(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記過酸化物が、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドおよびピナンヒドロペルオキシドからなる群から選択されるケトンペルオキシドである、請求項3に記載の組成物。
(i)エポキシ樹脂と(ii)不飽和ポリエステルまたはビニル樹脂とのブレンドを、(a)過酸化物、ならびに(b)アミン硬化剤と鉄、銅およびマンガン化合物から選択される少なくとも1つの金属化合物との混合物、と混合することによって、前記ブレンドを硬化させる方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
同様の系について、近年、WO2011/09851、WO2011/098566、WO2011/098564およびWO2011/098562に記載されているが、これらの文献で開示された組成物はすべて、樹脂含有パック中に金属促進剤を有する。今では、アミン含有パック中に金属促進剤を含有する系で良好な硬化を得ることが可能であることが見出された。
【0011】
アミン含有パック中にコバルト化合物を含有する系は、樹脂の発泡、低い硬化活性および生成物の低硬度などの不満足な硬化挙動をもたらすことが見出されているので、これは驚くべきことである。
【0012】
(樹脂含有パックの代わりの)アミン含有パック中の促進剤の存在は、より多くの促進剤の系への組み込み(樹脂に含むことができる促進剤の量はかなり限られているため)および促進剤含有樹脂ブレンドを安定化する阻害剤/保存安定剤の存在なしを可能にする。
【0013】
本発明による組成物は、炭素繊維を含む多種多様な強化繊維と互換性のあるポリエステルまたはビニルエステル系樹脂の系の形成を可能にし、室温硬化後に十分な硬度を有する。
【0014】
同時に、それはエポキシ樹脂の室温硬化を可能にする。理論に拘束されるものではないが、ポリエステル/ビニルエステル硬化中に放出される熱は、エポキシ硬化を促進すると考えられている。
【0015】
本発明による組成物中に存在するエポキシ樹脂は、任意のエポキシ樹脂であることができる。それは、本来、飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環、モノマーまたはポリマーであってもよい。しかしながら、フェノール系エポキシ樹脂が好ましい。好適なフェノール系エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,5−ジヒドロキシナフタレンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルのジグリシジルエーテル、縮合した又は広がったビスフェノールのグリシジルエーテルならびに、多価フェノールのグリシジルエーテル、例えばエポキシノボラック樹脂が挙げられる。
【0016】
多価フェノールの他のグリシジルエーテルは、1.1から約2モルまでのエピクロロヒドリンを1モルの二価フェノールと反応させること、またはジエポキシドを添加した二価フェノールと反応させることによって調製されるポリマーである。さらなるエポキシドは、多価アルコールおよびエピクロロヒドリンを酸性触媒、例えば三フッ化ホウ素と反応させ、続いて得られる生成物をアルカリ性脱ハロゲン化水素剤で処理することによって作られる多価アルコールのグリシジルエーテルである。これらのエポキシドの調製に用いることができる多価アルコールには、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパン、ならびにヒドロキシ含有エステル、例えばヒマシ油が挙げられる。
【0017】
さらに他のエポキシドは、ポリカルボン酸のグリシジルエステルであり、このような酸は、例えばアゼライン酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、二量体化および三量化不飽和脂肪酸などである。また、有用なエポキシドには、エポキシ化炭化水素、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、ブタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、エポキシ化ポリブタジエンおよびリモネンジオキシドが挙げられる。他のエポキシドは、エポキシ化エステル、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化グリセロールトリリノレエートおよび3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。さらに他のエポキシドは、ビニル重合性モノエポキシドのポリマーおよびコポリマーであり、このようなモノエポキシドは、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートである。
【0018】
本発明の組成物に用いられる好適な不飽和ポリエステル(UP)またはビニルエステル樹脂の例は、以下である。
− オルト樹脂:これらは、無水フタル酸、無水マレイン酸またはフマル酸、およびグリコール、例えば1,2−プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、メチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールもしくは水素化ビスフェノールAをベースとする。通常、1,2−プロピレングリコールに由来するものを反応性希釈剤、例えばスチレンと組み合わせて用いる。
− イソ樹脂:これらはイソフタル酸、無水マレイン酸またはフマル酸、およびグリコールから調製される。これらの樹脂は、反応性希釈剤をオルト樹脂よりも高い割合で含有してもよい。(3)ビスフェノールA−フマレート:これらは、エトキシル化ビスフェノールAおよびフマル酸をベースとする。
− クロレンド酸(Chlorendics):これらは、UP樹脂の調製において、塩素/臭素含有無水物またはフェノールから調製される。
− ビニルエステル樹脂:これらは、それらの耐加水分解性および優れた機械的性質、ならびにそれらはスチレン排出が少なく、不飽和部位を末端位のみに有するために最も多く用いられる樹脂であり、それらはエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシもしくはテトラブロモビスフェノールAをベースにしたエポキシ)またはウレタン樹脂と(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミドとの反応によって導入される。
− ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂:これらは、シクロペンタジエンとのディールス−アルダー反応によって上記いずれかの樹脂タイプを修飾すること、または最初にマレイン酸をジシクロペンタジエンと反応させ、その後に他のタイプの樹脂について上記に示すように樹脂の製造を行うことのいずれかによって得られる樹脂である。
これらの樹脂はすべて、例えば、より低い酸価、ヒドロキシル価または無水物価を達成するために、または骨格鎖への可撓性ユニットの挿入によってより可撓性になるなどのために、当業者に既知の方法に従って修飾されてもよい。
【0019】
本発明による組成物におけるエポキシ樹脂 対 不飽和ポリエステルおよびビニルエステル樹脂の重量比は、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは40:60〜60:40の範囲である。
【0020】
不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂は、モノマーを含有してもよい。好適なモノマーの例としては、エチレン性不飽和単量体化合物、例えばスチレンおよびα−メチルスチレンのようなスチレン誘導体、ビニルトルエン、インデン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドン、ビニルシロキサン、ビニルカプロラクタム、スチルベン、またジアリルフタレート、ジベンジリデンアセトン、アリルベンゼン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸、ジアクリレート、ジメタクリレート、アクリルアミド;酢酸ビニル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、光学用途に使用されるアリル化合物(例えば(ジ)エチレングリコールジアリルカーボネート)、クロロスチレン、tert−ブチルスチレン、tert−ブチルアクリレート、ブタンジオールジメタクリレートならびにこれらの混合物が挙げられる。(メタ)アクリレート反応性希釈剤の好適な例としては、PEG200ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PPG250ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスマレイミド、シトラコンイミドならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
予備促進された樹脂におけるエチレン性不飽和モノマーの量は、不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂の重量ベースで、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%である。エチレン性不飽和モノマーの量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、最も好ましくは35重量%以下である。
【0022】
樹脂、モノマーおよび任意選択のペルオキシエステルは別として、第1のパックに存在することができるさらなる化合物は、プロモーターおよび柔軟剤である。阻害剤/保存安定剤もまた第1のパックに存在することができるが、促進剤が第2のパックに存在するので必要とされない。
【0023】
柔軟剤の例は、ベンジルアルコールおよびポリスルフィドである。
【0024】
プロモーターの例は、金属カルボン酸塩、1,3−ジケトンおよびリン含有化合物である。
【0025】
1,3−ジケトンの例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ならびにアセトアセテート、例えばジエチルアセトアセトアミド、ジメチルアセトアセトアミド、ジプロピルアセトアセトアミド、ジブチルアセトアセトアミド、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテートおよびブチルアセトアセテートが挙げられる。
【0026】
好適な金属カルボン酸塩の例としては、アンモニウム、アルカリ金属ならびにアルカリ土類金属の2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、ヘプタン酸、ネオデカン酸およびナフテン酸が挙げられる。好ましいアルカリ金属はKである。塩は促進剤溶液または樹脂それ自体に添加されてもよく、それらはその場で形成されてもよい。例えば、アルカリ金属2−エチルヘキサン酸は、溶液にアルカリ金属水酸化物および2−エチルヘキサン酸を添加した後に、促進剤溶液中でその場で調製することができる。
【0027】
リン含有化合物の例は、式P(R)
3およびP(R)
3=Oを有するリン化合物であり、式中、各Rは独立に、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキルおよび1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される。好ましくは、少なくとも2つのR基は、アルキル基またはアルコキシ基のいずれかから選択される。好適なリン含有化合物の具体例としては、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)、ジブチルホスファイトおよびトリエチルホスフェートが挙げられる。
【0028】
アセトアセテートが特に好ましいプロモーターである。特に好ましいのは、ジエチルアセトアセトアミドである。さらにより好ましいのは、ジエチルアセトアセトアミドと2−エチルヘキサン酸カリウムの組み合わせである。同様に好ましいのは、ジエチルアセトアセトアミドとジブチルホスフェートの組み合わせである。
【0029】
エポキシ樹脂用の好適なアミン硬化剤には、第一級アミン(脂肪族、芳香族および修飾アミンを含む)、ポリアミド、第三級および第二級アミンならびにイミダゾールが含まれる。好ましい硬化剤はアミンおよびイミダゾールである。好ましいアミンはポリアミンである。より好ましいのはジアミンである。
【0030】
好適なジアミンの例としては、イソプロピルジアミン、ジアミノメタン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5 ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、1,5−ジアミノ(2 メチル)ペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,6−ジアミノ−(2,2,3−トリメチル)ヘキサン、1,6−ジアミノ−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、トリシクロドデカンジアミン、ジアニリンメタン、ジアニリンエーテル、ジアニリンスルホン、2,2’,6,6’−テトラエチルジアニリンメタン、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジアミノ−3−オキサペンタン、α、ω−ポリテトラヒドロフリルジアミン、α、ω−ポリグリコールジアミン(Jeffamine(商標))、α、ω−ポリプロポキシジアミン(Jeffamines(商標))、α、ω−ポリエトキシ−プロポキシジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノベンゾフェノン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ジアミノナフタレン、ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミンならびに(オルト、メタおよびパラ)ジアミノベンゼンが挙げられる。
【0031】
他の好適なポリアミンの例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、ポリアミドアミンおよびこれらのアミンのいずれかの付加物がある。
【0032】
アミン硬化剤は、アミン官能性 対 エポキシ官能性のモル比が、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:2〜2:1、最も好ましくは約1:1の範囲であるような量で、本発明による組成物中に存在する。
【0033】
アミン硬化剤からなる第2のパックの少なくとも約70重量%、より好ましくは約80重量%であることが好ましい。このアミン硬化剤は、単一のアミンまたはアミン硬化剤の混合物であってもよい。
【0034】
好適なマンガン、銅および鉄の化合物は、それらのハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、酸化物、カルボン酸塩および配位子を有するこれらの金属錯体である。好適なカルボン酸塩の例としては、乳酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、アセチルアセトネート、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩またはナフテン酸塩が挙げられる。
【0035】
配位子の例としては、ピリジンならびにWO2011/83309に開示されている三座配位、四座配位、五座配位および六座配位の窒素ドナー配位子がある。
【0036】
好ましいマンガン化合物は、マンガンの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、乳酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩、ナフテン酸塩、酢酸塩、ならびにピリジンのMn錯体およびWO2011/83309に開示されている三座配位、四座配位、五座配位または六座配位の窒素ドナー配位子のMn錯体である。Mn(II)、Mn(III)、Mn(IV)およびMn(VII)化合物のいずれか1つを用いることができる。
【0037】
好ましい銅化合物は、銅の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、乳酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩、ナフテン酸塩および酢酸塩である。Cu(I)とCu(II)両方の化合物を用いることができる。
【0038】
好ましい鉄化合物は、鉄の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、乳酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩、ナフテン酸塩、酢酸塩、およびピリジンの鉄錯体またはWO2011/83309に開示されている三座配位、四座配位、五座配位もしくは六座配位の窒素ドナー配位子の鉄錯体である。Fe(II)とFe(III)の両方を用いることができる。より好ましくは、WO2011/83309に記載の三座配位または五座配位の窒素ドナー配位子の鉄(II)または鉄(III)錯体である。
【0039】
WO2011/83309によれば、MnとFeの両方のための好ましい窒素ドナー配位子は、ビスピドン配位子およびTACN−Nx配位子である。好ましいビスピドン配位子は、ジメチル−2,4−ジ−(2−ピリジル)−3−メチル−7−(ピリジン−2−イルメチル)−3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オン−1,5−ジカルボキシレート(N2py3o−Cl)である。好ましいTACN−Nx配位子は、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン(Me
3−TACN)である。
【0040】
本発明による組成物中の鉄、マンガン、銅およびそれらの混合物から選択される遷移金属の合計量は、好ましくは0.5〜75mmol/kgの不飽和ポリエステルおよびビニルエステル樹脂であり、より好ましくは2〜50mmol/kg、さらにより好ましくは2〜25mmol/kg、最も好ましくは2〜10mmol/kgの不飽和ポリエステルおよびビニルエステル樹脂である。
【0041】
鉄、マンガン、銅およびこれらの組み合わせから選択される遷移金属に加えて、第2のパックは、コバルト、チタン、バナジウム、スズ、クロム、ニッケル、モリブデン、ゲルマニウム、ストロンチウム、パラジウム、白金、ニオブ、アンチモン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、テルル、ルビジウムおよび/またはビスマス化合物から選択される他の金属化合物を含有してもよい。コバルト化合物は、その金属に関わる法的および毒性の問題ゆえに、最も好ましくない。
【0042】
好ましい実施形態において、鉄、マンガンおよび/または銅化合物以外の金属化合物は、第2のパック中に存在しない。
【0043】
第2のパック中の鉄、マンガン、銅およびこれらの混合物から選択される遷移金属の全濃度は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、最も好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0044】
アミン硬化剤および金属促進剤に加えて、第2のパックはさらなる化合物、例えばプロモーターおよび柔軟剤を含有してもよい。
【0045】
柔軟剤の例は、ベンジルアルコールおよびポリスルフィドである。
【0046】
好適なプロモーターの例は、第1のパックに組み込むのに適した上記のものである。これらのプロモーターは、第1のパック、第2のパックまたはその両方に存在することができる。
【0047】
第2のパックの組成物は、室温またはそれよりわずかに高い温度(約80℃まで)で、成分を単に混合することによって調製することができる。
【0048】
本発明による組成物中に存在する過酸化物は、不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂の硬化を開始するために使用され、この目的に適しているとして当業者に既知の任意の過酸化物であってもよい。好ましくは、過酸化物は有機過酸化物である。好適な有機過酸化物には、ペルオキシカーボネート、ペルオキシエステル、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシドおよびケトンペルオキシドが挙げられる。
【0049】
これらの化合物が反応することになるため、過酸化物を金属促進剤およびアミン硬化剤と同じパックに格納することはできない。また、それは早期反応につながることになるため、ほとんどの過酸化物は樹脂ブレンドを含有するパックに格納することもできない。しかしながら、ペルオキシエステル、具体的にはtert−ブチルペルオキシベンゾエートおよびtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートは、樹脂含有パックに安全に格納することができる。したがって、このタイプの過酸化物を用いて、本発明による組成物は2つのパックのみを含有することが可能である。
【0050】
他の過酸化物を組成物に含ませることが望まれる場合、該過酸化物を含有する第3のパックが必要とされる。
【0051】
本発明による組成物中に存在するのが好ましい過酸化物は、ヒドロペルオキシドおよびケトンペルオキシドである。好ましいヒドロペルオキシドとしては、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシドおよびピネンヒドロペルオキシドが挙げられる。好ましいケトンペルオキシドとしては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドおよびアセチルアセトンペルオキシドが挙げられる。
【0052】
もちろん、これら過酸化物の2つ以上の混合物もまた組成物中に存在してもよい。
【0053】
上記ヒドロペルオキシドまたはケトンペルオキシドのうち1つまたは複数を別のタイプの過酸化物、例えばペルオキシエステルと組み合わせることも可能である。後者は第1または第3のパックのいずれかに存在することができる。好ましい組み合わせは、メチルエチルケトンペルオキシドおよびtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートである。
【0054】
本発明による組成物がマンガン化合物を含む場合、ケトンペルオキシドよりもヒドロペルオキシドを使用することが好ましい。マンガン化合物とケトンペルオキシドを組み合わせて使用することは、発泡につながり得ることが判明している。
【0055】
マンガン非含有組成物については、ケトンペルオキシドを用いることが好ましい。最も好ましいケトンペルオキシドはメチルイソプロピルケトンペルオキシドである。
【0056】
過酸化物は、不飽和ポリエステルおよびビニルエステル樹脂の重量に対し、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、最も好ましくは0.5〜2重量%の量で本発明による組成物中に存在する。
【0057】
過酸化物に加えて、第3のパックは、さらなる化合物、例えば鈍感剤を含有してもよい。
【0058】
好適な鈍感剤の例としては、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、およびアルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アルコール、リン酸塩またはカルボン酸基を担持する溶媒が挙げられる。好適な溶媒の例としては、脂肪族炭化水素溶媒、例えばホワイトスピリットおよび無臭ミネラルスピリット(OMS)、芳香族炭化水素溶媒、例えばナフテンおよびナフテンとパラフィンの混合物、イソブタノール;ペンタノール;1,2−ジオキシム、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);2,2,4−トリメチルペンタンジオールジイソブチレート(TxIB);エステル、例えばマレイン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ケトグルタル酸のモノおよびジエステル、ピルビン酸およびアスコルビン酸のエステル、例えばアスコルビン酸パルミチン酸エステル;アルデヒド;モノおよびジエステル、より具体的にはマロン酸ジエチルおよびコハク酸;1,2−ジケトン、具体的にはジアセチルおよびグリオキサール;ベンジルアルコール;ならびに脂肪アルコールが挙げられる。
【0059】
組成物のすべてのパックを混合したとき、樹脂が硬化される。硬化方法は、開始剤系、促進剤系、硬化速度を適応させる化合物および硬化される樹脂組成物に応じて、−15℃から250℃までの任意の温度で実施することができる。好ましくは、その硬化方法は、ハンドレイアップ、スプレーアップ、フィラメントワインディング、樹脂トランスファー成形、コーティング(例えばゲルコートおよび標準コーティング)、ボタンの製造、遠心鋳造、波形シートまたはフラットパネル、リライニングシステム、化合物の注入を介したキッチンの流し台などの用途で通常使用される周囲温度で行われる。しかしながら、その硬化方法はまた、SMC、BMC、引き抜き成形技術などに用いることもでき、180℃まで、より好ましくは150℃まで、最も好ましくは100℃までの温度で使用される。
【0060】
好ましい実施形態において、樹脂は、フィラーおよび/または強化繊維の存在下で硬化される。強化繊維の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維(例えばTwaron(登録商標))、天然繊維((例えばジュート、ケナフ、工業用大麻、亜麻(リネン)、ラミーなど)が挙げられる。フィラーの例は、石英、砂、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チョーク、水酸化カルシウム、粘土および石灰である。
【0061】
硬化樹脂は、硬度をさらに最適化するために後硬化処理に供することができる。このような後硬化処理は、一般に30分〜15時間、40〜180℃の範囲の温度で行われる。
【0062】
硬化樹脂は、海洋用途、化学的固着、屋根材、建設、リライニング、パイプおよびタンク、床、風車ブレード、積層体を含む種々の用途に使用される。
【実施例】
【0063】
以下の材料を下記実施例において使用した。
Palatal P4− オルト樹脂系不飽和ポリエステル樹脂(例 DSM resins)
Epikote 828− ビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンから製造された中間粘度の液体エポキシ樹脂(例 Momentive)
Aradur 3258− ポリアミン付加エポキシ硬化剤(例 Huntsman)
Butanox(登録商標)P50− メチルイソプロピルケトンペルオキシド(フタル酸ジメチル中50重量%;例 AkzoNobel)
Trigonox(登録商標)K90− クミルヒドロペルオキシド過酸化物(芳香族溶媒混合物中90重量%;例 AkzoNobel)
Nouryact(商標)CF12− Cu系促進剤溶液 例 AkzoNobel
Nouryact(商標)CF13− Cu系促進剤溶液 例 AkzoNobel
Nouryact(商標)CF20− Mn系促進剤溶液 例 AkzoNobel
Nouryact(商標)CF31− Fe、CuおよびMn系促進剤溶液 例 AkzoNobel
Nouryact(商標)CF32− FeおよびCu系促進剤溶液 例 AkzoNobel
Nouryact(商標)553S− CoおよびCu系促進剤溶液 例 AkzoNobel
促進剤NL51−P− 溶媒混合物中コバルト(II)2−エチルヘキサン酸、6%Co(例 AkzoNobel)
【実施例1】
【0064】
積層シートを
図1に列挙された組成物から以下のように調製した。洗浄したガラス板をポリエステル箔で覆った。
【0065】
組成物の3つのパックを完全に混合し、箔表面に広げた。続いて、この組成物を別のポリエステル箔で覆った。封入されたいかなる空気も、ローラーを用いて除去される。続いて、ポリエステル箔をガラス板で覆った。得られた積層シートを20℃で硬化させた。
【0066】
ポットライフ(ゲル化時間)とは、標準分析法F/72.1を用いた、パックの混合と混合物がそれ以上流れない瞬間との間の時間である。この標準分析法は、Akzo Nobel Polymer Chemicalsから入手可能である。
【0067】
外層が粘着性を失うのに必要な時間を手で測定した。
「遅い」は、外層が180分以内に不粘着にならなかったことを意味する。
「中程度」は、外層が60〜180分に不粘着となったことを意味する。
「速い」は、外層が60分以内に不粘着となったことを意味する。
【0068】
ショアD硬度を、標準方法ASTM D2240により測定した。
【表1】
【0069】
これらのデータは、Coを唯一の金属化合物として使用すると(金属化合物としてCoのみを含有するNL−51−Pを用いた実験を参照)、Cu、Feおよび/またはMn含有系を使用するよりも硬化が著しく遅くなることを示している。さらに、Coのみを使用した場合、硬化生成物はゴム状のままであった。
【実施例2】
【0070】
積層シートを
図1に列挙された組成物から以下のように調製した。洗浄したガラス板をポリエステル箔で覆った。
【0071】
組成物の3つのパックを十分に混合し、箔表面に広げた。続いて、この組成物を、ローラーを用いて強化繊維で含浸し、その後、別のポリエステル箔で覆った。封入されたいかなる空気も、ローラーを用いて除去される。その後、ポリエステル箔をガラス板で覆った。得られた積層シートを20℃で硬化させた。
【0072】
炭素強化積層シートを、炭素繊維生地および表1の組成物1および8を用いて、本方法に従って製造した。20℃でのこれらのシートのポットライフは、それぞれ5分および12分であった。
【実施例3】
【0073】
Twaron(登録商標)強化積層シートを、付加的にベンジルアルコール10重量部を含有する表1の組成物9とともにTwaron(登録商標)繊維織物を用いて、実施例2の方法に従って製造した。20℃でのこのシートのポットライフは9分であった。
【実施例4】
【0074】
ガラス繊維強化積層シートを、0.2重量部のNouryact CF12および10重量部のベンジルアルコールのみを含有することを除いて表1の組成物1と同様の組成物を用いること以外は、実施例3の方法に従って製造した。20℃でのこれらのシートのポットライフは8分であった。
【実施例5】
【0075】
実施例5は、Twaron(登録商標)繊維を用いて繰り返し、同じポットライフをもたらした。
なお、本発明には以下の態様も含まれる。
[項1] (i)エポキシ樹脂、(ii)不飽和ポリエステルまたはビニルエステル樹脂、および任意選択で(iii)ペルオキシエステルのブレンドを含む第1のパック、
エポキシ樹脂用のアミン硬化剤と鉄、銅およびマンガン化合物から選択される少なくとも1つの遷移金属化合物とを含む第2のパック、ならびに
少なくとも第1のパックがペルオキシエステルを含有しない場合、過酸化物を含む第3のパック
を含むマルチパック硬化性組成物。
[項2] 前記遷移金属が銅である、[項1]に記載の組成物。
[項3] 2つのパックを含み、前記第1のパックがペルオキシエステルを含む、[項1]または[項2]に記載の組成物。
[項4] 3つのパックを含み、前記第1のパックがペルオキシエステルを含む、[項1]または[項2]に記載の組成物。
[項5] 前記ペルオキシエステルがtert−ブチルペルオキシベンゾエートおよびtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートから選択される、[項1]〜[項4]のいずれか一項に記載の組成物。
[項6] 3つのパックを含み、前記第1のパックがペルオキシエステルを含まない、[項1]または[項2]に記載の組成物。
[項7] 前記第3のパックに存在する過酸化物がケトンペルオキシドおよび有機ヒドロペルオキシドから選択される、[項1]、[項2]、[項4]、[項5]または[項6]のいずれか一項に記載の組成物。
[項8] 前記過酸化物が、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドおよびピナンヒドロペルオキシドからなる群から選択されるケトンペルオキシドである、[項7]に記載の組成物。
[項9] 前記過酸化物がメチルイソプロピルケトンペルオキシドである、[項8]に記載の組成物。
[項10] 遷移金属が銅である、[項9]に記載の組成物。
[項11] (i)エポキシ樹脂と(ii)不飽和ポリエステルまたはビニル樹脂とのブレンドを、(a)過酸化物、ならびに(b)アミン硬化剤と鉄、銅およびマンガン化合物から選択される少なくとも1つの金属化合物との混合物、と混合することによって、前記ブレンドを硬化させる方法。
[項12] 前記ブレンドが強化繊維および/またはフィラーの存在下で硬化される、[項11]に記載の方法。
[項13] 前記強化繊維が炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、天然繊維およびこれらの組み合わせから選択される、[項12]に記載の方法。
[項14] 前記フィラーが、砂、石英、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チョーク、水酸化カルシウム、粘土および石灰から選択される、[項13]に記載の方法。