(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グリ石層は、地面上に設置された仕切板により仕切られた細長い仕切り空間内に多数のグリ石が積層されることにより形成されたものである、請求項1又は2に記載の地中熱を利用した農業用ハウス内植物栽培システム。
前記グリ石層は、前記の細長い各植物配置部の下方の地中にそれぞれ形成された各溝と、この各溝の上にそれぞれ配置された柔軟性シートと、前記柔軟性シートの上にそれぞれ積層、配置された多数のグリ石とにより構成されている、請求項1から4までのいずれかに記載の地中熱を利用した農業用ハウス内植物栽培システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1が提案している農業用熱暖房装置は、単に地中熱などを「農業用ハウス内の全体」の暖房をするために利用するという発想に止まっており、地中熱を直接的に(ピンポイント的に)栽培用植物に供給して栽培を効率化し植物の成長を促進させることは全く想定していない。また、上記の特許文献2が提案しているハウス栽培の土壌加湿方法は、単に地中の放熱パイプ中に温水を流通させて前記放熱パイプの近傍の土壌を作物の栽培に適した温度に加温するという発想に止まっており、地中熱を直接的に栽培用植物に供給して栽培を効率化し植物の成長を促進させることは全く想定していない。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目して為されたものであって、地中熱をより効率的に植物栽培に利用すること、より具体的には、戸外から取り込んで地中熱と熱交換した空気を直接的に栽培用植物に向けて供給することにより、農業用ハウス内を温度調節のために締め切った状態にしたままでも十分に換気することができ且つ地中熱を利用して農業用ハウス内における栽培用植物の成長の促進又は生育期間の調整を行うことができる、地中熱を利用した農業用ハウス内植物栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、農業用ハウス内に配置された、全体として細長い形状の植物配置部であって、栽培用の植物又はこれを収容する容器が配置される板状部分を含む植物配置部と、農業用ハウスの外部又は内部の地中に埋設され、外部から導入した空気を地中熱と熱交換する地中パイプと、前記細長い形状の植物配置部の下方にこれに沿うように配置された供給パイプであって、前記地中パイプからの空気を、自ら(供給パイプ)の内部に導入して流通させながら、自らの側面に形成された複数の通気孔から外部に放出する供給パイプと、前記植物配置部の下方にこれに沿うように配置され、前記供給パイプの周囲を囲むように積層された多数のグリ石から成り、且つ自ら(グリ石層)の上面側が「自らと前記植物配置部との間の空間」に露出しているグリ石層であって、前記供給パイプの各通気孔から放出された空気を、自らの内部において流通させた後に、自らの上面側から「自らと前記植物配置部との間の空間」に直接に放出するグリ石層と、前記グリ石層の上面側から放出された空気が前記植物配置部の前記板状部分の下方に移動し易くなるように設けられたカバーであって、前記グリ石層と前記植物配置部との間の空間の少なくとも前記植物配置部の長手方向に沿う両側面を覆うカバーと、を備え、前記植物配置部の板状部分には、前記板状部分の下方まで移動した前記グリ石層からの空気を、前記板状部分の下方から前記板状部分の上方の植物に供給するための複数の通気穴が形成されている、地中熱を利用した農業用ハウス内植物栽培システムである。
【0007】
また、本発明は、農業用ハウス内に配置された、全体として細長い形状の植物配置部であって、栽培用の植物又はこれを収容する容器が配置される板状部分を含む植物配置部と、農業用ハウスの外部又は内部の地中に埋設され、外部から導入した空気を地中熱と熱交換する地中パイプと、前記細長い形状の植物配置部の下方にこれに沿うように配置された供給パイプであって、前記地中パイプからの空気を、自らの内部に導入して流通させながら、自ら(供給パイプ)の側面に形成された複数の通気孔から外部に放出する供給パイプと、前記植物配置部の下方にこれに沿うように配置され、前記供給パイプの周囲を囲むように積層された多数のグリ石から成り、且つ自ら(グリ石層)の上面側が「自らと前記植物配置部との間の空間」に露出しているグリ石層であって、前記供給パイプの各通気孔から放出された空気を、自らの内部において流通させた後に、自らの上面側から「自らと前記植物配置部との間の空間」に直接に放出するグリ石層と、「前記グリ石層の上面側、前記植物配置部、及び前記植物配置部上に配置された各植物の周囲を含む空間」の少なくとも前記植物配置部の長手方向に沿う両側面側を覆うカバーであって、前記グリ石層の上面側から放出された空気が、前記植物配置部上に配置された植物の周囲まで移動するようにし且つ前記植物の周囲から前記空間の外側には容易に飛散・散逸しないようにするカバーと、を備えたことを特徴とする、地中熱を利用した農業用ハウス内植物栽培システムである。
【0008】
また、本発明において、前記グリ石層は、地面上に設置された仕切板により仕切られた細長い仕切り空間内に多数のグリ石が積層されることにより形成されたものであってもよい。
【0009】
また、本発明において、前記農業用ハウス内には、複数の植物配置部及びグリ石層が、それぞれの長手方向が互いに略平行となるように配置されており、前記地中パイプからの空気を各グリ石層内に送るための供給パイプは、前記複数の各グリ石層中に、それぞれ、各グリ石層の長手方向に沿うように配置された細長い各枝パイプであって、自らの内部の空気を各グリ石層中にそれぞれ放出するための複数の穴が形成されている各枝パイプと、前記地中パイプで熱交換された空気を取り込んで前記各枝パイプにそれぞれ供給する幹パイプであって、前記各枝パイプに対してそれぞれ交差する方向に延びるように地中に配置され且つ前記各枝パイプとそれぞれ空気流通可能に接続されている幹パイプとから構成されているようにしてもよい。
【0010】
さらに、本発明において、前記グリ石層は、前記の細長い各植物配置部の下方の地中にそれぞれ形成された各溝と、この各溝の上にそれぞれ配置された柔軟性シートと、前記柔軟性シートの上にそれぞれ積層、配置された多数のグリ石とにより構成されているものでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、前記地中パイプ中で地中熱と熱交換された空気は供給パイプからグリ石層へ送られグリ石層から放出されるが、この放出された空気(戸外からの空気が地中熱と熱交換されたもの)は、前記カバーにより、前記植物配置部の板状部分(複数の通気孔が形成されたもの)の下方に向けて又は前記植物配置部上の植物の方に向けて、それ以外の他の方向に放散、散逸することなく効率的に導かれ供給されるようになっている。よって、本発明によれば、地中熱と熱交換された空気(夏季は地中熱で冷やされ冬季は地中熱で暖められた、戸外からの空気)を、直接的に又はより効率的に農業用ハウス内の植物配置部上の各植物に導き供給することができるので、農業用ハウス内を温度調節のために締め切った状態にしたままでも前記空気(外気)の取り込みによる十分な換気を確保しつつ、夏季は地中熱による冷熱を冬季は地中熱による暖熱を利用して、農業用ハウス内における栽培用植物の成長の促進又は生育期間の調整を行うことができるようになる。
【0012】
特に本発明において前記の「グリ石層と植物配置部の板状部分との間の空間(の植物配置部の長手方向に沿う両側面)を覆うカバー」を備えるようにしたときは、グリ石層から放出される空気は、前記「カバー」により、効率的に(前記空気が前記空間の両側面の外側に容易に飛散・散逸することなく)、植物配置部の板状部分の方向へ導かれるので、前記グリ石層からの空気の大部分を、前記植物配置部の板状部分の下方から前記通気孔を介して、前記板状部分上に配置された各植物の方向に移動させ各植物に供給できるようになる。
【0013】
特に本発明において前記の「グリ石層の上方、植物配置部、及び各植物を含む空間(の植物配置部の長手方向に沿う両側面)を覆うカバー」を備えるようにしたときは、グリ石層から放出される空気は、前記「カバー」により、効率的に(前記空気が前記空間の両側面の外側に容易に飛散・散逸することなく)、各植物の方向へ導かれるので、前記グリ石層からの空気の大部分を、前記植物配置部上の各植物の方向に移動させ各植物に供給できるようになる。
【0014】
また、本発明において、地中パイプ中で地中熱と熱交換された空気を、まず幹パイプを介して各枝パイプへ送り、更に各枝パイプから各グリ石層へ送るようにしたときは、農業用ハウス内に複数の各植物配置部及び各グリ石層を互いに略平行に配置したときでも、地中パイプ中で熱交換された空気を効率的に複数の各グリ石層内へ(さらに各グリ石層内から各植物配置部上の植物へ)供給できるようになる。
【0015】
また、本発明において、前記各グリ石層を、前記の細長い各植物配置部の下方の地中にそれぞれ形成された各溝上に柔軟性シートを配置し、この各柔軟性シートの上に多数のグリ石を積層、配置することにより構成したときは、前記溝内への多数のグリ石の設置又は撤去の作業性を大幅に向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記カバーを断熱性を有する素材により構成するようにしたときは、グリ石層から放出される空気に含まれる地中熱を「グリ石層と植物配置部の板状部分との間の空間」又は「グリ石層の上方、植物配置部、及び各植物を含む空間」の中に保持し続ける(前記地中熱が前記空間の外側に容易に散逸しないようにし続ける)ことができるので、前記地中パイプで収集した地中熱を植物の栽培のためにより効率的に活用できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る地中熱を利用した農業用ハウス内物栽培システムの全体構成と動作を説明するための図であって、
図1及び
図2はそれぞれ夏季及び冬季の動作を示している。
【0019】
図1〜3において、1は例えば鉄パイプとビニールシートなどにより形成される公知の農業用ハウスであって全体として図面における奥行き方向に細長く延びている形状を有する農業用ハウス、3は植物を配置・栽培するために使用される略長方形の平面を有する複数の植物配置台である。前記各植物配置台3は、前記農業用ハウス1の長手方向に沿って並べられることにより、農業用ハウス1内においてその長手方向に沿って延びる植物配置部(本発明の実施形態2に関する
図9の符号2を参照)を形成するものである。本実施形態1では、
図1,2に示すように、農業用ハウス1内において、植物配置部が、計4列、互いに略平行に配置されている。また各植物配置部を構成する前記複数の各植物配置台3上には、内部に土壌と植物4aを収容する植物栽培用ポット4が配置されている。
【0020】
また
図1〜3において、5は前記4列の植物配置部の下方にそれぞれこれと対向するように形成されたグリ石層、6は前記4列の各グリ石層5の略中央部分にそれぞれ前記各グリ石層5と略平行に延びるように配置されその外周部に複数の通気孔(
図4の符号6a参照)が形成されている枝パイプ、7は前記各枝パイプ6と交差(本実施形態では略直交)するように配置され前記各枝パイプ6とそれぞれ空気流通可能に接続された幹パイプである。
【0021】
また
図1〜3において、8は地中の3〜8m例えば5mの深さまで埋設された地中パイプである。本実施形態1では、前記地中パイプ8は、上端が開口され下端部8cが閉塞されている外側パイプ8aとその内側に配置される下端が開口されている内側パイプ8bとの二重管構造となっている。この地中パイプ8は実際には
図3に示すように農業用ハウス1の外側の2箇所にそれぞれ設置されている。
【0022】
また、
図1〜3において、9は、前記地中パイプ8の内側パイプ8b内を上昇してきた空気を、内側パイプ8bの上端部8dと接続されたパイプ11を介して幹パイプ7に送るための送風機である。また10は、前記パイプ11と送風機9との間に介設されたダンパであって、冬季の間だけ農業用ハウス1の屋根側空間12(屋根とその下側に屋根と略平行に張り渡されたビニールシートとの間の空間)中の太陽熱で暖められた空気をパイプ13(
図2参照)を介して(前記内側パイプ8bからの空気と共に)前記幹パイプ7に送るためのダンパである。
【0023】
また
図4は、前記のグリ石層5、幹パイプ7及び枝パイプ6の関係を示す側断面図である。
図4(及び
図3)に示すように、前記地中パイプ8からの空気を供給する幹パイプ7(例えば250mm径のストレートパイプ)は、グリ石層5及び枝パイプ6と略直交するように配置されている。枝パイプ6(例えば100mm径のネトロン通風パイプ)は、グリ石層5の中にこれと略平行に延びるように配置されている。幹パイプ7内の空気は、これと接続された枝パイプ6に供給される。そして、枝パイプ6にはその外周部に複数の通気孔6aが形成されているので、枝パイプ6内に供給された空気は通気孔6aを介してグリ石層5内に放出される。前記グリ石層5は、地中に掘られた溝5a内に、多数のグリ石5bが配置・積層されて成るものであり、前記枝パイプ6から放出された空気に含まれる地中熱を蓄熱する機能を有している。グリ石層5内の空気はグリ石層5内から植物配置部2の方向に向けて徐々に放出されていく。なお
図4において、14は、前記幹パイプ7と枝パイプ6の接続作業及び前記接続した部分の点検・保守作業などのためにグリ石層5中に形成された空洞部(グリ石5bが積層されていない部分)である。
【0024】
また
図5は、前記のグリ石層5の構成を説明するための図である。
図5に示すように、本実施形態1では、地中に形成された溝(前記の植物配置部と対向するようにこれに沿って細長く形成された溝)5aの上に柔軟なシート、例えばビニールシート15が配置され、このビニールシート15の上に多数のグリ石5bが積層されて成るものである。前記ビニールシート15は、前記溝5a内への多数のグリ石5bの設置作業や前記溝5a内からの多数のグリ石5bの撤去作業などの作業性を向上させるために設置されている。
【0025】
また
図6及び
図7は、前記の植物配置部(これを構成する複数の植物配置台3)及びグリ石層5の構成などを説明するための図である。
図6,7に示すように、植物配置台3は、基本的に、複数の植物栽培用ポット4を載置する平面部3aとこれを支持する脚部3bとから構成されている。このような複数の植物配置台3が互いに連なるように配置されることにより、全体として細長い植物配置部(実施形態2に関するものであるが
図9の符号2参照)が形成されている。
【0026】
また、複数の各植物配置台3の平面部3aの互いに隣接する縁部3c,3dの中の一方の縁部3cには、
図6に示すような「さね(実)」16が一体的に形成され又は外付けにより取り付けられている。前記「さね(実)」16は、前記の複数の植物配置台3の相互の連接(連結)を容易にするために設けられたものであって、互いに隣接する各植物配置台3の平面部3aの縁部3c,3dが互いに対向・当接し易くなるように、各植物配置台3の平面部3aの一方の縁部3cに形成された断面が略「く」の字状の部分である。
【0027】
また本実施形態1では、
図6に示すように、前記各植物配置台3の平面部3aに多数の通気孔17が形成されている。また、
図6に示すように、前記の各縁部3c,3dが互いに連接される多数の各植物載置台3の側方の各縁部3e,3f(各植物載置台3が互いに対向・隣接する各縁部3c,3dを繋ぐ方向と略直交する方向に延びる各縁部3e,3f)には、それぞれ、空気の流通を妨げるシート例えばビニールシートにより形成されたカバー18が、前記各縁部3e,3fからそれぞれ地面まで垂れ下がるように、取り付けられている。これらのカバー18は、その各上端がそれぞれ各植物配置台3の前記各縁部3e,3fに取り付けられているため、植物配置部の両側の側方の全体に渡って前記カバー18が取り付けられ、且つそれが地面まで垂れ下がるように配置されている。
【0028】
その結果、前記グリ石層5と前記植物配置部との間の空間は、その植物配置部の長手方向に沿う両側面を覆うカバー18と前記各植物配置台3の平面部3aとによりほぼ塞がれた略トンネル状の空間となるように形成されている。よって、本実施形態1によるときは、前記グリ石層5からの空気(地中熱を取り込んだ空気)を各植物配置台3の平面部3aの下面側に向けて効率的に(前記空気を前記グリ石層5と各植物配置台3との間の空間からその外側に飛散・散逸させることなく)供給し、前記平面部3aの通気孔17を介して前記ポット4内の植物4aに供給することができる。
【0029】
よって、本実施形態1では、
図7に示すように、前記グリ石層5から放出される空気(地中熱と熱交換された空気)は、前記カバー18により、前記グリ石層5と各植物配置台3の平面部3aとの間の空間の外側に飛散・散逸することなく効率的に、前記各植物配置台3の平面部3aの底面側に向かって導かれ、さらに、前記各平面部3aに形成された複数の通気孔17を介して前記各ポット4内の栽培用植物4aに供給される。
【0030】
次に本実施形態1の全体の動作を簡単に説明する。前記送風機9が駆動されると、
図1,2に示すように、戸外からの空気が地中パイプ8中の外側パイプ8aの上端と内側パイプ8bとの間の隙間から流入し、外側パイプ8aと内側パイプ8bとの間の隙間を下降する(
図1,2の矢印A参照)が、この過程で前記空気が地中熱と熱交換される。この熱交換された空気は、外側パイプ8aの下端部8cに衝突し、そこで折り返して内側パイプ8b内を上昇し(
図1,2の矢印B参照)、さらに内側パイプ8bの上端部8dから、パイプ11、ダンパ10及び送風機9を介して、幹パイプ7に送られる(なお冬季においては、前記ダンパ10の作用により、農業用ハウス1の屋根近傍の空間12において太陽熱で加温された空気も、パイプ13を介して、幹パイプ7に送られる)。
【0031】
前記幹パイプ7に送られた空気は、幹パイプ7と接続された複数の枝パイプ6にそれぞれ送られ、各枝パイプ6の複数の穴6a(
図4参照)からグリ石層5内に放出される。このグリ石層5内に放出された空気は、そこから上方に放出され(
図1,2及び7の矢印D参照)、各植物配置台3の平面部3aの下方に移動する。このとき、前述のように、グリ石層5と各植物配置台3の平面部3aとが互いに対向する空間は、前記植物配置部の長手方向に沿う両側面が前記カバー18により覆われているので、前記グリ石層5から上昇する空気は、前記空間の外側に飛散・散逸することなく各植物配置台3の平面部3aの下方に効率的に移動する。そして、前記の各植物配置台3の平面部3aの下方に移動した空気は、前記各平面部3aの通気孔17(
図6,7参照)から上方に移動して植物4aに供給される。
【0032】
このように、本実施形態1においては、グリ石層5と各植物配置台3の平面部3aとの間の空間の前記両側面が、前記カバー23により覆われているので、グリ石層5から上昇する空気が、前記空間の外側に飛散・散逸することなく極めて効率的に各植物配置台3の平面部3a上の植物4aに供給され、植物4aの成長が促進される(又は植物4aの生育期間が調整される)。
【0033】
なお、
図8は本実施形態1における前記カバー18の変形例を示すものである。この変形例では、前記の各植物配置台3の各両縁部3e,3fに各上端が取り付けられる各カバー18(
図7参照)に代えて、前記各植物配置台3の平面部3aの下面の前記各両縁部3e,3fの近傍部分に各上端が取り付けられるビニールシート製のカバー19を備えるようにしている。この変形例においても、前記グリ石層5からの空気(地中熱を取り込んだ空気)を、前記各植物配置台3の平面部3aの下面側に効率的に(前記空気を前記グリ石層5と植物配置台3の平面部3aとの間の空間からその外側に飛散・散逸させることなく)供給して、前記平面部3aの通気孔17を介して前記ポット4内の植物4aに供給することができる。また特にこの変形例では、
図8に示すように図示左右の各カバー19の上下方向の略中央部分が互いに近づくように(すなわち、前記空間の左右方向中央に近づくように)湾曲しているので、前記グリ石層5から前記各植物配置台3の平面部3aの下面側への前記空気の供給がより効率的に行われるようになる。
【0034】
〔実施形態2〕
次に
図9,10を参照して本発明の実施形態2を説明する。
図9,10において、
図1〜8と共通する部分には同一の符号を付している。
図9,10において、1は鉄パイプとビニールシートなどから構成される公知の農業用ハウス、2はこの農業用ハウス2内において農業用ハウス2の長手方向と略平行に延びるように配置された植物配置部であって、栽培用植物4a及び土壌を収容する多数のポット4が配置される植物配置部(前記実施形態1で説明したように複数の植物配置台(
図1の符号3参照)などにより構成される)、5は前記植物配置部2の下方に形成された地中の溝5a内に多数のグリ石が積層されて成るグリ石層である。
【0035】
また
図9において、21はグリ石層5内においてグリ石層5の長手方向と略平行に延びる供給パイプであってその周囲に多数の穴(図示省略)が形成されている供給パイプ、20は戸外からの空気を取り込むための外気導入口、8は農業用ハウス1内の地中に例えば5m深さまで埋設された外側パイプ8a及び内側パイプ8bの二重管から成る地中パイプ、9は戸外の空気を地中パイプ8内に導入し地中パイプ8から更に供給パイプ21を介してグリ石層5内に移送する(
図9の矢印A,B,及びC参照)ための送風機、10は冬季において農業用ハウス1の屋根近傍の空間に在る太陽熱で温められた空気(
図9の矢印E参照)を(前記地中パイプ8からの空気と共に)前記供給パイプ21に供給するためのダンパ、13は屋根近傍の空間とダンパ10を結ぶパイプ、22は前記地中パイプ8からの空気(及び前記屋根近傍の太陽熱で温められた空気)を植物供給用井戸水で熱交換してから前記供給パイプ21に供給するための熱交換器、24は排気ファンである。
【0036】
また
図10において、23は「グリ石層5、植物配置部2、及びその上のポット4及び植物4aを含む空間」の少なくとも前記植物配置部2の長手方向に沿う両側面を覆う略ドーム状カバー(例えばビニールシートなどで形成されている)である。前記略ドーム状カバー23は、
図10に示すように、前記空間の長手方向(前記植物配置部2の長手方向)と略直交する断面が楕円の円弧状に形成されている。前記略ドーム状カバー23は、前記のグリ石層5から上昇する空気を前記空間の外側に飛散・散逸させることなく効率的に植物配置部2(
図10に示す各植物配置台3の平面部3a)上に配置された各植物4aに供給するためのものである。
【0037】
次に本実施形態2の全体の動作を簡単に説明する。前記送風機9が駆動されると、戸外からの空気が外気導入口20から地中パイプ8内に流入され地中熱と熱交換される。この熱交換された空気は、送風機9により、ダンパ10及び熱交換器22などを介してグリ石層5内に埋設された供給パイプ21に送られる(なお冬季においては、前記ダンパ10の作用により、農業用ハウス1の屋根近傍の太陽熱で加温された空気も、前記パイプ13、ダンパ10及び送風機9などを介して、供給パイプ21に送られる)。前記の供給パイプ21に送られた空気は、供給パイプ21に形成された複数の穴からグリ石層5内に放出され、さらにグリ石層5から上方に移動する。このとき、前述のように、グリ石層5と植物配置部2及びこれを構成する複数の各植物配置台3とその上の複数の植物4aとを含む空間は、前記略ドーム状のカバー23により覆われているので、前記グリ石層5から上昇する空気は、前記各植物配置台3に向かう方向以外の他の方向に散逸することなく効率的に、前記各植物配置台3の方向に移動し植物4aへと供給されるので、植物4aの成長が促進される(又は植物の生育期間が調整される)。
【0038】
〔実施形態3〕
次に
図11を参照して本発明の実施形態3を説明する。本実施形態3の基本的構成は前記実施形態1と同様であるので、以下では異なる部分についてのみ説明する。前記実施形態1においてはグリ石層5は地中に掘られた溝5a内に多数のグリ石5bが積層されて成るものであったが、本実施形態3においては、
図11(a)に示すように、地面上に設置された仕切板27に挟まれた細長い溝状の空間内に多数のグリ石25aが積層されることにより、グリ石層25が形成されている。そして、地中パイプ8(
図1,2参照)で熱交換された空気を供給する枝パイプ26はこのグリ石層25中に配置されている。本実施形態3では、このようにグリ石層25を地上に設置するようにしたので、前記実施形態1のようにグリ石層5を形成するために地中に溝5aを形成する必要がなくなり、グリ石層の設置のための手間とコストを大幅に低減できるようになる。なお、本実施形態3では、
図11(a)における「植物配置部2を構成する各植物配置台3の平面部3aの両縁部3e,3fから地上に延びるカバー18(すなわち、グリ石層5と植物配置台3との間の空間の植物配置部2の長手方向に沿う両側面を覆うカバー18)」に代えて、
図11(b)に示すような「グリ石層5の上方と各植物配置台3とその上の各植物4aとを含む空間の少なくとも植物配置部2の長手方向に沿う両側面を覆う略ドーム状カバー23」を採用するようにしてもよい。
【0039】
〔実施形態4〕
次に
図12を参照して本発明の実施形態4を説明する。本実施形態4の基本的構成は前記実施形態1と同様であるので、以下では異なる部分についてのみ説明する。前記実施形態1においては「植物配置部2を構成する各植物配置台3の平面部3aの両縁部3e,3fから地上に延びるカバー18」は例えばビニールシートなどにより形成されていたが、本実施形態4においては、
図12(a)に示すような断熱材(例えばロックウールなどの公知の素材)で形成されたカバー28が、植物配置部2を構成する各植物配置台3の平面部3aの両縁部3e,3fから地上に延びる(すなわち、グリ石層5と植物配置部2の平面部3aとの間の空間の植物配置部2の長手方向に沿う両側面を覆う)ようにしている。本実施形態4では、このように前記カバー28を断熱材で形成するようにしたので、前記グリ石層5から放出される空気が有する地中熱を前記カバー28で覆われた空間内に安定的に保持させることができ、地中熱をより有効に活用できるようになる。なお、本実施形態4では、前記の
図12(a)における「植物配置部2を構成する各植物配置台3の平面部3aの両縁部3e,3fから地上に延びる、断熱材製のカバー28」に代えて、
図12(b)に示すような「グリ石層5の上方と各植物配置台3とその上の各植物4aとを含む空間の少なくとも植物配置部2の長手方向に沿う両側面を覆う、断熱材製の略ドーム状カバー29」を採用するようにしてもよい。
【0040】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は前記の各実施形態として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施形態1においては、前記カバー18(
図1,2など参照)は、グリ石層5と各植物配置台3の平面部3aとの間の空間の植物配置部2の長手方向に沿う両側面のみを覆うようにしているが、本発明においては、グリ石層5と各植物配置台3の平面部3aとの間の空間の植物配置部2の全体を覆う(すなわち、グリ石層5と各植物配置台3の平面部3aとの間の空間の、植物配置部2の長手方向に沿う両側面だけでなく、植物配置部2の長手方向における両端部をも覆う)ようにしてもよい。また、前記実施形態2においては、前記カバー23(
図9参照)は、グリ石層5の上方と植物配置部2とその上の各植物4aとを含む空間の植物配置部2の長手方向に沿う両側面のみを覆うようにしているが、本発明においては、グリ石層5の上方と植物配置部2とその上の各植物4aを含む空間の全体を覆う(すなわち、グリ石層5の上方と植物配置部2とその上の各植物4aとを含む空間の、植物配置部2の長手方向に沿う両側面だけでなく、植物配置部2の長手方向における両端部をも覆う)ようにしてもよい。