(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
注型成形工程におけるSMP材料の重合化工程の間に生じ得る体積収縮に対して、成形品を持続性眼内装置形状の所望する最終サイズの0.1〜20%大きめにすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
SMP材料がtert−ブチルアクリレートモノマー、イソブチルアクリレートモノマー、ブチルアクリレートモノマー、および分子量が実質的に500〜2000であるポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートおよび/またはポリ(エチレングリコール)ジアクリレート架橋ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
人の眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部を通して光を透過し、網膜上の水晶体により画像に焦点を合わせることによって視覚を与える機能を有する。焦点画像の質は多くの要因、例えば眼の大きさや形、角膜および水晶体の透明度などに依存する。
【0004】
老化や病気により水晶体の透明度が低下すると、網膜を透過できる光が減少するため視力が低下する。眼の水晶体におけるこの欠陥は、白内障として医学的に知られている。この疾患に対して一般に認められている治療は、水晶体の外科的除去および人口眼内レンズ(IOL)による水晶体機能の代替である。
【0005】
白内障除去のための嚢外または嚢内手術の後、眼内レンズが水晶体の代替として用いられる。アメリカ合衆国において、大多数の白内障水晶体は水晶体超音波乳化吸引と呼ばれる手術法により除去される。この手術では、水晶体前嚢に切れ目を入れ、罹患水晶体に薄い水晶体超音波乳化吸引切断チップを挿入し、超音波により振動させる。振動した切断チップは水晶体を液化または乳化し、これにより水晶体は眼の外に吸引される。罹患水晶体を除去した後、人工水晶体と交換する。
【0006】
眼内レンズは、通常、前眼房(すなわち、虹彩と角膜の間)に配置するものと後眼房(すなわち、虹彩の背後)に配置するものの2種類ある。どちらのタイプのレンズも、1つには患者の要求により、また1つにはレンズを挿入する医者の意向により決定する前房レンズおよび後房レンズ間の選択により一般的に採用される。虹彩外縁に固定される虹彩支持型レンズとして知られる第3の種類のレンズは、その視覚部が前眼房または後眼房のいずれかにある点で上記2種類のいずれかであると考えることができる。
【0007】
眼内レンズは、通常、オプティック(optic)から放射状に広がり、前房レンズに対して強膜棘および後房レンズに対して毛様溝若しくは水晶体嚢内のいずれかに位置する末梢部を含む少なくとも1つ、好ましくは2つ以上のハプティック(haptic)を備えるオプティックから構成される。このオプティックは、通常、円形の透明光学レンズを含む。多くのレンズにおけるハプティックは、レンズに取り付けられた近接端部と支持末端を形成するためにレンズの外縁から離れて放射状に広がる遠位端を有する軟性繊維若しくはフィラメントである。例えば、各ループの両末端がレンズに接続された一対のC型ループ、および例えばループの片側の末端のみがレンズに固定されているJ型ループなどのいくつかのハプティック構造が現在使用されている。
【0008】
ハプティックは、通常、放射状に弾性であり、レンズの外縁から外見上広がり、穏やかにしかし弾性的に虹彩に隣接した若しくは水晶体嚢内の適切な目周辺構造に連動する。この弾性力は、ハプティックの材料の通常の弾性特性に起因する。このため、圧縮されて解放された場合にすぐに制御不能に跳ね返るであろうハプティックを生じる。移植の間、ハプティックを抑圧しなければならないため、この特性は移植工程およびレンズの最終的な位置決めを困難にする。また、配置された際、従来のハプティック材料の柔軟性は、レンズ背後からの硝子体圧力により押されることによる、または、隣接する眼組織からの圧力に起因する移動による偏心の影響をレンズに及ぼす。さらに、ハプティック解放の弾性収縮力により生じる力は、繊細な局部組織に損傷を与えるかもしれない。
【0009】
後房レンズの最適な配置は水晶体嚢内である。これを成し遂げることは外科医にとって非常に困難である。後房レンズを用いる場合、非常に小さな瞳孔開口を通して配置しなければならず、最終的なハプティック位置は虹彩の後に隠れて外科医には見えない。したがって、移植の間は後房レンズの全体寸法をできる限り小さく維持し、外科医の意図する場所(通常、水晶体嚢)に最終的に配置した際にこれが広がることが非常に望ましい。小さな装置は眼の中でより操作しやすく、ハプティックが角膜内皮組織と接触する可能性を減らし、外科医がしばしば5〜8mmの直径の瞳孔を通って14mmの全体寸法を有するレンズの挿入をしなければならない場合に、レンズの挿入を容易にすることができる。より小さなレンズも、レンズ/虹彩接触を低減し、眼内レンズとそのハプティックが水晶体嚢内に存在することをより保証することができる。
【0010】
近年、比較的柔らかな体部を有するハプティックを備えるまたは備えない眼内レンズが提供されており、一般的にその体部はレンズの移植中小さな開口部への挿入のためにその直径に沿って折りたたむことができる。挿入前にレンズ本体を折りたたむことができ、その後適切な位置に充填することのできる、鞘中に閉じ込められた液体若しくはヒドロゲルから形成されるレンズが考案されている。残念ながら、これらのレンズ本体に使用されている軟性材料は、元の形に戻るために場合により必要とされる回復力を欠いている。
【0011】
また、これらの種類のレンズは、典型的には機械的拘束を解除する際に弾性材料を曲げることにより蓄積された機械的エネルギーが放出される弾性解放機序、または、レンズが一般的に浸透拡散工程により水を吸収する水和としても知られる水揚げのいずれかを利用することにより配置される。いずれの方法も制御することは難しい。前者の場合、弾性収縮力が局所組織に損傷を与え、または、レンズを中心から移動させるかもしれない。後者の場合、膨張したレンズが周辺組織と接触した場合にレンズの最終的な形態が歪むかもしれない。さらに、水和物質は弱い形態回復力しか有していないことが知られている。
【0012】
天然レンズにおいては、遠視力と近視力の遠近両性が調整として知られるメカニズムによりもたらされる。年少期、天然レンズは柔らかく、水晶体嚢内に含まれている。水晶体嚢は毛様筋から小帯によりぶら下がっている。毛様筋の弛緩は小帯を緊張させ、水晶体嚢を伸ばす。その結果、天然レンズは平らになりやすい。毛様筋の緊張は小帯の伸張を弛緩させ、水晶体嚢および天然レンズをより丸みを帯びた形にすることができる。このようにして、天然レンズは近い物体および遠い物体に交互に焦点を合わせることができる。レンズが老化すると、レンズも硬くなり、毛様筋の緊張に反応して変形しにくくなる。これにより、近い物体にレンズの焦点を合わせることが困難になる(老眼として知られる医学的症状)。老眼は、45〜50歳を超えるほとんど全ての成人で発症する。
【0013】
典型的に、天然レンズの白内障または他の病気を除去し、人工IOLに置換する必要がある場合、患者が近視用のメガネ若しくはコンタクトレンズを使用する必要のあるIOLは単焦点レンズである。いくつかの二焦点IOLも作られているが、広くは受け入れられていない。いくつかのIOL構造は、毛様筋の動きに対してオプティックを前方および後方へ移動させることのできる軟性ハプティックを有する単一水晶体である。しかしながら、これらの単一レンズ系におけるオプティックの移動量は、有用な調整範囲としては不十分であろう。また、レンズと水晶体嚢の強固な結合をもたらす水晶体線維症をレンズに導くため、1〜2週間、目に投薬して眼の動きを減じなければならない。さらに、これらのレンズの商業用モデルはヒドロゲルまたはシリコーン材料から作られている。このような材料は、後嚢混濁(「PCO」)の形成に耐性がない。PCOの治療は、後嚢の一部を気化させるNd:YAGレーザーを用いた嚢切開である。このような後嚢の破壊は、これらのレンズの調製メカニズムを破壊し得る。
【0014】
公知の調節性レンズも低い調整能に加え焦点の伸張深度を欠いている。このような公知のレンズは、適切な機能のために水晶体嚢サイズの範囲にわたってサイジングされた正確なレンズを必要とし、長期の水晶体嚢の固定および安定性を欠いている。また、現在のレンズ置換手術はより小さな切開サイズへと移行しているため、一般的にIOLはそのような小さな切開を通して送達できる必要がある。
【0015】
二重光学レンズは、毛様体/小帯複合体の能力を利用して水晶体嚢の形を変える。これによりレンズ内の距離を変えることができ、これにより屈折障害を変えることができる。これらの二重光学レンズは、視覚系を作り出すための光学ハードウェアに伴って大きくなり得、目に挿入するためにより大きな角膜切開を必要とする。
【0016】
角膜内レンズは屈折障害または老眼を治療できるように考案されている。角膜内レンズは角膜インプラントとレンズを含み、刃物若しくはレーザーにより角膜内に開けられた小さな切開から挿入される。角膜の切開により形成されたくぼみはインプラントを配置し、角膜の形を変えるために用いられる。レンズ移植の場合、くぼみは屈折レンズを光学的に効果的な位置に配置するために用いられる。いくつかのレンズは、老眼を治療するためのピンホールタイプ効果を生じる。現存の角膜内レンズはより小さな切開サイズへと移行しており、一般的に装置はそのような小さな切開から送達できる必要がある。フェムト秒レーザーなどのレーザー技術は、このようなより小さい角膜創傷や移植のためのくぼみを作り出す能力を高める。
【0017】
有水晶体眼内レンズは、山形構造により支持された前房、または虹彩のすぐ後方およびもともとの水晶体の前の後溝のいずれかに移植される。レンズは、縁の最小の挿入傷から移植され、前房にまたは前房を通って挿入される。このレンズは屈折障害の治療に用いられ、レンズおよび/または山形構造に対する外傷を生じる危険性を有する。小さな切開はレンズを折りたたみ、その後眼の中でレンズが展開することを要し、眼内構造に損傷を与える危険性を高める。
【0018】
本明細書の背景技術に含まれる情報(ここで引用される参照およびその記載または考察を含む)は、技術的参照目的のためだけに含まれ、特許請求の範囲で規定される本発明の範囲を拘束する主題とみなされるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
公知のアクリルレンズ材料は、所望する機能を達成するために大きく変形させることができない。アクリルIOLを折りたたむまたは圧延する様々な方法論が知られているが、これらの方法は、単に移植のために要求される切開サイズの最小化のために展開される形状の形状因子を減らす必要性に取り組むのみである。これらのレンズにより変位する実際の体積は一定のままであるため、このようなIOLにより達成し得る最小サイズには制限がある。さらに、これらのIOLを折りたたむまたは圧延する能力は、折り畳みと所望の形状への回復の応力により生じる歪みに対抗し、移植後に必要な光学的品質をもたらす材料の能力により制限される。さらに、移植された後レンズの展開により生じる速度と力はほとんど制御されず、IOLのハプティックに関与する組織の外傷を引き起こす場合が多い。
【0028】
一方、本発明で開示するSMPIOLは実際により変形しやすく(場合により、65%以上の圧縮および250%以上の引っ張り歪み)、このため、このような装置により変位する体積を実際に移植のために小さくすることができる。小さな切開サイズ (2mm下および1.8mm下でさえある)による移植が可能になり、これにより人の眼に対する外傷を軽減することができる。SMPIOLを使用することによりいくつかの他の恩恵も達成し得る。多くの調製物の屈折率(n
0=1.464)が比較的高く(人の水晶体組織の屈折率よりも高い)、これによりレンズの厚みを薄くすることにより送達形状のサイズを小さくすることが可能であることは注目に値する。SMPIOLの屈折率は、SMP材料の調製物によりさらに修正することができる。移植場所における外傷を軽減し、適切な位置でのIOLの操作および配置のための十分な時間を外科医にもたらすために、SMP材料の調製物は形状回復工程が遅くまたは遅延するよう調節することができる。いくつかのSMP調製物により、移植後の修正(例えば、オプティックの曲率または屈折率を変更すること)が可能となる。これは移植後のレーザー若しくは超音波によるSMPIOLまたはその一部の非侵入型加熱の適用により実現できる。このような加熱は、第2若しくは第3の形態変化を活性化できるよう材料の異なる架橋割合%を有する(それによりこれらの領域ではTgが異なる)SMPIOLの特定の部位に適用することができ、屈折率、オプティックの曲率若しくはハプティックの拡張に変化をもたらすために使用し得る。例えば、ハプティック−オプティック接合部の構造は、接合部を加熱することによりオプティックの湾曲構造を修正できるよう変化させることができる。調整を助けるために、このような第2若しくは第3の形態変化を水晶体嚢、硝子体、小帯および周辺組織との相互作用を促進するのに使用してもよい。また、二重オプティック調節性眼内レンズシステムにおける2つのオプティックの基本的な位置決めは移植の後でさえ変更することができる。
【0029】
さらに、いくつかのSMPIOL調製物に、インビボで移植された後SMPIOLから溶出し、移植時に傷ついた眼組織の治癒過程を補助し、または別の眼疾患を治療するための治療薬を運ぶことのできる種々の薬剤を含浸させることもできる。この薬剤または活性成分(例えば、生物剤)は、重合工程の一部として、膨張剤(例えば、化学的または物理的ヒドロゲルポリマー構造)内に、または最終的なSMPIOL装置の生物分解性薬剤溶出ポリマー部分として、SMPIOLに組み込まれてもよい。SMPIOLに組み込まれ得る典型的な薬剤としては、構成物質、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、生物剤(例えば、抗VEGF剤、siRNAなど)および緑内障の治療薬(すなわち、眼圧を低下させるための薬剤であって、限定するものではないが、プロスタグランジン、副交感神経/交感神経系薬剤、α−アゴニスト、β−遮断剤、炭酸脱水酵素阻害薬、Rhoキナーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、エンドセリンアゴニストおよびアンタゴニストなどが挙げられる)などが挙げられる。SMPIOLに結合し得る他の薬剤には、ウィルスベクターおよび細胞系治療薬が含まれる。
【0030】
<形状記憶ポリマー材料>
SMP材料は、形状を変化させ、または、そうでなければ外部刺激に応じて機械力により活性化する重要な能力を有する。この刺激は、光、熱、化学物質または他の種類のエネルギーや刺激であり得る。SMP材料の熱機械的応答は、形状記憶特性を予測し、最適化するために調製物を通して制御することができる。形状記憶ポリマー装置を、特定の生物医学用途および患者生理学に適合および対応することのできる高度な適応性に設計および最適化し得る。
【0031】
ポリマーの元の形状を変形させ、外部刺激に作用されるまで変形した状態で安定なままであり、その後適当な刺激にさらされることにより元の形を回復することができる場合、そのポリマーはSMPであるとみなすことができる。一実施において、刺激は熱であってよい。原形は成形、押出し、スタンピングまたは他の典型的なポリマー加工方法により設定することができる。また、円盤状、棒状または材料の他の形状は上述した方法により形成することができ、その後、材料を凍結し、その後レーザーおよび/または機械的に材料を最終的な形状に切断することを含む極低温処理(cryolathing)により最終形状に形作ることができる。一時的な形状は熱機械的変形により定められてもよい。ポリマーの元の成形形状が変形回復温度より低い温度で機械的に変化している場合であっても、変形したSMP材料を形状変形回復温度以上に加熱することにより原形に回復する。本発明の用途に使用される開示のSMP材料は、適切な調製物において加熱により原形の99%を超える精度で大きな変形を回復する能力を有している。
【0032】
熱刺激を用いる一実施において、ポリマー転移温度は体温(約37℃)で変形回復温度をもたらすよう調整されてよく、すなわち、ポリマーのガラス転移温度(Tg)は約37℃に設計される。この方法の明らかな利点は、SMP材料を自然に活性化するための人体の熱エネルギーの利用にある。いくつかの用途に関して、材料の機械的特性(例えば、剛性)はTgに強く依存している。したがって、ポリマーの対応特性に起因してTgが体温に近い場合に非常に硬い装置を設計することは困難であるであろう。医学的用途における他の考慮すべき事項は、約37℃のTgを有する形状記憶ポリマーに要求される貯蔵温度が、一般的に展開前の「低温」貯蔵を必要とする室温以下である点である。より高温の輸送または貯蔵環境においては、装置が初期成形形状に展開しないよう抑制する装置を使用することにより折り畳まれた形状を保持することができる。
【0033】
別の実施態様において、回復温度は体温より高い(すなわち、Tg>37℃)。この実施態様の利点は、貯蔵温度を、装置の容易な貯蔵を容易にし、使用前の望ましくない展開を回避することができる室温にすることができる点である。折りたたまれた形状を、装置が初期成形形状に展開しないよう抑制する装置を使用することにより保持することができる。しかしながら、展開における材料の局所的加熱がSMP材料の回復に必要となる。人体のいくつかの組織への局所的損傷は、体温より約5℃高い温度でアポトーシスやタンパク変性を含む種々のメカニズムによって引き起こされる。局所的な熱爆発を高温への暴露を最小にし、組織損傷を避けるために使用し得る。他と組み合わせる方法の使用は、標的とする体組織および、例えばインビボ機械的特性などの他の装置設計制約に依存する設計決定である。
【0034】
SMP材料または網状構造は、網目状組織の一部を含み得る、または網状構造が重合される前の網状構造の調製物に(例えば、調製物中に混合された凝集体として)含まれ得る溶解材を含んでいてよい。材料若しくは材料の一部が実際には溶媒を含む溶液に溶解しないまたは組み込めない場合であっても、溶解材は時間とともに分散する材料を含み得る。言い換えると、本発明で使用するような溶解材は、ポリマーの予測される外部環境により分解され得る任意の材料であり得る。一実施態様において、溶解材はSMP網状構造から溶出する薬剤である。溶解材はポリマー網状構造に化学的または物理的結合により付着させることができ、時間とともにポリマー網状構造と切り離され得る。
【0035】
経時的なその溶解により、溶解材を多くの目的に使用することができる。例えば、材料の溶解は時間とともに生物医学装置の分解若しくは破壊に影響を与え得る。また、材料の溶解は薬理学的目的を達成する薬剤を溶出させ得る。治療を補助するため(例えば、抗炎症剤)、合併症を防ぐため(例えば、抗血栓剤)、または潜在的感染症に対処するため(例えば抗生物質)に、薬剤若しくは薬物をSMP装置に注入することができる。薬剤を液体ポリマーに硬化前に注入により添加することができる。種々の表面改質または被覆技術(例えば、プラズマ蒸着)を用いることにより、薬剤を移植後SMP装置に加えることもできる。
【0036】
特定の実施態様において、SMPポリマーセグメントは天然であっても合成であってもよいが、合成ポリマーが好ましい。このポリマーセグメントは非生物分解性であってよい。医学的用途で使用される非生物分解性ポリマーは、天然由来アミノ酸に存在する以外の芳香族基を含まないことが好ましい。本発明のIOLで使用されるSMPは非生物分解性であってよい。いくつかの実施態様において、例えば、一時的な殺菌が望ましく、または付加的な機能を必要とする場合にはSMPIOLにおいて生物分解性ポリマーを使用することが望ましいことがある。
【0037】
ポリマーは、所望するガラス転移温度(少なくとも1つのセグメントが非晶質の場合)または融点(少なくとも1つのセグメントが結晶質の場合)に基づき、同様に使用環境を考慮して所望する用途に基づき選択される。代表的な天然ポリマーブロックまたはポリマーとしては、タンパク質、例えばゼイン、変性ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミンおよびコラーゲン、および多糖、例えばアルギン酸塩、セルロース、デキストラン、プルランおよびポリヒアルロン酸、ならびにキチン、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、特にポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)、およびポリ(3−ヒドロキシ脂肪酸)などが挙げられる。代表的な天然生物分解性ポリマーブロックまたはポリマーとしては、多糖、例えばアルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲンおよびそれらの科学的誘導体(例えばアルキル基、アルキレン基などの化学基の置換、付加、ヒドロキシル化、酸化および当業者が通常行っている他の修飾)、およびタンパク質、例えばアルブミン、ゼイン、ならびに単独または合成ポリマーとの組み合わせでのそれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0038】
代表的な合成ポリマーブロックまたはポリマーとしては、ポリホスファゼン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリ(アミノ酸)、合成ポリ(アミノ酸)、ポリアンヒドライド、ポリカルボン酸、ポリアクリレート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリオルトエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマーが挙げられる。適するポリアクリレートの例としては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコールジメタクリレート)(PEGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ブチルアクリレート、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(tert−ブチルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(イソボルニルアクリレート)およびポリ(オクタデシルアクリレート)が挙げられる。
【0039】
合成的に修飾した天然ポリマーとしては、セルロース誘導体、例えばアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロースおよびキトサンが挙げられる。適するセルロース誘導体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、およびセルロース硫酸ナトリウム塩が挙げられる。以下、これらを総称して「セルロース」という。
【0040】
代表的な合成分解性ポリマーセグメントとしては、ポリヒドロキシ酸、例えばポリラクチド、ポリグリコライドおよびそれらのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート);ポリアンヒドライド、ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ[ラクチド−コ−(e−カプロラクトン)];ポリ[グリコシド−コ−(e−カプロラクトン)];ポリカーボネート、ポリ(疑アミノ酸);ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシアルカノエート);ポリアンヒドライド;ポリオルトエステル;ならびにそれらの混合物およびコポリマーが挙げられる。不安定な結合を含むポリマー、例えばポリアンヒドライドやポリエステルは、その加水分解反応性で非常に有名である。これらのポリマーセグメントの加水分解速度は、一般的に、ポリマー骨格およびその配列構造の簡単な変更により変えることができる。
【0041】
非生物分解性の合成ポリマーセグメントの例としては、エチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフェノール、およびそれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。このポリマーは、例えば、Sigma Chemical Co.、セントルイス(ミズーリ州);Polysciences、ウォレントン(ペンシルベニア州);Aldrich Chemical Co.、ミルウォーキー(ウィスコンシン州);Fluka, ロンコンコマ(ニューヨーク);およびBioRad, リッチモンド(カルフォルニア)などの商業的供給源から入手することができる。あるいは、このポリマーは、商業的に入手し得るモノマーから一般的な技術を用いて合成することができる。
【0042】
いくつかの実施態様において、「形状記憶ポリマー用のチオール−ビニルおよびチオール−イン合成」のタイトルで2009年4月22日に出願された国際出願第PCT/US2009/041359号(ここに、参照によりこれを完全に組み込む)に開示されたチオール−ビニルおよびチオール−インポリマー化合物をIOLを形成するために使用し得る。別の実施態様において、ポリマー調製物は、最初の硬化段階の後、未反応の官能基の第2光誘起重合を行う2段階の硬化工程を経る。SMP材料を製造するための2段階硬化系は、「2段階硬化系」のタイトルで2010年11月10日に出願された米国仮出願第61/410,192号(ここに、参照によりこれを完全に組み込む)に記載されている。
【0043】
特定のSMP調製物の調整により、特定の所望の要求に適合したIOLを作ることができ、拡張性液体射出製造技術を用いて製造することができる。SMP調製物を、以下の特性を最適化するために開発した:
・98.5%より高い形状固定性;
・包括的に臨床的に望ましい速度3〜25秒を含む、0.25秒〜600秒の回復速度;
・製造工程中任意の寸法における少なくとも40%の最小装置変形、優先的には100〜200%;
・250kPa〜20,000kPaの弾性係数;
・折り畳み、圧縮および注入に関するTgの調整;
・無光沢(Glistening−free:眼内レンズ用のポリマー調製物において考え得る光学的欠陥を説明する業界用語);
・UV防御能;
・青、黄、赤および緑またはその組み合わせの着色;
・30秒〜20分の液体射出製造のサイクル時間;
・高温(例えば400℃程度の温度)成形に基づく製造に耐える能力;
・高い加圧(特に50Mpa程度の圧力)成形に基づく製造に耐える能力;
・成形に基づく製造工程における非常に狭い通路(<100ミクロンの直径)を流れる能力(すなわち、製造温度での低い粘度);および
・成形に基づく製造工程における熱硬化後、3〜15%未満の持続性形状への体積収縮。
【0044】
いくつかの典型的なSMP調製物およびその測定した特性を下記表Aに示す。一調製物において、tert−ブチルアクリレート(tBA)を、架橋剤としてポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)1000と組み合わせた。各重量%は、特定の所望する材料特性を有するSMPを設計するために変化し得る。
【0046】
最適化の一例として、回復時間は、SMP装置を展開する環境温度(Te)に対する用いたSMP材料のガラス転移温度(Tg)の関係により制御される。Tg <Teの場合は、Tg=Teの場合よりゆっくりと展開し、Tg>Teの場合は最速速度で展開する。材料のTgは、体内において広い範囲での展開速度の制御を可能にする−35℃〜114℃以下に調節することができる。IOL装置におけるTgの望ましい範囲は、10℃〜60℃、より望ましくは15℃〜45℃の範囲であり得る。1秒未満〜数分で完全に展開する装置が作り出された。
【0047】
IOLをできる限り小さな切開から送達するために、高いレベルの復元可能な歪みを達成するようSMP装置の機械的特性を開発してよい。引張時、10%の架橋系に対して最大180%の歪みを達成でき、40%の架橋系に対して最大60%の歪みを達成できる。圧縮時、上記割合の架橋により80%以上の歪みを達成できる。引張および圧縮における所望する歪みのレベルは、輸送系中のSMPIOLに適合するよう要求される変形レベルにより決定される。架橋量の低い調製物は、障害なく高いレベルに変形することができる。本発明のIOLは、所望する復元可能な歪みのレベルに関する機械的特性を達成するために5〜40%の架橋を利用する。
【0048】
SMPIOLの製造は、熱誘導若しくは光誘起またはこれら2つの方法の組み合わせにより行い得る。熱誘導には、過酸化物およびアゾ開始剤の両方が使用される。2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)を光開始剤として使用してよい。0.01〜1重量%の開始剤の量において処方は変化する。これらは、製造工程のサイクル時間を最適化し、所望の熱機械的特性を維持するために変えられる。
【0049】
調製物中に着色剤を加えることもできる。SPECTRAFLO(Ferroの商標)液体着色剤を含むSMP材料が作製されている。0.1〜2重量%含む調製物が作製され、所望の熱機械的特性を維持するにも関わらず種々の着色剤を添加することを可能にする。
【0050】
屈折率を変化させる能力も、SMP調製物への変更を通して研究されている。下記表Bは、いくつかの特定の典型的処方において使用された種々の成分の屈折率のデータを提供する。
【0052】
特定の分子量の架橋剤は表Bで測定された屈折率をもたらす一方、他の分子量は様々な調製物において使用し得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)を500〜2000の種々の分子量で良好な結果をもって使用し得る。
【0053】
下記表Cに示すSMPサンプルを作製し、屈折率を測定した。上記の架橋剤ポリマーについて20%の架橋を使用した。結果は、作製された調製物に基づき、屈折率値のわずかな変化を示す。屈折率値をより変化させるために、調製物中の架橋剤含有量の増加を利用し得る。また、屈折率の変化により大きな影響を及ぼすポリ(カーボネート)ジアクリレート、KIFDA−542ジアクリレート(King Industries, Inc.、ノーウォーク、コネティカット州より入手可能)、およびビスフェノール−Aプロポキシレートジアクリレートにより他の調製物を調製することもできる。
【0055】
SMP材料により光透過特性の変化を調べた。2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]エチルメタクリレート(BTA)を、上記表に示されるような紫外線(UV)波長阻害剤としてSMPIOLに添加した。5%UB阻害剤と1%UV阻害剤を含む2つの調製物を作製した後、UV〜可視波長透過率および動的機械測定を分析した。
図1は、下記3つの材料調製物の0〜100℃の温度範囲にわたる貯蔵弾性率およびタンデルタ(貯蔵弾性率と損失弾性率との比)を示すグラフである:
SMP106:78%のtBAと22%のPEGDMA 1000、UV阻害剤配合なし;
SMP122:0.5重量%のBTAで官能化したUV阻害剤を加えたSMP106;および
SMP123:1.0重量%のBTAで官能化したUV阻害剤を加えたSMP106。
上側の曲線は貯蔵弾性率であり、下側の曲線はタンデルタである。明らかなように、UV阻害剤としての少量のBTAの添加がSMP材料の弾性率に及ぼす影響はあるとしてもわずかであり、Tg(タンデルタ曲線のピーク)は3つの処方全てで一定である。
【0056】
図2は、
図1のSMP材料におけるBTAUV阻害剤の添加の影響を示す。明らかなように、可視波長における光透過性に対するUV阻害剤の影響は無視し得るものであるが、UVスペクトルの上限である約380nm以下で波長が急激に減衰している。
【0057】
図3は、SMP106との比較における、−20〜100℃の温度範囲にわたる2つの追加SMP調製物の貯蔵弾性率およびタンデルタを示すグラフである:
SMP119:65重量%のtBA、13重量%のブチルアクリレート、22重量%のPEGDMA 1000;および
SMP126: 50重量%のtBA、28重量%のイソブチルアクリレート、22重量%のPEGDMA 1000。
上側の曲線は貯蔵弾性率であり、下側の曲線はタンデルタである。処方における差異は、異なる環境における使用のための、および低い転移温度を有することが有用であり得る異なる用途のための異なるTgをもたらす。SMP119は約25℃のTgを有し、SMP126は約17℃のTgを有する。しかしながら、Tgに違いがあっても、SMP119とSMP126調製物の貯蔵弾性率はSMP106材料と同等である。
図4もSMP119およびSMP126の光透過特性がSMP106調製物と同等であることを示している。
【0058】
図5は、SMP106、SMP119およびSMP126について、圧縮下の材料の応力歪みデータ曲線を示すグラフである。明らかなように、SMP119およびSMP126調製物は、SMP106調製物と比較して65%の圧縮歪みのもと非常に小さな応力を示す。このことは、これらの材料がより低い温度(例えば室温)でより容易に変形することを可能にしている。
図6は、SMP106についての引張下での2つの異なる速度(すなわち、10mm/分と20mm/分)の伸びに対する別の応力歪み曲線である。グラフに示されるように、SMP106は引張下非常によく機能し、両速度において最大250%および250%以上の歪みに耐えた。
【0059】
装置の光学特性を最大限にするために、展開後の形状は高度に制御されるべきである。原形と比較した回復形状における変化の割合として定義される形状固定性がより高いほど、再現性および展開したIOLが意図したように機能する信頼性も高くなる。本発明に開示するSMP材料は、非常に高い形状固定性(>95〜99%)をもたらす。これは主に、SMP材料が非弾性非溶融形状回復方法を利用して展開する(すなわち、流体特性を利用した形状変化ではない)ためである。さらに、このSMP材料はヒドロゲルまたは他の水和物質ではない。SMP材料は、1つの高再現性、無変化、非クリーピング、非変形貯蔵形状から別の高再現性、無変化、非クリーピング、非変形第2形状(持続性形状)に変形する。
【0060】
SMP材料は、予めプログラムされた形状を有する。展開後SMP装置は内部に蓄積したエネルギーを放出してプログラムされた形状へ移行する(これは局所組織に適応性であってもなくてもよい)。局所組織は、SMP装置の形を成形することに関与しない。SMP装置は、より小さな形状輸送のために変形する前に成形時に元々形作られたようなその「記憶」形状に回復する。変形状態からグラス状(持続性形状)への完全な展開速度は、SMP調製物により1秒未満〜600秒を超える幅広い範囲で変化し得る。
【0061】
さらに、SMP調製物の高いTg(すなわち、体温以上)のため、こん包、輸送、貯蔵および最終的には移植されるSMP装置は、冷蔵貯蔵または冷凍、そうでなければ低温操作環境を必要としない。このため、本発明に開示されるSMP材料の重要な利点は、SMP材料を長期間貯蔵形状で貯蔵することができ、専用輸送システムにおいて押し込められた形状でこん包することができ、事前の冷蔵や温度変化を必要とすることなく展開することができる点にある。輸送システムまたはこん包システムにおいて装置を拘束することにより、例えば装置の輸送中の温度周期の環境的影響および装置の不用意な展開を排除することができる。
【0062】
さまざまな眼内レンズの種類を、特定のレンズの種類や構造の要求に合うよう選択された材料特性を有する上述した処方のSMP材料から作製することができる。
【0063】
<眼内レンズ>
SMP眼内レンズは、現在商業的に利用可能な折り畳み可能なレンズ技術と比較して非常に小さな切開から挿入することができるよう設計される。典型的なSMP眼内レンズ100を
図1および2に示し、以下でさらに詳細に説明する。さらに、このレンズ形状は眼の中で展開した後高度に保たれる(すなわち、98%を超える高形状固定性がある)。水晶体嚢内レンズは、前嚢における混濁形成を抑えることのできる前嚢尖ならびに赤道の真後ろの嚢との接触を生じる形状を有し得る。毛様溝レンズは、虹彩への損傷を回避することのできるアーチ型構造を有し得る。前房レンズは、瞳孔ブロックの危険性を減らし、前房山形支持構造への損傷の危険性を減らすための適当なアーチ型構造を有し得る。
【0064】
眼内レンズに適用する場合、SMP技術の多くの利点が存在する。第1に、眼内レンズは圧縮性および変形性である。材料を圧縮し、小さな骨格を構成する能力は、送達のためのより小さな切開サイズを可能にする。小さな切開を通り抜けるこのようなSMPレンズは大きな利益をもたらす。例えば、白内障手術では乱視はほとんどなく、より速く回復し、また小さな切開による眼への損傷はほとんどない。また、レーザー技術および改善された超音波技術により、白内障手術をより小さな切開で行うことができる。この選択肢による制限因子は、代替レンズに必要とされる大きな切開である。
【0065】
眼内レンズにおける形状記憶ポリマーの第2の利点は、レンズの展開が弾性回復法ではなくむしろ熱機械的回復を利用する点にある。レンズの展開時間または速度を変えるために調製物を修正することができる。これは必要とされる展開の場所に依存して変わり得る。例えば、繊細な構造(例えば水晶体嚢中または角膜内皮の近くなど)の近くでの展開は、これらの構造への損傷を避けるためゆっくりと医師が調整した展開が必要となるであろう。展開速度の修正は、現在利用可能な他のレンズ技術では不可能である。また、SMP材料の弾性係数を、レンズ材料の柔軟性を最適化し眼構造への損傷を最小にするために修正することができる。上述した各種類のレンズに対して、SMP材料特性はゆっくりと調整された展開を可能にし、これによりレンズオプティックまたはハプティックと接触する領域への損傷が小さくなる。
【0066】
第3の利点は、レンズの屈折率の容易な修正能力である。屈折率はSMP調製物の変更により変えることができる。また、屈折力を設定するのに重要であるレンズの表面曲率は、液体射出成型法またはレーザーなどによる切断による後成形によって修正することができる。さらに、レンズの曲率およびレンズの屈折率を、移植後に熱、UVまたはレーザー光修正により修正することができる。
【0067】
第4の利点は、SMPレンズの表面特性および移植が、炎症および細胞混濁を低減し得る点にある。一例として、
図7は、16ナノメーターの平均表面粗さを示す、サンプルSMPレンズ表面の光学形状測定画像である。この低い粗さ測定は、例えば分光フィルタリングなどの光学的な人工物を最小限に抑え、レンズの光学的透明性を最大にする。
図7において、丸で囲まれた濃い領域は右側のスケールで測定された粗さのより高い値に関する(すなわち、203nmの測定値に関する)領域であり、画像中の他の濃い領域は測定された粗さのより低い値に関する(すなわち、〜186nmの測定値)。例えば、水晶体嚢内SMPIOLは、レンズの移動を減らすため水晶体と接触させられるが、表面の平滑性は上皮細胞の移動およびその後の後嚢混濁の形成を遅延させる。
【0068】
SMPレンズは実質的に強固であるため、表面研磨および眼内レンズの表面での細胞増殖を減らすための既知のメカニズムによりレンズを修正することもできる。また、SMPレンズのゆっくりとした展開は細胞混濁を最小限に抑えることができる。水晶体嚢内のぴったりとしたかみ合いに起因して、IOLのサイズとレンズ上の一群の上皮細胞との間には張力が存在する。例えば、水晶体嚢内レンズは水晶体嚢とレンズの移動を減らすようなかたちで接触させられるが、特にかみ合いがきつく物質がレンズ周辺を通ることができない場合には、上皮細胞との接触はその後の後嚢混濁を引き起こし得る。展開中に水晶体嚢が衝撃を受け損傷した場合(これは損傷に応じて細胞生成を高める)、この問題は悪化する。白内障手術とレンズ配置のこの一般的な合併症を減らすための一般的な眼内レンズの構造はよく知られている。しかしながら、SMPレンズにより、水晶体嚢に移植されるSMPレンズのサイズ等を現存のレンズより増加させることができる。これはSMPレンズ材料の圧縮性および変形性および損傷を最小に抑えながらぴったりとしたかみ合いを可能にするゆっくりとした展開による。表面を滑らかにする能力は、さらにこの問題を軽減する。
【0069】
<二重光学レンズ>
二重光学レンズや他の調節性眼内レンズのようなより大きなレンズを、屈折障害および老眼の治療に同時に使用することができる。二重光学レンズは、通常、第1の屈折力および屈折率を有するオプティックを有する第1眼内レンズ、および第2の屈折力とおそらく異なる屈折率を有するオプティックを有する第2眼内レンズにより構成される。第2オプティックは、通常第1オプティックに取り付けられ、また、材料支柱またはレンズの外縁の同様の構造により第1オプティックと離れて配置される。2つのオプティック間の関係(すなわち、離れた距離)ならびに2つのオプティック間の幾何学的な結合に依存して近視および遠視の両方を可能にするために相乗的に作用するための2つのレンズは、移植後個々の患者において調整され得る(若しくはされない)。
【0070】
これらの二重光学レンズは、目に入れるための従来の切開よりも大きな切開を必要とする場合が多い。これらの大きな基本骨格のレンズはSMP材料により作製することができ、これらはより小さい切開サイズを可能にする高い圧縮性および変形性を有し、これにより上述した理由で手術結果を向上させることができる。さらに、SMP材料を用いて形成した場合、これらの大きなレンズはよりゆっくりと展開することができ、重要な眼の構造への不用意な損傷および目的場所における構造の慎重な並置を避けるような方法で医師がレンズを配置することを可能にする。このことは大きな基本骨格レンズが眼に引き起こし得る損傷の危険性を軽減する。さらに、これらのレンズは非常に複雑であり、SMP材料の高い形状固定性により維持される精密な光学性能を必要とする。
【0071】
他の調節性レンズは、正常な人のレンズ機能の再現を追及している。調整メカニズムは、毛様体収縮および水晶体嚢の毛様小帯変形およびレンズ形状における変化ならびに合成レンズの前後方向の移動に続発すると考えられている。天然レンズの作用を再現する能力を有するよう、SMP材料により多種多様な水晶体嚢と密接同格を有するレンズを作ることができる。実際に、水晶体嚢内空間で拡張し、全空間またはその空間より大きな領域を満たし、毛様体−小帯作用に反応するSMPレンズを作製し得る。さらに、SMPレンズはより小さな前嚢開口部から挿入することができ、自然の調整工程に対するレンズの反応性を維持するのに役立つ。異なる架橋密度であるため異なる活性温度(Tg)および/または異なる弾性係数であるIOL内にSMP材料を加えることにより調整工程を再現するために形状における変化が必要である場合、SMPレンズの局所的寸法、特に厚みを移植後に変更してもよい(これは局所的剛性に影響し得る)。
【0072】
<有水晶体眼内レンズ>
有水晶体眼内レンズは角膜切開を通して前房に配置されるレンズである。上述した他の眼内レンズと同様に、現在入手し得るレンズよりも非常に小さな切開からの移植のために、SMP有水晶体レンズを圧縮し得る。角膜内皮損傷または天然レンズ損傷がほとんどないよう、SMP有水晶体レンズをゆっくりと展開するよう設計することもできる。調整された医師制御による展開は、小柱網または虹彩を損傷することなく前房構造に対するハプティックの位置決めを可能にする。ハプティックにより山形構造へかかる力は一貫性があり、弾性回復により展開する従来レンズよりもよりも再現性がある。展開中、虹彩面の後方に配置するために前房で展開するようにSMP有水晶体レンズを設計することもできる。現在の有水晶体IOL技術では、虹彩の後方に配置する場合、白内障形成の高い発生率が知られている。このような発生はSMPレンズの調整された遅い展開および位置決めにより軽減または排除することができる。
【0073】
<角膜内インプラント>
角膜内インプラント装置は、以下を含むいくつかの制限により、国内および海外市場において大きな成功をおさめていない:(a)移植の困難性;(b) 現存の装置に対応するための角膜における大きな切開の必要性;(c)処置または手術室に戻すことなく「屈折誤差(refractive surprises)」を修正することができない;および (d)元々の材料特性に起因する現存の装置の幾何学的構造における制限。一方、SMP角膜内インプラントをSMP材料の圧縮性および変形性の利点を活用するよう設計することもできる。角膜内インプラントを送達させるための角膜内切開、経路およびくぼみを作製するために、レーザーまたはブレードを使用する。最近の課題の1つは、これらの装置を挿入する間に角膜組織に対してしばしば見られる激しい損傷である。角膜内移植を進めるために「ぴったりとしたかみ合い」が適当な角膜内経路とともに必要である。角膜内インプラントを、非外傷的に角膜切開および所望のくぼみ内を通過できるよう十分に小さく設計してもよい。その後、インプラントの安全な位置決めを考慮してインプラントの熱機械的展開および減圧が起こる。
【0074】
角膜内インプラントの押出しおよび移動は、角膜損傷の最小化およびより小さな切開、経路およびくぼみの存在のため、SMP技術および射出速度の減速によって低減し得る。従来装置と比較して、角膜内インプラントにSMP材料を使用する利点として、屈折補正のためのより大きな装置直径を達成するその後の形状変化を伴う最小限の侵襲的アプローチ(例えば,フェムト秒レーザーにより作られた切開による)により装置を移植できることを挙げることができる。別の利点は、例えば、「屈折誤差」が生じた場合または屈折補正におけるさらなる変更が必要な場合にSMP角膜内インプラント装置の形状およびサイズを移植後に角膜内で変えることができる点である。これは、SMPIOLについて上述したような各領域に対して異なるTgおよび屈折率値をもたらすために、異なる領域において異なる材料調製物により角膜内インプラントを構成することにより行うことができる。さらなる利点は、より「弾性」状態で装置を移植することができ点であり、これにより角膜の間質組織への損傷が軽減される。
【0075】
<形状記憶ポリマー眼内圧縮およびこん包>
図8A〜13は、SMPIOLをこん包および移植のための圧縮形状へ変形する工程における典型的な形状を示す(ここで、SMPIOLは非常に高い形状固定性によりその持続性形状に回復するために変形および拡張する)。
図8Aおよび
図8Dは、典型的な一般のSMP眼内レンズ100を示す。SMPIOL 100は、中心オプティック102およびオプティック102の反対側から対称的に伸びるハプティック104を有する。各ハプティック104は、オプティック102と接するショルダー106、アーム108および末端部110を含む部分で形成されている。展開する際、ハプティック104はその圧延され圧縮した状態から展開し、適切な位置でオプティックを固定するために移植空洞を形成する組織に対して末端部110を押し付ける。
【0076】
SMPIOLは、上述した調製物の1つを射出成型することにより形成する。典型的な実施態様において、80〜20(tBA〜PEGDMA 550)の組み合わせが、伸張しているハプティック104を備える直径6mmのオプティック102を作製するために用いられる。tBA〜PEGDMA 550の混合物は、モールド内での加熱時に非常に低い粘度を有するため、モールドを容易に流れ、満たすことができ、非常に小さな直径のハプティック104を形成することができる。別の典型的な実施態様において、UV阻害剤BTA(0.5−1.0%)を含む若しくは含まない、tBA(78%)とPEGDMA 1000(22%)の組み合わせ(例えば、それぞれSMP106、SMP122、およびSMP123)をオプティック100を作製するために用いてもよい。これらの処方は、同様に非常に低い粘度を有する。注型法成形において、重合過程の間これらのポリマー化学において典型的に生じる5〜20%の体積収縮に対してモールドは0.1〜20%大きくてもよい。液体射出成型法においては、重合中できる限り体積収縮を最小に抑えるために超高圧(例えば、>500〜40,000psi)を利用してもよい。また、重合工程中の体積収縮をさらに最小に抑えるために、射出成型と前重合技術との組み合わせを実施してもよい。
【0077】
一実施態様において、熱サイクルを避けるために硬化温度および離型温度を同じにしてもよい。あるいは、材料が最大のロバスト性(典型的にはTgよりわずかに低い(例えば8℃))を示す最適な離型温度までモールドを冷却してもよい。モールドから取り出した後、SMPIOL 100はその持続性形状にある。しかしながら、移植において小さな切開から移植できるように、SMPIOL 100のサイズおよび形成因子を減らすことが望ましい。
【0078】
図9Aおよび
図9Bは、SMPIOL 202を貯蔵および最終的には移植のための変形形状にまとめるための、SMPIOL 202に対する変形工程における第1段階を概略的に示す。縦経路206を明示する圧延機204をSMPIOL 202を初めに圧延するために使用し得る。SMPIOL 202は、経路を横切って伸びるハプティックにより配向された経路上に配置される。引張ワイヤー208は、SMPIOL 202を横切って、経路206上に平行に配置されるが、引張ワイヤー208の末端は経路206の縦中心と同方向に位置を合わせる。次いで、圧延機204およびSMPIOL 202をおおよそTgまで加熱する。ワイヤー上の張力は増し、引張ワイヤー208の全長が経路206内へ引き伸ばされることにより、引張ワイヤーは経路の縦中心と同軸である。これにより、引張ワイヤー208は経路206内でSMPIOL 202を圧迫し、引張ワイヤー208周辺でSMPIOL 202を半分に折り畳み、SMPIOL 202を
図9Bに示されるようなU型202’に変形する。U型SMPIOL 202’の第1面(図
9Bにおいて「b」と記す)は経路206内でワイヤー208に折り重ねられる。次いで、U型SMPIOL 202’の第2面(
図9Bにおいて「c」と記す)は、ワイヤー208の第1面に折り重ねられる。その後、引張ワイヤー208を除去することができる。1つの典型的な実施態様において、経路は1.8mmの幅、2.0mmの深さであってよく、1.8mm×2.0mmの最大直径寸法を有するSMPIOL 202’を生じる。
【0079】
図10Aに示すように、圧延されたSMPIOL 302は、圧延機304において経路306内に保持されたまま、次いでTg以下の温度まで冷却される。型経路内でのSMPIOL 302の冷却はSMPIOL 302を圧延形状に固定する。その後、SMPIOL 302を圧延機304の経路306から取り外すことができ、SMPIOL 302は
図10Bに示すような圧延形状を維持する。
【0080】
圧延されたSMPIOL 402は、
図11で示されるように、圧縮機による圧延SMPIOL 402の移送のために、次いでファブリックシースまたはファブリックソック404内に挿入される。ファブリックソック404は一方の端が閉じられ、反対の端が開いていてもよく、圧延SMPIOL 402の周囲にぴったりと合うような大きさにされる。圧縮機によるSMPIOL 402の引出しに役立つため、ファブリックソック404は圧延SMPIOL 402の長さより有意に長くてもよい。典型的な実施態様において、ファブリックソック404は絹織物から作製し得る。
【0081】
図12Aおよび
図12Bは、圧縮機502により引出されているファブリックソック内のSMPIOL 402を示す。圧縮機502は、入口側504から出口側506まで圧縮機内を横方向に伸びる掘削孔508を明示する。圧縮機502内の掘削孔508は、種々の直径のいくつかの部分に分かれていてもよい。入口側504まで開いている入口部分510は、SMPIOL 402を圧縮機502の掘削孔508内に容易に挿入できるよう、圧延SMPIOL 402の直径よりわずかに大きな一定の直径であってもよい。掘削孔508の中間部分512の直径は、入口部分510の直径から出口側506を開けた出口部分514の直径へ移行し、一致するより小さな直径へ徐々に細くなる。圧延SMPIOL 402の最大直径が2.0mmである上記典型的な実施態様に続き、入口部分510の直径wは2.0mmまたはそれよりわずかに大きく形成されていてよい。その後、中間部分512は、直径2.0mmから1.5mmへと推移してよく、出口部分の直径w’は1.5mmの一定の直径であってよい。
【0082】
図12Aおよび
図12Bに示すように、ファブリックソック404の開口端は入口側504から掘削孔508内へ挿入され、掘削孔508の長さに伸び、出口側506まで広がるのに十分な長さである。その後、ファブリックソック404の開口端は、ファブリックソック404内で圧延されたSMPIOL 402を掘削孔508の入口部分510へ引き出すために保持され得る。SMPIOL 402がTgを超える温度に達し柔らかくなるまで、圧縮機502を使用するSMP調製物のTgより高い温度まで加熱する。次いで、ファブリックソック404を掘削孔508から引出すことにより、同様に圧延SMPIOL 402を中間部分512から引出し、半径方向に圧縮する。圧縮機およびそこで圧縮されたSMPIOL 402をTg以下の温度まで冷却しながら、圧縮されたSMPIOL 402’を小さな直径の出口部分514に放置し、圧縮SMPIOL 402’を圧縮状態に固定する。圧縮SMPIOL 402’をTg以下まで冷却した後、圧縮機502およびファブリックソック404から取り出し、
図13に示すような、こん包、貯蔵および最終的には移植のための最大直径w’を有する圧縮形状となる。
【0083】
例示的な実験において、直径6mmのオプティックを有するSMPIOLを1.5mmの最終直径まで圧延および圧縮した。圧縮SMPIOLを15ゲージの皮下注射チューブ内に充填した。その後、チューブ内の圧縮SMP IOLを体温の温水浴内に投入した。ロッドを皮下注射チューブ内に挿入し、IOLをチューブの末端外へ押し出し、水浴内へ送達した。水浴中で、SMPIOLは拡張、展開し、98%を超えるサイズおよび形状の精密さで直径6mmのオプティックを有する原形に回復した。
【0084】
装置およびIOLを折りたたむための方法の他の典型的な実施態様は、
図14A〜14Cに概略的に示されている。
図14Aは、SMPIOL 702を貯蔵および最終的には移植のための変形形状にまとめるためのSMPIOL 702に対する変形工程における第1段階を示す。圧延機710は、縦経路706を定めるために機710の上面上へ伸びる一対の平行壁704により形成される。折り畳みに役立ち、最終圧縮形状において相対的に円筒状のSMPIOL 702を達成するために、経路706の底は接触部分において弓形若しくは半円であってよい。SMPIOL 702を経路706の外側の壁704上に配置し、同様に経路706を横切って伸びるハプティックに位置を合わせる。次いで、圧延機710およびSMPIOL 702をおおよそTgまで加熱する。その後、
図10BのIOL 302の形状に似た圧延形状を形成するために、SMPIOL 702の外側縁を壁704の間の経路706内へ折り畳んでもよい。一実施態様において、ピンセットまたは鉗子を使ってIOL 702を手で折り畳んでもよい。別の実施態様において、IOL 702を経路706に押し込めるために
図9Aおよび
図9Bで記載したような引張ワイヤーを使用し得る。1つの典型的な実施態様において、経路706は、1.8mmの幅、2.0mmの深さであってよく、1.8mm×2.0mmの最大直径寸法を有するSMPIOL 702を生じる。
【0085】
図14Bは、変形装置の第2の構成部品、圧延機710とともに稼働してIOL 702をより圧縮する第2圧縮機720を示す。圧延機710の壁704の大きさ(すなわち、長さ、幅および高さ)と大きさにおいて相補的なまたはわずかに大きい(すなわち、長さ、幅および高さ)一対の平行経路728は、圧縮機720の上面に形成される。したがって、経路728を分離し、定める埋め込み壁724は圧縮機720の上面に形成される。したがって、埋め込み壁724は、圧延機710の経路706と幅において相補的またはわずかに小さなものであり得る。埋め込み壁724の上面は、さらに、カーブしたまたは半円の接触部分を備える浅溝726を有していてよい。さらに、圧縮機720は、SMPIOL 702のTgにまたはそれ以上に圧縮機720を維持するために、注入および排出取付具を備えた1つ以上の流路722により形成されていてもよい。
【0086】
圧延機710の経路706でSMPIOL 702が圧延されると、圧延機710は反転し、圧縮機720の先端に配置される。圧延機710の壁704は圧縮機720の経路728に適合する。圧縮機720の埋め込み壁724は圧延機710の経路706へ広がり、溝726は経路706内でSMPIOL 702と接触する。その後、圧延機710および圧縮機720に同時に圧力をかけ、SMPIOL 702の断面直径で測定するサイズをさらに圧縮する(しかしながら、圧延機710と圧縮機720での半径方向への圧縮下、SMPIOLの軸長はわずかに増える)。
【0087】
図14Cに示すように、圧縮機720における平行経路728の深さは圧延機710の平行壁704の高さよりわずかに大きいため、圧延機710の上面および圧縮機720の上面は接触面に達し、SMPIOL 702の圧縮を停止する。溝726の深さおよび経路706の深さは、圧縮SMPIOL 702の所望する最終直径に対応する経路706の底と溝726の底との分離距離を定めるよう選択される。例示的な実験において、この方法を用いて直径6mmのオプティックを有するSMP IOLを1.6mmの最終直径まで圧縮した。その後、圧縮したSMPIOLを切り出し輸送用の注入器具に充填することができる。
【0088】
別の例示的実施態様において、この技術により折り畳まれたSMPIOLを移植用注入器に充填してもよい。例示的なIOL移植において、小さな切開を角膜縁にブレードまたはレーザーにより形成することができ、注入器の先端を前房内に挿入することができる。SMPIOLの遅い展開により、完全な展開後のSMPIOLの種々の操作を避けるため、外科医はレンズの展開中にハプティックおよびオプティックを正しい位置に配置することができる。また、白内障摘出およびレンズ移植を、直径1.8mm未満と同じくらいに小さい前嚢切開により行うことができる。水晶体前嚢をほとんど破壊しない小さな嚢切開は、調整の生理学を妨げられることなく、移植されたレンズの調整能力を高めるであろう。
【0089】
1つの例示的実施態様においては、注入器先端を角膜切開から前房を横切って、小さな前嚢開口部内に挿入し得る。レンズを直接水晶体嚢内に挿入し、水晶体嚢に対する著しい損傷なくゆっくりと展開し得る。これは、しばしば水晶体嚢裂傷を引き起こす公知の拡張レンズの急速な展開によっては不可能である。同様に、SMPIOL溝は、穏やかな圧力および毛様溝構造へのハプティックの並置により毛様溝において支持される。さらに前房SMPIOLは、穏やかな圧力および前房山形構造へのハプティックの並置により前房山形構造により支持される。SMPIOLのゆっくりとした段階的な展開は、現存のIOL材料の急速な弾性的展開と比較してこれらの組織構造への損傷を著しく減らす。
【0090】
全ての指向性参照(例えば、隣接した、末端、上位、下位、上へ、下へ、左、右、側部、縦、前、後、先端、そこ、上、下、垂直、水平、放射状、軸方向、時計回り、および反時計回りなど)は、本発明の読者の理解を助けるための同定目的のために使用されるだけであって、特に本発明の位置付け、方向付けまたは用途に関して限定を与えるものではない。接続参照(例えば、付着した、連結した、接合したおよび結合したなど)は、他に明示されない限り、広く解釈されるべきで、一群の構成要素間の中間部材および要素間の相対的な変動も含み得る。このように、接続参照は必ずしも二つの要素が直接的に接続し、互いに固定された関係を示すものではない。例示的な図面は説明の目的のためであって、本出願に添付の図面に反映された寸法、位置、順番およびサイズは変化し得る。
【0091】
上記明細書、実施例およびデータは特許請求の範囲に規定した本発明の典型的な実施態様の完全な説明を提供する。特許請求の範囲の発明の種々の実施態様が特異点のいくつかの程度により、または1つ以上の個別の実施態様に対する参照により記載されているが、当業者は特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲を超えない範囲で開示された実施例を数値的に変更することができる。したがって、他の実施態様も検討される。上述した説明および添付の図面に含まれるすべての事項は、特定の実施態様の説明として解釈されるべきものであり、限定されるべきものではない。詳細若しくは構成における変更は、以下の特許請求の範囲に規定される本発明の基本要素を超えない範囲で行い得る。
本明細書の当初の開示は、少なくとも下記の態様を包含する。
[1]Tgを有する形状記憶ポリマー(SMP)材料を準備すること;
持続性眼内装置の形状にSMP材料を形成すること;
Tg以上の温度で眼内装置を機械的に圧縮し、眼内装置をより小さい体積に変形させること;および
変形した眼内レンズを圧縮したままTg以下の温度まで冷却し、これにより2mm以下の切開により挿入可能な送達形状を有する安定性変形眼内装置を作り出すことを含む眼内装置の製造方法。
[2]形成工程が、SMP材料を注型成形して持続性眼内装置の形状にすることをさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[3]注型成形工程におけるSMP材料の重合化工程の間に生じ得る体積収縮に対して、成形品を持続性眼内装置形状の所望する最終サイズの0.1〜20%大きめにすることをさらに含む、前記[2]に記載の方法。
[4]形成工程が、SMP材料を液体射出成型して持続性眼内装置の形状にすることをさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[5]重合中の体積収縮を最小にするために、液体射出成型工程において超高圧を利用することをさらに含む、前記[4]に記載の方法。
[6]形成工程が、SMP材料を低温処理して持続性眼内装置の形状にすることをさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[7]変形眼内装置の送達形状が1.8mm幅以下の切開に適合するよう設計された、前記[1]に記載の方法。
[8]SMP材料のTg以上の温度で眼内装置を圧延すること;
圧延した眼内装置を圧延したままTg以下の温度まで冷却し、これにより安定性圧延眼内装置を作り出すこと;および
1.8mm以下の直径に眼内装置を圧縮すること
をさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[9]SMP材料のTg以上の温度で眼内装置を圧延すること;および
Tg以上の温度を保持したままで、型内において1.8mm以下の直径まで半径方向に圧縮すること
をさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[10]変形眼内装置を室温以上で貯蔵用にこん包することをさらに含む、前記[1]に記載の方法。
[11]眼内装置が眼内レンズである、前記[1]に記載の方法。
[12]眼内装置が角膜内インプラントである、前記[1]に記載の方法。
[13]SMP材料がtert−ブチルアクリレート(tBA)モノマーおよびビスフェノールAプロポキシレートジアクリレート(BPA−P)ジアクリレート架橋ポリマーを含む、前記[1]に記載の方法。
[14]SMP材料がtert−ブチルアクリレート(tBA)モノマー、および分子量が実質的に500〜2000であり、架橋割合が実質的に10〜50重量%であるポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート架橋ポリマーを含む、前記[1]に記載の方法。
[15]SMP材料がtert−ブチルアクリレート(tBA)モノマー、および分子量が実質的に500〜2000であり、架橋割合が実質的に10〜50重量%であるポリ(エチレングリコール)ジアクリレート架橋ポリマーを含む、前記[1]に記載の方法。
[16]SMP材料がtert−ブチルアクリレートモノマー、イソブチルアクリレートモノマー、ブチルアクリレートモノマー、および分子量が実質的に500〜2000であるポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートおよび/またはポリ(エチレングリコール)ジアクリレート架橋ポリマーを含む、前記[1]に記載の方法。
[17]SMP材料のTgが10〜60℃である、前記[16]に記載の方法。
[18]SMP材料のTgが人の体温以上である、前記[1]に記載の方法。
[19]移植され再生された眼内装置が、外部刺激に対する反応により、変形眼内装置から98%以上の形状回復を示す、前記[1]に記載の方法。
[20]外部刺激がTg以上の加熱である、前記[19]に記載の方法。
[21]Tgが実質的に37℃である、前記[20]に記載の方法。
[22]外部刺激が紫外線照射である、前記[19]に記載の方法。
[23]外部刺激に対する反応が最大600秒まで遅延する、前記[19]に記載の方法。
[24]3〜25秒以内に反応が開始する、前記[19]に記載の方法。
[25]SMP材料が着色添加剤を含む、前記[1]に記載の方法。
[26]以下を備える形状記憶ポリマー(SMP)眼内レンズ:
1.45以上の屈折率;
10〜60℃のTg;
わずかな光沢または無光沢;および
実質的に100%の可視スペクトルの光透過性。
[27]50重量%のtBA、28重量%のイソブチルアクリレート、および22重量%のPEGDMA1000の組み合わせを含む、前記[26]に記載のSMP眼内レンズ。
[28]22重量%のtBAおよび78重量%のPEGDMA1000の組み合わせを含む、前記[26]に記載のSMP眼内レンズ。
[29]65重量%のtBA、13重量%のブチルアクリレート、および22重量%のPEGDMA1000の組み合わせを含む、前記[26]に記載のSMP眼内レンズ。
[30]角膜若しくは強膜に1.8mm幅以下の切開を形成すること;および
前記切開を通して水晶体嚢に眼内レンズを移植すること
を含む眼内レンズ装置の移植方法。
[31]眼内レンズ装置が形状記憶ポリマーから形成され、圧縮変形構造に埋め込まれる、前記[30]に記載の方法。
[32]角膜若しくは強膜に1.8mm幅以下の切開を形成すること;および
前記切開を通して毛様溝に眼内レンズを移植すること
を含む眼内レンズ装置の移植方法。
[33]眼内レンズ装置が形状記憶ポリマーから形成され、圧縮変形構造に埋め込まれる、前記[32]に記載の方法。
[34]角膜に1.8mm幅以下の切開を形成し、前房とつなげること;および
前記切開を通して前房に眼内レンズを移植すること
を含む眼内レンズ装置の移植方法。
[35]眼内レンズ装置が形状記憶ポリマーから形成され、圧縮変形構造に埋め込まれる、前記[34]に記載の方法。
[36]角膜に1.8mm幅以下の切開を形成し、角膜にトンネルを形成すること;および
前記切開を通して前房に眼内レンズを移植すること
を含む角膜インプラントデバイスの移植方法。
[37]角膜インプラントデバイスが形状記憶ポリマーから形成され、圧縮変形構造に埋め込まれる、前記[36]に記載の方法。