特許第5961318号(P5961318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961318
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20160719BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20160719BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20160719BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20160719BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20160719BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   B29B11/16
   B32B5/28 Z
   B29C67/14 L
   B29C67/14 X
   B29K105:08
   B29K105:10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-245881(P2015-245881)
(22)【出願日】2015年12月17日
(62)【分割の表示】特願2015-4332(P2015-4332)の分割
【原出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-130011(P2016-130011A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2015年12月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307044493
【氏名又は名称】株式会社アドウェルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】中居 誠也
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/168111(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02J 1/00−13/00
D02G 1/00−3/48
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04−5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の支持面と、前記支持面に直交する押圧方向に超音波振動する押圧体の押圧面との間に、開繊された帯状の一方向強化繊維束と樹脂フィルムとを重ねあわせて挟み、前記押圧面および前記支持面を所定間隔に維持しつつ、前記一方向強化繊維束および前記樹脂フィルムをその長手方向に沿って前記押圧体および前記支持体に対し相対的に移動させて、前記一方向強化繊維束に前記樹脂フィルムの樹脂を連続的に含浸させる
ことを特徴とする処理方法。
【請求項2】
前記押圧面により前記一方向強化繊維束を前記支持面に対して所定の加圧力で押圧しながら前記押圧面の押圧箇所を移動させることを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
支持面を有する支持体と、
押圧面を有する押圧体と、
前記押圧体に前記支持面に直交する押圧方向への超音波振動を印加する振動手段と、
開繊された帯状の一方向強化繊維束および該一方向強化繊維束に重ね合わされた樹脂フィルムを長手方向に沿って前記押圧体および前記支持体に対し相対的に移動させる移動手段とを備え、
前記支持面と、前記振動手段により前記押圧方向に超音波振動する前記押圧体の前記押圧面との間に、重ね合わされた前記一方向強化繊維束および前記樹脂フィルムを挟み、前記押圧面および前記支持面を所定間隔に維持しつつ、前記移動手段により、前記一方向強化繊維束および前記樹脂フィルムを移動させて、前記一方向強化繊維束に前記樹脂フィルムの樹脂を連続的に含浸させる
ことを特徴とする処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開繊された帯状の一方向性強化繊維束に樹脂を含浸する処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の一方向強化繊維束を開繊して拡幅することにより一方向に引き揃えた扁平な状態の帯状の繊維束に、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリオレフィン系樹脂や脂肪族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂などのマトリックス樹脂を含浸させた一方向プリプレグが提供されている。高品質の一方向プリプレグを形成するために一方向強化繊維束を精度よく開繊する必要があり、一方向強化繊維束を開繊する種々の技術が提案されている。例えば特許文献1,2には、一方向強化繊維束を長手方向に走行させながら、走行方向に対して交差する方向に一方向強化繊維束に気流を通過させることによって、一方向強化繊維束を幅方向に広げて開繊する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第97/41285号公報(第13頁〜第14頁、図2、要約書など)
【特許文献2】特開平11−200136号公報(段落0025、図1、要約書など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示されている技術では、気流により一方向強化繊維束を拡幅して開繊するため、開繊する際に一方向強化繊維束に強い張力を作用させることができない。したがって、安定して高速に一方向強化繊維束を処理するのが困難であった。
【0005】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、開繊された帯状の一方向強化繊維束に良好に樹脂を含浸することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明にかかる処理方法は、支持体の支持面と、前記支持面に直交する押圧方向に超音波振動する押圧体の押圧面との間に、開繊された帯状の一方向強化繊維束と樹脂フィルムとを重ねあわせて挟み、前記押圧面および前記支持面を所定間隔に維持しつつ、前記一方向強化繊維束および前記樹脂フィルムをその長手方向に沿って前記押圧体および前記支持体に対し相対的に移動させて、前記一方向強化繊維束に前記樹脂フィルムの樹脂を連続的に含浸させることを特徴としている。
【0007】
また、本発明にかかる処理装置は、支持面を有する支持体と、押圧面を有する押圧体と、前記押圧体に前記支持面に直交する押圧方向への超音波振動を印加する振動手段と、開繊された帯状の一方向強化繊維束および該一方向強化繊維束に重ね合わされた樹脂フィルムを長手方向に沿って前記押圧体および前記支持体に対し相対的に移動させる移動手段とを備え、前記支持面と、前記振動手段により前記押圧方向に超音波振動する前記押圧体の前記押圧面との間に、重ね合わされた前記一方向強化繊維束および前記樹脂フィルムを挟み、前記押圧面および前記支持面を所定間隔に維持しつつ、前記移動手段により、前記一方向強化繊維束および前記樹脂フィルムを移動させて、前記一方向強化繊維束に前記樹脂フィルムの樹脂を連続的に含浸させることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、超音波振動が印加されて含浸処理が実行されているので、強化繊維の各フィラメントと樹脂との接合界面の反応を促進させて良好な接合状態にすることができ、樹脂フィルムの樹脂を帯状の一方向強化繊維束に連続的に良好に含浸させることができる。
【0009】
また、前記押圧面により前記一方向強化繊維束を前記支持面に対して所定の加圧力で押圧しながら前記押圧箇所を移動させるとよい。
【0010】
このようにすれば、処理対象である一方向強化繊維束の太さや開繊処理後の繊維束の幅の目標値などに応じて予め設定された所定の加圧力で一方向強化繊維束を押圧しながら開繊することで、開繊後の繊維束の幅を精度よく調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超音波振動が印加されて含浸処理が実行されているので、強化繊維の各フィラメントと樹脂との接合界面の反応を促進させて良好な接合状態にすることができ、樹脂フィルムの樹脂を帯状の一方向強化繊維束に良好に含浸させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態にかかる処理装置を示す正面図である。
図2図1の処理装置を左側面側から見た要部拡大図である。
図3図2の要部を示す斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態にかかる処理装置を示す正面図である。
図5】本発明の第3実施形態にかかる処理装置の要部を示す斜視図である。
図6】本発明の第4実施形態にかかる処理装置において処理される一方向強化繊維束および樹脂シートを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
この発明の第1実施形態にかかる処理装置について図1図3を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態にかかる処理装置を示す正面図、図2図1の処理装置を左側面側から見た要部拡大図、図3図2の要部を示す斜視図である。なお、図3では一方向強化繊維束Bの下面側に配置される樹脂フィルムSと支持体2とが図示省略されている。また、図1図3では、本発明にかかる主要な構成のみが図示されており、説明を簡易なものとするために、その他の構成は図示省略されている。また、後の説明で参照する図4図6についても、図1図3と同様に主要な構成のみが図示されているが、以下の説明においてはその説明は省略する。
【0016】
(処理装置)
図1および図2に示す処理装置1は、支持体2の支持面21と、支持面21に直交する押圧方向Zに超音波振動するホーン35の押圧面35aとの間に一方向強化繊維束Bを挟んだ状態で、一方向強化繊維束Bを長手方向Yに走行させることにより押圧面35aによる一方向強化繊維束Bの押圧箇所を一方向強化繊維束Bの長手方向Yに沿って移動させて、一方向強化繊維束Bに長手方向Yに沿って押圧面35aから押圧方向Zの超音波振動を印加することによって、一方向強化繊維束Bを長手方向Yに沿って連続的に開繊するものである。
【0017】
また、この実施形態では、処理装置1は、支持面21と押圧面35aとの間に、一方向強化繊維束Bを樹脂フィルムSと重ねあわせて配置した状態で一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)を長手方向Yに走行させることによって、一方向強化繊維束Bの両面それぞれに重ね合わせた樹脂フィルムSを超音波振動により溶融させて含浸させながら一方向強化繊維束Bを開繊する。したがって、樹脂フィルムSが重ねあわされた一方向強化繊維束Bが処理装置1により処理されることによって、開繊された一方向強化繊維束Bの強化繊維のフィラメントが所定幅で一方向に引き揃えられた扁平な状態の帯状の繊維束B*(図3参照)に樹脂フィルムSの樹脂が含浸されて成る一方向プリプレグPが形成される。
【0018】
処理装置1は、支持体2と、一方向強化繊維束Bに押圧方向Zの超音波振動を印加する共振器31を備えるヘッド部3と、支持手段33に支持された共振器31を駆動して押圧方向Zに往復移動させる加圧手段4と、その両面に樹脂フィルムSが重ねあわされた一方向強化繊維束Bをステージ2とヘッド部3との間に供給する供給手段5と、処理装置1の各部の制御を行う制御装置(図示省略)とを備えている。なお、一方向強化繊維束Bは、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維により形成され、マトリックス樹脂を成す樹脂フィルムSは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリオレフィン系樹脂や脂肪族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂により形成される。また、図3に示すように、樹脂フィルムSは、その幅Wsが一方向強化繊維束Bが開繊されて形成された帯状の繊維束B*の幅Wbよりも若干幅広のテープ状に形成されている。
【0019】
支持体2は、ヘッド部3の下方に配置され、両面に樹脂フィルムSが重ね合わされた状態の一方向強化繊維束Bをヘッド部3が備えるホーン35の押圧面35aとの間に挟み込む平面状の支持面21を有している。
【0020】
ヘッド部3は、共振器31に押圧方向Zへの超音波振動を印加する振動子32(振動手段)がその一方端に接続された共振器31と、共振器31を支持する支持手段33とを備え、振動子32が共振器31(ホーン35)を超音波振動させることにより押圧面35aから一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)に超音波振動が印加される。
【0021】
具体的には、共振器31は、制御装置に制御された振動子32が生成する超音波振動に共振してその中心軸の方向(押圧方向Z)に超音波振動するものであって、ブースタ34とホーン35とを備え、ブースタ34の他方端とホーン35の一方端とが、互いの中心軸が同軸になるように無頭ねじにより連結されている。
【0022】
ブースタ34は、この実施形態では、例えば図2中の矢印Z方向におけるそのほぼ中央の位置と、その両端位置とが最大振幅点となるように、共振周波数の一波長の長さに形成されている。このとき、矢印Z方向において各最大振幅点から1/4波長離れた2つの位置が、それぞれブースタ34の第1および第2最小振幅点に相当する。また、ブースタ34は、その断面形状が円形状である円柱状に形成されている。そして、ブースタ34の一方端に、ブースタ34の中心軸と同軸になるように振動子32が無頭ねじにより接続されている。
【0023】
また、ブースタ34の第1および第2最小振幅点に相当する位置の外周面には、それぞれの周方向に沿って凹状の溝が形成されることによりブースタ34(共振器31)が支持手段33に把持されるための被把持部が形成されている。なお、この実施形態では、ブースタ34の中心軸にほぼ直交する断面形状が八角形状となるように被把持部が形成されているが、その断面形状が円形状やその他の多角形状となるように被把持部を形成してもよい。
【0024】
ホーン35(本発明の「押圧体」に相当)は、一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)を支持体2の支持面21に直交する押圧方向Zに押圧する平面状の押圧面35aを有し、振動子32の振動に共振して超音波振動することにより押圧面35aから一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)に超音波振動を印加するものである。ホーン35は、例えば図2中の矢印Z方向におけるその両端位置が最大振幅点となるように、共振周波数の半波長の長さに形成されている。このとき、矢印Z方向におけるホーン35のほぼ中央の位置が第3最小振幅点に相当する。また、図2および図3に示すように、ホーン35は、直方体状に形成されている。そして、ホーン35の押圧面35aは、樹脂フィルムS(開繊後の帯状の繊維束B*)に対して、押圧方向Zおよび長手方向Yにほぼ直交する幅方向Xにおいて幅広に形成されている(ホーン35の幅Wh≧樹脂フィルムSの幅Ws≧帯状の繊維束B*の幅Wb)。
【0025】
なお、この実施形態では、共振器31は、その共振周波数が約15kHz〜約60kHz、その振動振幅(矢印Z方向における伸縮の振幅)が約2μm〜約300μmとなるように構成されており、振動子32により生成される超音波振動に共振して共振器31が超音波振動することによって、ホーン35の押圧面35aから一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)に対して押圧方向Zの超音波振動が印加される。
【0026】
支持手段33は、基部36とクランプ手段37とを備え、クランプ手段37でブースタ34の被把持部を把持することにより共振器31を支持するものであり、基部36には、加圧手段4のボールねじ42に螺合するねじ穴が矢印Z方向に形成されている。
【0027】
また、クランプ手段37は、ブースタ34に形成された2つの被把持部を把持できるように、基部36の2ヶ所に設けられており、それぞれ、ブースタ34の被把持部を挟持する第1および第2部材を備えている。具体的には、クランプ手段37の第1および第2の部材には、被把持部の断面形状に係合可能な形状を有する凹部がそれぞれ設けられている。そして、第1および第2部材の凹部でブースタ34の被把持部を狭持するように、被把持部を形成する凹状の溝に、基部36に支持されたクランプ手段37の第1および第2部材が嵌挿され、ボルトで第1および第2部材が固定されることにより、ブースタ34の被把持部がクランプ手段37により把持される。
【0028】
なお、共振器31を支持する支持手段33の構成は、上記したように、ブースタ34に形成された被把持部を把持(クランプ)した状態でボルトにより固定されるクランプ手段37に限られず、例えば、電気制御可能に構成された機械的なクランプ機構や、ワンタッチで取り付け可能なクランプ機構など、ブースタ34の被把持部を支持することができる構成あればどのようなものであってもよい。
【0029】
また、共振器31に形成される被把持部の位置は、最小振幅点に限らず、共振器31の任意の位置に被把持部を形成すればよい。また、被把持部の構成は、共振器31の外周面に周方向に沿って凹状の溝が形成された構成に限られず、例えば、共振器31の外周面に周方向に沿って凸状のフランジが形成された構成など、支持手段33により把持することができれば、被把持部がどのような形状に構成されてもよい。また、被把持部が支持手段33により、Oリングやダイアフラム等の弾性部材を介して支持されていてもよい。
【0030】
加圧手段4は、ホーン35の押圧面35aが支持体2の支持面21と対向するように支持手段33に支持された共振器31を、押圧方向Zに駆動して支持体2に近接または支持体2から離間させるものであって、駆動モータ41とボールねじ42とを備えている。また、架台(図示省略)に立設された支柱(図示省略)にガイド43が結合されており、加圧手段4は、フレーム44を介して支柱およびガイド43に連結されている。
【0031】
そして、制御装置に制御されて駆動モータ41が回転することにより、ガイド43に矢印Z方向に設けられた凸状のレール43aと支持手段33に設けられたガイド(図示省略)とが摺接しつつ、ボールねじ42に螺合された支持手段33が移動方向Zにおいて上下動し、これにより、支持手段33に支持された共振器31が支持体2に近接または支持体2から離間する。
【0032】
また、加圧手段4は、制御装置による制御に基づいて駆動モータ41の駆動トルクを調整することにより、所定の加圧力で支持手段33に支持された共振器31を支持体2に近接させることができるように構成されている。また、支柱にはリニアエンコーダ(図示省略)が設けられており、これにより矢印Z方向(押圧方向)におけるヘッド部3の高さが検出されて、リニアエンコーダの検出信号に基づいて制御装置により駆動モータ41を制御することにより、ヘッド部3の高さを調整することができる。
【0033】
そして、共振器31の中心軸の方向が基部36に形成されたねじ穴とほぼ同じ方向、すなわち、共振器31の中心軸の方向と加圧手段4による共振器31の移動方向(押圧方向Z)とがほぼ同方向となり、ホーン35の押圧面35aが支持体2と対向するように、支持手段33により共振器31が支持されている。したがって、加圧手段4により基部36が下動されることで共振器31(ホーン35)が押圧方向Zに駆動されて一体的に支持体2に近接し、これにより、加圧手段4による加圧力が押圧面35aから支持体2の支持面21に支持された一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)に加えられる。すなわち、加圧手段4により制御されることによって、超音波振動するホーン35の押圧面35aにより一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)が支持体2の支持面21に対して押圧されて加圧される。
【0034】
なお、この実施形態では、押圧面35aにより一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)が支持面21に対して所定の一定の加圧力で押圧されるように駆動モータ41が制御装置により制御される。また、共振器31(基部36)の押圧方向Zにおける高さ位置が、図2中の矢印Lに示すように共振器31が最大に伸長したときの押圧面35aと支持面21との間隔が所定間隙Gとなる位置Hに達したときには、共振器31が位置Hを越えて支持体2側に移動しないように、駆動モータ41が制御装置により制御される。なお、押圧面35aによる一方向強化繊維束Bに対する加圧力の大きさや、押圧面35aと支持面21との間隙Gの大きさは、開繊後の帯状の繊維束B*の幅や厚み、一方向プリプレグPの幅や厚みに応じて、適宜、最適な値を設定すればよい。例えば、一方向強化繊維束Bや樹脂フィルムSに対する処理試験を繰り返し行うことにより、最適な加圧力や間隙Gの値を設定してもよい。
【0035】
供給手段5(本発明の「移動手段」に相当)は、図1に示すように、一方向強化繊維束Bを巻回保持する第1の供給ローラ51と、それぞれ樹脂フィルムSを巻回保持する第2、第3の供給ローラ52,53と、引出ローラ54と、張力調整用ローラ55と、収納ローラ56とを備えている。一方向強化繊維束Bおよび両樹脂フィルムSそれぞれは、引出ローラ54の矢印方向に回転する駆動ローラ54aおよび従動ローラ54bによりニップされることによって、各供給ローラ51〜53から引き出されると共に、両樹脂フィルムS間に挟まれた状態の一方向強化繊維束Bがホーン35の押圧面35aと支持体2の支持面21との間に供給される。
【0036】
このとき、両面に樹脂フィルムSが重ねあわされた一方向強化繊維束Bは、ヘッド部3よりも下流側に配置された張力調整用ローラ55の矢印方向に回転する駆動ローラ55aおよび従動ローラ55bによりニップされることによって、その張力を調整されながら押圧面35aと支持面21との間に挟まれた状態で長手方向Yに走行する。したがって、この実施形態では、一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)とホーン35とが長手方向Yにおいて相対的に移動するので、一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)が押圧面35により所定の一定の加圧力で押圧される箇所が、一方向強化繊維束Bの長手方向Yに沿って移動する。そして、両面に樹脂フィルムSが重ねあわされた一方向強化繊維束Bがホーン35の押圧面35aと支持体2の支持面21との間を通過することにより形成された一方向プリプレグPが、収納ローラ56に巻回されて収納される。なお、第2、第3の供給ローラ52,53のいずれか一方のみが設けられることにより、一方向強化繊維束Bの片面のみに樹脂フィルムSが重ね合わされるようにしてもよい。
【0037】
(開繊・含浸処理)
次に、処理装置1において実行される開繊・含浸処理の一例について説明する。
【0038】
まず、所定の強化繊維の集合体から成る一方向強化繊維束Bを用意する。そして、その両面に所定の厚みの樹脂フィルムSを重ねあわせた状態で一方向強化繊維束Bを、超音波振動するホーン35の押圧面35aにより支持体2の支持面21に対して所定の加圧力で押圧しながら、長手方向Yに走行させることにより、図3に示すように、一方向強化繊維束Bの幅が幅Wbまで広げられ、その厚みが所定の厚みになるように薄く形成された帯状の繊維束B*に、樹脂フィルムSの樹脂が含浸されて成る一方向プリプレグPが形成される。
【0039】
以上のように、この実施形態では、支持体2の支持面21と、該支持面21に直交する押圧方向Zに超音波振動するホーン35の押圧面35aとの間に一方向強化繊維束Bを挟んだ状態で、押圧面35aによる一方向強化繊維束Bの押圧箇所を一方向強化繊維束Bの長手方向Yに沿って移動させることにより、一方向強化繊維束Bを開繊することができる。したがって、例えば気流を利用した従来の技術を比較すると、開繊する際に一方向強化繊維束Bに強い張力を作用させることができるので、一方向強化繊維束Bを安定して高速に処理して開繊することができる。
【0040】
また、一般的に、開繊後の帯状の繊維束B*は、不安定で絡まりやすいが、支持面21と押圧面35aとの間に一方向強化繊維束Bと樹脂フィルムSとを重ねあわせて配置した状態で、一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)を長手方向Yに走行させることによって、一方向強化繊維束Bを開繊すると同時に樹脂フィルムSを溶融させた樹脂を帯状の繊維束B*に含浸させることができる。したがって、従来必要であった含浸装置が不要であり、1工程で一方向プリプレグPを形成することができるので、一方向強化繊維束Bの処理コストを低減することができる。また、ホーン35から物理的な超音波振動が印加されながら樹脂フィルムSの樹脂と帯状の繊維束B*とが接触することにより、強化繊維の各フィラメントと樹脂との接合界面の反応を促進させて良好な接合状態にすることができ、樹脂フィルムSの樹脂を帯状の繊維束B*に良好に含浸させることができる。したがって、一方向プリプレグPを用いた成形品の物性を向上させることができる。また、開繊と同時に帯状の繊維束B*に樹脂が含浸されるので、開繊後の帯状の繊維束B*に毛羽等が発生するおそれがなく、開繊後の繊維束B*の取り扱いが容易である。
【0041】
また、処理対象である一方向強化繊維束Bの太さや開繊処理後の帯状の繊維束B*の幅Wbや厚みの目標値に応じて予め設定された所定の加圧力で一方向強化繊維束Bを押圧しながら開繊することで、開繊後の繊維束B*の幅Wbおよび厚みを精度よく調整することができる。
【0042】
また、処理対象である一方向強化繊維束Bの太さや開繊処理後の帯状の繊維束B*の厚みや幅Wbの目標値に応じて予め設定された所定間隙Gよりも支持面21との間隔が狭くならないように押圧面35aを配置した状態で一方向強化繊維束Bを開繊することで、開繊後の帯状の繊維束B*の厚みおよび幅Wbを精度よく調整することができる。なお、超音波振動するホーン35の最大伸長時の押圧面35aと支持面21との間隔が常に所定間隙Gとなるように、共振器31を押圧方向Zにおける位置Hに固定配置した状態で(図2参照)、一方向強化繊維束B(樹脂フィルムS)を長手方向Yに走行させてもよい。このようにしても、開繊後の帯状の繊維束B*の厚みおよび幅Wbを精度よく調整することができる。
【0043】
<第2実施形態>
この発明の第2実施形態にかかる処理装置について図4を参照して説明する。図4は本発明の第2実施形態にかかる処理装置を示す正面図である。
【0044】
図4に示す処理装置1aが上記した第1実施形態と異なるのは、図4に示すように、含浸装置6において含浸処理が行われる点である。すなわち、樹脂フィルムSが重ね合わされていない状態で押圧面35aと支持面21との間を通過することにより一方向強化繊維束Bが開繊された後に、帯状の繊維束B*に樹脂フィルムSが重ね合わされて含浸装置6において含浸処理が行われる。その他の構成および動作は、上記した第1実施形態の構成および動作と同様であるため同一符号を引用することによりその構成および動作の説明を省略する。
【0045】
含浸装置6は、図4に示すように、樹脂フィルムSが両面に重ね合わされた帯状の繊維束B*を上下方向から挟み込んで加圧可能に構成され、同図中の矢印方向に回転するベルトユニット61,62と、ベルトユニット61,62の内側に配置された加熱機構63および冷却機構64とを備えている。また、加熱機構63は上流側に配置され、冷却機構64は下流側に配置されている。このように構成された含浸装置6では、樹脂フィルムSが両面に重ね合わされた帯状の繊維束B*が通過する際に、上流側において、ベルトユニット61,62により加圧されながら加熱機構63により加熱されることによって溶融した樹脂フィルムSの樹脂が帯状の繊維束B*に含浸される。そして、下流側において、ベルトユニット61,62により加圧されながら冷却機構64により冷却されることによって繊維束B*に含浸した樹脂が固化し、一方向プリプレグPが形成される。なお、上記した第1実施形態と同様に、張力調整用ローラ55が適宜最適な場所にさらに設けられていてもよい。
【0046】
このように構成しても、上記した第1実施形態と同様に、押圧面35aと支持面21との間を通過させることにより一方向強化繊維束Bを開繊することによって、一方向強化繊維束Bを安定して高速に処理して開繊することができる。また、一方向強化繊維束Bを安定して開繊することにより、樹脂を含浸させる帯状の繊維束B*の厚み(含浸距離:強化繊維フィラメントの本数)を薄くすることができるので、短時間で繊維束B*に樹脂を含浸させることができると共に、ボイドの発生を抑制し、不完全な含浸を防止することができる。したがって、一方向プリプレグPを用いた成形品の物性を向上させることができる。
【0047】
<第3実施形態>
この発明の第3実施形態にかかる処理装置について図5を参照して説明する。図5は本発明の第3実施形態にかかる処理装置の要部を示す斜視図である。なお、図5では、図3と同様に帯状の強化繊維束B*の下面側に配置される樹脂フィルムSと、支持体2とが図示省略されている。
【0048】
図5に示す処理装置1bが上記した第2実施形態と異なるのは、図5に示すように、含浸装置7の構成が異なる点である。その他の構成および動作は、上記した第1実施形態の構成および動作と同様であるため同一符号を引用することによりその構成および動作の説明を省略する。
【0049】
含浸装置7は、図5に示すように、開繊処理に用いられるホーン35とほぼ同様の構成のホーン135を備えている。そして、含浸装置7のホーン135の押圧面135aと、支持体2の支持面21との間を、樹脂フィルムSが重ね合わされた帯状の繊維束B*が通過することにより、上記した第1実施形態と同様に、押圧面135aから超音波振動が印加されて溶融した樹脂フィルムSの樹脂が帯状の繊維束B*に含浸されて、プリプレグPが形成される。
【0050】
このように構成すると、上記した第2実施形態の構成と比較すると、超音波振動が印加されることにより含浸時間をさらに短縮することができると共に、含浸装置7の含浸能力を向上させることができる。また、上記した第1実施形態と同様に、超音波振動が印加されて含浸処理が実行されているので、強化繊維の各フィラメントと樹脂との接合界面の反応を促進させて良好な接合状態にすることができ、樹脂フィルムSの樹脂を帯状の繊維束B*に良好に含浸させることができる。したがって、一方向プリプレグPを用いた成形品の物性を向上させることができる。
【0051】
<第4実施形態>
この発明の第4実施形態にかかる処理装置について図6を参照して説明する。図6は本発明の第4実施形態にかかる処理装置において処理される一方向強化繊維束および樹脂シートを示す横断面図である。
【0052】
この実施形態が上記した第1〜第3実施形態と異なるのは、図6に示すように、2束の一方向強化繊維束B、または、2束の開繊後の帯状の繊維束B*により樹脂フィルムSが挟み込まれた状態で含浸処理が実行される点である。その他の構成および動作は、上記した第1〜第3実施形態のうちのいずれかの構成および動作と同様であるため同一符号を引用することによりその構成および動作の説明を省略する。
【0053】
このように、一方向強化繊維束B(帯状の繊維束B*)と樹脂シートSとを図6に示すように重ねあわせても、上記した各実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、上記した各実施形態の構成をどのように組み合わせてもよい。例えば、ホーン35(共振器31)を長手方向Yに移動させることにより、ホーン35の押圧面35aによる一方向強化繊維束Bの押圧箇所が移動するようにしてもよい。また、ホーン35(共振器31)および一方向強化繊維束Bの両方を相対的に長手方向Yに移動させることにより、ホーン35の押圧面35aによる一方向強化繊維束Bの押圧箇所が移動するようにしてもよい。
【0055】
また、上記した加圧手段4にシリンダを追加することにより、シリンダの差圧を利用してホーン35の押圧面35aによる一方向強化繊維束Bに対する加圧力を設定するようにしてもよい。
【0056】
また、上記した第2および第3実施形態において、含浸装置の構成は上記した例に限定されるものではなく、一般的に使用される含浸装置により含浸処理を行うようにすればよい。
【0057】
また、押圧体および押圧面の形状等の構成は上記したホーン35の構成に限定されるものではなく、平面状の押圧面を有し、一方向強化繊維束Bを少なくとも幅方向に渡って支持面21に対して押圧面により押圧できる構成であれば、押圧体をどのような形状に構成してもよい。例えば、その側面視形状が押圧面35a,135aに向ってくちばし状に先細りする形状にホーン35,135を構成することができる。
【0058】
また、上記した加圧手段4は上記した構成に限られるものではなく、共振器31を移動させることができれば、リニアモータやシリンダ等の周知のアクチュエータを用いるなど、どのように加圧手段4を構成してもよい。
【0059】
また、押圧体および支持体それぞれの配置位置は、図1の紙面に向かって上下方向に並べて配置された上記した例に限定されるものではなく、押圧体および支持体の上下方向の位置を入れ換えて配置してもよいし、押圧体および支持体を図1の紙面に向かって左右方向に並べて配置してもよい。
【0060】
そして、一方向性強化繊維束を開繊する処理方法および処理装置に本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1,1a,1b…処理装置
2…支持体
21…支持面
32…振動子(振動手段)
35…ホーン(押圧体)
35a…押圧面
5…供給手段(移動手段)
B…一方向強化繊維束
G…間隙
S…樹脂フィルム
Y…長手方向
Z…押圧方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6