAの粘度が下がる。導入する化合物(グリセロール)の量もポリマーの脱重合に関係する。グリセロールの量が多ければ多いほど、PLAの粘度の低下が大きくなる。
再現性テスト(テスト番号2)は再現性の結果(標準偏差=0.03)を示している。
【0063】
押出機での脱重合に与えるグリセロールの影響と乳酸/グリセロール混合物の影響を比較すると、グリセロール単独のほうがブレンディング中にポリマーの粘度をより大きく下げることができることがわかる(テスト2とテスト3とを比較)。
PLA 2002 D および4060 D (テスト4および5)に実施したテストから、PLA PLE 005(テスト3)と比較すると、同じ条件下では、これらの脂肪族ポリエステルが分解すればするほど、ブレンディング後に得られる粘度は下がることがわかる。さらに、本発明方法では非晶質ポリエステルおよび半結晶ポリエステルの両者を脱重合して粉砕することができる。
本発明方法で用いる温度条件および化合物の量を選択すると所望粘度(すなわち、0.50以下、さらには0.3以下の粘度)に急速に達することができ、しかも、過度の高温によって生じる可能性がある熱酸化(ポリエステルの黄変の原因)が避けられる。
【0064】
(2)脱重合サンプルの粉砕段階
生成物をベンチュリ効果(Venturi-effect)エアジェット管を用いてミルに導入する。粉砕室では、接線方向の孔を有する分配リングによって7バールの圧縮空気を発生させ、急速で激しい撹拌作用を生成物に与える(ボルテックス効果)。粉砕は生成物の粒子間の衝突のみで行なわれる。
【0065】
ここではミルのベンチュリ供給ノズルは2.5mm径である。脱重合後に得られるポリエステルすなわち固有粘度が0.5dl/g以下のポリエステルが、エアジェットミルを用いてポリエステルを粉砕する前に約1ミリメートル径の顆粒またはチップの形でない場合には、必要に応じて凝固(冷却)した後に、例えば2mmの格子を備えたRetchミルを用いて粉砕するのが好ましい。変形例では、任意の装置、特に噴霧冷却装置を使用して粗さが約1ミリメートルの顆粒または粉末を製造することができる。
【0066】
本発明方法に従って生成物を粉砕した後、粒度分布をCoulter Multisizer 3 粒度計で評価する。Coulter原理を用いて個々の粒子の圧密化およびその体積を検出する。この技術は電解液中に浮遊する粒子が較正孔(calibrated orifice)を通ることによって誘発される抵抗変化を測定することをベースにしている。検出孔を通る各絶縁粒子は、それ自体の容量に等しい電解液の容量を変位させ、孔内に存在する電解液の容量が減少する。この減少によって電気抵抗が急増する。抵抗変化は変位した電解液の容量、従って、粒子の体積に比例する。抵抗変化は電圧パルスに変換され、その高さは粒子の体積に比例する。このパルスを分析器の各種チャネルにおけるその高さの関数で増幅し、分類する。
【0067】
【表3】
【0068】
ケースA:サンプル(この場合は番号401および番号405)を直接すなわち中間結晶化または乾燥段階無しに粉砕する。
[表4]に示す粒度分布の結果は、本発明のブレンディング段階で得られる脂肪族ポリエステルサンプルが実際に30μm以下の中央径を有する粒子に粉砕可能であることを示す。
【表4】
【0069】
ケースB:サンプルを中間乾燥段階後に粉砕する。
本発明方法のこの実施例は、ブレンディング段階と粉砕段階との間の中間乾燥段階が粉砕後に得られる粉末の粒度分布に与える影響を示す。
乾燥はブレンディングポリマーを100℃の温度で24時間、真空下に加熱乾燥(stoving)して行う。
ブレンディングし、乾燥したポリマーは次いで粉砕する。
種々の粘度(表1)のポリマーから始めて、乾燥した複数の粉砕サンプルに対して測定した粒度分布の結果を[表5]に示す。
【0070】
【表5】
【0071】
粉砕前に乾燥段階を行ったテスト401および405(ケース2)と、粉砕前に乾燥を行わなかったテスト(ケース1)とを比較すると、加熱乾燥によってポリエステルの粒径をさらに減らすことができ、平均粒径は26μm(加熱乾燥しない)から8μm(加熱乾燥する)まで低下することがわかる。
[表6]に示すDSC測定値は、Intracooler冷却器を有するDSC TA Q2000機械を用いて、ISO規格11357に従って、下記パラメータを用いて得た: 1: -20.00ーCで平衡、 2: 勾配 20.00ーC/分で240.00ーCまで、 3: 勾配 20.00ーC/分で -20.00ーCまで,4: 勾配20.00ーC/分で240.00ーCまで。
【0072】
【表6】
【0073】
融解熱はポリエステルの結晶化度に関係する(融解熱が増大するほど、結晶化度は高くなる)ので、[表6]のデータはテスト397を100℃で乾燥させるとPLAが結晶化すること、および、グリセロールの一部が除去されることを示している。
その他のテストは、減圧せずに、結果として「乾燥」せずに(すなわち、グリセロールが除去製造すなわちに)60℃で結晶化できることを示した。
【0074】
理論に縛られるものではないが、本発明者はポリマーの結晶化度の増大は粉砕性、すなわち最も微細な粒子に粉砕されるポリマーの能力に関係すると考える。
本発明方法を用いることで、テスト401、404および405の場合のように、PLAを粉砕して体積中央径が30μm以下、さらには20μm以下、さらには10μm以下のPLA粉末粒子を得ることができる。
[表7]は、Netszsch TG209F1 機械を用いた毎分10℃の温度上昇によって、窒素下でのTGA(熱重量分析)で290℃での質量ロスによって測定した、本発明方法で得られた粉末に対する化合物(グリセロールまたはグリセロール/乳酸混合物)の含浸率を示す。
【0075】
【表7】
【0076】
ブレンディング段階で添加した化合物の比率と本発明方法で得られた粉末のグリセロール含浸率との間に相関関係があることが確認される。
吸油量はNF規格ISO 787-5に従って測定した(中間乾燥を有する本発明方法で得られるサンプル、ケースB):
テスト400の吸油量(g/g)は0.55 g/gである。
テスト405の吸油量(g/g)は0.80 g/gである。
本発明のバイオ起源の微粉末は、油相と水相の両方に分散するという利点を有し、この粉末は化粧品への配合が容易になる。