特許第5961280号(P5961280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5961280子供用チャイルドシート装置及びベビーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961280
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】子供用チャイルドシート装置及びベビーカー
(51)【国際特許分類】
   B62B 9/10 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B62B9/10 A
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-547968(P2014-547968)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-500772(P2015-500772A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012076120
(87)【国際公開番号】WO2013092690
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】102011089192.7
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514284992
【氏名又は名称】セルデューク,ヴァレンティン
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】セルデューク,ヴァレンティン
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05636900(US,A)
【文献】 特開2010−137587(JP,A)
【文献】 実開平03−016450(JP,U)
【文献】 実開平03−087452(JP,U)
【文献】 特開2009−119276(JP,A)
【文献】 米国特許第04753482(US,A)
【文献】 登録実用新案第3092029(JP,U)
【文献】 特開平08−229074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 7/00−19/04
B60N 2/00− 2/72
A61G 5/00
A47C 7/02
A47C 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子供の脊柱を整列させ、子供の脊柱弯曲(側弯)を防止及び治療するための、子供用チャイルドシート装置(1)であって、
座席上部(2)と座席下部(3)とを含み、前記座席上部(2)には、両側に支持要素(8)が設けられ、前記支持要素は、子供が前記チャイルドシート装置(1)に座った際に、複数の前記支持要素(8)が前記子供の上半身を腋下の高さにおいて抱持し、それによって前記子供の横方向の動きを制限し、かつ、前記子供の身体を真っ直ぐにすると共に該身体を上に引っ張るように構成及び前記座席上部(2)に対して配置され、複数の前記支持要素(8)は、複数の前記支持要素(8)が前記チャイルドシート装置(1)の水平方向に調節可能となるように伸長可能であり、前記座席上部(2)は、2つの縦桁(4)を有し、前記縦桁(4)は、伸長可能かつ伸長された位置において係止可能に各々形成され、前記支持要素(8)は、前記座席上部(2)及び前記縦桁(4)に固定された状態で接続されるか、縦桁(4)に沿って変位可能であるかのいずれかであり、前記支持要素(8)は、前記支持要素(8)の設定された高さにおいて前記支持要素(8)を固定するために、前記支持要素(8)の縦桁(4)における各々の位置に係止され得るように形成され、かつ、前記チャイルドシート装置が、自動車用チャイルドシートまたはベビーカーの部分である、子供用チャイルドシート装置。
【請求項2】
複数の前記支持要素(8)が、高さ方向及び/または横方向に調節可能であるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のチャイルドシート装置。
【請求項3】
複数の前記支持要素(8)をそれらの前面において閉じ得るように構成されている閉鎖装置(12、14)が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のチャイルドシート装置。
【請求項4】
前記支持要素(8)が詰め物を配されるように構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置。
【請求項5】
前記支持要素(8)が、前記チャイルドシート装置が意図した通りに使用される際に前記子供の腕が置かれる上側において、弾力を有するように、丸みを帯びるように及び/または平らになるように形成されるように構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置。
【請求項6】
少なくとも1つの弾性要素が設けられており、前記支持要素(8)は該弾性要素を介して座席上部(2)に弾性的に接続され、かつ前記支持要素(8)が縦及び/または横方向に負荷を受けた際に、前記支持要素(8)の弾性変形が該弾性要素によって可能となることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置。
【請求項7】
前記座席上部(2)及び/または前記座席下部(3)が枢動可能に構成され、特に、前記座席上部(2)及び/または前記座席下部(3)は、それぞれ前記座席下部(3)及び前記座席上部(2)に対して、少なくとも1つの既定の角度(α)において係止可能に構成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置。
【請求項8】
前記座席上部(2)が伸長可能であるように構成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置。
【請求項9】
前記チャイルドシート装置(1)と、特にその前記座席上部(2)、前記座席下部(3)及び複数の前記支持要素(8)とが、幼児を受容するように構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置。
【請求項10】
前記チャイルドシート装置(1)は、モータービークルのための自動車用チャイルドシートと一体の部品であるか、自動車用チャイルドシートにおける着脱可能な部品として設けられ得るまたは取り付けられ得ることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置。
【請求項11】
複数の前記支持要素(8)が前記子供の上半身を腋下の高さにおいて抱持し、それによって前記子供の横方向の動きを制限し、前記子供を引っ張る力を前記子供の胸より上へ及ぼすことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のチャイルドシート装置を有するベビーカー(13)、特にバギー。
【請求項13】
前記チャイルドシート装置(1)が、前記ベビーカー(13)に固定された一体の部品であることを特徴とする、請求項12に記載のベビーカー。
【請求項14】
前記チャイルドシート装置(1)が、前記ベビーカー(13)における着脱可能な部品として設けられており、前記ベビーカー(13)のフレームに取付装置により取り付けられ得ることを特徴とする、請求項12に記載のベビーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子供の脊柱を整列させ、子供の脊柱弯曲(側弯)を防止及び治療するための、子供用チャイルドシート装置に関する。該チャイルドシート装置は、例えば車両により子供を運ぶため、例えば自動車の座席などのような、さらなる装具に取り付けられ得る。本発明は、ベビーカーにも関する。
【背景技術】
【0002】
ベビーカーについては広く知られているため、その構造及び機能を詳細に論じる必要はない。ベビーカーは、乳児及び幼児を、寝た状態または座った状態で運ぶための補助具である。あるベビーカーでは、かご部分をフレームから取り外すことができ、またある場合には自動車用チャイルドシートとして使用することもできる。
【0003】
チャイルドシートは拘束装置とも呼ばれ、子供の小さい身体サイズに適合した座席である。特に、通常は、それは子供を車両内で安全に運ぶための座席に関し、該座席を取り付けるシステム及び子供を拘束するシステムを有するか、少なくとも子供の座る位置を高くして、座席位置に設けられた車両のシートベルトが喉を跨がず肩越しに延びるようにする。
【0004】
人間の脊柱は、複数の弧により形成されている。身体の平衡を保つため、該弧は互いに対向しており、それによって相互にバランスを取っている。矢状面では、脊柱は、頸椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯及び仙椎後弯からなる4つの生理的弯曲を形成している。前頭面における脊柱の右または左への偏りは側弯と呼ばれる。子供が歩き始めるまでの(ある程度の)側弯は生理的なものと考えられ、側弯姿勢と呼ばれる。しかしながら、併発する椎骨の回旋により生じる側弯変形、並びにそれに続く椎体、椎弓及び靭帯の発達不良は、筋肉組織によって後から補うことができない。このため、側弯は病的なものである。
【0005】
側弯は、その原因及び発症時期、弯曲位置及び弯曲パターン、並びにその度合い(弯曲角度及び回旋度)及び弯曲方向(右または左)により分類される。弯曲は、子供の頃または身長が急速に成長する時期に発現及び悪化することが明らかになっている。身体の成長が急速であるほど、弯曲がより早く大きくなる。そのため、側弯は成長変形に分類される。
【0006】
現在では、側弯はインプラントの挿入や、整形外科用コルセットの着用によって治療されている。しかしながら、インプラントの挿入は著しい外科的介在であるため、幼児には適していない。また、整形外科用コルセットの着用も、幼児の側弯を治療するのに適した方法ではない。この点において、これらの現在知られている側弯治療手段は、大人またはより年長の子供への使用に制限されている。幼児の場合は成長速度が非常に速いため、側弯発生のリスクが最も大きいにもかかわらず、このような幼児には、現在のところ側弯を治療するための適した手段が存在しない。
【0007】
このことは、改善すべき状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの背景に基づき、本発明の目的は、幼児の脊柱弯曲(側弯)を防止及び治療し得る手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は、請求項1の特徴を有するチャイルドシート装置及び/または請求項12の特徴を有するチャイルドシートにより達成される。
【0010】
従って、以下に示すものが提供される:
− 子供の脊柱を整列させ、子供の脊柱弯曲を防止及び治療するための、子供用チャイルドシート装置であって、座席上部と座席下部とを含み、前記座席上部には、両側に支持要素が設けられ、前記支持要素は、子供が前記チャイルドシートに座った際に、複数の前記支持要素が前記子供の胸郭を腋下の高さにおいて後ろから前に抱持し、それによって前記子供の横方向の動きを制限しかつ上方向に優しく牽引する力を及ぼすように構成及び前記座席上部に対して配置され、かつ、前記チャイルドシート装置が、自動車用チャイルドシートまたはベビーカーの部分である、子供用チャイルドシート装置。
− 本発明のチャイルドシート装置を有するベビーカー、特にバギー。
【0011】
本発明の基礎となる概念は、特別に設けられた支持要素が設けられているチャイルドシート装置からなり、該支持要素は子供の上半身を脇下の高さにおいて後ろから前に抱持し、それによってそれを支持、固定及び整列する。本発明に従う前記チャイルドシート装置は、前記子供の体重が支持要素に預けられるという特有の利点を有する。前記子供の身体は真っ直ぐにされ、好ましくは軽く上に引っ張られる。同時に、前記支持要素によって、前記子供の横方向の動きが制限される。本発明に従う前記チャイルドシート装置によって、脊柱弯曲が防止され、または現存する脊柱弯曲が治療される。
【0012】
有利な実施形態及び発展形は、さらなる下位請求項及び図面における各図を参照した詳細な説明により明らかになる。
【0013】
特に有利な実施形態では、複数の前記支持要素は高さ方向及び/または横方向に調節可能である。このようにして、前記支持要素は非常に容易に異なるサイズの子供に適合し得る。対応する高さ調節により、前記子供、及び特にその脊柱に、望ましい一定の引っ張りもまた及ぼされ、それによって前記子供は可能な限り背筋を伸ばして、側方へ曲がらず前記座席に座ることができる。特に、適切な高さ調節により、望ましい一定の引っ張りは、子供の胸より高く子供に及ぼされる。ここで「背筋を伸ばして」とは、該脊柱が導入部で述べたS字形状であって、それによって椎骨の回旋を同時に伴う該脊柱の横方向の屈曲が可能な限り生じていない状態であることを示す。
【0014】
さらに有利な実施形態では、複数の前記支持要素を、それらの前面、すなわち座っている前記子供の胸の側方において閉じ得るように構成されている閉鎖装置が設けられている。前記閉鎖装置は、例えば、クリップファスナ、面ファスナ、締め金等を備えるベルトとして形成され得る。このようにして、ベルトを前記子供の足を通すことによって前記チャイルドシート装置を固定する必要をなくすことも可能となる。加えて、前記子供の快適性もそれによって向上する。
【0015】
有利な一実施形態では、少なくとも一方の支持要素、好ましくは両方の支持要素は、詰め物を配されている。このようにして、前記子供の上半身における圧点が避けられるか、少なくとも弱められる。
【0016】
同様に、好ましい実施形態では、少なくとも一方の支持要素、好ましくは両方の支持要素が、前記装置が意図した通りに使用される際に前記子供の腕が置かれる位置に対し上側において、弾力を有するように、丸みを帯びるように及び/または平らになるように形成されている。これによっても、前記子供の上腕における圧点が避けられるか、少なくとも弱められることとなる。
【0017】
有利な一実施形態では、前記支持要素を座席上部に弾性的に接続する、少なくとも1つの弾性要素が設けられている。前記弾性要素は、前記支持要素が縦及び/または横方向に負荷を受ける際に、前記支持要素の弾性変形を可能とするように設けられている。この種の可撓性降伏は、脊柱弯曲の防止及び治療に関するその機能性を減じることなく、前記子供が前記座席に座る快適性を向上する。
【0018】
有利な一実施形態では、前記座席上部及び/または前記座席下部は、枢動可能に構成される。特に、前記座席上部及び/または前記座席下部は、それぞれ前記座席下部、前記座席上部に対し、少なくとも1つの既定の角度において係止可能に構成される。この枢動可能な機能は、前記チャイルドシート装置をベビーカーに配置または搭載する際に、前記チャイルドシート装置を、ベビーカー、例えばバギーの背もたれの位置に非常に容易に適合させ得るという利点を有する。
【0019】
さらに有利な実施形態では、前記座席上部が伸長可能である。このようにして、例えば、前記座席上部に取り付けられている詰め物を配された頭部を、異なる大きさの子供に対して非常に容易に適合させることができ、そのため、前記子供にとっての前記チャイルドシート装置の快適性を向上させることができる。
【0020】
一実施形態では、前記チャイルドシート装置と、特にその前記座席上部、前記座席下部及び前記支持要素とが、子供、特に1〜3歳児を受容するように、寸法を取られて形成される。
【0021】
特に有利な実施形態は、前記チャイルドシートが、モータービークルのための自動車用チャイルドシートと一体の部品として形成されることを提供する。前記チャイルドシート装置は、自動車用チャイルドシートにおける着脱可能な部品として設けられ得る、及び/もしくは取り付けられ得る、または、前記自動車用チャイルドシートと一体の部品として形成され得る。
【0022】
本発明に従うベビーカーの別の同様の有利な実施形態は、固定された、すなわち前記ベビーカーと一体の部品であるチャイルドシート装置を提供する。あるいは、着脱可能な部品として前記ベビーカーに挿入される、及び、取付装置を介して、例えばベルト、クリップ等により、前記ベビーカーのフレームに着脱可能に取り付け可能な前記チャイルドシート装置も実現可能である。
【0023】
本発明に従う他の実施形態では、前記座席上部及び/または前記座席下部は、少なくとも1つの横桁を介して互いに接続している、少なくとも2つの縦桁を有する。このようにして、特に軽く安価なチャイルドシート装置が提供され得る。本発明のさらなる実施形態によれば、前記座席上部及び前記座席下部は、共通の横桁を介して固定された状態で接続されているか、該横桁の周りに枢動可能に接続されている。前記共通の横桁と前記座席上部の一部及び前記座席下部の一部とを固定された状態で取り付けることにより、前記チャイルドシート装置を特に安価に生産できるという利点を有する。前記座席上部における各々の前記縦桁は、第1の縦桁と、前記第1の縦桁の一部に変位可能に接続された第2の縦桁とを有する。前記座席上部の一部及び前記座席下部の一部は、好ましくは、各々少なくとも1つのカバー及び詰め物を有する。
【0024】
上記実施形態及び発展形は、所望の任意の想定可能な方法により互いに組み合わせられ得る。本発明のさらなる可能な実施形態、発展形及び実装は、特に言及していなくても、上記のまたは以下に例示の実施形態に関する本発明の特徴の組み合わせを含む。特に、当業者もまた、本発明の各々の基本形態への改良または付加として、個別の概念を付け加えるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
次に示す図面の模式図において表される、以下に例示の実施形態を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
図1図1は、本発明に従うチャイルドシート装置の実施形態における模式図である。
図2図2は、本発明に従うチャイルドシート装置の実施形態における斜視図である。
図3図3は、図2に表される本発明に従うチャイルドシート装置を備えたベビーカーにおける図である。
図4図4は、図3のベビーカー及びチャイルドシート装置における図であり、該チャイルドシート装置には、幼児が留め金具によりしっかりと固定されている。
【0027】
付属の図面は、本発明の実施形態のよりよい理解を提供するものである。これらは実施形態を図示し、詳細な説明と併せて、本発明の原理及び概念を明確にするのに役立つ。他の実施形態及び多くの言及された利点は、該図面中に見ることができる。該図面の要素は、互いの大きさの関係を必ずしも示しているわけではない。
【0028】
該図面における図中では、類似の、機能的に類似の、並びに同等に作用する要素、特徴及び部品には、別の言及がない限り、各々同じ参照番号を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に従うチャイルドシート装置1の実施形態における、模式的な、非常に簡略化された説明図である。この場合のチャイルドシート装置1は、子供の健康な脊柱の発達のための治療用座席である。
【0030】
本発明に従うチャイルドシート装置1は、特に、例えば自動車の座席、バギー及び他のチャイルドシートのような他の座席装置と共に使用される。このために、チャイルドシート装置1は、例えば自動車の座席またはバギーの座席と一体にされ得るか、各々の座席への挿入物として配置され、加えて任意にはそこに取り付けられ得る。
【0031】
チャイルドシート装置1は、図1に表されるように、座席上部2または背面部分と、座席下部3または座面部分とを有する。座席上部2及び座席下部3は、互いに固定された状態で接続されてもよく、固定された状態で既定の角度αを互いに形成してもよい。同様に、座席上部2及び座席下部3は、座席上部2と座席下部3との間の角度αが可変的に調節可能であるように、互いに枢動可能に接続されてもよい。
【0032】
図1に例示された実施形態に表されるように、座席上部2及び座席下部3は、各々2つの縦桁4を有する。座席上部2及び座席下部3の縦桁4は、共に横桁5に接続され、座席上部2及び/または座席下部3は、例えば蝶番により、横桁5の周りに枢動可能となっている。座席上部2及び/または座席下部3は、横桁5に、座席上部2及び/または座席下部3の枢動のための蝶番6を形成する。チャイルドシート装置1には、好ましくは、座席上部2と座席下部3との角度を異なる角度で係止するための係止手段が設けられる。
【0033】
加えて、座席上部2及び座席下部3の前記横桁5は、座席上部2及び座席下部3の各々さらなる安定化のために、各々少なくとも1つのさらなる横桁5と接続され得る。例えば、横桁5は、座席上部2の上端または頭部領域に設けられてもよく、座席上部2の2つの縦桁4と接続されてもよい。さらに、縦桁4は、座席下部3の下端に設けられてもよく、座席下部3の前記2つの縦桁4が、互いに接続されてもよい。
【0034】
座席上部2の前記2つの縦桁4及び座席下部3の前記2つの縦桁4は、横桁5に各々固定された状態で接続されることができ、例えば、共に1つの部品として形成されてもよく、横桁5に溶接または鑞接されることにより接続されてもよい。同様に、座席上部2及び座席下部3の前記2つの縦桁4は、例えばねじ止め及び/またはピン止めにより、関連する横桁5に着脱可能にも接続されてもよい。
【0035】
チャイルドシート装置1の座席上部2には、支持装置7が設けられる。支持装置7は、両側にそれぞれ支持要素8を有する。支持要素8は、座席上部2及びその縦桁4に固定された状態で接続されることができ、例えば、共に1つの部品として形成されてもよく、そこに溶接または鑞接されることにより接続されてもよい。同様に、支持要素8は、縦桁4に沿って変位可能となるように、及びそれによって高さ調整可能となるようにも設けられてもよい。支持要素8は、好ましくは、その設定された高さにおいてそれを固定するため、縦桁4におけるその各々の位置に係止または固定され得るように形成される。
【0036】
支持要素8は、支持要素8が子供の上半身を腋下の高さで後ろから前に抱持し得るような高さにおいて、座席上部2に取り付けまたは係止されてもよい。このようにして、子供の体重の一部は、支持要素8上に預けられ得る。一方、子供が横方向に動く能力は制限され得ることにより、望まれない脊柱の横方向の傾きが防止される。支持要素8を用いて、支持要素8を適切な高さに係止することにより、子供の上半身の若干の牽引または若干の引っ張りもまた生じ得る。
【0037】
上述のように、支持要素8は、好ましくは、大きさの違う子供に適合させ得るように、高さ調整可能である。同様に、支持要素8は、任意には伸長可能であってもよい(図示しない)。加えて、支持要素8には、好ましくは前面に閉じ得るベルト(図示しない)が設けられ、該ベルトは子供の足の間に存在する通常のベルトの接続と置換可能である。
【0038】
支持要素8は、機能及び使用目的に応じて、任意の形状とすることができる。非常に簡略化された説明図1に表されるように、支持要素8は、例えば真っ直ぐであってもよく、例えば曲がっていたり角があったりしてもよい。図1の点線に示されるように、支持要素8は、子供の周囲を少なくとも部分的に取り囲むことができる。
【0039】
図1の模式的説明図における破線によりさらに示されるように、チャイルドシート装置1は詰め物を配されるか、少なくとも布または上掛けを被せられるのが好ましい。このために、チャイルドシート装置1は、座席上部2及び座席下部3に当てられた詰め物、並びに任意には側部支持要素8に当てられた詰め物(図示しない)を有する。座席上部2に当てられた詰め物は、例えば、連続した詰め物部分を有していてもよく、2つの分離した詰め物部分、すなわち図1に表されるように、背面用の詰め物部9と頭部用の詰め物部9とを有していてもよい。
【0040】
本発明に従うチャイルドシート装置1のさらなる実施形態では、2つの縦桁4は、伸長可能に形成され得る。このために、該縦桁4は、例えば2つの部分に形成され、第1の下方縦桁部は、例えば第2の上方縦桁部を受け入れて案内するために中空に形成される。第2の縦桁部もまた中空であってもよく、中実であってもよい。第2の縦桁部は、前記頭部用の詰め物部を異なる高さに調整するため、第1の縦桁部内に変位可能に配置される。前記詰め物部9は、縦桁4における2つの第2の縦桁部に接続される。横桁5は、2つの第2の縦桁部に互いに接続されてもよく、さらに、該2つの第2の縦桁部を引っ張り、それによってスーツケースの伸長可能な取っ手に相当する方法により該縦桁4を伸ばすための取っ手として機能してもよい。前記頭部用の詰め物部9もまた、該2つの第2の縦桁部に取り付けられ、さらに任意には横桁5を覆ってもよい。
【0041】
本発明に従うチャイルドシート装置1は、脊柱または背骨を矯正及び整列させ、側弯または脊柱弯曲を早期治療するために提供される。現在までは、これらの矯正は、2つの方法により行われてきた。脊柱矯正における1つ目の方法は、大人または子供へのインプラントの挿入であるが、該子供は通常16歳を超えているため、背骨の形成がほぼ終わっている。この目的に必要な外科的介在は、背骨が活発に成長する時期にある低年齢の子供には実施できない。背骨の矯正における2つ目の方法は、整形外科用コルセットの着用である。このような整形外科的コルセットは、胸郭の外部固定を含み、したがって、既に存在する脊柱の弯曲がこれ以上大きくならないか、より目立つことにならないようにすることを主に目的としているが、該弯曲の根本を治療するものではない。整形外科用コルセットの着用は、13〜14歳の子供に推奨されている。しかしながら、このような整形外科用コルセットの1つの欠点として、脊柱における筋肉組織の機能を制限し、それによって筋肉組織の機能低下及び萎縮または衰退につながるということが挙げられる。整形外科用コルセットの使用は、インプラントの挿入に比べて非常に外傷の少ない介在であるものの、整形外科用コルセットはインプラントに比べて非常に効果が小さい。
【0042】
前述の脊柱矯正の治療方法の両方における欠点は、幼い子供の場合には、その年齢では骨格が未だ非常に活発に成長する時期にあるため、これらの方法が使用できないということである。上述の2つの方法を用いてこのような成長期に介入すると、脊柱のさらなる発育において永続的な悪影響を及ぼし得る。
【0043】
したがって、本発明によれば、脊柱の弯曲を治療するためのチャイルドシート装置1が提供され、これにより上述の問題点が解決される。幼少期における脊柱の変形または弯曲は、成人期において多くの問題を生じさせるため、脊柱の弯曲の矯正は極めて重要である。そのため、本発明は、手術の必要を避け、したがって外傷の介在なく脊柱弯曲の形成を防止する、チャイルドシート装置1を提供する。そのうえ、本発明に従うチャイルドシート装置1は、既に存在するまたは進行中の脊柱弯曲または側弯を、非常に早い時期に矯正することができ、特に幼児期、すなわち、例えば6〜8ヶ月から2〜3年までの範囲において矯正を可能にする。
【0044】
図2は、本発明に従うチャイルドシート装置1の実施形態の斜視図を示す。本発明に従うチャイルドシート装置1は、患者の体を若干上方向に引っ張って真っ直ぐにする座席またはいわゆる牽引座席として機能し得る。チャイルドシート装置1は、座席上部2と座席下部3とを有し、これらは各々2つの縦桁4を有する。座席上部2及び座席下部3は、例えば、共通の横桁5を介して互いに接続され、ここで座席上部2及び/または座席下部3は該横桁5の周りに枢動可能であり、それによって異なる角度αが座席上部2と座席下部3との間において調節され得る。座席上部2及び/または座席下部3は、各々調節される角度αに係止可能または固定可能である。
【0045】
さらに、座席上部2の前記2つの縦桁4は、例えば伸長可能でもあり、好ましくは伸長された位置において係止可能である。図1に関して上述したように、それぞれの縦桁4は、第1の縦桁部10と第2の縦桁部11とを有し、第1または下方縦桁部10は、例えば第2または上方縦桁部を受け入れて案内するために中空に形成される。第2の縦桁部11は、同様に中空に形成されていてもよいが、中実に形成されていてもよい。第2の縦桁部11は、第1の縦桁部内に変位可能に配置され、好ましくは異なる位置に係止または固定されてもよい。このようにして、例えば、前記頭部用の詰め物部9のために異なる高さが設定され得る。
【0046】
さらに、図2に表されるチャイルドシート装置1の実施形態は、前記縦桁4に側方に取り付けられた2つの支持要素8を有し、これらの支持要素は子供の上半身を腋下の高さで後ろから前に抱持し、それによってその横方向の動きを制限し、好ましくは子供に対して既定のまたは一定の引っ張りを子供の胸より高く及ぼす。
【0047】
支持要素8は、高さ調整可能、すなわち縦方向に調整可能となるよう形成され得る。このために、支持要素8は、縦桁4に変位可能に設けられてもよく、好ましくは異なる位置または高さに係止可能または固定可能であってもよい。
【0048】
同様に、支持要素8は、上記に加えて、または上記の代わりに、チャイルドシート装置1の側方または水平方向に調節可能であってもよい。このために、支持要素8は、例えば伸長可能であってもよく、好ましくはそれぞれ伸長された位置に係止可能または固定可能であってもよい。
【0049】
さらに、支持要素8、座席上部2及び座席下部3には、図2に例示の実施形態に表されるように、軟質カバーまたは詰め物部9が設けられていてもよい。
【0050】
支持要素8は、前面においてベルト12と接続されている。このようにして、子供または赤ん坊の脚の間において支持要素8を固定することを避けている。
【0051】
チャイルドシート装置1における座席下部3の底部は弾力性があり、例えば、支持要素8を除去する必要なく子供または赤ん坊を水平位置に保持するために、必要な限りにおいて、詰め物を有している。
【0052】
垂直位における子供の歩行は、人間の脳を通じて、特にいわゆる小脳によって制御されている。このため、垂直位あるいは起立位、または身体の直立姿勢における反射は、脊柱の起立筋(ラテン語:musculus erector spinaeまたはmusculus erector trunci)を通じて制御されている。脳の半々が生理学的に非対称であるため、そのような筋肉もまた非対称的に機能する。筋痙攣または筋痙縮は、片側においてより強く現れ、これにより骨盤の反対側への偏りが生じる。骨盤傾斜は、右足または左足が短くなる理由となり、その結果、脊柱の横方向への弯曲及び脊柱弯曲が進行する。
【0053】
子供が歩き始めた際に、身体の位置は、身体の垂直位における、いわゆる見かけの反射として、一生を通じて少しずつ小脳に記憶される。この反射は、生理学的に正しい反射に置換され得ることが判明している。このために、子供が立ち上がって独りで歩き始めた際、右脚または左脚を持ち上げるためのものとして、右または左の踵の下に矯正挿入具または矯正中敷が敷かれる。矯正挿入具または矯正中敷を継続的に使用することにより、多くの筋肉により構成される脊柱の起立筋(ラテン語:musculus erector spinaeまたはmusculus erector trunci)の対称的な機能が再形成される。これにより、骨盤傾斜は起こらず、身体を直立姿勢に保つことを助けることにもなる。
【0054】
しかしながら、このような新たな生理学的な正しい反射は、該子供の両親がバギーまたはベビーカーを使用し始める頃の、該反射の形成が始まる際において、より早くから形成され得る。
【0055】
本発明に従うチャイルドシート装置1の支持要素8は、身体を直立姿勢に保持して、それが片方へ弯曲することを防止する。また身体は、この正しい位置を通常のまたは正しい生理学的反射として記憶または維持するように、小脳に信号を送る。したがって、子供が歩き始める際に骨盤傾斜は起こらず、その結果、脊柱の弯曲及び脊柱弯曲が形成する原因が生じない。
【0056】
さらに、子供の脊柱矯正のための前記チャイルドシート装置1は、成人、障碍者または歩行能力に制限のある人においても、同じ目的で使用することができる。また、車椅子に用いることも実現可能である。このような矯正の概念は、支持要素を用いることによる、身体を軽く引っ張る効果と、身体の横方向への動きの最小化と、身体が片方に屈曲することの防止とに見られる。
【0057】
図3は、図2のチャイルドシート装置1を表しており、ここでは、チャイルドシート装置1は、ベビーカー13の例としてのバギーに挿入されている。図3に表される例では、チャイルドシート装置1は、さらにバギーのベルト14によりバギー13に固定され得る。
【0058】
図4は、図3に表された本発明に従うチャイルドシート装置1を備えたバギー13を表し、チャイルドシート装置1には赤ん坊が座っている。この場合には、チャイルドシート装置1の支持要素8は、子供の上半身を腋下の高さで後ろから前に抱持し、それによって子供の体重の一部がその上に預けられる。さらに、支持要素8は、該上半身が横方向に動く能力を制限する。図1〜3に関してこれまで説明したように、支持要素8は、横方向及び/または高さ方向に調節され得る。さらに、支持要素8は、好ましくは前面において閉鎖ベルト12と接続される。存在する座席(ここではバギー13の座席)内への挿入具としての該実施形態では、座席下部3及び/または座席上部2は、例えば蝶番によって枢動可能または移動可能であるため、バギー13の座席の背もたれが調節可能である際には、それに応じて挿入座席1が適合される。
【0059】
本発明は好ましい例示の実施形態により上記において十分に説明されているが、本発明はそれらに限定されるものではなく、様々な方法により修正され得る。
図1
図2
図3
図4