特許第5961191号(P5961191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961191
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】テクネチウム標識ペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/00 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   A61K49/02 BZNA
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-555887(P2013-555887)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公表番号】特表2014-506910(P2014-506910A)
(43)【公表日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】EP2012053614
(87)【国際公開番号】WO2012119937
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】1103696.9
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/449,102
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305040710
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】アイブソン,ピーター・ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】インドレヴォール,バード
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン,ベン
(72)【発明者】
【氏名】バッラ,ラジヴ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネセン,エドウィン・ウィルヘルム
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−524598(JP,A)
【文献】 特表2010−526859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/00−49/22
A61K 51/00−51/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
c−Met結合ペプチドのキレーターコンジュゲートの放射性xTc錯体を含んでなるイメージング剤であって、前記キレーターコンジュゲートが次の式Iを有する、イメージング剤。
1−[cMBP]−Z2
(I)
(式中、
xTcは放射性同位体94mTc又は99mTcであり、
cMBPは次の式IIの18〜30量体c−Met結合環状ペプチドであり、
−(A)x−Q−(A')y
(II)
(式中、
Qは次のアミノ酸配列(配列番号1)であり、
−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
(式中、X1はAsn、His又はTyrであり、X2はGly、Ser、Thr又はAsnであり、X3はThr又はArgであり、X4はAla、Asp、Glu、Gly又はSerであり、X5はSer又はThrであり、X6はAsp又はGluであり、Cysa-dの各々はシステイン残基であって、残基a及びb並びに残基c及びdは環化して2つの独立したジスルフィド結合を形成している。)
A及びA'の一方はCys以外の任意のアミノ酸であって、他方の−(A)x−基又は−(A')y−基は−Gly−Gly−Gly−Lys−(配列番号4)、−Gly−Ser−Gly−Lys−(配列番号5)及び−Gly−Ser−Gly−Ser−Lys−(配列番号6)から選択されるリンカーペプチドであって、前記リンカーペプチドのLys残基のε−アミン基にZ3基が結合していて、Z3基がxTcと錯形成しており、
x及びyは独立に0〜13の値を有する整数であって、[x+y]=1〜13となるように選択される。)
1はcMBPのN末端に結合していて、−NH(C=O)RG(式中、−(C=O)RGはC1-6アルキル基及びC3-10アリール基から選択されるRGを有するか、或いはポリエチレングリコール(PEG)構成単位を含む。)であり、
2はcMBPのC末端に結合していて、第一アミドであり
3は次の式(III)のキレーターであり、
【化1】
(式中、E1〜E6は各々独立にR'基であり、
各R'は独立にH或いはC1-4アルキル、C3-7アルキルアリール、C2-7アルコキシアルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4フルオロアルキル、C2-7カルボキシアルキル又はC1-4アミノアルキルであるか、或いは2以上のR'基がそれに結合した原子と共に炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和環を形成しており、
Lは式−(A”m−(式中、各A”は独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基或いは単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であり、各Rは独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル及びC1-4ヒドロキシアルキルから選択され、mは1〜10の値を有する整数である。)の合成リンカー基である。
【請求項2】
Qが次の配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1記載のイメージング剤。
Ser−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6(配列番号2)、
Ala−Gly−Ser−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6−Gly−Thr(配列番号3)。
【請求項3】
3がArgである、請求項1又は請求項2記載のイメージング剤。
【請求項4】
cMBPが次のアミノ酸配列(配列番号7)を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のイメージング剤。
Ala−Gly−Ser−Cysa−Tyr−Cysc−Ser−Gly−Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys。
【請求項5】
キレーターが次の式IIIAを有する、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載のイメージング剤。
【化2】
(式中、qは1〜6の値を有する整数であり、A”は式(III)に関して定義した通りである。
【請求項6】
xTcが99mTcである、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載のイメージング剤。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか1項で定義された式Iのキレーターコンジュゲート。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか1項記載のイメージング剤の製造方法であって、請求項記載のキレーターコンジュゲートを適当な溶媒中において請求項1又は請求項で定義されたxTcの供給物と反応させることを含んでなる方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項のいずれか1項記載のイメージング剤を、哺乳動物への投与に適した形態で生体適合性キャリヤーと共に含んでなる放射性医薬組成物。
【請求項10】
請求項記載の放射性医薬組成物を製造するためのキットであって、請求項記載のキレーターコンジュゲートを無菌固体形態で含んでいる結果、生体適合性キャリヤー中の放射性xTc(ここで、xTcは請求項1又は請求項で定義した通りである。)の無菌供給物で再構成すれば溶解が起こって所望の放射性医薬組成物を与える、キット。
【請求項11】
ヒト又は動物の身体をイメージングする方法であって、当該方法はPET又はSPECTを用いて請求項1乃至請求項のいずれか1項記載のイメージング剤又は請求項記載の放射性医薬組成物が分布した前記身体の少なくとも一部の画像を生成する段階を含み、前記イメージング剤又は前記組成物は前記身体に予め投与されている、方法。
【請求項12】
画像がc−Metの過剰発現部位又は局在部位のものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
c−Metの過剰発現部位又は局在部位が癌又は前癌病変である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
薬物又は放射線によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターするために繰り返して実施される、請求項11乃至請求項13のいずれか1項記載の方法であって、前記イメージングは前記治療前及び前記治療後に実施され、任意には前記治療中にも実施される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボでのSPECT又はPETイメージングに適した放射性標識c−Met結合ペプチドを含んでなるテクネチウムイメージング剤に関する。c−Met結合ペプチドは、キレーターコンジュゲートを介して標識される。また、医薬組成物、かかる薬剤及び組成物の製造方法、並びに特に癌の診断で使用するための、かかる組成物を用いたインビボイメージング方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
散乱因子(SF)としても知られる肝細胞増殖因子(HGF)は、創傷治癒や血管形成のような各種の生理学的過程に関与する増殖因子である。HGFとその受容体(c−Met)との高親和性相互作用は、腫瘍の増殖、浸潤及び転移に関与している。
【0003】
Knudsen et alは、前立腺癌におけるHGF及びc−Metの役割を、イメージング及び治療に対する可能な関与を含めて総説している[Adv.Cancer Res.,91,31−67(2004)]。診断及び治療用の標識抗met抗体は、国際公開第03/057155号に記載されている。
【0004】
c−Metは、上皮由来の多くのヒト癌における腫瘍の増殖、浸潤及び転移に関係することが証明されている。c−Metは大抵の癌によって発現され、正常組織に比べて上昇したその発現は肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、頭頸部癌、胃癌、肝細胞癌、卵巣癌、腎臓癌、神経膠腫、黒色腫及び若干の肉腫を含む多くの癌において検出されてきた。結腸直腸癌(CRC)では、この疾患の最も早期の新生物発生前病変である異形成の異常陰窩病巣においてc−Metの過剰発現が検出されている。頭頸部の扁平上皮細胞癌では、報告によれば、c−Metは原発腫瘍のおよそ80%で発現又は過剰発現されるという。骨への前立腺癌転移では、c−Metは80%を超える骨転移で過剰発現されると報告された。
【0005】
正常条件下では、c−Metは上皮細胞上に発現され、間葉由来のHGFによってパラクリン的に活性化される。正常細胞におけるc−Metの活性化は一時的なイベントであり、厳しく制御されている。しかし、腫瘍細胞では、c−Metは本質的に活性であり得る。癌では、c−Metの増幅/過剰発現、活性化をもたらすc−Metの突然変異(例えば、構造変化)、及び自己分泌シグナリングループの創成による自律増殖調節の獲得によって異常なc−Met亢進が達成されることがある。加えて、c−Met受容体の不完全なダウンレギュレーションもまた、細胞膜における異常なc−Met発現の一因となる。c−Metの過剰発現はHGF依存性(自己分泌性/パラクリン性)であるが、突然変異によって引き起こされる構造変化(例えば、細胞外ドメインの喪失)はHGF非依存性である。
【0006】
国際公開第2004/078778号は、c−Met又はc−Met及びHGFを含む複合体と結合するポリペプチド又は多量体ペプチド構築物を開示している。約10の異なるペプチド構造クラスが記載されている。国際公開第2004/078778号には、インビトロ及びインビボ用途のための検出可能な標識或いは治療用途のための薬物でペプチドを標識できることが開示されている。検出可能な標識は、酵素、蛍光化合物、光学色素、常磁性金属イオン、超音波造影剤又は放射性核種であり得る。国際公開第2004/078778号の好ましい標識は放射性又は常磁性であると述べられており、最も好ましくは金属キレーターでキレート化される金属からなる。国際公開第2004/078778号には、そこにおける放射性核種は18F、124I、125I、131I、123I、77Br、76Br、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、203Pb、211Bi、212Bi、2l3Bi、2l4Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、198Au及び199Auから選択できると述べられている。国際公開第2004/078778号(62頁)には、診断目的のための好ましい放射性核種は64Cu、67Ga、68Ga、99mTc及び111Inであり、99mTcが特に好ましいと述べられている。
【0007】
国際公開第2004/078778号は、実施例14〜17において、c−Met結合ペプチドの血清滞留時間を増加させる方法として、ヒト血清アルブミンと非共有的に結合する部分とのコンジュゲーション、PEGとのコンジュゲーション、血清タンパク質との融合、及びマレイミドとのコンジュゲーションを教示している。
【0008】
国際公開第2009/016180号は、次の式Iのコンジュゲートを含んでなるイメージング剤を開示している。
【0009】
【化1】
式中、
1はcMBPのN末端に結合していて、H又はMIGであり、
2はcMBPのC末端に結合していて、OH、OBc(式中、Bcは生体適合性陽イオンである。)又はMIGであり、
cMBPは、次のアミノ酸配列(配列番号1)を含む17〜30のアミノ酸のcMet結合環状ペプチドであり、
Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
(式中、X1はAsn、His又はTyrであり、X2はGly、Ser、Thr又はAsnであり、X3はThr又はArgであり、X4はAla、Asp、Glu、Gly又はSerであり、X5はSer又はThrであり、X6はAsp又はGluであり、Cysa-dの各々はシステイン残基であって、残基a及びb並びに残基c及びdは環化して2つの独立したジスルフィド結合を形成している。)
IGは代謝阻害基であり、
Lは合成リンカー基であり、
BzpMはベンゾピリリウム色素である。
【0010】
国際公開第2008/139207号は、同第2009/016180号のものに類似したcMet結合環状ペプチドであって、この場合には特定クラスのシアニン色素で標識されたものを開示している。
【0011】
国際公開第2009/016180号及び同第2008/139207号の光学イメージング剤は、インビボでc−Metの過剰発現部位又は局在部位の画像を得るための光学イメージング、特に結腸直腸癌のイメージングのために有用であると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
国際公開第2004/078778号パンフレット
【発明の概要】
【0013】
本発明は、インビボでの陽電子放出断層撮影(PET)又は単光子放出断層撮影(SPECT)イメージングに適した放射性テクネチウム(99mTc又は94mTc)標識c−Met結合ペプチドを含んでなるイメージング剤組成物に関する。かかるc−Met結合ペプチドは、ペプチドとジアミンジオキシムリガンドとのキレーターコンジュゲートを介して標識される。かかるコンジュゲートは温和な室温条件下においてテクネチウムで放射性標識され、高い収率及び放射化学純度で所望の放射性金属錯体を与える。99mTcイメージング剤は、市販の99mTcジェネレーターからの[99mTc]−過テクネチウム酸イオンで再構成される無菌の非放射性キットから容易に製造できる。
【0014】
本イメージング剤は、インビボで良好な標的特異性の腫瘍取込みを示す。加えて、本イメージング剤は前臨床モデルにおいてよく認容されるようにも思われる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の態様では、本発明は、c−Met結合ペプチドのキレーターコンジュゲートの放射性xTc錯体を含んでなるイメージング剤であって、前記キレーターコンジュゲートが次の式Iを有するイメージング剤を提供する。
1−[cMBP]−Z2
(I)
式中、
xTcは放射性同位体94mTc又は99mTcであり、
cMBPは次の式IIの18〜30量体c−Met結合環状ペプチドであり、
−(A)x−Q−(A')y
(II)
(式中、
Qは次のアミノ酸配列(配列番号1)であり、
−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6
(式中、X1はAsn、His又はTyrであり、X2はGly、Ser、Thr又はAsnであり、X3はThr又はArgであり、X4はAla、Asp、Glu、Gly又はSerであり、X5はSer又はThrであり、X6はAsp又はGluであり、Cysa-dの各々はシステイン残基であって、残基a及びb並びに残基c及びdは環化して2つの独立したジスルフィド結合を形成している。)
A及びA'は独立にCys以外の任意のアミノ酸であるか、或いはA及びA'の一方はLys(ε−Z3)であり、
x及びyは独立に0〜13の値を有する整数であって、[x+y]=1〜13となるように選択される。)
1はcMBPのN末端に結合していて、MIG又はZ3であり、
2はcMBPのC末端に結合していて、MIG又はZ3であり、
各MIGは独立に、cMBPペプチドのインビボ代謝を阻害又は抑制する生体適合性基である代謝阻害基であり、
3は次の式(III)のキレーターであり、
【0016】
【化2】
(式中、E1〜E6は各々独立にR'基であり、
各R'は独立にH或いはC1-4アルキル、C3-7アルキルアリール、C2-7アルコキシアルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4フルオロアルキル、C2-7カルボキシアルキル又はC1-4アミノアルキルであるか、或いは2以上のR'基がそれに結合した原子と共に炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和環を形成しており、
Lは式−(A)m−(式中、各Aは独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基或いは単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であり、各Rは独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル及びC1-4ヒドロキシアルキルから選択され、mは1〜10の値を有する整数である。)の合成リンカー基である。)
式Iのコンジュゲートは1つのZ3基を含み、前記Z3基はxTcと共に金属錯体を形成することを条件とする。
【0017】
「イメージング剤」という用語は、哺乳動物体をイメージングするのに適した化合物を意味する。好ましくは、哺乳動物はインタクトな哺乳動物生体であり、さらに好ましくはヒト被験体である。通例、イメージング剤は非薬理学的量(即ち、哺乳動物被験体に対して最小の生物学的効果を有するように設計された用量)で投与される。好ましくは、イメージング剤は最小限に侵襲的なやり方(即ち、職業的な医学専門技術の下で実施した場合に哺乳動物被験体に対して実質的な健康リスクのないやり方)で哺乳動物体に投与できる。かかる最小限に侵襲的な投与は、好ましくは、局所又は全身麻酔の必要なしに行われる、前記被験体の末梢静脈への静脈内投与である。
【0018】
本明細書中で使用される「インビボイメージング」という用語は、哺乳動物被験体の内部構造の全部又は一部の画像を非侵襲的に生成する技法をいう。
【0019】
「キレーターコンジュゲート」という用語は、キレーターがcMBPペプチドに共有結合されていることを意味する。
【0020】
「c−Met結合環状ペプチド」という用語は、c−Met(又は単にMET)としても知られる肝細胞増殖因子受容体に結合するペプチドを意味する。本発明の好適なかかるペプチドは、式Iの18〜30アミノ酸の環状ペプチドである。かかるペプチドは、c−Metに対して約20nM未満の見掛けKdを有している。前記ペプチドのcMBP配列はプロリン残基を含み、かかる残基は主鎖アミド結合のシス/トランス異性化を示し得ることが知られている。本発明のcMBPペプチドは、任意のかかる異性体を含んでいる。本発明のcMBPペプチドは、好適には単量体として使用される。即ち、cMBPの二量体及びヘテロ二量体は本発明の技術範囲外にある。
【0021】
1基は、cMBPの最後のアミノ酸残基のアミン基(即ち、アミノ末端又はN末端)を置換する。Z2基は、cMBPの最後のアミノ酸残基のカルボニル基(即ち、カルボキシ末端又はC末端)を置換する。
【0022】
「代謝阻害基」(MIG)という用語は、アミノ末端(Z1)又はカルボキシ末端(Z2)におけるcMBPペプチドのインビボ代謝を阻害又は抑制する生体適合性基を意味する。本発明のイメージング剤に関しては、MIGはZ3基(即ち、式IIIのキレーター)を含んでいる。その場合、テクネチウム錯体はcMBPのN末端又はC末端に(それぞれZ1又はZ2として)共有結合され、このテクネチウム錯体がcMBPの代謝を阻止するために役立つ。他のかかるMIG基は当業者にとって公知であり、ペプチドのアミン末端については、好適にはN−アシル化基−NH(C=O)RG(式中、アシル基−(C=O)RGはC1-6アルキル基及びC3-10アリール基から選択されるRGを有するか、或いはポリエチレングリコール(PEG)構成単位を含む。)から選択される。好ましいかかるPEG基は、次の式IA又はIBのバイオモディファイアーである。
【0023】
【化3】
式IAは17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸であり、式中のpは1〜10の整数である。別法として、式IBのプロピオン酸誘導体に基づくPEG様構造も使用できる。
【0024】
【化4】
式中、pは式IAに関して定義した通りであり、qは3〜15の整数である。式IB中、pは好ましくは1又は2であり、qは好ましくは5〜12である。
【0025】
好ましいかかるアミノ末端MIG基は、アセチル、ベンジルオキシカルボニル又はトリフルオロアセチルであり、最も好ましくはアセチルである。
【0026】
「アミノ酸」という用語は、L−又はD−アミノ酸、アミノ酸類似体(例えば、ナフチルアラニン)或いはアミノ酸模倣体を意味し、これらは天然のもの又は純粋に合成由来のものであってよく、光学的に純粋なもの(即ち、単一の鏡像異性体)、したがってキラルなものであるか、或いは鏡像異性体の混合物であってよい。本明細書中では、アミノ酸に関する通常の三文字略語又は一文字略語が使用される。好ましくは、本発明のアミノ酸は光学的に純粋なものである。「アミノ酸模倣体」という用語は、アイソスター(即ち、天然化合物の立体構造及び電子構造を模倣するように設計されたもの)である天然アミノ酸の合成類似体を意味する。かかるアイソスターアミノ酸がペプチド中に使用されることは公知であり、特に限定されないが、デプシペプチド、レトロ−インベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,5−二置換テトラゾールを包含する[M.Goodman,Biopolymers,24,137(1985)を参照されたい]。
【0027】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合(即ち、1つのアミノ酸のアミンを別のアミノ酸のカルボキシルに連結するアミド結合)によって連結された(上記に定義したような)2以上のアミノ酸を含む化合物を意味する。
【0028】
A及びA'が「Cys以外の任意のアミノ酸」であるとは、A及びA'基の追加のアミノ酸が遊離チオール基(特にCys残基)を含まないことを意味する。なぜなら、追加のCys残基はQ配列のCysa−Cysb及びCysc−Cysdジスルフィド橋とジスルフィド橋スクランブリングを起こす恐れがあり、その結果としてc−Met結合親和性の喪失をもたらすからである。
【0029】
式(I)中では、Z3基(即ち、式IIIのキレーター)は好適には下記の位置(i)〜(iii)の1つに結合している。
(i)cMBPのアミン末端にZ1基として結合。かかるコンジュゲーションでは、式IIIのカルボキシ官能化キレーターが使用される。
(ii)cMBPのカルボキシ末端にZ2基として結合。このようなC末端への直接結合は、式IIIのアミン官能化キレーターを用いて達成できる。したがって、かかるコンジュゲーションについては、キレーターのコンジュゲーションを可能にするための追加のLys残基は不要である。加えて、結合したテクネチウム錯体はMIG基として機能し得る。
(iii)A又はA'基中に位置するLys残基のLys(ε)アミン側鎖への結合。
【0030】
xが94mである場合、テクネチウム放射性同位体は94mTcであり、これは特にインビボでの陽電子放出断層撮影(PET)イメージングに適している。xが99mである場合、テクネチウム放射性同位体は99mTcであり、これは特にインビボでの単光子放出断層撮影(SPECT)イメージングのために特に適している。好ましくは、xTcは99mTcである。
【0031】
「キレーターの放射性xTc錯体」という用語は、キレート化剤の放射性金属錯体を意味する。「放射性金属錯体」という用語は、放射性金属と式(III)のキレーターとの配位金属錯体であって、前記キレーターが式Iのリンカー基(L)を介してcMBPペプチドに共有結合しているものを意味する。「キレーター」又は「キレート化剤」という用語はその通常の意味を有し、金属配位後にキレート環を生じるように配列された2以上の金属ドナー原子をいう。式(III)のキレーターはジアミンジオキシムドナーセットを有している。したがって、本発明のxTc錯体は次の式(IV)を有すると考えられる。
【0032】
【化5】
式中、E1〜E6及びLは式(III)に関して定義した通りである。
【0033】
「含む」という用語は本願全体を通してその通常の意味を有し、記載された成分は存在していなければならないが、それに加えて他の明記されない化合物又は化学種が存在してもよいことを意味する。「含む」という用語は、好ましい部分集合として、組成物が他の化合物又は化学種の存在なしに記載された成分を有することを意味する「から本質的になる」を包含する。
【0034】
好ましい特徴
本発明の好ましいcMBPペプチドは、c−Metが結合してc−Met/HGF複合体の結合に関して(蛍光偏光アッセイ測定に基づいて)約10nM未満、最も好ましくは1〜5nMの範囲内のKdを有し、3nM未満が理想的である。
【0035】
第1の態様のイメージング剤は、好ましくは哺乳動物への投与に適した形態で提供される。「哺乳動物への投与に適した形態で」という語句は、無菌でパイロジェンフリーであり、毒性又は有害効果を生じる化合物を含まず、生体適合性pH(およそpH6.5〜8.5)及び生理学的に適合性の重量オスモル濃度で製剤化される組成物を意味する。かかる組成物は、インビボで塞栓を生じる危険性を有し得る粒状物質を含まないと共に、生物学的流体(例えば、血液)と接触した際に沈殿が起こらないように製剤化される。かかる組成物はまた、生物学的に適合性の賦形剤のみを含み、好ましくは等張性である。好ましいかかる形態は、第4の態様(下記参照)の放射性医薬組成物である。
【0036】
本発明のイメージング剤は、好適には、両方のcMBPペプチド末端が通常は異なるMIG基によって保護されている。このようにして両ペプチド末端を保護することは、インビボイメージング用途にとって重要である。さもないと、急速なペプチド代謝の結果としてc−Metに対する選択的結合親和性の喪失が予想されるからである。Z1及びZ2が共にMIGである場合、好ましくはZ1がアセチルであり、Z2が第一アミドである。最も好ましくは、Z1がアセチルであり、Z2が第一アミドであり、xTc部分はcMBPのリシン残基のε−アミン側鎖に結合している。
【0037】
Qは、好ましくは次の配列番号2又は配列番号3のアミノ酸配列を含んでいる。
Ser−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6(配列番号2)、
Ala−Gly−Ser−Cysa−X1−Cysc−X2−Gly−Pro−Pro−X3−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−X4−X5−X6−Gly−Thr(配列番号3)。
【0038】
配列番号1、配列番号2及び配列番号3中では、X3は好ましくはArgである。第1の態様のcMBPペプチドは、好ましくは次のアミノ酸配列(配列番号7)を有している。
Ala−Gly−Ser−Cysa−Tyr−Cysc−Ser−Gly−Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cysd−Trp−Cysb−Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys。
【0039】
式(I)のイメージング剤は、好ましくは、A及びA'の一方がLys(ε−Z3)であり、cMBPがただ1つのかかるLys残基を含むように選択される。さらに好ましくは、ただ1つのLys(ε−Z3)部分がカルボキシ末端に位置する結果、cMBPは次の式IIAを有する。
−(A)x−Q−(A')z−Lys(ε−Z3)−
(IIA)
式中、zは0〜12の値を有する整数であり、[x+z]=0〜12である。
【0040】
式I及び式II中では、−(A)x−基又は−(A')y−基は
−Gly−Gly−Gly−Lys−(配列番号4)、
−Gly−Ser−Gly−Lys−(配列番号5)及び
−Gly−Ser−Gly−Ser−Lys−(配列番号6)
から選択されるリンカーペプチドを含み、Z3基は前記リンカーペプチドのLys残基のε−アミン基に結合している。
【0041】
式(III)のキレーターは、好ましくは、C末端(Z2基)に結合されるか、或いはLys(ε−Z3)部分として結合される。さらに好ましくは、それはLys(ε−Z3)部分として結合され、最も好ましくは、Lys(ε−Z3)部分は上記式(IIA)の場合のようにカルボキシ末端に位置している。
【0042】
式(I)のイメージング剤では、キレーターは好ましくは次の式IIIAを有する。
【0043】
【化6】
式中、qは1〜6の値を有する整数であり、Aは式(III)に関して定義した通りである。
【0044】
式(IIIA)中では、(A)qは好ましくは−(NH)(A)t−(式中、tは0〜5の値を有する整数である。)である。
【0045】
第1の態様のイメージング剤は、第3の態様(下記)に記載されるようにして製造できる。
【0046】
第2の態様では、本発明は、第1の態様で定義したような式Iのキレーターコンジュゲートを提供する。第2の態様における式(II)のcMBPペプチド及び式(III)のキレーターの好ましい態様は、第1の態様(上記)に記載した通りである。
【0047】
第2の態様のキレーターコンジュゲートは、二官能性キレートアプローチによって得ることができる。「二官能性キレート」という用語はその通常の意味を有し、ペンダント官能基が共有結合したキレート化剤をいう。かかる官能基は、キレーターをcMBPペプチドに結合するための反応部位として使用される。二官能性キレートアプローチ及び関連する合成法は、Bartholoma et al[Chem.Rev.,110(5),2903−2920(2010)]、Chakraborty et al[Curr.Top.Med.Chem.,10(11),1113−1134(2010)]及びBrechbiel et al[Quart.J.Nucl.Med.Mol.Imaging,52(2),166−173(2008)]によって記載されている。本発明の官能基は、好ましくはアミン、カルボン酸又は活性化エステルであり、さらに好ましくは第一アミン又は活性化エステルである。ペンダントアミン官能基を有する二官能性キレーターは、ペプチドのカルボキシル基にコンジュゲートすることができる。カルボキシル又は活性化エステル官能基を有する二官能性キレーターは、ペプチドのアミン基にコンジュゲートすることができる。
【0048】
「活性化エステル」又は「活性エステル」という用語は、良好な脱離基であり、したがってアミンのような求核試薬との一層容易な反応を可能にするように設計された関連カルボン酸のエステル誘導体を意味する。好適な活性エステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、スルホ−スクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、p−ニトロフェノール、ヒドロキシベンゾトリアゾール及びPyBOP(即ち、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)である。好ましい活性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミド又はペンタフルオロフェノールエステル、特にN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである。
【0049】
本発明の式cMBPのc−Met結合ペプチドは、
(i)所望のcMBPペプチドと同じペプチド配列を有し、Cysa及びCysbが保護されておらず、Cysc及びCysd残基がチオール保護基を有する線状ペプチドの固相ペプチド合成を行う段階、
(ii)段階(i)からのペプチドを塩基水溶液で処理することで、Cysa及びCysbを連結する第1のジスルフィド結合を有する単環式ペプチドを得る段階、並びに
(iii)Cysc及びCysdのチオール保護基を除去して環化することで、Cysc及びCysdを連結する第2のジスルフィド結合を形成し、かくして所望の二環式ペプチド生成物Z1−[cMBP]−Z2を得る段階
を含んでなる製造方法によって得ることができる。
【0050】
「保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない程度に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望の生成物が得られる。アミン保護基は当業者にとって公知であり、好適にはBoc(ここでBocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(ここでFmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]及びNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から選択される。好適なチオール保護基は、Trt(トリチル)、Acm(アセトアミドメチル)、t−Bu(tert−ブチル)、tert−ブチルチオ、メトキシベンジル、メチルベンジル及びNpys(3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)である。さらに他の保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,4th Edition,Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts[Wiley Blackwell(2006)]に記載されている。好ましいアミン保護基はBoc及びFmocであり、最も好ましくはBocである。好ましいチオール保護基はTrt及びAcmである。
【0051】
実施例1及び実施例2は一層具体的な詳細を示している。固相ペプチド合成法のさらなる詳細は、P.Lloyd−Williams,F.Albericio and E.Girald;Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins,CRC Press,1997に記載されている。cMBPペプチドは不活性雰囲気下で最もよく貯蔵され、フリーザー内に保存される。溶液として使用する場合には、ジスルフィド橋のスクランブリングを生じる恐れがあるので、7より高いpHを避けるのが最もよい。
【0052】
好ましい二官能性ジアミンジオキシムキレーターは、次の式を有するキレーター1である。
【0053】
【化7】
式中、橋頭の第一アミン基はL(即ち、リンカー基)及び/又はcMBPペプチドにコンジュゲートされる。
【0054】
式IIIのジアミンジオキシムキレーターは、適切なジアミンを次のいずれかと反応させることによって製造できる。即ち、
(i)適切なクロロニトロソ誘導体Cl−C(E23)−CH(NO)E1と反応させるか、
(ii)式Cl−C(E23)−C(=NOH)E1のα−クロロオキシムと反応させるか、或いは
(iii)式Br−C(E23)−C(=O)E1のα−ブロモケトンと反応させ、続いてヒドロキシルアミンを用いてジアミンジケトン生成物をジアミンジオキシムに転化させる。
【0055】
経路(i)は、S.Jurisson et al[Inorg.Chem.,26,3576−82(1987)]によって記載されている。クロロニトロソ化合物は、当技術分野で公知の通り、適切なアルケンを塩化ニトロシル(NOCl)で処理して得ることができる。クロロニトロソ化合物の合成に関するさらなる詳細は、Ramalingam[Synth.Commun.,25(5),743−752(1995)]、Glaser[J.Org.Chem.,61(3),1047−48(1996)]、Clapp[J.Org Chem.,36(8)1169−70(1971)]、Saito[Shizen Kagaku,47,41−49(1995)]及びSchulz[Z.Chem.,21(11),404−405(1981)]によって示されている。経路(iii)は、Nowotnik et al[Tetrahedron,50(29),p.8617−8632(1994)]によって一般的な表現で記載されている。α−クロロオキシムは、対応するα−クロロケトン又はアルデヒド(これらは商業的に入手できる。)のオキシム化によって得ることができる。α−ブロモケトンは商業的に入手できる。
【0056】
本発明の特定のカルボキシ官能化及びアミン官能化キレーター並びにcMBPペプチドに対するこれらのコンジュゲーションのさらなる詳細は、支援実施例中に示される。
【0057】
第3の態様では、本発明は、第1の態様のイメージング剤の製造方法であって、第1の態様の式Iのキレーターコンジュゲートを適当な溶媒中において第1の態様で定義されたxTcの供給物と反応させることを含んでなる方法を提供する。
【0058】
第3の態様におけるキレーターコンジュゲート中のcMBPペプチド及びキレーター並びにxTcの好ましい態様は、第1の態様(上記)に記載した通りである。
【0059】
適当な溶媒は通例水性のものであり、好ましくは第4の態様(下記)で定義されるような生体適合性キャリヤー溶媒である。
【0060】
99mTcは放射性同位体ジェネレーターから商業的に入手でき、それは無菌形態の[99mTc]−過テクネチウム酸イオンを与える。テクネチウム錯体の製造方法は、当技術分野で公知である[例えば、I.Zolle(Ed)Technetium−99m Pharmaceuticals,Springer,New York(2007)を参照されたい]。94mTcは、Bigott et al[Nucl.Med.Biol,33(7),923−933(2006)]の方法によって製造し処理することができる。
【0061】
第4の態様では、本発明は、第1の態様のイメージング剤を、哺乳動物への投与に適した形態で生体適合性キャリヤーと共に含んでなる放射性医薬組成物を提供する。
【0062】
第4の態様におけるイメージング剤の好ましい態様は、第1の態様に記載した通りである。「哺乳動物への投与に適した形態で」という用語は、上記に定義した通りである。
【0063】
「生体適合性キャリヤー」とは、組成物が生理学的に認容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)イメージング剤を懸濁又は好ましくは溶解するための流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤーは、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、生体適合性緩衝剤を含む水性緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。好ましくは、生体適合性キャリヤーはパイロジェンフリー注射用水、等張食塩水又はリン酸緩衝液である。
【0064】
イメージング剤及び生体適合性キャリヤーはそれぞれ、注射器又はカニューレによる溶液の追加及び抜取りを許しながら、無菌保全性及び/又は放射能安全性の維持、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器を含む適当なバイアル又は容器に入れて供給される。好ましいかかる容器は、気密クロージャーを(通例はアルミニウムからなる)オーバーシールと共にクリンプ加工した隔壁密封バイアルである。クロージャーは、無菌保全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したもの(例えば、クリンプ加工した隔壁シールクロージャー)である。かかる容器は、(例えば、ヘッドスペースガスの交換又は溶液のガス抜きのために)所望される場合にはクロージャーが真空に耐え得ると共に、酸素又は水蒸気のような外部大気ガスの侵入を許すことなしに減圧のような圧力変化にも耐え得るという追加の利点を有している。
【0065】
好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む(例えば、容積10〜30cm3の)単一のバルクバイアルからなり、したがって臨床的状況に合わせて製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器中に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分のヒト用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって好ましくは臨床用に適した使い捨て注射器又は他の注射器である。本発明の医薬組成物は、好ましくは1人の患者用に適した用量を有し、上述したような適当な注射器又は容器に入れて供給される。
【0066】
かかる医薬組成物は、抗菌防腐剤、pH調整剤、フィラー、放射線防護剤、可溶化剤又は重量オスモル濃度調整剤のような追加の任意賦形剤を含むことができる。
【0067】
「抗菌防腐剤」という用語は、潜在的に有害な微生物(例えば、細菌、酵母又はかび)の増殖を阻止する薬剤を意味する。抗菌防腐剤はまた、使用する用量に応じて多少の殺菌性を示すこともある。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、医薬組成物中におけるこのような微生物の増殖を阻止することである。しかし、抗菌防腐剤は、任意には投与に先立って前記組成物を製造するために使用されるキットの1種以上の成分中における潜在的に有害な微生物の増殖を阻止するためにも使用できる。好適な抗菌防腐剤には、パラベン類(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはこれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールがある。好ましい抗菌防腐剤はパラベン類である。
【0068】
「pH調整剤」という用語は、組成物のpHがヒト又は哺乳動物への投与のために許容される範囲(およそpH4.0〜10.5、本発明の薬剤に関して好ましくは6.5〜8.5)内にあることを保証するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調整剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン]のような薬学的に許容される緩衝剤、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物のような薬学的に許容される塩基がある。組成物をキットの形態で使用する場合には、pH調整剤を任意には独立のバイアル又は容器に入れて供給することができ、その結果としてキットのユーザーは多段操作の一部としてpHを調整することができる。
【0069】
「フィラー」という用語は、製造及び凍結乾燥中における材料の取扱いを容易にすることができる薬学的に許容される増量剤を意味する。好適なフィラーには、塩化ナトリウムのような無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースのような水溶性糖又は糖アルコールがある。
【0070】
「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解から生じる含酸素フリーラジカルのような高反応性フリーラジカルを捕捉することにより、レドックス過程のような分解反応を阻止する化合物を意味する。2種以上の放射線防護剤の組合せも使用できる。本発明の放射線防護剤は、好適には、エタノール、アスコルビン酸、p−アミノ安息香酸(即ち、4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(即ち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)及び(適用できる場合には)かかる酸と生体適合性陽イオンとの塩から選択される。「生体適合性陽イオン」(Bc)という用語は、イオン化して負に帯電した基と共に塩を形成する正に帯電した対イオンを意味する。この場合、前記正に帯電した対イオンも無毒性であり、したがって哺乳動物体(特に人体)への投与に適している。好適な生体適合性陽イオンの例には、アルカリ金属であるナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンがある。好ましい生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。本発明の放射性防護剤は、好ましくはアスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムからなっている。
【0071】
「可溶化剤」という用語は、溶媒に対するイメージング剤の溶解性を高める、組成物中に存在する添加剤を意味する。好ましいかかる溶媒は水性媒質であり、したがって可溶化剤は好ましくは水に対する溶解性を高める。好適なかかる可溶化剤には、C1-4アルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート、ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキシエチレン)ブロック共重合体(Pluronics(商標))、シクロデキストリン(例えば、α−、β−又はγ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン或いはヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン)及びレシチンがある。好ましい可溶化剤は、シクロデキストリン、C1-4アルコール及びPluronics(商標)であり、さらに好ましくはシクロデキストリン及びC1-4アルコールである。可溶化剤がアルコールである場合、それは好ましくはエタノール又はプロパノールであり、さらに好ましくはエタノールである。エタノールは潜在的に二重の役割を有している。それは、放射線防護剤としても機能し得るからである。可溶化剤がシクロデキストリンである場合、それは好ましくはγ−シクロデキストリンであり、さらに好ましくはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPCD)である。シクロデキストリンの濃度は約0.1〜約40mg/mL、好ましくは約5〜約35mg/mL、さらに好ましくは20〜30mg/ml、最も好ましくは25mg/ml付近であり得る。
【0072】
本発明の放射性医薬組成物は、以下のような様々な方法によって製造できる。即ち、
(i)放射性金属錯体形成をクリーンルーム環境内で実施する無菌製造技法、
(ii)無菌製造を用いずに放射性金属錯体形成を実施した後、最終段階で滅菌[例えば、γ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理]を行う終末滅菌方法、並びに
(iii)式Iのキレーターコンジュゲート及び任意の賦形剤を含む無菌の非放射性キット製剤を所望のテクネチウム放射性金属の供給物と反応させるキット方法。
方法(iii)が好ましく、この方法で使用するためのキットは第5の実施形態(下記)に記載される。
【0073】
好ましくは、イメージング剤組成物は、非標識cMBPペプチドがxTc標識cMBPペプチドのモル量の50倍以下のモル量で前記組成物中に存在するように選択される。したがって、xTc放射性標識のために使用されるキレーターコンジュゲートの化学的過剰量はxTcに比べて1000倍も過剰になることがあり、非標識コンジュゲートがインビボでc−Met部位に対して競合することがある。しかし、低い濃度のキレーターコンジュゲートはRCPに影響を及ぼすことがある。即ち、99mTcに関しては、45ナノモルの化合物1を用いれば>90%のRCPが達成できるが、15〜30ナノモルを用いた場合には70〜95%の範囲内で変動する。過剰の非標識ペプチドはHPLC又はSPEによって除去できる。
【0074】
「非標識」という用語は、c−Met結合環状ペプチドが非放射性であること、即ちxTc又はその他任意の放射性同位体で放射性標識されていないことを意味する。かかる非標識ペプチドは、主として第2の態様(上記)の非放射性キレーターコンジュゲートを包含する。「非標識」という用語は、99Tcで標識されたc−Met結合環状ペプチドを除外する。この場合、前記99Tcは前記c−Met結合環状ペプチドを放射性標識するために使用される99mTc中に存在し、したがって同じ放射性標識反応の生成物である。好ましくは、非標識c−Met結合環状ペプチドは、対応するxTc標識ペプチドのモル量の20倍未満、さらに好ましくは10倍未満、最も好ましくは5倍未満のモル量で前記組成物中に存在している。
【0075】
第5の態様では、本発明は、第4の態様の放射性医薬組成物を製造するためのキットであって、第2の態様のキレーターコンジュゲートを無菌固体形態で含んでいる結果、生体適合性キャリヤー中の放射性金属の無菌供給物で再構成すれば溶解が起こって所望の放射性医薬組成物を与えるキットを提供する。
【0076】
第5の態様におけるキレーターコンジュゲートの好ましい態様は、本発明の第2の態様(上記)に記載した通りである。
【0077】
「キット」という用語は、所望の放射性医薬組成物を製造するために必要な化学薬品を使用説明書と共に含んでなる1以上の非放射性医薬品グレード容器を意味する。キットは、所望の放射性金属で再構成することで、最小限の操作でヒトへの投与に適した溶液を与えるように設計されている。
【0078】
無菌固体形態は、好ましくは凍結乾燥固体である。
【0079】
99mTcに関しては、キットは好ましくは凍結乾燥され、99mTc放射性同位体ジェネレーターからの無菌の99mTc−過テクネチウム酸イオン(TcO4-)で再構成することで、それ以上の操作なしにヒトへの投与に適した溶液を与えるように設計されている。好適なキットは、遊離塩基又は酸性塩形態のキレーターコンジュゲートを、亜ジチオン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、第一スズイオン、Fe(II)又はCu(I)のような生体適合性還元剤と共に収容した容器(例えば、隔壁密封バイアル)を含んでいる。生体適合性還元剤は、好ましくは塩化第一スズ又は酒石酸第一スズのような第一スズ塩である。別法として、キットは非放射性金属錯体を任意に含み得る。これは、テクネチウムの添加時にトランスメタレーション(即ち、金属交換)を受けて所望の生成物を与える。非放射性キットはさらに、上記に記載したようなトランスキレーター、放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調整剤又はフィラーのような追加成分を任意に含み得る。
【0080】
第6の態様では、本発明は、ヒト又は動物の身体をイメージングする方法であって、当該方法はPET又はSPECTを用いて第1の態様のイメージング剤又は第2の態様の放射性医薬組成物が分布した前記身体の少なくとも一部の画像を生成する段階を含み、前記イメージング剤又は組成物は前記身体に予め投与されている方法を提供する。
【0081】
第6の態様におけるイメージング剤又は組成物の好ましい態様は、本発明のそれぞれ第1及び第4の態様(上記)に記載した通りである。好ましくは、第4の態様の放射性医薬組成物が使用される。
【0082】
好ましくは、哺乳動物はインタクトな哺乳動物生体であり、さらに好ましくはヒト被験体である。好ましくは、イメージング剤は最小限に侵襲的なやり方(即ち、職業的な医学専門技術の下で実施した場合に哺乳動物被験体に対して実質的な健康リスクのないやり方)で哺乳動物体に投与できる。かかる最小限に侵襲的な投与は、好ましくは、局所又は全身麻酔の必要なしに行われる、前記被験体の末梢静脈への静脈内投与である。
【0083】
第6の態様のイメージングは、好ましくはc−Metの過剰発現部位又は局在部位のイメージングである。c−Metの過剰発現部位又は局在部位は、好ましくは癌又は前癌病変である。
【0084】
第6の態様のイメージング方法は、任意には薬物又は放射線によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターするために繰り返して実施することができ、前記イメージングは前記治療前及び前記治療後に実施され、任意には前記治療中にも実施される。特に興味深いのは、癌療法の効力の早期モニタリングにより、状態が末期になる前に悪性増殖を確実に制御することである。
【0085】
この態様には、インビボでの哺乳動物体のc−Met過剰発現又は局在部位の診断方法であって、第6の態様のイメージング方法を含んでなる方法も包含される。
【0086】
第7の態様では、本発明は、ヒト又は動物の身体の診断方法における、第1の態様のイメージング剤、第4の態様の放射性医薬組成物又は第5の態様のキットの使用を提供する。
【0087】
第7の態様におけるイメージング剤又は組成物の好ましい態様は、本発明のそれぞれ第1及び第4の態様(上記)に記載した通りである。第7の態様の診断方法は、第6の態様のイメージング方法及びその好ましい態様を含んでいる。
【実施例】
【0088】
下記に詳述する非限定的な実施例によって本発明を例示する。実施例1は、両方の末端に代謝阻害基(Z1=Z2=MIG)を有する本発明のcMBPペプチド(ペプチド1)の合成を示している。実施例2〜4は、本発明の二官能性アミン官能化キレーター(キレーター1)の合成を示している。実施例5は、本発明の二官能性活性エステル官能化キレーター(キレーター1A)の合成を示している。実施例6は、本発明のペプチド(ペプチド1)とキレーター1とのキレーターコンジュゲート(「化合物1」)の合成を示している。実施例7は本発明の99mTc錯体(99mTc−化合物1)の製造を示し、錯体形成が室温において高い放射化学収率で効率よく進行することを証明している。実施例8は99mTc−化合物1の体内分布を示し、テクネチウム錯体が良好な腫瘍:バックグラウンド比と共に有用な腫瘍取込みを示すことを証明している。
【0089】
略語
通常の一文字又は三文字アミノ酸略語が使用される。
%id: パーセント注射量
Ac: アセチル
Acm: アセトアミドメチル
ACN: アセトニトリル
Boc: tert−ブチルオキシカルボニル
tBu: tert−ブチル
DCM: ジクロロメタン
DIPEA: N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF: ジメチルホルムアミド
DMSO: ジメチルスルホキシド
EDC: N−3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド
Fmoc: 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HATU: O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’
−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU: O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチ
ルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
HSPyU: O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチレン
ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
NHS: N−ヒドロキシ−スクシンイミド
NMM: N−メチルモルホリン
NMP: 1−メチル−2−ピロリジノン
Pbf: 2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホ
ニル
PBS: リン酸緩衝食塩水
PyBOP: ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘ
キサフルオロホスフェート
s.c.: 皮下に
tBu: tert−ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
THF: テトラヒドロフラン
TIS: トリイソプロピルシラン
Trt: トリチル
【0090】
【表1】
【実施例1】
【0091】
実施例1:ペプチド1の合成
段階(a):保護前駆体線状ペプチドの合成
前駆体線状ペプチドは次の構造を有している。
Ac−Ala−Gly−Ser−Cys−Tyr−Cys(Acm)−Ser−Gly−Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cys(Acm)−Trp−Cys−Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2
【0092】
0.1mmolのRink Amide Novagel樹脂から出発するFmoc化学を用いて、Applied Biosystems 433Aペプチド合成装置上でペプチジル樹脂H−Ala−Gly−Ser(tBu)−Cys(Trt)−Tyr(tBu)−Cys(Acm)−Ser(tBu)−Gly−Pro−Pro−Arg(Pbf)−Phe−Glu(OtBu)−Cys(Acm)−Trp(Boc)−Cys(Trt)−Tyr(tBu)−Glu(OtBu)−Thr(ψMe,Mepro)−Glu(OtBu)−Gly−Thr(tBu)−Gly−Gly−Gly−Lys(Boc)−ポリマーをアセンブルした。カップリング段階では、(HBTUを用いて)予備活性化した過剰量の1mmolアミノ酸を適用した。Glu−Thrプソイドプロリン(Novabiochem 05−20−1122)を配列中に組み込んだ。樹脂を窒素バブラー装置に移し、無水酢酸(1mmol)及びNMM(1mmol)をDCM(5mL)に溶解した溶液で60分間処理した。
【0093】
2.5%のTIS、2.5%の4−チオクレゾール及び2.5%の水を含むTFA(10mL)中で、側鎖保護基の同時除去及び樹脂からのペプチド切断を2時間30分にわたって実施した。樹脂を濾過によって取り除き、TFAを真空中で除去し、残留物にジエチルエーテルを添加した。生じた沈殿をジエチルエーテルで洗浄し、風乾することで、264mgの粗ペプチドを得た。
【0094】
粗ペプチドを分取HPLC(勾配:40分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:30分)によって精製することで、純粋なペプチド1の線状前駆体100mgを得た。純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:6.54分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて生成物の特性決定を実施した(MH22+計算値:1464.6、MH22+実測値:1465.1)。
【0095】
段階(b):単環式Cys4−16ジスルフィド橋の形成
Cys4−16;Ac−Ala−Gly−Ser−Cys−Tyr−Cys(Acm)−Ser−Gly−Pro−Pro−Arg−Phe−Glu−Cys(Acm)−Trp−Cys−Tyr−Glu−Thr−Glu−Gly−Thr−Gly−Gly−Gly−Lys−NH2
【0096】
段階(a)からの線状前駆体(100mg)を5%DMSO/水(200mL)に溶解し、アンモニアを用いて溶液をpH6に調整した。反応混合物を5日間撹拌した。次いで、TFAを用いて溶液をpH2に調整し、大部分の溶媒を真空中での蒸発によって除去した。生成物の精製のため、残留物(40mL)を分取HPLCカラム上に少しずつ注入した。
【0097】
残留物を分取HPLC(勾配:0%Bを10分間、次いで40分で0〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:44分)によって精製することで、純粋なペプチド1の単環式前駆体72mgを得た。(異性体P1乃至P3の混合物としての)純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:5.37分(P1)、5.61分(P2)、6.05分(P3))によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて生成物の特性決定を実施した(MH22+計算値:1463.6、MH22+実測値:1464.1(P1)、1464.4(P2)、1464.3(P3))。
【0098】
段階(c):第2のCys6−14ジスルフィド橋の形成(ペプチド1)
段階(b)からの単環式前駆体(72mg)を窒素ブランケット下で75%AcOH/水(72mL)に溶解した。1M HCl(7.2mL)及びAcOH中の0.05M I2(4.8mL)をその順序で添加し、混合物を45分間撹拌した。1Mアスコルビン酸(1mL)を添加して無色の混合物を得た。大部分の溶媒を真空中で蒸発させ、残留物(18mL)を水/0.1%TFA(4mL)で希釈し、分取HPLCを用いて生成物を精製した。残留物を分取HPLC(勾配:0%Bを10分間、次いで40分で20〜30%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:43〜53分)によって精製することで、52mgの純粋なペプチド1を得た。純生成物を分析HPLC(勾配:10分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:6.54分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて生成物の特性決定を実施した(MH22+計算値:1391.5、MH22+実測値:1392.5)。
【実施例2】
【0099】
実施例2:1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの合成
段階1(a):3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル
トルエン(600ml)中のカルボメトキシメチレントリフェニルホスホラン(167g、0.5mol)を3−オキソグルタル酸ジメチル(87g、0.5mol)で処理し、反応物を窒素雰囲気下において120℃の油浴上で100℃に36時間加熱した。次いで、反応物を真空中で濃縮し、油状残留物を40/60石油エーテル/ジエチルエーテル(1:1、600ml)でトリチュレートした。トリフェニルホスフィンオキシドを沈殿させ、上澄み液をデカント/濾過して除去した。真空中で蒸発させた後の残留物を高真空Bpt(0.2トルでオーブン温度180〜200℃)下でクーゲルロール蒸留することで、3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89.08g、53%)を得た。
NMR 1H(CDCl3):δ 3.31(2H,s,CH2),3.7(9H,s,3xOCH3),3.87(2H,s,CH2),5.79(1H,s,=CH,)ppm。
NMR 13C(CDCl3),δ 36.56,CH3,48.7,2xCH3,52.09及び52.5(2xCH2);122.3及び146.16 C=CH;165.9,170.0及び170.5 3xCOO ppm。
【0100】
段階1(b):3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステルの水素化
メタノール(200ml)中の3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89g、267mmol)を、水素ガス雰囲気(3.5バール)下で(木炭上10%パラジウム:50%水)(9g)と共に30時間振盪した。溶液をケイソウ土で濾過し、真空中で濃縮することで、3−(メトキシカルボニルメチル)グルタル酸ジメチルエステルを油状物として得た。収量(84.9g、94%)。
NMR 1H(CDCl3),δ 2.48(6H,d,J=8Hz,3xCH2),2.78(1H,六重線,J=8Hz CH),3.7(9H,s,3xCH3)。
NMR 13C(CDCl3),δ 28.6,CH;37.50,3xCH3;51.6,3xCH2;172.28,3xCOO。
【0101】
段階1(c):トリメチルエステルからトリアセテートへの還元及びエステル化
窒素雰囲気下で三ツ口の2L丸底フラスコ内において、THF(400ml)中の水素化リチウムアルミニウム(20g、588mmol)を、THF(200ml)中のトリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタン(40g、212mmol)で1時間かけて注意深く処理した。激しい発熱反応が起こり、溶媒を激しく還流させた。反応物を90℃の油浴上で3日間加熱還流した。水素の発生が止まるまで酢酸(100ml)を注意深く滴下することで反応物を脱活した。撹拌した反応混合物を、穏やかな還流が生じる程度の速度で無水酢酸溶液(500ml)で注意深く処理した。フラスコに蒸留装置を取り付け、撹拌し、次いで90℃(油浴温度)で加熱してTHFを留去した。追加の無水酢酸(300ml)を添加し、反応物を還流配置に戻し、140℃の油浴中で5時間撹拌加熱した。反応物を放冷し、濾過した。酸化アルミニウムの沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、合わせた濾液を真空(5mmHg)中50℃の水浴温度でロータリーエバポレーター上で濃縮して油状物を得た。油状物を酢酸エチル(500ml)に溶解し、飽和炭酸カリウム水溶液で洗浄した。酢酸エチル溶液を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮して油状物を得た。油状物を高真空下でクーゲルロール蒸留することで、トリス(2−アセトキシエチル)メタン(45.3g、95.9%)を油状物として得た。0.1mmHgで沸点220℃。
NMR 1H(CDCl3),δ 1.66(7H,m,3xCH2,CH),2.08(1H,s,3xCH3);4.1(6H,t,3xCH2O)。
NMR 13C(CDCl3),δ 20.9,CH3;29.34,CH;32.17,CH2;62.15,CH2O;171,CO。
【0102】
段階1(d):トリアセテートからのアセテート基の除去
メタノール(200ml)中のトリス(2−アセトキシエチル)メタン(45.3g、165mM)及び880アンモニア(100ml)を80℃の油浴上2日間で加熱した。反応物を追加の880アンモニア(50ml)で処理し、油浴中80℃で24時間加熱した。追加の880アンモニア(50ml)を添加し、反応物を80℃で24時間加熱した。次いで、反応物を真空中で濃縮し、すべての溶媒を除去して油状物を得た。これを880アンモニア(150ml)に溶解し、80℃で24時間加熱した。次いで、反応物を真空中で濃縮し、すべての溶媒を除去して油状物を得た。クーゲルロール蒸留によってアセトアミド(沸点170〜180 0.2mm)を得た。アセトアミドを含むバルブをきれいに洗浄し、蒸留を続行した。トリス(2−ヒドロキシエチル)メタン(22.53g、92%)が沸点220℃ 0.2mmで留出した。
NMR 1H(CDCl3),δ 1.45(6H,q,3xCH2),2.2(1H,五重線,CH);3.7(6H,t,3xCH2OH);5.5(3H,brs,3xOH)。
NMR 13C(CDCl3),δ 22.13,CH;33.95,3xCH2;57.8,3xCH2OH。
【0103】
段階1(e):トリオールからトリス(メタンスルホネート)への転化
ジクロロメタン(50ml)中のトリス(2−ヒドロキシエチル)メタン(10g、0.0676mol)の撹拌氷冷溶液に、ジクロロメタン(50ml)中の塩化メタンスルホニル(40g、0.349mol)の溶液を温度が15℃を超えないような速度で窒素下でゆっくり滴下した。次いで、ジクロロメタン(50ml)に溶解したピリジン(21.4g、0.27mol、4当量)を発熱反応で温度が15℃を超えないような速度で滴下した。反応物を室温で24時間撹拌し続け、次いで5N塩酸溶液(80ml)で処理し、層を分離した。水性層を追加のジクロロメタン(50ml)で抽出し、有機抽出液を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮することで、過剰の塩化メタンスルホニルで汚染されたトリス[2−(メチルスルホニルオキシ)エチル]メタンを得た。理論収量は25.8gであった。
NMR 1H(CDCl3),δ 4.3(6H,t,2xCH2),3.0(9H,s,3xCH3),2(1H,六重線,CH),1.85(6H,q,3xCH2)。
【0104】
段階1(f):1,1,1−トリス(2−アジドエチル)メタンの製造
窒素下にある乾燥DMF(250ml)中の[段階1(e)からの、過剰の塩化メチルスルホニルで汚染された]トリス[2−(メチルスルホニルオキシ)エチル]メタン(25.8g、67mmol、理論量)の撹拌溶液を、アジ化ナトリウム(30.7g、0.47モル)で少量ずつ15分かけて処理した。発熱が観察され、反応物を氷浴上で冷却した。30分後、反応混合物を50℃の油浴上で24時間加熱した。反応物は褐色になった。反応物を放冷し、希炭酸カリウム溶液(200ml)で処理し、40/60石油エーテル/ジエチルエーテル10:1(3×150ml)で3回抽出した。有機抽出液を水(2×150ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。石油/エーテル溶液にエタノール(200ml)を添加してトリアジドを溶液状態に保ち、真空中で200mlを下回らないように体積を減少させた。エタノール(200ml)を添加し、真空中で再濃縮して最後の痕跡量の石油を除去することで、200mlを下回らない量のエタノール溶液を得た。トリアジドのエタノール溶液を段階1(g)で直接使用した。
【0105】
注意:アジドは潜在的に爆発性であるので、すべての溶媒を除去してはならず、常に希薄溶液状態に保つべきである。
【0106】
0.2ml未満の溶液を真空中で蒸発させてエタノールを除去し、この小試料に関してNMRを実施した。NMR 1H(CDCl3),δ 3.35(6H,t,3xCH2),1.8(1H,七重線,CH),1.6(6H,q,3xCH2)。
【0107】
段階1(g):1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの製造
エタノール(200ml)中のトリス(2−アジドエチル)メタン(15.06g、0.0676mol)(前反応からの100%収率を仮定)を木炭上10%パラジウム(2g、50%水)で処理し、12時間水素化した。反応器を2時間ごとに排気して反応から生じる窒素を除去し、水素を再充填した。NMR分析のために試料を採取し、トリアジドからトリアミンへの完全な転化を確認した。
【0108】
警告:未還元のアジドは蒸留で爆発することがある。反応物をセライトパッドで濾過して触媒を除去し、真空中で濃縮することで、トリス(2−アミノエチル)メタンを油状物として得た。これをクーゲルロール蒸留(0.4mm/Hgで沸点180〜200℃)によってさらに精製して無色の油状物(8.1g、トリオールからの総合収率82.7%)を得た。
NMR 1H(CDCl3),δ 2.72(6H,t,3xCH2N),1.41(H,七重線,CH),1.39(6H,q,3xCH2)。
NMR 13C(CDCl3),δ 39.8(CH2NH2),38.2(CH2.),31.0(CH)。
【実施例3】
【0109】
実施例3:3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンの製造
2−メチルブト−2−エン(147ml、1.4mol)と亜硝酸イソアミル(156ml、1.16mol)との混合物を、ドライアイス及びメタノールの浴中で−30℃に冷却し、オーバヘッド空気撹拌機で激しく撹拌し、温度を−20℃未満に維持するような速度で濃塩酸(140ml、1.68mol)を滴下して処理した。かなりの発熱があり、過熱を防ぐために注意を払う必要があるので、これには約1時間を要する。エタノール(100ml)を添加して、添加終了時に形成されるスラリーの粘度を低下させ、反応物を−20〜−10℃でさらに2時間撹拌して反応を完了させた。沈殿物を真空下での濾過によって回収し、4×30mlの冷(−20℃)エタノール及び100mlの氷冷水で洗浄し、真空中で乾燥することで、3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンを白色の固体として得た。エタノール濾液及び洗液を合わせ、水(200ml)で希釈し、冷却し、−10℃で1時間放置したところ、3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンの追加クロップが晶出した。沈殿物を濾過によって回収し、最小量の水で洗浄し、真空中で乾燥することで、総収量(115g 0.85mol、73%)の3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン(NMRによる純度>98%)を得た。
NMR 1H(CDCl3),異性体の混合物として(異性体1,90%)1.5 d,(2H,CH3),1.65 d,(4H,2xCH3),5.85,q,及び5.95,q,共に1H。(異性体2,10%),1.76 s,(6H,2xCH3),2.07(3H,CH3)。
【実施例4】
【0110】
実施例4:ビス[N−(1,1−ジメチル−2−N−ヒドロキシイミンプロピル)2−アミノエチル]−(2−アミノエチル)メタン(キレーター1)の合成
乾燥エタノール(30ml)中のトリス(2−アミノエチル)メタン(4.047g、27.9mmol)の溶液に、無水炭酸カリウム(7.7g、55.8mmol、2当量)を窒素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で添加した。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン(7.56g、55.8mol、2当量)の溶液を乾燥エタノール(100ml)に溶解し、この溶液75mlを反応混合物にゆっくり滴下した。シリカ上でのTLC[プレートをジクロロメタン、メタノール、濃(0.88sg)アンモニア(100/30/5)で展開し、ニンヒドリンを噴霧して加熱することでTLCプレートを発色させた]によって反応を追跡した。モノ−、ジ−及びトリ−アルキル化生成物がその順序で増加するRFで認められた。3%アンモニア水中の7.5〜75%アセトニトリル勾配でRPR逆相カラムを使用して分析HPLCを実施した。反応物を真空中で濃縮してエタノールを除去し、水(110ml)中に再懸濁した。水性スラリーをエーテル(100ml)で抽出して一部のトリアルキル化化合物及び親油性不純物を除去し、水層中にモノ及び所望のジアルキル化生成物を残存させた。良好なクロマトグラフィーを保証するため、水溶液を酢酸アンモニウム(2当量、4.3g、55.8mmol)で緩衝した。水溶液を4℃で一晩貯蔵した後、自動分取HPLCによって精製した。
収量(2.2g、6.4mmol、23%)。
質量分析:正イオン10Vコーン電圧10V、実測値:344、計算値M+H=344。
NMR 1H(CDCl3),δ 1.24(6H,s,2xCH3),1.3(6H,s,2xCH3),1.25−1.75(7H,m,3xCH2,CH),(3H,s,2xCH2),2.58(4H,m,CH2N),2.88(2H,t CH22),5.0(6H,s,NH2,2xNH,2xOH)。
NMR 1H((CD32SO)δ 1.1 4xCH;1.29,3xCH2;2.1(4H,t,2xCH2);
NMR 13C((CD32SO),δ 9.0(4xCH3),25.8(2xCH3),31.0 2xCH2,34.6 CH2,56.8 2xCH2N;160.3,C=N。
【0111】
【表2】
各ランについて3mlの水溶液を装填し、12.5〜13.5分の時間窓内で収集する。
【実施例5】
【0112】
実施例5:キレーター1−グルタル酸のテトラフルオロチオフェニルエステル(キレーター1A)の合成
a)[キレーター1]−グルタル酸中間体の合成
【0113】
【化8】
キレーター1(100mg、0.29mmol)をDMF(10ml)に溶解し、無水グルタル酸(33mg、0.29mmol)を撹拌しながら少量ずつ添加した。反応物を23時間撹拌することで、所望生成物への完全な添加を達成した。RP−HPLCの後、純粋な酸が良好な収率で得られた。
【0114】
b)キレーター1Aの合成
【0115】
【化9】
DMF(2ml)中の[キレーター1]−グルタル酸(段階aから、300mg、0.66mmol)に、HATU(249mg、0.66mmol)及びNMM(132μL、1.32mmol)を添加した。混合物を5分間撹拌し、次いでテトラフルオロチオフェノール(0.66mmol、119mg)を添加した。溶液を10分間撹拌し、次いで反応混合物を20%アセトニトリル/水(8ml)で希釈し、生成物をRP−HPLCによって精製することで、凍結乾燥後に110mgの所望生成物を得た。
【実施例6】
【0116】
実施例6:ペプチド1とキレーター1とのコンジュゲート(化合物1)の合成
キレーター1A(3.8mg、実施例5)、ペプチド1(3.4mg)及びsym−コリジン(1.6μL)をDMF(1mL)に溶解し、溶液を90分間撹拌した。反応混合物を水(6mL)で希釈し、分取HPLCを用いて生成物を精製した。
【0117】
粗生成物を分取HPLC(40分で10〜20%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2) 250×21.20mm、検出:UV214nm)によって精製することで、1.1mg(28%)の純粋な化合物1を得た。精製物質を分析HPLC(勾配:5分で10〜40%B(ただし、A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFA)、流量:0.6mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2) 20×2mm、検出:UV214nm、tR:3.04分)によって分析した。さらに、エレクトロスプレー質量分析法を用いて生成物の特性決定を実施した(実測m/z:1611.2、予測MH22+:1611.2)。
【実施例7】
【0118】
実施例7:化合物1の99mTc放射性標識
段階(i):凍結乾燥バイアル
化合物1(45nmol)を第1のバイアル(バイアル1)中で凍結乾燥した。下記の処方物を含む凍結乾燥キット(バイアル2)を別途に製造した。
【0119】
【表3】
段階(ii):放射性標識
バイアル1を水:エタノール溶液(50:50混合物の0.1mL)で再構成し、バイアルを10分間超音波処理又は混合した。次いで、得られた化合物1の溶液(0.1mL)をバイアル2に添加した。次いで、Drytec(商標)ジェネレーターからの99mTc−過テクネチウム酸イオン溶出液(GE Healthcare社、0.9ml、0.25〜2.18GBq)をバイアルに添加し、溶液を室温で20分間放置した後、HPLC分析に付した。RCPは93〜94%であった。
【実施例8】
【0120】
実施例8:腫瘍担持ヌードマウスにおける99mTc−化合物1の体内分布
CD−1雄ヌードマウス(約20g)を個別換気ケージに収容し、飼料及び水に随意にアクセスさせた。10%ウシ胎児血清及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したMcCoy’s 5a培地(Sigma #M8403)中でHT−29細胞(ATCC,Cat.no.HTB−38)を増殖させた。0.25%トリプシンを用いて70〜80%コンフルエントで細胞を週2回1:3に分割し、5%CO2中37℃でインキュベートした。軽いガス麻酔(イソフルラン)下で、ファインボア注射針(25G)を用いて100μlの量のHT−29細胞懸濁液をマウスの1つの部位(うなじ)に皮下注射した。公称投与量は注射1回当たり106個の細胞であった。次いで、腫瘍を20日間増殖させ、或いは(試験に含めるためには)体積が少なくとも200mm3に達するまで増殖させた。
【0121】
20日の増殖期間後、99mTc−化合物1(0.1ml、1〜5MBq/動物)を静脈内ボーラスとして尾静脈経由で動物に注射した。注射後の様々な時点で動物を安楽死させ、解剖し、下記の器官及び組織を取り出した。注射から120分後の結果は次の通りであった。
【0122】
【表4】
注射から120分後において体内に保持された放射能の44%は、腫瘍中に存在していた。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]